とにかくおすすめ

ジャンル関係なくオススメを知りたい人向け

とにかく面白い

ページをめくる手が止まらない、寝る時間さえ惜しくなる最高のエンターテイメント

泣ける本

思いっきり泣きたい人向け

優しい気持ちになれる本

悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

世界を知る

世界の大きな流れを知りたい人向け

深い物語

いろいろ考えさせられる、深い物語

生き方を考える

人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか」井出洋一郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
西洋絵画を楽しむ上で、宗教とギリシア神話は欠かせないもの。本書はギリシア神話のエピソードとともに、その場面を描いた絵画を紹介している。
僕自身西洋絵画とギリシア神話はもともと好きなので多くの物語は知っているものばかりだったが、それでもいくつかの知らなかった逸話や、ギリシア神話の一場面と知らずに見ていた絵画、そして見たこともない絵画に触れることができた。
面白いのは神話上の人物が、絵で描かれる際の特長に触れている点だろう。アットリビュートと呼ばれるその人物の象徴となる持ち物を知ることで、より絵画のなかの人物を特定しやすくなるのということだ。
たとえばよく知られているものだと、エロス(キューピッド)の弓、ヴィーナス(アフロディーテ)の貝といったところだ。残念ながらアットリビュートの説明は文章だけで、資料となる絵画が載っていない点がやや物足りなかった。
絵画としてはピエロ・ディ・コジモ「アンドロメダを救うペルセウス」など、ペルセウス好きにはたまらない。ジュール・ルフェーブルの「パンドラ」も印象的である。どちらも今まで知らなかった画家なので、ぜひ覚えておきたいものだ

【楽天ブックス】「ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか」

「JUSTICE」Michael J.Sandel

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「正しいこととは何なのか」。「正しいこと」。生きていれば数え切れないほど耳にするそんな当たり前の言葉に対して、「じゃあ、その「正しいこと」とは何なのか?」と問いかけ、突き詰めていく。
面白いのは本書のなかで、。「正しいのはどちらか?」といういくつもの選択肢が用意されている点だろう。いずれの選択肢も即答できるものではなく、いくつかは一生かかっても答えを出せないであろう問いかけである。もちろん本書でもその問いかけの先で示しているのは答えなどではなく、その答えにたどり着くための道筋である。
そしてその道筋を示す過程で、過去の哲学者など、多くの偉人たちの考え方を紹介している。自由主義者にとってはこちらはこの点で間違っている、功利主義者にとってはこちらが正義になる。…のように。
そして、それらの考え方に触れるうちに、「正しいこと」とは、「自由を尊重するもの」「倫理に従うもの」「世の中の実用性を重視するもの」「最大人数に対する最大の富を目的とするもの」など、人によってさまざまな考え方があることに気づくだろう。
30年も生きていれば誰しも、心の中に答えのない疑問を抱えていたりするのではないだろうか。たとえば、生き物の命は大切なのに、どうして人間は豚や牛を殺して食べるの?とか、買う側も売る側も満足している売春はなんで不法なの?とか。
そんな問いかけに対する答えの出し方のヒントを少しつかめた気がした。

「金持ち父さん貧乏父さん」ロバート・キヨサキ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
先日参加したキャッシュフローゲーム会の主催者が「大きく衝撃を受けた」と言っていた本。人の人生を変えるほどの本といわれるととりあえず読まなければ、というわけで読んでみた。
実は結構有名な本らしく、内容は一言で言えば「お金の作り方」を書いたもの。「お金の稼ぎ方」ではなく「お金の作り方」である。そして、現在の教育の仕組みを真っ向から否定している。どんなに勉強してどんなに大きな企業に入っても、稼いだ分のお金は出て行って、一生働き続けなければならない。お金の心配をせずに生きるにはどうすればいいか、ということを書いている。
僕自身あまりお金に興味はなく、お金なんてなくても楽しく生きている自信はあるのだが、「働きたいか遊びたいか?」とたずねられれば答えは明確だろう。世の中の流れなどを考慮すると、単純にそのまま書かれている内容を受け入れるというわけにはいかないが、お金に対する新たな考え方を受け入れて選択肢を増やす、という意味においては非常に面白い内容だった。
【楽天ブックス】「金持ち父さん貧乏父さん」

「激流」柴田よしき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
修学旅行の途中で行方不明になった女生徒冬葉(ふゆは)。20年後、彼女から、同じバスにのっていた同級生6人にメールが届く。「私を憶えていますか?」。大人になった彼らは再び20年前の出来事と向き合うことになる。
移動中のバスからいなくなる女生徒。こんな謎めいて、「真実を知りたい」と思わせる序章は、エンディングのハードルまで上げてしまうとはいえ、読者を引き込むには最良の方法だろう。
物語は不思議なメールをきっかけに、集まった6人。再会をそれぞれの目線から見つめることで、20年という決して短くない期間の人生が見えてくる。20年前に抱いていたお互いに対する気持ちや、20年前とのギャップ、夢を掴んだものとそうでないもの、想像通りの生き方をしているものとそうでないもの…。本作品の面白さは、行方不明になった女生徒というなぞの解明よりも、その過程で描かれるそれぞれの人生にあるといってもいいのではないだろうか。

どちらも若かったのだ。若く幼く、必死だった。自分が心地好いと感じる価値観にしがみつき、それ以外はすっぱりと否定してしまう。妥協、という言葉はあの頃の自分たちにはとても汚らわしい響きを持つ言葉だった。

その同級生の中でも、特に特徴をもって描かれているのが、芸能人として有名になった美弥(みや)と、中学生のころから誰もがうらやむ美貌をもった貴子(たかこ)である。個人的には、そんな恵まれた容姿をもちながらも決して幸せな生き方をしていない貴子の生き方が印象的だった。
ラストの展開が冒頭で引き上げた期待値に達したかどうかは疑問だが、決して悪い作品ではない。ただ、同級生6人のなかに刑事、芸能人、美人というありがちな人物設定しかできなかった点がやや残念である。
【楽天ブックス】「激流(上)」「激流(下)」

「世界は日本サッカーをどう報じたか」木崎伸也

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ワールドカップが終わってすでに一ヶ月。期待以上の結果に日本は熱狂したが世界はそれをどのように見たのだろう。日本の4試合は、それが自分の国であるということそ除いて考えると、普段世界のサッカーを見慣れたファンにとっては退屈の試合だったに違いない。そして、それは世界各国が日本の試合に対して抱いた感想とそう大きくは違わない。
本書は、世界各国、特にサッカー大国と呼ばれる国々の紙面や解説者のコメントを通じて日本のサッカーの長所や短所を客観的に見せてくれる。
今の問題点や今後日本サッカーのレベルの向上のために取り組むべきことを知ることができるとともに、各国の評価の違いから、それぞれのサッカー大国が何を重んじてサッカーを見ているか、という文化的な違いまでも楽しめるだろう。

「オランダのGKに、ほとんどボールが飛んでません」
「日本は何もしたくないチームのようです。」

【楽天ブックス】「世界は日本サッカーをどう報じたか」

「ひかりの剣」海堂尊

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
医学部剣道部の大会で、今年も東城大と帝華大は優勝を狙う。東城大の主将は速水(はやみ)。帝華大の主将は清川(きよかわ)である。

チームバチスタの栄光」などの作品からなる世界の物語のひとつ。東城大の速水(はやみ)は後に「ジェネラルルージュの凱旋」で天才外科医となって活躍する。また清川(きよかわ)は「ジーン・ワルツ」で産婦人科医師として登場する。どちらも後に優れた医師となる。そんな2人がまだ学生で医者になるための勉強をしていたころ、物語としては「ブラックペアン1983」と時期を同じくしている。

そういった意味では、剣道を題材とした青春物語としても楽しめるが、海堂尊のほかの作品を読んでいればさらに楽しめるだろう。剣道部の顧問として速水(はやみ)や清川(きよかわ)とかかわる後の院長の高階(たかしな)先生の行動の理由も「ブラックペアン」を読んでいれば理解できるだろう。

さて、それにしても最近映画化された誉田哲也の「武士道シックスティーン」といい本作品といい、世の中は剣道ブームなのだろうか。実際に経験したことはないが、本作品の描写を素直に受け取ると、なんとも剣道というスポーツが魅力的に見えてしまう。そしてそんな剣道物語につきものなのが、すぐれた女性剣士の存在ではないだろうか。本作品でも帝華大にひかりという剣士が登場する。

また、本作品で面白いのは、数十年前を物語の舞台としているにもかかわらず、そこで活躍する剣道を愛した青年たちは、決して古い青春ドラマに出てくるような、頭の固い努力家ではない点ではないだろうか。清川(きよかわ)などは常に手を抜こうと考えている点が面白い。

そしてもうひとつ顧問の高階(たかしな)先生の言葉の奥深さも本作品の魅力である。

今の君は自分の才能を持て余し、その重さに押し潰されている。大きな才能は祝福ではない。呪いだよ。

余計なことを考えずに一気に読書の世界に没頭したい人にお勧めである。
【楽天ブックス】「ひかりの剣」

「長い腕」川崎草志

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
同僚の自殺と、故郷で起こった殺人事件に、ひとつのキャラクターグッズという共通点を見出した汐路(しおじ)は、故郷の閉鎖的な町に戻る。
タイトルや表紙、そのプロローグからややホラー系の物語を連想させるが、一般的なミステリーと言っていいだろう。それどころかネットの危険性や、ゲーム業界の話などの話も盛り込まれていて、超自然よりむしろ技術的な話も多い。
汐路(しおじ)は不思議な事件をたどって、生まれ故郷の閉鎖的な町に戻るのだが、都会で長年過ごした汐路(しおじ)と、その町で生きる人々のギャップが面白い。そんな中でも興味を惹かれたのは、その町にある2つの似ている大きな家の話である。
実は宮部みゆきの有名な作品「模倣犯」の中でも、犯罪者とその犯罪者が住んでいる家の構造の関係について触れられていておおいに興味を持ったのだが、本作品中でも内容は違えど、家の構造がそこに住む人の心に大きく影響を及ぼすということが書かれている、再び大きく好奇心を刺激された。
さて、全体的な内容はというと、それなりに楽しませてはもらったが、どうも全体的に不必要な内容があるようなややぎくしゃくした印象を受けた。たとえば汐路(しおじ)がゲーム会社の社員である必要は特にないような…。著者がゲーム会社勤務ということで現実感を持たせるために自分のいる職場の様子を描いたのかもしれないが、物語に関係のない箇所を描きすぎてやや物語の加速度が落ちているような気もする。
とはいえデビュー作ということを考えれば及第点をあげられるのではないだろうか。
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「インシテミル」米澤穂信

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
破格の時給に惹かれて申し込んだ12人のアルバイト。その仕事は与えられたルールの元で施設内で数日間過ごすというもの。そのルールとは、人を殺せばボーナスが与えられ、施設内で起こったいかなることにもその後は責任を負わなくていいというものだった。
密閉された空間の中で数人の男女が過ごし、一人、また一人と減っていくというのは、現実味はなくても昔からよくミステリーで使われる手法である。代表的なのはなんといってもアガサクリスティの「そして誰もいなくなった」だろう。本作品もそれを強く意識しているように感じられる。
そんな使い古された手法を用いてはいながらも、新しいのは、本作品がミステリーの枠から微妙に逸脱している点ではないだろうか。たとえば本作品中で登場人物たちもいっているのだが、鍵のかからない部屋というのはミステリーにおいてはタブーなのだそうだ、なぜなら密室殺人ができないから・・・。雫井脩介の「虚貌」は犯人が指紋を偽造できるという点で、ミステリーとしての評価が低かったとか。つまり、ミステリーにおいては人物Aの指紋が現場についていたら、それは人物Aがそれを触った事実でなければならないのである。
読み手にもよるのだろうが、僕にとっては本作品は、知らず知らずのうちに自分の中で築いてきていたミステリーの暗黙のルールみたいなものを考えさせる作品となった。
ちなみに同様に閉鎖空間に複数の人間を放り込んでそこにルールを設けるというパターンの物語には高見広春の「バトル・ロワイアル」、貴志祐介「クリムゾンの迷宮」などが思い浮かぶ。比較してみるのも面白いだろう。
【楽天ブックス】「インシテミル」

「The Coffin Dancer」Jeffery Deaver

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
首から上と薬指以外を動かすことのできない犯罪学者RhymeとAmeriaの物語。裁判の重要な証言者となるはずの航空会社の2人を、その2人を殺すために雇われた殺し屋Coffine Dancerから守る任務を負う。
犯罪学者Rhymeシリーズの第二作目である。前作と同様、証拠至上主義のRhymeの捜査過程で、犯罪現場に残されたわずかな物質が多くを語ることに驚かされる。
また、本作品ではRhymeとAmeliaだけでなく、殺し屋のターゲットであり、小さな航空会社を経営し、自らもパイロットであるPerceyの生き方も大きく扱っている。コックピットの中が自分の居場所、というPerceyの生き方に、最初は嫌悪していたAmeliaも次第に心を通わせていく。
そして今回、RhymeやAmeliaにとって脅威となるのはCoffin Dancerと呼ばれる殺し屋。彼のもっとも強力な武器は「Deception(欺き)」である。最後まで先を読ませない展開に十分に楽しませてもらった。

「永遠の0」百田尚樹

オススメ度 ★★★★★ 5/5
祖母が亡くなって、実は祖父だと思っていた人が血の繋がらない人だと知った。本当の祖父は戦争中に特攻で死んだのだという。ニートの「ぼく」はライターの姉とともに、実の祖父のことを調べ始める。
太平洋戦争中に特攻で死んだ実の父宮部久蔵(みやべきゅうぞう)を探して、宮部(みやべ)を知る老人たちに話を聞くことで、少しずつ宮部(みやべ)の人柄が見えてくる。物語は存命中の老人たちが昔を語るシーンで大部分を占めている。そして、宮部(みやべ)はどうやら零戦のパイロットだったらしいと知る。
話を聞かせてくれる老人たちは必ずしも宮部(みやべ)に好意的な人たちばかりではない、「命の恩人」というものもいれば、宮部(みやべ)を「臆病者」と言うものもいる。いったい真実はどうだったのか。
数人の老人たちが異なる目線から太平洋戦争を語り進められていく。戦争とは多くの物語や映画などで何度も取り上げられるテーマではあるが、それでも今回またいくつもの新しいことを知ることができた。まずは、零(ゼロ)戦という戦闘機がどれだけずば抜けて優れていたかに驚くだろう。戦後の経済成長のずっと前の、まだ日本など小さな島国だったころに、その技術の結晶の戦闘機が大国の戦闘機を凌駕したのである。
そして、ミッドウェー、ガダルカナルの末に戦況は悪化し、その犠牲となった若者たち。そして特攻。経験者目線で語られる言葉に重みを感じる。

戦後になって、この時の状況が書かれた本を読んだ。士官の言葉に搭乗員たちが我先に「行かせてください」と進み出たことになっていたが、大嘘だ!そう、あれは命令ではない命令だった。考えて判断する暇など与えてくれなかった。

出世を意識するがゆえにアメリカへの勝機を逃しただけでなく、敗戦を認めることなく無意味な作戦を取り続け、結果として多くの若者たちが犠牲となった。
あの状況の中で「勇気」とはなんだったのだろう。「特攻は勇敢だ」と言うが、それが「勇気」なのだろうか。

しかし今、確信します。「志願せず」と書いた男たちは本当に立派だった──と。自分の生死を一切のしがらみなく、自分一人の意思で決めた男こそ、本当の男だったと思います。
死ぬ勇気があるなら、なぜ「自分の命と引き換えても、特攻に反対する」と言って腹を切らなかったのだ。

そして物語は終盤に進むにつれて、宮部(みやべ)の人柄と、その恐ろしいほどの零戦の操縦技術が見えてくる。

なぜ奴が真珠湾から今日まで生き延びてきたかがわかった。こんな技を持った奴が米軍のパイロットに堕とされるわけがない。まさに阿修羅のような戦闘機乗りだ。

読者に与えてくれる知識や、忘れてはならない歴史を再確認させてくれる。この悲劇は遠い昔の出来事ではなく、僕らが確かにその延長線上にいるのだということこを意識させてくれる。
戦後、民主主義の名の下に戦前の行為を否定し、今では日本をけなして外国を賞賛する人のほうがかっこいいという風潮まで出来上がっている。太平洋戦争の悲劇や、そこで生きた勇敢な人たちの生き様に触れて僕らは考えるだろう。「僕らの生き方はどうあるべきなのだろうか。」と。
物語の面白さだけでなく、読者に投げかけるテーマも含めてなんの文句もない。こういう本に出会うために読書をしているのだ、と思った。

瀬越憲作
大正、昭和時代の囲碁棋士。(Wikipedia「瀬越憲作」
ラバウル
パプアニューギニア領ニューブリテン島のガゼル半島東側、良港シンプソン湾を臨む都市。東ニューブリテン州の州都である。ラボールとも。(Wikipedia「ラバウル」
インパール作戦
1944年(昭和19年)3月に日本陸軍により開始され6月末まで継続された、援蒋ルートの遮断を戦略目的としてインド北東部の都市インパール攻略を目指した作戦のことである。 補給線を軽視した杜撰(ずさん)な作戦により、歴史的敗北を喫し、日本陸軍瓦解の発端となった。 無謀な作戦の代名詞として、しばしば引用される。(Wikipedia「インパール作戦」
桜花
大日本帝国海軍が太平洋戦争(大東亜戦争)中の昭和19年(1944年)に開発した特攻兵器。(Wikipedia「桜花」
参考サイト
Wikipedia「ガダルカナル島」
Wikipedia「F6F (航空機)」

【楽天ブックス】「永遠の0」

「霧のソレア」緒川怜

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
テロリストが仕掛けた時限爆弾によって成田空港に向かう289人の乗客を乗せた航空機が墜落の危機に瀕する。女性パイロットの高城玲子(たきれいこ)の手に乗客の命はゆだねられる。
トラブルに巻き込まれた航空機を生還させるという物語は決して少なくない。小説でも映画でも、その多くは、そこにいる人々の恐怖やそれを克服して協力し合う人間物語を描いており、本作品にもその要素は十分に入っているが、同時に、航空機に取り入れられている技術や、それに関わるスタッフの役割などに触れている点が新しい。
物語は墜落の危機に瀕した航空機だけでなく、機内に乗っている要注意人物の存在によって国家間の脅威にまで発展した展開になっていく。その過程で、過去の多くの航空機事故に触れている。内容としては、著者のデビュー作ということもあって、力のこもった作品に仕上がっている。
個人的な感想としては、航空機内のパイロットや一般乗客、そして爆弾を持ち込んだテロリスト、国の運命を担う各国政府。多くの視点があるのはいいと思うのだが、どれかをメインに扱って、はっきりと視点に優劣をつけたほうがよかったのではないだろうか。おそらく本作品でもメインは女性パイロット高城玲子(たきれいこ)など機体に穴の開いた状態で生還しようとする姿だろうが、テロリストから自衛隊など、すべてをその視点から頑張って描きすぎててしまって複雑になりすぎてしまった感がある。とはいえ、現在の問題点や過去の事件など多くの要素をまとめて一つの物語に仕上げるという姿勢は評価したい。今後の作品に対する。
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「国境事変」誉田哲也

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
新宿で殺害された在日朝鮮人の吉男(よしお)。事件を担当する警視庁捜査一課は事件解決のために弟の英男(ひでお)を追求する。しかし英男(ひでお)は公安が長年かけて作った情報提供者であった。刑事と公安という同じ警察組織内の目的を異にする組織の思惑が交錯し始める。
公安嫌いの刑事東(あずま)と、公安でありながら、どこかその仕事に疑問を抱いて任務に就いている川尻(かわじり)。この2人の目線で物語は進む。印象的なのは、川尻(かわじり)の学生時代の経験や、在日朝鮮人であるがゆえに、普通の生活を送ることができない英男(ひでお)の過去やその経験から来る言葉だろう。

監視はときに楽しく、また悲しくもある。神のような気分になる場合もあれば、自己嫌悪で吐き気を催すこともある。
公安ってなんだ。警察ってなんだ。自分は本当に人間なのか。人命より優先して秘匿されるべき身分など、本当に存在するのか。

そして、物語はたびたび国境の島、対馬に向けられる。これほど重要な位置にありながらも、僕ら日本人がほとんど意識することのない島。その重要性を知るだろう。
いくつかの組織名称が登場するゆえに若干組織の利害関係がわかりにくく、スピード感にも欠ける部分があるが、それよりむしろ、すれ違いながらも少しずつ近づいていく、東(あずま)と川尻(かわじり)という二人の警察職員の緊張感が面白い。

【楽天ブックス】「国境事変」

「ジーン・ワルツ」海堂尊

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
曽根崎理恵(そねざきりえ)は、医学部の助教授であり講義を受け持つと同時に、閉院が決定しているクリニックで5人の妊婦を診る医師でもある。理恵(りえ)と妊婦たちを描いた物語である。
ここ数年医療崩壊が叫ばれており、その中でも小児科と産婦人科がもっとも人手不足に悩まされているという。本作品でも、現場を知らない政策とそれによって被害を拡大していく地域医療の現状に触れている。また、体外受精や代理母出産など、出産の方法が増えているにもかかわらず、父親、母親の定義すら明治時代から変えようとしない、現行法の問題点にも興味深く切り込んでいく。
とはいえ物語はそんな難しい話ばかりではなく、後半は出産を間近に控えて大きな決断を迫られる妊婦たちと、それを支える理恵(りえ)を含む医師たちの人間ドラマへと進んでいく。
生まれるとともに死ぬことが定まっている子を身ごもった女性。すでに片腕がないことを知りながら、中絶を迷う女性。何年も不妊治療を続けてきてようやく妊娠するにいたった女性など、いずれも考えさせられることばかりである。そうやってつらい決断を考えた末に出していく女性たちについつい涙腺を刺激されてしまった。

どうして女ってみんな、こんなにバカなの?

そして、地域医療の崩壊に抵抗しようと、水面下で動く理恵(りえ)がなんともかっこいい。こんな風に、人の幸せに貢献できる人生を、きっと誰もがうらやましく感じてしまうだろう。

奇跡ってみんなが思っているよりもずっと頻繁に起こるものなの。特に赤ちゃんの周りではね。
アプガー・スコア
出生後すぐの赤ちゃんの状態を見て、点数を付けたもの。Appearance(皮膚色)、Pulse(心拍数)、Grimace(刺激に反応)、Activity(筋緊張)、Respiration(呼吸)のそれぞれの頭文字をとって、アプガースコア(APGAR score) となっている。

【楽天ブックス】「ジーン・ワルツ」

「The Bone Collector」Jeffery Deaver

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Lincoln Rhymeは犯罪学者であり、法医学のスペシャリストである。事故によって体が不自由になったことで一線を退いたRhymeにニューヨーク市警から協力の依頼が来る。Rhymeはパートナーとして先入観を持っていない女性警察官Amelia Sachsを選ぶ。
数年前にハリウッドで映画化された物語の原作である。犯罪現場に残された塵や埃から、犯人を追い詰めていく展開は、世の中に数ある警察小説と大きく異なる部分である。身体を動かして実際に犯罪現場に趣くことのできないRhymeはAmeliaに指示して、証拠を回収させる。Ameliaは証拠の回収を重視するゆえに被害者の感情を考えないRhymeの指示に反感を覚えながらも、次第にそのやり方と重要性を理解し始める。

Rhymeは言った「違う、手錠じゃない」
「え、どうしろって言うの?冗談でしょ?彼女の手を切断?」

物語全体ではわずか数日という期間を描いたものでありながらも、その短い期間に互いの信頼を深めていくRhymeとAmeliaのやりとりが面白い。そうやって2人で協力して犯人を追い詰めていく一方で、もう一つ物語に不思議な魅力を与えているのは、Rhymeが身体の不自由を失ったがゆえに希望を失い、常に死にたがっている点だろう。そして、身体が不自由なゆえに、死ぬことすら人の手を借りなければできないのである。
死にたいと思ったことはあっても、Rhymeには死んでほしくないAmeliaと、Ameliaの思いを理解しながらもそれでも死にたいと考えるRhymeが言い合うやりとりが本作品の山場の一つといえるだろう。

ときどきあるだろう?Sachs。自分があるべき自分になれなくて、自分が持つべきものも持てない…。そうやって人生は推移していく。時には少しずつ、また時には突然。そしてどこかのタイミングでその間違った人生を直そうと努力する価値すら見出せなくなる…。
死は孤独を癒してくれる。緊張も、痒みも…俺は疲れたんだよ。

映画の記憶がかなり薄れていたせいで十分に楽しむことができた。ただ、スラングがたくさん含まれているので、過去に読んだ英語の本に比べてやや難易度が高かったか。

NYPD
ニューヨーク市警察(The New York City Police Department)
Hemlock Society
アメリカのサンタモニカに、Derek Humphryによって設立された団体。死にたい人間にそのための情報を提供したり、法的に医師が自殺を助けられるように働きかけるなどの活動をしている。(Wikipedia「Hemlock Society」
ESU
ニューヨーク市警察の緊急活動部隊 (Emergency Service Unit)
PE
物的証拠(Phisical Evidence)
Hell’s Kitchen
マンハッタンで、34番ストリートと57番ストリート、8番アヴェニューとハドソン川に囲まれた区域のこと。(Wikipedia「Hell’s Kitchen, Manhattan」
米西戦争(Spanish-American war)
1898年にアメリカ合衆国とスペインの間で起きた戦争である。結果としてスペインは敗北し、カリブ海および太平洋のスペインの旧植民地に対する管理権をアメリカが獲得した。(Wikipedia「米西戦争」
バプテスト教会(Baptist)
バプテスマ(浸礼での洗礼)を行う者の意味に由来しており、イギリスの分離派思想から発生したキリスト教プロテスタントの一教派である。アメリカ合衆国の宗教人口はプロテスタントが最も多いが、その中で最も多いのがバプテストである。(Wikipedia「バプテスト教会」
参考サイト
Hemlock Society of San Diego

「名残り火 てのひらの闇II」藤原伊織

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
堀江(ほりえ)の同僚の柿島(かきしま)が集団暴行を受けて死亡する。不信に思った堀江(ほりえ)が事件を探るうちに不信な点が見えてくる。
藤原伊織(ふじわらいおり)の遺作となった本作品。実際あとがきには本編の第8章まで著者校正を入れた、と書いてあるからなんともやるせない。
さて、内容はというと、本作品はタイトルからもわかるとおり「てのひらの闇」の続編として位置づけられている。「てのひらの闇」を読んだのだすでに2年以上も前の話で、同じく藤原伊織作品でお気に入りの一つでもある「シリウスの道」とかなり主人公のキャラクターがかぶっているため思い出すのにかなり時間がかかったが、歯に衣着せぬ物言いと、乱暴なバイクの運転が個性的なバーのオーナーのナミちゃんや、堀江(ほりえ)の元部下で行動力のある大原(おおはら)の振る舞いに触れるうちにぼんやりと思い出してきた。
とはいえ、本作品を楽しむ上で必ずしも前作品を読む必要はなく、本作品から入った人でも十分に楽しめるだろう。事件の真相に迫るにつれて、コンビニ業界の内部事情に話が及ぶ点も面白い。
例によって人を引き込むその物語と、読者を魅了する登場人物たちによって、改めて、藤原伊織の作品がこれ以上新しく世に出てくることがないことを残念に思うのである。
【楽天ブックス】「名残り火 てのひらの闇2」

「残光」東直己

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
札幌で起こった立てこもり事件をニュースで知って、榊原健三(さかきばら)は再び札幌に行くことを決意する。
読み進めて感じたのは、どうやらこの作品は、なにか別の作品の続編であって、十分にこの作品の良さを堪能するためには、その作品から読むべきではなかったか、というもの。物語の過程で、過去の出来事についていろいろ補足的に記述はあるのだが、どうも話に着いて行っていないような感覚は最後まで感じていたように感じる。
全体的には、榊原健三(さかきばらけんぞう)が警察内部に存在する犯罪組織から子供を守るために奮闘する、という物語。典型的なハードボイルドという印象を受けたが、ラストシーンだけは、その経過と比較すると現代の若者の姿を特異な状況を通じて描いており、かなり斬新な印象を受けたが、話の流れからは、少々受け入れ難い感じも受けた。ぜひ他の読者の意見も聞いてみたいところだ。
僕にとって東直己作品の初挑戦ということで、日本推理作家協会賞受賞作品を手にとったのだが、引きつづきこの著者の作品を読みたい、と思わせるほどではなかった。
【楽天ブックス】「残光」

「樹海に消えたルポライター?霊眼?」中村啓

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
山梨の山林に住むカラスの胃から大量の人骨が発見された。同時期に姿を消した友人の真弓(まゆみ)を探し始めた享子(きょうこ)の周囲で不吉なことが重なって起きるようになる。
開始わずか数ページで、赤子の遺体を破砕機にかける、という、久しく味わっていなかったと思えるような怖いシーンから始まり、ひょっとしたら「リング」のようなホラーかも、と思わせてくれるが、その後は、失踪した友人を探す、享子(きょうこ)を中心とする物語に落ち着く。
失踪した真弓(まゆみ)が占星術などのスピリチュアルな分野を担当していたため、その足取りを追う過程で、チベットのダライラマや前世との因縁など、非科学的な分野へと物語は広がり、最初は抵抗を見せていた享子(きょうこ)自身も、霊能者などと言葉を交わすことで次第に、そんな不思議な物の存在を受け入れ始める。
いくつかの非科学的な話が語られる中で、本作品では「第三の眼」の存在が鍵となっている。見えないものを見る第三の眼。それは人間が進化した形なのか、それとも人間が進化する過程で捨てたものなのか。物語の本筋と関連して描かれる不思議な逸話が非常に面白い。
個人的には「2つの目で見る世界が3次元なら、3つの目では4次元の世界が見えるかも」という言葉が、明らかに飛躍しすげてはいるが印象的だった。
若干、物理的な展開を多くしすぎて、また登場人物も多くなりすぎた感があるが、昨今こういう現実の物語と、非現実の話をバランスよく盛り込んだ作品にはなかなか出会えないだけに新鮮さを感じた。物語のややわかりにくい部分は著者の経験不足ということとして受け止めると、今後の作品での成長に注目したいところだ。

トレパネーション
頭皮を切開して頭蓋骨に穴を開ける民間療法の一種とされる。頭蓋穿孔ともいう。(Wikipedia「頭部穿孔」
カンブリア爆発
古生代カンブリア紀、およそ5億4200万年前から5億3000万年前の間に突如として今日見られる動物の「門(ボディプラン、生物の体制)」が出そろった現象であるとされる。(Wikipedia「カンブリア爆発」
参考サイト
Wikipedia「ダライ・ラマ」

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「六月六日生まれの天使」愛川晶

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
目を覚ますと隣に全裸の男性が寝ていた。男の名前どころか自分の名前も思い出せない。どうやら記憶を失ってしまったらしい。
そんな意外と物語ではよく使われる記憶喪失を題材にした作品。本作品が他の作品と違うのは、その主人公となる記憶を失った女性だけでなく、そこにいた男性も「前向性健忘」という記憶の障害を抱えている点だろう。
「前向性健忘」は「博士の愛した数式」で有名になった病気で、ある時期以降の記憶を蓄積できないというもの。本作品でも冬樹(ふゆき)という男性は小一時間ごとに新しい記憶をリセットしてしまうために、そのたびに目の前にいる女性の名前どころかそこにいる理由さえも忘れてしまう。
それが本作品の面白さであり、布石なのだが、記憶を失ったもの同士のちぐはぐなやりとりがやや不必要に長く、また、あまりにも使い古された(そのわりに現実ではあまり見ない)「記憶喪失」という題材にかなりのチープさを感じてしまう。
しだいに女性は自分の記憶を取り戻して、自分の持っている醜い過去と直面していくわけだが、物語はそれだけでは終わらない。帯に「必ずもう一度読みたくなります」というのは決して嘘ではないが、それは「面白いから」ではなく、「よくわからないから」であり、もう少しシンプルな構成にできなかったものか、という印象が強かった。
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「警官の紋章」佐々木譲

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
洞爺湖サミットを間近に控えているなか。勤務中の警察官が拳銃を所持したまま行方をくらました。その警察官の目的はなんなのか。津久井(つくい)巡査部長がその調査に充てられる。
「笑う警官」「警視庁から来た男」に続く、北海道警の大規模な汚職事件に続く物語の第3弾である。前2作と同様に、津久井(つくい)のほか、佐伯(さえき)警部補、そして、小島百合(こじまゆり)は本作品でも登場し、それぞれがそれぞれの任務を遂行しながらも、再び相互にかかわりあうことになる。
本作品は、途中かなり過去の事件に触れられて物語が進んでいくために、前2作品を読んでいないと少々着いていくのは厳しいかもしれない。とはいえ、複雑な捜査や内部事情だけでなく、このシリーズの独特なテンポも大きな魅力ではある。
さて、実は今回あとがきを読むまで本シリーズは完全なるフィクションだと思っていたのだが、どうやら実際にあった北海道警の汚職事件を題材にしているらしい。ひょっとしたら僕が無知だけだったのかもしれないが、ここにいたってようやくそれに気付き、最初からそれを知っていたら本シリーズは何倍も楽しめただろう、と反省している。

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「告白」湊かなえ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
第6回本屋大賞受賞作品。
娘を生徒に殺された女性教師は、最後の日のホームルームである告白をする。自分の行ったことに苦悩する生徒。子供の行動に悩む親や兄弟。一つの事件を機に見えてくる人の心を描く。

映画がヒットしているそのまっただなかで読むことになった。基本的に告白や日記という形で物語は進むため、ややスピード感に欠け、単調な印象を受けた。

娘を殺された教師の告白から始まり、その殺人に関わった生徒二人の目線、その親の日記と続く。物語に必要とはいえ、中学生の日記にしてはあまりにも長く、描写が上手すぎるという点は読みながら不自然さが拭えなかった。

最後まで非難と復讐の物語。現実の世界では、常に救いがあるわけではないので、必ずしも希望の見出せる作品にする必要はないが、それにしてももう少し上手い描き方はなかったのだろうか、と感じた。
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