「Atomic Habits」James Clear

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
事故による怪我から習慣の力で復活し大きな成功を築いた著者が、習慣の力とそれを作り出す考え方や方法を語る。

僕自身もさまざまなことを習慣にしていて、比較的習慣の力や習慣を作り出す能力に長けているほうだと思うのだが、さらにそれを強化したいとおもっているなか、さまざまな人が本書を進めているのを知ってたどり着いた。

基本的に本書で語っているのは、習慣に対する機会、障害、心構えに対して、良い習慣は取り組みやすく、もしくは取り組まざるを得ない方向に変更し、悪い方向はその逆、つまり、取り組みにくく、もしくは取り組むのを不可能にする、という方法である。おそらく習慣化が得意な人はすでに大部分のことをやっていることだろうが、こうして改めて言語化してみてみると、習慣化の重要な部分がはっきり見えてくる。

印象的だったのが実際の行動であるActionと準備や下調べなどのMotionを分けて次のように語っている点である。

Motion makes you feel like you're getting things done. But really, you're just preparing to get something done.
下調べや準備は行動を起こしたように感じさせる。しかし実際には準備しているだけである。

何よりもまず行動することこそ大切で、常に意識しておきたいと思った。また、そのほかにも取り入れたいなと思ったのは次の定期的に行うセルフレビューである。。著者は自分のレビューを実践することを進めているのだ。

1.What went well this year?
2.What didn't go so well this year?
3.What did I learn?

また、自分自身の信念や理想からずれていかないために次のような問いかけも実践しているという。

1.What are the core values that derive my life and work?
2.How am I living and working with integrity right now?
3.How can I set a higher standard in the future.

たしかに、人間は自分の好き嫌いよりも周囲の視線を気にして、好きでもないことに時間を費やすことが起こりうることを考えると、このように自分の本当にやりたいことかをやっているかを問いかけることは人生において重要なのだろう。

昨今習慣の本は溢れているが、本書に比べたら内容の薄い本が多く、そのような本を読むことに時間を費やすよりも、本書を一冊読んでひたすら実践する方が何倍も効果があると感じた。また、それぞれの章に読者を納得させる興味深い物語を語っている点も面白い。どれも面白く、ぜひ覚えて人に聞かせたいと思った。長続きしない人には必読の一冊である。

和訳版はこちら。

「レンジ 知識の「幅」が最強の武器になる」デイビッド・エプスタイン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

世の中には早くから専門分野を決めてその分野で一流になった人と、いろんな分野を試してから一つの分野にたどり着き遅咲きながら一流になる人がいる。どちらのタイプが今後必要とされ、親として子供を育てる場合どちらのタイプを目指すべきなのか、様々な事象から語る。

本書で語っているのは、個人でも組織でも専門に特化することで起こりうる危険性である。様々な分野が確立され、その分野で研究し議論しその分野のなかで考えることに慣れて過ぎてしまうことで、別の視点に立てば簡単に解決することができるの気付かない、ということが起こるのである。 著者は、専門家と多様な知識を持った人間のバランスこそが、新しい分野を切り開いたり、これまで未解決な問題を解決するのに必要なのだという。

そして、インターネットによる誰でも情報に簡単にアクセスできるようになった今、専門家のニーズは以前より少なくなっていると語っている。

組織だけではなく、個人の技術やモチベーションについても同じことが言える。最近10000時間の法則などがあらゆる場所で語られており、それによって、早期教育への関心が高まっているが、本書の主張はそんな流れを考えすのに良いきっかけになるだろう。

早く分野を決めて取り組めば、たしかに人より先んじてリードすることはできるが、様々な分野を体験しないで決めた分野はモチベーションが保ちづらく、いろんな体験をしてからその分野に参加した人にやがて追い抜かれていくのである。

本書の魅力はその話を展開するなかで引き合いに出されるさまざまな話である。タイガーウッズとフェデラーに始まり、任天堂のゲームウォッチや、スペースシャトルチャレンジャーの話など、興味深い話があふれている。本書の語っている、知識の「幅」の重要性が理解できる人なら、そんな様々な実話や逸話もしっかりと楽しんで、自分の知識の「幅」の一部にしたいと感じるに違いない。

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「究極の鍛錬 天才はこうしてつくられる」ジョフ・コルヴァン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
タイガーウッズもモーツァルトのように、世の中に「天才」として語られる人たちは決して生まれながらにして天才だった訳ではなく、それに見合う努力をしてきた。それではそんな「天才」を作りあげる方法、つまり「究極の鍛錬」はどのようにして成し遂げられるのだろうか。
生まれつきの才能というのが過大評価されるなかで、本書では「天才」と呼ばれるまでに一つの分野でたぐいまれなる能力を伸ばす方法についていくつかの例を交えながら説明する。その方法「究極の鍛錬」に必要な要素として以下の要素を挙げている。

(1)しばしば教師の手を借り、実績向上のため特別に考案されている。
(2)何度も繰り返すことができる。
(3)結果に関し継続的にフィードバックを受けることができる。
(4)精神的にはとてもつらい。
(5)あまりおもしろくもない。

基本的には「天才」は努力によって作られるという内容なので、「自分には才能がない」と諦めていた人にとっても希望を持てる内容と言えるだろう。また、身体能力に依存するスポーツや音楽の分野ではかなり若い時期に始める必要があるとはいえ、ビジネスなどの分野では年齢に関わらず一生能力を伸ばすことができるという点も僕らの将来を明るくしてくれる。
しかし、本書は興味深いことにこんな警告も与えている。「究極の鍛錬」によって「天才」と言われるほどの技術を身につけるためには、人間関係などの人生における多くのものを犠牲にし、しばしば周囲の怒りを買う事も多いのだという。そこまでしてそれほどの能力を身につける事が果たして幸せな人生と呼べるのだろうか。
また、忘れてはならないのが、本書は決して「生まれつきの才能」の存在を完全否定しているわけではないのだということ。例えば体格のように「究極の鍛錬」においてもどうしようもない要素が技術を左右することは往々にしてあるのだという。「究極の鍛錬」によってある分野における能力を伸ばすために多くの時間を費やそうとしても、その分野で「天才」になるために必要な「生まれつきの才能」が欠けているかもしれないという可能性は考慮する必要があり、もしかしたら、成し遂げる事のできないことのための「究極の鍛錬」によって人生を無駄に費やす事になるかもしれないのだ。そのリスクを冒してでも自分をひたすら信じて「究極の鍛錬」をすることができるのだろうか。
自分自身の仕事の時間や趣味の時間の過ごし方を改めて考えさせてくれる1冊。僕は常に「究極の鍛錬」ができる環境に身を置いているだろうか。
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「A Mind for Numbers」Barbara Oakley

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
効果的に勉強するためにはどうすればいいのか。著者自身も学生時代は数学の能力をまったく伸ばす事が出来なかったが、軍隊に入ってロシア語を学び数学の必要性を感じてその方法に気付く。多くの例とともに効果的に学ぶ方法を語る。

数学や試験や言語だけでなく、学ぶというのは運動や楽器演奏などすべてに適応されるもので人生を生きていくうえで欠かせないもの。しかし、勉強しているけれども成績が上がらない、練習しているけれど上達しない、ということはたびたびある。誰もが1度は、●時間勉強したけどこの時間に意味があったのだろうか。と疑問に思うような時間を経験した事があるだろう。上達しない練習に時間をさくのであればその時間を他の事に費やした方がいいだろう。そういう意味では、人生を豊かに効率に過ごすために方法を本書は教えてくれると言える。

まず印象的なのは、Diffuse ModeFocus Modeの使い分けである。僕らは勉強するときに「集中する」ことを良いこととしているが、本書では、Diffuse Mode、つまり集中していない状態も同じように効果的に学ぶためには大切だと語る。もちろん集中していない状態が進歩を助けるのは、集中している時間に積み重ねたものがあってこそであるが、それによって集中していない時間にも脳が無意識下で情報を処理し続けるのだという。集中している時間と集中していない時間を適切に配置することで効率的に学ぶことができるのである。

また、「勉強した気になってしまう行動」や、「無駄な勉強」というのにも触れているので、知っておくと非常に役に立つだろう。例えば僕自身も過去やったことがあるのだが、蛍光ペンで教科書の重要な部分を塗っていくという方法。これは手を動かした事によって学んだ気になってしまうが実際にはほとんど効果がないのだそうだ。また、教科書を読んだだけでわかった気になるのもしばしば陥りがちな無駄な勉強法である。多くの教科書はそれぞれの章末に問題をつけているが、多くの人はこの重要性に気付いていない。本書では、必ず自分で問題を解いて自分の理解をテストすることの重要性を強調している。

その他にも、勉強を先延ばししてしまう人がとるべき対策方法や、多くの勉強に適用できそうな記憶方法についても触れている。向上心のある人には多いに役立つ内容と言える。

「Talent Code」Daniel Coyle

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ブラジルはなぜ多くの有名なサッカー選手を長年にわたって排出するのか。ロシアの一つしか室内コートを持たないテニスクラブはなぜ世界で20位以内の女子テニス選手をアメリカ全体よりも多く生み出すのか。そんな問いかけとともに、著者は才能の育成のための方法を語る。

最初に著者が説明するのはDeep Practiceというもの。現在の持っている技術の及ぶぎりぎりの場所で練習を繰り返す事により、技術はもっとも効果的に伸びるのだという。様々な実例や過去の事実を交えてその内容を説明する。そして最初の問いかけ、ブラジルが有名なサッカー選手を生み出す理由にも触れる。その答えは、ブラジルがずっと強かったわけではなく、ペレの出現以降急激に力をつけたことや、昨今のブラジルの世界の舞台での失速を見事に説明してくれる。

また、後半では幼少期にどのように子供に接することが才能を育むために効果的なのかについても、いろいろな実例から説明している。才能というのはDeep Practiceに長い時間を費やす事によってもっとも効果的に伸ばす事ができる。つまり、子供達は、結果よりも努力の量を評価されてこそ長い時間を練習に費やそうとするのである。

本書で語られているのはスポーツや音楽の発展に関するものばかりだったが、Deep Practiceはあらゆる面で有効に見える。僕らは日常生活を送る中で、いろいろな技術を改善しようと努めているが、果たしてしっかりとDeep Practiceできているだろうか。そんなことを考えさせられる。また、子育てをしている人は子供への接し方を考えさせられるだろう。

「天才!成功する人々の法則」マルコム・グラッドウェル

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世の中で成功した人々のその成功の理由はどこにあったのか。多くの場合「天才」という言葉で片付けられてしまう成功者の要因を過去のデータから分析し新しい視点で解説する。

著者はまずカナダのアイスホッケーの選手で1月から3月生まれが圧倒的に多い事に注目し、驚くべき仮説を導き出す。さらに世界のあらゆる場所に同じ法則が集まっていくことを示していく。冒頭から一気に引き込まれてしまう。

馬鹿げていると思いますね。たまたま決められた期日のせいで、その影響がずっと続くなんて。それなのに、誰もそのことを気にしている様子がないなんて本当に変ですよ。

著者は天才と呼ばれる程に1つの分野で成功するまで、少なくとも10000時間費やす必要があり、そのためには生まれ持った才能だけでなく時間や環境など運に左右される部分が大きいというのである。何人かの著名人を例にとってその仮説を実証していく。ビル・ゲイツはどうだっただろう、ビートルズはどうっただろう、と。

どれも完全に数値的に検証できる物ではないので、疑ってかかろうと思えばいくらでもできるが、納得のいく面も多くある。改めて気づかされるのが、世の中の仕組みが公平にはできていないということである。一見、公平に思える社会の制度のいくつかは意図せず一部の人間に有利に働いているのである。

本書を読んだことで、将来、自分たちの子供たちをどのような環境に置くべきかわかってくる。少なくとも日本においては、子供が4月1日の深夜に産まれたなら、それは4月2日生まれにすべきなのである。学年のなかでもっとも早い生まれか遅い生まれかは、その後の人生に与えられる機会に影響を及ぼすのである。
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