「だれでもデザイン 未来をつくる教室」山中俊治

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
デザインエンジニアの著者が中高生向けに開いたデザインの教室の様子を記録している。

著者自身プロダクトデザインを多く手がけていることもあってか、序盤はスケッチをすることの重要性を説明している。

MacbookAirのネジの向きや、初代マッキントッシュの形の話は興味深く、製造過程を意識するということの重要性を教えてもらった。また、アメリカと日本の食文化の違いで、スプーンの理想の形が変わるという話も、文化の違いを考えることが良いデザインを生み出すためには必要だと改めて教えてもらった。

全体的に学生多態に向けたデザインの授業であるが、そのなかでアイデアを発展させる方法を、デザインという作業に初めて触れる学生たちに教えているところが興味深い。僕自身仕事で、デザイン初心者に接する機会は多々あるので、その際にデザインを説明する言葉として、本書で出てくるいくつかの言葉を覚えておきたいと思った。

アイデアって時間がかかる。今日体験したように短時間で頭を活性化することも効果的ではありますが、ちょっと間をおいたりすることも大切です。
自分に自信がないと、どうしても「誰からも文句を言われないもの」を作ろうとしちゃうんだよね。でもそれは無難でつまらないものに至る道でしかない。
誰もが知っているようなかっこいい車は、大体ひとり、または2,3人でデザインしています。
完成前のデザインはいいところも悪いところもあるのが当たり前なんだけど、悪いところは目につきやすいからそればっかり集中していいところを殺してしまうんです。その結果、悪くはないけど、なんか普通だねってものになったり、なにがしたかったのかわからなくなっちゃう。

合間にいくつか著者が手がけたプロダクトの話が挿入されている。そんななか紹介されている、義足の女の子の走る姿が美しい。ただ単に役に立つものを作るだけではなく、使いたいと思えるもの、そして、ファッションのように仲間内で話題に上ったり、選ぶことを楽しめるものへと発展させるのがデザインの進化だと感じた。

なかなかWebやアプリなどのスクリーン上のデザインの世界にいると気づかない、デザインの視点を与えてくれた。

「アイデアの作り方」ジェームス・W・ヤング

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「マツダがBMWを超える日 クールジャパンからプレミアムジャパン・ブランド戦略へ」山崎明

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
品質はいいのに「安くていいもの」しか作れない日本の企業を嘆き、BMWやロレックスなどを例に、ブランドの育て方を語っている。

高級なブランドを作ろうと思ったら何をすればいいだろう。高品質なものを高く売ることから始めたらいいだろうか。おそらく高級なブランドを作るために考えなければならないのは、品質と値段だけではないのだ。ブランドが確立されれば、品質によらず商品が高く売れる。本書は自動車ブランドを中心い多くの例を交えながら、ブランドを語っている。

序盤では、海外のブランドに焦点をあて、それらがどのようにブランドを確立していったかを説明している。例えば、BMWは50年ほど前までは高級と呼ばれるレベルではなかったが、「運転を楽しむ」という個性を追求した結果、今ではメルセデスと並ぶブランドに成長している。そのほかにもロレックスやポルシェ、フォルクスワーゲンのブランド戦略を説明している。

中盤以降は、日本のメーカーに目を向けて、なぜブランド価値が上がらないかを説明している。トヨタがレクサスブランドを別に作りながら、やっていることが変わらないため、結局レクサスはトヨタと同じ大衆車という認識を持たれてしまっている。ブランドの価値を理解して、買収してもブランドの名を残すフォルクスワーゲンなどの海外ブランドと比較して、買収するとともに自社名に変更してしまうソニーなど(コニカミノルタ買収の件)日本企業をブランドの理解が乏しいと嘆いているのである。

そんななか、最後にマツダについて、唯一日本で海外ブランドと渡り合えるポテンシャルを持っていると推している。最近多方面でマツダへの注目の高さを耳にするので、今後にぜひ期待したい。

本書を読んで、海外の有名な自動車ブランドの多くが、実はフォルクスワーゲンの傘下に入っていることに驚かされた。ベントレーもブガッティもランボルギーニも現在はフォルクスワーゲンなんだという。この驚きがまさに、フォルクスワーゲンのブランド戦略がうまくいっている証拠と言えるだろう。ブランドを作るために大切なことがたくさん詰まっている一冊。

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「Intuitive Design Eight Steps to an Intuitive UI」Everett McKay


オススメ度 ★★★★☆ 4/5
「直感的なUIが良い」と、多くの人は言うが、そもそも「直感的なUI」とはなんなのか。これまで曖昧に語られてきたデザイン要素を定義し、すぐれたUIを作るための手法を説明している。

まず、本書では直感的なUIのための指標として次の8つの要素を挙げている。

Discoverability
ターゲットユーザーが目的を達成するためのUIを発見できるか

Affordance
ターゲットユーザーに操作可能なUIであり、どのように操作するかが伝わるか

Comprehensibility
ターゲットユーザーがそのUIの意味を理解できるか

Feedback
ターゲットユーザーの現在の状況や操作の結果を正確、明確かつ即座に示せているか

Predictability
ターゲットユーザーが操作する前にその操作の結果を予測できるか

Efficiency
ターゲットユーザーが不要な動作や繰り返しをせずに最優先事項を完了できるか

Forgiveness
ターゲットユーザーの誤操作を防げるか、誤操作による打撃を最小限に抑えているか、誤操作から簡単に復旧できるか

Explorability
ターゲットユーザーがミスをすることや迷うことを恐れずに使えるか

ちなみに、この8つの要素では、これまでに多く語られていた、一貫性(Consistency), 学習可能(Learnability)は次の理由によって除外されている。

一貫性(Consistency)
世の中には良い一貫性と悪い一貫性があることを認識しなければならない。もしあるUIに対して「この一貫性が何かいいことがあるの?」という問いに「一貫していること」としか答えられないなら、それは悪い一貫性である。

学習可能(Learnable)
直感的なUIの目的は、学ぶ必要性さえもなくすことである。

以上の8つの要素はこれからUIを評価する際に常に意識しておきたいと思った。しかし、次のような例外があることも忘れてはならないだろう。

すべてのUIのDiscoverabilityを向上しようとすると、乱雑なUIになる。Discoverabilityはもっとも重要な要素に絞るべき。
過度のComprehensibility, Predictabilityは多くの説明を必要とする。他のUIの8要素を犠牲にしない程度にする。
削除、入力項目のキャンセルなど不可逆な結果をもたらすUIは、Forgivenessを過度に重視する必要はない。
MVPでは、Discoverability, Affordance, Comprehensibility, Predictability以外の項目は除外してリリースし、以降の項目は次のリリースにまわしてもよい。

以上が本書のもっとも焦点をあてて説明している箇所であるが、他にも役に立ちそうな考え方がいくつか含まれていた。

まずは、直感的UIの段階的指標で、

  • Fully Intuitive
  • Sensible
  • Learnable
  • Guessable
  • Trainable
  • Beyond Hope

その他にもUX達成のための7階層

  • 7.Beauty, visual design, emotion, delight, brand
  • 6.Scenarios, personas, usergoals, value, satisfaction
  • 5.Usability, real user data, conversion, other metrics
  • 4.Design principles, guidelines, patterns, consistency
  • 3.Mechanical usability, business goals
  • 2.Technology, code, UI frameworks
  • 1.Personal opinion, “gut” instinct, “Trust me I’m designer”

というものがあり、こちらは組織の現在のUX達成の立ち位置を測る基準となるだろう。

後半では、Streamlined Cognitive WalkthroughsというUIを評価するための考え方が紹介されている。

  • 1.ユーザーはどのようにしてここですべきことを理解するか?
  • 2.ユーザーが正しい行動をしたら、どのようにそれがわかるか?
  • 3.ユーザーが間違ったことをしたら、どのようにしてそれがわかるか?
  • 4.ユーザーが間違ったことをしたら、どのようにそれを修正できるか

これらは上に挙げた8要素を言い換えたものであるが、組織に広めるためにはこちらの考え方のほうがわかりやすいようにも見える。状況に応じて使い分けていきたい。

全体的に非常に面白く、どの考え方もぜひ組織に取り入れてみたいと思った。取り入れる過程でまた該当部分を読み直したいと思った。

「Designing with Data」Rochelle King/Elizabeth F Churchill/Caitlin Tan

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Spotify、Netflixなどなど、IT業界の著名な企業が、ABテストなどの調査を利用してサービスのデザインを発展させる方法について書いている。

本書ではDataを利用した開発手法を3つに分類している。

Data Aware
Data Informed
Data Driven

Data Drivenは取得したデータを信用してデザインを行うのに対して、Data Awareは参考程度に利用するといった意味である。いずれの方法も取得したデータを利用するが、そのデータの重要視具合が異なるのである。僕自身Data Driven Designという言葉を、「データに忠実にデザインする」という意味に受け取っていたが、かならずしもそうとは限らないのである。

さてABテストの利便性はわかっても、数あるテストしたい項目は、コンテンツやサービスの方向性などの大きな項目から、ボタンの色や文言などの細かい項目まで多岐にわたる。本書では第3章からそんな大量の知りたい項目を体系立てて行っていく手法について説明している。覚えておきたいのは、目的からテストまでを5階層にわけた考え方。

Goal
Problem/Opportunity Area
Hypothesis
Test
Result

そして、探索と評価、グローバルとローカルの2つの軸にテストの内容をプロットする考え方である。

Exploration-Evaluation
Local-Global

デザイナーのなかには、直感やセンスなど経験で培っていた部分を大切にしていて、データによってデザインするという考え方に抵抗を持つ人も多いだろう。しかし、本書で描かれている手法は、まったくそんなデザイナーの創造性を否定しているわけではない。むしろ、データという実際のユーザーの反応にしっかりと目を向けることで、デザイナーの持つ経験や創造性をさらに効果的に発揮させることができると言っている。

なかなか一度読んだだけで実践するのは難しいだろう。今後実践のなかで何度でも読み返したい。

「The Design Method: A Philosophy and Process for Functional Visual Communication」Eric Karjaluoto

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
目的を達するためのデザインを作成する手法について説明している。

僕自身もデザイナーであり15年以上デザインの仕事に関わってきた。現在でこそ作業フローは確立されてきているが、最初の頃はただただ美しくかっこいいものを作ることに大量の時間を費やしていた。きっと現在も多くのデザイナーがそんな美しいだけのデザインを作ることに大量に時間を費やしているのだろう。

しかし、本書の冒頭でも語られているように、デザインとアートは違うのである。アートであれば美しくかっこいいものを作ればそれでよかったかもしれないが、デザインは常に目的がありその目的を達成してこそ「いいデザイン」なのである。

本書はそんなデザインの流れを体系化して説明している。読者によっては反論したくなるようなこともあるだろうが、個人的には納得のいくことばかりで、僕自身が辿り着いた手法とかなり近いと思った。

まず、良くあるデザインの勘違いと、デザイナーが心がけるべきことにいくつかの例を挙げながら触れた後に、著者が辿り着いたDesign Methodの説明へと入っていく。それは次の4つのステージから構成される。

1.Discovery
データを収集し、観察と分析から状況を知る

2.Planning
問題とニーズを突き止め戦略と実行可能な計画を作る

3.Creative
考えうる案を検討しデザインの方向性を決める

4.Application
試験と分析を繰り返しながらデザインを適用する

デザイナーによってその作業範囲はそれぞれであるが、実際に多くの人が「デザイン」という言葉からイメージするのは「Creative Stage」以降なのではないだろうか。残念ながら今でも多くのデザイナーや制作プロダクションが1のDiscoveryステージと2のPlanningステージにほとんど時間をかけていないのが実情である。

4つのステージを順を追って細かい進め方、陥りやすい間違いなどについて詳細に説明している。部分的にでも参考にできそうな部分はたくさんあるだろう。

個人的には4のApplicationステージの進め方が印象に残った。本書ではデザインの作成段階でも常に、適応しつつ結果を見て調整していくとしている。つまり、少しデザインを適応しては結果を確認し、その結果によってその先のデザインの適用を調整していくというのである。

確実に機能するデザインを作るという点で非常に納得ではあるが、そのようなテストをしながらデザインを適用するためには、クライアントとの信頼関係づくりがかなり重要となるだろう。実際本書では何度もクライアントとの関係づくりの重要性に触れている。クライアント側の担当者目線でデザインがどのように見えるか語っている部分も印象的だった。確かに、ほとんどデザインのことを知らないなかで、デザイナーと打ち合わせて決めていかなければならない、クライアント側の担当者の立場に立つと、今までとは違った部分が見えてくる。

デザイナーだけでなく、デザインプロジェクトの担当者としてこれからデザイナーを探さなきゃいけない人など、デザイナーに関わる全ての人にとって学べる内容がたくさん含まれている。

関連書籍
「The 80/20 principle」Richard Koch
「The Dip」Seth Godin
「The Elements of Typographic Style」Robert Bringhurt
「Good to Great」Jim Collins
「How to Be a Graphic Designer without Losing Your Soul」Adrian Shaughnessy
「Positioning」Al Ries and Jack Trout
「Whatever You Think the Opposite」Paul Arden
「Zag」Marty Neumeier

「Steal like an Artist」Austin Kleon

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アートを作る上での心構えを著者の経験から語る。
タイトルにもあるようにアートを作りたければ「アイデアを盗め」と堂々と語っている。確かに僕自身もデザインに関わってきて思うことだが、上達の近道はいいデザインを真似ることである。「それは盗作ではないのか?」と思う人もいるだろう。そんな問いに本書はこんな風に答えてくれる。

すぐれたアーティストは何もないところからは何も生まれないことを知っている。すべてのアートは以前もあったものの上に作られるのだ。完全にオリジナルなものなど存在しない。

アートに限らず、スポーツでも音楽でも、いいものを真似ようとして努力する中で、それでもその人の体格や能力でどうしても真似できない部分に出会う。そこを自分なりに工夫した結果、オリジナルが生まれるのだという。
ちなみに良い盗み方と悪い盗み方をこう書いている。良い盗み方は多くのものを盗むこと、悪い盗み方は一つのものを盗むこと。納得がいく部分があるのではないだろうか。
また、著者は仕事以外に趣味を持つことを推奨している。一見関係ないように見えることでも、趣味を持つことは何かしらいい影響を与えてくれるのだと。たしかに、いい仕事をする人は何かしらの趣味にも打ち込んでいるような気がする。
何か新しいものを創り出すことを考えた時、人の真似をするのはどこか後ろめたいもの。でも世の中の創造的なものはみんなそういうステップを踏んで生み出されたのだと、堂々と語ってくれる点がなんとも清々しい。

「A Win Without Pitching Manifesto」Blair Enns

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
デザイナーとして他のデザイナーやデザイン企業と差別化を図る方法について語る。
本書で繰り返し主張していることはタイトルにあるように「Win Without Pitching Manifesto」である。クリエイティブな業界で仕事をする人は、仕事を得るためにコンペに参加して、無料で提案内容を披露したり、値段を安くすることで、勝負するデザイナーや企業を見たことがあるだろう。ひょっとしたら自分自身がそのようにして仕事を取ってきているかもしれない。
しかし、値段を安くすることをしている限り、クライアントを完全に満足する仕事はできないというのである。そして、一度値段を安くすると、その負のスパイラルから永遠に抜けられないというのだ。「楽しい仕事をしているから、忙しくても満足」では続かない。本書はそんなクリエイティブ業界のよくある状況から抜け出すための次の12の話を語っている。

We Will Specialize
We Will Replace Presentations With Conversations
We Will Diagnose Before We Prescribe
We Will Rethink What It Means to Sell
We Will Do With Words What We Used to Do With Paper
We Will Be Selective
We Will Build Expertise Rapidly
We Will Not Solve Problems Before We Are Paid
We Will Address Issues of Money Early
We Will Refuse to Work at a Loss
We Will Charge More
We Will Hold Our Heads High

印象的だったのは、コンペでプレゼンをすることを、医者に例えてさとしている点である。「医者は診察をしないうちに薬を処方したりしない」と。つまり、クライアントの問題点をしっかり調査しないうちに提案をするのは間違っているというのである。
読み終えて思ったことだが、本書はクリエイティブな仕事の仕方について書いているが、自らの価値を少しずつ高めていく考え方としては、必ずしも仕事に限ったことではなく、人間関係にも適用できるかもしれないと感じた。

「It’s not how good you are, it’s how good you want to be.」Paul Arden

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
クリエイティブに関わる人間が心がけるべき言葉に溢れている。手元に置いておいていつでも見返せるようにしたいと思える本。

Don’t look for the next opportunity. The one you have in hand is the opportunity.
次のチャンスを探すな、今目の前にあるものがチャンスなのだ。
Do not seek praise. Seek criticism.
賞賛を求めるな、批判を求めろ

ぜひ手にとって、1つ1つの言葉を噛み締めてもらいたい。

「UI is Communication: How to Design Intuitive, User Centered Interfaces by Focusing on Effective Communication」Everett N McKay

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
UIについて語る。
タイトルも示しているように、本書がひたすら繰り返すのは、UIはコミュニケーションである、ということである。例えば、新宿駅で本屋の場所をたずねたときに、ニューヨークの本屋を紹介するというのは普通のコミュニケーションであればありえないことだが、世の中の多くのサイトはそのようなことを平然と行っているのだ。
同様に同じ事を繰り返したずねるのも普通のコミュニケーションであれば失礼で、相手を深井に感じさせることである。しかし、僕らは何度もメールアドレスを入力する事があるし、同じエラーメッセージが何度も表示される事がある。また、興味深いのは言葉の使い方である。「You failed….」(あなたは失敗した)のようにユーザーを避難する言葉ではなく「Something went wrong.」(異常が発生しました)のようにシステム側に問題があることを示唆する言葉を使うべきだというのである。
なぜこのようなことが起きるかというと、UIデザインは未だにシステム目線で行われているからなのだ。それを表すのに次のような印象的な言い方をしている。

すべてのUI要素はそこにあるべきだからそこにあるのであって、単に物理的にはまるからそこにあるのではない。僕らはUI要素でテトリスをやっているわけではないのだ。

上記のような内容を、徹底的に実際のサイトやアプリを例にとって解説してくれる。本書は世の中のすべての物の見方を変えてくれるだろう。UIデザインに関わる人は必読の一冊。

「デザインの授業 目で見て学ぶデザインの構成術」佐藤好彦

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
デザインの発展の歴史に沿って、デザインの考え方について語る。すでに普段から心がけていることもあるが、一方で新たに気付かされる考え方もあり、非常に面白い。個人的に印象的だったのは「神はサイコロを振らない」というもので、本来は自然界に対してアインシュタインが言った言葉だそうだが、その言葉をデザインに対して使用している。つまり、デザイナーはデザインにおける神であり、そのデザインのなかで適当に配置されていたり適当に選択されたりする色があってはならない、ということである。

また、デザインの発展において、過去には欠点とされていたものが、その欠点がなくなったあとで「らしさ」としてデザインに取り入れられるという考えも印象的だった。たとえば、本来文字を印刷するための活版印刷がその技術の未発達ゆえに紙面にへこみをつくってしまうことがあった。それが技術の発展した今では、あえてへこみをデザインすることで「らしさ」を表現できるのである。

デザインに対するモチベーションをあげてくれる1冊。アレックス・スタインワイスやアール・ランドといった歴史的なデザイナーについて知ることもできた。同じ著者に「デザインの教室」というのもあるようなのでそちらも読んでみたい。
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「利休にたずねよ」山本兼一

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第140回直木賞受賞作品。
千利休はその唯一にして確固たる美学ゆえにその地位を上りつめた。しかし、その美に対する信念ゆえに秀吉に疎まれ切腹を命じられる。

千利休の名前を聞いた事のない人など日本人でいるのだろうか。しかし、実際に彼が何をやっていたのか、そう考えると茶室に関わる何か、としか知らない。茶室や茶という文化が同時どのように人々に捉えられていたかすら普通は知らないだろう。本書は千利休の生活や行き方、そしてそこに関わる人たちの視点を通じてまさにそんな当時の様子を見せてくれる。

こういう風に書くと、ひどく退屈な歴史小説のように聞こえるかもしれないがそんなことはない。本書で何度も描かれる、利休の美しい物にたいする考え方は、永遠と受け継ぎたいと思わせる。むしろ日本人の物作りに対するこだわりの原点があるようにも感じられる。

本書を読むと世の中のすべてが違って見える。人の表情、仕草、歩き方、建物の形状、物の置き方…。すべてにおいてもっとも美しい方法というのがあるに違いない。きっと利休であれば最も美しい方法を選択しただろう。
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