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悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

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深い物語

いろいろ考えさせられる、深い物語

生き方を考える

人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「鹿男あをによし」万城目学

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
突然奈良の女子校で先生をすることになった小川(おがわ)の不思議な体験を描く。

女子校で期間限定で先生をやるという羨ましいのかつらいの判断し難い設定で物語は始まる。赴任初日から堀田(ほった)という生徒を中心に思春期の女生徒たちに翻弄されるとともに、奈良公園のシカとの不思議な交流によって、小川(おがわ)は人類を救う重要な役目にも関わることになる。

中盤からは、顧問となった剣道部の活動と、大阪と京都にもある姉妹校との対抗戦である大和杯によって、小川(おがわ)がシカから託された使命は少しずつ複雑になっていく。

本書の魅力は、個性豊かな登場人物だろう。特に際立つのは女生徒の堀田(ほった)の存在である。初日に遅刻の言い訳をしたことから小川(おがわ)は常にその動向を意識をしてしまう。

本書はドラマ化されており、多部未華子が堀田(ほった)の役を演じていたが、あらためて原作を読むとハマり役だと感じた。

奈良にはなぜ鹿がたくさん住んでいるのか。また、先生の一人が考古学を趣味としていることから、卑弥呼の墓の話が登場し、卑弥呼とはどこまで存在が確認されているのかなど、日本の神話や歴史にあらためて興味をむけてくれた。また、物語としては何よりもシカが話すという設定が新鮮で、著者の他の作品も何冊が読んでみたいと思った。

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「テスカトリポカ」佐藤究

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第165回直木賞受賞、第34回山本周五郎賞受賞作品。メキシコから逃れたカルテルのリーダーや日本の医療界から追放された医師などが手を組んで新たな犯罪組織を作っていく。

子供の臓器を販売して利益を稼ぐ等犯罪組織を作っていく様子を描く。本書の特徴は、元麻薬カルテルを支配していた一家で、対立する麻薬カルテルへの復讐を誓うバルミロが、アステカの文化の影響の元に育ったことだろう。バルミロの過去が描かれる際、その祖母であるリベルタのアステカのしきたりへの傾倒が細かく描かれる。

少しずつ犯罪組織が構築される中で、多くのはみ出しものたちが登場し、また裏切りによる処刑などが行われる。

どの人物も麻薬や覚醒剤に溺れ、権力や復讐を欲するなどしており、残念ながら、誰一人として共感できる登場人物はいなかった。むしろ、アステカのしきたりや言葉が繰り返し登場し、またアステカが人間を生贄にする文化のように描かれており、どこまでが史実でどこまでが、噂の域を出ないものなのか、とアステカという国や文化に対する好奇心を植え付けられた。

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「What She Found」Robert Dugoni

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Tracyの元に、25年前に失踪した母親を探して欲しいという依頼が舞い込む。

失踪した女性は当時新聞社のレポーターであり、その調査が失踪に関連があるとみて当時の事件を洗ううちに、Last Lineという過去の麻薬取り締まり部隊の汚職の可能性に近づいていく。なぜLast Lineは解体されたのか、なぜLast Lineの構成員は秘密にされているのか。そして、その過程でTracyの前の部署の仲間であるFazとDelのルーキー時代の経験が明らかになっていく。仲間の過去の過ちを明らかにするべきか悩むながらも、少しずつ真相に近づいていく。

また、警察の予算のためにメディア受けを求める所長Weberとの衝突も面白い。今回は20年以上前の出来事を扱っているために告発できないという法律、Statute of limitations(出訴期限法)という法律が何度も登場し、日本とアメリカの法律の違いなども知ることができた。

どうやら、Last Lineという麻薬取締部隊を描いた物語もあるようなので、そちらも機会があったら読んでみたい。

「A Promised Land」Barack Obama

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第44代アメリカ合衆国大統領のバラク・オバマがその大統領としての出来事を描く。

前半では、オバマ氏が政治に関わり大統領に就任するまでを描き、中盤以降は大統領としての苦悩を描く。

前半の山場は、大統領になる理由を妻のミッチェルに説明した言葉である。

I know that that day I raise my right hand and take the oath to be president of the United States, the world will start looking at America differently. I know that kids all around this country-- Black kids, Hispanic kids, kids who don't fit in -- they'll see themselves differently, too, their horizons lifted, their possibilities expanded. And that alone… that should be worth it.
私が右手を上げて米国大統領になる宣誓をしたその日、世界の米国を見る目は変わるだろう。この国中の子供たち、黒人の子供たち、ヒスパニック系の子供たち、社会に馴染めない子供たちも、自分自身を違って見るようになり、視野が広がり、可能性が広がることを私は知っています。それだけで.価値があるはずだ。

リーマンショック、医療保険、ロシアとの国交、移民問題、原油流出、ビンラディンの殺害などさまざまなことに取り組んでいることがわかる。一つ一つの決断に多くの人の人生が関わるだけではなく、それを同時に抱えていることに責任の重さが読んでいるだけで伝わってくる。特にアルカイダの最高指導者であるオサマ・ビンラディンを確保するミッションを進行中に公式の場に出て何も平静を装うというのはとてつもないプレッシャーだっただろう。

全体的に移民を受け入れるアメリカという国の政治の難しさを感じただけでなく、アメリカという国の政治の構造も知ることができた。特に日本と同様にアメリカも共和党と民主党が政策の正しさに関係なく足を引っ張り合っていることを知って、残念に思った。

ただ、全体的にかなり長い。政策やそれに関する苦悩だけではなく、それに関わる人々の経歴や印象的なエピソードまで書くから長くなるのだろう。共に仕事をしてきた人間のエピソードを省くわけにはいかないし、編集者も削除を勧めることはできないなど、事情はわかるが、もう少しコンパクトにまとめられるのではないかと感じてしまった。

本書がオバマ氏が大統領を退いた後に出版されたものだったので、大統領の8年をすべて描いていると期待したが、2011年のオサマ・ビンラディンの殺害が本書の最後のエピソードとなっていた。機会とエネルギーがあったら以降の4年間を描いた書籍も読んでみたいと思った。

「線は、僕を描く」砥上裕將

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
両親を失って親戚の家に身を寄せながら大学生活を送っていた青山霜介(あおやまそうすけ)は、アルバイトをきっかけに水墨画家篠田湖山(しのだこざん)に出会い、水墨画を学ぶこととなる。

霜介(そうすけ)の水墨画との出会いと学びを通じて、水墨画の魅力が伝わってくる。水墨画には4つの基本となる画題、蘭、竹、梅、菊があり、それらの習得に悪戦苦闘する霜介(そうすけ)の様子とその周囲の人間模様を描いている。

特に同じように水墨画に情熱を注ぐほかの登場人物の存在も物語をひきたてている。そのうち一人は、水墨画家の孫であり、霜介(そうすけ)と同じ年齢の千瑛(ちあき)であり、技術に優れている一方で、師である篠田湖山(しのだこざん)に認めらたいという思いを持ちながら、試行錯誤を続けるのである。元々は1年後の霜介(そうすけ)と千瑛(ちあき)の勝負という形で始まったが、水墨画に真剣い向かう中で少しずつお互いに心を開いていくのである。

全体的に物語を通じて、水墨画について興味を掻き立てらるだろう。他のアートと水墨画の大きな違いとして、水墨画におちては線をひくことと、塗ることは同時に行なわれるということである。また、本書では余白で表現をすることの重要性も語っており、水墨画に限らず、絵画やデザインでも通じる考え方だと感じた。

本書は水墨画がテーマだが、一つのことに情熱を注ぐことの魅力を改めて感じた。

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「火のないところに煙は」芦沢央

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
著者は自分の一つの不思議な体験をベースにホラー体験を集めて本にすることにした。そんな体験を綴った物語である。

第一話の「染み」のみが著者自身が体験した出来事で、以降は少しずつ関係者や読者から集まってきた奇妙な体験を語っている。どれも怖い話ではあるが、同じぐらいその周囲の登場人物のふるまいが興味深い。どれも身近な人は過去の知り合いを思い浮かべてしまう。それぐらいそれぞれの人物描写に説得力があった。

個人的に印象的だったのが第四話で拝み屋が語る言葉である。

その霊との縁を作りたくなければ、寄り添うように語りかけてはいけません。

本書がどこまで実話なのかはわからないが、著者自身の体験が他の体験を呼び寄せているかのように感じる。霊やホラー体験に限らず、あるものに意識を向けるとそれに関連する人や情報が集まってくるというのはよくあることだろう。呼び寄せたくないものは普段はできる限り考えないようにするべきだと感じた。

個人的に印象に残っているホラー系小説は小野不由美の「残穢」なのだが、本書も現代のホラーという印象で面白くて一気に読んでしまった。

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「The Diamond Eye」Kate Quinn

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
父親のいない息子に射撃を教えるために、射撃のコースを受けていたMila Pavlichenkoは、ドイツがソ連に侵攻したことで歴史家になる夢を保留して祖国を守るために兵士に志願する。

若くしてシングルマザーとなったMilaが狙撃手としてドイツ兵と戦う物語である。物語は若くして子を持ち夫との離婚手続きを進めながらも歴史家を目指すMilaが、ドイツがソ連への侵攻を開始したことによって大きく人生を狂わされ、やがて多くの仲間と共に狙撃手として活躍する様子と、一方でその数年後、Milaを含むソ連の兵士たちがアメリカのホワイトハウスを訪れる様子を並行して描いている。

ドイツ兵と戦う戦場での物語では、少しずつ信頼できる仲間と出会い、女性ながらも確固たる地位を築いていく様子が描かれる。一方、ホワイトハウスででは、女性が戦場で狙撃手として戦うことに理解のないアメリカ人を相手に、ヨーロッパ戦線にアメリカも加わってもらうことの必要性を各地で訴えるMilaと、それを理解しようとするルーズベルト夫人の様子が描かれ、また、Milaを大統領殺人の犯人に仕立て上げようとするる悪意ある視線が描かれていく。

序盤はオデッサが美しい。本書はロシアのウクライナ侵攻以前に執筆されたということであるが、Milaがウクライナ出身でありながらもロシア人として埃を持って戦っている点が、現在の状況を考えるとなんとも悲しく感じる。

全体を通じて、Milaはどこにでもいる普通の母親だったことがわかる。普通の母親が、息子、友人、家族のためにできることをしようとした結果、狙撃手となったのである。最初はフィクションだと思って読み進めていたが、あとがきによると実はかなり実話に近く、実際にMilaはエレノア・ルーズベルトと親しくしていたことがわかる。エレノア・ルーズベルトという人物に対してももっと知りたくなった。

また、The HuntressのNinaもそうだが、ソ連は女性を兵士として戦場に送り出していた数少ない国だったのだと知った。今回の物語のなかでまたMilaの友人たちで魅力的な登場人物が出ており、著者もあとがきでそのうちその女性たちを主人公に物語を書きたいと書いてあったので楽しみである。

「本と鍵の季節」米沢穂信

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
図書委員となった堀川(ほりかわ)は、同じく図書委員の松倉詩門(まつくらしもん)とさまざまな出来事に関わることとなる。

堀川(ほりかわ)と松倉(まつくら)は図書委員として少しずつ仲良くなっていく。先輩の家にある金庫の番号を解明したり、ヘアサロンに髪を切りに行ったりするなかで、2人の知識と鋭い観察眼が活きる様子が描かれる。

現代の新鮮なミステリーという印象である。軽い気持ちで楽しむのにちょうど良いだろう。

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「お金に困らない人が学んでいること」岡崎かつひろ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
学びを続けることの重要性を説明している。

全体的に学ぶ習慣のない人向けの内容である。毎日学ぶことが日常の中に構築できている人にとってはそれほど目新しいことはないだろう。

全体的によく言われていることの寄せ集めという感じで、とくに著者自身が新しく調べた事実などはない。煽ったタイトルだったので、期待していたわけではなかったが、予想通り、人の役に立つための本ではなく、著者のの販促のための本という印象である。著者がClubhouse(iOSアプリ)が好きなのが伝わってきた。

タイトルでは何を学ぶべきかを語っているように見せて、中身では学び続けることの重要性や学び方を語っている、という点も煽って売ろうと意図が見えすぎて残念である。こういう手法が著者の信頼を落としていることに業界全体として気づいてほしい。

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「星落ちて、なお」澤田瞳子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第165回直木賞受賞作品。明治時代、日本画家の娘として生まれたとよの画家としての人生を描く。

明治から大正にかけての6つの時期のとよの人生を描く。画鬼とよばれた父暁斎(きょうさい)の元で育ち、絵を学んでそだったとよは、暁斎(きょうさい)が亡くなったことで、自分の絵のスタイルや、その生き方を悩む様子を描いている。

また、とよだけでなく同じように父の影響を受けて、自らのスタイルに固執する兄周三郎(しゅうさぶろう)や、逆に絵の才能を開花させられなくて早々に居場所を失った弟の記六(きろく)など、画家の家に生まれたさまざな人生が見える。

日本画家として知っているのはせいぜい、狩野家、歌川家程度だったが、本書を読むと、歴史に名を残せなかった多くの画家たちがいたことがわかる。そして、現代の多くの芸術家と同じように、流行りや廃りのなかで自らのスタイルと求められるスタイルのなかで葛藤していたことがわかる。

後半には、関東大震災の場面があり、東北大震災と同じように、当時の家族を心配し、家まで歩いて行く様子が描かれている。物語の中で関東大震災に触れるのは初めてなので新鮮である。随分昔の話のように感じるが実際にはすでに電車が走っていたという事実に気付かされた。

全体的に、芸術家としての生き方の難しさを改めて感じさせられた。

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「エフォートレス思考 努力を最小化して成果を最大化する」グレッグ・マキューン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
努力をしないで成果を出す方法を語る。

序盤で、むやみに努力することの危険性を語り、その後、楽して成果を出すための考え方を順を追って意説明している。ポイントは、

  • 楽しく進めること
  • 十分な休息をとること
  • まず始めること
  • 失敗を積み重ねること
  • ゆっくり進めること
  • 大事なものにフォーカスすること
  • シンプルにすること

である。どれも言われてみれば当たり前なことばかりだが、例を交えて説明しているから面白い。

多大な犠牲を払って成功した人々と同じくらい、簡単に成功した人々もいる。ただ、苦労の少ない成功は、物語になりづらいだけなのだ。

努力をするのは悪いことではないが、努力したとしても報われるとは限らない。努力を盲信している人にとっては良いきっかけになるのではないだろうか。

僕自身は楽しいことじゃないと身につかない、という考えで、著者の考え方に近いが、それでも改めてその考えに触れると、自分の考えの純度が上がる気がする。

昨今リモートワーク化が進んでいるが、一方でコロナ禍が収束してオフィスワークに戻して行っている企業もある。しかし、本書を読んで改めて、電車のなかで毎日2,3時間を過ごすオフィスワークスタイルは無駄な努力で決して戻るべきではないと感じた。

【楽天ブックス】「エフォートレス思考 努力を最小化して成果を最大化する」
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「宝島」真藤順丈

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第160回直木賞受賞作品。戦後のアメリカの占領下の沖縄で生きるグスク、レイ、ヤマコの3人の若者たちを描く。

物語の舞台は1950年代の沖縄から始まる。戦後の混乱の続くなかで、若者たちは戦果アギヤーとよばれる活動に励む。戦果アギヤーとは米軍基地からの窃盗を働く行為であり、食料品などを盗んで地元の人に配ることなどもあったことから、むしろ英雄視されていたというのである。

序盤から、自分がどれほど沖縄の歴史に疎かったかを思い知らされる。1970年以降に生まれた自分には、沖縄とは一時期アメリカの領土となっていたものがのちに変換された土地という程度の認識しかない。しかし、その混乱のなかで育ってきた若者たちにとっては、まさに人生を左右する出来事だったのである。この物語はそんな混乱の沖縄で思春期を迎えた3人の幼馴染、グスク、レイ、ヤマコの目を通じて一気に物語に引き込んでいく。

3人は、戦果アギヤーの際に行方不明になった3人の英雄のオンちゃんの影を探しながら、自分たち自身もオンちゃんのような沖縄の英雄になりたいという思いを抱いて生きていく。グスクは警察官になり、ヤマコは先生になり、レイは反乱分子となりながらそれぞれの答えを見つけようとする。

やがて、沖縄返還の話が持ち上がる中で、島民も軍の存在に依存する人たちと、軍の圧政に苦しい返還を待ち望むものなど異なる考え方が生まれる中、アメリカ軍の傲慢なふるまいに怒りが積み重なっていく。

さてはアメリカーがやったか、また島民を轢いたな。
基地から吹き荒れる人災に公正な裁きがくだされないことに、住民たちはとっくに忍耐の限界を迎えている。

そんななか3人は英雄オンちゃんの消息に近づいていくのである。

オンちゃんは、帰ってきてたんだなあ

今まで、同じ日本にありながらもほとんど知らなかった沖縄の辿ってきた歴史を、3人の若者の感情と共に、生々しいほどに感じることができた。情けないことにゴサの動乱もVXガス放出事件も、軍用機墜落事故についてもこの物語を読んで初めて知った。

27年間のアメリカ統治がそこで暮らす人々に大きな爪痕を残したことやその時代を生きた人々の強さを感じられる作品。

戦果アギヤー
アメリカ統治下時代の沖縄において、米軍基地からの窃盗行為を行う者たちを意味する言葉。「戦果を挙げる者」という意味である。(Wikipedia「戦果アギヤー」)

宮森小学校米軍機墜落事故
1959年6月30日にアメリカ合衆国統治下の沖縄・石川市(現:うるま市)で発生したアメリカ空軍機による航空事故。(Wikipedia「宮森小学校米軍機墜落事故」)

レッドハット作戦
沖縄本島の米軍基地知花弾薬庫に極秘裏に毒ガスが貯蔵されていることが明るみに出たのをきっかけに、これを島外に移送するため1971年に実施されたアメリカ軍の一連の作業である。(Wikipedia「レッドハット作戦」)

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「心淋し川」西條奈加

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第164回直木賞受賞作品。江戸の千駄木町の一角の心町(うらまち)と呼ばれた場所で生きる人々の5つの物語を描いている。

それぞれの人々が時代の流れの中で、好きな人と好きなことの2つの間で揺れ動く様子が見える。

過去は簡単に歴史の一部になってしまう。しかし、そんな歴史の一部の江戸という時代にも、歴史に残らない多くの人々が存在していて、現代の人々と同じように、人間関係や自らの存在意義や恋愛に悩みながら暮らしていたのだと気付かされる。

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「異文化理解力」エリン・メイヤー


オススメ度 ★★★★☆ 4/5
異文化に対する取り組み方を語る。

先日読んだ「NO RULES: 世界一「自由」な会社、NETFLIX 」において、著者が異文化理解力の考えに触れており、もっと深く知りたいと思った本書を手に取った。

本書の冒頭でも語っているように、「気が利く」という存在は「文化」に依存しする。つまり、ある文化で「気が利く」人間やふるまいが、他の文化ではまったく異なる存在として受け取られることがありえるということである。つまり、グローバルビジネスの機会が増えるに従って、異文化を理解する能力へのニーズが高まっっているのである。

本書ではそんな文化の違いを理解する鍵を、8つの指標に基づいて例を交えながら説明している。

  • コミュニケーション(ローコンテキストかハイコンテキスト、)
  • 評価(直接的なネガティブフィードバックか間接的なネガティブフィードバック)
  • 説得(原理優先か応用優先か)
  • リード(平等主義か階層主義か)
  • 決断(合意志向かトップダウン式)
  • 信頼(タスクベースか関係ベースか)
  • 見解の相違(対立型か対立回避型か)
  • スケジュール(直接的な時間か柔軟な時間か)

よく日本人は「空気を読む」とか、海外では発言しないと誰も聞いてくれない、と聞くが、それは「コミュニケーション」にあたる部分で、文化の違いとは上にあるようにコミュニケーションだけが原因ではない。例えば同じハイコンテキストなコミュニケーションスタイルを持つ中国人と日本人は、すべてにおいてうまくいくわけではない。なぜなら決断方法も異なるからである。中国はトップダウン式に決断し、日本は合意による決断をする傾向があるのである。

本書では8つの指標を様々な例や実体験を交えて説明し、さらにその違いに対する対処方法まで紹介している。

ちなみに、この指標はその国民のすべてを一つの型にはめるものではなくあくまでも傾向を捉えるためのもので、同じ国民の中にもそれぞれ個性があり違いがあることを否定しているわけではない。どんな傾向があるかを知り、事前に心構えを持つことによって不必要な行き違いをを少なくすることができるのである。

日本とその他の国の差だけでなく、日本全体の傾向や、日本の職場で自分が居心地が悪いと感じる時の理由にも気づくことができた。僕自身は信頼をよりタスクベースで作る傾向があり、日本人全体はより関係ベースなのだと気づいた。だから自分は飲み会や歓迎会など不必要だと思う一方、多くの人が今でもそのような会の催しにこだわり続けるのだろう。

これから少しずつグローバルな関わりが増える中で、相手の文化によってある程度の心構えを持つことだけでなく、どんな文化出身の上司や同僚の言動にも戸惑わないで受け止められることが大事だと感じた。常に手元に置いておきたいと思った。

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「少年と犬」馳星周

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第163回直木賞受賞作品。震災の爪痕が残る東北から九州まで、様々な人が多聞(たもん)という犬と出会う物語。

日本の各地で生活する人たちが、シェパートに似た犬、多聞(たもん)と出会い、生活を共にする。東北を中心に描かれる序盤は、震災後の混乱の様子が伝わってくる。また、多聞(たもん)に出会う人々も、必ずしも日本人をだけでなく、海外から日本に出稼ぎに来ている外国人の目線でも描いている点が印象的である。

そして、それぞれが、多聞(たもん)と行動をともにするうちに、多聞(たもん)が南の方向へ行きたがっていることを悟り、別れの際に南へと送り出していくのである。物語の舞台も少しずつ物語は南へ移動し、やがて、多聞(たもん)の目指していたものが明らかになる。

特に物語展開に驚きはないが、素直な優しい人間と動物の物語である。

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「思わずクリックしたくなる バナーデザインのきほん」カトウヒカル

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
バナーデザインの考え方を様々なアイデアとともに例を交えて解説している。

バナーデザインを始めたばかりの人向けの内容ではあるが、デザイナー歴20年以上になる僕も、いくつか気づきを得ることができた。ぜひ今後デザインで迷った際に思い出したいと思ったことは

  • 意図にあった装飾やあしらいを使う
  • 縦書き
  • 車体
  • 作字

である。なかでも漢字を作字するアイデアは、日本のデザインで使える独自性を出すための有効な方法だと思った。

作者は基本的にPhotoshopでバナーを作っているようで、llustratorでバナーを使うことが多い自分とは、出来上がるバナーの傾向に違いがあることを改めて感じた。異なるツールも試してみたいと思った。

例として上がっているバナーに、デザイン的なツッコミが多々思いついたが、意図した説明をするために、良い例と悪い例を試行錯誤しながら作ってくれたことだろう。このように知識を分けてくれるデザイナーの方々には感謝しかない。

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「A Rule Against Murder」Louise Penny

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ArmandとReine-Marieの夫婦は結婚記念日を祝うためにホテルに滞在していた。しかし台風の晩に別の宿泊客のMorrow一家のJuliaが亡くなったことで、Armandは捜査を始める。

真相解明のために、ホテルのスタッフやMorrow一家の家族から話を聞いていく中で、Morrow一家の家族の闇が見えてくる。Morrow家は、かつてそのホテルに大きな寄附をし、すでに他界した父親の銅像のお披露目のために集まっていた。お互いへの思いを打ち明けていくなかでThomas,Julia,Peter,Mariannnaの4人の兄弟の親の愛への渇望が明らかになっていく。

そんなMorrow家のなかで再婚相手としてMorrow家の一員となりその家族の様子を一歩離れた位置から見ているFinneyの視点が面白い。

The only thing money really buys? Space. A bigger house, a bigger car, a larger hotel room. But it doesn't even buy comfort. No one complains more than the rich and entitled.
お金で買えるものはなんだとおもうかい?場所だ。大きな家、大きな車、大きなホテルの部屋。しかし、それでは快適さは得られない。お金持ちや地位のある人ほど不平を言うものだ。

また、Armandの父親の過去も明らかになる。「臆病者」と呼ばれた父親を持ったことで周囲の人間からは馬鹿にされたり、同情されたりするが、Armandの父親に対するの思いの告白から違ったの側面が見えてくる。それは自らの過ちを認めて行動を変えられる尊敬すべき人間の姿である。

父親になると、子供のまでで常に自信に満ちている人間でありたいという思いがあるのは事実である。しかし、その一方で、間違っていたらそれを認めて謝罪し、自らの行動正せる人間でありたい、と改めて感じた。

正直、主人公の刑事の滞在中のホテルで殺人事件が起きるという古臭い設定に、序盤でがっかりしかけたが、最終的には両親の愛情に飢えた子供たちと、子供を愛した親の悩みながら生きる姿を感じることができた。

「くもをさがす」西加奈子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
コロナ禍で移住先のバンクーバーで乳がんが見つかり、その治療の様子を描く。

直木賞受賞作品の「サラバ!」が有名な著者が、エッセイとして自らの乳がんの治療の経緯と、バンクーバーの生活の様子を描く。

乳がんの診断から順を追って描いている。そのなかで、バンクーバー生活の中で著者が気づいた、日本との文化の違い、医療の違いなどが見えてくる。無責任なバンクーバーのスタッフたちに憤慨する一面があるかと思えば、そのほがらかなスタッフたちに勇気をもらう場面もあり、日本とバンクーバーを比較してどちらが良い悪いと単純に言えないことを改めて感じさせられる。

また、乳がんという女性特有の病気を患った人間の視点や生活も伝わってくる。抗がん剤治療や放射線治療のつらさのなかで、多くの友人たちに恵まれて乗り越えている様子が感じられる。

両胸があったところに、2本の赤い線が引かれていた。真っ直ぐ、定規で引いたような線だった。…本当に綺麗な傷跡だった。
書くことを、身体がどうしても拒むほどのいにくい瞬間があったし、書くことを、やはり身体がどうしても許してくれない美しい瞬間もあった。

病気に悩んでいる人が勇気をもらえる内容である。

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「13階段」高野和明

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
犯行当時の記憶を失った死刑囚の無実を証明するために、刑務官の南郷正二(なんごうしょうじ)は出所したばかりの三上淳一(みかみじゅんいち)とともに調査を始める。

刑務官の南郷正二(なんごうしょうじ)と三上淳一(みかみじゅんいち)が調査をする。その過程で淳一(じゅんいち)の刑務所生活の原因となった2年前の傷害致死事件と、南郷(なんごう)の刑務官になる経緯など、少しずつ二人の過去が明らかになっていく。

興味深いのが南郷(なんごう)の刑務官の葛藤である。南郷(なんごう)は死刑囚の処刑を担当したことから、2人の人間を殺したのに裁かれていないと悩み続けているのである。処刑を担当する刑務官の様子も描かれるが、処刑を担当する刑務官が、自分の罪悪感から逃れるために死刑囚の過去の犯罪を知ろうとするところが興味深い。

最後はそれまで散りばめられていた伏線が回収されていくが、若干詰め込みすぎな印象もある。南郷(なんごう)を中心に、世間にあまり知られていない刑務官の職務やその葛藤に焦点をあてて、物語自体をもう少し単純にしてもよかったのかもしれない。

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「言葉にできるは武器になる。」梅田悟司

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
電通のコピーライターである著者が、伝わる言葉の生み出し方を語る。

序盤は、内なる言葉の重要性を語っている。考えることを内なる言葉を発することとしていて、考えてなければ、伝わる言葉は生み出せないというのである。そして「伝わる」にも4つの段階があるとしている。

  • 不理解・誤解
  • 理解
  • 納得
  • 共感・共鳴

中盤からは、考えを深める手法を紹介している。書き出して考えを整理する方法やグルーピングなど一般的に広く知られている手法もあったが、中でも印象的だったのは、「T字型思考法」「真逆を考える」である。

T字型思考法とは「なぜ?」「それで?」「本当に?」を繰り返す手法で、覚えやすく、考えの解像度を上げるために有効だと感じた。

また、真逆を考えるでも真逆にも複数あるという考え方がが新鮮である。

  • 否定としての真逆
  • 意味としての真逆
  • 人称としての真逆

そのほかにも、言葉にプロセスとして5つの方法を紹介している。

  • たとえる(比喩・擬人)
  • 繰り返す(反復)
  • ギャップをつくる(対句)
  • 言いきる(断定)
  • 感じる言葉を使う(呼びかけ)(誇張・擬態)

最後は、より良い言葉を生み出すために著者が心掛けていることを説明している。

  • たった一人に伝わればいい
  • 常套句を排除する
  • 一文字でも減らす
  • きとんと書いて口にする
  • 動詞にこだわる
  • 新しい文脈をつくる
  • 似て非なる言葉を区別する

改めて自分が使っている言葉についてしっかりと考えてみたいと思った。

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