とにかくおすすめ

ジャンル関係なくオススメを知りたい人向け

とにかく面白い

ページをめくる手が止まらない、寝る時間さえ惜しくなる最高のエンターテイメント

泣ける本

思いっきり泣きたい人向け

優しい気持ちになれる本

悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

深い物語

いろいろ考えさせられる、深い物語

生き方を考える

人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「アップルvs.グーグル」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
iPhoneとアンドロイドで世の騒がせるアップルとグーグル。IT業界の2大巨人の動向を説明している。
まずは、当然のように世の中のスマートフォンの話題をさらっているiPhoneとアンドロイド携帯について話から入る。世の中では出荷量や販売台数など、多くのデータによって優劣がつけられているが、では実際はどうなのか。そして、それぞれの戦略や過去の発展の経緯についても語っている。
また世の中では一般的にアップルとグーグルは敵対しているように語っているが、実際にはどうなのか、そもそもアップルとグーグルのサービスは共存し得ないものなのか、など。そして、アップルとグーグルだけでなく、明らかに後手にまわっているマイクロソフトや、日本企業は今後どうあるべきか、なども含めて語られている。
僕らが、iPodやGoogleMapなど、すでに日常の中に自然と溶け込んでいる両者のサービスを使う中で、感じ取っているアップルとグーグルのベクトル違い理解するのに大いに役立つだろう。同時に本書によって今後の動向にもさらに関心を持つことになるだろう。

グーグルによる革命は、それまで敷居が高く、一部の人にしか手に入らなかった情報も、グーグルの側でお金をかけて敷居を下げ、誰にでも仕えてしまうようにするインスタントなチープ化革命だ。
アップルのやり方を見て、ただハードやソフトの見てくれを気にしているだけで、大したことないと思っている人もいるかもしれない。だが、見てくれや操作のしやすさは、それを使ってものをつくり出す人に大きな違いを生み出す。

【楽天ブックス】「アップルvs.グーグル」

「その英語、ネイティブは笑ってます」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
どんなに英単語を覚えても、会話のなかでは自分のなかではいいたいことを言えずにときどきストレスを感じる。わずかな言葉で、同意や感嘆を示すことは、かならずしも必要のなきことなのかもしれないが、会話を盛り上げる上では大きな意味を持つ。
そして、会話のなかでそんなタイミングを逃さずに適切な反応を示すためには、その言葉は短くなければならない。僕らはその英語学習のせいで、いいたいことを英語にするとどうしても長くなりがちだが、実際にネイティブスピーカーたちはいいたいことを実に少ない単語で表現する。
本書はそんな視点にたって、会話によく使われる短い表現を集めている。その多くがなかなか辞書から探そうと思っても見つけにくいものばかり。
おもしろいのは、そんな便利表現を
「◯◯」と2単語で表現するには?
といういふうに問題形式で展開される点だろう。例えば「そんなことにならなければいいけど」と2語で表現するには?というように。そのほかにも目からウロコの表現で溢れている。

彼は頭痛のタネだ。
He’s a headache.

また、いままで間違って使っていたのは表現もいくつか発見させてもらった。
とりあえずこれからはThey say〜とかWe have〜をもっと効果的に使いたいものだ。そのほかにも

No sweat.
I´m game.
I´m in.

などを自分お口から自然と出るようにしたいものだ。あと新しかったのは「beat」と「hurt」の使い方だろうか。

Nothing beats a cold beer in a hoy day.
暑い日は冷たいビールに勝るものはない。
Lying will hurt your reputation.
嘘はあなたの評判を落とします。

【楽天ブックス】「その英語、ネイティブは笑ってます」

「ネイティブはこの「5単語」で会話する」晴山陽一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
have、take、get、give、makeの5つの動詞でどれだけ多くの表現ができるか、ということに焦点をあてて英語表現を解説している。
僕らはどうしてもその学習の過程のせいで、「have」=「持つ」や、「give」=「与える」のように覚えており、その覚え方のせいで、この5つの動詞の表現の幅をせばめている。多くの例文や会話例の中でそれぞれの動詞の意味の「捕まえ方」について解説している。
英語の表現を増やすうえで、使える単語量を増やすのはもちろん大切だが、すでに知っている単語の用法を増やすこともまた大きく会話力の向上に役立つだろう。
本書で取り上げている5つの動詞のなかでも、特に「take」と「make」には使えていない表現があることを改めて認識させてもらった。

I take it as a compliment.
私はそれをお世辞だと思います。
I take him to be a honest man.
彼は正直な男だと思います。
This made the third time he’s said it.
彼がそう言ったのはこれで3度目です。
She made the dead line.
彼女は締め切りに間に合いました。
She made the Olympic team.
彼女はオリンピックチームのメンバーになりました。

意識して使ってこそ自らの表現となるのだろう。
【楽天ブックス】「ネイティブはこの「5単語」で会話する。」

「ジェネラル・ルージュの伝説」海堂尊

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「ジェネラル・ルージュ」と呼ばれる東城医大の天才救命医、速水晃一(はやみ)の短編集。
速水(はやみ)を主人公とする「ジェネラルルージュの凱旋」は僕が海堂尊作品を好きになったきっかけとなる作品。そこで大活躍した速水晃一(はやみ)に焦点をあてた、短編集。「ひかりの剣」は速水の医大生時代を描いているが、本作品中の3編はいずれも医師時代。とはいえ最初のエピソードは新米医師の速水を描いており、類まれなる才能に恵まれながらも、自らの技術を過信し、先輩医師にはむかう生意気な新米を描き、物語としてはもっともオススメである。
実際の救命の混乱と、己を知らなかった自分と向き合い、自らを向上させる決意をする、と、言ってしまえばありがちな展開なのだが、その細かい展開と、速水という人物の魅力に楽しませてもらえる。相変わらず看護婦の猫田は存在感抜群である。

イカロスは人々の希望なの。その失墜を見て、意気地なしたちは安全地帯から指さしあざ笑う。だけど心ある人はイカロスを尊敬する。

2章目は「ジェネラルルージュの凱旋」と同じ時間を、経費削減に奔走する事務長三船(みふね)目線で描いた作品。すでに「ジェネラルルージュの凱旋」を読んだのが2年以上まえなために若干記憶が薄れているが、展開もほとんどそのままなのだろう。
そのとき心を動かされた言葉に、今回も同様にゆすぶられた。

だが、現実にはこの病院にはドクター・ヘリはない。なぜ?
事故を報道し続ける、報道ヘリは飛んでいるのに。

3編については満足だが、その後の「海堂尊物語」や登場人物の解説はページを稼ぐためだけのものにしか見えない。
【楽天ブックス】「ジェネラル・ルージュの伝説」

「The Girl Who Kicked the Hornets’ Nest」Stieg Larsson

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
前作のラストで実の父親でありスパイであるZalachenkoとの死闘の末、頭に銃弾を浴びたSalander。本作品はまさにそのSalanderが病院に運び込まれるシーンから始まる。
前作「The Girl Who Played with Fire」の続編であり、「The Girl…」シリーズ三部作の最終話である。大怪我を追ったとはいえ、殺人未遂などの罪の容疑によって拘束中の身であるSalanderは、再び、Zalachenkoがロシアのスパイであるという事実を隠蔽しようとする闇の組織「The Section」のターゲットとなる。
その一方で、は「The Section」の秘密を暴いて世に知らしめようと、出版社Milleniumの仲間たちと動き出す。そんななか、再びネット上で協力し合う、SalanderとBlomkvistの少しちぐはぐな協力関係が面白い。実際、前作「The Girl Who Played with Fire」でもSalanderはひたすら、Blomkvistと顔をあわせるのを避けており、ようやくBlomkvistがSalanderに出会えたときはすでにSalanderは品詞の状態、という結末であった。本作品中で2人が平和に面と向かって会話をすることがあるのか、というのが気になるひとつである。
本作品では前二作で、脇役に徹していた人物の活躍も目覚しい。出版社Milleniumの代表のBergerは大手新聞社に引き抜かれてそこで新たなスタートを切り、新たな職場で、保守的な経営陣と対立する。また、Blomkvistの妹で、弁護士のGianniniはSalanderの弁護を担当し、Salanderの発言のすべてを社会不適格者の妄想として処理しようとする「The Section」の一味と法廷で争うことになる。本作品でもっともかっこいいのはGianniniかもしれない。
人付き合いの苦手なSalanderがGianniniに少しずつ心を開いていくシーンに心が温まる。いつものようにそれぞれの登場人物の個性や、それぞれの人間関係まで、最後まで飽きさせない作品である。
著者Stieg Larssonはすでに亡くなってしまったが、本作品の終わり方を見る限り、まだまだMilleniumシリーズには続く物語が彼の頭のなかにはあったのではないか、と思えてなんとも残念である。

「名前探しの放課後」辻村深月

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
新年を迎えたはずの依田いつかは、突然3ヶ月前にタイムスリップした。同級生の誰かが自殺した記憶だけをもったまま。誰かの意思の力で自分が選ばれたのか?名前のわからない自殺者の自殺を食い止めるためにいつかは動き出す。
誰かが自殺をしたはずだが、それがだれかがわからない。というこの設定。思いっきり辻村深月のデビュー作の「冷たい校舎の時は止まる」とかぶっている気がするが、それが彼女の僕のなかでの最高傑作には違いないので手にとった。
いつかは同級生の誰かが自殺をするという手がかりだけを頼りに、自分がタイムスリップしたしたということも含めて、同級生の何人かに協力を求める。
相変わらず辻村作品の登場人物は魅力的な人ばかり。タイムスリップという事実をかなりすんなり受け入れてしまう同級生たちに抵抗を抱く読者も多いかもしれないが、個人的には、本作品中で、未来の学級委員長である天木(あまき)が見せるように、信じる信じないではなく、要求された仕事をするから、と見返りを求めるほうが現実味があるように思える。
さて、そんな自殺を防ぐという目的のもとでいつかの2回目の3ヶ月はまったく違ったものになっていく。
物語がいつかだけでなく、最初にいつかがタイムスリップを告白した同じクラスの女生徒坂崎(さかざき)あすなの目線にたびたび変わるのが面白い。
いつかもあすなも過去の苦い経験と次第に向かい合っていく。人は誰でも、忘れたいような過去を経験し、コンプレックスを抱えて生きているということが伝わって来るだろう。そしてそんな出来事に対して、向き合うことは勇気がいるし、逃げることにもまた勇気がいる。
人間同士の関係のこの独特な描き方は辻村作品でしか味わえないものだろう。
それにしても「子供たちは夜と遊ぶ」のときにも感じたのだが、辻村作品にはどこか、「かっこわるく不器用にあがいている男こそかっこいい」的な表現がよく見られる。そこも含めて自分が辻村ワールドにはまっていることを感じる。
【楽天ブックス】「名前探しの放課後(上)」「名前探しの放課後(下)」

「姑獲鳥の夏」京極夏彦

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
20ヶ月も妊娠したまま出産しない女性。そんな奇怪な事件を知り、関口(せきぐち)は古本屋の変わり者、京極堂に話を持ちかける。やがて事件に深く関わることになり、忘れていた過去の出来事にも気づいていく。
見た目の厚さのせいで完全な食わず嫌いであった京極夏彦だが、友人が進めてくれたのを期に、京極作品の中でもっとも薄くもっとも有名な本作品を手にとった。そしてそれは予想通りユニークな世界だった。分厚い本の最初の1/10にもわたって古本屋の京極堂と関口の不思議な会話で占められる。
たとえば「幽霊が存在するかしないか」と考えるなら、なによりもさきに「存在」という言葉の定義をはっきりさせる必要があるだろう…。短くたとえるならこんな感じだろうか。
実際京極堂は徳川家康と妖怪のダイダラホウシを例に挙げて、「なぜ、どちらも実際にみたわけではないのに、家康の存在は信じて、ダイダラホウシの存在は信じないのだ?」と関口に問いかける。読者はその問いに対する自分なりの答えを持とうとするだろう。
個人的に、今まで深く考えもせずに受け入れていたもの、つまり「常識」にもう一度疑問を投げかけて考え直させるような流れは嫌いではない。とはいえ、嫌悪するひとも、逆に病みつきになるひともいるのだろう。
本作品の面白さはそんな独特な視点だけでなく、京極堂を含む不思議な登場人物にもある。探偵の榎木津(えのきづ)などもその一人である。本作品では微妙な存在感だけを残すにとどまったが、シリーズのほかの作品では活躍したりするのだろうか?
物語の流れはやや複雑怪奇で受け入れがたい部分もあるが、京極ワールドに病みつきになる人も気持ちもなんとなくわかる。

ダチュラ
全草(根・茎・葉・花・種子などすべての部位)に幻覚性のアルカロイドを含む有毒植物。モルヒネのような直接的な鎮痛効果はないが、痛覚が鈍くなる為、麻酔薬や喘息薬として知られる。(ダチュラとは? 朝鮮朝顔
シャルル・ボネ症候群
打撲、脳卒中、脳溢血、薬物などによって起こる脳の障害などにより、脳の情報伝達が正常に行われないことから起こる現象の総称。(マルチメディア・インターネット事典「シャルル・ボネ症候群」

【楽天ブックス】「姑獲鳥の夏」

「悪人」吉田修一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
石橋佳乃(いしばしよしの)は携帯サイトで知り合った男と会った翌日、遺体となって発見される。容疑者としてあがった2人の男性。1人は男性からも女性からも人気のある大学生増田圭吾(ますだけいご)、もう一人は土木作業員として働き、車だけが趣味の清水祐一である。
物語の序盤は増田圭吾(ますだけいご)が逃亡中ということで、真犯人が誰かわからない状態でしばらく展開するが、、むしろ物語の面白さは単純な犯人探しではなく、その事件の周囲の人間たち内面にこそある。
犯人や被害者の友人、上司、親戚、家族など、多くの人の目線から物語が展開するため、その人の悩みや思いが見えて来る。そんな数ある登場人物の中の誰一人として、「こんな人間になりたい!」と思えるような人はいないが、むしろだかこそ現実的であると言えるだろう。周囲からはどんなに輝かしい人だろうと誰もが悩みを抱えていきているのだから・・・。読者の多くは、そんな数多くの登場人物のいずれかに自分を重ね合わせることができるのではないだろうか。
本作品から伝わってくるのは希望ではなく、悲しいむなしさである。多くの人がひしめきあってこんなに近くで生きているにもかかわらず、心は通じ合えない。だからこそ、単純に一人でいる以上にさびしい…。そんな現代の寂しさがにじみ出てくる。必ずしも悪意を持った人間や、際立って不幸な環境に育ったものだけが犯罪を犯すのではなく、世の中のどんな人にも殺人者となりうる可能性がある…。そんな、なんとも吉田修一らしい作品である。
【楽天ブックス】「悪人(上)」「悪人(下)」

「世界を変えたアップルの発想力」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
松下電器からアップルに転職した著者目線で、アップルという会社を主要人物が語った明言を引用しながら説明していく。典型的な日本企業である松下とアップルを比較することで、アップルのその異質な社風が見えてくる。
アップルがどれだけ偉大なことを成し遂げてきたか、ということを考えると、誰もがそんなプロジェクトに関わりたいと思うだろう。しかし、偉大な商品をつくったからといって、その会社が誰にとっても魅力的な労働環境を提供しているとは限らないのだ。よくも悪くもアップルという会社がユニークな会社であることが見えてくる。また同時に、僕らが「会社はこうあるべきだ」と考えているもののいくつかが、必ずしも会社に必要でないものであることも気づくだろう。
それでも思うのだ、アップルで働いたら、きっと何時間でも働かなければならないだろうし、仕事以外のことを一切放棄しなければならないときもあるだろう。それでもここまで熱意を注いで仕事ができることは幸せなんだろう、と。

真似はマイクロソフトにやらせておけばいい

本書で挙げられている歴史をつくったアップルの偉人たちの名言の中の、いくつかが胸に刺さるのかもしれない。
【楽天ブックス】「世界を変えたアップルの発想力」

「ファーストクラスの英会話」荒井弥栄

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
元国際線のCAがその経験から、日本人が間違えやすい表現を、「ビジネスクラス」「ファーストクラス」とその丁寧さを2段階に分けて説明する。僕らは英語と日本語の違いを、「英語は直接的で日本語は遠まわし」などと漠然と思っているかもしれないが、どんな言語においても、相手に反対したりするときは、相手に不愉快な思いをさせないような遠まわしな言い方が必要なのである。
「英語で言いたいことを言う」の次のステップ、「英語で気持ちよくコミュニケーションをとる」の段階に移ろうとしている人には非常に役に立つだろう。
一般的な丁寧表現の「Could you?」「Would you mind if?」のほかにも、ビジネスシーンに使えそうな、丁寧表現が満載である。「add up」「up to scratch」「be snowed under」「under the weather」などはぜひ覚えておきたい表現である。
【楽天ブックス】「ファーストクラスの英会話」

「沈底魚」曽根圭介

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
第53回江戸川乱歩賞受賞作品。
中国のスパイが日本に潜んでいるという情報を得て、警視庁外事課は動き出す。
江戸川乱歩賞受賞作品ということで期待したのだが、残念ながら最近増えてきた公安警察小説のなかでも特に際立ったところはない。スパイものはどうしても2重スパイ、3重スパイ、騙し合いという展開になってしまって、その範囲内ではいくら裏をかこうとも読者の想像を超える面白さには繋がらないのだろう。もう少し何かスパイスがほしいところだ。
とはいえ、このような中国などを相手にしたスパイ物語を最近よく読むようになった気がする。つまりそれが現実のものとして受け入れ始めているからなのだろう。
本作品に限らずスパイ物語というのは登場人物の名前が多くなりすぎるうえ、おのおのの利害関係が複雑になりすぎるため、なかなか物語にしっかりと着いていきずらいのもよくあることで、いかにその多くの登場人物を個性を持って描けるかが、諜報活動を描く小説には求められるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「沈底魚」

「テレビの大罪」和田秀樹

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
昨今のテレビ番組がどれだけ世の中に悪影響を及ぼしているか、という視点に立った内容である。昨今の若者のテレビ離れは、インターネットなど、テレビ以外のエンターテイメントの普及だけによるものではなく、発信者としての責任を負うことを恐れて、ひたすらクイズ番組に走る、というテレビ局側のモラルの低下も影響しているのだろう。
僕自身ここ数年で一気にテレビを見なくなったから、その「テレビ離れ」の裏にある原因や人の考え方にはおおいに興味があったので、本書を手にとったのだが、ところどころうなずける部分はあるものの、著者のかなり強引な論理と断定的な書き方にやや抵抗を抱きながら読み進めることになってしまった。
とはいえ、確かに、テレビ局が東京に集中していなかったらおそらく飲酒運転の取り締まりは今ほど厳しくはならなかっただろう、という考え方には納得できるものがあるし、自殺報道は規制すべき、という考え方もうなずける。
結局テレビの大罪が「大罪」になってしまう原因は、情報を取捨選択せずに鵜呑みにしてしまう視聴者の側にもあるのだということは、改めて今回思ったことである。
【楽天ブックス】「テレビの大罪」

「こんなに強い自衛隊」井上和彦

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
自衛隊について、その技術のすばらしさ、そこに勤める自衛隊員の質の良さ、そして北朝鮮、中国、韓国などの近隣諸国の脅威、などあらゆる面から自衛隊を描く。
筆者の根底にある考え方は一貫していて、日本の自衛隊のすばらしさ、軍備を増強し続けて脅威となりつつある近隣諸国への備えの必要性、そして、それを知らずにいる日本の政治家への懸念である。だから、若干本書で書かれている内容には偏りがあるという認識で読むのが適切なのかもしれない。
個人的には、イラクへの自衛隊派遣に触れている第8章が印象的である。4000人を超える犠牲者を出しているアメリカ軍に対して、なぜ自衛隊は一人の死傷者も出さずに済んだのか。それは、僕らが誇るべき空気や人の気持ちを読む日本の文化があったからこそである。つい自衛隊に入って「こんなすばらしい仕事をしてみたい」と思ってしまう
そもそも自衛隊とは存在自体が矛盾にあふれている。本書でも、自衛隊の発足の定義と、憲法の拡大解釈についてふれている。そんな自衛隊の過去の経緯が、現状の自衛隊に対する世の中の見方を説明している。日本では一般的に「防衛費は削る」「武器を捨てる」ということが「正しいこと」と認識されており、それゆえに現状を知らない政治家が、イラク派遣部隊の武器の数で議論するなどということが起きるのである。
メディアを通じて僕らの目に入ってくる自衛隊の情報が、どこまでゆがめられ、どこまで多くの思惑が絡んでいるか、ということがわかるだろう。そんな政治的な話を抜きにしても、序盤で触れている最新鋭の兵器の話などでも十分楽しめるのは、やはり僕が男だからだろうか。
【楽天ブックス】「こんなに強い自衛隊」

「ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか」井出洋一郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
西洋絵画を楽しむ上で、宗教とギリシア神話は欠かせないもの。本書はギリシア神話のエピソードとともに、その場面を描いた絵画を紹介している。
僕自身西洋絵画とギリシア神話はもともと好きなので多くの物語は知っているものばかりだったが、それでもいくつかの知らなかった逸話や、ギリシア神話の一場面と知らずに見ていた絵画、そして見たこともない絵画に触れることができた。
面白いのは神話上の人物が、絵で描かれる際の特長に触れている点だろう。アットリビュートと呼ばれるその人物の象徴となる持ち物を知ることで、より絵画のなかの人物を特定しやすくなるのということだ。
たとえばよく知られているものだと、エロス(キューピッド)の弓、ヴィーナス(アフロディーテ)の貝といったところだ。残念ながらアットリビュートの説明は文章だけで、資料となる絵画が載っていない点がやや物足りなかった。
絵画としてはピエロ・ディ・コジモ「アンドロメダを救うペルセウス」など、ペルセウス好きにはたまらない。ジュール・ルフェーブルの「パンドラ」も印象的である。どちらも今まで知らなかった画家なので、ぜひ覚えておきたいものだ

【楽天ブックス】「ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか」

「JUSTICE」Michael J.Sandel

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「正しいこととは何なのか」。「正しいこと」。生きていれば数え切れないほど耳にするそんな当たり前の言葉に対して、「じゃあ、その「正しいこと」とは何なのか?」と問いかけ、突き詰めていく。
面白いのは本書のなかで、。「正しいのはどちらか?」といういくつもの選択肢が用意されている点だろう。いずれの選択肢も即答できるものではなく、いくつかは一生かかっても答えを出せないであろう問いかけである。もちろん本書でもその問いかけの先で示しているのは答えなどではなく、その答えにたどり着くための道筋である。
そしてその道筋を示す過程で、過去の哲学者など、多くの偉人たちの考え方を紹介している。自由主義者にとってはこちらはこの点で間違っている、功利主義者にとってはこちらが正義になる。…のように。
そして、それらの考え方に触れるうちに、「正しいこと」とは、「自由を尊重するもの」「倫理に従うもの」「世の中の実用性を重視するもの」「最大人数に対する最大の富を目的とするもの」など、人によってさまざまな考え方があることに気づくだろう。
30年も生きていれば誰しも、心の中に答えのない疑問を抱えていたりするのではないだろうか。たとえば、生き物の命は大切なのに、どうして人間は豚や牛を殺して食べるの?とか、買う側も売る側も満足している売春はなんで不法なの?とか。
そんな問いかけに対する答えの出し方のヒントを少しつかめた気がした。

「金持ち父さん貧乏父さん」ロバート・キヨサキ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
先日参加したキャッシュフローゲーム会の主催者が「大きく衝撃を受けた」と言っていた本。人の人生を変えるほどの本といわれるととりあえず読まなければ、というわけで読んでみた。
実は結構有名な本らしく、内容は一言で言えば「お金の作り方」を書いたもの。「お金の稼ぎ方」ではなく「お金の作り方」である。そして、現在の教育の仕組みを真っ向から否定している。どんなに勉強してどんなに大きな企業に入っても、稼いだ分のお金は出て行って、一生働き続けなければならない。お金の心配をせずに生きるにはどうすればいいか、ということを書いている。
僕自身あまりお金に興味はなく、お金なんてなくても楽しく生きている自信はあるのだが、「働きたいか遊びたいか?」とたずねられれば答えは明確だろう。世の中の流れなどを考慮すると、単純にそのまま書かれている内容を受け入れるというわけにはいかないが、お金に対する新たな考え方を受け入れて選択肢を増やす、という意味においては非常に面白い内容だった。
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「激流」柴田よしき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
修学旅行の途中で行方不明になった女生徒冬葉(ふゆは)。20年後、彼女から、同じバスにのっていた同級生6人にメールが届く。「私を憶えていますか?」。大人になった彼らは再び20年前の出来事と向き合うことになる。
移動中のバスからいなくなる女生徒。こんな謎めいて、「真実を知りたい」と思わせる序章は、エンディングのハードルまで上げてしまうとはいえ、読者を引き込むには最良の方法だろう。
物語は不思議なメールをきっかけに、集まった6人。再会をそれぞれの目線から見つめることで、20年という決して短くない期間の人生が見えてくる。20年前に抱いていたお互いに対する気持ちや、20年前とのギャップ、夢を掴んだものとそうでないもの、想像通りの生き方をしているものとそうでないもの…。本作品の面白さは、行方不明になった女生徒というなぞの解明よりも、その過程で描かれるそれぞれの人生にあるといってもいいのではないだろうか。

どちらも若かったのだ。若く幼く、必死だった。自分が心地好いと感じる価値観にしがみつき、それ以外はすっぱりと否定してしまう。妥協、という言葉はあの頃の自分たちにはとても汚らわしい響きを持つ言葉だった。

その同級生の中でも、特に特徴をもって描かれているのが、芸能人として有名になった美弥(みや)と、中学生のころから誰もがうらやむ美貌をもった貴子(たかこ)である。個人的には、そんな恵まれた容姿をもちながらも決して幸せな生き方をしていない貴子の生き方が印象的だった。
ラストの展開が冒頭で引き上げた期待値に達したかどうかは疑問だが、決して悪い作品ではない。ただ、同級生6人のなかに刑事、芸能人、美人というありがちな人物設定しかできなかった点がやや残念である。
【楽天ブックス】「激流(上)」「激流(下)」

「世界は日本サッカーをどう報じたか」木崎伸也

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ワールドカップが終わってすでに一ヶ月。期待以上の結果に日本は熱狂したが世界はそれをどのように見たのだろう。日本の4試合は、それが自分の国であるということそ除いて考えると、普段世界のサッカーを見慣れたファンにとっては退屈の試合だったに違いない。そして、それは世界各国が日本の試合に対して抱いた感想とそう大きくは違わない。
本書は、世界各国、特にサッカー大国と呼ばれる国々の紙面や解説者のコメントを通じて日本のサッカーの長所や短所を客観的に見せてくれる。
今の問題点や今後日本サッカーのレベルの向上のために取り組むべきことを知ることができるとともに、各国の評価の違いから、それぞれのサッカー大国が何を重んじてサッカーを見ているか、という文化的な違いまでも楽しめるだろう。

「オランダのGKに、ほとんどボールが飛んでません」
「日本は何もしたくないチームのようです。」

【楽天ブックス】「世界は日本サッカーをどう報じたか」

「ひかりの剣」海堂尊

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
医学部剣道部の大会で、今年も東城大と帝華大は優勝を狙う。東城大の主将は速水(はやみ)。帝華大の主将は清川(きよかわ)である。
「チームバチスタの栄光」などの作品からなる世界の物語のひとつ。東城大の速水(はやみ)は後に「ジェネラルルージュの凱旋」で天才外科医となって活躍する。また清川(きよかわ)は「ジーン・ワルツ」で産婦人科医師として登場する。どちらも後に優れた医師となる。そんな2人がまだ学生で医者になるための勉強をしていたころ、物語としては「ブラックペアン1983」と時期を同じくしている。
そういった意味では、剣道を題材とした青春物語としても楽しめるが、海堂尊のほかの作品を読んでいればさらに楽しめるだろう。剣道部の顧問として速水(はやみ)や清川(きよかわ)とかかわる後の院長の高階(たかしな)先生の行動の理由も「ブラックペアン」を読んでいれば理解できるだろう。
さて、それにしても最近映画化された誉田哲也の「武士道シックスティーン」といい本作品といい、世の中は剣道ブームなのだろうか。実際に経験したことはないが、本作品の描写を素直に受け取ると、なんとも剣道というスポーツが魅力的に見えてしまう。そしてそんな剣道物語につきものなのが、すぐれた女性剣士の存在ではないだろうか。本作品でも帝華大にひかりという剣士が登場する。
また、本作品で面白いのは、数十年前を物語の舞台としているにもかかわらず、そこで活躍する剣道を愛した青年たちは、決して古い青春ドラマに出てくるような、頭の固い努力家ではない点ではないだろうか。清川(きよかわ)などは常に手を抜こうと考えている点が面白い。
そしてもうひとつ顧問の高階(たかしな)先生の言葉の奥深さも本作品の魅力である。

今の君は自分の才能を持て余し、その重さに押し潰されている。大きな才能は祝福ではない。呪いだよ。

余計なことを考えずに一気に読書の世界に没頭したい人にお勧めである。
【楽天ブックス】「ひかりの剣」

「長い腕」川崎草志

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
同僚の自殺と、故郷で起こった殺人事件に、ひとつのキャラクターグッズという共通点を見出した汐路(しおじ)は、故郷の閉鎖的な町に戻る。
タイトルや表紙、そのプロローグからややホラー系の物語を連想させるが、一般的なミステリーと言っていいだろう。それどころかネットの危険性や、ゲーム業界の話などの話も盛り込まれていて、超自然よりむしろ技術的な話も多い。
汐路(しおじ)は不思議な事件をたどって、生まれ故郷の閉鎖的な町に戻るのだが、都会で長年過ごした汐路(しおじ)と、その町で生きる人々のギャップが面白い。そんな中でも興味を惹かれたのは、その町にある2つの似ている大きな家の話である。
実は宮部みゆきの有名な作品「模倣犯」の中でも、犯罪者とその犯罪者が住んでいる家の構造の関係について触れられていておおいに興味を持ったのだが、本作品中でも内容は違えど、家の構造がそこに住む人の心に大きく影響を及ぼすということが書かれている、再び大きく好奇心を刺激された。
さて、全体的な内容はというと、それなりに楽しませてはもらったが、どうも全体的に不必要な内容があるようなややぎくしゃくした印象を受けた。たとえば汐路(しおじ)がゲーム会社の社員である必要は特にないような…。著者がゲーム会社勤務ということで現実感を持たせるために自分のいる職場の様子を描いたのかもしれないが、物語に関係のない箇所を描きすぎてやや物語の加速度が落ちているような気もする。
とはいえデビュー作ということを考えれば及第点をあげられるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「長い腕」