とにかくおすすめ

ジャンル関係なくオススメを知りたい人向け

とにかく面白い

ページをめくる手が止まらない、寝る時間さえ惜しくなる最高のエンターテイメント

泣ける本

思いっきり泣きたい人向け

優しい気持ちになれる本

悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

深い物語

いろいろ考えさせられる、深い物語

生き方を考える

人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」マイケル・ルイス

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
サブプライム・ローンにまつわる大変動を予期し、それをもとに財をなす準備をあらかじめ整えていた一握りの人物に焦点をあて、その過程と心の内を描く。
残念ながら、僕自身が本書で書かれていることをすべて理解ししたなどとは言えない。というのも、全体的に著者の別の作品「マネーボール」同様非常に読みやすい文体で書かれているが、聞き慣れない金融商品や専門用語など調べなければ分からないことや、調べてもわからないこともまた多く含まれているのだ。それでも、「勝ち組」の側にいた彼らが感じた金融という虚像に対するなんともやるせない空気が本書を読むことで伝わってくるのだ。
そしてまた、漠然とではあるが世界中がアメリカ発の住宅好況に酔っていた2000年代半ばにその裏で何が起こっていたかを理解することもできるだろう。メディアなどで語られるサブプライムローン問題は非常に簡潔で、あまりにもわかりやすいために逆に「なんでこんなわかりきったことが起こったのか?」とさえ思えてしまうが、実際に起こっていたのは、ひたすら複雑になった債権と、その複雑さについていけずに不当な格付けをする格付け機関。そして、それをなんの疑問も持たずに信じきっていたトレーダー達という構図なのである。言ってみれば、購入相手を見つけるためにわかり難く構成された債権のわかりにくさに世界が飲み込まれてしまったようなものである。
正直、最初の時点での僕の感想は、自らを賢いと思い込んでいるトレーダーたちさえも気づかなかったことに目をつけ、そんなエリート達を出し抜くなんてなんて爽快なことなのだろう、というものだっが、実際にスティーヴ・アイズマンやマイケル・バーリ達を襲ったのは「勝利の爽快感」などというものではなく、形も根拠もないものを信じ気って混乱へと突き進んだ世の中へ対する虚しさのようである。
しっかり理解するためにはまだまだ僕の知識は足りない。類する本をいくつも読む必要がありそうだ。

ABS(アセットバックトセキュリティ)(Asset Backed Security)
ABSとは、資産担保証券とも呼ばれ、対象資産としての債権や不動産を裏づけに、(SPCを通じて)証券を発行・売却することで、資産をオフバランス化し、それに伴い現金を得る資産流動化取引を行った際に発行される資産を担保とした証券のこと。(exBuzzwords用語解説「ABSとは」
ISDA
“International Swap and Derivatives Association”の略で、日本語では「国際スワップ・デリバティブ協会」のことをいう。ISDAは、OTCデリバティブの効率的かつ着実な発展を促進するため、1985年にアメリカ合衆国のニューヨークで設立されたデリバティブに関する世界的な組織(全世界的な業界団体)で、OTCデリバティブ市場の主要参加者(会員)により構成されている。(ISDAとは|金融経済用語集

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「ハーバードからの贈り物」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アメリカのハーバード大学では最後の授業で、教授たちは、これから社会に巣立つ学生たちにむかって、未来への助言をかねた話をするのだそうだ。本書はそんなハーバード大学の教授たちが学生たちに語る話をまとめたものである。
自分にもし過去に戻ってやり直せるとしたなら、高校時代、どこの大学に進むか、ということをもう一度真剣に考えて進路を決めたい。Facebookのマークザッカーバーグの物語やGoogleの創立者の物語のなかで見える、アメリカの学校の雰囲気は僕にそう思わせる。
そんなアメリカの名門ハーバードの教授たちが話すというのだからなんとも興味をひかれる。そもそも僕の大学に時代はどうだったのだろう。そんなありがたい話はなかった。そもそもどれが最後の授業なのかさえ覚え得ていない。
さて、本書では集められた教授たちの話のいくつかは、教授自身の話であり、いくつかは教授の家族、友人の話である。どれもページ数にしてわずか数ページ。それでも間違いなくいくつかは心に残ると思う。 卒業してもう何年も経っているが読んでもまったく問題ない。個人的に印象に残っているのは、こんな話。
あなたは毎日の生活のなかでいろんな人と関わっている。なかには一日中顔を合わせている職場の同僚もいれば、ほとんど言葉を交わさないコンビニの店員もいる。あなたは、そんな関わり合いのなかで、その人は自分をどう認識するか?というもの。人と人とのかかわりあいのすべてが、その人に自分をポジティブに認識してもらうチャンスなのだという。
こうして改めて反芻するだけで涙が出てくる。そんなありがたい話が盛りだくさんの一冊。
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「マラソンは毎日走っても完走できない 「ゆっくり」「速く」「長く」で目指す42.195キロ」小出義雄

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
高橋尚子をオリンピック金メダルに導いたことで有名な、小出義雄監督が、マラソン初心者がやりがちな間違えや、効果的に記録を伸ばすためのトレーニングを紹介する。

なんといっても本書の帯のコピー「マラソンの練習が分かっていないから30kmあたりで歩いてしまう人が多いんだよね」。この言葉にやられてしまった。実際僕が唯一挑戦したフルマラソンは26km付近で失速。その後は歩いてゴールするのがやっと。毎週のようにスカッシュやサッカーをやっていて体力に自信のある僕のよこを、おそらくマラソン以外のスポーツなど一切していないだろう年配の人たちが最後はどんどん抜いて行くのだ。恐らくマラソンに対する考えを間違えていたのだろう、と漠然と感じさせてくれる経験だった。

さて、本書のなかにはその答えに近いものが書かれている。一度もフルマラソンになど挑戦したことのない人が思い描く「マラソン」とは、せいぜい学生時代の校内マラソンの延長で、5キロかせいぜい10キロ程度なのだろう。そういう人は、肺活量を鍛えるためにひたすら走りがちだが、本書ではむしろ「足をつくる」ということを重視している。

肺活量はたしかに勝負のなかでは疎かにできなものなんだろうが、完走という目標をもっているひとにはたしかに優先度の低いものなのだろう。本書では、「足をつくる」ことを意識しつつ、その目標をハーフマラソン、フルマラソン、と、目標となるレース別にメニューを紹介している。

個人的には、そのトレーニングが、どの筋肉を鍛え、どういう状況で役に立つか、といった内容が書かれていなかったのが残念だが、それでも、読めばいやでもモチベーションがあがってくるに違いない。
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「The Shining」Stephen King

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
教師を解雇されたJackは息子のDannyと妻のWendyとともに山奥のホテルに住み込みで管理人を務めることとなる。吹雪で外界から孤立したホテルで3人は不思議な体験をすることになる。
スティーブンキングの名作の1つでありながら、正直物語を知らなかった。さて、物語の中心は5歳の少年Danny。ときどき知るはずのないことを知っていたり、両親の心のうちを読んだり、不思議なことを言って両親を気味悪がらせる。彼こそが「shining」な人間だったのだ。
3人を残して吹雪で孤立したホテルで、少しずつ邪悪な何かが動き始める。ホラーという分野が好きな人間にははずせない一冊なのではないだろうか。
とはいえ「恐怖」意外の深い何かを期待した僕にはやや物足りなかった。

「インターセックス」帚木蓬生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
サンビーチ病院に転勤した秋野翔子(あきのしょうこ)。その病院では、性転換や染色体の異常で、男でも女でもないインターセックスと呼ばれる患者たちの治療を専門としていた。
もう数年前にドラマでやっていた金八先生の第6シリーズの頃から、「性同一性障害」などは非常に興味のある分野である。本書のタイトルとなっている「インターセックス」。この言葉の意味を知っている人はどれほどいるのだろう。僕自身も実は、本書に触れるまで、「ゲイ」と「ニューハーフ」と「インターセックス」の違いを知らなかったのである。軽くイギリス人のゲイの友人の解説をここですると、「ゲイ」は「同姓が恋愛対象」。「ニューハーフ」は男でありながら女性の気持ちを持っている人。そして「インターセックス」は体が男と女の中間な状態であること。なのだそうだ。(シビアな話なので間違っていたら申し訳ない)。
さて、本書で扱っているのはそんな中の「インターセックス」であるから、一見女性でありながら、実は膣がなかった、卵巣がなかった、などの症例が挙げられている。おそらく僕らが思っている以上に多く存在する「インターセックス」。その患者たちへの態度として、幼い頃に周囲が「男」か「女」かを決めてしまってそれにしたがって手術を行って、その性に従って育てるべきだと、主張するサンビーチ病院の院長岸川(きしかわ)と、「男」でも「女」でもない「インターセックス」の存在をそのまま受け入れて、本人の希望がない限り手術を行うべきではないという翔子(しょうこ)の主張の対比が非常に興味深い。
そして、物語中で「インターセックス」の人たちが集まってそれぞれが自身のことを語り合う場面で出た、「インターセックス」をさらに3つに分けることこそ重要という意見が印象的だった。今までのmaleとfemaleだけでなく、そこに、性染色体はXYだが女性器が欠如したいる人をhem、その逆のmemそして、双方の性器を有している人をhermを加えて性の表現を5つにするというもの。まだまだ、長い時間がかかるだろうが少しずつ世の中が変わっていけばいいと思った。
さて、物語はそのように「インターセックス」や「性転換」に触れながら進むが、やがて翔子(しょうこ)はサンビーチ病院の過去に不振な事件が重なっていることに気づくのである。
正直、病院の陰謀なのか、「インターセックス」の現状なのか、とちょっとどっちづかずになってしまったのが残念であるが、全体的には知的好奇心をかきたててくれる内容である。

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「ゴールは偶然の産物ではない FCバルセロナ流世界最強マネジメント」フェラン・ソリアーノ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
マンチェスターユナイテッドやレアルマドリードにチームの強さの上でも収益の面でも大きく遅れをとったスペインの名門FCバルセロナ。2003年に最高責任者に就任した著者が、FCバルセロナが世界最強のチームになるまでの過程を論理的に説明していく。
本書はサッカーのチームをその題材として描いているが、内容はいろんなことに応用できるだろう。印象的だったのは第4章の「リーダーシップ」である。この章ではチームを4つのタイプに分類し、それぞれのタイプに応じて指導者が取るべきリーダーシップのタイプについて語っている。
たとえば、チームのタイプが「能力はあるが意欲に欠けるチーム」であれば指導者は「メンバーの意見を聞き決断を下す」役割を担うべきで、チームのタイプが「能力があり意欲にあふれたチーム」であるならば、「メンバーに任務を委任し、摩擦が起きそうなときだけ解決に向けて調整をする」役割となる。というようにである。
一体世の中のどれほどの「リーダー」が、自分のチームのタイプに応じて自らの振る舞いを変えているだろうか。「リーダーは変わる必要がある」ということを漠然と理解している人もいるだろうが、ここまではっきりと示してくれるのは非常に新鮮である。そして、本書ではリーダーのタイプと合わせて、実際にバルセロナで指揮をとった、ライカールトやグアルディオラの言動にも触れているのである。僕自身、過去転職を繰り返して多くの自己顕示欲旺盛な「リーダー」を見てきたが、本書はそんな彼らに突きつけて見せたい内容に溢れている。
さて、「リーダーシップ」の内容にだけ触れたが、それ以外にも興味深い内容ばかりだ。「チーム作り」や「戦略」「報酬のあり方」など、もちろんいずれもサッカーを基に話が進められているが、どれも現実に応用可能だろう。
全体的には、バルセロナの成績だけでなく、所属した選手や周囲のビッグクラブ、たとえば銀河系軍団のレアル・マドリードなどに触れているため、サッカーを知らない人間がどれほど内容を楽しめるかはやや疑問だが、個人的にはお薦めの一冊である。
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「ロードムービー」辻村深月

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
5編の物語からなる作品。著者辻村深月を有名にした「冷たい校舎の時は止まる」を読んだのはもう数年前なので断言できないのだが、5編のうちいくつかは(2つは明らかに)その作品と同じ世界で、作品内に登場した人物の未来または過去を描いているので、あの世界観が好きな人には見逃せない作品なのではないだろうか。
個人的に好きなのは4編めの「トーキョー語り」。東京から転校してきた女生徒へのイジメを描いた作品。そして最後の「雪の降る道」。「雪の降る道」は病気で学校を休んでいるヒロくんと、毎日お見舞いにくる幼なじみのみーちゃんの物語。この2人の名前を聞いてぴんとくるならもう説明はいらないのだろうが、「冷たい校舎」のなかの回想シーンで触れられたヒロと美月(みづき)ちゃんの幼い頃の物語である。
全体的に「冷たい校舎」を読んでいればかなり楽しめる内容になっているが、この作品から辻村作品に触れる人にとってどのような印象を与えるかはやや疑問である。
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「誘拐児」翔田寛

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第54回江戸川乱歩賞受賞作品。
終戦翌年に誘拐事件が発生し、5歳の男の子は戻ってこなかった。そして15年後とある殺人事件が起きる。また時を同じくして、母親をなくした、良雄(よしお)は5歳より前の記憶がないことに気づく。
きっかけとなる事件が戦後に発生したということで、戦後の混乱の様子が描かれている。本作品はそんな混乱に便乗した事件を発端としている。物語中の主な舞台となっている時代も、戦後の混乱の15年後ということで、とても今「現代」と言えるような時代ではないだろう。パソコンも携帯も普及していなかった時代の物語である。
江戸川乱歩賞ということで期待したのだがよくある小説という印象であまり個性が感じられない。著者はいろいろ考え抜いて本作品を作り上げたのだろうが、残念ながら1ヶ月もすれば読んだことすら忘れてしまうだろう。

ノモンハン事件
1939年(昭和14年)5月から同年9月にかけて、満州国とモンゴル人民共和国の間の国境線をめぐって発生した日ソ両軍の国境紛争事件。(Wikipedia「ノモンハン事件」
大政翼賛会
1940年(昭和15年)10月12日から1945年(昭和20年)6月13日まで存在していた公事結社。国粋主義的勢力から社会主義的勢力までをも取り込んだ左右合同の組織である。(Wikipedia「大政翼賛会」

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「The Drawing of the Three」Stephen King

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Dark Towerに向かってただひたすら浜辺を歩くガンマンの目の前にひとつのドアが現れる。そのドアを開けるとどうやらそれは誰か別の人間の目で別の世界を見ているようだ。
「The Dark Tower」シリーズの第2弾である。このシリーズを読む前の予備知識として第1弾の「The Gunslinger」は非常に退屈だが、本作品以降は面白くなる、と聞いていたのだが、正直第1弾の退屈さは予想を上回る程で、続きを読もうか躊躇するほどだった。しかし、本作品。ガンマンであるRolandの旅が今後も不毛な大地を舞台に続くのかと思いきや、突然現れたドアによって、突然現代と繋がって非常にスリルあふれる展開になる。
最初のドアから見つめる世界は、飛行機に乗って、これから麻薬の密輸をしようとしている男の視点、いはゆる僕らの言う「現代」であった。そしてすぐにRolandは自分はただドアを通してその視点から世界を見つめるだけでなく、その男自身の行動を操れることを知る。そしてその世界からこちらの砂漠に物を持ってくることができることも…。
そして、そのRolandに視点を奪われながら、密輸を企てる男EddieはRolandの力を借りて危機を乗り越えながら、やがてマフィアの争いに巻き込まれていく。かなり思い切った展開で、前作と本作の間に著者のなかの本シリーズに対する大きな変化が感じら違和感もあるが、面白くなったことは間違いない。
本作品中ではそのドアが鍵になるのだが全体で3つのドアが現れる。2つ目のドアから見えるのは車椅子の女性の視点。やがてRolandは「何故、この時代なのか?」「なぜこの人間なのか?」とそのドアが自らを導く意味について考えるようになる。Rolandの過去はいまだ謎のままだが、そのドアを通してRolandが見て、ときには操作する人物達それぞれのドラマが本作品を非常に面白くしている。次回作が楽しみになる一冊。

「NO LIMIT 自分を超える方法」栗城史多

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世界七大陸最高峰の単独・無酸素登頂に挑む登山家栗城史多(くりきのぶかず)の写真と声を集めている。
正直内容はお世辞にも濃いとは言えない。文字は大きいし写真ばかりだし、30分もあれば読み終えてしまえるような内容である。しかしだ、挑んでいることがことだけに、書かれている言葉が重いのだ。
僕らには、彼が挑んでいることがどれほど大変なのか想像すらできない、「無酸素登頂が普通の登頂とどのように違うのかもわからない。そんな状態で、言葉が重く伝わってくる、なんて軽々しく言うのもおこがましいが、彼が本書の中で「何かを伝えたい」の「何か」を部分的かもしれないが、受け取った。と考えていいのではないだろうか。
さて、本書のなかで、栗城史多(くりきのぶかず)の過去の挑戦のなかでいくつか心に残っていることをつづっているのだと思うが、なかでも印象的だったのは、2009年のエベレスト登頂の失敗を大きな糧として挙げている点だろう。

登頂の喜びは一瞬だ。下山、失敗、敗北のつらさのほうがよっぽど長く続いていく。でも山に負けたとき、自分とどう向き合うのか?
そこからの成長こそ、山登りの本質があるような気がする。

僕も比較的楽観的に物事を考え、苦難さえも楽しめる人間だから、考え方に重なる部分もあった。物事をマイナスに考えてしまう人が読めばいろいろ参考になるのではないだろうか。

そして不可能は自分が作り出しているもの、可能性は自分の考え方次第で、無限に広がっていくんだということに気づいた。

なんかもっと大きいことに挑戦したくなる一冊だ。

やがて冒険で得る一番の財産は、冒険の記録ではなく、人との出会いだと気づく。
アコンカグア
アンデス山脈にある南米最高峰の山である。標高 6,962 m(6,959m・6,952mとの文献もあり)。またアジア以外の大陸での最高峰でもある。(Wikipedia「アコンカグア」
アンナプルナ
ネパール・ヒマラヤの中央に東西約50kmにわたって連なる、ヒマラヤ山脈に属する山群の総称。サンスクリットで「豊穣の女神」の意。(Wikipedia「アンナプルナ」
ダウラギリ
ネパール北部のヒマラヤ山脈のダウラギリ山系にある世界で7番目に高い山である。ダウラギリはサンスクリット語で「白い山」という意味である。(Wikipedia「ダウラギリ」
マナスル
ネパールの山。ヒマラヤ山脈に属し、標高8163mは世界8位である。山名はサンスクリット語で「精霊の山」を意味するManasaから付けられている。(Wikipedia「マナスル」
チョ・オユー
ネパールと中国とに跨る標高、8,201 mで世界第6位の山。(Wikipedia「チョ・オユー」
栗城史多オフィシャルサイト エベレストからのインターネット生中継を目指す小さな登山家

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「九月が永遠に続けば」沼田まほかる

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第5回ホラーサスペンス大賞受賞作品。
息子である高校生の文彦が失踪してから、佐知子(さちこ)の周囲で不幸なことが連続するようになる。文彦の行方を捜しながら、佐知子(さちこ)はその因果関係に疑いを持つ。
まず人間関係を把握する必要がある。佐知子(さちこ)の元夫雄一郎(ゆういちろう)との間に文彦(ふみひこ)という息子がいて、雄一郎は精神課の医師であり、そこの患者であった亜沙実(あさみ)と結婚して現在1人の娘冬子(ふゆこ)がいる。
そんな中で、本書の際立っている部分は、亜沙実(あさみ)とその娘、冬子(ふゆこ)の存在感だろう。繰り返し強姦されるという経験から精神を病む亜沙実(あさみ)。周囲の人間は「なぜ彼女ばかりが?」と疑問に思い、その理由については本作品ではまったく触れられていないのだが、なにか読者を納得させるものがある。
きっとそれは、誰もがそうやってただそこにいるだけで男性を性的に惹きつけるような魅力を持った女性の存在を信じているからだろう。そして同様にその娘、女子高校生冬子(ふゆこ)もまた異彩を放っている。
なにより佐知子の別れた夫で精神科意思である雄一郎と、その現在の妻で度重なる不幸ゆえに精神に異常をきたした亜沙実(あさみ)の不思議な関係は何か異世界観のようなものを感じさせる。
全体的漂う空気は非常に異色で際立っているものの、今ひとつ「よくある小説」の域から抜け出しきれていない気がする。次回作に期待する。
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「自爆する若者たち 人口学が警告する驚愕の未来」グナル・ハインゾーン

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
社会・経済学者である著者は、世界で発生するテロの原因として、「ユース・バルジ」というものに着目した。
「ユース・バルジ」とは「過剰なまでに多い若者世代」と言い換えることもできる。僕らが扮装や戦争の原因としてあげるとしたら何だろう。おそらく「宗教問題」や「貧困」を挙げるのではないだろうか。しかし、上でも書いたように、本書の著者の視点はやや異なる。若い男性の比率が多くなりすぎると彼らは自らの有り余ったエネルギーの矛先を求めそれがやがて内戦や虐殺につながるのだという。
ある意味「貧困」などより非常に納得のできる考え方である。著者はその「ユース・バルジ」がいかに過去紛争や内戦に影響を与え、また今後どのようなことに警戒しなければならないかを語る。面白いのは例えば、出生率が1の先進国と出生率が6のイスラムの国が戦争をした場合の話。イスラムの国の戦死者は多くの場合、その家族の次男や三男であるのに対して、先進国の場合その家族の長男である場合が多い。そうなると当然一家の大黒柱を失った親によって、先進国では戦争に対する反発も高まる、というもの。
今までこんな視点で考えたことがなかっただけに新鮮であった。残念ながらそんな今後も続く第三世界の「ユース・バルジ」に対してどのように対応すべきか、というようなことは書かれていない。残念ながら将来を悲観しているだけである。個人的には、そんな若者がエネルギーを平和的に消費する手段として「スポーツ」という答えもあるような気がするが、本書はそのようなことには触れていない。それでも全体的に非常に面白いと思える考え方だった。
残念なのは翻訳があまりにも酷いということ。関係代名詞を無理やり訳したのか4行にもわたる文章が頻出し、3,4回読み直さないと意味の取れない文章が多々あり、非常に読みにくい。英語が読める人には迷うことなく原書で読むことをお勧めする。
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「聖書の名画はなぜこんなにおもしろいのか」井出洋一郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
聖書の内容を知っていれば西洋絵画はもっと楽しめるはず。そういう考えでよく絵画に扱われるエピソードや、有名な絵画を例にとって解説している。
旧約聖書を中心に解説し、それぞれのエピソードで有名な絵、そしてその絵の登場人物の判断の仕方を解説している。当たり前のことであるが、各々のエピソードに登場する人物に対して、それぞれの画家の持つ印象は異なる。それゆえにその人物はそれを描く画家によって風貌が異なる。そういったなかで、どうやってその人物をそれと判断するか、と考えたときに、「アットリビュート」という物の存在が重要になる。
「アットリビュート」とは「○○を持っているのは○○だ」という考え方である。必ずしもそれは物ではなく時にはその風貌。例えば年老いているはず、とか若いはず。という要素として現れてくる。驚いたのは、絵画のなかに善と悪が存在する場合、右に位置するものが正しいということ。それゆえに「右(right)」=「正しい(right)」なんだそうだ。
本書で初めて知った印象的な画家は、アンドレア・マンティーニャ。ぜひ今後もしっかりとチェックしたい。
いずれにしても聖書の物語をしっかりと把握しておかないと理解しにくいものばかりで、まだまだ学ぶことは一杯あり先は長い、と感じさせてくれる一冊であった。

ユダはキリストが大好きだった。しかし、その何倍もキリストが妬ましかったのだろう。

【楽天ブックス】「聖書の名画はなぜこんなに面白いのか」

「クドリャフカの順番」米澤穂信

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
伝統の文化祭。手違いで作りすぎた文集を売るために古典部の4人は思考錯誤する。その一方で学内で起きている連続盗難事件。そんな文化祭の3日間を描く。
古典部の物語の第3弾である。例によって物語の舞台も、そこで発生する問題も、登場人物たちの悩みも、読んでいるものの気持ちを落ち込ませるほどのものではない、という気楽な物語。お馴染みの古典部の4人を中心に物語は進む。省エネがポリシーの折木奉太郎(おれきほうたろう)、お嬢様の千反田える。漫研と古典部を掛け持ちする伊原麻耶花(いはらまやか)。楽しいことにはなんでも首をつっこみたがる里志(さとし)である。前2作と異なるのは、本作品は4人に等しく視点が移り、今まであまりその心情が表現されていなかった麻耶花(まやか)や里志(さとし)の人間性がしっかり描かれている点だろう。
特に麻耶花(まやか)が、彼女の所属するもうひとつの部活、漫画研究会において、その性格ゆえに意見の異なる女生徒と衝突するのは、比較的印象的に残るシーンである。
さて、米澤穂信作品といえば、つねに「ミステリー」について考えさえる要素を備えていて、本作品でもそういった部分がある。文化祭中に発生した盗難事件が50音順に部活をターゲットに進んでいるということで、奉太郎(ほうたろう)、里志(さとし)はアガサクリスティの「ABC殺人事件」を重要なヒントとしてあげるのだ。もちろんその本を読んでなくても本作品を楽しむのに問題ないと思うが、アガサクリスティの名作ぐらいは目を通しておくべきなのかも、と思わされてしまう。
のんびり読める1冊。古典部の前2作より完成度が高い印象を受けた。

ホイール・オブ・フォーチュン
タロットの大アルカナに属するカードの1枚。カード番号は「10」。(Wikipedia「運命の輪」

【楽天ブックス】「クドリャフカの順番」

「天地明察」冲方丁

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第31回吉川英治文学新人賞受賞作品。第7回本屋大賞受賞作品。
江戸時代、碁打ちである渋川春海(しぶかははるみ)はその一方で数学や星にも興味を持って精進する。そんな多方面に精進するその姿勢ゆえにやがて、国を揺るがす大きな事業に関わることになる。
物語は指導碁をしていた折に、老中酒井に「北極星を見て参れ」と命を受けて、春海(はるみ)の人生は動き出す。その北極出地の最中に聞いたこんな言葉が、その後春海(はるみ)の人生に大きく関わることになる。

お主、本日が実は明後日である。と聞いて、どう思う?

実はこのくだりを読む瞬間に初めて、いままで暦の歴史というものを考えたことがなかったことに気づいた。現在使われている暦が、グレゴリウ暦と呼ばれることや、閏年の適用方法などは知っているが、ではそれが過去どのような経緯を経て世界共通の正しい暦として浸透したかは考えたことがなかったのである。それでも、今持っている知識。たとえば、一日の長さや、地球の楕円形の公転軌道から、それが非常に複雑な計算と、何年物太陽の観察なしには成し遂げられないものだということはわかる。
ある意味「掴み」としては十分である。僕のような理系人間はそのまま一気に物語に持っていかれてしまうことだろう。
物語は渋川春海(しぶかわはるみ)がその生涯に成し遂げた多くのことを非常に読みやすく面白く描いているが、そこで強調されるのは、春海(はるみ)の探究心や好奇心といった物事に対する姿勢だけでなく、春海(はるみ)の物事の達成をするのに欠かせなかった、多くの人々との出会いである。
水戸光国、関孝和、本因坊道策、保科正之、酒井忠清。いずれもどこかで聞いたことあるような名前ではあるが、正直、本作品を読むまでほとんど知らない存在だった。彼らの助けがあってこと、借りて春海(はるみ)が偉大なことを成し遂げたということで、それぞれの当時の立場や実績などにも非常に興味をかきたてられた。
「明察」という言葉は僕らにとって馴染みのある言葉ではない。本作品中でその言葉が使われるのは、数学者同士が問題を出し合い、自分の出した問題に対して、正答という意味で「明察」という言葉が使われている。
そして、本書のタイトルの「天地明察」とは。それは、天と地の動きを明確に察するという意味。現代においてでさえそれはもはや神の領域のような響きさえ感じるその偉業。当時それはどれほど困難なことだったのだろうか。また、世の中を変えるような偉業に一生かけて挑み続ける生涯のなんと充実していることだろう。情熱と充実感、人生の意味などについて考えさせる爽快な読み心地の一冊。

授時暦
中国暦の一つで、元の郭守敬・王恂・許衡らによって編纂された太陰太陽暦の暦法。名称は『書経』尭典の「暦象日月星辰、授時人事」に由来する。(Wikipedia「授時暦」
大統暦
中国暦の一つで、元の郭守敬・王恂・許衡らによって編纂された太陰太陽暦の暦法。(Wikipedia「大統歴」
渋川春海
江戸時代前期の天文暦学者、囲碁棋士、神道家。(Wikipedia「渋川春海」

【楽天ブックス】「天地明察」

「君の望む死に方」石持浅海

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
社長である日向貞則(ひなたさだのり)は、医師に余命6ヶ月と診断されたことによって、一つの計画を実行することにする。それは、自分に恨みを持つ社員梶間(かじま)に自分を殺させることだ。そして実行のために、その人物とカムフラージュのために何人かの幹部候補社員たちを熱海の保養所に集める。
なによりもその設定自体が面白いだろう。「誰かに自分を殺させる。」こんな設定はそうそうあるものではない。ひょっとしたらそんなあり得ない設定に抵抗を抱く人もいるかもしれないが、すでに何冊か石持浅海作品を読んでいる僕にとっては、これから展開される物語に対して期待感が高まるのを感じた。
本作品も石持浅海らしく保養所という狭い空間のなかで進んでいく。そこに集められた5人の幹部候補社員と、社長である日向(ひなた)。補佐役の専務。そして、その場をコントロールするために日向(ひなた)に招かれた3人である。その3人のうちの一人が、碓氷優佳(うすいゆか)なのである。読んだことある読者ならすぐに気づくことだろう。この物語は石持浅海の別の作品「扉は閉ざされたまま」と同じ世界で、その数年後を描いているのだ。そして「扉は閉ざされたまま」でも碓氷優佳(うすいゆか)が重要な役を演じた。
さて、二泊三日の研修という雰囲気でイベントは進みながらも、2人の駆け引きが進む。どうやって日向(ひなた)を合宿中に殺してなおかつ自分は警察に捕まらないように、と考える梶間(かじま)。そして、どうやって梶間(かじま)に「復讐を果たした」と思わせながら、自分を殺させて、そのうえで警察に捕まることなく会社を継いでもらおうかと考える日向(ひなた)。
とはいえ、「扉は閉ざされたまま」を読んだことのある人間には最後の展開が予想がついてしまうことだろうう。最終的に碓氷優佳(うすいゆか)がすべてを解決してしまうのだろう、と。それを知ったうえでなお先が楽しみなのは、2人の意図をどうやって碓氷優佳(うすいゆか)が上回って解決するかというその爽快感への期待ゆえなのだ。結果が見えているのにここまで楽しいのは、必ず事件が解決されるとわかっている探偵物語と似ているかもしれない。
そしてその期待は最後まで裏切られることはない。正直学ぶもののない物語のための物語と切って捨てることはできる、そんな人によって好みの分かれる作品ではあるが、それを補うだけの魅力を感じるのは、単に僕の好みが知的な女性、という理由のせいだけではきっとない。
過去の石持作品の雰囲気が好きで、それを再度味わいたくて本書を手に取った人には決して後悔させない一冊。個人的には先に「扉は閉ざされたまま」を読んでから挑戦して欲しいもの
【楽天ブックス】「君の望む死に方」

「My Sister’s Keeper」Jodi Picoult

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
骨髄白血病を患うKateを救うために遺伝子操作をして生まれたAnna。両親は、Annaは輸血や骨髄移植などを繰り返させてKateの命を永らえさせる。しかしある日、Annaは自分の意思で自分の行動を決める権利があるはず。と、両親に対して訴訟を起こすことを決意する。
なんという重いテーマなんだろう。言ってしまえば「命の比較」である。1つの命を生きながらえさせるために、1人の健康な人間に痛みや不自由を強いることが正しいのか。本作品で扱われているのは、そんな軽く恐れを抱くほど重いテーマである。前半部分は回想シーンを繰り返しながら、Kateが白血病と診断されて、Annaを生む決意をする両親のSaraとBryan。そして、KateとAnnaの兄Jessiの生活など、常に死と隣り合わせの人間が家族のなかにいるがゆえに、普通の生活とはかけ離れた日常を送らざるを得ない家族の生活が描かれる。
本作品の注目すべきなのはその重いテーマだけでなく、そのテーマをより現実的に見せる、さまざまな描写である。例えば病院に検査や手術に向かうたびに自分の部屋を過剰なまでにきれいにするKateや、自分の言う事をKateの言う事ほどしっかりと聞いてもらえないと感じる兄Jessiなどがそれである。
そして後半は舞台を法廷に移す。証人として証言するそれぞれの心のうち。特に父親であるBryanの証言は涙を誘う。。

だったら誰か正しい答えを教えてくれないか。どうすれば正しい答えにたどり着けるかわからないんだ。何が正しくて何が公平かはわかる。でもどちらもこの場合は当てはまらない。もっといい解決策があるに違いないとも思っている。でも、思い続けて13年経ってしまった。まだ答えが見つからない。

最後まで証言することを拒むAnna。そして訴訟を起こしたAnnaの本当の意図は最後まで明らかにならない。訴訟を通じて次第に心を通わせあう弁護士のCampbellとAnna。Campbellの連れている犬の名前がJugdeという点が個人的にはヒットである。

今まで立ち上がって話しても、なんにもならなかったのだろう。でも今回は、君が話せばみんなが耳を傾けるだろう。

僕ら日本人からすればAnnaの生まれる過程。つまり遺伝子操作による出産という部分にも興味を持ってしまうのだが、残念ながらその点には本作品は触れていない。このへんがアメリカと日本の文化の違いだろうか。
なんにしても後半は涙を誘うシーン満載である。

portacath
皮膚に埋め込まれる小さな医療機器。
Laundromat
セルフサービス式コインランドリー
Energizer
アメリカ合衆国のコンシューマー製品メーカ?。ミズーリ州セントルイスを拠点とする。その製品には電池を含み、約25%のシェアを持つ。(Wikipedia「エナジャイザー」
AWOL(absence without leave)
無許可{む きょか}の離隊、無断{むだん}欠勤{けっきん}[外出{がいしゅつ}]、職務離脱{しょくむ りだつ}、帰営遅刻。
EMT(Emergency Medical Technician)
救急救命士
エミュー
平胸類(ダチョウ目)の鳥の一種。オーストラリア全域の草原や砂地などの拓けた土地に分布している。周辺海域の島嶼部にも同種ないし近縁種が生息していたが、現生種の1種のみを除いて絶滅したとみられている。オーストラリアの国鳥。(Wikipedia「エミュー」

「チヨ子」宮部みゆき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
幻覚や幽霊のような不可思議な出来事に絡めた5編の物語を収録した短編集。
短編集ということで、それぞれの物語は短く、とてもお腹いっぱいになる、というようなものではないが、ところどころに宮部みゆきらしさのようなものが感じられる。どこにでもありそうな物語のなかに不思議な出来事を盛り込んでいるため、宮部みゆきが超能力者を扱っていたような、そんな不思議な期待感を感じさせる。

何かを大切にした思い出。
何かを大好きになった思い出。
人は、それに守られて生きるのだ。それがなければ、悲しいぐらい簡単に、悪いものにくっつかれてしまうのだ。

個人的には4つめの物語「いしまくら」が好きだ。父と娘で、公園で殺された女性について調べる物語。その事件を発端として広まった、幽霊が出るといううわさ話。それは世の中の人々の不安と出来事を端的に説明しているようにも感じられる。
なにかの出来事に対して、誰かが行う動機付け。原因と状況をみて、「きっと彼女はこう感じたんだろう」。宮部みゆきの行う動機付けは僕らが思う、さらに一歩上をいく。
わずかであるが久しぶりにそんな空気に触れさせてもらった。しかし、やはり宮部みゆきにはこの世界観で長編を書いてほしい。
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「ピース」 樋口有介

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
埼玉の秩父で起こった連続猟奇殺人事件。犯人の目的は何なのか。被害者に繋がりはあるのか。
最近書店で平積みになっている本作品。物語は秩父にある一つの「ラザロ」というスナックを中心に進む。埼玉の奥地にあるスナックに集まってきた人々。若い大学生もいれば、熟年のカメラマンやピアニストもいる。みんなそれぞれ過去を明らかにしないまま、週に何度かそのスナックに集い、顔と名前だけは知っている関係になる。そんななかで周囲でおこった殺人事件。物語は必ずしも事件解決に勤める刑事たちに集中する訳でもなく、また、そのスナックに集まった人たちは必ずしもそんな殺人事件に明確な恐怖をいだくわけでもなく、そのまま疲れた日々を送り続ける。
猟奇殺人事件という本来スリリングな展開になるであろう題材でありながら、田舎町のゆっくりとした時間の経ち方を感じさせる。ハリウッド映画というよりもフランス映画。そういった意味では個性を感じさせる作品。読者は途中になって考えるだろう。そもそもタイトルとなっている「ピース」の意味とは?と。
個人的にはむしろ秩父という土地に非常に興味を抱いてしまった。機会があればのんびり訪れてそのゆっくりした時間の経過を楽しみたいものである。
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「もしもし、運命の人ですか。」 穂村弘

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
44歳になる著者が自信の経験などもふまえて男女の恋愛観を語る。
様々なエピソードやいろんなシチュエーションを想定して、この場合男はどうするべきか?こいういうとき女性はどう思っているのか、など、いろんな視点から男女の恋愛を見つめる。正直、イマイチぴんとこない話もたくさんあるのだが、なぜかぐさっと突き刺さるような話もちらほら。たまたま著者が男だからそう感じるのかもしれないが、恋愛においては女性は何倍も上手なのだなと、思ってしまう。
なるほど、そうか、女性に瓶を渡されたらそれはなにがなんでも力づくで開けなければいけないのか・・・・。気になるのは女性が本書を読んだらどのように感じるのか、ということ。
【楽天ブックス】「もしもし、運命の人ですか。」