とにかくおすすめ

ジャンル関係なくオススメを知りたい人向け

とにかく面白い

ページをめくる手が止まらない、寝る時間さえ惜しくなる最高のエンターテイメント

泣ける本

思いっきり泣きたい人向け

優しい気持ちになれる本

悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

深い物語

いろいろ考えさせられる、深い物語

生き方を考える

人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「傍聞き」長岡弘樹

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
救急隊員、女性刑事、消防士といった特殊な職業に就いている人を描いた4つの物語。
4つの物語を収めているにもかかわらず薄いため、あまり期待していなかったのだが、どの物語も非常に深く、結末は予想をいいほうに裏切ってくれる。2番目の表題作「傍聞き」で日本推理作家協会賞短編部門受賞したということだが、個人的に印象的だったのは最初の物語である「迷走」である。
ナイフで刺された怪我人を搬送中の救急車だが、病院の近くにたどり着きながらも怪我人を下ろすことなく、病院の周囲をサイレンを鳴らし続けながら走る。その怪我人と面識のある救急隊長の意図は、怪我人を救うことなのかそれとも…。
残りの3つの物語も短いながらもそれぞれの登場人物の個性がしっかりと出た物語となっている。この手軽さでこの深さ。読む価値ありといえる。
【楽天ブックス】「傍聞き」

「凍土の密約」今野敏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ロシアに精通した公安捜査官倉島(くらしま)の物語の第3弾。都内で発生した殺人事件の捜査に加わるように倉島(くらしま)は理由も告げられずに指示される。
「曙光の街」「白夜街道」に続く第3弾である。前2作品は元KGB諜報員ヴィクトルと倉島(くらしま)の双方に焦点をあてた物語だったが、本作品では残念ながらヴィクトルは名前として出てくるだけで姿を現さない。そのためシリーズのなかではかなり地味な展開になっている。
さて、都内で発生した殺人事件で、明らかにプロの仕業と思われる遺体を目の当たりにし、倉島(くらしま)はそのロシア絡みの情報網から一人のロシア人、アンドレイ・シロコフという名前にたどり着く。いったいその男は何を企んでいるのか、なんのために被害者たちを殺したのか。その真相を突き止めるため、倉島(くらしま)はロシア人やその関係者たちから情報を得ようとする。しかしそれは、一歩間違えればこちらの動きを相手に教えて、自らも命を狙われかねない行動。常に危険な駆け引きの連続である。ある人間について調べるためにその人間の名前をネットで検索するだけで、追跡者として特定され命の危険にさらされる。そんな様子はなんでもかんでもまずインターネットで調べようとする人にとっては衝撃かもしれない。
さて、真実が明らかになるにつれてそれは第二次世界大戦中の出来事へとつながっていく。公安捜査官の活動は近年いろいろな刑事ドラマに取り上げられるせいか、一般の人にもある程度知られるようになっては来ているが、それでも平和な日本を満喫している僕らにはとても現実感わかない世界である。本作品はスピード感や読者を一気に引き込む力があるわけではないが、そんな公安捜査官たちが、僕らの視界に入る前のところで平和を守ろうと奔走する姿が伝わってくる。
【楽天ブックス】「凍土の密約」

「フェルマーの最終定理」サイモン・シン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
17世紀に数学者フェルマーが残した定理。その余白には「証明を持っているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」とあった。以後、3世紀に渡って世界の数学の天才たちの挑戦を退けてきたこの定理がついに1994年アンドリュー・ワイルズによって証明されることとなった。
数学が好きな人間なら誰でも聞いたことがあるだろう。「フェルマーの最終定理」をここまで有名にしているその理由の一つがそのわかりやすさである。数学の素人でさえもその定理が言っていることの意味はわかるゆえに誰もが証明したくなるのだが、それを証明することも判例をみつけることもできない。
本書は数学における「証明」というものの意味、そして数学者の性質から非常にわかりやすく、そして面白く説明している。タイトルを聞いただけで数学嫌いな人は敬遠してしまうのかもしれないが、本書は本当にすべてをやさしく書いている。
さて、そして物語は徐々にそのフェルマーの最終定理の核心へと繋がっていく。驚いたのは、その証明にあたって、日本人の数学者志村五郎(しむらごろう)と谷山豊(たにやまゆたか)によって考え出された谷山=志村予想が大きな鍵となったことである。
過去、多くの人がその証明に挑戦し敗れるなかで編み出されたいくつもの数学的証明手法をいくつも見ることで、フェルマーの最終定理は決してただ一人の数学者によって証明されたわけではなく、アンドリュー・ワイルズを含む多くの数学者による努力の積み重ねによって成し遂げられたとわかるだろう。
そんな数学者たちの300年の汗と涙がしっかり感じられるから、アンドリュー・ワイルズの証明の瞬間には鳥肌が立ってしまった。

そろそろお茶の時間だったので、私は下に降りていきました。私は彼女に言いました——フェルマーの最終定理を解いたよ、と

現代に生きる人は思ったことがあるだろう。科学が発展し地上のすべてがすでに切り開かれ、未知なる物など地球上にはなく、なんて退屈な世の中なのだろう…と。しかし、本書は見せてくれる。数学の世界にはまだまだ未知なる世界があふれている、と。
わからない言葉もいくつかあったが、数学という世界の魅力を存分に伝える一冊である。
【楽天ブックス】「フェルマーの最終定理」

「特等添乗員αの難事件I」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人とは違った考え方を常にする浅倉綾奈(あさくらあやな)はそれゆえに社会に適応できずにいた。その才能に目をつけた警察キャリア壱条那沖(いちじょうなおき)は、綾奈(あやな)に社会に適応させるべく特別な授業を受けさせることを決める。
松岡圭祐ワールドの新たなヒロインの第一作であるが、本作品には万能鑑定士シリーズの凛田莉子(りんだりこ)もかなり頻繁に登場する。物に対する知識を極限まで蓄えた凛田莉子(りんだりこ)と、物事を人とは別の視点から眺めることに長けた浅倉綾奈(あさくらあやな)が悪事をたくらむ輩と対決する物語である。
第一作ということで、浅倉綾奈(あさくらあやな)の成長の姿が非常に面白い。個人的に印象的だったのは綾奈(あやな)の教育担当である年配の元教師能登(のと)のその考え方である。

ゲームはインベーダーかせいぜいゼビウスまで、最近のものはついていけないと語る中高年は、それゆえ信頼できる存在ですか?AKBのメンバーの顔の区別がつかないとか名前を知らないというのが自慢になりますか?いずれも大きな勘違いといえましょう。いつの世も、どのような分野であれ知識の幅は広ければ広いほどよいのです。

年配はゲームをしないとかマンガを読まないとか、一体誰が決めたのだろう。いつまでも新しい物事に目を向けて生きていたいと思える言葉である。
そして終盤に向かうにつれ立派な一人前の添乗員になっていく綾奈(あやな)。さて、壱条(いちじょう)との恋模様はどうなるのか、家族とはうまくやっていけるのか。続編が楽しみである。
【楽天ブックス】「特等添乗員αの難事件I」

「Relentless」Simon Kernick

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2人の子供に恵まれた普通の幸せな結婚を楽しんでいたJohn Meronはある日、旧友からの久しぶりの電話を受けて以降、追われる身となる。真実が見えないまま家族を守るためにMeronは奔走する。
ジェットコースター小説というものがあるならまさにそれ。物語の大部分でMeronは逃走、銃撃戦、誘拐、拉致と言ったスリリングな内容で占められている。ハリウッド映画を見ているようなスピーディな展開で栄が向きな物語と言えるだろう。
逃走劇の渦中にいるMeronとその妻Kathyだけでなく、過去につらい出来事ゆえに犯罪捜査に対して違った思いを抱き続けるBoltの心の内なども印象的である。
そして次第に明らかになる大きな犯罪の影。結末に関してやや説明不足の部分もあるような気がするが、一気に読める内容である。また物語の舞台がイギリスという点も面白い。

「天空の帝国インカ その謎に挑む」山本紀夫

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
文字を持たないゆえに謎に包まれたインカ帝国。その歴史とそこでの生活、文化などを何年もアンデスに通い続けた著者が語る。
インカ帝国の謎の一つに、なぜそんなにも高地に彼らは文明を築いたのか、というものがあり、その点に対して非常にわかりやすく説明している。

海抜4000メートル前後の高地でも人間の暮らしを可能にした要因のひとつは、やはりそこが低緯度地帯にあることが大きい。低緯度違いであるために、富士山の頂上ほどの高地でも気候は1年をとおして比較的温暖なのである。

印象的だったのがその異形のものを崇拝する文化である。アンデスではじゃがいもやトウモロコシなどの収穫物だけに限らず、兎唇や斜視や双子など人間に対しても希少な存在を敬う文化が根付いているという。いじめや差別の起こる現代社会をみるとそれはむしろ非常に望ましい文化のようにさえ思える。
終盤では、その滅亡の謎に迫る。なぜこれだけ永きにわたって繁栄した文明が、スペイン人の侵攻によってあっさりと滅んでしまったのか。筆者はそこに事実と経験に基づいて推測を語っている。それは異形なものを崇拝する文化にかかわるものであった。
タイトルから期待した「謎」というよりも、しっかりとした調査によって得られた事実に近いことが説明されていて、あまり面白い、とお勧めできるものではないが、インカ帝国について純粋に理解を深めたい人にはお勧めできる内容である。
【楽天ブックス】「天空の帝国インカ その謎に挑む」

「エッジ」鈴木光司

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
長野、新潟、カリフォルニア。各地で発生している失踪事件。父親が失踪するという経験のある栗山冴子(くりやまさえこ)は失踪事件を扱うテレビ番組のメンバーに加わることになる。
ついさっきまで存在していたかのような痕跡を残して人が失踪する。本作品でも触れられているマリーセレスト号の話は非常に有名であるが、本作品がすごいのは、やはりプロローグである数ページで作り出す、失踪のその空気感である。鈴木光司のその巧みな描写技術はおそらく「リング」で多くの読者が経験したのだろうが、本作品でもそれは健在。これが明らかにSF的内容である本作品まで「ホラー」というカテゴリーに含まれてしまう理由だろう。
さて、失踪事件というと、多くの人は超自然的な話を想像するのかもしれないが、実際にはむしろ非常に科学的な話である。本作品で世の中が狂い始めている…と科学者たちに思わせた最初の出来事は、無理数であるはずの円周率πがある桁以降で0になってしまう、というもの。磁場やフォッサマグナなど、失踪という荒唐無稽でありえない話が、科学的なことや、未解決な歴史的事実と絡めて説明されるうちにどこか真実味を帯びて聞こえる点が面白い。

紀元前三千年から二千年に作られたエジプトや南米のピラミッドには既に円周率が使われている。しかし、歴史上円周率の発見は、それよりずっと後の時代とされている。

そして、冴子(さえこ)と番組のメンバーたちは、真実に近づくどころか、真実の法が人々の目の前に次第に姿を現していく。リーマン予想、反物質、インカ帝国、あるはずのない南極大陸の地図、など好奇心を刺激する要素の数々。きっとこれからも鈴木光司(すずきこうじ)の作品は迷わず手に取ることになるだろう。そう思わせる内容である。

オーパーツ
それらが発見された場所や時代とはまったくそぐわないと考えられる物品を指す。(Wikipedia「オーパーツ」
歳差運動
自転している物体の回転軸が、円をえがくように振れる現象である。歳差運動の別称として首振り運動、みそすり運動、すりこぎ運動の表現が用いられる場合がある。(Wikipedia「歳差」
リーマン予想
ドイツの数学者ベルンハルト・リーマンによって提唱された、ゼータ関数の零点の分布に関する予想である。数学上の未解決問題のひとつであり、クレイ数学研究所はミレニアム懸賞問題の一つとしてリーマン予想の解決者に対して100万ドルの懸賞金を支払うことを約束している。(Wikipedia「リーマン予想」
ピーリー・レイースの地図
オスマン帝国の海軍軍人ピーリー・レイースが作成した現存する2つの世界地図のうち、1513年に描かれた地図のことを指す。この地図は、クリストファー・コロンブスがアメリカ大陸を「発見」し、アメリゴ・ヴェスプッチが南アメリカを調査してから間もない時期に描かれているにもかかわらず、アメリカ大陸を非常に詳細に描いており、コロンブスやヴェスプッチの原図が失われた現在では、アメリカ大陸を描いた史上最古の地図といわれる。(Wikipedia「ピーリー・レイースの地図」
フォッサマグナ
日本の主要な地溝帯の一つで、地質学においては東北日本と西南日本の境目とされる地帯。中央地溝帯とも呼ばれる。(Wikipedia「フォッサマグナ」

【楽天ブックス】「エッジ(上)」「エッジ(下)」

「ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち」三上延

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
鎌倉の古本屋の店主である篠川栞子(しのかわしおりこ)は人見知りで口下手だが、古本をこよなく愛し、古本に関わることではすぐれた洞察力を発揮する。就職浪人中の五浦大輔(いつうらだいすけ)は本の鑑定のためにその古本屋を訪れる。
やはり本シリーズの魅力は篠川栞子(しのかわしおりこ)のその個性だろう。「千里眼シリーズ」で有名な著者、松岡圭祐も「万能鑑定士」シリーズで、非常に知識のある女性を描いているが、最近で言えば「鉄子」と言われる女性鉄道オタクが市民権を得たように、世の中が度を越して知識を持っている女性を求めているのかもしれない。
物語はそんな篠川栞子(しのかわしおりこ)と五浦大輔(いつうらだいすけ)の周辺で起きる、言ってしまえばそれほど深刻でない日常の問題を、栞子(しおりこ)が解いていく。その過程で語られる、古本に関わる小話や、夏目漱石、太宰治などの日本文学が非常に好奇心を掻き立ててくれる。誰もが聞いたことのある著者でありながら、なんとなく「古臭い」「退屈」といったイメージをぬぐえずに実際に読んだことのない人は多いのだろう。本作品は、そんな躊躇している人の背中を押してくれるだろう。実際僕も、太宰治を何冊か読んでみようか、と読み終わって思った。物語自体が、「ものすごい面白い」とかいうわけではないが、心地よく視野を広げてくれる作品である。
本作品では、鑑定、古本に深くかかわる内容である、古本屋といえば京極夏彦の「姑獲鳥の夏」、鑑定といえば松岡圭祐の「万能鑑定士シリーズ」が僕のなかで印象的だったので、まだ読んだことのない人は読み比べてみてはどうだろうか。

小山清
東京府出身の小説家。1952年(昭和27年)に『文學界』に発表した「小さな町」や『新潮』発表の「落穂拾ひ」など、一連の清純な私小説で作家としての地位を確立。 1951年(昭和26年)に「安い頭」が第26回芥川賞候補に、1952年に「小さな町」が第27回芥川賞候補に、1953年(昭和28年)「をぢさんの話」が第30回芥川賞候補にあげられた。(Wikipedia「小山清」
ピーター・ディキンスン
イギリスのSF作家、ファンタジー作家、推理作家、絵本作家。ディッキンソンの表記もある。アフリカの北ローデシア(現ザンビア)、リヴィングストン生まれ。(Wikipedia「ピーター・ディキンスン」
太宰治
日本の小説家。1936年(昭和11年)に最初の作品集『晩年』を刊行した。1948年(昭和23年)に山崎富栄と共に玉川上水で入水自殺を完遂させた。主な作品に『走れメロス』『津軽』『お伽草紙』『斜陽』『人間失格』。その作風から坂口安吾、織田作之助、石川淳らとともに新戯作派、無頼派と称された。(Wikipedia「ピーター・ディキンスン」

【楽天ブックス】「ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち」

「観察眼」遠藤保仁/今野泰幸

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本代表の遠藤保仁(えんどうやすひと)と今野泰幸(こんのやすゆき)が、過去のサッカー人生や、現在の日本代表、Jリーグなどを語る。
今野(こんの)の語る内容からは、とりたててとりえのなかった選手が日本代表になるまでの苦労や心構えが感じられる。人見知りゆえに、初めて代表に呼ばれたときは風をひいてしまった苦労など、組織の中で自らの長所を知り、それを活かしつつ監督の求める要求にこたえる。というむしろサッカーに限らず組織のなかでの心構えとして通用しそうな内容である。
また、後半の遠藤(えんどう)の内容からは、さすがに現日本代表のキープレイヤー的な視点を感じさせてくれる。

例えば、俺が考えているのは「ボールを見る時間を少なくすること」。サッカーというスポーツは、基本的にボールが選手の足下にある。下を向けば当然、上を見られない。下を向く時間を0.1秒でも短くすれば、その分だけ周囲の状況が見られる。

2人の語る内容からは、ザッケローニの求める理想の選手像とオシムの求める選手像の違いが見えてくる。また、間の章ではアジアカップ準々決勝のカタール戦について、試合経過ごとの2人の心のうちを語っている点が面白い。その試合を観戦していない人がどれほど楽しめる内容か、はなんとも言えないが、2人とも派手な選手ではないだけに、その心のうちは新鮮である。
【楽天ブックス】「観察眼」

「30代にしておきたい17のこと」本田健

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
30代のうちにしておくべきこ著者が語る。
正直読み始める前は、価値観を押し付けるような不快な内容で、人生をやりたいこともなく過ごしているような人向けの内容、と馬鹿にしていたりもしたのだが、なかなか興味深く読むことができた。印象的だったのは結婚に関する記述。

だから、パートナーシップで成功できる数パーセントに入る自信がなければ、シングルで生きる選択もありだということを覚えておいてください。

うまくいかない結婚の方が、一人で生きるよりも不幸。ということらしい。まさに常々感じていながることである。また、多くの人が嫌いなことを仕事にしている世の中がおかしい、というのも印象的である。

私たちの孫の一人が聞くでしょう。
「どうして、おじいちゃんの時代は、過労死のリスクもあるのに、一日何時間も満員電車で通勤して、嫌いな仕事をやっていたの?」

著者は、「好きなことをやっていればやがてどこかにたどり着いてそれを仕事にできる。」と主張するのだ。それを「たまたま好きなことを仕事にできた人だから言える理想論」と片付けることもできるが、それは読者次第だろう。また、個人的には、人脈をつくるために、自ら主催のパーティを開催する。という考えに刺激を受けてしまった。そのほかにも一般的に人生において心がけておくべきことが書かれている。さらっと読んでおいても損のない内容である。
【楽天ブックス】「30代にしておきたい17のこと」

「哲学のすすめ」岩崎武雄

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
そもそも「哲学」という分野にあまり今まで目を向けていなかった。と突然思い立って手に取った。本書はまさにそんな「哲学って何?」というような人向けの内容で、著者は哲学の必要性を訴え続ける。
世の中にはどうしても「哲学か科学か」というように、二者択一を迫るような風潮があるが、著者自身も決して科学を否定しているわけではなく、例えば、何か目的があって、それを達成する手段が科学であり、何を目的とするか、が哲学であると語る。つまり哲学とは「価値観」なのである。
「哲学」と言うと、少し距離を置いてしまう人も「価値観」と聞くと、それは誰しもが持っているもの、として身近に感じられるのではないだろうか。
なかなか回りくどく複雑な説明が多く、なかなか理解しやすい本ではなかったが、興味深い話もいくつか拾うことができた。もう少しコンパクトにして、重要な部分をわかりやすく書くこともできたのではないかと思える内容。
【楽天ブックス】「哲学のすすめ」

「No Time for Goodbye」Linwood Barclay

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ある朝、14歳の少女Cynthiaが目覚めると父も母も兄もいなくなっていた。それから25年後、結婚して娘と3人で暮らすCynthiaはいまだに25年前の夜の出来事を忘れられずにいた。
物語は家族の失踪から25年後、Cynthiaの夫のTerry目線で進む。過去の経験から娘のGraceから目が離せないCyinthia。それに対して、過去を忘れて前へ進むべきだと主張するTerry。前半は、そんなぎくしゃくした家族のやり取りで展開する。
印象的なのは25年間、失踪した家族の理由を考え続けて、何度も「自分のせいかも?」と自分を責め続けたCynthiaの心のうちだろう。
家族の失踪に対して物語的に説明をつけようとすればいくらでも説明のつく出来事を考えることはできる。それゆえに期待はずれな結末を覚悟したりもしたのだが、結末に待っていた真実は予想以上に深く泣ける家族の物語だった。
おそらく今年もっとも泣かされた物語。

その後の数時間に起こったことによって、そのメモはただのメモではなく、母親が娘に遺した最後のメモになってしまった。

「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」白石一文

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第22回山本周五郎賞受賞作品。
雑誌社の編集長であるカワバタは胃ガンと診断される。そんなカワバタが死を意識しながらも世の中を見つめながら生きていく。
最近の白石一文の作品はどれも死と隣り合わせの場所で生きている人の目線で世の中を語るものが多く、本作品もそんな物語である。胃ガンと診断され手術を受けた後も再発を恐れ、死を意識し続けるからこそ見えてくる世の中の形が描かれている。
それは、僕らがもはや疑問も持たずに受け入れている人生の形や、社会のシステムなどに対して、もう一度疑いの目を向けさせてくれる内容である。

結婚というのは人間関係じゃないのよ。純然たる経済行為。繁殖や相互扶助という目的はあるにしても、この社会は夫婦や家族を単位として動いたときに最も経済効率が高くなるように作られているから。
どうして誰も彼も金が入ると豪勢な家に住みたがるんだろう?家がでかくなればなるだけ家族はバラバラになるってのに

ネットカフェ難民や、貧困問題など現在の社会問題や、その一方で使い切れないようなお金を手にしている有名人にも触れ、世の中の矛盾を指摘していく。カワバタの目線で語られるから、何か無視できない重みを感じてしまう。
ページをめくる手を加速させるような面白さはないが、世の中について考えさせる内容に溢れている。似たような本ばかりが溢れるなかちょっと違う本を読んでみたい、という方は、一度読んでみるべき本かもしれない。
【楽天ブックス】「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け(上)」「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け(下)」

「廃墟に乞う」佐々木譲

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第142回直木賞受賞作品。
過去の事件によって精神病を患い休職中の刑事、仙道孝司(せんどうたかし)はその有り余る時間ゆえに知り合いから依頼される未解決の事件や、警察が動けない事件の捜査の依頼を受ける。
他の佐々木譲の作品同様、本作品も北海道を舞台とした警察物語。過去の強烈なトラウマゆえにその回復を待つ、という設定ながらもその過去の事件についてはあまり触れられないままいくつかの物語が展開する。いずれも派手な事件ではない点や、余計な説明や描写が少なく展開の速さは非常に佐々木譲らしい。
直木賞というと、どちらかというと多くの心を掴みやすい物語という印象があるのだが、本作品はどちらかというと地味で玄人好みなのではないだろうか。

ニセコ
北海道後志支庁管内にあるニセコ町、倶知安町、蘭越町などをまたぐ地域の総称のこと。(Wikipedia「ニセコ」
参考サイト
ニセコリゾート観光協会

【楽天ブックス】「廃墟に乞う」

「もう誘拐なんてしない」東川篤哉

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大学生の樽井翔太郎(たるいしょうたろう)はバイトの途中で1人の女子高生と知り合う。病気の妹を救う為にお金が必要な彼女は、幸か不幸かヤクザの組長の娘。2人は狂言誘拐を決意する。 「謎解きはディナーのあとで」の本屋大賞で一気に有名になった著者。本作品はそれ以前の作品となるが、その個性的なテンポは本作品にもしっかり存在している。
ツッコミを前提とした台詞の数々。非現実な設定のオンパレード。何かを学ぶ為に読む物語では決してないが、こういう空気に触れたくなるときは誰にでもあるものだろう。
さて、そんななかで本作品の個性を挙げるとするなら、物語が下関市の関門橋付近で展開される点だろう。僕自身行ったことも通りすぎたこともない場所なので想像するしかないのだが、東京という日本の中心(この表現にもやや抵抗があるが)から遠く離れた場所に生活の基点を置く人々の都会への憧れや嫉妬とともに、巌流島、壇ノ浦、 赤間神宮など、その場所の名所が物語に絡めてある。
特にお勧めするような作品でもないが、決して外れでもない。こんな空気が楽しみたい気分のときに気楽に楽しむべき本である。
【楽天ブックス】「もう誘拐なんてしない」

「Fire Starter」Stephen king

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
実験的投薬によって不思議な力を身につけたAndyとVicky、しかし2人の娘Charlieはさらに強力な力を持つこととなる。それは念じるだけで火をおこすことのできるパイロキネシスだった。AndyとCharlieはその力のために組織Shopから追われることとなる
宮部みゆきのクロスファイアのもととなった物語と聞いて非常に興味を持って手に取った。物語の鍵となるのパイロキネシスという能力を持ちながらもその力をコントロールしきれないゆえに自らの力におびえる7歳の少女Charlieと、その父親で人の心を操作する能力を持つAndyである。
2人はその逃避行のなかでたびたびその力を使わざるを得ない状況に陥るのだが、使い過ぎることによって自らの体力や命さえも脅かすのである。個人的にはCharlieの力が無意識に出てしまうシーンなどが印象的だ。たとえば、泣きわめくCharlieの横で、温度計の目盛りがじわじわ上がっていくのを見て、なんとかCharlieに平静さを取り戻させようと努めるAndyのシーンや、階段を降りようとしてテディベアのぬいぐるみにつまずいた次の瞬間にぬいぐるみが燃え上がるシーンなどがそれである。
さて、超能力者を中心にすえた物語は多々あるが、終わりはだいたいその人が死ぬか能力を失うか、である。Stephen Kingがこの物語をどうやって終わらすか、という点も途中から僕の興味をそそる部分だったのだが、その点も及第点をあげられるだろう。幼い女の子Charlieがその年齢に似合わないたび重なる試練を乗り越えて成長していく物語としてその心の揺れ動くさままでしっかりと描かれている。
ややスピード感に欠けると感じる部分もあるが非常に満足できる内容である。

「アリアドネの弾丸」海堂尊

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
不定愁訴外来の田口公平(たぐちこうへい)は新たに設置されるエーアイセンターのセンター長を任される。しかし、不審な事件が起こり始める。
エーアイとは、「Autopsy imagin」のっ略で死亡時画像診断とも言われており、著者海堂尊(かいどうたける)はデビュー作の「チームバチスタの栄光」からその利便性を訴えている。そして同時に、その利便性にもかかわらずその使用が広まらないのが、解剖という行為が司法と医療という境界上に位置するためその利権争いによってであるとも、繰り返し著書のなかで触れられている。
さて、本書も当然そのような話が多く触れられているが、ミステリーとしてもなかなか傑作に仕上がっている。なんといっても、エーアイセンターが発足するにあたって田口公平(たぐちこうへい)は「チームバチスタの栄光で」活躍した白鳥圭輔(しらとりけいすけ)と「イノセントゲリラの祝祭」で強烈な印象を残した彦根新吾(ひこねしんご)をオブザーバーおよび副センター長に据えるから、このシリーズを読み続けている人にとっては興奮させる展開である。2人のロジカルモンスターが競演するのである。
そして物語は、コロンブスエッグと呼ばれる縦型MRIの周辺で起きた殺人事件の真相解明へと移っていく。強烈な磁場を形成するMRIゆえにその周囲での金属の取り扱いに注意しなければならない、読者はすぐにそれが何らかのトリックに使われるだろうことは気づくだろう。それをどう物語に仕上げ、それをどう解決するか、それが本作品の鍵であるが、個人的には十分及第点をあげられる内容といえる。

もしも医療主導でエーアイセンターが完成したら、エーアイが第三者として司法解剖を監査できる。警察は捜査現場の問題を、司法解剖の闇に紛れ込ませ誤魔化してきた。それが全部明るみに出れば、法医学者はもちろん、警察にとっても死活問題だ。

エーアイという題材を用いてミステリーを描き、訴えたい内容をしっかりと読者に伝えるそのバランスがすごい。
【楽天ブックス】「アリアドネの弾丸」

「サヴァイヴ」近藤史恵

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ロードレースに賭けて生きている人たちを描く。「サクリファイス」「エデン」に繋がる物語。
「エデン」の続編だと思って手に取ったのだが、実際には、前2作品の前後に時間的に位置する短編集となっている。謙虚なロードレーサー、白石誓(しらいしちかう)を主役に据えた物語はもちろん、「サクリファイス」で誓(ちかう)とともに若手のホープとして活躍した伊庭(いば)を中心とした物語や、すでにピークをすぎて引退を感じ始めながらもチームに貢献することを選んでロードレースにかかわり続ける赤城(あかぎ)の物語、などいずれもロードレースというものを違った視点から僕らに伝えてくれる。
今回も、ロードレースという素材を通して、そこに人生をかける人たちの、嫉妬、葛藤、駆け引き、信頼など、いろんな感情がリアルに伝わってきて、時にはロードレースという言葉の持つさわやかなイメージとかけ離れた様子さえ見えてくる。

ひとりが転倒すれば、みんなが巻き込まれる。怖い、と思ってしまえばもう終わりだ。足は止まり、勝つことはできない。冷静に考えれば怖くないはずはない。だから、頭のなかの掛け金を外す。生存への本能や、理性を吹っ飛ばす。俺たちは狂いながら、自分を壊しながら、限界を超えた速度の中へ飛び込んでいく。

シリーズを通して読んでいる人には石尾(いしお)を描いた物語が新鮮に映るのではないだろうか、「サクリファイス」で強烈な印象を残しながらも、その人柄はあまり描かれなかった石尾(いしお)。本作品では彼が期待されてチームに入り徐々に頭角を現す様子が描かれている。
近藤史恵の描くこのロードレースシリーズはよくあるスポーツ物語と違って、栄光をつかんだ勝者でもなく、すでに諦めた敗者でもなく、その間に位置するさまざまな種類の人の人生観を見せてくれるのが魅力なのだろう。スポーツ界では「実力の世界」という言葉が飛び交うが、それでも上を目指すためにはそこにある人間関係にうまく対処して生きていく必要がある。そんな部分を描いたスポーツとしては汚い一面が逆に説得力を持って見えてくるのが、このシリーズの魅力なのだろう。
【楽天ブックス】「サヴァイヴ」

「ガール・ミーツ・ガール」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デビュー間近のミュージシャン柏木夏美(かしわぎなつみ)だが、芸能界は思い通りにいかないことばかり。それでもマネージャーの宮原祐二(みやはらゆうじ)など、仲間とともに音楽の世界で自らを表現しようとする。
前作「疾風ガール」の続編である。前作を読んだのがもう3年も前なので正直どんな内容だったのかあまり覚えていないのだが、夏美の持つエネルギッシュなキャラゆえに爽快な物語でありながらも、要所要所に心をえぐるような表現がちりばめられていたと記憶している。
本作も前作同様、夏美(なつみ)のポジティブな性格が物語を支配する爽快な内容。急遽バンドを組むこととなったお嬢様タレントと次第に打ち解けていく様子や、頑固なピアニストをメンバーに誘いこむ様子など、少しずつ夏美(なつみ)が成長していく様が描かれている。
また、疾走していた父親との再会も面白い。「幸せ」は他人が評価するものではなく自分自身で感じるものだというメッセージが込められているようだ。
「上を向いて歩けばなんとかなる」的で現実的とはとても思えないが、元気をもらえる内容と言えるだろう。

他人が見たら、ひやひやするような危なっかしい人生だけど、あなたにはその、浮いたり沈んだりする、その落差こそが、生きてる証なんだね、きっと。落ちるからこそ、登る楽しみがある。登った時の喜びがある。
モータウン
アメリカ・デトロイト発祥のレコードレーベル。自動車産業で知られるデトロイトの通称、「Motor town」の略。(Wikipedia「モータウン」

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「Dog On It 」Spencer Quinn

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
探偵のBernie Littleは行方不明になった少女Madisonを愛犬のChetと一緒に探すことになる。
本作品は徹底して、犬のChet目線で進む。彼のコミカルな語り口調が本作品の最大の魅力だろう。言ってしまえば、物語自体は、事件に巻き込まれた行方不明の少女を探すというありきたりな展開だが、Chetの目線ゆえに非常に面白く味付けされている気がする。
犬ゆえに匂いに非常に敏感で、一方で色の判別に自信がない。そして、主人のBernieがいないと、カギがかかってなくてもノブを回すことさえできないゆえに部屋から出ることもできない。重要なことをうったえようと吠えはするけれども食べ物をもらうとすっかり何をうったえようとしていたかすっかり忘れてしまう。など、そんな犬ならではの言動が非常に面白く描かれている。
展開として興味深いのが、Chetだけは早々に犯人の隠れ家に連れて行かれて、場所も犯人も知っているにも関わらずそれを人間のBernieに伝えることのできない、という点だろう。あまり海外作品でこのようなノリのものを読んだことがないので新鮮だった。シリーズ作品らしいので続きもぜひ読んだみたい。