とにかくおすすめ

ジャンル関係なくオススメを知りたい人向け

とにかく面白い

ページをめくる手が止まらない、寝る時間さえ惜しくなる最高のエンターテイメント

泣ける本

思いっきり泣きたい人向け

優しい気持ちになれる本

悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

深い物語

いろいろ考えさせられる、深い物語

生き方を考える

人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「The Hunger Games」Suzanne Collins

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
その地域を支配していた一つの地区、その権力を誇示するために、ほかの12の地区から男女1人ずつを選び、計24人の男女による生き残りゲーム、「ハンガーゲーム」を開いていた。Katnessはクジで選ばれてしまった妹Primの代わりにHunger Gameに出る事を決意する。
一言で言ってしまえばバトルロワイヤルの焼き直し、ということになってしまうのかもしれないが、それが地域間での争いの果てに起こったという背景設定や、未来の物語であるという点が異なる。また、参加者24人それぞれが異なる地域の出身であるがゆえに、その地域の属している産業や自然環境によって、得意とするもの、知識が異なるという点も面白い。
スポンサーというシステムも物語を面白くしている要素の一つである。スポンサーは自らが勝たせたい参加者に贈り物をすることができるのだ。それは水だったり食べ物だったり武器だったり薬だったりと、ハンガーゲームの戦況を左右するものになりうる。だから、参加者たちはハンガーゲーム開始前のデモンストレーションやインタビューで、可能な限りスポンサーを得ようとアピールするのだ。ハンガーゲームの趣旨に賛同しようがしまいが、それが自らの生死を左右するからである。
さて、物語の性質上優勝するのはこのKatnessなのだろう、と誰もが予想するので、興味の対象はその過程になる。ハンガーゲームの途中で仲良くなった女性とは最終的に殺し合わなければならないのか。同じ地区から出場した男性とは恋愛関係になるのか。
最後は若干行き過ぎな印象もあるが、常にスリリングな展開で、読者を一気に読ませる力のある物語。すでに2つの続編が書かれているということなので、機会があったら読んでみたい。

「「みんなの意見」は案外正しい」ジェームズ・スロウィッキー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人は集団だと愚かな行動をし、実際には数人の賢い人間たちに導かれていると考えている人は多いが、本書が訴えるのはそれとは正反対のこと。序盤はいくつか身近な例をあげてそれを示している。
例えば、検索エンジンに革命をもたらしたGoogleのページランク(ペイジランクが正しいらしいが)がある。ページランクは、それぞれまったく関係のない個人が、自らの価値のあると思ったサイトにリンクを張り、そのリンクがされた数によってそのページの価値をはかるというものである。一人一人は特別インターネットに詳しい人というわけでも最新の情報に常に触れているような知識人でもないだろう。それでもそんなシステムによって検索結果を表示するGoogleの検索エンジンが、当時シェアをにぎっていたYahooを超えたのである。
また、行方不明になった船の行方を、わかっている前後の事実という情報だけを与えてある程度の数の人に予想させ、その結果を平均したところ、そこから数百メートると離れていない場所でその沈没した船が見つかった、などの例も挙げている。本書はそんな、集団の意見は個人の意見より正しい、という主張をベースに展開するが、その過程で強調している。もちろん決してすべての事例についてあてはまるものではないというは理解しなければならない。
後半にかけては、集団の意見が正しいにも関わらず、その集団の意見を拾い上げることの難しさを語っている。そこで挙がる悪い例には、世の中の多くの状況があてはまるように見える。重要なのは、それぞれの個人の意見が影響し合わないような状態にしなければならないということだ。例えば、集団の平均的な意見が正解にもっとも近いだろうという予想で、同じ部屋に集まってそれぞれの意見の平均を取ろうとしても、それぞれの立場に寄って、相互の意見は影響し合い、やがてその全体の意見は、上司や専門家の意見に偏る事になってしまうのだ。
集団の傾向を示す手段として、最後通牒ゲームなどが触れられている点が、先日読んだゲーム理論と繋がってきて個人的には面白い。語り口が淡々としているためにやや読むのに根気がいるが、集団をどのように機能させるべきか、という点では非常に興味深い内容である。会社の会議などをうまく運びたい考える人には参考になるのではないだろうか。

マンハッタンプロジェクト
第二次世界大戦中、枢軸国の原爆開発に焦ったアメリカ、イギリス、カナダが原子爆弾開発・製造のために、科学者、技術者を総動員した計画である。計画は成功し、原子爆弾が製造され、1945年7月16日世界で初めて原爆実験を実施した。さらに、広島に同年8月6日・長崎に8月9日に投下、合計数十万人が犠牲になり、また戦争後の冷戦構造を生み出すきっかけともなった。(Wikipedia「マンハッタン計画」

【楽天ブックス】「「みんなの意見」は案外正しい」

「エコイック・メモリ」結城充孝

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
動画投稿サイトに現れた残酷な殺人の映像。この動画の殺人は本物なのか。クロハは捜査を命じられる。
「プラ・バロック」に続く、女性刑事クロハの物語の第2弾。もはや女性刑事が活躍する物語など珍しくなんともないが、本シリーズで新鮮なのは、人によっては抵抗感を抱きそうなインターネット上の技術まで物語に取り入れている点だろう。前作ではそれは仮想現実の世界であったし、今回は、もうすでに世の中に浸透してきたであろう動画投稿サイトをその物語のきっかけとして使用している。動画投稿サイトやMMO(Massively Multiplayer Online)を絡めて犯罪を行うだけでなく、捜査する側もそれを利用するあたりは、何か、現実と非現実の境界が曖昧になっていく事に対する、著者の警告のようにも思えてくる。
そして、そんな異常な環境で育ったゆえに何かが欠けている犯罪者たち。どの部分の描写によるものなのかわからないが、前作と同様、どこか暗い都会のイメージを印象づける。煌(きら)びやかな都会のイメージがあふれる中、むしろ都会の闇を見せるような本シリーズは他の作品とは一線を画している。
次回作にも期待したい。
【楽天ブックス】「エコイック・メモリ」

「王妃の離婚」佐藤賢一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第121回直木賞受賞作品。
1498年フランス。弁護士フランソワがルイ12世が王妃ジャンヌに起こした離婚訴訟でジャンヌの弁護をすることになる。国王を相手にする訴訟故に数々の問題がフランソワに襲いかかる。
物語としては数ある法廷物語同様、検察の厳しい追及をかわして弁護をすすめる駆け引きや、重要な証言をするであろう証人の安全の確保など、予想を超えるものではないが、やはり当時の文化的な要素が物語を面白くしている。いつの時代であれ、正義と権力の間で弁護士は葛藤するのだろうか。

不正な裁判をしてはならない。弱い者におもねり、また強いものにへつらってはならない。あなたの隣人を正しくさばかなければいけない。

そもそも日本の作家が書いた作品でフランスの中世を舞台にした小説に出会った事がなかったので、読み始める前は抵抗感を抱いていたりもしたのだが、読み始めると好奇心をかき立てられることばかり。そもそも、ルイとかヘンリーとかよく聞くが、その家系はどこから来てどのような重要性を持つものなのか、マリーアントワネットは、ジャンヌ・ダルクは、と。
興味の向かう世界をまた一つ広げてくれた一冊。

教会法
広義においては、国家のような世俗的権力が定めたキリスト教会に関する法とキリスト教会が定めた法を包括した概念であるが、狭義においては、キリスト教会が定めた法のことをいい、世俗法(ius civile)と対比される概念である。最狭義においては、カトリック教会が定めた法のことをいい、カノン法ともいう。(Wikipedia「教会法」
カノッサの屈辱
聖職叙任権をめぐってローマ教皇グレゴリウス7世と対立していた神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世が、1077年1月25日から3日間、教皇による破門の解除を願って北イタリアのカノッサ城に赴いて許しを願ったことをいう。(Wikipedai「カノッサの屈辱」
サン・ドニ大聖堂
歴代フランス君主の埋葬地となった教会堂。1966年よりカトリック教会のサン=ドニ司教座が置かれている。パリ北側の郊外に位置するサン=ドニにある。(Wikipedai「サン=ドニ大聖堂」
アンボワーズ城
フランスのロワール渓谷、アンドル=エ=ロワール県のアンボワーズにある城。シャルル7世、ルイ11世、シャルル8世、フランソワ1世らヴァロワ朝の国王が過ごした。フランソワ1世がレオナルド・ダ・ヴィンチを呼び寄せたクロ・リュッセはすぐ近くにある。(Wikipedai「アンボワーズ城」

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「私が弁護士になるまで」菊間千乃

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
元フジテレビアナウンサーの著者が30代から弁護士になることを目指し、新司法試験の合格を目指す様子を描く。

正直、アナウンサーとしての著者をまったく覚えてないのだが、30代になって人生を大きく変えようとするエネルギーはきっと大きな刺激になるだろうと思って読み始めた。キー局のアナウンサーというと誰もが憧れる職業の一つだろう。プロ野球選手と結婚して裕福な家庭を築いていく、というようなイメージを僕自身も持っていた。しかし、それはやはり他人から見た印象であって、当人はやはりいろいろ悩んでいるようだ。本書ではそんな著者の悩みから決断、その過程で出会った困難やよき友人たちが時系列に語られている。旧司法試験や新司法試験、その教育制度、現状のシステムの問題点などにも簡単に触れている点も面白い。

さて、著者は最初は仕事をしながら大宮の学校に通い3時間睡眠で勉強をし、仕事を辞めてからは1日14時間から15時間勉強し続けたという。きっと社会人になってから、日々の生活の忙しさに流されていくうちに、好きな事を本当に一生懸命勉強する事の楽しさを懐かしく、羨ましい気持ちが芽生えた人も少なくないだろう。僕自身もそんな人間の1人なだけに毎日勉強づくしの彼女がなんとも羨ましい。もちろん、3回限りの試験で合格しなければいけないというプレッシャーはつらいものだったのだろうが。切磋琢磨の状態に身をおくからこそ生まれる強い人間関係もまた魅力的である。

過去の出来事や発言から著者に対してはいくつかの批判があるようだが、それは本書から伝わってくる彼女のエネルギーを否定するものではない。30代にして弁護士を目指し、40歳にして弁護士。強い意志さえあれば僕らはまだなんだってできる。そんなエネルギーをくれる一冊。

それでも、今は、これから始まる第二の人生にわくわくしている。この高揚感を安定と引き換えに手に入れたのだとしたら、それも悪くない。私らしいと思う。一度きりの人生、限りある命、今日も精一杯生きたなと思って眠りにつき、朝は、今日はどんなことが待っているんだろうとわくわくしながら目覚める、これが私の理想。
私のこのつたない記録が、同じように人生に迷っている人に、少しでも参考になれば、これほどうれしいことはない。

【楽天ブックス】「私が弁護士になるまで」

「あかね空」山本一力

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第126回直木賞受賞作品。
豆腐屋として成功するという大きな決意を胸に、京から江戸に出てきた永吉(えいきち)。彼はそこでおふみという女性と出会い助け合いながら生きていく。
時代は宝暦12年(1762年)からの数十年間の江戸の町を舞台に描かれる。正直、あまり時代小説を読む機会がないので、すぐにそれがどのような時代なのだかわからないのだが、どうやらこの時代の天皇は桃園天皇、後桜町天皇で、江戸幕府将軍は徳川家重、徳川家治ということである。
そして物語は永吉(えいきち)という一人の男が京で修行をした上で江戸で豆腐屋を開こうとするところから始まる。おふみという生涯の伴侶と出会い、やがて3人の子供に恵まれ、それでもさまざまな問題を抱えながら、家族や周囲の人々と協力して豆腐屋を大きくしていく様子が描かれている。
物語の面白さだけではなく、江戸の人々の生活や社会の制度についても興味を喚起させられるだろう。
【楽天ブックス】「あかね空」

「プレッシャーを味方にする心の持ち方」清水宏保

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スピードスケートの金メダリスト清水宏保が自身の経験を基にプレッシャーとの付き合い方を語る。
スピードスケートの世界では、清水宏保の身長は非常に小さく、彼はスケードで成功するのは無理と言われ続けてきた。そんな彼が最終的に金メダルを獲得するまでにはどんな過程を踏んだのだろう。序盤はその生い立ちや家族構成、スケートを始めるきっかけなどについて描かれている。スピードスケートのような、4年に1回しか注目を浴びないスポーツにすべてをかける人生というのはなかなか見聞きする機会がないので、彼の生活は非常に面白い。

私に誇れるものがあるとすれば、たぶんそれは自分自身を「客観的」に捉える力があったことです。試合前で興奮している自分に、離れたところから見つめている”もう一人の自分”が冷静な指示を出してくる。

そして中盤以降は彼の競技生活のなかで出会ったいくつかのエピソードとともに彼のプレッシャーに対する対処の方法が書かれている。そのいくつかは日常生活のなかの緊張するような場面でも役立つかもしれない。
個人的に刺激になったのが、清水は現在とある大学院で医療経営学を学んでいるというくだり。僕より年上の彼が学校で勉強してまた新たな人生を始めようとしている事実はなにか心に語りかけるものがある。もちろんその先もきっと平坦な道ではないだろうが、困難に挑戦しつづけてきたが故に持っている考え方があるように感じる。
全体的には、そんなに無理に「ビジネスに活かせます」という方向に持っていかなくてもよかったのではないかな、ということ。もっと単純に清水の考え方や生き方に触れてみたいと思った。
【楽天ブックス】「プレッシャーを味方にする心の持ち方」

「号泣する準備はできていた」江國香織

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
第130回直木賞受賞作品。
本書は12の小さな物語からなる。いずれもすでに人生を謳歌する若い時代を終えて、どう生きていくか、と考える世代の男女の目線をとらえているように見える。一つ一つの物語がとても唐突に始まり、短いがゆえに唐突に終わる。それでもそんな12の物語全体が漂うなにか共通した空気があるようにも感じる。恋愛感が多く描かれているのはやはり女性作家ならではだろうか。
直木賞を受賞したという事はすくなくとも複数名の人にこの作品は強い印象を与えたという事なのだが、正直、なかなかしっかり伝わってきたとは言えない。いつかこのよさが理解できる日が来るのだろうか。本著者の作品は初めて触れたのだがもう何冊か試してみたいところだ。
【楽天ブックス】「号泣する準備はできていた」

「Sarah’s Key」Tatiana de Rosnay

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
パリに住むアメリカ人ジャーナリストのJuliaは第二次世界大戦中のパリで起こったユダヤ人迫害事件について調べ始める。やがて彼女は当時の一人のユダヤ人の女の子Sarahにたどりつく。
ホロコーストは世界史上の指折りの悲劇なだけに、それを扱った作品は世の中に多く存在している。本書もそのうちの一つだが、その舞台をパリに据えている点がやや異質かもしれない。実際僕も本書を読むまで、パリでパリの警察によってユダヤ人たちがポーランドに送られるたということを知らなかったのである。
本書では、現代のJuliaが当時を調べる様子と並行して、第二次大戦中のパリのユダヤ人たちの様子が一人の女の子目線で描かれる。彼女こそそのSarahなのである。ある朝、パリの警察によって家を出るように促されたSarahだが、すぐに迎えに帰ってこれると思って、弟を秘密の戸棚に隠して鍵をかけておいたのだ。2人はその後無事に再開を果たすことができたのか。そしてSarahのその後は。
また、物語が進む過程で、アメリカ人でありながらフランス人と結婚して家庭を築いたJulia目線でその2つの国民性の違いが見えてくる点も面白い。
大戦中の悲劇が現代によみがえる。忘れてはいけない負の歴史に目を向けさせてくれる一冊。

Vel’ d’Hiv’(ヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件)
第二次世界大戦下のフランスで行われた最大のユダヤ人大量検挙事件である。本質的には外国から避難してきた無国籍のユダヤ人を検挙するためのものだったとされる。1942年の7月、ナチスの「春の風」作戦として計画されたもので、ヨーロッパ各国でユダヤ人を大量検挙することを目的とした。(Wikipedia「ヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件」
anti-Semtism(反ユダヤ主義)
ユダヤ人およびユダヤ教に対する差別思想をさす。(Wikipedia「反ユダヤ主義」
Drancy internment camp(ドランシー通過収容所)
ナチス・ドイツがフランス・パリの北東のドランシー市(セーヌ=サン=ドニ県)に設置したユダヤ人移送のための収容所。フランスのユダヤ人をポーランドの絶滅収容所へ移送するまで仮に収容しておく通過収容所だった。1941年8月の設立から1944年8月の解放までの間におよそ7万人のユダヤ人がドランシーからアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所などへ移送されている。フランスにおけるホロコーストの鍵となる地であった。(Wikipedia「ドランシー収容所」
Yad Vashem(ヤド・ヴァシェム)
ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺(ホロコースト)の犠牲者達を追悼するためのイスラエルの国立記念館である。イスラエルの首都エルサレムのヘルツルの丘にある。(Wikipedia「ヤド・ヴァシェム」

「英語多読法 やさしい本で始めれば使える英語は必ず身につく」古川昭夫

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
学習塾SEG(Scientific Education Group)で英語の多読を勧める著者が英語の上達における多読の有効性を語る。
基本的に本書で述べられているのは、ある程度の単語を覚えたら、ひたすら英語を多読することが英語上達への近道ということである。そして重要なのはその多読のためにレベルに合った本を選ぶことなのだという。過去の生徒たちの成績をもとに、その根拠を説明する。
そしてよくある多くの反論、例えば、「理解できない単語は何度読んでも、辞書で調べない限り理解できない」など、に答えていく。著者が言うには、繰り返し出てくる単語はその前後の文脈から意味を想像できるし、むしろ大事なのは、辞書をひくことによって読書のスピードが落ちるのを避ける事なのだという。しかし、著者が強調しているのは、多読は有効だが決して万能ではないということ。発音をよくするためには当然音声を使ったシャドイングなどの練習も必要だと言う。
本書ではレベル別にいくつかオススメの本が掲載されているので、英語の多読に挑戦したいと思っているひとには助けになるかもしれない。残念ながらすでに英語で普通に読書を楽しんでいる人にとってはあまり役に立つ内容ではなかった。内容についてもやや冗長な部分もあるように感じた。
【楽天ブックス】「英語多読法 やさしい本で始めれば使える英語は必ず身につく」

「イチロー式集中力 どんな時でも結果が出せる!」児玉光雄

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
過去のイチローの言動に触れながら、目的を達成するための行動や考え方を説明する。
そもそもバッティングの結果だけで評価される野球選手と、様々な分野で仕事をしている人にとっての「成功」を同じ視点で見ていいのかはかなり疑問だが、必ずしも仕事に役立てようとするのではなく、趣味でやっているスポーツの工場のため、とでも考えればそれなりに意義を見いだせるだろう。

じつは集中力というものは、他人と競うことでは決して身につかないのです。

おそらく著者も本書を書くためにイチローに会ったわけではないのだろう。30分ほどで読めてしまう内容なだけに、機会があるなら軽く眺めてみるのもいいかもしれない。
返し示している。そこからわかるのは、まだまだゲーム理論は進化の過程にあるということ。今後の発展にも関心を持っていたいと思わせてくれる。
【楽天ブックス】「イチロー式集中力 どんな時でも結果が出せる!」

「もっとも美しい数学ゲーム理論」トム・ジーグフリード

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自分の利益を最大にするには、どう行動すればいいか。そんな社会で生きるすべての人間の考えに応用できると言われている「ゲーム理論」。実際にそれはどういうものなのか。著者がわかりやすく説明する。
ゲーム理論というのに最初に興味をもったのは有名な「囚人のジレンマ」の話を聞いたときだろう。しかし、それだけではなく僕にとって「ゲーム」という言葉は学校の授業とは正反対な場所にあって、「理論」と「ゲーム」という相反する言葉によってできた「ゲーム理論」という響きも印象的だった気がする。本書ではゲーム理論の歴史や進化の過程を説明した後、具体的な例をあげてそれがどのような状況に適応できるのかを説明している。
例えば、アヒルの群れがいて、1箇所で一切れのパンを10秒に1回投げ入れる、もう1箇所では5秒に1回投げ入れる。その場合、アヒルたちはどっちにいったほうが多くの餌を食べる事ができるか。というもの。もちろん、1匹であれば、5秒に1回投げ入れる方に行った方がたくさん食べられるのだが、ほかにもアヒルはたくさんいてほかのアヒルも同じ事を考えるかもしれない。結果的にこの均衡点は3分の1と3分の2で、実際の実験でもアヒルは時間が経てばその状態になるのである。
印象的だったのは、テニスのサーブの話。サーブを相手のフォア側に打つかバック側に打つか。強い選手ほど、ゲーム理論が導きだした答えに近いサーブの組み立てになるのだという。強いからそうなのか、それともそうだから強いのか。ほかにもいくつかの日常的な例を挙げてゲーム理論を説明していく。
しかし、本書の焦点は、ゲーム理論の簡単な説明ではなく、むしろ、ゲーム理論は本当に現実に役に立つのか。という点である。例えば上にあげた2つの例はいずれも非常に単純化したもの。現実世界では常にさまざまな要素が同時、かつ複雑に影響し合っている。そして人間も一様ではないし、ゲーム理論がこう、と予想したらあえてそれを避けようとする人間もいるのである。
それでも本書はそんなあらゆる反論に対して、「こういうふうに考える事もできる」と繰り返し示している。そこからわかるのは、まだまだゲーム理論は進化の過程にあるということ。今後の発展にも関心を持っていたいと思わせてくれる。ゲーム理論の最初の入り口として読むにはちょうどいい内容である。

ナッシュ均衡
ゲーム理論における非協力ゲームの解の一種であり、いくつかの解の概念の中で最も基本的な概念である。数学者のジョン・フォーブス・ナッシュにちなんで名付けられた。ナッシュ均衡は、他のプレーヤーの戦略を所与とした場合、どのプレーヤーも自分の戦略を変更することによってより高い利得を得ることができない戦略の組み合わせである。ナッシュ均衡の下では、どのプレーヤーも戦略を変更する誘因を持たない。(Wikipedia「ナッシュ均衡」

【楽天ブックス】「もっとも美しい数学ゲーム理論」

「対岸の彼女」角田光代

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第132回直木賞受賞作品。
3歳の娘あかりを育てる主婦小夜子(さよこ)は同い年の女性が経営する会社で働くことになった。人と関わる事を避けていた小夜子(さよこ)の生活が少しずつ変わっていく。
本書では2つの物語が平行して進む。娘を育てながらも働くことにした主婦小夜子(さよこ)の物語と、高校生葵(あおい)とナナコの物語である。小夜子(さよこ)は、過去の経験から、常に仲間はずれを作り仲間はずれにされないために必死で笑顔を取り繕うわなければならない女性社会に疲れ果てて、人との関わり合いを避けて生きてきた。しかし、面接で意気投合した女社長の経営する会社で働く事となる。また、女子高生の葵(あおい)はイジメが原因で横浜から田舎に引っ越してそこでナナコという風変わりな生徒と出会い次第に仲良くなっていく。
小夜子(さよこ)の勤める会社の社長が葵(あおい)という名前である事から、おそらくこの高校生と同一人物なのだろう、と予想し、どうやって繋がるのか、と期待しながら読み進めることになるだろう。
全体から伝わってくるのは、年をとって大人になっても、逃げているだけでは何一つ変わらない人生である。高校のときはいじめられるのを恐れて笑顔を取り繕い、大人になって子供を持っても、公園で出会う主婦たちから仲間はずれにされないように必死で話を合わせる。小夜子はときどき自らに問いかけるのだ。

私たちはなんのために歳を重ねるんだろう。

それでも、葵(あおい)にとってはナナコが、そして小夜子にとっては大人になった葵(あおい)が世の中の新たな見つめ方を示してくれているようだ。

ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、うんと大事な気が、今になってするんだよね。

個人的に心に残ったのは、高校時代のナナコとの思い出を胸に、いつかまたそんな瞬間を、と求めながら孤独に生きていく葵(あおい)の姿である。

信じるんだ。そう決めたんだ。だからもうこわくない。

じわっと染み込んでくる作品。若い頃には理解できない何かが描かれている気がする。
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「Dead Zone」Stephen King

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
高校の教師のJohn Smithは幼いころの出来事によって未来が見える事がある。それでも恋人と普通の生活を送っていたが、交通事故によって4年半もの間昏睡状態に陥る。
予知能力を持った青年の物語。超能力を持つ人間の物語というのは決して珍しくない。人にはない力を持った故に起きるJohnnyの心の中の葛藤も他の多くの超能力者を扱った作品と共通する部分がある。「人には知られたくない」「普通の人間として生きたい」と思いながらも、予知能力ゆえ、知人が不幸にあうことを黙っていることはできないのだ。
本書ではそんな超能力者に対する大衆の行動も面白く描かれている。その力を利用して自らの知人や家族を捜してほしいと願うもの。スターとしてビジネスに利用しようとするもの。そのタネを見破ろうとするもの。それでも世間はすぐに忘れていくのである。
本作品で重要な役となるのは、恋人SarahとJohnnyの母Veraだろう。SarahはJohnnyが昏睡状態の間に新しいパートナーを見つけて家族を築いていたが、その後はJohnnyの良き友人となる。心身深いVeraはJohnnyのその力を見て、「神が目的を持って与えたもの」という。その言葉を強く意識するJohnnyは、最後までその力を使ってどうやって生きるべきか考え続けるのである。
そしてJohnny自身が政治に強く関心を持っていることもあり、物語は次第に大統領選へと移っていく。アメリカ国民の未来を左右しかねない大統領選。そこでJohnnyは何を見たのか。超能力者を扱った作品のなかでも傑作と言えるだろう。

Kent State Shooting
ケント州立大学で1970年5月4日起こった事件。ガードマンが67発の弾丸を放ち、4人の生徒が亡くなった。(Wikipedia「Kent State shootings」
IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)
アメリカ合衆国内国歳入庁(アメリカがっしゅうこくないこくさいにゅうちょう) またはIRS (The Internal Revenue Service)は、アメリカ合衆国の連邦政府機関の一つで、連邦税に関する執行、徴収を司る。日本でも、そのままIRS(アイアールエス)と呼称されることもあるが、内国歳入庁や米国国税庁などと翻訳される。連邦政府の機構上は財務省の外局であり、日本の省庁になぞらえれば財務省の外局である国税庁に相当する。ワシントンD.C.に本部を置く。(Wikipedia「アメリカ合衆国内国歳入庁」

「僕には数字が風景に見える」 ダニエル・タメット

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
サヴァン症候群の著者ダニエルには、数字が色や雰囲気を伴って見える。そんな不思議な能力を持った彼がその人生を語る。
本書では幼い頃の彼の生活の様子から描かれている。世の中から受け取る感覚が一般の人とは異なるゆえに、人とのコミュニケーションが苦手で、また数字や文字から必要以上の感覚を受け取ってしまう。その感覚ゆえに彼が行う遊びなどのエピソードはいずれも面白い。序盤はそんな変わった少年時代と、それでも普通の生活を送ることに対する両親への感謝である。
そして中盤以降は、その努力の結果社会に適応し、自らの能力を生かして多くのことに挑戦する様子が描かれる。その特異な言語感ゆえの記述はいずれも脅威深い。本書のなかで彼は、彼のような言語共感覚は誰もがもっているものだという。例えばまるみのある滑らかな形と鋭く尖った形を魅せて、「ブーバ」と「キキ」という名前をそのうちどちらかに割り当てさせると多くの人が尖った方に「キキ」、まるみのあるほうを「ブーバ」とするというのである。
そんな彼の特殊な言語感ゆえに、彼はその能力で円周率を暗唱したり、一週間でもっとも難しい言語と言われるアイスランド語をマスターする事に挑戦するのだ、エスペラント語や手話についての話も興味深い。言語学習に興味のある僕としても非常に楽しめる内容だった。
人と違っていることで障害者にされる必要はない、だれのからだも違っているのだから。

エスペラント語
ルドヴィコ・ザメンホフが考案した人工言語。エスペラントを話す者は「エスペランティスト」と呼ばれ、世界中に100万人程度存在すると推定されている。(Wikipedia「エスペラント」
キム・ピーク
恐らく先天性脳障害による発育障害で、小脳に障害があり、また脳梁を欠損している。そのため、生活には父親の介護を必要とする。その一方で写真または直感像による記憶能力を持ち、9000冊以上にも上る本の内容を暗記している。また、人が生年月日を言えばそれが何曜日であるか即座に答えることができる。映画「レインマン」で、ダスティン・ホフマン演じるレイモンド・バビットのモデルとなった。(Wikipedia「キム・ピーク」

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「リストラされた100人の貧困の証言」門倉貴史+雇用クライシス取材班

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2008年のリーマン・ショック以降、世界同時不況の波が押し寄せ、日本の経済・社会が混乱に陥った。その結果、非正規雇用者の人員カットだけでなく正社員のリストラ、そして新卒社会人の内定取り消しなどが起こっている。本書はそんな不況の流れの中の犠牲となった低所得者層の証言をまとめている。
派遣切りにあった人々。内定取り消しになった学生、リストラにあった正社員の証言を複数まとめて掲載している。最終的にそのような過程を経て、ワーキングプアと呼ばれる生活に陥った人々は、多くの人が言うように、貯金できない、ギャンブルが好き、同じ仕事が長続きしない、などの負の条件を備えてはいたりもするが、必ずしもそれだけが原因ではないのがわかるだろう。証言の合間に筆者が語るその問題点の一つとして、国のセーフティネットの整備不足をあげている。(もちろんそれも簡単なものではないが)。おそらくすでに会社や国が生活を守ってくれる時代は終わったことを知るべきなのだろう。そしてそれは、解雇されたらどうなるか、会社が倒産したらどうするか、などを常に念頭に置いておかなければいけないということだ。
終盤では、そんなワーキングプアの人々を狙った悪質なビジネスについても触れている。組織的な犯罪だけでなく、低所得者層が生きるためにする万引き、置き引きなどの小さな犯罪が世間で増えていることが伝わってくる。例えば、そんな人々が出入りするネットカフェの席にパソコンをおいたまま席を立つなどというのは論外なのだろう。決して読むことで楽しくなるような内容ではない、むしろ引用されている人々の生活は、読んでて不快な思いさえさせる。しかし、電車で隣に座った人が、図書館ですれ違った人が、本書で登場する人間である可能性は決して低くないのである。
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「To Kill a Mockingbird」Harper Lee

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1961年ピューリッツァー賞受賞作品。
アメリカ南部アラバマ州。未だ黒人差別が色濃く残る町で生活する一家を描く。弁護士のAtticusは息子Jemと娘のScoutを信念を持って育てていく。そんなある日、彼は白人女性に対する暴行の容疑を受けた黒人男性の弁護を担当することになった。
「アラバマ物語」で知られている物語で日本でも知られており、おそらくアメリカでは知らない人はいないのではないかというぐらい有名な物語。実際、先日読んだ「The Help」の物語のなかでも取り上げられている。信念を持って弁護士を務める父、いつも一緒に遊ぶJemを、娘のScoutの目線で語る。序盤は自然の豊かで毎日外で面白いことを探して過ごす兄弟と近所のDillの様子が描かれていてほのぼのと進むが、やがて物語は黒人差別へと焦点を移していく。同時に外でいつも一緒に遊んでいたJemとScoutも年齢があがるに従って、次第に異なる生活を送るようになる。そんな多感な兄弟に、黒人の弁護を引き受け町の人々から「黒人の味方」として蔑まれる父親はどう映るのか。揺れ動きながらも成長していく様子が見て取れる。
現代から見ると、その黒人蔑視の社会はいいものとは言えないが、家族を愛する父親の信念がしっかりとその子供たちに根付いていく様子が伝わってくる。

でも、これだけは言わせてくれ、そして決して忘れないでくれ。どんな時であろうと白人がそういうことを黒人に対してするとき、それが誰であれ、どんな裕福な人だろうが、どんな権威ある家系の出身だろうが、そんな白人はクズだ。

毎日家族と過ごす時間を持てる古き良き時代の理想の父親像としても本作品を楽しむことができるのではないだろうか。

「下町ロケット」池井戸潤

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第145回直木賞受賞作品。
かつてロケット開発に情熱を注いだ佃(つくだ)は、父の跡を継いでエンジン開発の工場を経営する。しかし数々の試練が訪れる。
元銀行員という経歴を持つ著者池井戸潤(いけいどじゅん)らしい視点が他の作品と同様、本作品でも見られる。会社を維持し、従業員の生活を守るためには、ただいい製品をつくるだけでなく、訴訟や特許、資金繰りなどあらゆる面にしっかりと取り組まなければならないのである。
本作品では佃(つくだ)の経営する、佃製作所が大型取引を打ち切られるところから始まり、その後、競合他社から特許を侵害したとして訴えられるなど試練が続いていく。しかし、そんな苦難のなか信頼できる弁護士やベンチャーキャピタルの助けを借りて、さらに成長していく姿が描かれている。
会社の生き残りに四苦八苦していた前半から、後半は、現実的である従業員の現在の生活かそれとも会社としての夢か、といったことが佃(つくだ)の懸念事項となる。
佃(つくだ)が仕事に情熱を注ぐ姿は本当に輝かしく、仕事とはどうあるべきか、人生とはどう生きるべきか。そんなことを考えさせてくれる。
【楽天ブックス】「下町ロケット」

「いちばんやさしいオブジェクト指向の本」井上樹

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
現代のプログラミングで頻繁に聞く「オブジェクト指向」という言葉。その意味はあらゆるところで解説されており、その名のとおり「オブジェクトを中心とした考え」なのだが、ではそれで実際その意味を理解できたかというとおそらく違うのだろう。
そんな考えで本書を手にとったのだが、まさに痒いところに手が届く内容だった。過去のプログラム言語を例に挙げてその不都合な部分を明確にし、その不都合さゆえに次第に「オブジェクト指向」という考えが根付いていく過程を示してくれる。プログラム言語の進化の過程を含めて理解することで、より説得力のある形で「オブジェクト指向」という考えを受け入れることが出来る。
おそらくプログラムを仕事にしている人にとっては当たり前の話ばかりなのだろうが、BASICやCなど昔プログラムをちょっとかじったけど最近のプログラムはなんだかよくわからない。という人にはぴったりかもしれない。

Smalltalk
Simulaのオブジェクト(およびクラス)、Lispの機能、LOGOのエッセンスを組み合わせて作られたクラスベースの純粋オブジェクト指向プログラミング言語、および、それによって記述構築された統合化プログラミング環境の呼称。(Wikipedia「Smalltalk」
Simula
最初期のオブジェクト指向言語の一つである。(Wikipedia「Simula」)

【楽天ブックス】「いちばんやさしいオブジェクト指向の本」

「ふたりの距離の概算」米澤穂信

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
毎年5月に行われる神山高校長距離走大会。これから走る20キロを前にして、折木奉太郎(おれきほうたろう)は、仮入部届けを出したにも関わらず、古典部に入部しないことを決めた新入生大日向友子(おおひなたともこ)のその理由に思いを巡らす。
本作品は著者米澤穂信(よねざわほのぶ)の古典部シリーズの第5作目であり、折木奉太郎(おれきほうたろう)や千反田える(ちたんだ)は2年生になって新入生を勧誘するという立場になっている。物語の舞台としては、長距離走大会の20キロのなかで主に、奉太郎(ほうたろう)の回想シーンで展開するというもの。恩田陸の「夜のピクニック」を思い出す人も多いのではないだろうか。
各所に散りばめられた伏線を奉太郎(ほうたろう)が真実に結びつけていくのが面白い。例によってその対象の出来事が、殺人事件などではなく、友人同士の仲違い、といったものであるから気楽に読み進められるのだろう。シリーズの他の作品と同じく、主要な登場人物のなかで繰り広げられるテンポのいい会話もまた魅力の一つである。

「折木さんって真夜中の赤信号は無視するタイプですか」
「真夜中には出歩かないタイプだ」
「お前は守りそうだな」
「わたしは、真夜中に出歩く範囲に信号がないタイプです」

物語の場面の少なさから石持浅海(いしもちあさみ)の「扉は閉ざされたまま」にどこか共通するものを感じた。この本から多くを学べる、というような内容ではないが、著者の技術やこだわりを感じさせる内容である。

ずいぶん楽をしたし、寄り道もした。けれどもいつかはゴールまで行かなくてはいけない。

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