オススメ度 ★★★★☆ 4/5
シリコンバレーで生活する著者がインターネットでおこっている大きな動きについて語る。
GoogleやWikipediaに代表されるインターネット上で起きている動きは一体どのようなものなのか。それは物や対面のサービスのなかで育ってきた人々にとってはなかなか理解しにくいものなのかもしれない。僕自身はむしろインターネットが十分に生活に根付いているのでそんなことは考えた事もなかったが、著者の意見から年配者が感じる困惑も少し理解できた気がする。
著者が持つ様々な人脈から得た意見などから現在のネット上の動きを説明してくれるため、もともと知識として持っていたことに対しても新たな視点を持つ事ができる。例えば、著者は「恐竜の首」と「ロングテール」という言葉を使ってamazonの強みを説明する。今まで、基本的に店舗は、多くの人に人気のある商品、つまり「恐竜の首」だけを扱ってきて利益を出してきたが、実際の店舗を持たないamazonは「ロングテール」から利益を出すことができる点が新しいというのだ。
また、同じようにGoogleについても触れている。Googleは世の中の本をすべてスキャンして無料で提供しようとしており、それが著作権の侵害とか出版社の利益を損ねるとか、多くの議論を呼んでいる。しかし、反対意見はいずれも「恐竜の首」部分の本を扱う人々の考えであって、「ロングテール」つまり非常にニッチな本の作者にとっては、無料とはいえ、まず人の目に触れてもらう機会があることこそ重要なのである。
本書自体が2006年に発売されたものであるがめ、例えばFacebookやTwitterに関する記述がないなど、現在のインターネットの流れからやや遅れている点は残念だが、それでもいくつか印象的な考え方を知る事ができた。同じ著者の続編、「ウェブ時代をゆく いかに働き、いかに学ぶか」と内容的にかぶる部分も多いので、そちらだけ読んでもいいのかもしれない。
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とにかくおすすめ
ジャンル関係なくオススメを知りたい人向け
とにかく面白い
ページをめくる手が止まらない、寝る時間さえ惜しくなる最高のエンターテイメント
泣ける本
思いっきり泣きたい人向け
優しい気持ちになれる本
悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本
世界を知る
世界の大きな流れを知りたい人向け
深い物語
いろいろ考えさせられる、深い物語
生き方を考える
人生の密度を上げたい方が読むべき本
学習・進歩
常に向上していたい人が読むべき本
組織を導く人向け
日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本
デザイン
ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本
英語読書初心者向け
英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選
英語でしか読めないおすすめ
英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。
「深夜特急(2) マレー半島・シンガポール」沢木耕太郎
オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
著者はマレー半島を南下し、シンガポールへ向かう。
マカオに別れを告げて、著者はシンガポールへと向かう。第1弾のマカオの物語でもそうだが、著者がそこらじゅうで娼婦に声をかけられたり買春を勧められる点は、著者のような旅に憧れる人間として辟易させられる。
本書では著者が旅に出たきっかけについて触れられていて、それが本書でもっとも印象的である。むしろ旅の描写はあまりマカオや香港と変わらず、特に目新しく感じる部分はなかった。次のインドの章に期待したい。
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「警官の条件」佐々木譲
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
警部に承認した安城和也(あんじょうかずや)は父親同然に慕っていた加賀谷仁(かがやひとし)を覚せい剤所持で警察から追放することに成功する。やがて安城(あんじょう)は班を率いて覚せい剤の取締を担うこととなる。
タイトルから佐々木譲の他の作品、「笑う警官」「警官の血」などとの物語的なつながりがあるかと思ったが、あったとしてもよっぽど繰り返し読んでいる著者にしかわからない程度だろう。物語の主人公が、父親のように慕った警察を売った警部という点も、物語に感情移入しない点なのかもしれない。
佐々木譲の警察物語に期待するスピーディな展開は本作品ではあまり見られず、特に印象に残らない作品になってしまった気がする。
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「The Pillars of the Earth」Ken Follett
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
現代と違って何年もかかる建築の過程で周囲の政治も変われば建築家も財政状況も変わる。1つの大聖堂の建築に関わる人々の物語。
物語は大聖堂の建築に関わりたいと願う建築家のTomとその家族がとある修道院を訪れてそこでPhilipと出会う事から始まる。やがてPhilippは不幸なできごとによって焼け落ちてしまった教会をTomの力で再建する事を決意する。物語の序盤はそんなTomの恋愛や家族のことやPhilipの苦悩で占められる。
そして、中盤からは様々な登場人物が生き生きと躍動してくる。一人はTomの2番目の妻Ellenの息子Jackであり、彼は彫刻に非凡な才能を見せ、やがて大聖堂の建築を担うようになる。また領主の娘に生まれたAlienaはWilliamの策略によって、その地を弟Richardと追われるが、自分たちの地位を取り戻す事を決意し強く生きていく。
大きな建物も2,3年で、気がついたら出来上がってしまっている現代の感覚だとなかなか想像できないが、政治の不安定な当時は、大きな建物を建築するためには相当の月日が必要な事がこの物語から見えてくる。次回、海外旅行で建築物を見る際はまた違った視点でみることができるだろう。
壮大な物語で読み終わるのにかなり時間がかかった。続編もあるらしいのでぜひ読んでみたい。
「深夜特急(1) 香港・マカオ」沢木耕太郎
デリーからロンドンまで乗り合いバスで行く、そう思い立った沢木耕太郎の旅を描く。
本書で中心と鳴るのは香港とマカオである。著者が少しずつその土地に慣れていく過程が面白い。後半の大部分はマカオのギャンブルの様子を描いている。特にギャンブルを面白いと思っていなかった著者が、少しずつギャンブルの面白さに魅了されていく。ギャンブルにもただお金をかけるだけでなく、店側の思惑やディーラーの技量、他のギャンブラーの様子など、いろいろな楽しみ方があることを教えてくれる。
まだ旅は始まったばかりである。
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「もの食う人びと」辺見庸
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本の豊かな食生活に疑問を持った著者が世界を旅して現地での食生活を味わう。
世界各地の食生活について語っているが、その土地特有の食事だけでなく、その土地の文化や歴史も見えてくる。
バングラディシュで、著者はそうと知らずに残飯を食べる。バングラディシュでは豊かな人々が食べ残した残飯を売買する人々がいるのである。日本人の僕らには信じられない事だろう。また、フィリピンで著者は、戦時中に日本兵に家族を食べられたという人々と出会う。これも日本ではあまり公に語られない事実として、本書を通じて初めて知ったことである。
また、バンコクでは日本向けのペットフードの工場があり、そのペットフードの日本での値段と、その工場で働くタイ人の給料とを比較して、世界の貧富の格差を示してくれる。
従軍慰安婦としての過去に悩む韓国人女性達や、汚染されたチェルノブイリの周辺の村々の様子など、読み終えてみると、むしろ食生活の記述よりも歴史的悲劇や貧しさに焦点があてられている気がするが、いろいろ考えさせられる内容である。
【楽天ブックス】「もの食う人びと」
「ウェブ時代をゆく いかに働き、いかに学ぶか」梅田望夫
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
インターネットによって起きている大きな変化のなかでどう生きるべきかを語る。
印象的だったのは現在のインターネットに情報が溢れ帰っている状況を「学習の高速道路と大渋滞」と例えている部分だろう。インターネットによって誰でも学ぼうと思えば簡単に学ぶことができるため、ある程度のレベルに達するまでには大した時間はかからないが、その一歩先にいくことが途端に難しくなるということを表現している。
しかし、その高速道路を意識しているのも、一握りの人々に過ぎず、実際にはその高速道路を走ろうとすらしない人が多いのである。そう考えると、インターネット上で起きている情報の流れの変化をどうやってうまく利用していくかというのは本当に重要だと考えさせてくれる。
今の時代の生き方を考えさせるために手元においておきたいと思わせる一冊。
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「ザ・チーム 日本の一番大きな問題を解く」斉藤ウィリアム浩幸
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日系人としてアメリカで成功した著者が、日本にはチームがないことに驚いた。チームの重要性について語る。
チームとグループは違うのだという。チームとはただの人の寄せ集めではなく異なる種類の人が同じ目的を持って集まった物を言う。それは1たす1が2となるのではなく3にも4にもなるようなものなのだと。
本書では著者の成功体験をもとにチームの重要性を訴えるが、どちらかというと著者の過去のエピソードの方が、ザッカーバーグやジョブスの物語のような面白さがあり、チームの話はあまり印象に残らなかった。
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「おそろし 三島屋変調百物語事始」宮部みゆき
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
悲しい出来事の既におちかは江戸の叔父夫婦の元で暮らすこととなった。そして叔父伊兵衛(いへい)の計らいで人々の不思議な話を聞く役目を命じられる。
人々の不思議な話を聞く事で、少しずつおちかは自分の過去の出来事と向かい合っていく。おちか自身の話も人々がおちかに聞かせる話も、きっと幼い頃に聞かされていたら怖くて夜トイレに行けなくなっていただろうと思う。物語の巧さには宮部みゆきらしさを感じさせるが、あまり深い心情描写がなかったのが残念である。
とはいえ、続編もあるらしいので、機会があったら読んでみたい。
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「グローバルキャリア ユニークな自分の見つけ方」石倉洋子
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
現代を生き抜くためのキャリアの築き方を著者が語る。
グローバルキャリアというだけあって、やはり日本だけにとらわれないキャリアの築き方をあげている。なかでも面白かったのは、著者の知り合いのなかで第一線で活躍している7人のキャリアとそのキャリア構築のなかでの考え方を語っている部分である。必ずしも高校生や大学生の頃から明確なビジョンを持っていたわけではなく、僕らが思っている以上に、行き当たりばったりで決めている人が多い事に驚いた。著者も本書で語っているように、重要なのは同じ場所にとどまらずに行動を起こす強い意思なのだろう。
30代でも40代でも行動を起こす事はできる。世界を狭めているのは強い意志の欠如なのだと、勇気をくれる一冊。
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「奇跡の職場 新幹線清掃チームの”働く誇り”」矢部輝夫
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
駅のホームに到着してから折り返しで発射するまでのわずか7分間に新幹線の全車両の清掃を終える。そんな清掃会社テッセイの取締経営企画部長である著者が、一般的には敬遠されがちな清掃という仕事を、どのようにして「新幹線劇場」として人々から賞賛されるまでにしたかを語る。
本書のなかで著者が書いているひとつひとつが、実際に他の業種にあてはまるか、読んだ人に役に立つかはわからないが、結局現場で働く人々のモチベーションがもっとも大事なのだと再認識させられる。この例では、それは制服を変更する事だったり、新幹線の入線時にお辞儀をすることだったりするが、モチベーションを上げるための有効な方法は、職場や働く人によって様々なのだろう。
本の内容が濃いかどうかは疑問だが、著者がその仕事に誇りをもっていることが伝わってくる作品。
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「世界から猫が消えたなら」川村元気
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
末期がんを宣告された「僕」の目の前に悪魔が現れた。世界から1つづつ何かを消す代わりに寿命を一日延ばしてくれるという。
主人公の「僕」が死と向き合う物語ではあるが、軽い気持ちで読む事ができる。目の前に現れた悪魔によって「僕」は1つづつ何かが世界から消えていくことを目にすることで、何が本当に大切かを改めて考える事になる。
わかりやすいところだと、第二章の「世界から電話が消えたらなら」である。僕らが学生の頃はまだ携帯電話は出回っていなくて、待ち合わせの場所で電話をして連絡をするということができなかったし、そのせいで結局会えなかったなんて事もあったように思う。それが携帯電話の普及から15年ほどが経過した今、多くの人にとってないと不安になるような存在になってしまった。携帯電話は人を幸せにしたのだろうか。
もう1つ印象的だったのは時計を消す章。そもそも時間とは人間が勝手に決めた感覚に過ぎず、時間がなくなれば1日もなくなるし、時間をつぶす必要もなくなるのだ。時間の概念を考え出した事で人間は幸せになったのだろうか。
「僕」はそうやって世界からいくつかの物を消す決断をしながら自らの過去と向き合っていく。ほのぼのとしたちょっと考えさせられる一冊。
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「プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント」後藤年成
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
著者の長年にわたるプロジェクトマネジメントの経験から、プロジェクトの成功のために注意すべき点を100個にわけて解説している。
プロジェクトマネージャーだけでなく、PMO、つまりプロジェクトマネジメントオフィスの役割についても語っている。どの内容も言われてみればもっともなものばかりだが、実際の現場ではできていないものばかりで、プロジェクトマネジメントというものの深さや面白さを感じた。著者はPMBOKの重要性を認めながらも、世の中のほとんどすべてのプロジェクトはプロジェクトに応じて管理方法を変えなければならないと説明する。
本書で語られているのは本当に柔軟性を求められるないようばかり。例えば、プロジェクトメンバーの発言からモチベーションの低下を読み取る方法や、プロジェクトリーダーがやりがちでプロジェクトの悪循環を招く行動など、プロジェクトリーダーという視点ではなく、ただの後輩を持つ立場の人間としても良好な人間関係を築く上でのヒントがたくさん見つかった。
プロジェクトマネジメントは真剣にやればきっと面白い。そう思わせてくれる一冊。
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「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前」塩野七生
ローマ人の物語。この3冊はユリウス・カエサルが主な登場人物となり、ローマ帝国を一気に拡大させる。カエサルは40代になるまで大した偉業を成し遂げなかった遅咲きの英雄であり、序盤は政治的な内容や多くの人名が登場するためなかなかわかりにくいかもしれない。しかし、後半はカエサルの著書「ガリア戦記」の内容を交えながら、ガリア地方へローマ帝国が拡大していく様子が面白く描かれている。
カエサルだけでなく、ガリア地方の多くの部族を束ねてカエサルに挑んだヴェルチンチェトリックスの勇敢な生き方も印象的である。
実は「ガリア戦記」というタイトルは聞いた事があったのだが、それがユリウス・カエサルによる2000年も前に書かれたものだったとは、本書を読んで初めて知った。読まなければいけない本がまた増えた気がする。
【楽天ブックス】「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前(上)」、「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前(中)」、「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前(下)」
「トータル・リーダーシップ 世界最強ビジネススクール ウォートン校流「人生を変える授業」」スチュワート・D・フリードマン
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ペンシルベニア大学ウォートンビジネススクールの内容を書籍化したもの。仕事だけではなく、家庭や自分やコミュニティも含めて人生を充実させるための方法について語っている。
仕事、家庭、自分自身、コミュニティという4つの分野に対する自分の重要度を出し、実際にそれに費やしている時間を出して比較すると多くの人が、その違いに驚くという。必ずしもそれぞれの分野に費やしている時間の比率が、それぞれの分野の重要度の比率と同じになる必要はないが、必然的に近くなるものだろう。冒頭部分ですでに自分の人生は改善が必要だと思い知らされる。
後半では、それぞれの分野におけるステークホルダーを洗い出してそれぞれの人が自分に求めているものと、自分がそれらの人に求めているものを整理していく、本書では何人かの経験談を載せているが、多くの場合、自分が求められていると思っているものと、実際に求められているものの間にはギャップがある事が多く、それを知ることで楽になれる部分もあり、そうして余った時間を別の分野に割り当てる事ができるのだ。
また、本書では分野をうまく統合していくことも勧めている。例えば家族と一緒に運動すれば、家庭と自分自身の2つの分野に同時に貢献できるのである。僕自身はどちらかというと仕事とプライベートの生活を完全に分けてしまっているので、色々自分の生き方について考え直す必要があると感じた。
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「初陣 隠蔽捜査3.5」今野敏
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
警視庁の刑事部長である伊丹俊太郎(いたみしゅんたろう)の仕事の様子を描く。
「隠蔽捜査」シリーズは本来竜崎伸也(りゅうざきしんや)を主人公にしており、本作品は番外編となる。伊丹俊太郎(いたみしゅんたろう)は竜崎(りゅうざき)の友人で本書の短編はいずれも伊丹(いたみ)目線で描かれているが、伊丹(いたみ)が警察組織のしがらみや、捜査の進め方に迷ったときに竜崎(りゅうざき)に助言を求めるという形で竜崎(りゅうざき)が登場する。
本書に含まれる8編とも、伊丹(いたみ)が悩み、最終的に竜崎(りゅうざき)に助言を求めることで解決に向かう、というワンパターンな展開であるにもかかわらず、竜崎(りゅうざき)の論理的で真摯に正義を全うしようとする姿勢はとてもいずれも読んでて爽快な気分にさせてくれる。
それぞれの短編は、これまでのシリーズ1,2,3の竜崎(りゅうざき)の物語を伊丹(いたみ)の目線から見たものを寄せ集めてきたような構成になっており、これまでのシリーズ作品を読んでいないと消化不良な部分もあるので、本書だけを読むのはお勧めしない。シリーズの最初から読み進めて欲しい。
【楽天ブックス】「初陣 隠蔽捜査3.5」
「転迷 隠蔽捜査4」今野敏
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
降格人事によって大森署の所長となった竜崎伸也(りゅうざきしんや)。その担当の区域で複数の事件が立て続けに起きる。外務省や厚生労働省など事件解決とともに政治的な駆け引きに竜崎(りゅうざき)は関わっていく事となる。
「初陣 隠蔽捜査3.5」を間に挟んだので隠蔽捜査シリーズの第5弾となる。このシリーズは毎回、キャリアというイメージにそぐわず、つまらない縄張り争いや、階級意識などをもとともせずに正義を全うしようとする竜崎(りゅうざき)の率直かつ合理的な判断が読者に爽快感を与えてくれる。本書もそんな読者の期待に応えてくれるだろう。
シリーズのこれまでの作品はいずれも警察内部の出来事を描いた多かったように記憶しているが、今回は麻薬犯罪に絡んで、外務省や厚生労働署、そしてこちらは警察内部ということになるが公安が絡んでくる点が新しい。
例によって小学校時代の同級生であり現在は警視庁の刑事部長である伊丹俊太郎(いたみしゅんたろう)の存在が物語を面白くしている。伊丹(いたみ)も正義を全うする必要性を感じながらも、組織や権力のしがらみに右往左往することもあるため、竜崎(りゅうざき)の合理的なものの考え方を際立たせる事に鳴る。
一介の警察署長として大森署に捜査本部の場所を提供するだけだった竜崎(りゅうざき)がやがて事件の真相に近づいていくこととなる。シリーズ物といのはだいたい4作目、5作目と続いていくと飽きてくるもおだが、本シリーズは続編が楽しみである。合理的にものを考える男性向けのシリーズなのかもしれない。
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「桜ほうさら」宮部みゆき
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
父親の死の謎を解くため江戸へ出てきた笙之介(しょうのすけ)はそこで書を生業として生活を始める。
笙之介(しょうのすけ)の父、宗左右衛門(そうざえもん)は身に覚えのないにも関わらず自らの筆跡と思われる文書によって罪を被り、それによって自殺した。人の筆跡をそっくりまねて書くことなど可能なのだろうか。笙之介(しょうのすけ)は江戸で普通の生活を送りながら、そんな技術を持った人を探そうとする。そんななかで笙之介(しょうのすけ)の出会い人々があたたかい。
また書を生業とするゆえに、笙之介(しょうのすけ)の書に対する強い思いも見えてくる。笙之介(しょうのすけ)曰く、書とは人を映すもので、人の筆跡を寸分違わずまねる事ができる人間がいるとしたら、その人間は心までその人間になりきれる人間だと言うのだ。文字を書くことが少しずつ廃れていく現代だからこそ、この笙之介(しょうのすけ)の考え方は印象的で、もう一度文字を書く事と向き合いたくさせてくれる。
そして、笙之介(しょうのすけ)は温かい人々の助けを借りながら真実に近づいていくのだが、結末は人間の欲望や弱さや信念を感じさせてくれる。著者宮部みゆきは現代を舞台にした物語と同じぐらい、江戸を舞台とした物語を書くが、舞台が江戸で時代が100年以上前でも、人の心のありかたは現代と変わらない気がする。本書を読んで、むしろ宮部みゆきがなぜ江戸という舞台設定にここまでこだわるのか知りたくなった。きっと何か信念があるに違いない。
【楽天ブックス】「桜ほうさら」
「優良企業の人事・労務管理 「10の仕組み」で組織は強くなる!」下田直人
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
本来は会社の総務などに勤める人が読む本だとは思うが、最近組織のありかたについて興味があるので読む事にした。
基本的には会社目線で、社員とのトラブルを避けるためにすべきこと、気をつける事として例を交えて説明している。例えば、秘密保持などの誓約書の作成や就業規則や休日の制度などの整備の必要性などである。どれも会社目線ではあるが、一起業の一社員にとっても、会社のルールや規則、いろんな手続きが何のためにあるかを理解するための助けになるだろう。
また、悪い見方にはなるが、本書に書かれていたような事をしっかりやってない会社は、その部分が弱点であり、トラブルが会った際に、従業員にとってつけ込む事のできる場所でもある。
【楽天ブックス】「優良企業の人事・労務管理 「10の仕組み」で組織は強くなる!」
「デザインの授業 目で見て学ぶデザインの構成術」佐藤好彦
オススメ度 ★★★★☆ 4/5デザインの発展の歴史に沿って、デザインの考え方について語る。すでに普段から心がけていることもあるが、一方で新たに気付かされる考え方もあり、非常に面白い。個人的に印象的だったのは「神はサイコロを振らない」というもので、本来は自然界に対してアインシュタインが言った言葉だそうだが、その言葉をデザインに対して使用している。つまり、デザイナーはデザインにおける神であり、そのデザインのなかで適当に配置されていたり適当に選択されたりする色があってはならない、ということである。
また、デザインの発展において、過去には欠点とされていたものが、その欠点がなくなったあとで「らしさ」としてデザインに取り入れられるという考えも印象的だった。たとえば、本来文字を印刷するための活版印刷がその技術の未発達ゆえに紙面にへこみをつくってしまうことがあった。それが技術の発展した今では、あえてへこみをデザインすることで「らしさ」を表現できるのである。
デザインに対するモチベーションをあげてくれる1冊。アレックス・スタインワイスやアール・ランドといった歴史的なデザイナーについて知ることもできた。同じ著者に「デザインの教室」というのもあるようなのでそちらも読んでみたい。
【楽天ブックス】「デザインの授業 目で見て学ぶデザインの構成術」