オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
楽天市場を立ち上げた三木谷浩史がその成功のコンセプトを語る。
成功者というのは、その成功はすべて自分の決断によって達成されたと語りがちだが、実際には幸運にも恵まれているのだ。そういう意味では本書のような成功者の本を読む際には多少傲慢な物言いも覚悟しているのだが、それほど悪い内容ではなかった。
本書で語られている5つのコンセプトのうち、最初の4つはいろんなところで語られることでそれほど新しい物ではないが、5つめのコンセプトとして「スピード!スピード!スピード!」というのは面白い。最近だらだらした会議が多くなってきた僕の会社の重役たちもぜひ本書を読んでスピードの重要性を理解して欲しいと思った。
【楽天ブックス】「成功のコンセプト」
とにかくおすすめ
ジャンル関係なくオススメを知りたい人向け
とにかく面白い
ページをめくる手が止まらない、寝る時間さえ惜しくなる最高のエンターテイメント
泣ける本
思いっきり泣きたい人向け
優しい気持ちになれる本
悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本
世界を知る
世界の大きな流れを知りたい人向け
深い物語
いろいろ考えさせられる、深い物語
生き方を考える
人生の密度を上げたい方が読むべき本
学習・進歩
常に向上していたい人が読むべき本
組織を導く人向け
日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本
デザイン
ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本
英語読書初心者向け
英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選
英語でしか読めないおすすめ
英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。
「恋歌」朝井まかて
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第150回直木三十五賞受賞作品。
三宅花圃(みやけかほ)は入院した師である中島歌子(なかじまうたこ)の部屋を整理する際にある書物を見つける。それは中島歌子(なかじまうたこ)の激動の半生をつづったものだった。
中島歌子(なかじまうたこ)、樋口一葉(ひぐちいちよう)など、名前は聞いた事があっても彼女達がどのようにして何年も語り継がれる書物を書いたのかどれほどの人が知っているのだろう。本書では徳川幕府末期、尊王攘夷の気運の高まる混乱のなかで生き抜いた中島歌子(なかじまうたこ)を中心に、その弟子である三宅花圃(みやけかほ)などと絡めて、当時の混乱の様子を描いている。
残念ながら当時の政情について知識が乏しいために本書の面白さを十分に味わったとは言えないが、すぐれた作品なんだろう。
【楽天ブックス】「恋歌」
「深夜特急(4) シルクロード」沢木耕太郎
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
インドを後にした著者は、パキスタン、アフガニスタンを経由してイランへ向かう。
毎回のごとくそれぞれの国の個性が面白い。特にパキスタンの長距離バスの運転手のその運転の様子が著者の興味をひいたようだ。旅が進むにしたがって、著者の視点が文化やその土地の人よりも、旅や自分と同じ旅人に向かっている気がする。
4冊目を読み終わって思うのは、あまり沢木耕太郎という著者は観察力にすぐれた人間ではないということ。もちろん、「自ら経験しないとわからない」として、あえて細かい部分を書かないようにしているということも考えられるし、日本に帰ってきてから記憶をたよりに書いたため本当に印象に残ったことしか欠けなかったのかもしれないが、これだけの国を旅したらもっとたくさん書くことがあるのではないかと感じてしまう。
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「Qrosの女」誉田哲也
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人気ブランドQrosのCMに登場した美しい女性は名前も年齢も国籍も明かされなかった。やがて彼女は「Qrosの女」と呼ばれてさまざまな憶測を呼ぶ事となる。ジャーナリストの矢口慶太(やぐちけいた)や栗山孝治(くりやまこうじ)も「Qrosの女」の情報も探ろうとする。
ジャーナリストや女優の視点で物語は展開する。興味深いのは女優や俳優として成功したいという人間と、容姿に恵まれながらも人から注目されるような生き方をしたくない人間がいることだ。また、一般の人にとっては人の秘密を暴くことを仕事にしているように見えるジャーナリストも、それぞれ独自の信念や良心を持っているのだ。
非常に多才な誉田哲也であるが、本作品のなかで長く印象に残る部分は少なそうだ。気楽に読める作品ではある。
【楽天ブックス】「Qrosの女」
「ルポMOOC革命 無料オンライン授業の衝撃」金成隆一
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
インターネットの発展と、スマートフォンの普及に伴い、Coursera、Udacity、Edxといったオンラインで大学の授業を受けられるMOOC(Massive Online Open Courses)プラットフォームが注目されるようになってきた。本書はそんなMOOCを含むオンラインエデュケーションの現状に様々な視点から迫る。
かなり前からオンラインエデュケーションには興味を持っていたが、どこか騒ぎすぎな印象も持っていた。一般の人にはどの程度認知されていて、実際にはどれほど人々の学習環境に根付く可能性があるのかいまいちつかめずにいたのだ。本書ではMOOCsで日常的に授業を受けている人々の感想や境遇を説明し、カーンアカデミーなどのMOOC以外のオンラインエデュケーションについても触れている。
序盤のMOOCで勉強をしている世界の人々のエピソードに触れると、自分が人生をさぼっているような気がしてくる。環境に恵まれない人こそ、オンラインエデュケーションの可能性に敏感なのだろう。環境に恵まれている日本人はいつになったら危機感を感じるのだろう。
後半は日本のオンラインエデュケーションの動きをいくつかのサイトと共に説明している。カーンアカデミーのことを知ったときにどうして日本でももっとこのように、学校の勉強についていけないような子供達を助けるための動きがないのだろうか、と思ったが、すでにそのような動きをしているサイトはいくつもあってそのことに驚かされた。
今後も引き続きオンラインエデュケーションの動向に注目していきたいと思った。
【楽天ブックス】「ルポMOOC革命 無料オンライン授業の衝撃」
「Beautiful Lies」Lisa Unger
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
車にひかれそうになった子供を助けたところを報道され、世間からの注目を浴びたRidleyだが、それを機にいろいろなことが起きるようになった。やがてそれは彼女自身の出生の秘密にまでおよんでいく。
本書は兄Aceと父と母の家庭に育った女性Ridleyの物語。自分の姿が報道されたあと、本当の父と名乗る人から手紙を受け取るのである。自らの出生に疑問をもつRidleyは少しずつ大きな陰謀に巻き込まれていく。実は自分は過去・・・とか、疾走したあの人が実は・・・、という流れの本が多くて読み終わってあまり時間が経たないうちに記憶から薄れてしまっている。
さて、本物語りでは、Ridleyの叔父が何年も前に行っていた福祉制度が物語の鍵となるのだが、昨今日本で議論になったことと非常に似ているため、いろいろ考えさせられる物があるだろう。子供を育てることができない母親に、「それが母親の責任」とその義務を強いて不幸な子供達を増やすのか、それとも子供を手放す自由を社会が受け入れ、子供達を育てる施設を整えるのか。
本書ではRidleyと同じように自分の出生に悩んで家を飛び出したAceもたびたび登場する。ドラッグから抜け出せなくなったAceの存在が日本とアメリカの文化の違いを際立たせているような気がする。
一度両親を、自分の本当の親じゃないかも、と思い始めたRidleyには過去のすべてのできごとが嘘っぽく見え始める。考えてみると、人は他の家庭がどのように子供に接するか、ほかの家庭の親と子供接し方が自分の家庭のそれとどのように異なるかというのは、本当に知る機会がないんだな、と考えさせられた。
「フラットデザインの基本ルール」佐藤好彦
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Windows8やiOS6で採用されたフラットデザイン。言葉にすると単に、今までの立体的なデザインからシャドウやグラデーションの少ないデザインへの移行、と認識されてしまうだろう。しかし、本書は世の中がフラットデザインに向かった背景やその原因について説明している。
人々がパソコン上で何ができるか想像できなかった時代は、現実の世界に存在するそのデザインをパソコン上でも再現する事で人々の抵抗感をなくしてきたが、もはやその必要はなくなった、という説明は非常に腑に落ちる物がある。本書を読んで改めて周囲の物を眺めてみると、いろいろ違った点が見えてくる。例えばパソコン上で「保存」を意味するアイコンがいまでもフロッピーディスクだったりするのだが、すでにフロッピーディスクは世の中から消え去って何年も経過しているのだ。
また、本書はフラットデザインの問題点やフラットデザインをするにあたって困難な点についても語っている。デザイナーにとっては、単純にボタンを立体にしてすませることができないため、今まで以上にスペースや色の使い方に慎重になる必要があるだろう。
フラットデザインについてだけなく、デザインというものについて改めて考えさせてくれる一冊。
【楽天ブックス】「フラットデザインの基本ルール」
「パーソナルプロジェクトマネジメント」冨永章
オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
プロジェクトマネジメントの内容を個人の目標の達成に活かす、というテーマで書かれている。プライベートな予定に対して、重要度や他人への影響度を考えて取り組むことはあまりないが、仕事で行っているプロジェクトと同様に期日やリスクを考えて取り組むことはできるのだろう。著者はまさにそんな人生を送っているようで、そのストイックな生き方は大いに刺激になった。
しかし、本書の内容が、常に仕事におけるプロジェクトマネジメントの話と、プレイベートにおけるそれとを行ったり来たりして非常に読みにくかった。その点が残念である。
【楽天ブックス】「パーソナルプロジェクトマネジメント」
「残穢」小野不由美
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第26回(2013年)山本周五郎賞受賞作品。
知り合いの女性の部屋で起きる不思議な音。その原因を突き止めようとするうちに次々の異なる怪異と出会うことになる。
部屋で一人のときに変な物音が聞こえる、というのは誰でも体験したことがあるだろう。実際そのような音の多くは、単純に気温の変化やペットや隣人が引き起こしているもので、時とともに忘れてしまうものなのだろう。本書が読者に与える怖さは、そんな誰でも体験したことのあるできごとを、過去の怨念に結びつける点ではないだろうか。
著者は、友人の部屋で起こる音に興味を覚え、同じマンションでほかにも不思議な経験をしている人がいることに気づく。そしてまた向かいにある団地でも人が長く居着かない場所があるという。徐々に過去をたどり、そこに住んでいた人のその後を調べるとしだいに、自殺や殺人や火災に結びついていく。一体過去この場所で何が会ったのか、と。
世の中に多く溢れる「怖い話」。残念ながら多くの「怖い話」は現実味に欠ける。怖い目にあう人々の行動があまりにも軽率すぎたりするせいだと思っている。本書が怖いのは、登場人物が知性的に冷静に現実と向き合う点だろう。
【楽天ブックス】「残穢」
「深夜特急(3) インド・ネパール」沢木耕太郎
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マカオ、香港、マレーシアを経てついにインドに到達した著者。インドの生活に触れる。
前の2冊はどちらかというとややおおざっぱなアジアという感じがして、日本でも歌舞伎町や新大久保あたりで味わう事ができそうで、あまり興味がわかなかったが、本書のインドの様子は、どこか日本では決して経験できない雰囲気があって楽しんで読む事ができた。
インドにいくと人生観が変わる、とよく言われるが、本書はそんな様子の一部を見せてくれる。しかし、印象的だったのはむしろ、ここまで長く旅をしてきた著者が、旅というものに対して、どこか達観した見方をするようになった点である。
また、隣国のネパールの様子も描いている。若いうちにこの2つの国に行ってみたいと思った。
【楽天ブックス】「深夜特急(3) インド・ネパール」
「十字軍物語(1)」塩野七生
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1095年11月のクレルモンの公会議でローマ方法ウルバン2世の呼びかけによって始まった十字軍。本書はその第一回十字軍について記述している。
学生時代の教科書ではわずか数行でおわってしまう程度の出来事ではあるが、キリスト世界のなかでは当時間違いなく大きな出来事だったであろう。当時のカトリック教会の状態や、イスラム世界など、教科書が伝える事実ではわからない、その当時の雰囲気が伝わってくる。
興味深かったのは、当時のイスラム世界の人々にとっては、十字軍が何を行っているのかわかっていなかった点である。イスラム世界の人々に彼らのエルサレム奪還という目的が知られたのはどうやらかなり後のことのようで、その進路の途中の国々の人にとっては十字軍はただの侵略者としか見えなかったのだ。
本書ではイスラム世界はセルジュークトルコの支配してい時代ではあるが、キリスト世界だけでなくイスラム世界の状況に着いても知りたくなった。
【楽天ブックス】「十字軍物語(1)」
「ヤマの疾風」西村健
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第16回大藪春彦賞受賞作。
昭和44年。炭坑の町のチンピラ達3人組、飛車松(ひしゃまつ)、ゼゲン、マッコリとその地域で抗争を繰り返すヤクザ達を描く。
舞台は僕が生まれるより10年ほど前。僕らの世代ではすでに炭坑とともに生活するという状況が想像できないが、本書が描くのはまさにそんな時代。いろいろ社会が整備されてないと感じられる部分もあるが、今より活気が感じられる気がする。実際、誰もが未来に希望を抱いていたのだろう。
物語は飛車松(ひしゃまつ)達3人組が、とある暴力団の賭場のお金を奪った事から始まる。面子を守るために犯人を突き止めようとする暴力団達によって、3人は次第に追いつめられていく。またその一方で、地域の暴力団同士も少しずつ緊張が高まっていくのである。
飛車松(ひしゃまつ)の真っすぐな生き方は、この昭和という時代設定だからこそ受け入れやすいものなのだろう。
【楽天ブックス】「ヤマの疾風」
「わかりやすく説明する練習をしよう。」リー・ラフィーヴァー
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
わかりやすく説明する方法を、複雑な事柄を説明する動画を作成することをビジネスにしている著者が語る。
本書でも冒頭で語られているように、まず僕らは、説明するという行為が、ランニングのフォームのように練習に酔って改善できるものであるということに気づくべきなのだろう。そもそも世の中の多くの人は説明というものの重要性と改善の可能性を理解していないのだ。だから簡単に説明を人に委ねる事ができる。理解することと説明ができることとはまったく違うのである。
さて、本書では説明者が陥りやすい失敗についていくつか例をあげている。なかでも言葉として印象に残ったのは「知の呪縛」である。説明者はその内容にもっとも熟知した立場にいるため、その内容について知らないという立場に立って物事を考えるということができなくなるのである。また、大勢に対して説明する場合、いろんなレベルの知識を持った人が同じ場所に存在するはずである。そのようなときに、どのレベルをターゲットにして説明すべきか、ということにも触れている。
内容自体ものすごい新しいことを書いているわけではないのかもしれないが、改めて図などを交えて説明の持つ意味を示してくれるので、説明というものに対する考え方に新たな視点を与えてくれた気がする。
【楽天ブックス】「わかりやすく説明する練習をしよう。」
「あたらしい働き方」本田直之
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ハワイと日本を行き来しながら生活する著者が、新しい働き方を提供する企業を取材し、自分の意見を織り交ぜながら語る。
複数の新しい働き方を提供する企業を紹介している。本書を読むといろいろ共感する部分が多い。なぜいろんな価値観を持った人がいるのに、朝の9時から夕方の18時といったように、同じ時間を会社に拘束されなければならないのか。もちろん同じ会社で働いていれば同じプロジェクトに関わることもあるため、顔を合わせる必要はあるだろう。それでも月曜日から金曜日に毎日同じ時間に8時間以上会社にいる、という必要はないのである。また同時に、なぜ会社とは行きたくない場所なのか。人生の大部分を過ごす場所なのだから、もっと心地よい場所であるべきだろう。
本書では6時間労働を実現した会社や有休日数に制限のない会社など、多くの新しい試みを実現させている会社を紹介している。休暇に旅行に行く事を推奨している制度などは面白い。何よりも経験を重視するその会社の姿勢が見える。
しかし著者は繰り返し述べている。例えば6時間労働で十分な利益をあげるためには、通常以上に効率性を追求し、集中力が必要になるのだと。魅力的に見える労働環境で意思の弱い人が働けば、単にさぼってしまうだけで、何が理想の労働環境かは、本人次第なのである。
僕自身物事を集中して効率よく行って、人生のなかでできるかぎり多くの経験を積みたいと思っている。それでも会社によって拘束される多くの時間に、人生ってそんなものなのかな、とやや諦め気味だったが、本書を読んで元気が出てきた。まだまだ理想の生活を追求することはできるかもしれない。
【楽天ブックス】「あたらしい働き方」
「Tell No One」Harlan Coben
「リバーサイド・チルドレン」梓崎優(しざきゆう)
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5ミサキはカンボジアで仲間とともにゴミをあさって生活をしている。しかし、ストリートチルドレンを嫌う警察官や、ゴミを減らそうとする政府の政策によってそんな生活も脅かされていく。
日本人の少年であるミサキがなぜカンボジアでストリートチルドレンとして生活しているのか。そんな疑問とともに物語が始まる。ゴミを漁って生活するミサキとその仲間たちの様子からカンボジアという国の不安定さが見えてくるだろう。アンコールワットという有名な観光地を持ち、観光客が安心して訪れることができるようになっても、一歩道を入れば貧しい人々がわずかな食べ物のために辛い想いをしているのだ。
そして、物語が後半に進むにつれて、ミサキの過去についても語られる。悲しい理由から家族と離ればなれになったミサキ。そこからは経済格差が生み出す不幸が見えてくる。一方で、カンボジア政府は、観光客を呼び込むためにゴミを減らそうとするため、ミサキ達は新たに生きる道をみつけなければならなくなるのだ。
カンボジアという国の今まで知らなかった現状を見せてくれる一冊。残念ながらハッピーエンドとはいかないが、日本以外の国に対して新たな視点を持たせてくれる。
【楽天ブックス】「リバーサイド・チルドレン」
「チグリスとユーフラテス」新井素子
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第20回日本SF大賞受賞作品。
惑星ナインへの移住した人類だったがやがて人口が減っていき、ついに最後の子どもルナだけとなった。孤独のなかルナはコールドスリープについていた人々を起こし始める。
突拍子もない設定で最初はかなり物語に入っていくのに抵抗があったが徐々に著者が伝えようとしていることが伝わってくるような気がする。ルナはコールドスリープをしていた4人の女性を目覚めさせ、彼女達が死ぬまで一緒に過ごすのだが、その4人の価値観がいずれも異なる点が面白い。1人目のマリアは子孫を残すことを人生の目標としていたから、一人残されて孤独に打ち拉がれるルナを見て子供を産む事の是非に心を動かす。3人目の朋実(ともみ)は絵を描く事を生き甲斐にしていた。永遠だと思っていた芸術さえもやがて朽ち果てると知った朋実(ともみ)もまた自分の考えを見直す事になる。
そして最後に起こされた灯(あかり)。彼女は惑星ナインへの移住した最初のメンバーの1人。自分たちのやってきたことが無駄に終わらないためにルナが想いも寄らない行動を起こし始める。
人生とはなんなのか、生きる意義とはなんなのか。改めてそんなことを考えさせてくれるだろう。
【楽天ブックス】「チグリスとユーフラテス(上)」、「チグリスとユーフラテス(下)」
「グーグル・ジャパンで働く11人の英語勉強法」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
グーグル・ジャパンで働く11人の日本人のこれまでの英語勉強方法やその体験をまとめている。
やはりすべての人に共通していたのが、英語を使わなければならない環境に自らの身を置くということだろう。日本の文法中心の英語教育に対して、意見が分かれている点は興味深い。また、各自が語る英語勉強法とあわせて、グーグルという社内環境がさらに羨ましくなってしまった。
【楽天ブックス】「グーグル・ジャパンで働く11人の英語勉強法」
「Think Simpke アップルを生み出す熱狂的哲学」ケン・シーガル
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スティーブ・ジョブズと12年に渡って一緒に働いてきたクリエイティブディレクターの著者が、アップルやジョブズのエピソードを中心に、シンプルであることの重要性を語る。
スティーブ・ジョブズはいろんな話を聞く過程で、独裁的なイメージを持っていた。しかし、本書のなかで描かれる印象は必ずしもそんなことはなく、むしろ自分の気持ちに素直で、しっかりと人の話に耳を傾けることができる人間だったということがわかる。
印象的だったのは、著者が繰り返し、シンプルであることの難しさを説いている点だろう。今やだれもがアップルの偉業を認めており、そのシンプルを貫くポリシーをまねようとするが、ことごとく失敗している。著者は言うのだ、シンプルは0か100かなのだと。中途半端なシンプルさなら必要ない。実際、本書で著者は、シンプルさを中途半端に採用しようとした多くの企業の失敗例を挙げている。
また、これまでにアップルのやってきたことについて語っているので、いくつか新しいことなども発見できた。過去の有名なCMなどは本書を読んだ後につい見返してしまった。本書ではシンプルさを、アップルを支えている哲学として説明しているが、人生のさまざまな場面にも適用できるような気がした。
【楽天ブックス】「Think Simpke アップルを生み出す熱狂的哲学」
「光秀の定理」垣根涼介
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
1560年。新九郎(しんくろう)は愚息(ぐそく)と名乗る坊主と出会い行動を共にすることとなる。そんな2人はある日、明智十兵衛光秀(あけちじゅうべえみつひで)と出会う。
本書を読むまであまり明智光秀(あけちみつひで)という人物についての知識を持っていなかった。織田信長(おだのぶなが)の最期となった本能寺の変の鍵となった人物という程度のものである。しかしどうやら明智光秀(あけちみつひで)については諸説あるようだ。本書はそんな1つの明智光秀像(あけちみつひで)を見せてくれる。
鍵と鳴るのは、剣士新九郎(しんくろう)と坊主愚息(ぐそく)である。新九郎(しんくろう)は最初ただひたすら剣を生業にしようとその腕を磨いていたが、愚息(ぐそく)との出会いによって物事を考える能力を身につけ、それが剣の技術にも活かされていく。また愚息(ぐそく)は世の中のルールには従わず自らの信念にしたがって生きている。そんな2人に魅了された光秀(みつひで)はその地位をあげていくなかでたびたび2人の元を訪れるのだ。
面白いのは愚息(ぐそく)がお金を稼ぐために行う博打の方法である。1見すると1対1の5分に思えるそれが物語を非常に面白くしている。
明智光秀(あけちみつひで)という人物についてもっと知りたくなった。また、新九郎(しんくろう)や愚息(ぐそく)の生き方にもなにか心地よさを感じた。
【楽天ブックス】「光秀の定理」