オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
キリスト教への迫害が進むなか、長谷倉六右衛門(はせくらりくえもん)は藩主の命により宣教師ベラスコとともに海を渡ることとなった。
遠藤周作の名作の一つとして前回読んだ「沈黙」で描かれていた宣教師の葛藤が印象的だったため、本作品もと思い手に取った。
物語は、キリスト教の世界のなかで名声を高めようとする宣教師ベラスコと、先代から受け継がれていた土地を返してもらうために、海を渡ることを決意した侍、長谷倉六右衛門(はせくらりくえもん)の視点で交互に描かれる。
驚いたのは、まず当時のスペイン領メキシコに向かった点である。当時スペインが巨大な植民地を持っていたことは知識と知っていたが、やはり物語としてそれを味わうのは違うもの。彼らは東回りでメキシコへ到着し、その後スペインを目指すのである。この時代にはまだパナマ運河がなかったために、一行はメキシコ到着後に、大西洋側に移動してから別の船でスペインにむかったのだということも併せて知った。長い航海のなかで何人かの人は命を落とし、また暴風雨で船から投げ出されるなど、物語を通じて当時の旅の難しさを知ることができた。
その後一行はさらに、ローマ法王に謁見するためにローマに向かう。
当時のキリスト教の布教が、ペテロ会とポーロ会という2つの派閥の間で起こっていたことを知る。ポーロ会宣教師ベラスコとペテロ会の宣教師たちが議論するシーンでは、日本での布教がなぜこれほど難しいのかについても語っており、日本人の持っている考え方の特殊な部分について改めて考えさせられるだろう。
また、武将として一つの時代をいきながらも時代の変化のなかで戦が減り、新しい生きる道を探しヨーロッパに向かうこととなった長谷倉六右衛門(はせくらりくえもん)からは、当時の時代の変化が人々に強いた変化を感じることができる。
本書を読み終えて、どうやら本書が実在の人物支倉常長を題材としているということに気づいた。支倉常長という名前は耳にしたことはあったが何をやった人物かということは知らなかった。本書でその航海のために作られたガレオン船も、実在した船サン・ファン・バウティスタ号をモデルとしており、それは支倉常長とともに宮城でとても有名で博物館もあることを知った。近いうちに行ってみたいと思った。
また、遠藤周作という作家については、人の心の葛藤を描くのがうまいと感じた。キリスト教を深く調べているにもかかわらずどちらかというと否定的な描き方をしているので、キリスト教に対してどのような考えを持っていたのか、作家自身の考えについて興味を持った。
【楽天ブックス】「侍」
とにかくおすすめ
ジャンル関係なくオススメを知りたい人向け
とにかく面白い
ページをめくる手が止まらない、寝る時間さえ惜しくなる最高のエンターテイメント
泣ける本
思いっきり泣きたい人向け
優しい気持ちになれる本
悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本
深い物語
いろいろ考えさせられる、深い物語
生き方を考える
人生の密度を上げたい方が読むべき本
学習・進歩
常に向上していたい人が読むべき本
組織を導く人向け
日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本
デザイン
ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本
英語読書初心者向け
英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選
英語でしか読めないおすすめ
英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。
「GRIT(グリット) 平凡でも一流になれる「やり抜く力」」リンダ・キャプライン・セイラー/ロビン・コヴィル
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
成功する人とそうでない人の差はなんなのか。それは社会的知性(SQ)でもなければ、知能指数(IQ)でもなくでも、GRITという呼ばれる力なのだという。本書はそんな成功するための力「GRIT」について語っている。
序盤ではこれまで考えられていたIQの重要性を否定してからGRITに語っていく。GRITとは度胸(Guts)、復元力(Resillience)、自発性(Initiative)、執念(Tenacity)という4つの力で、多くの実例を交えて説明している。
まず印象的だったのは「夢を捨てされ」の章である。僕らは「夢を持つこと」はいいことだと教わってきた。それは確かに目標に向かう原動力となり得るのだが、夢を語ってばかりで実際にその1歩を踏み出さない人も多くいるのだという。夢想している暇があったら「今日できることをする」という考え方が重要なのだという。
また、拒絶されても立ち直る力を身につけるために、ある男性が行なったリジェクションセラピーの話も面白かった。投資家からの資金提要を断られたことがショックだった彼は立ち直る力を身につけるために、100日間連続で人に断られることを目標にしたのだ。断られるための無茶な要望にもかかわらず、受け入れてくれた人がいたことから、男性は自分の望みを叶えるためには拒絶を恐れずに、頼んでみることが重要なのだと知るのである。拒絶は人間の否定ではなく、ただ単にあなたの要求が相手の求めているものにマッチしなかったというだけなのだ。
終盤の「期限は無限」の章で紹介されていた、92歳の時にアルファベットを学び始め、98歳のときにベストセラーを書いた男性の話は、多くの読者へ、将来への希望を与えてくれるだろう。
多くの例は触れられているものの、実際にどのような方法をとればGRITが身に付けられるのかはわかりにくい。それでも「忍耐力」、「楽観主義」、「固定思考」よりも「成長思考」と、いくつかの鍵となる考え方を知れば今後の生き方のヒントとなるのではないだろうか。何よりもいい話に溢れているので一読の価値ありである。
【楽天ブックス】「GRIT(グリット) 平凡でも一流になれる「やり抜く力」」
「The Design Method: A Philosophy and Process for Functional Visual Communication」Eric Karjaluoto
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
目的を達するためのデザインを作成する手法について説明している。
僕自身もデザイナーであり15年以上デザインの仕事に関わってきた。現在でこそ作業フローは確立されてきているが、最初の頃はただただ美しくかっこいいものを作ることに大量の時間を費やしていた。きっと現在も多くのデザイナーがそんな美しいだけのデザインを作ることに大量に時間を費やしているのだろう。
しかし、本書の冒頭でも語られているように、デザインとアートは違うのである。アートであれば美しくかっこいいものを作ればそれでよかったかもしれないが、デザインは常に目的がありその目的を達成してこそ「いいデザイン」なのである。
本書はそんなデザインの流れを体系化して説明している。読者によっては反論したくなるようなこともあるだろうが、個人的には納得のいくことばかりで、僕自身が辿り着いた手法とかなり近いと思った。
まず、良くあるデザインの勘違いと、デザイナーが心がけるべきことにいくつかの例を挙げながら触れた後に、著者が辿り着いたDesign Methodの説明へと入っていく。それは次の4つのステージから構成される。
データを収集し、観察と分析から状況を知る
2.Planning
問題とニーズを突き止め戦略と実行可能な計画を作る
3.Creative
考えうる案を検討しデザインの方向性を決める
4.Application
試験と分析を繰り返しながらデザインを適用する
デザイナーによってその作業範囲はそれぞれであるが、実際に多くの人が「デザイン」という言葉からイメージするのは「Creative Stage」以降なのではないだろうか。残念ながら今でも多くのデザイナーや制作プロダクションが1のDiscoveryステージと2のPlanningステージにほとんど時間をかけていないのが実情である。
4つのステージを順を追って細かい進め方、陥りやすい間違いなどについて詳細に説明している。部分的にでも参考にできそうな部分はたくさんあるだろう。
個人的には4のApplicationステージの進め方が印象に残った。本書ではデザインの作成段階でも常に、適応しつつ結果を見て調整していくとしている。つまり、少しデザインを適応しては結果を確認し、その結果によってその先のデザインの適用を調整していくというのである。
確実に機能するデザインを作るという点で非常に納得ではあるが、そのようなテストをしながらデザインを適用するためには、クライアントとの信頼関係づくりがかなり重要となるだろう。実際本書では何度もクライアントとの関係づくりの重要性に触れている。クライアント側の担当者目線でデザインがどのように見えるか語っている部分も印象的だった。確かに、ほとんどデザインのことを知らないなかで、デザイナーと打ち合わせて決めていかなければならない、クライアント側の担当者の立場に立つと、今までとは違った部分が見えてくる。
デザイナーだけでなく、デザインプロジェクトの担当者としてこれからデザイナーを探さなきゃいけない人など、デザイナーに関わる全ての人にとって学べる内容がたくさん含まれている。
「The 80/20 principle」Richard Koch
「The Dip」Seth Godin
「The Elements of Typographic Style」Robert Bringhurt
「Good to Great」Jim Collins
「How to Be a Graphic Designer without Losing Your Soul」Adrian Shaughnessy
「Positioning」Al Ries and Jack Trout
「Whatever You Think the Opposite」Paul Arden
「Zag」Marty Neumeier
「羊と鋼の森」宮下奈都
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2016年本屋大賞受賞作品。高校生のときに、調律師の仕事に魅せられた男性外村(とむら)が、調律師として成長していく様子を描く。
調律師という仕事を、実際にその仕事に従事している人のの視点で見せてくれたことがありがたい。調律師という仕事があることは知っていたが、それはギターの音を合わせるように、一定の周波数に音を合わせる誰にでも機械的にできる作業かと思っていた。どんな仕事も毎日その作業を行う人のしか見えない深さがあるのだろう。それが、こうやって物語として触れると、自分がその仕事をしているかのように深く見えてくるから不思議である。
個人のピアノを調律するのと、コンサートのピアノの調律をするのは大きく違ことや、その会場の物の配置が変わっただけで音に影響が出るということが新鮮だった。また、物語中で語られるこんな言葉にも感動した。
主人公である外村(とむら)のほかにも、同じ職場で調律師として働く人が出てくる。天才調律師の板鳥(いたどり)、元々はピアニストを目指していたが諦めて調律師となった秋野(あきの)、バンドでドラムをしている柳(やなぎ)である。調律師として生きる人にもいろんな過去があることが面白い。
毎日こつこつと技術を積み上げていく職人気質の仕事に改めて魅力を感じた。
【楽天ブックス】「羊と鋼の森」
「希望荘」宮部みゆき
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
妻と離婚して新しい人生を歩み始めた38歳の杉村は、知り合いからの勧めによって探偵事務所を開くこととなった。そんな杉村が扱った4つの事件を描く。
杉村三郎シリーズの3作品目で、前作「ペテロの葬列」で妻との別れを決意したあとの杉村を描いている。実は、娘がいて離婚経験者ということで、どこか年上のような気がしていたが予想以上に年齢が違いことを知り、今回はいつも以上に親近感を持って読むことができた。
4つの物語のなかでもっとも印象的だったのは3番目の事件「砂男」である。地元の繁盛していた蕎麦屋の若い亭主が、不倫をして失踪した事件で、その不倫相手の女性の行方を探すこととなるが、調査を進めるうちにその男性にはつらい過去があることがわかってくるのだ。父や妻の複雑な感情と行動を描いていて、4つの物語の中でもっとも宮部みゆきらしさを感じた。
また、4番目の物語である「ドッペルゲンガー」では東北大震災を題材にしている。阪神大震災を題材に含めた物語にはたびたび出会うが、東北大震災を描いている物語はまだ少ないため新鮮だった。
宮部みゆきは期待値が高いだけに、それなりの作品でも失望の方が大きくなってしまうのが評価の難しいところである。本作品もそれほど悪くはなかったのだが、宮部みゆきらしい人間の感情を切り開くような表現があまり見られなかったのが少し残念だった。
【楽天ブックス】「希望荘」
「スペースシャトルの落日 失われた24年間の真実」松浦晋也
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人を宇宙に運ぶという輝かしい使命よりも、むしろコロンビア空中分解事故、チャレンジャー爆発事故で印象的なスペースシャトル。そもそもスペースシャトルという計画はどのような目的でどのようにして始まったのか知りたくて本書を手に取った。
面白いのはスペースシャトルを思い描く時誰もが最初に思い描くであろうあの大きな翼は、実はほとんど意味がないということ。言われてみれば確かに、宇宙は無重力空間だからもちろん翼による揚力は発生するはずもない。地球に帰還するときに少しだけ役に立つのだという。むしろその翼がスペースシャトルを設計する上で一つの大きな足かせになっているのだという。人を運ぶのに必要な設備と、物を運ぶのに必要な設備は大きく異なり、その2つを同時に詰め込もうとしたために困難になってしまったのだ。
ちなみに、報道でスペースシャトルのことを聞いていると、チャレンジャーやコロンビアなどいろんな名前があるけど見た目的な区別がつかないと思っていたが、どうやら機体は同じで名前だけが異なるということ。
本書を読んでスペースシャトルは、そもそもの設計として大きく間違っていたことや、政府や地方経済に大きく影響を与えるほどの巨大プロジェクトは、大きな政治的圧力がかかるゆえになかなかうまく進まないことがわかった。しかし、月面着陸を果たしたアポロ11号や奇跡の生還で知られるアポロ13号に代表されるアポロ計画はどのようにすすめられたのだろう。次はアポロ計画について知りたいと思った。
【楽天ブックス】「スペースシャトルの落日 失われた24年間の真実」
「The Girl Who Takes an Eye for an Eye」David Lagercrantz
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
刑務所に服役中のSalanderに会いに行った際、BlomkvistはLeo Mannheimerという36歳の男性について調べるように言われる。Blomkvistが調べたところ、ある日を境にLeo Mannheimerが左利きから右利きになったという。
Stieg Larssonの「The Girl with the Dragon Tattoo」に始まる物語の5作目。著者がDavid Lagercrantzへ変わってから2作目にあたる。前作「The Girl in the Spider’s Web」で法律に反する行為を行なったSalanderが刑務所で服役している状態で本作品は始まる。
その刑務所のなかでさえ、すべての権力を掌握し、艦種でさえ逆らうことのできない囚人Benitoや同じ刑務所にいるバングラデシュ出身の美しい女性Fariaの存在など、最初から問題山積みであるが、物語は、助けを申し出たBlomkvistに対してSalanderがLeo Mannheimerという男性の名を挙げたことで始まるのだ。
そして、いろんな情報源を頼りに少しずつLeo Mannheimerの真実に迫るうちに、Salanderの過去と大きくつながっていることが明らかになっていくのである。
シリーズ全体を通じて言えることだが今回も、普段なじみのないストックホルム周辺の地名が多く出てきて、遠い異国の地の人生を感じることができる。そして、人当たりは悪いながらも、正義感に突き進むSalanderの冷静な行動は爽快である。ただ、残念ながら、前作までにはあった一日中読んでいたくなるような勢いが今回は感じられなかった。著者が変わったせいなのか、物語の展開ゆえにそうなったのかはなんとも判断できない。
また、物語の過程で、「人の人格を決めるのは、才能なのか環境なのか」という研究結果に触れている部分があり、過去何度も議論が重ねられたこの問題について改めて考えさせられた。また、過去関連する多くの実験が試みられたこともわかり、その実験の内容や結果をもっと知りたくなった。
シリーズとしてはまだまだ続きそうなので、続巻が出る限り読み続けたいと思った。
「The Da Vinci Code」Dan Brown
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ルーブル美術館のキュレーターJacques Saunièreが技術館の館内で殺された。その死ぬ間際に書き残したメッセージによって、警察から殺人の疑いをかけられた言語学者のLangdonはJacques Saunièreの孫娘Sophieとともに真実を探ることとなる。
映画化もされた有名作品ではあるが、すでに映画を見たかどうかも忘れており、新鮮な気持ちで読むことができた。本書でもっとも興味深いのはやはり、物語中でも最大のテーマになっている、イエス・キリストの新しい真実だろう。
なんとローマ帝国のコンスタンティヌス以前は、キリスト教およびユダヤ教は女性を神聖化していたのだという。ローマ帝国が国教として取り入れるにあたって、それまでの考え方を政治に都合のいい方向に変えていった結果、今の女性の地位が男性より低い世の中になっているというのである。
物語としてはキュレーターJacques Saunièreの残したメッセージの謎を少しずつ解きながら非常に価値のある宝物に近づいていくという使い古された形式ではあるが、その過程で描かれる真実が印象的なので物語全体を面白いものにしている。
本より映画のほうがいいこともたくさんあるので、映画を否定するわけではないのだが、映画を見てしまうと深い物語が2時間のひどく陳腐で大衆受けする物語になってしまうこともよくあり、この物語は映画が有名だっただけになおさらそんな印象を持っていたが、実際こうして原作を読んでみるととても素敵な物語だということを知った。
映画しか見ないでこの物語を評価した人に、おそらく物語の内容を忘れてしまったであろう今、改めて本書を読んで欲しいと思った。
「悲劇的なデザイン」ジョナサン・シャリアート、シンシア・サヴァール・ソシエ
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
デザインがおかしいせいで、人の死につながったり、大きな事故を起こしたケースを紹介しながらデザインの重要性を説く。
序盤は、医療機器の操作方法がおかしくて大量の放射線を浴びて死に至った患者の話や、操縦席の計器の表示がわかりにくくて墜落した飛行機の話などデザインが生み出した悲劇を紹介している。
「医療機器や飛行機のデザインは僕らが扱っているデザインとは違う」などと他人事と思ってはいけない。中盤以降ではFacebookやLinkedInなどのUI /UXによって一生忘れないようなひどい体験をした人のエピソードを紹介している。
本書を読めば、デザイナーは自分の仕事の大切さと責任を再確認することだろう。そして、デザイナーでない人でも、クリエイティブな世界で生きる人間は自分の作り出すものがどのような結果をユーザーにもたらす可能性があるのか、その責任の大きさを改めて認識することだろう。
インターネットが普及したせいで、実際に傷ついている人を目にする機会は少なくなったが、それでも確実に、自分たちの作ったものはユーザーに使いにくく感じさせたり、疎外感を与えたりしているのである。迷った時は僕らは、実際にそのような対応を店のスタッフにされたら自分がどう感じるのか考えるべきだ。そう考えることによってエラーメッセージひとつとってもたくさん改善すべき箇所が見えてくるにちがいない。
デザイナーだけでなく、多くの人に読んで欲しいと思った。終盤で著者も語っているが「人はみなデザイナー」であり、声をあげ、行動することで世の中は使いやすいもので溢れ、過ごしやすくなっていくのである。
「Thinking Objects:Contemporary Approaches to Product Design」ティム・パーソンズ
「Articulating Design Decisions」キャロル・リギ
「User-Centered Design Stories」トムグリーバー
【楽天ブックス】「悲劇的なデザイン」
「フラットデザインで考える新しいUIデザインのセオリー」宇野雄
オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
YahooのUIデザイナーがフラットデザインについて語る。
出版が2014年ということで、移り変わりの激しいUIデザインにおいて4年前の本というとすでに古すぎるのではないかという懸念もあったが、デザインの移り変わりを理解するためには悪くないのではないかと感じで手に取った。
さて、序盤こそフラットデザインについて語っているものの、後半はなぜか「UIデザインの本質」といって、基本的なUIの役割について本の半分ほどを割いている点が残念である。多くのUIデザイナーにとっては前半の100ページまで読めば十分なのではないだろうか。唯一この本が与えてくれた新しい刺激は、今まであまり関心がなかったWindows Phoneで採用されているModern UIに目を向けてくれた点である。
【楽天ブックス】「フラットデザインで考える新しいUIデザインのセオリー」
「ルパンの消息」横山秀夫
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
15年前に自殺した女性高校教師は、実は他殺だったというタレコミがあった。その死は高校生3人によって行われた「ルパン作戦」と呼ばれる行動に関係があるという。時効を目前に警察はその3人を呼び出し当時のことを語らせる。そうして少しずつ当時の出来事が明らかになっていく。
12年ぶりの2回目の読了である。すでに内容を忘れていたが、とても素敵な物語だったことを覚えていて、今回再度読みたくなった。
15年前に起こった事件の解明を機に呼び出されたのは当時高校生の橘、喜多(きた)、竜見(たつみ)である毎日のようにつるんでいたにもかかわらず、今はそれぞれがまったく異なる人生を送っているのが感慨深い。特に当時冷静な男であった橘(たちばな)が現在はホームレスとして生活をしている点が人生の不思議さを感じさせる。そして、3人の取り調べが進む中、徐々にルパン作戦の全貌が明らかになっていくのである。
もっとも印象に残ったのは同級生の死を、当時の供述をするなかで喜多(きた)が思い出すシーンである。
どれほどつらい記憶でも時と忘れたり、乗り越えたりして、その記憶は風化し、それぞれが新しい人生を歩んでいくのだろう。
事件が3億円事件の時効直前、1975年を舞台にしているのも面白い。アポロ11号の月面着陸など、当時の高校生たちがどのように何を考えて生きていたかが伝わって来る。これはまさに著者横山秀夫が見てきた人生なんだと知り、もう一度その時代に起こった大きな出来事に目を向けてみたくなった。
12年前に読んだときとはまた異なる部分が印象に残るのが面白い。2回目に読んだ今回も良い作品を読んだときのみ感じられる読後の爽快感に溢れていた。あまり知られていない作品ではあるがぜひ多くの人に読んでもらいたいと思った。
【楽天ブックス】「ルパンの消息」
「人生の9割はPDCAでうまくいくシンプル思考」井上裕之
オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
PDCAのPが「Plan」でDが「Do」で…と序盤でPDCAの本当に簡単な説明はしているものの、それ以降PDCAにはほとんど触れず、著者の生きるうえでの考え方をいろんな状況について語っている。著者の語る内容が間違っているとはまったく思わないしどれも賛同することばかりだけど、どれもどこかで聞いたような考え方ばかりで、ページ間のつながりも特になく趣味で書いた本という印象である。本書を読まなければわからないこと、気づけないことは特になかった。
きっと「PDCA」という言葉が入っているという理由だけで本書を買う人がいることを期待したのかもしれない。著者は本書以外にも多数の本を出しているらしいが、ぜひPDCAでもう少し内容の濃い本を書けるようにぜひPDCAして欲しいと思った。PDCAについては先日読んだ冨田和成氏の「鬼速PDCA」の方がずっとおすすめである。
【楽天ブックス】「人生の9割はPDCAでうまくいくシンプル思考」
「LIFE SHIFT」リンダ・グラッドソン/アンドリュー・スコット
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人間の寿命は過去から現在に至るまで伸び続け、現在もその勢いは続いている。2007年生まれの先進国の人の50%は107歳まで生きるのだという。そんな100歳まで生きることが普通となっていくなかで、人はどのように生きるべきかを語る。
何よりも100歳まで生きるということは65歳で引退するという選択をすると、その先35年もの引退期間を生きることとなり、必要な貯金の額も想定と大きくことなるという。なによりも、学生として勉強する時代と、社会にでて働く時代と、引退後の生活という3つの人生のステージの生き方が今後大きく変わっていくという。
個人として考えていかなければいけないのは、20代前半までで身につけた技術や知識だけで、その先100歳までの人生のための十分なお金を稼ぐのは難しいということ。学生を終えて社会に出た後も、仕事をする時期と、学んで新たな知識を身につける時期を送ったり、働きながら新たな知識を身につける必要がある。本書ではそんな寿命の変化は、各世代に生きる人々にどのような影響を与えるのかを、1945年生まれのジャック、1971年生まれのジミー、1998年生まれのジェーンという架空の人物で説明している。
仕事や学びだけでなく、結婚やパートナーとの関係も変わってくるという。人生が長くなれば女性の出産による仕事から離れる期間もそれほど大きな問題ではなくなるために、女性と男性の関係が対等に近づいていくという。女性の出産期間にパートナーである夫がその生活を支えるように、男性の学びの期間に、そのパートナーの女性が生活費を補うような、それぞれの生活を経済的に支えあうようなパートナー関係が多くなるという。
個人的には僕自身が働くIT系の会社では多くの人がすでに考えている内容であるため、それほど大きな驚きはなかった。むしろ転職等をせずに1つの会社でずっと働き続けている人にこそ役立つのかもしれない。そんな人は本書を読んで、これからの時代の変化に対応できるような柔軟性を育む準備をしたほうがいいのではないだろうか。65歳まで1つの会社で生きてしまうと、その後他の生き方や働き方をするのはかなり難しくなってしまうだろう。
【楽天ブックス】「LIFE SHIFT」
「悲嘆の門」宮部みゆき
オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
インターネット上に溢れる情報を監視する会社でバイトを始めた三島孝太郎は、同僚の一人がホームレスの失踪事件を追って失踪したことから、自分自身も真相を追い始める。やがて孝太郎(こうたろう)は夜間に動くガーゴイル像の噂を耳にする。
主人公が「サイバーパトロール」という、あまり世の中では知られていないアルバイトをしている設定にすることで、ネットでの言葉のやり取りが生み出す不安や恐怖の連鎖に警鐘を鳴らしているかのようだ。
そんな会社で働いているために、世の中を騒がせる事件の情報をより深く知ることとなり、同僚の失踪を機に、自らもその事件に入り込んでいくのである。そんな、序盤の展開は宮部みゆき作品らしく、読者を物語にどんどん引き込んでいく力を感じさせる。
ところが物語は中盤からファンタジー色が強くなる。個人的にはイメージできない世界が大きく、あまり物語についていけなかった印象を受けた。宮部みゆきは今までもファンタジーをいくつか世に出しているが、どれも時代物や現代物語に比べると魅力を感じないので、ひょっとしたら宮部みゆきのファンタジーが好きな人はまた異なる捉え方をするのかもしれない。
【楽天ブックス】「悲嘆の門(上)」、「悲嘆の門(中)」、「悲嘆の門(下)」
「まんがでわかる7つの習慣」小山鹿梨子
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
思想家スティーブン・R・コヴィーの7つの習慣をまんがで説明している。どれも社会に出て20年近く経っている人間にとっては当たり前なことばかりではあるが、このような考えかたに繰り返し触れる事にはそれなりに意味があるのだろう。
本書で描いている7つの習慣は以下の7つである。
終わりを思い描くことから始める
最優先事項を優先する
WinWinを考える
まず理解に徹し、そして理解される
シナジーを創り出す
刃を研ぐ
このなかで改めて大事にしたいと思ったのは、5番目の「まず理解に徹し、そして理解される」である。人の話を聞く時、ついうっかりと自分の立場に置き換えてその良し悪しを判断してしまいがちだが、実際にはその人の能力や容姿や年齢なども含めて、相手の気持ちに立とうとすると、いろいろ違った部分が見えてくるもの。もちろん、そこまで人を深く理解するためには、それなりに時間と真剣に聞く姿勢が必要ではあるが、表面的に理解したふりをしてアドバイスしても決して聞き入れられることはないだろう。
まんがなので2時間ほどで一気に読むことができたが、どちらかというとまだどのように生きていいか見えていない、20代の社会人向けの内容のような印象である。
【楽天ブックス】「まんがでわかる7つの習慣」
「It」Stephen King
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アメリカのメーン州のデリーという町で何年かごとに起きる子供を連続して殺害する事件、1958年当時11歳だったBill,Ben,Eddie,Richie,Beverly,Mike,StanはItと対決した。1985年、また「It」が動き出し、デリーに残ったMikeの呼びかけによって再び彼らはデリーに集まることとなった。
Stephen Kingの名作中の名作ということで、いつか読みたかった一冊。英語で1370ページという大作で、言い回しもスラングなどが多く、さらに物語中にはアメリカの文化や娯楽に絡めたネタがたくさん散りばめられており、物語を読み進めながら当時のアメリカの子供達の流行の映画や音楽やテレビ番組が見えてくる点が面白い。
物語は11歳のときのItとの対決の詳細を忘れてしまった彼らが、現在のItとの遭遇や思い出話によって少しずつ当時の対決の様子、当時の恐怖を思い出していく。そんな当時と現代を交互に行き来しながら物語は展開していく。
個人的に好きなのは、11歳当時の彼らが川でダムを作ったり秘密基地を作ってそこで過ごす場面だろう。幼い頃を思い出しただけでなく、お金がなくても何か楽しい事を見つけて楽しむという子供時代は、どの国でも共通なのだと感じた。
そして彼らは少しずつ11歳児の記憶を鮮明にし、再び動き出したItとの対決に向かっていく。読み終わってみれば同じことを訴えるのに、これほどまでのページ数を必要とするのかという疑問はあるし、読み終わるまでに長く時間がかかりすぎて物語に入り込みきれなかったような思いもあり、物語の面白さよりも、読み終わった事による達成感の方を感じた。
「My Brilliant Friend」Elena Ferrante
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
イタリアの田舎町で育ったLilaとElenaの物語。
Elenaというポーターの娘が、Lilaという名の靴屋の娘との出会いから、十代後半までの2人の様子を描く。最初はお互いに会話もしなかったLilaとElenaだが、学ぶことを通じて少しずつお互いを認め合っていく。女性の友情物語としては新しいのではないだろうか。
それでも1950年代のイタリアでは、生活の役に立たない学業を続けることは女性には難しく、やがてLilaは家業の靴屋に兄のRinoとともに入れ込んでいく。その一方でElenaは多くの支援を受け学業を続けていくのだが、一緒に学ぶ相手としてLilaがいないことに寂しさを感じるのである。
10代の女性らしく、恋愛や嫉妬などの様子も多く描かれているが、物語の後半に近づくにつれて、2人の離れようのない友情が見えてくる点が面白い。
続編につづくためかなり中途半端なとこで本書は終わってしまうが、イタリアを舞台にした物語に触れる機会はなかなか少ないだけに、書かれていることに新鮮さを感じる。
「たった1日で声まで良くなる話し方の教科書」魚住りえ
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
滑舌の悪さを治したくて本書を手に取った。
本書を読んでわかったのは、滑舌の悪さは直せるということ、そして、腹式呼吸がいいということである。どうやらそれぞれの人間には声の響きやすい高さというのがあるようで、声をしっかり出すためには自分にとって適切な声の高さを理解することが必要なのだそうだ。
シャドウィングという英語の練習方法はよくやっているにもかかわらず、英語よりも何倍も日常生活において使うだろう日本語では一切練習をしないということがおかしな話だと思ってしまった。
とりあえず腹式呼吸を意識しながら話すことを習慣にしてみたいと思った。
【楽天ブックス】「たった1日で声まで良くなる話し方の教科書」
「ブロックチェーン入門」森川夢佑斗
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
最近よくきく「ブロックチェーン」とはなんなのか、そこを理解したくて本書を手に取った。
正直本書を読むまでの僕の知識は乏しいもので話題の仮想通貨ビットコインとブロックチェーンの関連性も知らなかった。どうやらビットコインはブロックチェーンの技術を利用して発展した技術の一つで、ブロックチェーン自体は今後さまざまな分野に応用できる技術で、それによって今後世の中のいろんな取引の形態が変わる可能性があるのだという。
本書は、タイトルでは「ブロックチェーン」を謳っているが、半分ほどをビットコインに代表される仮想通貨の説明にも割いている。投資対象としてビットコインがどの程度信頼がおけるものなのかを理解したい僕にとってはおおいに役に立った。
本書を読んで理解したことは、まだまだ仮想通貨の技術は始まったばかりに過ぎず、ビットコインがこのまま不動の仮想通貨の地位を確立するのか、それともビットコインの弱点を改良されて次々に考え出されていく第2、第3の仮想通貨が世の中のスタンダードとなるのかはもう少し様子を見る必要があるということである。
正直本書だけではブロックチェーンやビットコインなどの仮想通貨についてしっかり理解することはできないが、現在の世の中の流れを漠然と理解するには非常に役に立つ本である。
【楽天ブックス】「ブロックチェーン入門」
「ローマ人の物語 危機と克服」塩野七生
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
悪名高き皇帝ネロの後のローマ帝国の物語で、紀元69年から98年までを描いている。
ガルバ、オトー、ヴィテリウス、ヴェスパシアヌス、ティトゥス、ドミニティアヌスと皇帝が次々と変わる時代だが、ローマ帝国自体は比較的安定していたようである。首相が次々と変わる日本のように国民がどこか政治に無関心な様子である。それは見方を変えると、すでに国自体がそう簡単に不安定な状態にならないという確信が国民のなかにあったのだろう。
次々変わる皇帝のその政策やふるまいをここまで連続して見せられると、どのような人間が信用を失いやすく、どのような人間が長く信頼を勝ち取れるかという傾向が見えてくるようだ。「歴史から学ぶことは多い」と言葉としては多くの人が知っていて、使ったりもするが、ローマ帝国の皇帝たちから学べることは、企業の経営者たちにも共通している気がする。まだローマ帝国の歴史なかばではあるが、結局カエサルとオクタビアヌスに勝る皇帝はいないのではないかと思えてくる。
本書のもう一つの個人的な見所はポンペイで有名なヴォスヴィオ火山の噴火である。当時ヴォスヴィオ火山の麓の町で生きていた男性がタキトゥスという当時の作家に送った手紙の全訳はそれが確かに現実に存在した悲劇であることを伝えてくれる。
トライアヌスが皇帝になったことで終わる本書。ローマ帝国はこの後「五賢帝時代」と呼ばれる時代に入っていくのである。
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