とにかくおすすめ

ジャンル関係なくオススメを知りたい人向け

とにかく面白い

ページをめくる手が止まらない、寝る時間さえ惜しくなる最高のエンターテイメント

泣ける本

思いっきり泣きたい人向け

優しい気持ちになれる本

悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

世界を知る

世界の大きな流れを知りたい人向け

深い物語

いろいろ考えさせられる、深い物語

生き方を考える

人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「フランス人はボンジュールと言いません」Bebechan

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
フランス人でYouTubeでフランス語を教える著者がフランス語とフランス文化について語る。

細々とフランス語を勉強している中で、単純に文法やフランス語会話だけでなく、文化など言語学習とは少し異なる視点でフランス語に触れたいと思い本書に辿り着いた。

本書はフランス人の著者が初心者向けにフランス語やフランスの文化を説明する。すでにフランス語を数年学んでいる僕にとってもいくつか新しい発見があった。
フランス語の数字の読み方は非常に特殊だが、改めて本書でおさらいさせてもらった。

マドモアゼルというフランス語では誰でも一度は聞いたことがある単語が、今は使われなくなったというのを知らなかった。また日本語の「だよね」や英語の「don’t you?」のような使い方ができるフランス語、heinの使い方も本書を読んで初めて知った。このような単語は普通に文法書を読んでいるだけでは気づけないのでありがたい。

PACSという結婚に代わる制度や、恋人との付き合い方の考え方など日本とは異なる文化も紹介されており楽しめた。もう少し細かく調べて知りたいと思った。

著者のYouTubeでもぜひ見てみたいと思った。改めてフランス語学習のモチベーションを高めてもらった。

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「限界を越えるピアノ演奏法」川上昌裕

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
音楽家であり指導者でもある著者がピアノの学び方について語る。

大人の趣味としてピアノを練習している中で、ピアノに関する視点を少しでも多く取り入れられればと思い本書を手に取った。

読み始めて気づいたのだが、著者は盲目のピアニストとして有名な辻井伸行氏を指導した先生でもあるという事で、辻井伸行氏とのエピソードも含まれている。そんほかにもピアノ学習方法や、さまざまなジャンルの音楽を身につけるための考え方などを語っている。そのいくつかは他の分野の上達にも適応できそうなものである。

特に

  • インプットとアウトプットのバランス
  • クリエイティブとはゼロから作り出すことではない

の章などはデザイナー視点からも大いに共感できる。

残念ながら、タイトルにある限界を超えるピアノの演奏法らしきものは一切書いてなかった。ピアノの演奏を必ずしも知りたくて本書に辿り着いたわけではないが、いいことを語っている部分もあるだけに、商業主義のなかで内容と一致しないタイトルをつけている点が残念である。

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「スモールワールズ」一穂ミキ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第43回吉川英治文学新人賞受賞作品。6つの物語を収録した短編集である。

短編集というと作者にとって実験的な物語も多く、なかなか全体として印象に残りにくいのだが、本作品は3編ほど印象に残る作品があり、短編集としてはかなり打率が高い。特に2作品目の「魔王の帰還」、そして最後の2作品「愛を適量」「式日」である。

いずれの物語も、家族に問題を抱えている人々の揺れ動く心情を描いている。何が正しくて何が正しくないのか、そんな答えのない出来事に度々遭遇する。そんな人生のやりきれなさを存分に味わわせてくれる。

一穂ミキという著者に触れるのは今回が初めてだが、長編などにも触れたいと思った。

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「空の模様の描き方」クメキ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Clip Studio Paintでよる空をメインとした5つの絵の描き方を解説している。

晴天の空、夕焼けの空、星空、雨天の空など5つの絵をラフ作成から順を追って詳細に解説しているので、非常にわかりやすく、また絵を描くためのアイデアとしても刺激になった。

本書は基本的にはClip Studio Paint(以下クリスタ)による操作を解説しているが、Procreate、Photoshopさらにいえば実際のアナログ絵画にも十分応用可能である。

改めて空と雲のレイヤーを分けることは効率よく絵画作成を進める上で重要だと思ったし、筆者が多用しているメッシュ変形による空の効果はぜひ取り入れてみたいと思った。

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「塞王の楯」今村翔吾

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第166回直木賞受賞作品。戦国時代の戦乱の中、親を失い、石垣造りを生業とする飛田屋の頭源斎(げんさい)に拾われた匡介(きょうすけ)が飛田屋の頭として成長していく様子を描く。

何よりもまず、石垣造りという職業に魅了される。戦乱の時代だからこそニーズがあったその職業と、石を積むという作業の深さを味わえる。石垣造り職人は、積方、山方、荷方の3つに分けられ、それぞれ、石を積む人、切り出す人、運ぶ人としてそれぞれの分野で技術を磨き、共同して石垣造りをするのである。

豊臣家によって世の平穏が訪れ、戦国時代の終わりを感じさせる中、源斎(げんさい)がその立場を匡介(きょうすけ)に譲りわたしていく過程を描く。飛田屋の家に生まれながらも匡介(きょうすけ)に立場を譲った玲次(れいじ)の存在も面白い。匡介(きょうすけ)と玲次(れいじ)は互いの技術を尊重しながら共に飛田屋に尽くすのである。

物語は大津城の城主、京極家からの依頼によって大津城と京極家と飛田屋は関わっていくこととなる。また、鉄砲作りの彦九郎(ひこくろう)の存在も物語を面白くしている。石垣造りに飛田屋が頑丈な石垣を作ることで世の中の平和に貢献できると信じる一方、鉄砲造りに賭ける彦九郎(ひこくろう)は、強い武器をつくってこそ、人は戦いをやめると信じている点が面白い。

物語はやがて大津城を舞台に東西の決戦の時を迎える。そしてそこは、石垣、鉄砲と手段は異なれど自分達の仕事を通じて平和な世界を作ろうとする匡介(きょうすけ)と彦九郎(ひこくろう)の一騎討ちの場ともなるのである。

非常に楽しめた。現代は失われた石垣造りや鉄砲造りという職業を、当時の人々の葛藤を巧みに絡めて素敵な物語に仕上げている。

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「恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす」エイミー・C・エドモントン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
組織における心理的安全性の重要性とその実現の方法について語る。

心理的安全性という言葉を聞くようになってしばらく経つ。VUCA(Volatility, Undertainty, Ambiauity)と呼ばれる現代においてすべての立場の人間が思っていることを発言する環境をどのように作り上げるのか、が組織の生き残りの鍵となる。本書は多くの例を交えながら心理的安全性を説明する。

まず心理的安全性という言葉の定義がわかりにくいと感じているのは僕だけではないと思うが、その言葉の解釈に対するよくある誤解として次の5つに触れている

  • 心理的安全性は、感じよく振る舞うこととは関係がない
  • 心理的安全性は、性格の問題ではない
  • 心理的安全性は、信頼の別名ではない
  • 心理的安全性は、目標達成基準を下げることではない

つまり、心理的安全性の実現を努力しない理由はないということである。

本書を手に取る人間にとって重要なのは、どうやって心理的安全性を実現するかであろう。本書ではその手順を土台をつくる、参加を求める、生産的に対応するの3つに分けて次のように説明している。

土台をつくる
・仕事をフレーミングする
・目的を際立たせる
参加を求める
・状況的謙虚さ
・発言を引き出す問い
・システムと仕組み
生産的に対応する
・感謝を表す
・失敗を恥ずかしいものではないとする
・明確な違反について処罰する

要所要所に差し込まれる物語も面白い。スペースシャトルのコロンビア号やチャレンジャー号の事故はそこら中で触れられているのでそれほど新鮮ではないが、映画にもなったハドソン川着陸のパイロットたちの物語や全員が協力してメルトダウンを防いだ福島第二号原子力発電所の話は本書で初めて知った。

心理的安全性はリーダーだけが実現に努めることではない。組織のすべての人間が日々努めることなのだと改めて感じだ。また、心理的安全性は会社などの組織においてのみ重要なのではなく、同じ考えは家庭にも適用できると感じた。さっそく今日から意識して行動したい。

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「無くせる会社のムダ作業100個まとめてみた」元山文菜

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
現在も多くの会社で行われている、会社の無駄作業をまとめ代替案と共に紹介している。

僕自身はIT業界に勤めており、現在もスタートアップで仕事をしているので、リモートワーク、ペーパーレスなど新しい業務の進め方に慣れているが、世の中には今も古い方式に縛られている組織も多いらしい。本書ではそんな無駄作業をまとめている。

個人的には会議のムダの話がうっかりしていると陥りそうだと思った。本書でいう

  • とりあえず会議
  • ラジオミーティング

である。聞き流しているだけのミーティングなど、発言しない人が存在する会議は撲滅すべきだと改めて思った。

正直普段から新しい業界で仕事をしている人にとってはあまり目新しい内容はないだろう。強いていえば、世の中の古い会社ってこんなことをまだやっているんだ、という世間を知るための学びにはなるかもしれない。

【楽天ブックス】「無くせる会社のムダ作業100個まとめてみた」
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「The Wish」Nicholas Sparks

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2019年写真家として名声を得たMaggie Dawesは癌で余命が限られたものとなった。そんなおり、アルバイトのMarkに請われて若い頃の恋愛の話を聞かせることとした。それはMaggieがノースカロライナの島Ocracokeで過ごした十代のときの話である。

物語は2019年の、写真家としてニューヨークで共同ギャラリーを経営するMaggieの様子と、Markに生涯最高の恋愛として十代の頃の恋愛を語って聞かせる1996年の物語が交互に展開する。

2019年の物語では、余命わずかとなったMaggieが自らの終活を始めると共に、その頃アルバイトとしてギャラリーで働き始めたMarkの優秀さ優しさによって、少しずつ家族のことや人生のことを打ち明け始める様子が描かれる。

一方で、1996年の物語は、高校生にも関わらず一夜の過ちから妊娠してしまったMaggieが、周囲に知られずに子供を出産し養子に出すために、叔母のLindaの住むノースカロライナの離島Ocracokeで過ごす様子を描く。Ocracokeにいる間に家庭教師としてMaggieの元に訪れたBryceと、Maggieは妊娠中であるという事実にもかかわらず距離を近づけていくのである。

物語として大きな驚きはないが、それでも最後は涙してしまった。死期を知ったMaggieがそれを家族に知らせるためにクリスマスを避けようとしたり、それまで不仲だった人々にも感謝を伝える点が印象的である。こんな生き方をしてみたいと思った。

著者Nicholas Sparksの本を読むのは本書が初めてであるが、映画化された作品のなかには「メッセージ・イン・ア・ボトル」や「君に読む物語」のように名作といえる恋愛物語が多い。ありがちな若い男女の恋愛物語の印象を持っていたが、死を目の前にしたMaggieの生き方に感銘を受けた。

英語慣用句
hit it off 意気投合する
Ferris wheel 観覧車
mobility assistance dog 移動補助犬
seeing-eye dog 盲導犬
have a second helping おかわりをする
with flying colors 見事に
measure up to 応える

「ポイズンドーター・ホーリーマザー」湊かなえ

オススメ度 ★☆☆☆☆ 1/5
女性目線の人間関係を扱った6編の物語。

先日読んだ「ユートピア」が比較的面白かったので、湊かなえ作品のなかで良い作品を読み損ねているのではないかと思い、本書にたどり着いた。

6編とも女性目線の物語で、すべての物語で交通事故や殺人事件で誰かが亡くなる事件が起きる。

著者湊かなえは毎回女性の醜い部分を書くことにこだわっているように感じるが、本作品も嫉妬や自意識や他責など、女性の醜い部分を存分に描いており、残念ながら楽しい部分や見習うべき部分、共感できる部分はほとんどなかった。

正直、著者が何を伝えたくて本作品を描いたのか掴みかねた。単に描きたいものを描くだけでなく、大切なことを物語を通じて伝えたいとか、少しでも世の中を良くしたいとか、物語の作者にも自身の大義を持ってほしいと思うが、本書からは感じなかった。

最後の2編「ポイズンドーター」と「ホーリーマザー」は娘目線、母親目線と物語の裏と面になっている。娘は母を毒親と言い続け、母親の側は娘を恩知らずと見る物語である。普段人の文句ばかり言って自ら人生を変えるための行動をしないような人が読むと、何か感じるものがあるのかもしれない。

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「平場の月」朝倉かすみ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
50代になった青砥(あおと)は高校時代の同級生の須藤(すとう)と出会う。二人は少しずつ距離を縮めていく。

序盤にすでに須藤(すとう)が亡くなったことを知った青砥(あおと)が、須藤(すとう)との出会いを回想する形で物語は進んでいく。どちらも一度の結婚と離婚をしたあとに出会ったから、学生のようにキラキラしていない感じがありそうな雰囲気を醸し出している。恋愛に無鉄砲になれないために、なかなか前進しない関係や周囲にいる人の噂を話す人たちの存在を描いているところが面白い。

50代の男女の物語というのが新鮮である。若い頃はは50代といえば、すでに人生の晩年のような印象を持っていたが、自分自身アラフィスに近づいた今、50代でも生き方次第でいくらでも青春できることを知っている。そういう意味ではもっと50代の青春を描いた物語が増えてきても良いだろう。

似た物語が一切思い付かないぐらい、新鮮さを感じさせてくれる物語である。

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「過労死ゼロの社会を 高橋まつりさんんはなぜ亡くなったのか」高橋幸美/川人博

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
新入社員で電通に勤務し、過労のため自殺した高橋まつりさんの事件について語る。

日本のテレビ、新聞に大きな影響力を持つ電通について知ることは、メディアを通じて流れこむ情報を補正し正しい真実を見極めるための助けになるだろう。そう考えて電通関連の書籍を読み漁っている中で本書にたどり着いた。

本書は、最初に高橋まつりさんの自殺の後に判明した事実、次に母の高橋幸美さんからみたまつりさんとの思い出や自殺が起きるまでの様子、そして最後に弁護を担当した川人博(かわひとひろし)さんの過労死やそれを生み出した企業に対しての思いの順番に書かれている。

事実に関しては、すでにネットで見聞きした情報以上のことはなかったが、むしろ印象的だったのは第2章の母親の当時の体験談である。

大学合格までの話は、むしろ子育てをする親目線でいろいろ考えさせられた。シングルマザーの母親の元で、都内で育ったわけでもないのに自ら勉強をして東大に合格するような人間が育つのだと驚かされた。しかし、一方でその何事にも一生懸命で混乱から逃げることをしない生き方が不幸な結果に繋がった一因とも考えられるのでなんともいえない。

この事件を聞いた人のなかには「自殺する前にどうして会社を辞めないんだ?」という感想を抱いた人も多いと思う。本書の幸美さんの手記を読むと高橋まつりさん本人も、幸美さん自身も、それを理解していたし、自殺する当日ですら幸美さんがまつりさんにで電話で語っていたことがわかる。

「死んじゃダメだよ。会社なんでやめてしまいなさい」と言うと、「うんうん」と聞いていました。

改めて、睡眠不足で神経が衰弱すると正常な判断ができなくなるのだと感じた。周囲の人間としてできることは言葉で正論をぶつけることではなく、強制的に会社を休ませたり辞めさせたりするなど、制約を与えることなのだと感じた。

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「六人の嘘つきな大学生」浅倉秋成

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
人気企業の内定のための最終選考で6人の大学生が残った。採用担当者はその6人に、グループディスカッションで内定者を1名決めるように伝える。

序盤は6人のなかの一人波多野翔吾(はたのしょうご)目線で物語が進む。指定された日時に6人は、その企業の会議室に集まって内定者を決めるディスカッションを始めるのである。隣室で採用担当者がカメラで観察しているので、自分勝手なふるまいをするわけにもいかないが、内定を勝ち取るために自己主張もしていかなければならない。

そんなディスカッションは、会議室の入り口脇にあった封筒が見つかったことで大きく動き出す。その封筒には参加者6人のそれぞれの過去の犯罪や愚かな行為が告発されていたのである。

後半はその数年後の物語。6人のうちの1人が、当時のグループディスカッションの真実を探ろうと当時の関係者に話を聞いて回るる。採用担当者の意見が面白い。

『落とした学生の中に、もっと優秀なやつがいたんじゃないか?』保証しますけどね、一万パーセント、いましたよ。絶対にいました。

グーグルの人事について扱った「ワーク・ルールズ!」でもの採用の難しさについて書いてあったが、今の形の企業側も死亡者側にも膨大な時間を要する就職・採用活動はいつ今の形をだっするんだろう、と考えさせられた。

アニメ「デスノート」やドラマ「ライアーゲーム」のような一時期流行った心理戦を描いた物語と予想していたが、そんな空気を感じさせたのは序盤だけで、中盤以降からは、現在の就職活動の問題人間の二面性を取り入れた、深みを感じさせる内容だった。

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「中森明菜 消えた歌姫」西崎伸彦

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デビュー40周年を迎えたアイドル中森明菜についてその誕生の経緯から現在までを語る。

僕自身は十代を1990年代に過ごしたので、中森明菜誕生から全盛の1980年代とはずれており、その曲に触れるのは全盛期を過ぎたあとなのだが、それでも多く存在する80年代のアイドルの中では異質の存在という印象を持っている。

本書ではそのスター中森明菜の誕生から、90年代に入って人気に翳りが見えて焦る様子や、近藤真彦との恋愛、そしてその後の自殺騒動などについて触れている。基本的には中森明菜の周囲の人間の証言を集めて構成されていて、周囲の人の多くが、その才能を認めながらも、その強烈な個性と自己主張の激しさに振り回される様子が伝わってくる。

また、家族との関係の悪化についても触れられており、本書を読むと、どちらかというと周囲の人間に対して疑心暗鬼になった中森明菜自身にも問題があるようだ。つくづく、多すぎるお金は人を幸せにはしないなと感じてしまった。

正直、タイトルからもっと深く掘り下げた内容を期待していたがそこまでではなかった。それでも当時のメディアが報道する表面的な内容に対して見えなかった部分を説明している部分もあり、ほどほどに楽しむことができた。

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「Tomorrow, and Tomorrow, and Tomorrow」Gabrielle Zevin

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Samは大学のキャンパスで、小学生の頃一緒にゲームを楽しんだSadieと再会する。やがて二人はゲーム作りに夢中になっていく。

序盤はSadieとSamの再会と出会いのシーンから始まる。出会いは小学生の時、母を交通事故で失って言葉を失ったSamは、入院していた病院でSadieとゲームを通じで出会ったことによりに救われるのである。再会は二人の大学生時代である。Samは恋人と別れて落ち込んでいるSadieをゲーム作りに誘うことですこしずつゲーム作りに情熱を注ぐこととなる。

もう一人の主要な登場人物は、SamのルームメイトであるMarksである。Marksはさまざまな人から好かれる人物で、主張が強く他人を遠ざけがちなSamやSadieとは異なる存在である。当初はゲーム開発用に部屋を貸してくれるだけの存在だったMarkは、少しずつゲーム作りのプロデューサーとしての役割を担っていく。

その3人がゲーム作りや、会社を経ちあげるなかで、時には分裂したり衝突しながら物作りに打ち込んでいく。

SamとMarksはそれぞれ韓国人と日本人の血をひいているし、Sadieも白人ではないとうい点も面白い。アメリカという国で少数派として暮らすがゆえに見えてくる悩みにもところどころで触れられている。そして彼らが作るゲームも日本やアジアの文化を大きく反映する点も面白い

終盤、ある不幸からSadieは共同のゲーム作りから離れていく。それでも必死にSamはSadieにもう一度一緒にゲームを作ろうと声をかけ続ける。SadieがSamに語った言葉が印象的である。

There's no point in making something, if you don't think it could be great.
良いものができると思わないで、何かを作ることに何の意味もない。

物作りに関わる人間としては耳の痛いことがである。

僕自身はゲーマーといえるほどゲームにのめり込んではいないが、ゲームを愛する人の気持ちが伝わってくる。物語中に多くの名作ゲームの名前が唐書酢売るのでもう一度ゲームをやりたくなった。

英語慣用句
remission rate 寛解率
candy striper ボランティア看護助手
distinguish oneself 他者より抜きん出る
keep it close to the vest 手の内を見せない
at each other's throat お互いに攻撃し合う
swing for the fences 大きな目標を狙う
sun oneself 日に当たる
take it in stride 冷静に受け止める
take a gander at 見る、一瞥する

「美しい合気道」白川竜次

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
合気道の基本的な動きを写真とともに解説している。

大部分は写真と補足説明なので、合気道をやってない人は動画も見ないとイメージがつきにくいだろう。章と章の間に著者の稽古や合気道に関する考え方が書かれており、そのなかのいくつかは合気道に対して新しい視点を与えてくれた。

書籍としてはちょっとどんな読者を想定しているのかがわかりにくい。合気道未経験者相手であれば合気道の効能や哲学や他の格闘技との違いを伝えた方が魅力を感じてもらえると思うし、自分のような経験者に対しての書籍であれば、それぞれの技を深く掘り下げてくれたほうが興味深く読めただろう。おそらく書籍としての完成度よりも、著者のYouTubeチャンネルへ誘導するための手段という意味合いが強いのだろう。

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「電通巨大利権 東京五輪で搾取される国民」本間龍

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
東京オリンピックを中心に、日本のメディアに強い影響力を持つ電通の問題を語る。

東京オリンピックの開会式が電通のせいで貧相なものになったという声があったし、先日行われた東京都知事選挙でも候補者に対するメディアの対応への違いは電通の影響によるものと指摘する声もあった。日本の社会への電通の影響を知りたくなって本書にたどり着いた。

本書では現在の日本の総広告費に対する電通の割合などの数値的な部分から、オリンピックに関わるさまざまな電通の影響によって起こった出来事を語る。

興味深いのは、他国の広告業界と日本を比較している点である。日本のようにここまで一つの広告会社が大きくなっている例は海外にはなく、その理由として次の2つを挙げている。

  • 一業種多社
  • メディア購入と制作部門の同居

一業種多社とは、海外では同じ業界の異なる会社の広告を一つの広告代理店が担当することはできない。例えばトヨタを担当していたら同じ自動車業界のホンダや日産は担当できないのだが、現在電通や博報堂は、同じ業種のなかでも複数のスポンサーを抱えているのだという。

また、電通はコネ入社が非常に多い会社という。それによってそれぞれの社員の立場も実力だけでは測れない難しい関係になっていることも本書を読んで初めて知った。

たとえ縁故入社の新人社員の年俸が1千万円だとしても、その見返りとして数億〜数十億円の広告費を獲得出来れば十分元が取れるのだから、縁故入社組は体のいい「人質」とも称されている。

改めて、地上波を中心に世の中の出来事を捉えている人は、電通の意図を受けた各メディアに洗脳されているのだと感じたし、地上波のみから情報を取得することの危険性を再認識した。

また、政治と広告業界を理解すると、日本の仕組みがかなり理解できる気がした。

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「リニューアル版 7つの習慣 ティーンズ」ショーン・コヴィー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
7つの習慣を十代の若者向けの例をとともに説明する。

結局人生を幸せに生きるために必要なのはモノや人ではなくマインドセットである。その点では7つの習慣も「4つの約束」も「嫌われる勇気」も「前向き質問」も、どれも本質的な部分では変わらない。すでに理解しているつもりでいるが、このような考え方はただ一度知識として知っておくだけでなく、繰り返し染み込ませてこそ悪い方向に傾かないための予防策となるのだ。そのような理由から、今回、本書を読むに至った。

7つの習慣自体はすでに何度も触れてきて繰り返しになるが、改めて書くとつぎの7つである。

  • 主体的になる
  • 終わりを考えてから始める
  • 一番大切なことを優先する
  • Win-Winを考える
  • まずは相手を理解してから、次に理解される
  • シナジーを創り出す
  • 自分を磨く

翻訳のせいか、若干分かりにくい表現もあるが、本書では不幸せになる7つの悪習慣としてそれぞれの真逆の項目を描いているのでそれを読むと理解の助けになるだろう。

  • 人のせいにする
  • 行き当たりばったりで始める
  • 大切なことは後まわし
  • 人生は勝ち負けだ
  • まずは自分が話し、それから聞くふりをする
  • 頼れるのは自分だけ
  • 自分をすり減らす

そのほかにも原則中心の話が印象的だった。本書では原則として、愛、勤勉、尊敬、感謝、節度、公平、誠実、忠誠、責任を挙げている。一方で若者たちが陥りがちな間違ったものを中心にする例として次の5つの例を挙げている。

  • 友だち中心
  • 物中心
  • ボーイフレンド/ガールフレンド中心
  • 学校中心
  • 両親中心

どのタイプの人間も世の中にたくさんいるし、いずれの人もあまり幸せに見えないので今後もそちらに傾かないように注意したい。

改めて、子供がもう少し大きくなった時、また親として自分自身も繰り返し読み返せるように常に手元に置いておきたいと思った。

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「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」鈴木忠平

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2004年から2011年まで中日ドラゴンズの監督を務め4度のリーグ優勝と1度53年ぶりの日本一に導いた落合博満を、当時のスポーツ新聞の担当記者が語る。

全12章のそれぞれの章で、著者である担当記者から見た落合と、落合が監督になったことによって変化を余儀なくされた選手目線で描かれている。

2000年以降プロ野球を見る機会がほとんどなかったため、落合といえば中日の主砲という印象が強い。しかし、本書を読むと非常に観察眼の優れた人間で、その能力によって常識や周囲の意見にブレることなく、その結果打者としても監督としても成功したのだとわかる。

それぞれの章の選手目線の物語はどれも面白い。落合の意見から新たな気づきを得てさらに優れた選手になる者もいれば、生き残りをかけて投げ方や打ち方をを大きく変える者もいる。落合自身は打者なので打者に与える影響が大きいようだ。打者目線から描いた福留孝介、和田一浩の章が面白かった。

この世界に好きとか嫌いを持ち込んだら、損するだけだよ

福留孝介のこの言葉には真のプロフェッショナルを感じる。

それはひとつのスイングを構成する一から十までの手順、すべてを繋げていくような作業だった。落合の言葉を耳にしていると、あの不思議なスイング動作の一つ一つに根拠があることがわかった。

和田一浩の気づきからは、どんな技術も終わりがなく、その道を突き詰めることの面白さを思い出させてくれる。

そんほかにも、日本シリーズでパーフェクト直前でピッチャーを変えたエピソードや、ヤクルトからの移籍後に怪我によって本来の力を発揮できなくなった川崎憲次郎を開幕投手にした際のやりとりなど、スポーツ好きなら間違いなく楽しめるであろう内容が溢れている。

報道が与える印象からは、どちらかというと冷徹な監督という印象があるが、本書を読むと、思っていた以上に感情に左右されて決断してきたことも伝わってくる。そして、改めて、先入観にとらわれず観察することの重要性を再認識させられた。

中日ファンでなくても、野球ファンでなくても、スポーツが好きでなくても、間違いなく気づきを得られるであろう一冊。

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「ユートピア」湊かなえ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第29回(2016年)山本周五郎賞受賞作品。海沿いの田舎町鼻崎町で暮らす3人の女性すみれ、菜々子(ななこ)、光稀(みつき)をそれぞれの立場から描いていく。

それぞれの地元への関わり方の異なる3人の女性の視点が面白い。菜々子(ななこ)は鼻崎町で生まれ育ち、交通事故で車椅子生活となった娘久美香(くみか)を抱えている。陶芸家のすみれは元恋人の誘いで鼻崎町に移り住み芸術家仲間とともに、鼻崎町の景色や人を利用して自分の陶芸家としてのブランドを育てようとする。光稀(みつき)は夫の仕事の都合で鼻崎町に住むことになり、いつか再び都会で生活することを望んでいる。

やがて、光稀(みつき)の娘彩也子が車椅子生活の久美香(くみか)について描いた感想文を、すみれが自分の芸術家としての宣伝のために使ったことで、3人の日常に変化をもたらすのである。

どんな人間関係の中でも生まれそうな、気遣い、嫉妬、見栄、野心など様々な感情が自然な形で描かれる点が面白い。自分だったらどうするだろう、という本人としてのふるまいだけでなく、自分が親だったら子供にどう伝えるだろう、というような子供に見せる親としてのふるまいについてもいろいろ考えさせられた。

著者湊かなえ作品は本書で「告白」以来2作品目で、「告白」は個人的には本屋大賞受賞作品の割に不自然さが際立っていたことを考えると、しばらく読まない間にずいぶん作家としての技術が上がった印象を受けた。

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「GIFTED」小野伸二

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
先日引退したサッカー選手、小野伸二が自らの人生について振り返る。

8歳でサッカーチームに入った時から、44歳で引退するまでを振り返っている。18歳でワールドカップに出場した時の話、清水エスパルスと浦和レッズで迷って最終的に浦和レッズを選択した話、フェイエノールトでの出来事など、様々な出来事を順を追って語っている。

まず驚いたのは10人兄弟の5男だということ。大谷翔平の例についても思うことだが、周囲が管理しすぎるより、放っておく方が自ら考えて毎日努力する天才が生まれやすいのかもしれない。

それぞれの章の間に小野伸二と関連深い人のインタビューが挟み込まれている。元日本代表監督の岡田武史氏、妻である小野千恵子氏、浦和レッズなどで同僚だった平川忠亮氏などである。身近な人間から見た等身大の小野伸二が見えてくる。サッカー選手という負けず嫌いな存在の割に、人間関係ではかなり優しい人間であることが伝わってきた。

また、長年小野伸二の代理人を務めた秋山氏のインタビューの次のコメントが印象的だった。

僕が難しいな、と思ったのは、「戦術が雑なチームほど伸二を欲しがる」という点です。理由は簡単で、伸二がいればチームが成立してしまうから。

チームスポーツであるサッカーが、最近より戦術が発展してきて、選手を実現するパーツ化していくなかで、小野のような幅広い技術を持つ人間がチームにフィットしづらくなっているのを感じた。この辺はサッカーに限らず、会社などの組織においても同じことが言えるだろう。

組織、個人、子育てなど、いろいろ考えさせられた。

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