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悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

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人生の密度を上げたい方が読むべき本

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常に向上していたい人が読むべき本

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日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

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ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「Becoming」Michelle Obama

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ミッシェル・オバマが、ピアノの先生の上の階に家族で間借りしていた幼少期から、バラック・オバマとの出会い、そしてバラックが大統領としての任期を終えるまでを描いている。

序盤はミッシェルの子供時代を描いている。ファーストレディとなった人だから黒人とはいえ裕福な家庭に育ったのだろうと想像していたが、まったくそんなことはない。それでも両親の考え方がミッシェルのその後の生き方に大きく影響を与えたことは伝わってくる。また、足の病気に悩んだ父の生き方も間違いなく大きな影響を与えたことだろう。

そして、中盤ではバラック・オバマとの出会いが書かれている。やはりバラックは出会った時から異彩を放っていたということだが、この点はひょっとしたら運命の人と出会ったミッシェルの目線だからなのかもしれない。何よりも印象的なのは、バラック・オバマは心のそこから世の中がよくなることを願って行動しているという点である。

そして、その後の夫婦生活も面白い。州知事から大統領、と少しずつ政治家としてのキャリアを積み重ねるバラックを見ながら、「家族の時間が十分に取れていないのにまだやるのか」というミッシェルのバラックに対する非難と、それと同時に自分自身が夫の夢を邪魔する障害でありたくないという葛藤が印象的であった。それは、対象が大統領という特別なものである以外は、仕事や趣味に打ち込みすぎる夫を非難する、どこにでもいる夫婦のようだ。

ホワイトハウスの生活も驚きである。ホワイトハウスでは窓を開けることすら、許可なしにはできないのだそうだ。また、2人の女の子は常にシークレットサービスが身近にいなければいけないということで、ミッシェルが思春期の子供たちにどのような影響を与えるのかを懸念している点も興味深い。

全体的にもっとも刺激的だったのは、バラックとミッシェルの、自分の人生を少しでも自分の理想の近づけようとする努力である。バラックは世の中を少しでもよくしたいという思いを常に持っており法律家から政治家の道へ進み、それを間近で見ていたミッシェルも、やがて大きな収入源となっている法律家の道から、慈善事業の方向へ少しずつシフトしていくのである。「お金より大切なものがある。」と誰もがいいながらも、やりたい仕事をそれまでの半分の給料で受け入れることは簡単なことではないだろう。

全体的には、ミッシェルの視点を通じて、アメリカの黒人に対する現状がよくわかったし、バラックが本当に純粋に世の中のためを思っていることも伝わってきた。またこのような大統領が出ればいいと感じた。

「かがみの孤城」辻村深月

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2018年本屋大賞受賞作品。いじめられて学校にいけなくなった中学生の小川こころはある日、部屋の鏡が光っていることに気づく。鏡の中には、城がありそこには同じ世代の7人の男女が集まっていた。

鏡の中に集まった7人の中学生は、1年間の期限のなかで城のなかに隠された鍵をさがすことを依頼される。その鍵を見つけると一つだけ願いが叶うという。

なぜこの7人が選ばれたのか、城はなんのために作られたのか、さまざまな疑問を持ちながらも、城での時間を楽しむ中で少しずつ7人は秘密や悩みを共有し、親密になっていく。すでに辻村作品を読み慣れている人であれば早い段階で仕掛けに気づくかもしれない。それでも最後は優しい感動を感じることだろう。

【楽天ブックス】「かがみの孤城」

「グロースの時代」森岡康一

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
元フェイスブックジャパン副代表の著者が日本でフェイスブックをどのように広めていったのかを語る。

転職を繰り返してフェイスブックにたどり着いた著者が、その過程での大きな出来事や転機となった出会いなどについてカタッている。

グロースに関する技術や知識を求めて本書を手に取ったのだが、精神的な部分の重要性に多くページを割いている。情熱や根性は何かをやり遂げる上では無視できないことでしっかり覚えておきたいことだが、すぐに利用できるような知識を探している人にとっては期待外れに終わるだろう。しかし、実際に大きなグロースを経験したフェイスブックジャパンの様子からは何かヒントが得られるのではないだろうか。

【楽天ブックス】「グロースの時代」

「いちばんやさしいグロースハックの教本」金山裕樹

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ヤフーなどでグロースハックの経験を持つ著者がグロースハックについて語る。

グロースハックというのはここ3年ぐらい急速に広まった言葉で、これまでにも何度か関連する講座や本にも触れてきて一通り知っている気でいたが、それでも本書でまたいくつか新しいことを学ぶことができた。

まず、興味深かったのは「グロース担当のチームは3人で構成する」ということ。たしかに3人から4人に増えると、情報を共有するためのコストが急激に高まるので、論理的に非常に理解できる話ではある。しっかり頭に置いておきたい。

本書では基本的にARRRAモデル、つまり(Activation, Retention, Referral, Revenue, Aquisition)を中心に語っている。全体的にファシリテーションやアイデアの選別の手法などの話が多い。そんななかでも覚えておきたいと思ったのは、解決策を不明度と前提が崩れた時のインパクトで解決法を分類するジャベリンボードという手法、そして大きな離脱を視覚的にわかりやすく描いたユーザーオンボーディングファネルである。

ほかにも、バイラル係数、バイラルサイクルタイム、LTV、4種類のレベニューモデルなど、知らなかった言葉や、知っていても曖昧に覚えていた言葉などを改めて学ぶことができた。「いちばんやさしい」と書いてあり表面的な内容かとも思ったが、読んだ印象としては、必要な事項は網羅されているような印象を受けた。グロースハックを考える上で効率よく学べる本としておすすめしたい。

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「GRIT やり抜く力」 アンジェラ・ダックワース

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人間の成功は才能よりもやり抜く力「GRIT」にかかっているという。そんなGRITについて研究した著者がGRITについて語る。

最近そこらじゅうで語られているように、才能よりも努力を褒めるべきというのは本書でも同じである。1万時間の法則や、意図的な練習の仕方にも触れているが、教育に関する本をすでに多く読んでいる人にとってはあまり目新しい情報は無いかもしれない。

個人的にもっとも印象に残ったのは、著者であり2人の女の子の母である著者が自分たちの考えを紹介した「おとなも子どもも「やり抜く力」が身につく4つのルール」である。

(1)家族全員(パパもママも)、ひとつはハードなことに挑戦しなければならない。
(2)やめてもよい
ただしやめるには条件があり、シーズンが終わるまで、たとえば授業料をすでに払った期間が終わるなど、区切りのよい時期がくるまでやめてはならない。始めたことは最後までやり通すべきであり、最低もある程度の期間は、一生懸命取り組む必要がある。言い換えれば、きょう先生に怒鳴られたから、競争で負けたから、明日は朝練があって寝坊できないのがつらいから、などという理由でやめてはならない。 (3)「ハードなこと」は自分で選ぶ (4)新しいことでも、いまやっていることでも構わないが、最低でもひとつのことを2年間は続けなければならない。

とくに(2)のやめてもよい、というのはぜひ参考にしたいと思った。もちろん無理強いするのを正しいと思っていたわけではないが、いつでもやめていいというのも「GRIT」を育てられないだろうと感じていたため、本書の指標はすっと納得できると感じた。

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「Pandemic」A. G. Riddle

ケニヤで大規模な伝染病が発生した。疫学者のPeyton Shawは伝染病の拡大を防ぐためアメリカ疾病管理予防センターの仲間とともにアフリカに向かう。また、ホテルで記憶をなくした状態で目を覚ましたDesmondは何者かが残した情報をもとに記憶を取り戻すために動き始める。

フィクションとはいえ、実際に大規模な伝染病が発生したら起きそうな出来事を、現代の技術を交えながら描いている点が面白い。序盤は疫学者のPeyton Shawがアフリカで仲間とともに伝染病の拡大を防ぎ、その患者の処置のために奔走する様子と、記憶をなくしたDesmondが記憶を取り戻すために奔走する様子が描かれる。その後、Desmondが少しずつ記憶を取り戻していく中で、それにあわせてDesmond自身の過去が描かれ、Peyton Shawとの2人の過去の関係が明らかになっていくという過程は面白く読ませてもらった。

さすがに、全世界を巻き込んだ伝染病を扱っているということで非現実感を感じるまた、若干登場人物の人間関係が入り組んでおり、ついていけてない感も感じた。しかし、DesmondやPeyton Shawの過去の描写のなかから、アメリカという文化のなかで生活する様子が今まで以上に見えてきた気がする。

続編もあるようなのでぜひ読んでみたい。

「お金は寝かせて増やしなさい」水瀬ケンイチ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
インデックス投資家である著者が、インデックス投資の賢い方法を説明している。

基本的に必要な情報は前半部分に詰まっていて、まずは、アクティブファンドの多くがインデックスファンドに勝てないということと、過去、リーマンショックや東日本大震災などの大きな出来事があっても、結局長い目で見れば世界の株価は右肩あがりだという事実である。この2つの事実によって、結局インデックス投資がもっとも手間なくリスクが少なく資産を増やせる方法と結論づけている。

本書で進めているインデックス投資は

・毎月一定額を買い足す
・世界市場のポートフォリオに従う

ということである。

まず、積立投資(毎月一定額を買い足す)ことによって、安いときに多く買い高い時に少なく買うという流れが自然に出来上がる。また、世界市場のポートフォリオ(国内株式:先進国株式:新興国株式=1:8:1)に従うことによって、一部分の国の経済に依存しないことができる。

本書ではあわせて、自分のリスクの許容度を知るということもページを割いて説明している。なんとなく「大丈夫だろう」から一つ上の視点を身につけるためにいいかもしれない。最後の章では、切り崩しについても触れている。斬り崩しは一定額ではなく、一定の率で売っていくことにより、高い時に多く売って、安い時に少なく売るという流れが出来上がる。

投資の本は世の中にあふれているが、そんななかではかなりの良書と感じた。本書の中で繰り返し触れている本「ウォール街のランダムウォーカー」もぜひ読んでみたいと思った。

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「八日目の蝉」角田光代

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
希和子(きわこ)は不倫相手の子供で、生まれたばかりの女の子を薫(かおる)と名付けて連れ去ってしまった。東京から名古屋、そして小豆島へと希和子(きわこ)の逃亡生活を描く。

有名な作品で名前は何度も聞きながらもこれまで読む機会がなかった作品。金銭目的ではなく、不倫相手への復讐からでもなく、母性によって引き起こされた誘拐と逃亡生活という点が、本作品のもっとも魅力的な部分であり大きなテーマなのだろう。そういう意味では、男性と女性とではかなり異なる印象を受けるのではないだろうか。

本書は大きく2つの章で構成されており、第2章では大人になった薫(かおる)である恵理菜(えりな)が、その逃亡生活や、家族の元に戻った後の様子について語っている。恵理菜(えりな)自身が、世間を騒がせた誘拐事件の被害者からなのか、もともと両親に問題があったのかはわからないが、不幸な家庭環境のなかで自らの境遇を悩みながら生き方を考える様子が興味深い。

個人的には母性に突き動かされた母親視点の奮闘よりも、複雑な愛に囲まれて育った恵理菜(えりな)の様子を描いた後半の方が印象的だったが、女性の感想も聞いてみたいところである。

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「クリエイティブのつかいかた ビジネスに活かすトップクリエイター12人の仕事術」西澤明洋

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日経デザインに連載された内容をまとめたもので、著者が12人のクリエイターにインタビューした内容と、その際の著者の気づきを説明している。

多くのクリエイターが1970年代生まれということで、僕自身と世代が被っているため共感する部分が多い。インターネットが一気に世の中に広まる時期という、クリエイターになる道が確立されていなかった時代に社会に出てきた人々が多く、、さまざなバックグラウンドを持っている点が興味深い。エンジニアやデザイナーという枠にとらわれない考え方も面白く、いい刺激を与えてもらった。

クリエイターの方にとっては多くの刺激になるのではないだろうか。

【楽天ブックス】「クリエイティブのつかいかた ビジネスに活かすトップクリエイター12人の仕事術」

「ブランドのはじめかた 5つのケースでわかった経営とデザインの幸せな関係」中川淳、西澤明洋

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ブランドを専門としたブランドデザイン会社、エイトブランディング代表の著者が過去の事例を交えながら、ブランドデザインについて説明する。

COEDOビールや、Nana’s Green Teaなどを例に、そのブランドができるまでを説明している。基本的なブランディングの考え方としては今まで知っていたことと大きな違いはなかったが、それでもいくつか覚えておきたいと感じたことがあった。 単に今まで見たこともないようなものをつくればいいのではない、ということです。ビールのブランドである以上、ビールに見えなければならないのです。新しいブランドにもある種の「ビールっぽさ」が求められるのであり、今までにないからという理由で、炭酸飲料のように見えるビールのパッケージを作るのは大きな間違いです。

ブランディングというとどうしても、「違いを強調する」方向に走りがちだが、結局大事なのは「程よさ」を見極めることなのだろう。

【楽天ブックス】「ブランドのはじめかた 5つのケースでわかった経営とデザインの幸せな関係」

「Show Dog 靴にすべてを。」フィル・ナイト

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ナイキの共同創業者である著者がナイキの創業から現在に至るまでの発展を描く。

ナイキといえば今やスポーツブランドの頂点なので、信念やミッションを持った勢いのある創業をイメージしていた。しかし本書を読んで、その創業は日本の靴メーカーの販売代理店でしかなく、創業者たちも片手間に仕事をしていたに過ぎなかったとわかる。多くの人が今のブランドイメージとずいぶんギャップを感じるのではないだろうか。

しかし、やがて日本の靴メーカーと決別をして独自の靴を作り始めると、その勢いは一気に加速する。本書の一番のクライマックスは、Nikeというブランド名が決まり、少しずつ、オリンピックの代表やスポーツ選手のなかにNikeを履く選手が増えくるところではないだろうか。ブランド名の他の案は今となっては笑えるものばかりだが、ブランド名のかっこよさはその音の響きだけでなく、そのブランドのかっこよさと結びつくもの。どの案になったとしてもかっこよい印象と結びついていたのではないだろうか。

本書のタイトルである「Shoe Dog」とは、靴に人生を捧げる人たちのこと。著者をはじめ、本書には「Shoe Dog」が多数登場する。Shoe Dogであるバウワーマンなどの人との恵まれた出会いによってNikeは大きくなったのは間違いない。悲しいのは、著者の息子の2人、トラヴィスとマシューが最後までスポーツに入れ込むことはなかったということだ。仕事と家族のどちらにも人生を捧げることは、なんと難しいことだろう。

本書でもっとも印象に残った言葉は、著者が経済学の教授から聞いたという言葉である。

商品が国境を越えれば、兵士が国境を越えることはない

驚いたことのもう一つは、タイガーウッズやマイケル・ジョーダンと深い交流があったこと。考えてみれば当たり前かもしれないが、著名なスポーツ選手にとって著者は単に靴のメーカーの社長ではなく、自分たちが有名になるためのチャンスをくれた人なのだ。だから、彼らは一生感謝を表現し続けるのだろう。そういう点を考えると、靴メーカーというのも偉大な仕事なんだと感じた。

企業の成功物語は世の中に溢れているが、その中でもかなり面白い部類に入る一冊。

【楽天ブックス】「Show Dog 靴にすべてを。」

「Journey to Munich」Jacqueline Winspear

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
イギリスへ戻ったMaisieの元へ極秘の依頼が届く。それは、ナチスに拘束された実業家Leon Donatの家族に扮して、身柄を引き取るというものだった。Maisieはその実業家の娘に扮してナチス支配下のミュンヘンへ向かう。

いよいよナチスの勢いが増し、世界は第二次世界大戦へと向かっていく。そんななかMaisieは偽りのパスポートでドイツに入り、ドイツの現状を目にすることとなる。また、Maisieは極秘任務に加えて、ドイツにいる、かつての夫のJamesの死の原因を作ったElaine Otterburnを国外に出るように促すことも依頼されており、極秘任務の達成と、Elaineの捜索がミュンヘン滞在中のMaisieの目指すこととなる。

Maisieの目線を通じてナチス政権下のドイツの様子を知ることができる。そこはゲシュタポの少年たちが闊歩し、人々は普段の生活を送りながらも、言いたいことを言えず、ゲシュタポと出会うことを避けるように生きているのである。そんななか、ナチスのやり方に反抗し、勇気を持って正しい行動を行う人々もたしかにいるのである。

Maisieは任務の過程で、自由なドイツを求める人々と出会い、協力して任務の遂行に向かう。悲劇の末に、Maisieが新たな人生を踏み出す一冊。

「百貨の魔法」村山早紀


オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
昭和の時代からある町にある百貨店。その百貨店には願いを叶えてくれる白い猫がいるという。そんな百貨店で繰り広げられる物語を描く。

物語を通じて、今ではあまり聞かなくなった、百貨店というお店の世界観に触れられた気がする。ただ単にものを売るための場所ではなく、憩いの場所やおもてなしなどを提供する場所だったことがわかる。エレベーターガールなど、懐かしい職業も登場し、昭和の時代のサービスと、今のサービスの違いを考えさせられる。古いものを過度に賛美するのも変だし、新しいものが必ずしも正しいというわけではないけれど、どちらからも学ぶ部分はあるだろう。

物語は、百貨店で働く、いろんな部署の人物からの視点で展開する。そんなそれぞれの人の考え方には、いくつかはっとさせられるようなものも含まれていた。

ひとはひとりでも育つものです。親と縁のないのはやはり寂しいことですが、代わりに、地上にしっかり立てる足を手に入れられるような気がします。
鏡を見なければ、ひとは自分と向かい合えません。見たくないからと真実から目をそらせば、その中にある美しさを見つけることができないんです。

最後は、百貨店の人間関係から後継者問題が絡んでくるが、個人的には前半の軽いノリで最後まで通してしまった方がいい作品になった気がする。

【楽天ブックス】「百貨の魔法」

「デザインが日本を変える 日本人の美意識を取り戻す」前田育男

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
マツダのデザインを変えた著者が、デザイン本部へのリーダー就任から、優れたデザインの車を世の中に送り出すまでを語る。

本書を読むまで知らなかったことだが、1996年よりマツダの株式保有率をフォードがあげたことによって事実上フォードの傘下に入っていた。しかし、そんな時代が、現在のマツダの発展の大きなきっかけとなるのである。なぜなら、「マツダとはどんな会社であるべきか?」を問い直すことになったからである。2009年にフォードの統治が終わりを告げ、著者がデザインリーダーとなってからは自分たちの会社のオリジナリティの追求の熱は一気に加速することとなる。「魂動」というコンセプトはそんななかから生まれたのである。

興味深いのは、やはり著者の悩みや葛藤の過程が描かれていることだろう。おそらく僕と同じように、一般の人は、すごいデザイナーとはいいデザインを颯爽と生み出す、というような印象を持っているのだろう。しかし、本書で著者が吐露している当時の心境は、責任の大きさや、社員からの期待や諦めに苦しみながら試行錯誤する様子である。

また、デザインという感覚的なものでありながらも、「魂動」というコンセプトの2文字をひねり出すまでに多くの時間をかけている点も興味深い点ではないだろうか。本書で著者も述べているように、デザインはもちろん見た目や感覚を重視するものである。しかし、その方向性を共有するための言葉も非常に重視しているのだ。

それまで言われるがままに自分のタスクだけをこなしていたモデラーや、効率ばかりを考えていた開発部門や生産部門が、「魂動」を形にするためのデザイナーの熱意を共有する場を設けることで、少しずつ自ら「魂動」の実現へと動くように変わっていくのである。いいものを作るためには文化がなによりも重要なんだと感じた。

【楽天ブックス】「デザインが日本を変える 日本人の美意識を取り戻す」

「ノーマンズランド」誉田哲也

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
「ストロベリーナイト」シリーズである。硝子の太陽ルージュ、ノワールの後の物語である。

物語は、姫川玲子(ひめかわれいこ)を中心とした殺人事件の捜査と、バレー部の高校生の男女2人を描いた甘い恋の物語が並行して進み、やがて、2つの物語が交わる形式をとっている。

自分のまわりですでに2人の刑事が殉職して自らの行動を振り返る一方で、女子大生の殺害事件の捜査を進めるのだが、容疑者として上がっている人物の周辺に不審な匂いを嗅ぎ取る。高校生の物語は、隣の中学校の女子バレーのエースの庄野初海(しょうのはつみ)に憧れた江川利嗣(えがわとしつぐ)が、高校で初海(はつみ)と同じバレー部になり少しずつ近づいていく。

そして、物語は北朝鮮による日本人拉致と絡んで進んでいく。犯人との対面によって、日本人拉致による北朝鮮側の工作員の視点が描かれているところがもっとも印象的だった。確かに僕らは、一方的に日本人拉致で北朝鮮を非難しているが、国のために、拉致を実行しなければならなかった北朝鮮工作員の心情はどのようなものだったのだろう。

「硝子の太陽 ルージュ」、「ノワール」のような一気読み感はないが、やるせなさや深みを感じさせる作品。どちらかとこちらのテイストの方が好きである。

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「Microinteractions」Dan Saffer

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
iPhoneのアラームは、マナーモードでも音がなる、という悩ましい事例から、ユーザーの要望に対して、機器はどのような反応をすべきか掘り下げていく。

機器の側でユーザーの位置情報や行動を記録することは可能で、それを可能な限り活かすというのが本書の主張だと理解した。しかし、実際には、わずかなユーザーの利便性の向上のために必要以上にデータ構造を複雑にしてしまうメンテナンスコストも考えなければならないし、ユーザーから見てなんの情報が取られているのかわからないという不信感にもつながりかねない、などもっと考えなけれないことは多い。そのような理由から、若干現実に開発をしていない人の意見か、もしくは理想論を連ねているような印象を受けた。

「最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常」二宮敦人

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
妻の奇妙な行動によって藝大に興味を持った著者が、藝大生のインタビューをしながらその実態を描く。

もっとも興味深かったのは、音校と美校の文化の違いである。美術は、作った作品はそのまま自分の作品として存在し続けるのに対して、音楽はその音の流れている一瞬一瞬が作品である。また、美術では、作ったもの自体が評価されるのに対して、音楽では演奏するその人自身も舞台に上がる作品の一部だという認識の違いがあるのだそうだ。そのため、美校の生徒は時間にルーズだが音校の生徒は非常に時間に厳格で、美校の生徒は制作の為の作業着なのに対して、音校の生徒は常にハイヒールを履くなど、見た目に非常に気を使うのだそうだ。そんな、まったく異なる人種が共存する場所が藝大なのだという。

また、インタビューに答えた藝大生のこだわりも面白かった。口笛を極める学生や、からくり人形を歯車から作る学生など、どれも「なんのためにそんなことのために時間を費やすのだろう」と思ってしまうよう内容だが、その考え自体が、頭が凝り固まっている証拠なのだろう。そして、世の中の人がそうやって常識の範囲で物事を考えるからこそ、藝術という枠にはまらない分野が必要なのだろう。

どうやってそれまでの枠を壊すか。藝術とはそんな分野なのかもしれない。僕自身デザイナーという仕事をしており、どちらかというと頭が柔らかいほうのつもりではいるが、それでも多くの刺激をくれる一冊であった。

【楽天ブックス】「最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常」

「わたし、定時で帰ります。」朱野帰子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
定時に帰ると心に決めた、女性社員東山結衣(ひがしやまゆい)が残業が常態化している組織のなかで悪戦苦闘する様子を描く。

まず、このようなタイトルの本が世の中に出ることが、大きな時代の変化だと思う。そんな背景もあって本書に興味を持ったのかもしれない。

定時に帰ると決めて、時間内の生産性をあげようと努める結衣(ゆい)に、残業なしでは間に合うはずのないプロジェクトや、残業することで頑張っているとみられたい社員など、実際の組織のなかで見覚えのある多くの困難が襲いかかる。

正直もう少し単純で薄い物語を想像していたが、「仕事の時間の長さよりも、生産性が大事」と言う人間が、気がついたら、部下を守る為だったり、自分が無責任に見られないだったりと、気がついたら自らも残業の嵐にひたってしまう様子が本当にうまく描かれている。著者は実際の、IT企業を体験しているかかなりの下調べをしたのだと感じた。

24時間戦えるバブル期の会社のイメージが大きく変わっている現代において、その変化を物語に落とし込んだ一冊。一読の価値ありである。

【楽天ブックス】「わたし、定時で帰ります。」

「エアビーアンドビー ストーリー」リー・キャラガー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
創業者の3人が出会い、エアビーアンドビーを作り成長させていく様子が描かれている。

序盤は、チェスキー、ゲビア、ブレチャージクの出会いと、少しずつコンセプトを変えながらエアビーアンドビーが大きくなっていく様子が描かれている。その過程で、3人の創業者がそれぞれの担当分野において少しずつ成長していく様子が興味深い。

エアビーアンドビーというサービスを知っていて、それゆえに興味を持って本書を手に取ったのだが、本書を読むといろいろ想像もしていなかった困難があったことを知る。

例えば、エアビーアンドビーは、自分の部屋に見知らぬ人を宿泊させるというサービスの形態ゆえ、犯罪まがいのことが全く起こらないということはありえない。本書では、エアビーアンドビーで起こった幾つかの犯罪や悲劇と、それに対応するエアビーアンドビーの様子も描かれている。そんななか最初は投資家などのアドバイスを聞いて責任逃れや結論の先延ばしをするような対応をしていた創業者のチェスキーが、それでは騒動が治らないと見るとすぐに自分たちの信念に立ち返るところに舵を切るところは、組織としてユーザーに向き合うすべての人にとって学ぶ部分があるだろう。

また、考えてみればありそうな話だが、エアビーアンドビーはそのプラットフォームを通じて行われる人種差別とも戦っているのだという。例えば、白人のプロフィール画像の人にしか部屋を貸さないホストや、アジア系のユーザーを差別するホストがいるのだそうだ。しかし、これは改めて考えてみると、ユーザーの属性によって部屋を貸すか貸さないかを選択するのは、許されてもいいと感じるぶぶもある。例えば、静かな住宅であれば子供を連れた家族の宿泊には貸したくないなどはホストが選べていいはずで、この辺の線引きが非常に難しいと感じた。

ホテルチェーンなどの既存の勢力から受ける攻撃についても触れている。エアビーアンドビーの拡大に影響を受けてか、ホテルチェーンのいくつかも民泊事業へのシフトする様子をみると、エアビーアンドビーはまさに「世界を変えている」のだと感じる。

印象的だったのは、創業者の3人が困難に出会うたびに、繰り返していた偉人たちの言葉で、本書の中でも効果的に使われている。一つはガンジーの言葉で、見事にエアビーアンドビーの状況にも当てはまる。

はじめに彼らは無視し、次に笑い、そして挑みかかるだろうーーだが勝つのは我々だ
悲観主義者はだいたい正しい。だが世界を変えるのは楽観主義者だ。

【楽天ブックス】「ザッポス伝説」

「ザッポス伝説」トニー・シェイ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
正直ザッポスという社名を知らなかったのだが、優れたブランドの一例として紹介されており興味を持った。

本書では著者でザッポスの創業者であるトーニー・シェイの幼い頃の様子と、ザッポスができるまでを描いている。もっとも印象的だったのは、トニーが幼い頃からお金を儲けるために試行錯誤していた点である。しかし、そんなお金儲けの視点が、少しずつ「本当に情熱を持って打ち込めるものを探す」方向へと移っていくところが面白い。

また、ザッポスができあがってからは、そのブランドの方向性や、それを守るために試行錯誤している様子がわかる。

ザッポスのそのユニークな企業文化がどのように出来上がったかといえば、それはやはりトニー・シェイがすでに十分なお金を持っていて、本当の幸せは、お金を得ることによってではなく、本当に情熱を持って取り組める何かとを持っていることだと知っていたからだろう。

【楽天ブックス】「ザッポス伝説」