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悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

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世界の大きな流れを知りたい人向け

深い物語

いろいろ考えさせられる、深い物語

生き方を考える

人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「月の影 影の海」小野不由美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
女子高生の陽子の元に突然不思議な男が現れ、陽子を別の世界へと連れさった。

十二国記の始まりの物語。すでに「魔性の子」という章を読み終えて本書にたどり着いたが、物語的な繋がりはほとんどない。高校生陽子が十二国に連れて行かれ、十二国の東にある巧(こう)、雁(えん)、慶(けい)の3つの国で繰り広げられる物語を描いている。全体としては、それほど大きな動きはなく、陽子が旅する中で、少しずつ十二国の仕組みが明らかになっていく。麒麟と王の関係や陽子(ようこ)がなぜ十二国に連れてこられたか、などである。

僕自身は物書きではないが、ファンタジーをもっとも安っぽく感じさせる瞬間は、著者自身の想像力が読者よりも劣っていることが明らかになるときである。空想世界なのだからそこの生き物は、現実世界とは異なる考え方や行動をするはずなのに、著者が現実世界の常識から離れることができず、異世界の生き物に現実世界の生き物のような行動をさせてしまう。それが繰り返されると、読者は物語に入り込む前に違和感ばかりが気になってしまうのだ。

本書に関してはいまのところそこまでの違和感は感じなかった。設定を複雑にすれば複雑にするほど、(つまり現実世界と違うものにすれば違うものにするほど)その違和感は露呈しやすいだろう。例えば十二国では人間は母親からではなく木の実から生まれるのだという。それによって親子の関係はどのように現実世界と異なるかを考えると面白いが、著者が描くそれがあまりにも想像力なく現実世界のままであればきっと違和感を感じることだろう。

おそらく今後、他の十二国にも物語が広がっていくことだろう。少しずつ世界が広がる中で、違和感を感じさせずに面白さが優って世界を作り上げられるなら優れたファンタジーになるだろう。2冊を読み終えた現段階ではまだ面白いともありきたりとも判断ができないので引き続き読み進めていきたい。

【楽天ブックス】「月の影 影の海(上)」「月の影 影の海(下)」

「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」 森岡毅、今西聖貴

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ユニバーサルスタジオジャパン(以下USJ)躍動のきっかけとなったハリーポッターのオープンを決定づけた戦略的確率論について、2人の著者がそれぞれの手法を語る。

著者はどちらもP&G出身ということで、他にもストーリーを重視する文化などの本や戦略に関する本などP&G出身者による本をこれまでにも何度か読んでおりP&Gが優れた企業なんだと改めて感じた。

本書では、ハリーポッターをオープンしたことによる収益の増加の考え方を、丁寧に解説している。詳細な数学な計算方法はわからなくても、予測値の出し方の概要はつかめるだろう。一つ一つの考え方自体は特に複雑なことではないが、著者2人のすごいところは、それを突き詰めに精度をあげることに努めている点だろう。数学的に知りたい人用も、巻末に詳細の数式が書かれているので楽しめるのではないだろうか。

売り上げを規定する7つの基本的要素

認知率
配下率
過去購入率
エボークトセットに入る率
1年間に購入する率
平均購入金額

はぜひ覚えておきたい。

関東に住んでいるとUSJのことをほとんど知らないが、本書を読んで初めて興味を持った。ぜひ機会があれば行ってみたいと思った。

【楽天ブックス】「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」

「自分の中に毒を持て」岡本太郎

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
岡本太郎が自らの生きる考え方を語る。

基本的に著者が、日本人にありがちな保守的な生き方を批判し続けていくという内容である。出版はすでに30年以上前ということで、随所に時代を感じる。また、僕らの時代から見ると彼のもっとも有名な作品である「太陽の塔」はその有名さゆえに自然に受け入れられたものであるが、当時はその斬新さから反対の声もあったのだと知った。

全体的に、多少の個性わあれども、ただの年寄りの自慢話に聞こえなくもないが、個性によって有名になり仕事をもらう立場である以上、ここまで尖る必要があったのだろう。結婚という考えについてもいろいろ語っているが、多くの結婚しなかった年配の男性が語るであろう。過去の女性との自慢話がかなり続く。ここは別に相手がフランス人だった以外は岡本太郎でなくても同じように語れそうな気もする。

今でこそ、転職が当たり前になりつつあり、個性を出すことが認められているからそれほど本書に新しさを感じないが、
刊行当時に読んだらもっと衝撃的だったのかもしれない。そういう意味では、本書の本来の目的よりも、日本の社会の時代の変化の大きさを感じさせてくれた。

【楽天ブックス】「自分の中に毒を持て」

「続・インターフェースデザインの心理学」 Susan Weinschenk

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ユーザーがWebやアプリのデザインに対してどのように行動するかを、科学的に検証し、それを説明している。

科学的な検証結果を説明している一方で、作業工数などは一切考えていないので、実践的ではないという批判もあるかもしれないが、知識と知っているだけで多少役に立つこともあるのではないだろうか。

いくつか本書の中で今後のデザイン業務に活かせそうだと思った事柄をあげると次の2点である。

人は左右対称を好む


これはすべて左右対称にするべきということではなくて、非対称のデザインはむしろ人の注意をひくために効果的な場合もあるということなので、安心感を与えたいか、注目させたいかを判断して状況に応じて使い分けるべきなのである。

感情と視線の戦いでは感情が勝利する


デザインに人の画像を入れる場合、その視線をユーザーは追うからその視線の先にボタンなどを配置する、というのは多くのデザイナーが実践している手法だが、本書の実験結果では、単に視線が向いているだけでなく、表情に感情が現れている方が効果的という。今後写真素材を選ぶ際は感情も含めて考えたい。

デザイナーは美しいものをデザインするだけでなく、周囲の非デザイナーを説得する必要性も日常的に発生する。そのようなときにこのような話ができるとより説得力が上がり、信頼できるデザイナーになるかもしれない。

【楽天ブックス】「続・インターフェースデザインの心理学」

「Graphic Recording 議論を可視化するグレフィックレコーディングの教科書」清水淳子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

会議のファシリテーションの手法として注目されるグラフィックレコーディングについて説明している。

昨今、「グラレコ」という表現でよく耳にするグラフィックレコーディング。正直なところ本当にそこまで注目されるほど効果があるのかどうかが疑わしく、さらに理解するためにと思って本書にたどり着いた。

序盤はグラフィックレコーディングによってどのような効果が期待できるかを説明しており、中盤以降は、実際に会議でありそうな発言や内容をグラフィックで表現する方法を説明している。

全体的な感想は、グラフィックレコーディングといっても世の中で騒がれているほど特別なものではなく、ファシリテーションの助けとなる一つの手法に過ぎないということ。発言や会議のアジェンダを共通認識させることは必ずしもグラフィックである必要もなく、文字を色分けしたり大きさを変えたりしてわかりやすく書くこともそのうちの一つである。

グラレコの練習は、普段の会話のなかでノートを使用したりして、意識次第でいくらでもできることがわかった。今後は会議などの際は積極的にホワイトボードなどを利用し、必要であれば絵など、一般的にグラレコと思われている要素を入れていきたいと思った。

【楽天ブックス】「Graphic Recording 議論を可視化するグレフィックレコーディングの教科書」

「越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文」越前敏弥

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
学習塾や予備校の講師などの経歴を持ち「ダヴィンチコード」などを訳した経歴を持つ翻訳家としても活躍する著者が、日本人が間違いがちの英語を集めてそれを解説する。

英語の勉強も英検1級を取得したあたりでひと段落した感じだが、学べば学ぶほどネイティブとの語彙力の差は感じるばかり。定期的に英語力のさらなる向上に努めているなかで本書に出会った。

結構な英語上級者でも序盤のいくつかの例文を見ただけで自信が吹き飛ぶだろう。まったく意味がとれなかったり、完全に意味を真逆にとらえてしまう例文がいくつも含まれているのである。著者の詳細な解説によって、本書を一回じっくり読むだけでも英語力は一段階レベルアップすることだろう。

章と章の間に含まれている著者の対談の様子も面白い。印象的だったのは著者が日本語訳の重要性を強調している点だろう。昨今、英語教育は文法や日本語訳から、よりコミュニケーションという方向にシフトしているが、それによって「なんとなくわかった」気になってしまうのが危険だという。自分の理解したことが本当に正しかったかは日本語訳にして確認することで初めてわかるというのである。

続編があるならえひそれも読んでみたい。この著者の英語の書籍を全部読んでみたいと感じた。

【楽天ブックス】「越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文」

「慈雨」柚月裕子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
警察を引退したことをきっかけに妻と四国遍路の旅に出た神馬(じんば)。しかし、時を同じくして発生し世間を騒がせた少女誘拐事件は、16年前に神馬(じんば)が関わった少女誘拐事件に酷似していた。

なによりもまず、引退した警察官を主人公にした作品というのは事件解決の物語ではかなり珍しいのではないだろうか。そして、四国遍路の旅を警察物語でありながらここまで詳細に描写している点も印象的で、著者の緻密な調査を感じる。

さて、すでに警察官を引退しながらも、発生した事件が気になって、現職で娘の恋人でもある警察官緒方(おがた)と逐一連絡をとり、捜査状況を知るという流れで物語は進む。過去の事件を悔やみながら現在の捜査状況が常に気になり、同時に引退したということで妻と一緒の時間を大事にしたいという思いと、大人になった娘とその交際関係も気になるという、年配の男の葛藤の描き方がすばらしい。

後半は、娘との複雑な関係も明らかになっていく。

派手ではなく、警察の事件解決物語という使い古された手法でありながらも、描き方に今までにない新鮮さを持たせ、非常に深みを感じさせる作品。評価が高いことも納得である。何よりもお遍路巡りの旅に興味を持った。いつか体験してみたいと思った。警察物語など読み飽きたという読者に薦めたい。一読の価値ありの一冊である。

【楽天ブックス】「慈雨」

「朝が来る」辻村深月

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
40を過ぎて一人の子供を育てる栗原清和(くりはらきよかず)、佐都子(さとこ)夫妻はときには近所づきあいでトラブルをかかえながらも幸せな生活を送っていた。そこにある日「子供を返して欲しい」と連絡が入る。

序盤は子育てと近所づきあいで悩む一般的な家庭の夫婦の物語だったが、一本の電話によって、実は子供の朝斗(あさと)は特別養子縁組によって授かった子供だと言うことが明らかになる。中盤以降は、栗原清和(くりはらきよかず)と佐都子(さとこ)が子供を切望して、朝斗(あさと)を授かるまでを描いいる。

そして、後半は、朝斗(あさと)をお腹に宿して、養子に出すと言う決断をするまでの母ひかりの様子が描かれている。子供のためを思いながらも、無力なひかりにできることは限られていて、少しずつ子供に誇りを持って向き合うことのできない大人になっていくひかりの様子がもっとも印象的である。一方で、そのような一般的には世の中から軽蔑されがちな立場にいる女性の
描写の仕方に、著者のやさしさを感じる。

あまり似た作品を思いつかない、一読の価値ありの一冊である。

【楽天ブックス】「朝が来る」

「転職の思考法」北野唯我

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
30歳になって転職に悩む男性を主人公は、キャリアコンサルタントとの出会いによって転職の考え方を学んでいく。そんな物語形式で転職のポイントを学べる作品。

印象的だったのは自分のマーケットバリューを測る三つの軸である。技術資産、人的資産、業界の生産性である。多くの人がキャリアを考えるとき、技術資産または人的資産のどちらかばかりを見ているような気がする。単純に収入をあげたいだけななら業界の生産性の方がその2つよりも何倍も重要なのである。さらに本書ではその三つの軸をさらに年齢という異なる視点で述べている。

キャリアとは20代は専門性、30代は経験、40代は人脈が重要なんだ

その他にも、「会社に行きたくない」と思いながらも転職に踏み切れない多くの人に響きそうな言葉がいくつかあったので抜粋しておく。

いつでも転職できるような人間が、それでも転職しない会社。それが最強だ。
君が乗っている船はそもそも社長や先代がゼロから作った船なんだ。他の誰かが作った船に後から乗り込んでおきながら、文句を言うのは筋違いなんだよ

これまでの転職のなかで悩み抜いて選んできたことが、本書によると大部分が正解だったことを知った。僕自身が転職で悩んでいる人がいたら伝えるであろうことを見事に言語化してるすぐれた作品。そして、このような本のなかでは珍しく物語形式で書いている点も評価したい。転職を考えている人にはぜひおすすめしたい。

【楽天ブックス】「転職の思考法」

「魔性の子」小野不由美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
十二国記のはじまりの物語。

「十二国記」という名前だけは聞いていたが、今まで読まずにいた。今回ひさしぶりにファンタジーの世界に浸りたくなって本書にたどりついた。

物語は卒業して教育実習生として母校に戻った広瀬(ひろせ)が、担当教師の受け持つクラスにいた高里(たかさと)という不思議なオーラをまとった生徒と出会うことから始まる。高里(たかさと)には生徒の間でも噂が尽きず、小学校の時に神隠しにあって1年間行方不明だった経験を持ち、さらに彼の周囲では不思議な怪我や死が続いているという。その高里の周囲で起きる不思議な出来事は少しずつ加速していくのである。

予想以上に現実の世界を舞台としていた。物語が進むにつれてタイトルが示す「十二国」の世界に移っていくのかもしれないが、本書ではまだまだ多くの謎が残ったままである。続編である「風の海 迷宮の岸」も近いうちに読んでみたいと思った。

【楽天ブックス】「魔性の子」

「歌舞伎町ゲノム」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「歌舞伎町セブン」「歌舞伎町ダムド」に続く歌舞伎町セブンのシリーズ第3弾。今回は短編集として5つの物語を収録している。

最初の2編は過去の物語に似た、悪者制裁の物語。そして後半3編はややイレギュラーなドタバタ劇。最後の1編は過去の歌舞伎町セブンやほかの誉田哲也の物語に絡む物語なのでシリーズのファンには欠かせないだろう。

この物語はやはり、悪者制裁のスッキリ感がいいのだろう。世の中では必ずしも悪者が報いを受けるとは限らない。だから人は、遠山の金さんとか、必殺仕事人とか、水戸黄門に惹かれるのであり、歌舞伎町シリーズもまさにそんなニーズに応えているのだ。そういう意味では、今回のように複雑な人間模様が描かれて悪者制裁が行われない物語というのはニーズとは違うのかもしれないと感じた。僕自身読んでいて、単純な前半の2編の方が楽しめた気がする。

とはいえ、著者としては単純な物語はよりも、入り組んだ人間関係やにしたり複雑な心情描写を入れ込んだりするほうが描きごたえがあるのだろう。

【楽天ブックス】「歌舞伎町ゲノム」

「アマゾンのすごいルール」佐藤将之

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5

アマゾンジャパンの立ち上げ当初にアマゾンに参加した著者がアマゾンの文化について語る。

著者がアマゾンについて思うことや、著者のアマゾン人生のなかでの印象的な出来事をほとんどランダムに書き連ねているので、読みたい場所から読むことができるといえば聞こえがいいが、物語も筋もないので記憶に残りにくい。

それでも、自分の働いている会社でも取り入れたいなと思ったものは、「1ページか6ページでまとめる」という制度。提案資料を長々と書くのではなく、誰でも簡潔に要点を把握できるようにページ数をルール化しているのである。これによって提案者は高い文章作成能力を求められるのだという。確かに過去を振り返ってみれば、仕事のなかでたくさんしゃべることはしゃべるが結局何が言いたいのかわからない、という人はたくさん存在し、積み重なればそういう人の意見を聞く時間も組織にとっては無視できない大きさであることを考えると、このアマゾンの1ページルールはぜひ真似したい制度である。

そのほかにもほかの企業にはないような制度があふれている。あまり知らなかったアマゾンという企業の文化に少し触れられた気がする。

全体的にはもう少し内容の濃いものを期待していたし、物語的な要素も欲しかった。

【楽天ブックス】「アマゾンのすごいルール」

「チーズはどこへ消えた?」スペンサー・ジョンソン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ネズミのスニフとスカリー、小人のヘムとホーの2匹と2人は迷路のなかでチーズを探している。チーズを見つけたり失う中で、それぞれの異なる行動をする

彼らのチーズに対する行動のしかたから世の中の変化に対する心構えを教えてくれる。もっとも、教訓となるのは小人で、チーズがなくなったときに今までいた場所に固執し、新たな挑戦をしようとしなかったヘムだろう。

世の中は常に変化し、それにあわせて自分も変化していかなければならない。そんなことを2匹と2人のキャラクターの小さな物語で教えてくれる作品。誰しも多少なりともヘムの要素は持っており、はっとさせられる部分はあるかもしれない。

本書は、同窓会で集まった一人がこの話を他の同窓生に語るという内容だが、印象的だったのは、「変化恐れている人?」と聞いた時にほとんどの人はそれを認めようとしなかったことだ。自分自身も、変化を恐れたヘムのようになっていないか、常に意識して生きていきたいと思った。

【楽天ブックス】「チーズはどこへ消えた?」

「ティム・クック アップルをさらなる高みへと押し上げた天才」リーアンダー・ケイニー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2011年にスティーブ・ジョブスがなくなって、多くの人がアップルは衰退していくと思ったことだろう。しかし実際にはその後CEOの座に就いたティム・クックによってアップルは世界初の一兆ドルの企業となった。ジョブスとは多くの面で異なるCEOはどのようにしてアップルを進化させたのかに迫る。

正直この本に出会うまで、ジョブスの後のアップルのCEOを知らなかった。もちろん、名前を聞いたことはあったのしてもすぐに思い出せるほど認識していなかった。しかし、実際にはジョブスの死後アップルはさらに発展したと知って、どのようにティム・クックがアップルを導いたのかを知りたくなって本書を手に取った。

本書でもっとも興味深いのは、ティム・クックのものの考え方である。

世界を我々が発見したときよりも良い場所にして後に残す

これはティム・クックが繰り返し引き合いに出し、今やアップルという企業自体のものの考え方にもなっている言葉である。実際、アップルはジョブスの死後、一気に環境や自分たちの関係会社のケアや、慈善団体への寄付など、世の中に良い行いをする方向へ大きく舵をきったのである。また、ティム・クックは同性愛者であることを公開しており、それゆえにジェンダーマイノリティでや、アジア系、メキシコ系などの少数派に対する理解が強い。それも企業としての強みになっているのだろう。

本書のクライマックスは、サンバーナーディーノで14人の死者を出した狙撃事件の容疑者のiPhoneのロックの解除を巡ってFBIと争った場面である。悲劇的な事件を起こした容疑者の捜査という正義を理由に、iPhoneのロック解除の権限を求めたFBIに対して、それによって引き起こされるユーザー情報の危険性を懸念してアップルは拒否するのである。

必ずしも正しいことは、多くの人の支持を集めるわけではない。それでもアップルの決断は、やがて理解され多くの人の支持を集めるのである。

ティム・クックによって、すばらしい製品を生み出していたアップルが、さらに人格的にも優れた企業となったのだと感じた。

【楽天ブックス】「ティム・クック アップルをさらなる高みへと押し上げた天才」

「Sworn to Silence」Linda Castillo

オススメ度 ★★★★☆ 3/5

オハイオ州で質素な生活を営むアーミッシュの村で虐殺された少女の死体が発見された。アーミッシュの村で育ったKateは誰にも言えない過去を隠しながらも、捜査を指揮することとなる。

本書の魅力はなんといってもアーミッシュという民族を、ミステリーに絡めているところだろう。映画などで登場することもあり、観光にもなっているぐらい有名なアーミッシュという民族であるが、実際にはまだまだ誤解されている部分も多いらしく、本書はそんなアーミッシュの生活を理解する上でも大いに役立つのではないだろうか

物語は、胸にローマ数字を描いた死体の発見から始まる。10年以上前にもその村では同じように胸にローマ数字を描いた惨殺事件が続いており、Kateは自分と兄と父の3人で10代のときにその犯人を殺したために、その惨殺事件が終わったと信じていた。同じ手法の事件がこうして十数年の時を経て再び発生したために、Kateは実際には自分が犯人と思った人間は生き延びていたのではないかと信じ、過去に再び向き合うこととなるのである。

多少のひねりとアーミッシュの村が舞台、という以外は、すでにあふれている刑事ミステリーの一つと言える。残念ながら大きな驚きはないだろう。

「The Steel Kiss」Jeffery Deaver

オススメ度 ★★★★☆ 3/5
Lincoln Rhymeシリーズである。AmeliaとRhymeはは電子機器のリモートコントロール機能を利用して殺人を起こす人物の捜査に乗り出す。

一方Pulaskiは過去の事件によって引退を決意したLincoln Rhymeを再び第一線の捜査に復帰してもらうために、その事件を独自に調べ始める。また、Ameliaの前には、昔の恋人Nickが出所し「自分の無実をはらすために手伝って欲しい」と告げる。Lincolnは自らが行う講義の生徒として参加していて同じく車椅子のJuliette Archerをインターンとして迎え入れる。

それぞれの登場人物が犯人の操作とは別に、それぞれの抱えている問題に取り組んでいく。

事件の捜査はこのシリーズでおなじみ現場に残された物質を細かく分析してそのソースを特定しながら犯人に迫っていくとく流れなので説明するまでもないが、新しい登場人物や新しい犯人の指向性がシリーズを面白くしている。今回はJuliette Archerの存在だろう。同じように車椅子での生活になったArcherに対して、これから迎えるであろう人生のしょうがいの多くを想像し同情するRhymeの気遣いが興味深い。

間が空くと前のシリーズの内容が思い出せないので、なぜLincolnが事件の捜査からの引退を決意したのかわからないのだが、機会があったら前作品も読み直してみたいと思った。

「高校事変II」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
平成最後のテロリストの次女、優莉結衣(ゆうりゆい)が生活する養護施設で同じ高校に通う高校生奈々美(ななみ)が行方不明になった。奈々美の妹の理恵(りえ)に頼まれ、奈々美の捜索に乗り出す。

いきなり第二弾から読み始めてしまったが物語時代はそれなりに楽しむことができる。おそらく第一弾を読んでいるともっと全体の流れがわかるのだろう。物語は女子高生の売春組織に関わった奈々美(ななみ)の失踪から大きな連続殺人事件へと発展していく。最新のIT事情などの技術的題材が随所に散りばめられているところが松岡圭祐らしいが、物語から何か刺激を受ける部分があるかと聞かれると少ないかもしれない。むしろ登場人物と同世代の高校生向けの内容にも思える。

【楽天ブックス】「高校事変II」

「コーヒーが冷めないうちに」川口俊和

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
その喫茶店のある椅子にすわると過去に戻ることができるという、しかしそこには守らなければいけないルールがある。そのルールが多くて複雑なゆえにあまり利用する人はいないのだが、それでも利用した4人の物語を扱っている。

時間旅行をテーマにした4つの暖かい物語。一時期中吊り広告など見かけたので手に取った。

時間旅行をテーマにした物語はすでに世の中に溢れかえっているので、そのなかでどうやって独自性を出すか、というのが時間旅行を題材とした作品にとっては常に課題となるだろう。本作品は過去に戻る際に守らなければならない多くの複雑なルールによってそこに対処している。

その複雑なルール、時間旅行しても意味がないんではないかというルールによって、その喫茶店を知る多くの人が、試すことすらしないなかで、それでも過去に戻る、未来に行く、という選択をした4人の人間の物語を扱っている。正直、物語として何が新しいかというと、それだけなのだが、軽く暖かい気持ちになりたい人には悪くないのではないだろうか。

【楽天ブックス】「コーヒーが冷めないうちに」

「イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」」安宅和人


「イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」」安宅和人
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

著者はあるとき、仕事における生産性の高い人に共通する行動について気づいた。それは「イシューからはじめる」ということ。本書はそんな「イシューから始める」」という考え方を順を追って説明している。

まず、本書で触れているのはイシューの見つけ方。ここで陥りやすい失敗例を語っている。それは、答えの出ない問題に取り組んでしまうということである。本書では「悩む」と「考える」という言葉の違いを、「悩む」は答えのないものに時間を費やすこと、「考える」は答えのあるものの答えを出すために時間を費やすこととして、答えの出ない問題に取り組んでしまうことの危険性を説いている。

良いイシューの条件として次のように語っている。

1.本質的な選択肢である
2.深い仮説がある
3.答えを出せる

また、イシューを特定するための情報収拾の方法も次のようにしている。

1.一次情報に触れる
2.基本情報をスキャンする
3.集めすぎない・知りすぎない

またイシューを特定するための5つのアプローチは次の5つである。。

変数を削る
視覚化する
最終形からたどる
「so what?」を繰り返す
極端な事例を考える。

後半では、分析の仕方、分析結果の伝え方についても触れているが、本書の重要な部分はイシュー特定の前半部分に凝縮されていると感じた。実際の現場での課題解決の場においても、間違った課題に取り組んでしまうとその後のフローにおける無駄な時間が膨大になることを考えると、イシュー特定がどれほど重要かわかるだろう。

全体的には、この本の評判の高さに比べると若干期待はずれだったかもしれないが、自分の毎日の仕事のやり方に対して改めて考えてみるきっかけにはなった。

【楽天ブックス】「イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」」

「Dancing with the Sun」Kay Bratt

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
過去に悲劇に引きずられながらも人生の決意を新たにした母Sadieは、それを伝えるため娘のLaurenを訪問するが、帰り道に太一よったハイキングの最中に道に迷う。荒野の中で2人で過ごすことにより今まで見えなかったものが見えてくる。

ヨセミテ国立公園のハイキング中に道に迷った母娘の様子から始まり、徐々にその過去が明らかになっていく。Sadieは数年前に長男を失っており、Laurenはその後引き取られた養子だということが明らかになる。失った長男の悲しみから抜け出せないSadieと、失ったみたこともない兄の幻影を感じながら成長した娘Lauren、そして、同じように長男を失った悲しみを経験しながらも違う生き方を選んだ父親の温かく優しい物語。

遭難中の場面ではややスピード感に欠ける部分もあるが、最後は感動する家族の物語。どちらかというと女性の読者に好まれる内容なのではないだろうか。