オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5 デザイン組織を作るための方法を説明している。小さなデザイン組織から、組織が大きく成長する中でどのようなデザイナーを増やしていくべきか。
序盤はデザインが重視されるようになった背景を説明している。80年代や90年代は徹底的な効率化により企業は競争力をつけていき、デルなどの企業が存在感を強めていった。しかし、効率化も頭打ちになったため、IDEOなどのデザインに力を入れ始めた企業が抜け出してきたため、現在デザインに多くの企業が目を向けているのだという。
第2章では、最近までのデザインの考え方とこれからのデザインの考え方の違いを説明している。これまでのデザインの考え方は、マネジメント、マーケティング、デザイン、設計、製造、販売、サポート、という全体の一つのフェーズでしかなかったが、これからは、すべてのフェーズに関わるべきものとしている。
中盤以降では実際の企業のデザイン組織の作り方について書いている。多くのデザイン組織はデザイン部を社内に設けるCentralized型か、デザイナーを事業部に割り当てるEmbedded型なのである。
Centralized型のメリット
デザインコミュニティや文化をサポートできる
明確な作業分担を作れる
デザイナーにプロジェクトベースで仕事をさせられる
一貫したユーザー体験を提供できる
仕事の効率化をはかれる
Centralized型のデメリット
責任者の力がない、責任の所在が不明確
彼ら、私たちという態度が生まれる
優先度やタイミングが不明確になる
Embedded型のメリット
開発がスピーディでサイクルがまわせる
デザイナーがチームの一員として機能する
チームが提供するものに責任を持てる
良質のものを提供できる。
Embedded型のデメリット
チームが一つの問題に長い期間集中する
デザイナー同士のつながりが希薄になる
デザイン文化の一貫性やデザインコミュニティーが希薄になる
ユーザー体験が分断される
同じ努力が複数の場所で行われ、非効率さが生まれる
ユーザー調査がおざなりになる
その双方の長所と短所を説明した上で、本書ではCentralized Partnershipという双方の利点を兼ね備えたデザイン組織を提案している。
そして終盤以降は、デザイナーをタイプによって分類し、デザインチームがグループとなり、組織となるにあたって、どのようなタイプのデザイナーをどのように入れて組織を大きくしていくかを説明している。正直、終盤のくだりは、大きなデザイン組織の人事に影響を与えられる人、というかなりニッチな人にしか役に立たないかもしれない。
本書によって、Centralized型とEmbedded型の組織の長所と短所を整理することができた。しかし、それは本書から説明されるまでもなく明らかだったことと、短所を補おうとすると本書が提案するような折衷案を目指すというのは必然的である。そのため、本書が何か新しい考えをもたらしてくれたという印象はない。