とにかくおすすめ

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とにかく面白い

ページをめくる手が止まらない、寝る時間さえ惜しくなる最高のエンターテイメント

泣ける本

思いっきり泣きたい人向け

優しい気持ちになれる本

悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

深い物語

いろいろ考えさせられる、深い物語

生き方を考える

人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「アマゾンのすごいルール」佐藤将之

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5

アマゾンジャパンの立ち上げ当初にアマゾンに参加した著者がアマゾンの文化について語る。

著者がアマゾンについて思うことや、著者のアマゾン人生のなかでの印象的な出来事をほとんどランダムに書き連ねているので、読みたい場所から読むことができるといえば聞こえがいいが、物語も筋もないので記憶に残りにくい。

それでも、自分の働いている会社でも取り入れたいなと思ったものは、「1ページか6ページでまとめる」という制度。提案資料を長々と書くのではなく、誰でも簡潔に要点を把握できるようにページ数をルール化しているのである。これによって提案者は高い文章作成能力を求められるのだという。確かに過去を振り返ってみれば、仕事のなかでたくさんしゃべることはしゃべるが結局何が言いたいのかわからない、という人はたくさん存在し、積み重なればそういう人の意見を聞く時間も組織にとっては無視できない大きさであることを考えると、このアマゾンの1ページルールはぜひ真似したい制度である。

そのほかにもほかの企業にはないような制度があふれている。あまり知らなかったアマゾンという企業の文化に少し触れられた気がする。

全体的にはもう少し内容の濃いものを期待していたし、物語的な要素も欲しかった。

【楽天ブックス】「アマゾンのすごいルール」

「チーズはどこへ消えた?」スペンサー・ジョンソン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ネズミのスニフとスカリー、小人のヘムとホーの2匹と2人は迷路のなかでチーズを探している。チーズを見つけたり失う中で、それぞれの異なる行動をする

彼らのチーズに対する行動のしかたから世の中の変化に対する心構えを教えてくれる。もっとも、教訓となるのは小人で、チーズがなくなったときに今までいた場所に固執し、新たな挑戦をしようとしなかったヘムだろう。

世の中は常に変化し、それにあわせて自分も変化していかなければならない。そんなことを2匹と2人のキャラクターの小さな物語で教えてくれる作品。誰しも多少なりともヘムの要素は持っており、はっとさせられる部分はあるかもしれない。

本書は、同窓会で集まった一人がこの話を他の同窓生に語るという内容だが、印象的だったのは、「変化恐れている人?」と聞いた時にほとんどの人はそれを認めようとしなかったことだ。自分自身も、変化を恐れたヘムのようになっていないか、常に意識して生きていきたいと思った。

【楽天ブックス】「チーズはどこへ消えた?」

「ティム・クック アップルをさらなる高みへと押し上げた天才」リーアンダー・ケイニー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2011年にスティーブ・ジョブスがなくなって、多くの人がアップルは衰退していくと思ったことだろう。しかし実際にはその後CEOの座に就いたティム・クックによってアップルは世界初の一兆ドルの企業となった。ジョブスとは多くの面で異なるCEOはどのようにしてアップルを進化させたのかに迫る。

正直この本に出会うまで、ジョブスの後のアップルのCEOを知らなかった。もちろん、名前を聞いたことはあったのしてもすぐに思い出せるほど認識していなかった。しかし、実際にはジョブスの死後アップルはさらに発展したと知って、どのようにティム・クックがアップルを導いたのかを知りたくなって本書を手に取った。

本書でもっとも興味深いのは、ティム・クックのものの考え方である。

世界を我々が発見したときよりも良い場所にして後に残す

これはティム・クックが繰り返し引き合いに出し、今やアップルという企業自体のものの考え方にもなっている言葉である。実際、アップルはジョブスの死後、一気に環境や自分たちの関係会社のケアや、慈善団体への寄付など、世の中に良い行いをする方向へ大きく舵をきったのである。また、ティム・クックは同性愛者であることを公開しており、それゆえにジェンダーマイノリティでや、アジア系、メキシコ系などの少数派に対する理解が強い。それも企業としての強みになっているのだろう。

本書のクライマックスは、サンバーナーディーノで14人の死者を出した狙撃事件の容疑者のiPhoneのロックの解除を巡ってFBIと争った場面である。悲劇的な事件を起こした容疑者の捜査という正義を理由に、iPhoneのロック解除の権限を求めたFBIに対して、それによって引き起こされるユーザー情報の危険性を懸念してアップルは拒否するのである。

必ずしも正しいことは、多くの人の支持を集めるわけではない。それでもアップルの決断は、やがて理解され多くの人の支持を集めるのである。

ティム・クックによって、すばらしい製品を生み出していたアップルが、さらに人格的にも優れた企業となったのだと感じた。

【楽天ブックス】「ティム・クック アップルをさらなる高みへと押し上げた天才」

「Sworn to Silence」Linda Castillo

オススメ度 ★★★★☆ 3/5

オハイオ州で質素な生活を営むアーミッシュの村で虐殺された少女の死体が発見された。アーミッシュの村で育ったKateは誰にも言えない過去を隠しながらも、捜査を指揮することとなる。

本書の魅力はなんといってもアーミッシュという民族を、ミステリーに絡めているところだろう。映画などで登場することもあり、観光にもなっているぐらい有名なアーミッシュという民族であるが、実際にはまだまだ誤解されている部分も多いらしく、本書はそんなアーミッシュの生活を理解する上でも大いに役立つのではないだろうか

物語は、胸にローマ数字を描いた死体の発見から始まる。10年以上前にもその村では同じように胸にローマ数字を描いた惨殺事件が続いており、Kateは自分と兄と父の3人で10代のときにその犯人を殺したために、その惨殺事件が終わったと信じていた。同じ手法の事件がこうして十数年の時を経て再び発生したために、Kateは実際には自分が犯人と思った人間は生き延びていたのではないかと信じ、過去に再び向き合うこととなるのである。

多少のひねりとアーミッシュの村が舞台、という以外は、すでにあふれている刑事ミステリーの一つと言える。残念ながら大きな驚きはないだろう。

「The Steel Kiss」Jeffery Deaver

オススメ度 ★★★★☆ 3/5
Lincoln Rhymeシリーズである。AmeliaとRhymeはは電子機器のリモートコントロール機能を利用して殺人を起こす人物の捜査に乗り出す。

一方Pulaskiは過去の事件によって引退を決意したLincoln Rhymeを再び第一線の捜査に復帰してもらうために、その事件を独自に調べ始める。また、Ameliaの前には、昔の恋人Nickが出所し「自分の無実をはらすために手伝って欲しい」と告げる。Lincolnは自らが行う講義の生徒として参加していて同じく車椅子のJuliette Archerをインターンとして迎え入れる。

それぞれの登場人物が犯人の操作とは別に、それぞれの抱えている問題に取り組んでいく。

事件の捜査はこのシリーズでおなじみ現場に残された物質を細かく分析してそのソースを特定しながら犯人に迫っていくとく流れなので説明するまでもないが、新しい登場人物や新しい犯人の指向性がシリーズを面白くしている。今回はJuliette Archerの存在だろう。同じように車椅子での生活になったArcherに対して、これから迎えるであろう人生のしょうがいの多くを想像し同情するRhymeの気遣いが興味深い。

間が空くと前のシリーズの内容が思い出せないので、なぜLincolnが事件の捜査からの引退を決意したのかわからないのだが、機会があったら前作品も読み直してみたいと思った。

「高校事変II」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
平成最後のテロリストの次女、優莉結衣(ゆうりゆい)が生活する養護施設で同じ高校に通う高校生奈々美(ななみ)が行方不明になった。奈々美の妹の理恵(りえ)に頼まれ、奈々美の捜索に乗り出す。

いきなり第二弾から読み始めてしまったが物語時代はそれなりに楽しむことができる。おそらく第一弾を読んでいるともっと全体の流れがわかるのだろう。物語は女子高生の売春組織に関わった奈々美(ななみ)の失踪から大きな連続殺人事件へと発展していく。最新のIT事情などの技術的題材が随所に散りばめられているところが松岡圭祐らしいが、物語から何か刺激を受ける部分があるかと聞かれると少ないかもしれない。むしろ登場人物と同世代の高校生向けの内容にも思える。

【楽天ブックス】「高校事変II」

「コーヒーが冷めないうちに」川口俊和

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
その喫茶店のある椅子にすわると過去に戻ることができるという、しかしそこには守らなければいけないルールがある。そのルールが多くて複雑なゆえにあまり利用する人はいないのだが、それでも利用した4人の物語を扱っている。

時間旅行をテーマにした4つの暖かい物語。一時期中吊り広告など見かけたので手に取った。

時間旅行をテーマにした物語はすでに世の中に溢れかえっているので、そのなかでどうやって独自性を出すか、というのが時間旅行を題材とした作品にとっては常に課題となるだろう。本作品は過去に戻る際に守らなければならない多くの複雑なルールによってそこに対処している。

その複雑なルール、時間旅行しても意味がないんではないかというルールによって、その喫茶店を知る多くの人が、試すことすらしないなかで、それでも過去に戻る、未来に行く、という選択をした4人の人間の物語を扱っている。正直、物語として何が新しいかというと、それだけなのだが、軽く暖かい気持ちになりたい人には悪くないのではないだろうか。

【楽天ブックス】「コーヒーが冷めないうちに」

「イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」」安宅和人


「イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」」安宅和人
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

著者はあるとき、仕事における生産性の高い人に共通する行動について気づいた。それは「イシューからはじめる」ということ。本書はそんな「イシューから始める」」という考え方を順を追って説明している。

まず、本書で触れているのはイシューの見つけ方。ここで陥りやすい失敗例を語っている。それは、答えの出ない問題に取り組んでしまうということである。本書では「悩む」と「考える」という言葉の違いを、「悩む」は答えのないものに時間を費やすこと、「考える」は答えのあるものの答えを出すために時間を費やすこととして、答えの出ない問題に取り組んでしまうことの危険性を説いている。

良いイシューの条件として次のように語っている。

1.本質的な選択肢である
2.深い仮説がある
3.答えを出せる

また、イシューを特定するための情報収拾の方法も次のようにしている。

1.一次情報に触れる
2.基本情報をスキャンする
3.集めすぎない・知りすぎない

またイシューを特定するための5つのアプローチは次の5つである。。

変数を削る
視覚化する
最終形からたどる
「so what?」を繰り返す
極端な事例を考える。

後半では、分析の仕方、分析結果の伝え方についても触れているが、本書の重要な部分はイシュー特定の前半部分に凝縮されていると感じた。実際の現場での課題解決の場においても、間違った課題に取り組んでしまうとその後のフローにおける無駄な時間が膨大になることを考えると、イシュー特定がどれほど重要かわかるだろう。

全体的には、この本の評判の高さに比べると若干期待はずれだったかもしれないが、自分の毎日の仕事のやり方に対して改めて考えてみるきっかけにはなった。

【楽天ブックス】「イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」」

「Dancing with the Sun」Kay Bratt

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
過去に悲劇に引きずられながらも人生の決意を新たにした母Sadieは、それを伝えるため娘のLaurenを訪問するが、帰り道に太一よったハイキングの最中に道に迷う。荒野の中で2人で過ごすことにより今まで見えなかったものが見えてくる。

ヨセミテ国立公園のハイキング中に道に迷った母娘の様子から始まり、徐々にその過去が明らかになっていく。Sadieは数年前に長男を失っており、Laurenはその後引き取られた養子だということが明らかになる。失った長男の悲しみから抜け出せないSadieと、失ったみたこともない兄の幻影を感じながら成長した娘Lauren、そして、同じように長男を失った悲しみを経験しながらも違う生き方を選んだ父親の温かく優しい物語。

遭難中の場面ではややスピード感に欠ける部分もあるが、最後は感動する家族の物語。どちらかというと女性の読者に好まれる内容なのではないだろうか。

「Becoming」Michelle Obama

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ミッシェル・オバマが、ピアノの先生の上の階に家族で間借りしていた幼少期から、バラック・オバマとの出会い、そしてバラックが大統領としての任期を終えるまでを描いている。

序盤はミッシェルの子供時代を描いている。ファーストレディとなった人だから黒人とはいえ裕福な家庭に育ったのだろうと想像していたが、まったくそんなことはない。それでも両親の考え方がミッシェルのその後の生き方に大きく影響を与えたことは伝わってくる。また、足の病気に悩んだ父の生き方も間違いなく大きな影響を与えたことだろう。

そして、中盤ではバラック・オバマとの出会いが書かれている。やはりバラックは出会った時から異彩を放っていたということだが、この点はひょっとしたら運命の人と出会ったミッシェルの目線だからなのかもしれない。何よりも印象的なのは、バラック・オバマは心のそこから世の中がよくなることを願って行動しているという点である。

そして、その後の夫婦生活も面白い。州知事から大統領、と少しずつ政治家としてのキャリアを積み重ねるバラックを見ながら、「家族の時間が十分に取れていないのにまだやるのか」というミッシェルのバラックに対する非難と、それと同時に自分自身が夫の夢を邪魔する障害でありたくないという葛藤が印象的であった。それは、対象が大統領という特別なものである以外は、仕事や趣味に打ち込みすぎる夫を非難する、どこにでもいる夫婦のようだ。

ホワイトハウスの生活も驚きである。ホワイトハウスでは窓を開けることすら、許可なしにはできないのだそうだ。また、2人の女の子は常にシークレットサービスが身近にいなければいけないということで、ミッシェルが思春期の子供たちにどのような影響を与えるのかを懸念している点も興味深い。

全体的にもっとも刺激的だったのは、バラックとミッシェルの、自分の人生を少しでも自分の理想の近づけようとする努力である。バラックは世の中を少しでもよくしたいという思いを常に持っており法律家から政治家の道へ進み、それを間近で見ていたミッシェルも、やがて大きな収入源となっている法律家の道から、慈善事業の方向へ少しずつシフトしていくのである。「お金より大切なものがある。」と誰もがいいながらも、やりたい仕事をそれまでの半分の給料で受け入れることは簡単なことではないだろう。

全体的には、ミッシェルの視点を通じて、アメリカの黒人に対する現状がよくわかったし、バラックが本当に純粋に世の中のためを思っていることも伝わってきた。またこのような大統領が出ればいいと感じた。

「かがみの孤城」辻村深月

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2018年本屋大賞受賞作品。いじめられて学校にいけなくなった中学生の小川こころはある日、部屋の鏡が光っていることに気づく。鏡の中には、城がありそこには同じ世代の7人の男女が集まっていた。

鏡の中に集まった7人の中学生は、1年間の期限のなかで城のなかに隠された鍵をさがすことを依頼される。その鍵を見つけると一つだけ願いが叶うという。

なぜこの7人が選ばれたのか、城はなんのために作られたのか、さまざまな疑問を持ちながらも、城での時間を楽しむ中で少しずつ7人は秘密や悩みを共有し、親密になっていく。すでに辻村作品を読み慣れている人であれば早い段階で仕掛けに気づくかもしれない。それでも最後は優しい感動を感じることだろう。

【楽天ブックス】「かがみの孤城」

「グロースの時代」森岡康一

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
元フェイスブックジャパン副代表の著者が日本でフェイスブックをどのように広めていったのかを語る。

転職を繰り返してフェイスブックにたどり着いた著者が、その過程での大きな出来事や転機となった出会いなどについてカタッている。

グロースに関する技術や知識を求めて本書を手に取ったのだが、精神的な部分の重要性に多くページを割いている。情熱や根性は何かをやり遂げる上では無視できないことでしっかり覚えておきたいことだが、すぐに利用できるような知識を探している人にとっては期待外れに終わるだろう。しかし、実際に大きなグロースを経験したフェイスブックジャパンの様子からは何かヒントが得られるのではないだろうか。

【楽天ブックス】「グロースの時代」

「いちばんやさしいグロースハックの教本」金山裕樹

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ヤフーなどでグロースハックの経験を持つ著者がグロースハックについて語る。

グロースハックというのはここ3年ぐらい急速に広まった言葉で、これまでにも何度か関連する講座や本にも触れてきて一通り知っている気でいたが、それでも本書でまたいくつか新しいことを学ぶことができた。

まず、興味深かったのは「グロース担当のチームは3人で構成する」ということ。たしかに3人から4人に増えると、情報を共有するためのコストが急激に高まるので、論理的に非常に理解できる話ではある。しっかり頭に置いておきたい。

本書では基本的にARRRAモデル、つまり(Activation, Retention, Referral, Revenue, Aquisition)を中心に語っている。全体的にファシリテーションやアイデアの選別の手法などの話が多い。そんななかでも覚えておきたいと思ったのは、解決策を不明度と前提が崩れた時のインパクトで解決法を分類するジャベリンボードという手法、そして大きな離脱を視覚的にわかりやすく描いたユーザーオンボーディングファネルである。

ほかにも、バイラル係数、バイラルサイクルタイム、LTV、4種類のレベニューモデルなど、知らなかった言葉や、知っていても曖昧に覚えていた言葉などを改めて学ぶことができた。「いちばんやさしい」と書いてあり表面的な内容かとも思ったが、読んだ印象としては、必要な事項は網羅されているような印象を受けた。グロースハックを考える上で効率よく学べる本としておすすめしたい。

【楽天ブックス】「いちばんやさしいグロースハックの教本」

「GRIT やり抜く力」 アンジェラ・ダックワース

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人間の成功は才能よりもやり抜く力「GRIT」にかかっているという。そんなGRITについて研究した著者がGRITについて語る。

最近そこらじゅうで語られているように、才能よりも努力を褒めるべきというのは本書でも同じである。1万時間の法則や、意図的な練習の仕方にも触れているが、教育に関する本をすでに多く読んでいる人にとってはあまり目新しい情報は無いかもしれない。

個人的にもっとも印象に残ったのは、著者であり2人の女の子の母である著者が自分たちの考えを紹介した「おとなも子どもも「やり抜く力」が身につく4つのルール」である。

(1)家族全員(パパもママも)、ひとつはハードなことに挑戦しなければならない。
(2)やめてもよい
ただしやめるには条件があり、シーズンが終わるまで、たとえば授業料をすでに払った期間が終わるなど、区切りのよい時期がくるまでやめてはならない。始めたことは最後までやり通すべきであり、最低もある程度の期間は、一生懸命取り組む必要がある。言い換えれば、きょう先生に怒鳴られたから、競争で負けたから、明日は朝練があって寝坊できないのがつらいから、などという理由でやめてはならない。 (3)「ハードなこと」は自分で選ぶ (4)新しいことでも、いまやっていることでも構わないが、最低でもひとつのことを2年間は続けなければならない。

とくに(2)のやめてもよい、というのはぜひ参考にしたいと思った。もちろん無理強いするのを正しいと思っていたわけではないが、いつでもやめていいというのも「GRIT」を育てられないだろうと感じていたため、本書の指標はすっと納得できると感じた。

【楽天ブックス】「GRIT やり抜く力」

「Pandemic」A. G. Riddle

ケニヤで大規模な伝染病が発生した。疫学者のPeyton Shawは伝染病の拡大を防ぐためアメリカ疾病管理予防センターの仲間とともにアフリカに向かう。また、ホテルで記憶をなくした状態で目を覚ましたDesmondは何者かが残した情報をもとに記憶を取り戻すために動き始める。

フィクションとはいえ、実際に大規模な伝染病が発生したら起きそうな出来事を、現代の技術を交えながら描いている点が面白い。序盤は疫学者のPeyton Shawがアフリカで仲間とともに伝染病の拡大を防ぎ、その患者の処置のために奔走する様子と、記憶をなくしたDesmondが記憶を取り戻すために奔走する様子が描かれる。その後、Desmondが少しずつ記憶を取り戻していく中で、それにあわせてDesmond自身の過去が描かれ、Peyton Shawとの2人の過去の関係が明らかになっていくという過程は面白く読ませてもらった。

さすがに、全世界を巻き込んだ伝染病を扱っているということで非現実感を感じるまた、若干登場人物の人間関係が入り組んでおり、ついていけてない感も感じた。しかし、DesmondやPeyton Shawの過去の描写のなかから、アメリカという文化のなかで生活する様子が今まで以上に見えてきた気がする。

続編もあるようなのでぜひ読んでみたい。

「お金は寝かせて増やしなさい」水瀬ケンイチ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
インデックス投資家である著者が、インデックス投資の賢い方法を説明している。

基本的に必要な情報は前半部分に詰まっていて、まずは、アクティブファンドの多くがインデックスファンドに勝てないということと、過去、リーマンショックや東日本大震災などの大きな出来事があっても、結局長い目で見れば世界の株価は右肩あがりだという事実である。この2つの事実によって、結局インデックス投資がもっとも手間なくリスクが少なく資産を増やせる方法と結論づけている。

本書で進めているインデックス投資は

・毎月一定額を買い足す
・世界市場のポートフォリオに従う

ということである。

まず、積立投資(毎月一定額を買い足す)ことによって、安いときに多く買い高い時に少なく買うという流れが自然に出来上がる。また、世界市場のポートフォリオ(国内株式:先進国株式:新興国株式=1:8:1)に従うことによって、一部分の国の経済に依存しないことができる。

本書ではあわせて、自分のリスクの許容度を知るということもページを割いて説明している。なんとなく「大丈夫だろう」から一つ上の視点を身につけるためにいいかもしれない。最後の章では、切り崩しについても触れている。斬り崩しは一定額ではなく、一定の率で売っていくことにより、高い時に多く売って、安い時に少なく売るという流れが出来上がる。

投資の本は世の中にあふれているが、そんななかではかなりの良書と感じた。本書の中で繰り返し触れている本「ウォール街のランダムウォーカー」もぜひ読んでみたいと思った。

【楽天ブックス】「お金は寝かせて増やしなさい」

「八日目の蝉」角田光代

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
希和子(きわこ)は不倫相手の子供で、生まれたばかりの女の子を薫(かおる)と名付けて連れ去ってしまった。東京から名古屋、そして小豆島へと希和子(きわこ)の逃亡生活を描く。

有名な作品で名前は何度も聞きながらもこれまで読む機会がなかった作品。金銭目的ではなく、不倫相手への復讐からでもなく、母性によって引き起こされた誘拐と逃亡生活という点が、本作品のもっとも魅力的な部分であり大きなテーマなのだろう。そういう意味では、男性と女性とではかなり異なる印象を受けるのではないだろうか。

本書は大きく2つの章で構成されており、第2章では大人になった薫(かおる)である恵理菜(えりな)が、その逃亡生活や、家族の元に戻った後の様子について語っている。恵理菜(えりな)自身が、世間を騒がせた誘拐事件の被害者からなのか、もともと両親に問題があったのかはわからないが、不幸な家庭環境のなかで自らの境遇を悩みながら生き方を考える様子が興味深い。

個人的には母性に突き動かされた母親視点の奮闘よりも、複雑な愛に囲まれて育った恵理菜(えりな)の様子を描いた後半の方が印象的だったが、女性の感想も聞いてみたいところである。

【楽天ブックス】「八日目の蝉」

「クリエイティブのつかいかた ビジネスに活かすトップクリエイター12人の仕事術」西澤明洋

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日経デザインに連載された内容をまとめたもので、著者が12人のクリエイターにインタビューした内容と、その際の著者の気づきを説明している。

多くのクリエイターが1970年代生まれということで、僕自身と世代が被っているため共感する部分が多い。インターネットが一気に世の中に広まる時期という、クリエイターになる道が確立されていなかった時代に社会に出てきた人々が多く、、さまざなバックグラウンドを持っている点が興味深い。エンジニアやデザイナーという枠にとらわれない考え方も面白く、いい刺激を与えてもらった。

クリエイターの方にとっては多くの刺激になるのではないだろうか。

【楽天ブックス】「クリエイティブのつかいかた ビジネスに活かすトップクリエイター12人の仕事術」

「ブランドのはじめかた 5つのケースでわかった経営とデザインの幸せな関係」中川淳、西澤明洋

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ブランドを専門としたブランドデザイン会社、エイトブランディング代表の著者が過去の事例を交えながら、ブランドデザインについて説明する。

COEDOビールや、Nana’s Green Teaなどを例に、そのブランドができるまでを説明している。基本的なブランディングの考え方としては今まで知っていたことと大きな違いはなかったが、それでもいくつか覚えておきたいと感じたことがあった。 単に今まで見たこともないようなものをつくればいいのではない、ということです。ビールのブランドである以上、ビールに見えなければならないのです。新しいブランドにもある種の「ビールっぽさ」が求められるのであり、今までにないからという理由で、炭酸飲料のように見えるビールのパッケージを作るのは大きな間違いです。

ブランディングというとどうしても、「違いを強調する」方向に走りがちだが、結局大事なのは「程よさ」を見極めることなのだろう。

【楽天ブックス】「ブランドのはじめかた 5つのケースでわかった経営とデザインの幸せな関係」

「Show Dog 靴にすべてを。」フィル・ナイト

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ナイキの共同創業者である著者がナイキの創業から現在に至るまでの発展を描く。

ナイキといえば今やスポーツブランドの頂点なので、信念やミッションを持った勢いのある創業をイメージしていた。しかし本書を読んで、その創業は日本の靴メーカーの販売代理店でしかなく、創業者たちも片手間に仕事をしていたに過ぎなかったとわかる。多くの人が今のブランドイメージとずいぶんギャップを感じるのではないだろうか。

しかし、やがて日本の靴メーカーと決別をして独自の靴を作り始めると、その勢いは一気に加速する。本書の一番のクライマックスは、Nikeというブランド名が決まり、少しずつ、オリンピックの代表やスポーツ選手のなかにNikeを履く選手が増えくるところではないだろうか。ブランド名の他の案は今となっては笑えるものばかりだが、ブランド名のかっこよさはその音の響きだけでなく、そのブランドのかっこよさと結びつくもの。どの案になったとしてもかっこよい印象と結びついていたのではないだろうか。

本書のタイトルである「Shoe Dog」とは、靴に人生を捧げる人たちのこと。著者をはじめ、本書には「Shoe Dog」が多数登場する。Shoe Dogであるバウワーマンなどの人との恵まれた出会いによってNikeは大きくなったのは間違いない。悲しいのは、著者の息子の2人、トラヴィスとマシューが最後までスポーツに入れ込むことはなかったということだ。仕事と家族のどちらにも人生を捧げることは、なんと難しいことだろう。

本書でもっとも印象に残った言葉は、著者が経済学の教授から聞いたという言葉である。

商品が国境を越えれば、兵士が国境を越えることはない

驚いたことのもう一つは、タイガーウッズやマイケル・ジョーダンと深い交流があったこと。考えてみれば当たり前かもしれないが、著名なスポーツ選手にとって著者は単に靴のメーカーの社長ではなく、自分たちが有名になるためのチャンスをくれた人なのだ。だから、彼らは一生感謝を表現し続けるのだろう。そういう点を考えると、靴メーカーというのも偉大な仕事なんだと感じた。

企業の成功物語は世の中に溢れているが、その中でもかなり面白い部類に入る一冊。

【楽天ブックス】「Show Dog 靴にすべてを。」