とにかくおすすめ

ジャンル関係なくオススメを知りたい人向け

とにかく面白い

ページをめくる手が止まらない、寝る時間さえ惜しくなる最高のエンターテイメント

泣ける本

思いっきり泣きたい人向け

優しい気持ちになれる本

悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

深い物語

いろいろ考えさせられる、深い物語

生き方を考える

人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「ほったらかしFX」投資家 学くん

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
FXにおけるスワップ収入のメリットを語る。実際著者は半年間のスワップだけで100万円以上の利益を得たというのである。(ただし著者は540万円を投資していたというから、一般の人にとってはそう気軽にまねできる話ではない。)

かれこれFXの投資を始めて3年ほどになるが、今のところ毎年100万以上の利益をだしており、その投資方法が比較的ほったらかしだったため、その投資方法の精度を磨きたいと思って本書にたどりついた。

著者はスワップポイントによる利益がFXの魅力としており、なかでもユーロドル売りとポンドドル売りをスワップポイントの高さゆえに進めている。

残念ながらすぐにスワップポイント表を調べてみたが、どうやら著者が本書を書いた時とはかなりスワップポイントが変わっているようだ。本書をあまりに鵜呑みにしないように気をつけた方がいいだろう。

あまり今までスワップポイントを意識してこなかったが、スワップポイントに目を向けるきっかけになった。今回オンラインでのみ読むことのできる書籍を始めて購入してみたが、予想以上の内容の薄さ、ページ数の薄さに驚いてしまった。

【楽天ブックス】「ほったらかしFX」

「オブジェクト指向UIデザイン 使いやすいソフトウェアの原理」ソシオメディア株式会社、上野学、藤井幸多

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
オブジェクト指向UIデザインという、世の中のアプリケーションを使いやすくする手法を紹介している。オブジェクト指向に対して、世の中のタスクを中心に設計されたアプリケーションをタスク指向と呼び、業務系アプリケーションに多い、タスク指向のソフトウェアを、オブジェクト指向へ作り変えるための考え方を、多数のワークショップを交えて説明している。

確かに業務系のアプリケーションであればまだまだタスク指向のものも多いのかもしれないが、一般的なUIデザイナーならば自然とオブジェクト指向でアプリを作るのが自然であり、内容自体に特に目新しさは感じなかった。オブジェクト指向UIデザインという新しいデザイン用語を生み出して、読みにくいほど文字量を多くして語っている割には、デザイン初心者向けの内容に違和感に感じ、本書自体のターゲットがしっかり定まっていないか印象を受けた。ただ、「タスク指向」「オブジェクト指向」という言葉でアプリを語りはじめたことは、デザインの言語化において一つの功績と言えるだろう。

中盤はひたすら、世の中のタスク指向アプリケーションをオブジェクト指向へと作り変えるワークショップが並んでおり、内容の薄うさを感じた。もっとページ数も減らせたし面白い内容にできただろう。デザインを語りながら本書のように内容の構成にデザイン力が行かせていない本は残念である。

印象的だったのはオブジェクト指向よりもむしろ最後の最後に触れられていた、モードとモードレスという考え方である。モードがなければアプリは使いやすいとして、一つの例として、パワーポイントの図形ツールと、Keynoteの図形ツールの違いを語っている。モードレスという考え方は今までなんとなくしか持っていなかったので、しっかり意識していきたいと思った。

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「ガッツリ稼いで図太く生き残る!FX」水上紀行

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1980年代からインターバンク市場の為替ディーラーとして活躍した著者がFXについて語る。序盤こそFXの説明だったが、途中からは為替ディーラー同士の駆け引きや、為替ディーラー時代の思い出などが焦点となってしまった。それはそれで興味深く読ませてもらったが、それがFXの個人投資にどれだけ役立つかというとほとんどないだろう。また、取引に関しては、デイトレードやスキャルピングトレードなど短期のやりとりを中心に書いているので、長期でFXを考えている人にはあまり役に立たないのではないだろうか。

本書で個人のFXトレーダーに役立ちそうに感じたことは、トレンド相場とレンジ相場の違い、レンジ相場の3つのステージでであるが、こちらもデイトレーダー向けの内容である。長期のトレーダーに役立ちそうなことは第3章の「相場シーズンの違いをふまえる」である。シーズンによってある程度傾向があるのだという。

6月末の欧米金融機関の中間決算は、1年の中でも相場に別格の影響を与えるイベントのひとつです
10月15日前後には、ファンドの45日ルールに絡んだ値動きがある

この2つの時期はしっかり頭に叩き込んでおきたいと思った。この時期の前に利益を確定しておく方がいいのだろう。

為替ディーラーの仕事に興味がある人は楽しめると思うが、個人投資家向けのFXの情報としてはかなりの上級者向けの内容となっている。

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「インターフェースデザインのお約束」Will Grant


オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世の中のインターフェースデザインの良くないところをあげて、より良いUIを提案するシリーズの一冊である。タイトルが「インターフェースデザインの心理学」から「お約束」になったからといって特に構成に大きな違いはない。デザイナーであれば、著者がどのようなUIに憤りを感じるかを、なんとなく知っておくだけでも今後妙なUIを作らないためにも役立つのではないだろうか。

今回印象に残ったもの、知らなかったもの、または普段あまり意識をしていなかったものとしては次の項目である。

まだ先があることは省略記号で表せ

英語ページではlog inではなくsign inを使え

英語ページではregisterよりsign upのほうがしっくり来る

無限スクロールはフィードコンテンツ限定に

「既存ファイルを複製して編集」のフローを用意せよ

UI要素を必須、容易、可能の3種類に分けよ

「まだ先があることは省略記号で表せ」はわかりにくいが、メニューなどの表記の仕方の話で、例えば「保存」というメニューがあった時にそのメニューを選択するとすぐに保存が実行される場合は「保存」として、選択した後に別のウィンドウ(例えば、ファイル名を入力させるウィンドウ)などが表示され保存までに別のステップがある場合は「保存…」と表記することを言っている。これは今回初めて知ったのだが、たしかにMacのメニューにもそのような表記が使われているのである。

例によって、実装の工数は一切考えずに言いたいことを言っているので、すべてを簡単にできるとは言い難いが、記憶にとどめておいて、改善できるところは改善していきたいと感じた。

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「超一流の雑談力」安田正

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
雑談をあらゆる人間関係の入り口と説明し、その手法を語っている。雑談の始め方、話題の選び方、聞き方などをそれぞれ詳細に説明している。

多くの男性がそうであるように、僕自身はあまり沈黙が苦にならないのだが、一緒にいる相手がときどき気詰まりに感じているような気配は感じたりする。どこかで雑談は人間関係を円滑にするための手段、という話を耳にし、多少なりとも技術を磨いておけたらと感じ、本書にたどり着いた。

印象に残ったのは、聞き方の説明で、本書では

なるほどですね、そうですね、は「話を聞いていない人」の反応

と切り捨てており。理想のあいづちの「さしすせそ」をあげている

さ さすがですね。
し 知らなかったです。
す 素敵ですね
せ センスがいいですね。
そ それはすごいですね。

また、話し手が自然と話し出してしまう質問として、

何か特別なことをされているんですか?

もあげている。

どれも今日から実現できそうなことばかりである。

最後の章では人間のタイプ別の雑談の進め方を説明しており、すでに雑談力に自信のある人はぜひ使いこなしてもらいたい。全体的に非常にわかりやすくまとまっており、今日からやってみたいと思える内容があふれていた。。

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「人生が変わる「オンラインサロン」超活用術」中里桃子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
オンラインサロンを使いこなす方法を語る。

まずは、会社以外に自分が活躍できる場所を持っていることの人生における重要性と自分にあったオンラインサロンの探し方を説明しており、その後は、オンラインサロンの中で、嫌われないために、信頼を得るためには、影響力をあげるためには、と順々にサロンでの存在感をあげるための秘訣を語っている。

オンラインサロンを探すための方法として、

(1)やりたいことがわからない人
(2)やりたいことがあるが、スキルも自信がない人
(3)やりたいことがあり、スキルも自信もあるが、信頼がない人

と3つのパターンに対してアドバイスをしている。(2)の人は、一緒に学べるオンラインサロンを利用すべきだし、(3)の人は信頼を得るために自己開示やスキルの見える化をすべきだという。

また、影響力を上げるための行動として

発信する力
循環させる力
変化させる力

をあげている。発信というと、ブログやYouTubeやTwitterなどで自分の考え方などを発信することを意味するのかと考えがちだが、本書では、発信を受け取りコメントすることで発信力を上げることを説いている。また、循環させる力は、人からの影響を受けることだと言っている。変化をさせる力では自らが目標を設定しそこに行く過程に人を巻き込む力を説明している。

必ずしもオンラインサロンだけに通用する話ではなく、FacebookやTwitterなどオンラインでのやり取りで意識するといいことがあふれていた。人のコメントに対する反応として今日から意識したいと思った。

また、

信頼を得るための情報の開示
発信をするではなく、人の発信をしっかり受け止めコメントを返すこと
人の影響を受けて、それを実践し、報告する
目標を宣言し、サークルなどを企画する

こちらのことも今日から実践したいと感じた。本書はオンラインサロンを中心に語っているが、オンラインで存在感を上げるためのいい助言が詰まっている。

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「東の海神 西の滄海」小野不由美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
十二国記の第4弾、東の(えん)の国の物語。

長い間前王の元で圧政に苦しんだ雁の国に、新しい王として期待されながらも、政務をほったらかしの尚隆(しょうりゅう)とその周囲の人々を描く。そんななか、東の(えん)の国の麒麟である六太(ろくた)が東の(えん)の国の州である元州に誘拐される。元州の反乱を抑え込もうとするなかで、すこしずつ、六太と尚隆(しょうりゅう)が王になるまでが明らかになる。

序盤は状況が見えずに読みにくかったが中盤以降は一気に読むことができた。ファンタジーにも関わらず、日本の歴史とも関連づけられていて、事実に基づいた歴史小説を読んでいるような印象を受けた。

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「劇場化社会 誰もが主役になれる時代で頭角を現す方法」櫻井秀勲

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
80歳を超えて、今もなお複数のオンラインサロンを運営する著者が現代において「舞台に上がる」ことの重要性を語る。

オンラインサロンの運営方法が知りたくて、オンラインサロンの運営者である著者の本書に出会った。

とりとめもなく、著者の思うところを書いているが、いいたいのは「舞台に上がる」、つまり僕の理解したところでは、会社などの後ろ盾を持たずに自分自身で表に出て勝負するということである。100年時代の現代、一つの会社で一生を終えることももはやなくなり、一つの職種だけで生きていくことも難しくなる中で、自分の技術だけでなく、どのようじ自分を売っていくかが重要だと説明している。

たしかに、自分の経験からも感じることだが、技術力だけで年収1000万円を超えるのは、一部の有名企業に所属している人を除いては非常に難しく、持っている技術だけの価値では不十分で、どのようにして人間としての価値をわかってくれる人を増やすかが鍵だと感じる。

オンラインサロンなどのを作ってみたいと感じたし、なによりも80歳を超えてなおエネルギッシュに活動し、このような現代的な考え方ができる著者におどろかされた。

【楽天ブックス】「劇場化社会 誰もが主役になれる時代で頭角を現す方法」

「盤上の向日葵」柚月裕子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
埼玉で発見された男性の遺体は高価な将棋の駒とともに見つかった。かつて奨励会で棋士を目指していた刑事の佐野(さの)は将棋に詳しいが故に、石破(いしば)と組んで、将棋の駒の持ち主をたどることなる。

佐野と石破の将棋の駒の行方を追っていく様子と並行して、長野の諏訪湖のほとりで暮らす将棋の愛好家唐沢(からさわ)が、近所に住む少年上条桂介(かみじょうけいすけ)に将棋を教える様子が描かれる。恵まれない家庭に育った、上条桂介(かみじょうけいすけ)が、将棋を学びながら成長していく様子が描かれる。

貴重な将棋の駒が、なぜ遺体とともに発見されたのか、そして、上条桂介(かみじょうけいすけ)がどのように事件と関わっていたのかが、物語が進むにつれ明らかになっていく。

将棋の駒の魅力や、真剣師という生き方が描かれている。誰もが知っている日本の文化である将棋というものに、もう一度目を向けてみたくなる一冊。

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「ターゲットから発想する文字のデザイン」デザインノート編集部

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
文字をデザインする20の方法を説明した上で、実際のメイキングのプロセスと、ターゲットに応じた文字デザインの使い分けを説明している。

まず冒頭にある文字ので事案の20の方法はいずれも特に目新しいものではなかったが、デザインに詰まったときに見直したいと思った。

異なるフォントを使う
大小をつける。
メリハリをつける。
動きをつける。
重ねる。
傾ける。
ゆがめる。
エッジ効果
付け足す
枠に入れる
文字のトリミング
コミック風
手書き風
罫線をあしらう
罫線で囲む
かざり罫で囲む
色で強調する
質感をつける
メタリックな表現
写真を入れ込む

後半の実際のメイキングの様子は、多くのデザイナーに参考になることだろう。本書で使用している多くのフォントがよく見るフォントばかりだったので、綺麗なタイトルをデザインするのに必ずしも特殊なフォントが必要ないことがわかるだろう。

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「40代ご無沙汰女子の、残念な婚活」浅見悦子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
40代女性の著者が実際に婚活した経験を語る。

婚活が少しずつ習慣になっていき、最初は男性とデートすることすら億劫だった著者が何度となく繰り返すうちに、「とりあえずデートの練習」という姿勢で積極的に人と会おうとする様子は、今婚活に悩んでいる人々に元気を与えるのではないだろうか。やがて、婚活パーティだけでなく婚活アプリにまで活動を広げていき、それぞれのデートの様子や相手の人の振る舞いを細かく書いている。

婚活する多くの人が経験するであろう態度、つまり、「自分のことを棚に上げて相手の嫌なところばかりに目がいってしまう」は、本書でも同様で、反面教師としていろいろ学ぶ部分はあるだろう。

僕自身婚活経験があり、一般的には几帳面な男である。そんな一人の男性の視点で見ると、著者が婚活で出会う男性たちの振る舞いを知ると、こんなにも世の中の男性は時間を守らなかったり、捨て台詞と吐いたりするのか、と唖然としてしまう。確かに、お金とエネルギーをかけて婚活した結果、こんな男性ばっかりだったら婚活疲れもするだろうなと思った。

婚活しているということをオープンにしてから、様々な誘いが舞い込んできた、という著者の経験談は非常に参考になる。何かをしようと思ったら一人でもくもくとやるよりも、公言することでいろんないい波を呼び込めるのだろう。

著者の理想の結婚像なども触れており、もっと薄っぺらな婚活本を想像していたが、予想以上に深かった。最後に著者が箇条書きでまとめている「婚活をやってわかったこと」だけでもぜひ婚活に悩んでいる人たちに読んでもらいたい。

うまくいかなくても自分を責めない。相手とご縁がなかったと思うこと
いろんな男性とデートをしたり会ったりすると、本当に好みな男性のタイプが明確になる
NGばかり並べちゃダメ。相手のいいところを見つければ、NGを凌駕することもある

結婚している人も、自分には無関係と思わないでほしい。本書の考えが適用できるのは婚活だけではなく、転職や引っ越しなど自分にあった場所や人を見つけるときにすべてに言えることである。

【楽天ブックス】「40代ご無沙汰女子の、残念な婚活」

「盤上に散る」塩田武士

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
なくなった母の持ち物を整理していた明日香(あすか)は母から林鋭生(はやしえいせい)という男に宛てられた手紙と林鋭生(はやしえいせい)に関する新聞記事を見つける。母の手紙をを届けるために林鋭生(はやしえいせい)という男を探すことにし、やがて林鋭生(はやしえいせい)は賭け将棋で生きる真剣師であることを知る。

明日香はやがて、同じく林鋭生(はやしえいせい)を探すリーゼントの男性達也(たつや)と行動を共にすることとなる。いろんな将棋関係者に話を聞きながら、林鋭生(はやしえいせい)に近づいていく。そして、達也を使って鋭生(えいせい)を探す刑事の市松(いちまつ)もまた、鋭生(えいせい)を見つけなければならない深い理由を抱えており、少しずつ真実の明らかになっていく。

真剣師という生き方や、将棋の駒も作りがすごければ芸術となることを本書を読んで初めて知った。登場人物が多くて途中やや中だるみするが、謎が溶けていく後半は一気に読ませてくれる。真剣師という、プロの世界とはまた違った世界で将棋に命をかける人々を描いた作品。将棋がやりたくなっただけでなく、将棋の駒という芸術に関心を関心を抱かせてくれた。

著者塩田武士は本作品で初めて触れたが、どうやらほかにも将棋を題材とした作品を書いているようだ。ぜひ他の作品も呼んてみたいと思った。

【楽天ブックス】「盤上に散る」

「淳子のてっぺん」唯川恵

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

子供の頃山登りが好きだった少女淳子(じゅんこ)が、やがて大学生、社会人となって思うようにいかない人生に嫌気がさしていたとき、ふたたび山登りに心身ともに救われる。それからというもの登山が生きがいになり、少しずつ登る山も高くなっていく。そんな淳子の挑戦を描く。

どうやら本書の主人公である淳子は、実在する人物田部井淳子をモデルにしているらしい。唯川恵というと、どちらかというと女性向けの恋愛小説というイメージがあったが、今回はそんなイメージを覆すような、実話に基づいた女性のすばらしい生き方をを描いている。

社会人になったあとの淳子は、それまで男性ばかりだった登山という文化の中で、女性だけの登山隊の実現をしようとして、女性だけの登山隊を組んでアンナプルナやエベレストといった世界最高峰へと挑戦していくのである。今更ではあるが、そもそもエベレストのような高い山にどのように挑戦するかを本書を読むまで知らなかった。ただ一直線に頂上を目指して登るのではなく、集団で、途中となんども行き来して荷物や食料をはこびながら少しずつキャンプの位置を上げていくのである。そして、最後の頂上アタックは、そのとき体調のいい人だけが決行する。という流れをとるのである。

海外に行くだけで膨大な費用が必要だった1970年代ゆえに、現地までいきながら頂上へ挑戦できなかった女性たちの憤慨は理解できるし、女性ゆえにその感情を表に出さないわけにはいかず、その結果、集団としては頭頂という目的を達成しながらも、やるせない気持ちで帰国せざるを得ないことは、本書を読まなければわからなかっただろう。

ただ単に、山登りの良い面だけでなく、人間同士の葛藤なども読み取れるのがいいところだろう。決して、命をかけて登山をしたいとは思わないが、エベレストやアンナプルナ、アイガー、マッターホルンといった有名な山々についてもっと知りたくなった。

【楽天ブックス】「淳子のてっぺん」

「この世の春」宮部みゆき

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
宝永7年(1710年)の初夏、各務多紀(かがみたき)と父各務で暮らしている家のもとに、ある晩、御用人となった伊藤成孝(いとうなりたか)の嫡男をかかえた女が駆け込んできた。自分の家が御用人である伊藤成孝(いとうなりたか)とどのようなつながりを持っているのか。そんな疑問を持つた多紀は少しずつ藩内の権力争いの秘密に関わることになる。

北見藩というのは架空の名前で下野内にある架空の藩を舞台としている。江戸時代を描いた多くの物語は、徳川家や江戸を扱ったものばかりのため、このように地方を舞台としたものは珍しく、当時の人々の様子を知ることができる。

やがて父の死を機に、多紀は北見家の別邸である五香苑へと連れられていく。そこには自害したはずの伊藤成孝(いとうなりたか)と元藩主である北見重興(きたみしげおき)が匿われていたのである。北見重興(きたみしげおき)は藩主の座を追われたのは、複数の人格を持っていたためである。多紀たちは重興(しげおき)のその病気の謎を解明を試み、やがて北見家にまつわるおおきな影と向き合うこととなる。

江戸の時代を扱ったものではあるが、人々の悩みや葛藤、立場の違いによる考え方の違いなど宮部みゆきらしい描写力で、現代の人々のようなリアルさを感じる。歴史の物語のなかでしか触れることのないような過去の話でも、人はいつも一生懸命悩みながら生きているのだと伝わってくる。

【楽天ブックス】「この世の春(上)」「この世の春(中)」「この世の春(下)」

「The Huntress」Kate Quinn

オススメ度 ★★★☆☆ 4/5
第二次世界大戦後、多くのドイツ人将校たちがニュルンベルク裁判で有罪判決を受けたが、小規模な戦争犯罪者たちは名前を変え、国外で普通の暮らしに戻っていた。そんな戦争犯罪者に弟を殺された戦争ジャーナリストのIanと仲間たちは世界中に逃亡した戦争犯罪者たちを正義のもとに引き出そうとしていた。

物語は三つの物語が織り混ざって進む。IanとTonyは戦争犯罪者を追い詰める組織を維持しながら、Ianの弟を殺したLorelei Vogtの足取りを探していく。一方、時代を遡ってソビエト連邦の東の果て、バイカル湖の近くの田舎町で育ったNinaは、やがてパイロットとを目指して西へと向かう。アメリカのボストンに父とクラス女性Jordanは父の再婚相手に不信を感じながらも少しずつ新しい生活に馴染んでいく。

まず何よりも戦争犯罪というと、ナチスのヒトラーや映画にもなったアドルフアイヒマンという大量殺戮に関わった人物しか考えたことがなく、本書で扱っている数人程度を殺害した戦争犯罪者という存在事態を考えたこともなかった。そんな小さな戦争犯罪者たちをIanとTonyは探し出し裁判を受けさせるようと活動しているのである。本書ではやがて、Lorelei Vogtという女性一人に絞って、Ianの妻Ninaと3人でアメリカに渡るのである。

一方で、ソビエト連邦のパイロットのNinaの物語が、この物語だけで一冊できそうなほどの濃密なのも驚きである。Ninaの物語は、バイカル湖周辺という首都モスクワから遠く離れた田舎で始まり、不時着した飛行機のパイロットに遭遇したNinaはパイロットになることを夢にみて西へ西へといくのである。日本から見たらどんな文化があるのかまったく想像できない地の描写も魅力的だが、戦時中のソビエト連邦の女性パイロットの物語としても秀逸である。Kate Quinnにはこの物語に絞ってぜひもう一冊描いて欲しいところである。

最初はなぜIanの書類上の妻でしかないNinaをここまで詳細に描くのかわからなかったが、物語が終盤に進み、Lorelei Vogtを追い詰める中で少しずつNinaの存在感が高まっていく。Kate Quinnの作品を全部読んでみたいと思わせてくれた一冊である。

和訳版はこちら。

「Where the Crawdads Sing」Delia Owens

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2021年本屋大賞翻訳小説部門受賞作品。ノースカロライナ州の湿地帯に暮らすKyaの家族は、父のアルコール依存症と暴力の前に一人、また一人と家を出て行って、最後にはKyaと父の二人だけになった。やがて父も家に戻らなくなり、Kyaは一人で野生の生き物とともに生きていくこととなった。

狼少年など、幼い子供が文明と離れて生きていく物語はあるが、この物語のKyaの場合、幼い頃は両親がいたために言葉を話すこともでき、また、人間の文化から遠く離れて生きているわけではないので、ボートの燃料を買うためにとった貝を近所のお店で売ったりして生ききているのである。両親がいないために、学校のなじむこともできずに、やがて人々から「Marsh Girl」と蔑んで呼ばれ、様々なうわさが飛び交うこととなる。

前半は、Kyaの家族がいなくなったあとに一人で生きる様子を描いている。Kyaの様子だけでなく、その近隣で見られる、鳥や植物の描写が非常に細かく、物語の展開以外にも新たな視点を与えてくれるだろう。

十代後半になると、そんな不思議な存在に魅力を感じる男性たちと恋愛関係に陥る。教育や街の生活と離れて生きていくKyaの物語。後半はそんなときに起こった一つの事件を描いている。

一人の女性を中心として自然を描いたあまり類を見ない作品。物語の展開として面白いとは言えないかもしれないが一読の価値はありである。

「蜜蜂と遠雷」恩田陸

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第156回直木三十五賞、2017年本屋大賞受賞作品。

ピアノコンクールに集まったピアニストたちの様子を描いている。

マラソン大会だけを描いて1冊を終える「夜のピクニック」も驚きだったが、本作品も、数日間にわたって行われるピアノコンクールのみを扱っており、その前後の物語はほとんどない。参加者の視点、審査員の視点、参加者の妻や友達の視点に切り替わりながら、文庫本にして2冊の量を読者を飽きさせずに読ませ続ける。それぐらいピアノコンクールという多くの人にとって未知なイベントを、ドラマチックに仕上げているのである。

物語は、ピアノに情熱を注ぐ4人の人を中心に描いている。かつては天才少女として活躍したにもかかわらずピアノをやめていた栄伝亜夜(えいでんあや)20歳、サラリーマンの高島明石(たかしまあかし)28歳、優勝候補のマサル19歳、自宅にピアノを持っていないという異色の環境の風間塵(かざまじん)16歳である。

1次予選、2次予選、3次予選とコンクールは進み、少しずつ調子をあげていく人もいれば、緊張で実力を発揮できない人もいる。間違いなくシビアな世界で、多くの人が報われずに終わるとわかっていても、そんな舞台に出て戦うことを選んだ人生を羨ましくも感じてしまう。

音楽を奏でるということをやってこなかった読者にも、音楽を奏でることの魅力が十分に伝わってくる。きっと多くの人が本書を読んだ後に、その音楽を聴こうとYouTubeを彷徨うだろう。直木賞、本屋大賞のダブル受賞も納得の一冊。

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「みかづき」森絵都

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
昭和36年、小学校の用務員室で勉強についていけない子供達に勉強を教えていた大島吾郎(おおしまごろう)の元へ、生徒の母、赤坂千明(あかさかちあき)がやってくる。学習塾を一緒に作るためであった。戦後から平成まで、千葉で始まった学習塾の物語である。

物語は、大島吾郎(おおしまごろう)が赤坂千明(あかさかちあき)立ち上げた八千代塾が、時代の波に乗って大きくなる様子。そして、大島家の
家族の様子が描かれている。教え方や、補習塾と進学塾の方針の争い、学習塾の生き残りをかけたいやがらせ工作や合併など、今まで漠然としか知らなかった塾業界の様子がよくわかるだろう。

今でこそ学習塾の存在は当たり前で、むしろ塾に行ってない人のほうが珍しい時代だが、昭和30年代40年代は、塾に行っている生徒は白い目で見られたという、それが少しずつ変化し、平成に入ると塾に通ってない生徒の方が珍しい存在となっていく。また一方で、企業としての塾と、行政としての教育委員会の関係も少しずつ変化していくのである。

本書では、教育は常にどこかが足りないと感じながらも、それを補おうと努力するぐらいがちょうどいいと言っている。

欠けている自覚があればこそ、人は満ちよう、満ちようと研鑽を積むものかもしれない

描かれている時代も長く、登場人物も多く読み応えがある。教育に関心がある人にはぜひ読んでほしい一冊である。

【楽天ブックス】「みかづき」

「風の海 迷宮の岸」小野不由美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
十二国記の戴(たい)の国の麒麟として生まれながらも、天変地異に巻き込まれ、日本で普通の男の子として生活していた泰麒(たいき)が、十二国に帰還し、すこしずつ麒麟としての生活に慣れ、力を発揮していく様子を描いている。

ここまで「魔性の子」「月の影 影の海」を読んでいる中で、少しずつ見えてきた十二国の仕組みが、今回は、麒麟という種族の目線で明らかになっていく。十二国における麒麟の役割とは、それぞれの国の王を選ぶことである。泰麒(たいき)は戴の国の麒麟なので戴王を決めることがその役割である。自らの能力に疑問を持ちながらも、王を選ぶという大きな役割の前に葛藤する様子が描かれる。

少しずつ十二国のドラマが本編に入っていく感じを受けるが、まだまだ、「十二国記」全体の感想を語るには早すぎるようだ。続けて読み進めていきたい。

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「The Alice Network」Kate Quinn

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
子供を身ごもって母とフランスに旅行中のCharlieは、戦時中に行方不明になった従姉妹のRoseを探して、手がかりとして手に入れた一人の女性Eveを訪ねる。その女性は戦時中に女性の諜報活動として大きな役割をになったAlice Networkの一員だった。

それまで保守的な母の言う通りに生きてきて、子供を身ごもってしまったが故に、遠くのスイスで秘密裏に子を産んで元の生活に戻ろうと母と旅行していた際に、CharlieはRoseを訪ねて母の元から逃げ出して、唯一の手がかりとし浮上したEveという女性を訪ねる。EveとEveと行動をともにしていたFinnとの3人で心当たりとなった場所を訪ね回る中で、それぞれが少しずつ心を開き始め、お互いの過去を語りはじめる。

物語は 1915年の第一次大戦中にEveが諜報活動の採用を受けてAliceと出会い少しずつ諜報活動の重要な役割を担っていく場面を交互に展開していく。現在と過去の間が少しずつ埋まっていくのである。Eveの醜い手には一体何があったのか、その美しいAliceは今どうしているのか。読者は、多くの部分に興味をそそられて先へ先へとページをめくっていくだろう。

3人がフランスの様々な場所を移動するのが興味深い。パリなどいくつかの有名な都市しか知らない僕にとっては、聞いたこともない都市が実は戦時中は戦況を分ける重要な場所だったと知って驚かされた。また、戦時中の女性たちの行き場のない怒りややるせなさも、EveやLilyの行動を通じて知ることができた。そしてなにより、この物語は、実際に存在した女性Louise de Bettignies(コードネームをAlice Dubois)を題材としているという点も、本書を通じて初めて知った。機会があったらもっと調べてみたいと思った。

この本の著者Kate Quinnの書籍に触れるのは今回が初めてであるが、他の作品もきっと深い内容だろうと思わせてくれた。ぜひ、有名な作品から順によんでみたい。

和訳版はこちら