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日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法」秋元雄史

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ビジネス業界においてもアートに注目が集まる中、その考え方を語る。

まずはデザインとアーティストの違いを「解決策」と「問いかけ」と説明した上で、さまざまなアーティストやアートを紹介している。現代のビジネスに役立つとしたら、その常識を打ち破って問いを投げかける完成なのだという。

しかし、著者も「学びに即効性はない」としており、ビジネスにアートが役に立つと言われたから少しかじってみる程度ではまったく役に立たないし、そもそも「アートはビジネスに役に立つ」という考え自体が、現代アートの鑑賞は自らの頭で考えるトレーニングになるという。よく「現代アートはわからない」という人がいるが、著者に言わせれば、わからないからこそ面白いのだという。

なかでも「使用価値」と「交換価値」という考え方で現代アートを理解するという話が印象的であった。使用価値がほとんどないのに交換価値の代表的なものがお金であり、現代アートもまた使用価値がほとんどないにも関わらず、アーティストの著名度によって大きく値段が上がる可能性があるのである。

また、本書のなかではさまざまな現代アートのアーティストたちが紹介されている。それを一つ一つみるのも一つの楽しみになるだろう。章と章の間で、注意書きでそれぞれのアーティストを紹介しているが、特にページを割いて紹介している次のアーティストはしっかりチェックして、アーティスト名から作品がイメージできるようにしておきたい。ダミアン・ハーストの作品などは一度見たら忘れることはないだろう。

全体的に特にアートについて新しい考え方をもたらしてくれた印象はあまりないが、多くのアーティストを知ることができた点がありがたい。

  • ヨーゼフ・ボイス
  • リアム・ギリック
  • リクリット・ティラバーニャ
  • スゥ・ドーホー
  • ジェフ・クーンズ
  • 増田セバスチャン
  • 松山智一
  • 葉山有樹
  • 沖潤子

【楽天ブックス】「アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法」

「Magpie Murders」Anthony Horowitz

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2019年このミステリーがすごい海外編第1位作品。2019年本屋大賞翻訳小説部門受賞作品。

ロンドンで名の知れた名探偵であるPundは助手のFraserと共に、Saxby-on-Avonで起こったSir Magnusの殺人事件の捜査にのりだす。

すでに人生の先が短いことを悟ったPundだが、Saxby-on-Avonからロンドンまでやってきた女性の依頼によって、心を動かされ、Saxby-on-Avonので領主であるSir Magnusが殺害されたことで事件の捜査に乗り出すのである。小さな町故にそれぞれの住人たちの交友関係も狭く、街の人間関係が少しずつ明らかになり、ほとんどすべての人にSir Magnus殺害の動機があることがわかる。

途中まではよくある振り時代の探偵ミステリーという雰囲気だが、後半物語は予想外の方向へ動き出す。細かいことは語ることはできないが、今まで読んだことないほどの斬新さを持っており、2つのミステリーを同時に楽しめたかのような分厚い満足感を感じられるだろう。このミステリーがすごい 海外編第1位も納得である。久しぶりに読書の面白さを感じさせてもらった。多くの読者にこの感覚をぜひ味わってほしい。

「腕のいいデザイナーが必ずやっている仕事のルール125」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
著名なデザイナーの考え方、心がけなどを格言としてまとめている。

僕自身すでにデザイナー歴20年近くになろうとしているが、少しでも学べるものがあれば学びたいと思い、本書を手に取った。文章は少なくて簡単な説明なので、1時間ほどで読めてしまうだろう。個人的に響いたのが次の言葉である。

  • 契約の流れで危険性を測ろう
  • 無駄話で要望を聞き出そう
  • 真似るならコンセプトを真似よ
  • 挨拶もデザイン
  • 仕事を趣味にしない
  • お金の意味を理解しよう

最後の「仕事を趣味にしない」と「お金の意味を理解しよう」はやりがちなことである。イラストを描いていること、デザインをしていることが楽しいから、タダでやってしまう。これは日本では賞賛されるが、海外では正しく値段をつけていない行為とされるのだという。気をつけたい。

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「さざなみのよる」木皿泉

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
40代で癌で亡くなったナスミとその死の周囲にいる家族や友人を描く。

夫の日出男(ひでお)、姉の鷹子(たかこ)、妹の月美(つきみ)と、それぞれの視点からナスミの死を描く。40代の死という早すぎるわけでもない、そのやや早めな死に、周囲の人々の捉え方や感じ方もそれぞれである。その視点は、ナスミの幼馴染や、昔の同僚など少しずつ関係の薄い人たちへ移っていくが、少なからずナスミの生き方が影響を与えていることがわかる。

なによりもナスミの死が周囲の人にプラスの影響を与えている点がすごい。誰しも最期はこんな風にありたいと思うだろう。もちろんそれは、死に方よりもそれまでの生き方が何よりも大事なのである。そんな、今日の生き方を考えさせてくれる優しい一冊。

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「海の見える理髪店」萩原浩

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第155回直木三十五賞受賞作品。

家族を描いた6つの短編集。

どれも家族愛を描いた作品ではあるが、個人的に印象的だったのが6番目の「成人式」である。中学生の時に交通事故で亡くなった娘、鈴音(すずね)の代わりに、40を過ぎた両親が成人式に出ようと試みる物語である。娘のためにと思いついた出来事が、娘を失った2人の人生に輝きを与えるのである。

優しい物語ではあるが、自分としては若干物足りない。もう少し年を取ってから読むといいのかもしれない。

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「スペイン語のしくみ」岡本信輝

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スペイン語の基本を説明している。

スペイン語の勉強を日々しているので、手がかりになるものが少しでもあればと思い、本書を手に取った。

印象としては初心者向けの内容で、僕のように5年以上スペイン語を勉強しているような人にとって新しい内容はほとんどなかった。1点新しく知った点として、形容詞の位置によって意味が変わることがあるというものだ。

amigo viejo 年を取った友達
viejo amigo 古い友達
gran hombre 偉大な男
hombre grande 大きな男

スペイン語学習者であっても、初心に戻るために読むのはいいのかもしれない。

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「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」デイヴィッド・ミーアマン・スコット/ブライアン・ハリガン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ライブ録音を許可し、音楽は無料で聴き放題という手法を40年も前から実践し長く活動してきたバンド、グレイトフル・デッドのマーケティング手法を語る。

40年前のバンドの話でありながらも現在も活かせそうな考え方を多く含んでいる。マーケティングの話やフリーミアムの考え方はすでに世の中にたくさんあるので特に目新しさはなかったが、改めて気をつけたいと思った項目は、

  • 忘れられない名前をつけよう
  • バラエティに富んだチームを作ろう
  • フリーから有料のプレミアムへアップグレードしてもらおう
  • ブランド管理をゆるくしよう

である。

章の合間に、グレイトフル・デッドの手法と比較して、Amazonやグーグルなど現在の成功した企業たちの戦略を紹介している。

全体的に感じたのは、ファンを幸せにすることを最優先にすることが大切だいうことである。何よりも著者の2人がグレイトフル・デッドをどれだけ好きかが伝わってくる。本書を読むと、マーケティングよりもグレイトフル・デッドが知りたくなる。グレイトフル・デッドの曲を聴きたくなる、ライブに行きたくなる。それが本書の狙いなのかもしれない。

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「A Cold Trail」Robert Dugoni

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
シアトルの自宅の建て替えのために故郷のCeder Groveに戻ったTracyは地元の警察署長であるCallowayから1993年になくなったHeather Johansenの殺害事件に関連した未解決の事件の捜査を依頼される。娘のDaniellaのために、誇れる故郷を作ろうとTracyはその真実の解明に乗り出す。

Tracy Crosswhiteシリーズの第7弾である。Danと結婚し娘のDaniellaが生まれた後の最初の物語である。20年以上前に亡くなったHeather Johansenの事件の真実を探っていた記者のKimberlyと元弁護士のMathewが不幸な事故によって相次いで亡くなったのである。事故と片付けるにはあまりにも不可解な死の謎を解くうちにCeder Groveの暗い部分が少しずつ明らかになっていくのである。

序盤は娘を危険に晒すことを不安視して、捜査に参加するTracyに反対するDanだが、少しずつTracyの考え方に理解を示していく。本作品は久しぶりにシアトルではなくCeder Groveを舞台としているため第1弾につづいて、Tracyや妹のSarahの過去とのつながりが描かれる。事件の解明の手がかりを探してSarahの日記を読んだり、捜査のために昔の友人にあったりするのである。昔は若かった友人たちが、40歳を超えてそれぞれ街の中心として生きているというギャップが面白い。ある人は出世しある人は結婚して母となっているのである。明るい未来を語りながらも、やがて平凡な大人へとなっていくのである。

毎回このシリーズには事件解決とは別に、家族や仲間のテーマがあるのが面白い。今回は、娘のDaniellaが生まれたことによる、TracyとDanの生活の変化や考え方の変化が重要なポイントと言えるだろう。DaniellaのベビーシッターとしてTracyの家にやってきたThereseが、アイルランドの文化を持ち込んできた点も面白い。シリーズが進むごとに家族の形態が少しずつ変化しているのも興味深い点だろう。Danilellaが大きくなるに従ってどのような家族になっていくのか注目して続編も読んでいきたい。

2020年のよかった本

2020年に読んだ本は結局111冊(和書98冊洋書13冊)でした。(本ブログのエントリーは106件)。せっかくなので年間の和書フィクションベスト5、和書ノンフィクションベスト5、洋書ベスト3を書こうとと思う。たまたま今年読んだというだけで、発行日などはまったく関係ないが、もしこれから本を選ぶ際の参考にしていただければ嬉しい。

和書フィクション

「盤上の向日葵」柚月裕子

今年は柚月裕子があたりの年、一時期読み漁った柚月裕子だが当たり外れあるとは思っていたが、今年は「慈雨」とともにいい作品に当たった。今年はこの「盤上の向日葵」と塩田武士の「盤上に散る」と2冊の将棋を題材とした真剣師の物語に触れたので将棋の物語の印象が強かった。(もっと読む

「この世の春」宮部みゆき

この辺はもう好みになってしまうんだが、相変わらず宮部みゆきの人の心を描く深さは毎回感嘆する。江戸時代を舞台にしようともその人の描写の深さはからない。(もっと読む

「希望が死んだ夜に」天祢涼

友人を殺した疑惑のある女子中学生を扱った物語。操作にあたる刑事の優しい対応が印象的である。(もっと読む

「涙香迷宮」竹本健治

黒岩涙香を題材とした物語。黒岩涙香という人物の名前自体聞いたことあるかないかという程度だったが、「いろは」や「連珠」という今まで知らなかった文化を教えてくれた。物語自体は単純なミステリーだがそこに登場する題材が面白い。(もっと読む

「淳子のてっぺん」唯川恵

田部井淳子の人生を題材にした物語。登山というのは登頂した本人だけでなく登頂できなかった多くの仲間たちに支えられて実現できるのだというのが伝わってくる。(もっと読む

和書ノンフィクション

「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」 森岡毅、今西聖貴

大きな事業の収益を見積もる方法をわかりやすく丁寧に語っている。P&Gという企業のすごさを感じる。(もっと読む

「マツダがBMWを超える日 クールジャパンからプレミアムジャパン・ブランド戦略へ」山崎明

ブランド戦略を日本のレクサスなどを例にとって悪いブランド戦略と組織の大きな利益となるブランド戦略などを説明している。BMWやポルシェ、フォルクスワーベンなどの優れたブランド戦略がわかるだろう。タイトルにあるマツダについての内容は最後の章だけだという点で、マツダについて読みたくて読んだ人には反感を買うだろうが、わかりやすくまとまっている。(もっと読む

「NETFLIX コンテンツ帝国の野望」ジーナ・キーティン

今こそ世界的に有名なNetflixが大きくなるまでを描いている。特に面白かったのが日本のTSUTAYAのような存在である店舗のDVDレンタル店のブロックバスターとのオンラインの主導権争いである。Netflixがここまで大きくなった今ではブロックバスターは先見の明がなかった企業として語られがちがだ、本書を読むと彼らの健闘ぶりがわかるだろう。(もっと読む

「ティム・クック アップルをさらなる高みへと押し上げた天才」リーアンダー・ケイニー

ジョブスが去った後のアップルを描いた物語。誰もがジョブスが亡くなった後はアップルは衰えていくかと思ったが、逆に史上最高レベルの企業へと成長しているのだという。(もっと読む

「ゼロから作るDeep Leanrning Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装」斎藤康毅

今年はAIについての知識を増やそうとディープラーニング、機械学習などの言葉の入ったタイトルの本を読み漁ったが本書がその最初の1冊。理解するには微分や行列や偏微分などの知識が必要で、実際すべてを理解できたとは言えないが、ディープラーニングの基礎を理解するのに大いに役に立った。(もっと読む

洋書フィクション

「The Huntress」Kate Quinn

今年の一番の発見はこのKate Quinnという作家。「戦場のアリス」という邦題で有名になった「The Alice Network」を読んですぐにこの次の作品「The Huntress」を購入。正直こちらの方がさらによかった。早いところ邦訳されて他の人にも読んでほしい。物語は第二次世界大戦後に様々な場所に逃亡したドイツ人たちの行方をつきとめて際算を受けさせるという、戦争犯罪人たちを追うことを仕事にしている人たちの物語。ヒトラーやヒムラーなどの最後は有名だが、数人程度のユダヤ人やポーランド人を殺したまま逃げた人は公式には裁かれなかった。そんな人たちに正義を与えるというのが本書のテーマである。(もっと読む

「The Alice Network」Kate Quinn

ドイツ占領下のフランスで、イギリスのドイツ語を話すことのできる女性たちはドイツ人の将校たちに近づきその情報をイギリスに流していた、そんななかの一人がコードネームをアリスといい、アリスが組織した女性のスパイのネットワークをアリスネットワークと言った。実話に基づいた物語。(もっと読む

「Post Mortem」Patricia Cornwell

今更パトリシアコーンウェルという感じもあるし、すでに発刊から30年以上経っているが、1から読みたくなって第一弾から読み始めたわけだが、30年経っても色褪せない物語。連続殺人犯を捕まえる物語は世の中にたくさんあるが一味違う印象を受けた。続編もまだまだたくさんあるが少しずつ読んでいきたい。(もっと読む

「アリス殺し」小林泰三

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大学生の栗栖川亜里(くりすがわあり)は不思議の国のアリスの夢を頻繁に見ていた。ある日、その夢のなかで誰かが死ぬと、現実世界でも身近な誰かが死ぬことに気づくのである。

どのようにして本書を知ったかもう忘れてしまったが、タイトルからもわかるように、不思議の国のアリスを絡めたミステリー。栗栖川亜里(くりすがわあり)が通っている大学で起こった殺人事件を、現実世界と夢のなかでさまざな人や動物と協力しながら解決していくのである。

この夢の中の死が現実世界の死とリンクするという点でこれまでにない物語で新鮮である。現実世界と夢の世界を行ったり来たりしながら、夢の世界のある人物(または動物が)、現実世界の誰にあたるのか、などを駆け引きなどもしながら探って、犯人を突き止めていくのである。

特に学びになることはないが、この奇妙な世界観は一読の価値ありである。著者小林泰三はほかにも「ドロシイ殺し」や「クララ殺し」という物語も描いていると言うことなのでこの奇妙な世界観を味わいたくなったらまたぜひ手に取ってみたい。

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「超速読力」斎藤孝

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
多くの本に触れてきた著者が速読の方法について語る。

最近速読に関する本も書店にあふれているが、速読をテーマにした本を読むのが本書が最初である。

速読というと、本のページをすべてを驚くようなスピードで読むものと思っていたが、本書によると重要なパートを見つけてそこを読むとういことである。面白いのは本書ではその目的を「読んだものに対してコメントを言う」としている点である。たしかにどんなに早く読んだとしても、何も語れないほど頭のなかに何も残っていなければそもそも読書した意味がない、ということなのだろう。もちろんそれは、すべてのページをじっくり読んだとしても同じことで、読むために読んだいるのではなく、理解するために読んでいるのである。

目次のみ読むとか、最初と最後と真ん中だけを読むなど、その多くはよくある読書の手法ですでに知っているものだったが、「人格読み」という考え方だけは今まで持ってなかったので新鮮だった。著者の思いを心情的に理解すると、著者の言いたいことを理解しやすいとういのである。

1字1句丁寧に読むことだけが読書ではないと教えてくれた。

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「そして、バトンは渡された」瀬尾まいこ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2019年本屋大賞受賞作品。

3人の父、2人の母のなかで高校生になるまでにたびたび家族の形がかわるなかでいきてきた優子(ゆうこ)の物語。

父と母がたくさんいることをわかりながらも、優子(ゆうこ)の高校生活を中心に物語は進んでいく。そして、少しずつではあるが過去の父や母との出会いや別れが明らかになっていくのである。そんななかでも印象的なのは2番目の母で、自由奔放に生きる梨花(りか)の生き方、そして3番目の父、人のために生きることに生きがいをかじる森宮(もりみや)の姿だろう。

自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日が、やってくるんだって。親になるって、未来がに倍以上になることだよって
自分じゃない誰かのために毎日を費やすのって、こんなに意味をもたらしてくれるものなんだって知った

誰もが若い時は自分のために、そして年齢を重ねて、子供が生まれたり、自分の余生が短くなっていくに従って人のために生きるようになるが、その重視する比率や、変わっていくタイミングは人によって異なる。今回は早くして人のために生きるたくさんの人たちを描いている。この優しい世界にぜひ浸ってほしい。

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「越前敏弥の日本人なら必ず悪役する英文」越前敏弥

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本人なら必ず誤訳する英文」の続編である。ダ・ヴィンチ・コードなどの作品の翻訳家である著者が翻訳が難しい英文を例にその翻訳の考え方を語る。

前作が意味の捉え方に焦点をあてているのに対して、本書は美しい日本語に変換することに焦点をあてている。僕自身それなりに英語は勉強してきたつもりだが、本書で例としてあげられる誤訳しやすい英文の罠にことごとく引っかかってしまった。その過程で著者の考え方を説明しているが、それを読むと、ただただ翻訳者の考えの深さに驚かされるばかりである。英語のや英語圏の文化だけではなく日本語の言い回しや、言葉の正確な意味についても知らなければならないのである。

そんななかでも、圧倒されたのがこちらの英文。プロ野球のキャッチャーについて語った言葉の最後である。

Too bad he couldn't hit his weight.

どうだろう。こちらは

打率が体重に負けたのは残念だった。

という意味だという。アメリカだと体重も打率と同じように3桁の数字で表される(200ポンド)ので、例えば2割も打てない、という意味なのだ。アメリカの文化を知っていなければまず翻訳できない文である。

後半は、実際のダ・ヴィンチ・コードの翻訳文を、著者の授業を受けた生徒の訳と著者自身の訳を比較しながらそれぞれのポイントを解説している。この辺までくるともはやただの英語学習者には必要のない内容ではあるが、翻訳の深みが感じられるだろう。合間に著者が翻訳者として生計を立てるまでのエピソードも挟まれていて、そちらも面白い。少し英語ができるからと言って翻訳者を目指すという考え方ではとてもついていけない世界だと知った。

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「The Serialist」David Gordon

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2012年このミステリーがすごい!海外編第1位作品。

Harryは、ポルノ小説家でありゴーストライターでもある。さらに時には偽名を語り、SFから吸血鬼まで様々なジャンルを書く売れない小説家なのである。ある日、過去に3人の女性を殺して現在死刑間近の犯罪者Darian Clayから仕事を依頼される。それは彼に手紙を送ってくる女性たちにインタビューしてほしいというものだった。

Harryが売れない小説家であるために、会う人会う人に小説家として尊敬されるどころかむしろ見下されているところが全体を面白くさせているのだろう。その筆頭はHarryのアシスタント兼マネージャー的な役割を担う、高校生のClaireである。元々は彼女の論文を書くバイトをしていたことから知り合ったのが今ではパートナーとして毎日一緒に過ごしているのである。序盤はそんな小説家として日常を面白く描いている。

やがて、HarryはDarian Clayに関わり、それによって、事件の被害者の家族や弁護士や、警察官との関わるようになる。Clayの要望通りに、Clayにファンレターを送ってくる人にインタビューを進める中で、さらに大きな事件に巻き込まれていくのである。

偽名で出した吸血鬼小説が人気があったり、犯罪者であるDarian Clayの考え方に深い理解を示したりする点が面白い。Harryが書いていると思われるSFや吸血鬼物語が挟み込まれ、それが意外と面白いのである。実際に著者David Gordon自身も本作品以外にあまりヒット作と呼べるものがなく、主人公であるHarryに自分自身を重ねているのではないだろうか。そして、そんな自分自身からヒントを得て描いたリアルな二流小説家の表紙が本作品の最高の魅力と言えるだろう。

「銀河鉄道の父」門井慶喜

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第158回直木三十五賞受賞作品。

質屋の家に育った宮沢政次郎(みやざわまさじろう)に長男が生まれ、賢治(けんじ)と名付けらて自由奔放に育っていく。宮沢賢治の一生を父政次郎(まさじろう)の目線で描く。

やがて宮沢家には賢治(けんじ)のあとにも、トシ、クニ、シゲ、清六という子供達が生まれ、政次郎(まさじろう)は質屋を営みながら、子どもたちの人生を支えていくのである。子どもたちが大きくなるにつれて、「質屋に学問はいらない」と進学を拒んでいた政次郎(まさじろう)が大きな時代の変化や、子供達の強い気持ちに触れて、考え方を変えていく様子が印象的である。いつの時代も父親というのは、自分の歩んできた道の正しさと、自分を越えていってほしいという願いの間で揺れ動きながら子供に接するのだろう。

そんななか、賢治(けんじ)は、優秀な成績で進学をしながらも、いつまでたっても現実的な安定した仕事に就けずにいた。やがて、妹トシの強い勧めもあって、賢治(けんじ)は童話を書くことに目覚めていくのだ。

宮沢賢治(みやざわけんじ)といえば、どこか不思議な物語や詩の印象しかなく、その人生がどのようなものだったかなど考えたこともなかった。しかし、本書を読むと、人生のなかでいろんなことに悔やみ、悩み、生きてきた人間だから作れた物語なんだと感じた。そして、その物語や詩は、周囲の人に助けれながらようやく世に出たもので、どこか少しでも違った方向に動いていたら世に出なかったのだと知った。

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「夢をかなえるゾウ」水野敬也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
朝起きると目の前にガネーシャがいた。自ら神と名乗る、ガネーシャは夢をかなえるための課題を出していくのである。

主人公の「僕」とガネーシャがコミカルなやり取りをしながら、夢を叶えるために必要な課題を出し、それを受け入れていく様子が描かれている。それぞれの課題の有効性は、人によって意見が分かれるかもしれないが、大事とも思えるもので、間に少しずつニュートンやビル・ゲイツなど有名人の行動や心がけなども引用される点が面白い。

  • 靴をみがく
  • コンビニでお釣りを募金する
  • 食事を腹八分におさえる
  • 人が欲しがっているものを先取りする
  • 会った人を笑わせる
  • トイレ掃除をする
  • まっすぐ帰宅する
  • その日頑張れた自分をホメる
  • 一日なにかをやめてみる
  • 決めたことを続けるための環境を作る
  • 毎朝、全身鏡を見て身なりを整える
  • 自分が一番得意なことを人に聞く
  • 自分の苦手なことを人に聞く
  • 夢を楽しく想像する
  • 運がよいと口に出して言う
  • ただでもらう
  • 明日の準備をする
  • 身近にいる一番大事な人を喜ばせる
  • 誰か一人のいいところを見つけてホメる
  • 人の長所を盗む
  • 求人情報誌を見る
  • お参りに行く
  • 人気店に入り、人気の理由を観察する
  • プレゼントをして驚かせる

なんか被っている課題もあるような気がして、そのユルさが本書のいいところなのかもしれない。周囲の人の大切さと、人に感謝したり、人を喜ばせることの大切さが繰り返し強調されている。

  • やらずに後悔していることを今日から始める
  • サービスとして夢を語る
  • 人の成功をサポートする
  • 応募する
  • 毎日、感謝する

内容としては、どちらかというと自己啓発本のような固い伝えられ方をすることが多い中、小説形式で面白おかしく伝えてくれる点が新しい。人生で迷ったりしている人にはちょうどいいのではないだろうか。迷っているときだからこそ本書のように楽しく教えてくれるのがいいだろう。「会った人を笑わせる」や「応募する」「人の成功をサポートする」は今日からぜひやってみたいと思った。

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「文法のおさらいでお悩み解消!スッキリ文章術」時田昌

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
30年以上新聞社で校閲業務に関わってきた著者が読みやすい文章を書くための文章術を語る。

仕事で人の書いた原稿を受け取る機会があり、その文章の不自然さを感じながらも改善の仕方を感覚的にしか説明できず、良い文を書くためのルールを説明できるようになりたいと思い、本書にたどり着いた。

本書では、さまざまな読みにくい例を挙げて、その文を読みやすくする方法をいくつかのポイントを交えながら解説しており、僕自身日本語は結構自信があったのだが、いくつかの項目で、まだまだ曖昧にしていることが多くあることに気づかされた。

意外とやりがちだとおもったのは「述語にかかる品詞はそろえる」という考え方である。

明日の会議の目的は、新会員の紹介と、来年度予算を審議します。

明日の会議の目的は、新会員の紹介と、来年度予算の審議です。

彼の短所は、マナーや常識に欠ける。

彼の短所は、マナーや常識に欠けるところだ。

また、修飾の順序についても次のように説明している。

「句は前、詞は後」、「長い修飾語は前、短い修飾語は後」

普段不自然さを感じて改善しているだろうことだが、「なぜ?」と聞かれると答えられない。このようにはっきりと言語化してくれる点がありがたい。

そして、もっとも仕事のなかでよく見ると思うのが「敬語連結」と表現されるもの

話題のテレビドラマ、ご覧になっていらっしゃいますか?

話題のテレビドラマ、ご覧になっていますか?

尊敬語の「ご〜になる」の形と「いらっしゃる」の形を連結させた、敬意の過剰表現として避けたほうがいいと説明している。

普段外国語の勉強ばかりであまり日本語へ注意が行かないが、こうして改めて見てみるとまだまだ伸びしろがあることに気づかされる。

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「ファーストラヴ」島本理生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第159回直木三十五賞受賞作品。

父親を殺した大学生の聖山環菜(ひじりやまかんな)の手記を書くために臨床心理士の真壁由紀(まかべゆき)は、弁護士の迦葉(かしょう)とともにその動機を探る。

少しずつ心を開いていく環菜(かんな)の証言からその異質な、交友関係や家庭環境、そして環菜(かんな)の心の傷が浮かび上がっていく。また、真壁由紀(まかべゆき)自身も、過去に辛い体験をしていて、物語が進むにしたがって、由紀(ゆき)と迦葉(かしょう)の過去の関係が明らかになっていく。

ちいさな習慣が積み重なって、心の中で消えない大きな傷に発展し、ときにそれが大きな事件につながるのである。そんな悲しい物語ではあるが、ラストで環菜(かんな)のしっかりとした考え方が見えるのが救いである。

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「人を操る禁断の文章術」メンタリストDaigo

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
メンタリストDaigoが文章術を説く。

メンタリストDaigoがライターとしてどれほど実績があるのかはわからないが、文章の能力の向上は常に必要なのでコピーライティングの本を漁っていたところ本書にたどり着いた。

もっとも印象的だったのは最初に、文章の力を端的に表現した言葉である。

誰もが納得の美女を作り出すには、文章を使って想像させるしかない。つまり、世界最高の美女をつくれるのは文章だけなのです。

これは本当に小説を読んでいていつも思うことで、小説で「美女」とか「美人」と言われると、それはまぎれもなく美しいのである。そして、ドラマ化等されるとだいたいイメージが違うことにがっかりするのである。

本書ではそのほかにもいい文章を書くためコツをわかりやすくまとめている。例えば「書かない3原則」として次の3つを挙げている。

1.あれこれ書かない
2.きれいに書かない
3.自分で書かない

何よりも人を操ることに重点を置く本書では、人を動かす7つの引き金を次のように説明している。

1.興味
2.ホンネとタテマエ
3.悩み
4.ソン・トク
5.みんな一緒
6.認められたい
7.あなただけの

行動デザインの考え方と共通する部分があり、何事にも共通するのだと感じた。若干コピーライティングの参考書としては不足があるが、毎日の文章のなかになにかしらプラスの変化を与えてくれるかもしれない。

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「The Sense of an Ending」Julian Barnes

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2011年ブッカー賞受賞作品。イギリス青年だったAnthony Websterの一生を描いた作品。

学生時代に仲のよかったAnthony, Colin, Alex, Adrianの4人組の中で特に頭が良かったのはAdrian Finnである。やがて4人は生涯続く友情を約束しながらも別々の道へ進み、Adrianはその頭脳を活かしてケンブリッジ大学へ進学し、Anthonyの元恋人Veronicaと付き合うこととなるのである。自分の元恋人と親友であるAnthonyが付き合うことに複雑な思いを抱きいていたAnthonyだが、やがてAdrianが自殺したという連絡が届くのだ。

自分たちのヒーローだったAdrianがどうして命を絶ったのか、そんな想いにかられながらも人生は進む。Margaretという妻と結婚して、Susanという娘が生み、やがてMargaretとも良い関係を保ちながらも離婚することとなる。そして離婚して数年経った後、1度しか会ったことのないVeronicaの母からAnthonyに向けて遺産が残されていることから、もう一度40年前の出来と後を考え始め、少しずつその真実に近づいていくのである。

Anthonyの若い時代からは、文学と音楽をエンターテイメントにそこに情熱を注ぐ、60年代のイギリスの男性の生き方が見えてくる。Anthonyの人生をゆっくり描くのかと思ったが、物語中盤ですでに人生の晩年の離婚した状態で、後半はゆっくり人生を振り返り過去のVeronicaやAdrianに思いを巡らす部分に多くページを割いている。人生の晩年を迎え、すでに自分の人生の大きなイベントは終わってしまったAnthonyが、過去を振り返り、人生をより良いものにしようと奮闘する姿が印象的である。