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悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

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深い物語

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人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「スカウト・デイズ」本城雅人

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
プロ野球選手からスカウトに転向した久米純哉(くめじゅんや)はスカウトの伝説的な存在である先輩の堂神(どうがみ)とチームとしてスカウトとしての生き方を学んでいく。

先日読んだ同著者の「ミッドナイト・ジャーナル」が報道についてのこれまで知らなかった視点をもたらしてくれたので、著者の他の作品も読んでみたいと思いこちらに辿り着いた。タイトルからスカウトの生き方を扱った作品だとはわかるので、映画にもなった「マネーボール」のような話を想像していたりもしたが、実際にはもっと古く泥臭い人間同士の駆け引きを描いている。

スカウトの目的はドラフトでいい選手を獲得すること、と一般の人は思いがちであるし、実際その通りである。しかし本書を読むと、その先まで考えて自分達のチームが強くなること、少しでも優勝に近づくことを考えて選択をするスカウトがいることがわかる。例えば、選手の実力よりも同じ大学の後輩との人脈を考慮して獲得したり、故障持ちとわかっている選手を情報操作でライバルチームにドラフト一位で獲得させる、などである。

本書はスカウト1年目の久米純哉(くめじゅんや)がスカウトとして成長していく様子を描くと共に、純哉(じゅんや)の上司であり、スカウト界でも有名な堂神(どうがみ)の予想もつかないスカウトの手法を描いていく。

スカウトという普通に生きていると関わることのない世界を、見事に描いた作品。他にも著者の作品を見ると面白そうなタイトルのものが並んでいるのでぜひ引き続き読んでみたいと思った。

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「どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法」Eiko

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
開脚するストレッチの方法を物語を交えて説明している。

最近、改めて体の柔軟性が大きく怪我のリスクを減らすことに考えが至り、毎日時間をとって柔軟性を向上させるよう努めている。そんななか一昔前に騒がれた本書を読んでみようと思い至った。

本書で紹介しているストレッチ方法はわずか6つのみ。ストレッチ方法だけだと20ページも必要ないので、本の厚みを増すために、小さな物語を追加したと言う印象である。

正直、本書の評価は、その情報に価値があるか、つまりそのストレッチ方法でどれだけ効果が出るかによるべきだろう。現在のところそれほど変化はないのでなんとも言えない。読み物として面白いか、という点では良くも悪くもなくほどほどである。まさにほんの一時期トレンドになった程度の本という印象で、同程度の情報としては今であればYouTubeを見れば十分である。

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「へたっぴさんのための背景の描き方入門」森永めぐ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
パースの使い方を中心として背景の描き方を説明する。

一点透視、二点透視、三点透視とパースの基本から説明し、その後実際の絵の中でパースを活かす方法を語っている。

パースの基本は知っているつもりでいたが、消失点の位置や視線の高さなど、今までぼんやりとしか意識していなかったことをおさらいすることができた。パースを知らない人にはさらに役に立つだろう。ちなみに、本書はあくまでもパースを利用した背景のシェイプの描き方であって、色の塗り方には一切ふれていない。

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「BUTTER」柚木麻子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
女性記者の里佳(りか)は、連続不審死事件の被告となっている同世代の女性梶井真奈子(かじいまなこ)を取材するなかで、美食や贅沢を体験するようになる。

これまで独身女性として生きてきたために美食や贅沢にあまり興味のなかった里佳(りか)が、梶井真奈子(かじいまなこ)の事件の真相や、その真理を理解するために少しずつ、食にこだわり始めるところが面白い。それと並行して、友人の怜子(れいこ)や、里佳(りか)への情報提供者だった篠井(しのい)の過去や家族との状況が少しずつ明らかになってくる。どの家族にも大小さまざまな問題があることが描かれる。

序盤はやや焦れるほどゆっくり進み、中盤以降は物語は一気に速度を上げてしていく。食のあるべき楽しみ方や、女性としての社会での生き方など、複数のテーマが取り入れられており、それぞれの深みを感じさせる。一方で、複数のテーマを入れ込んだせいか、テーマがぶれている気もした。決して退屈ではないが、一貫した著者のこの作品を書くにあたって読者に訴えたいもの、つまりメインテーマがはっきりしない印象を受けた。

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「プロの画家になる!絵で生きていくための142条」佐々木豊

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
画家の佐々木豊氏が、画家に対して一般の人が抱きがちな142の質問に答えていく。

自分みたいな祖神者にとって、美大に行くのはどれほど絵の上達に意味があるのかは、常に関心のあるところだろう。著者は次のように質問に答えている。

Q8 美大で学べるものはなんですか?
芸大で学ぶものは何もない。食堂の安いめしと青春があるだけだ…
美大は貸アトリエと思えばいいのだ。それは今も、そんなに変わりはない。

改めて、画家という生き方は、表面的な部分を楽しんでいる自分の想像以上に深いものだと思い知った。すぐに起こせる具体的な行動としては、著者の行っている絵の土台作りを真似したいと思ったし、近所で参加できそうな画家コミュニティを見つけて、定期的に刺激を受ける環境を作りたいと思った。

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「ローマ人の物語 迷走する帝国」塩野七生

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ローマ帝国の物語の紀元三世紀の出来事を語る。73年間の間に22人も皇帝が交代する不安定な時代である。

タイトルからも伝わるようにすでにローマ帝国は全盛期を過ぎて、少しずつ衰退し始める。衰退の原因を一つに絞ることは難しいが、それらしい動きはこの時代の各所に見られる。なかでも印象的だったのはカラカラ帝の定めた法律「アントニヌス勅令」である。この法律はこれまでローマ市民と属州民と分かれていた市民を全てローマ市民とするということで、属州民にもローマ市民としての権利を与えることになるのである。この市民を平等に扱う聞こえの良い法律が少しずつローマ帝国を内面から蝕んでいくのである。

ローマ市民権は長く維持してきたその魅力を失ったのである。魅力を感じなくなれば、市民権に付随する義務感も責任感も感じなくなる。…誰でも持っているということは、誰も持っていないと同じことなのだ。

ローマ帝国の洗練された技術やシステムは驚くことばかりだが、間違いなくこれはよくないと思うことの一つが、皇帝に対する不信任を平和的に表明する制度が存在しないことである。それゆえに、未熟な皇帝が現れた時には、誰かが殺すしかないのである。この時代の混乱はまさにそんな不信任が繰り返された結果とも言えよう。

今回は普段にも増して学びが多い時代だった。

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「地の底のヤマ」西村健

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第33回(2012年)吉川英治文学新人賞受賞学品。炭鉱で栄えた福岡県の大牟田市で、警官として生きる猿渡鉄男(さるわたりてつお)の人生を描く。

大牟田市で警官の父親の元に生まれた猿渡鉄男(さるわたりてつお)は、やがて自分も警官として生きることとなる。大牟田市は炭鉱によって栄えたために、多くの人は旧労働組合組員、新燈籠組合組員、会社の人間と、炭鉱での立場で分かれており、それは小学校や中学校の子供たちのグループにまで影響を与えていた。それとあわせて昭和38年に起きた大規模な爆発事故によって障害を抱えた多くのCO2患者たちも街には多数住んでいた。

そんな街で警官として生きる猿渡鉄男(さるわたりてつお)はその職務の中で、人々の父親に対する尊敬の念を日々感じることとなる。父親は38年の爆発事故の混乱のなかでに何者かに殺害されており、その謎が鉄男(てつお)の心に何度も繰り返しやってくる。

また、鉄男(てつお)には中学生たちに友人たちと行った人には言えない過去があった。今では、その友人たちも大蔵省で働いていた理、検事になっていたりするので、過去の出来事を公に語ることはできなくなった。しかし、鉄男(てつお)は良心の呵責に苦しみ続けるのである。

大牟田市が炭鉱によって栄えた町だということも知らなかったし、昭和38年に起こった爆発事故についてもこの作品で初めて知った。石炭というエネルギーへの需要の大きさが大きな時代を作っていたことを伝えてくれる。著者はこの大牟田市で生まれ育ったというから、そんな著者の故郷の炭鉱の歴史を遺したいという強い思いが伝わってくる。

しかし、全体的に長すぎる印象は否めない。長い小説をすべて否定しているわけではない、実際、「白夜行」や「魍魎の匣」のように、その長さに必要性を感じる良い小説は存在する。しかし、本作品に関しては1400ページを超える長さが必要だったのかは疑問である。正直ページ数を3分の2程度に抑えたほうが書籍としての密度も上がるし、展開も読みやすくなるのではないかと感じた。

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「ミッドナイト・ジャーナル」本城雅人

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第38回吉川英治文学新人賞受賞学品。埼玉県で女児の連れ去り未遂事件が発生した。中央新聞社の関口豪太郎(せきぐちごうたろう)は、7年前の児童誘拐殺害事件との関連を含めて、真実を誰よりも早く報道しようとする。

事件としては誘拐殺人事件という点で、昨今の小説や映画にありがちな必要以上に残虐な描写はほとんどない。むしろ物語は、その事件を報道する3人の新聞記者たちに焦点をあてている。中央新聞社のベテラン関口豪太郎(せきぐちごうたろう)、女性記者である藤瀬祐里(ふじせゆり)、松本博史(まつもとひろふみ)である。

3人は7年前の事件で共に行動し、結果的に誤報に関わった経験を持つが、今は別々の部署で働いている。それぞれが新たに女児連れ去り事件が発生したことで、過去の苦い思い出と向き合いながらもそれぞれの立場で事件の真相に近づこうとするのである。

事件の動きはそれほど多くはないが、その間、記者たちが真実を知ろうとして警察関係者との関係を築き、真実を話してもらうまでの駆け引きが面白い。新聞記者は真実を知るために、警察関係者たちとの人間関係の構築に時間をかけるのである。しかし、そんな時間をかけて構築された人間関係も、書くな、と言われたことを書いたり、逆に、嘘を教えられたりすることで壊れてしまうこともあるだ。

インターネットの存在によって早く報道することの意義が薄れながらも、そこに価値を感じて生きる記者たちの生き方を魅力的に描いている。著者の他の作品も読んでみたいと思った。

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「金持ちフリーランス 貧乏サラリーマン」 やまもとりゅうけん

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
フリーランスという生き方のメリットを語る。

基本的にいっていることは、フリーランスのメリットと、貯蓄ではなく投資をすべきという考え方である。

著者の語っていることに大きな違和感は感じないが、特に目新しいことは書いていない。気になるのは著者自身のオンラインサロンについて何度も触れている点である。そのせいで、人に知識を分け与えるための本というよりも、自分のサービスのプロモーションのための本といった印象であるし、実際そうなのだろう。昨今このような本が増えてきているので、出版社も良い本を世に送り出すという哲学を持って欲しい。著者名だけでなく出版社名に注意することも、今後良い本を見極め、中身のない本に時間を費やさないためには必要だと思った。

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「From Potter’s Field」Patricia Cornwell

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
セントラルパークで女性が殺害された。手口が逃亡中のシリアルキラーTemple Brooks Gaultのこれまでの犯行と酷似していることから、ニューヨークで捜査協力という形で、KayやMarinoは事件捜査に関わることとなる。

検視官シリーズの第6弾である。今回はニューヨークを舞台としてシリアルキラーGaultを追い詰めていく。KayやMarinoだけでなく、前回に引き続き、警察関係者であるKayの姪であるLucyも活躍する。

Kayは足取りの掴めないGaultの行方を追うために、殺害された女性の身元を割り出そうとする。その過程で、Gaultの両親にたどり使い、単にシリアルキラーとしてしか描かれなかったGaultの過去や家族の様子が少しずつ明らかになっていく。

終盤はニューヨークの地下鉄を中心とする追跡劇が繰り広げられるのでニューヨークの地下鉄の駅名や地理をより詳しく知りたくなった。

Bone Collectorシリーズでも言えることではあるが、小説のシリーズもので複数冊にまたがって犯人を登場させられても、前作品の展開を覚えていないことも多く物語についていけなくなってくる。もちろん著者としては他の本を買ってもらう戦略だったりマンネリ化を防ぐ方法だったりするのもわかるが、すぐに次の回を読む漫画やドラマとは違うのである。

英語慣用句
rub our nose しつこく言い続ける
make a statement 自分らしさを表現する
entertainment center 音声と映像のシステムを含む壁の装置
pull hens' teeth 無駄なことをする、暖簾に腕押し
have a full house 満員である

「The Danish Way of Parenting」Jessica Joelle Alexander, Iben Dissing Sandahl

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世界一幸福な国と言われるデンマークの子育てを、アメリカの子育てと比較しながら説明する。

デンマークの子育ての鍵となる行動をPARENTの頭文字を使って6つ紹介している。

  • Play
  • Authenticity
  • Reframing
  • Empathy
  • No Ultimatum
  • Togetherness and Hygge

アメリカでは個人主義を尊重するあまり、近年自分勝手な人間が増えているようだが、本書では共感量を高めるために「私」よりも「私たち」の利益を考えるように教えることを勧めている。

When You Substitute "We" for "I", Even "Illness" Becomes "Wellness"

本書ではデンマークの子育てと比較しながら、アメリカの親の振る舞いや子育てを嘆いている点が多いが、現在の日本の子育てはそこまで卑下するほどデンマークの子育ての考え方と変わらない印象を受けた。しかし、日本はアメリカに20年ほど遅れて追随しているので、今のまま個人を尊重しすぎることで思いやりの欠けた自己中心的な人をたくさん生み出さないかと懸念してしまった。

世の中の母親たちについたえたいと思ったのは次の言葉である。

You lose control, and yet we expect our children not to.
自分は子供にブチ切れるくせに、子供には自制心を求めている。

本書のなかで意識的に取り入れたいと思ったのはReframingとTogetherness and Hyggeである。Reframingとは、物事の悪い面ばかりにとらわれるのではなく、良い面を見つめるための考え方である。ポジティブな考え方は両親の言動からも伝わるだろうが、その考え方を言葉にして伝えることでより確実に、次の世代に受け継がれるのだと感じた。

日本語版はこちら

誤解を与える日本語タイトルなので一言添えておくが、本書は子供を誉めることを否定していない。過剰に誉めることがよくないと書いているだけである。

英語慣用句
attention deficit disorder 注意欠陥障害
at one's wit's end 途方に暮れて、困り果てて
corporal punishment 体罰
pit people one another 人々を競わせる
health boundary 健全な境界線

「絵画の教科書 アクリル画編」古山浩一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アクリル画家の著者がアクリル画の描き方を解説する。

アクリル絵の具で描く絵の上達のヒントがあるのではないかと思い本書に辿り着いた。

本書は次の6つの章に分かれている。

  • さまざまな下地を使いこなす
  • 明暗法を使いこなす
  • 画材道具を使いこなす
  • 人物を描く
  • 静物を描く
  • アクリル画表現の可能性

1章を丸々下地造りの説明をしており、著者自信下地づくりに大きな時間を割いている点が印象的だった。

明暗法についての説明でも学ぶ部分があった。光の当たり方によって明暗を使い分ける、近い場所のコントラストは強く、遠い場所のコントラストは弱い。このような説明を聞くとひどく当たり前のことのように聞こえるが、本書で立方体を明暗法で再現している手順を読むと、優れた画家は、今まで自分が意識していた以上に細かい部分まで考慮していることがわかった。

アクリル画について学ぶ本であるが、各ページに差し込まれている著者の作品や有名画家の作品もすばらしく大いに刺激になった。

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「La novia gitana」Carmen Mola

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ジプシーの血を引く父と普通の家庭に育った母の元に生まれた娘Susana Macayaが、結婚式を目前に殺害された事件をElena Blancoがスペイン警察特殊分析班(BAC)のメンバーと共に解決に挑む。

物語はスペイン警察特殊分析班(BAC)のリーダーである警部とElena Blancoと、部外者でありながらも事件の捜査に関わることとなった若手警部補でありのÁngel Zárateを中心に、事件の真相に近づいていく様子を描く。

殺害されたSusanaの姉のLaraも6年前の結婚式直前に殺害されており犯罪手口が酷似していることから、容疑は父親に向けられる。父親がジプシーの血をひいておりジプシー社会と現在も深いつながりを持っている。その描写からはスペイン内における、ジプシーに対する偏見やジプシーの家に生まれた家庭の親たちの娘に対する複雑な思いが伝わってくる。

また、姉のLaraの事件で犯人とされた人物が現在も服役中であることから、無実の人物が服役していて真犯人はいまだ捕まっていないのではないかという不安が警察内に浮かび上がることから、警察の信用など対面を重んじる上司と、事件の解決を最優先に考えるElenaたちの思いの違いが面白い。

一方で、捜査と並行して警部Elenaの過去も少しずつ明らかになっていく。Elenaはマドリードの広場の近くに住み、広場を常に監視カメラで撮影し毎晩その動画を見ながら記憶にある男を探し続けるのである。次第に、それが行方不明になった息子を探すための行為であることが明らかになっていく。

また、Ángel Zárateも事件解決の中で葛藤を抱える。6年前のLaraの事件を捜査したのが、Ángel Zárateの上司だったからである。真相を解決し真犯人を見つけることが自分の恩師の経歴に傷をつけることなのではないかと考え、真相を調べることを最優先するスペイン警察特殊分析班(BAC)のメンバーたちと衝突することとなる。

事件の犯人や被害者だけでなく、捜査関係者の人生も描かれている点が面白かった。残念だったのは、最後の真犯人との対面から解決までの流れである。あまりにもありがちな展開でもう少し違った結末を描けないものかなと感じた。

日本語版はこちら

スペイン語慣用句
por lo bajo 小声で
cumplir la condena 刑に服す
cerrarse en banda 自分の意見をゆずらない
a ratos… y a ratos… …したり…したりする
echar la bronca 叱りつける
de par en par いっぱいに開けて

「色鉛筆で写真のような絵が描けるようになる本」慧人

★★★★☆ 4/5
色鉛筆を得意とするイラストレーターの著者がその制作過程を語る。

僕自身色鉛筆で絵を描くようになって2年ほど経ち、いろいろ限界を感じ始めたのでなにかヒントを期待し、本書を手に取った。

著者の興味深いところはその描く対象の選択である。著者はコーラやグラスやニンテンドーDSなど身の回りにあるものを主に描くのである。しかも立体絵、つまりただ描くだけではなく斜めから見た時に実際にそこに存在するかのようにリアルに描くことを得意としている。

本書ではそんな立体絵を描く筆者の制作過程を詳細に説明している。軽く塗り重ねる事で塗りムラを少なくできるということと、異なる硬さの色鉛筆を塗り重ねる事でより滑らかでリアルな表現が可能になることがなどがわかった。また、立体絵の制作過程の説明もあり、今までどちらかというと人物画や風景画を描くことが多かったがぜひ周囲の物を立体絵で描いてみたいと思った。単純な物を描く方が濃淡の微妙な色の濃淡を身につけるためには効果的なことだろう。

全体的にまだまだ僕自身伸びしろがあることを思い知ったし、良い刺激を与えてもらった。

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「フランス人はボンジュールと言いません」Bebechan

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
フランス人でYouTubeでフランス語を教える著者がフランス語とフランス文化について語る。

細々とフランス語を勉強している中で、単純に文法やフランス語会話だけでなく、文化など言語学習とは少し異なる視点でフランス語に触れたいと思い本書に辿り着いた。

本書はフランス人の著者が初心者向けにフランス語やフランスの文化を説明する。すでにフランス語を数年学んでいる僕にとってもいくつか新しい発見があった。
フランス語の数字の読み方は非常に特殊だが、改めて本書でおさらいさせてもらった。

マドモアゼルというフランス語では誰でも一度は聞いたことがある単語が、今は使われなくなったというのを知らなかった。また日本語の「だよね」や英語の「don’t you?」のような使い方ができるフランス語、heinの使い方も本書を読んで初めて知った。このような単語は普通に文法書を読んでいるだけでは気づけないのでありがたい。

PACSという結婚に代わる制度や、恋人との付き合い方の考え方など日本とは異なる文化も紹介されており楽しめた。もう少し細かく調べて知りたいと思った。

著者のYouTubeでもぜひ見てみたいと思った。改めてフランス語学習のモチベーションを高めてもらった。

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「限界を越えるピアノ演奏法」川上昌裕

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
音楽家であり指導者でもある著者がピアノの学び方について語る。

大人の趣味としてピアノを練習している中で、ピアノに関する視点を少しでも多く取り入れられればと思い本書を手に取った。

読み始めて気づいたのだが、著者は盲目のピアニストとして有名な辻井伸行氏を指導した先生でもあるという事で、辻井伸行氏とのエピソードも含まれている。そんほかにもピアノ学習方法や、さまざまなジャンルの音楽を身につけるための考え方などを語っている。そのいくつかは他の分野の上達にも適応できそうなものである。

特に

  • インプットとアウトプットのバランス
  • クリエイティブとはゼロから作り出すことではない

の章などはデザイナー視点からも大いに共感できる。

残念ながら、タイトルにある限界を超えるピアノの演奏法らしきものは一切書いてなかった。ピアノの演奏を必ずしも知りたくて本書に辿り着いたわけではないが、いいことを語っている部分もあるだけに、商業主義のなかで内容と一致しないタイトルをつけている点が残念である。

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「スモールワールズ」一穂ミキ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第43回吉川英治文学新人賞受賞作品。6つの物語を収録した短編集である。

短編集というと作者にとって実験的な物語も多く、なかなか全体として印象に残りにくいのだが、本作品は3編ほど印象に残る作品があり、短編集としてはかなり打率が高い。特に2作品目の「魔王の帰還」、そして最後の2作品「愛を適量」「式日」である。

いずれの物語も、家族に問題を抱えている人々の揺れ動く心情を描いている。何が正しくて何が正しくないのか、そんな答えのない出来事に度々遭遇する。そんな人生のやりきれなさを存分に味わわせてくれる。

一穂ミキという著者に触れるのは今回が初めてだが、長編などにも触れたいと思った。

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「空の模様の描き方」クメキ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Clip Studio Paintでよる空をメインとした5つの絵の描き方を解説している。

晴天の空、夕焼けの空、星空、雨天の空など5つの絵をラフ作成から順を追って詳細に解説しているので、非常にわかりやすく、また絵を描くためのアイデアとしても刺激になった。

本書は基本的にはClip Studio Paint(以下クリスタ)による操作を解説しているが、Procreate、Photoshopさらにいえば実際のアナログ絵画にも十分応用可能である。

改めて空と雲のレイヤーを分けることは効率よく絵画作成を進める上で重要だと思ったし、筆者が多用しているメッシュ変形による空の効果はぜひ取り入れてみたいと思った。

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「塞王の楯」今村翔吾

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第166回直木賞受賞作品。戦国時代の戦乱の中、親を失い、石垣造りを生業とする飛田屋の頭源斎(げんさい)に拾われた匡介(きょうすけ)が飛田屋の頭として成長していく様子を描く。

何よりもまず、石垣造りという職業に魅了される。戦乱の時代だからこそニーズがあったその職業と、石を積むという作業の深さを味わえる。石垣造り職人は、積方、山方、荷方の3つに分けられ、それぞれ、石を積む人、切り出す人、運ぶ人としてそれぞれの分野で技術を磨き、共同して石垣造りをするのである。

豊臣家によって世の平穏が訪れ、戦国時代の終わりを感じさせる中、源斎(げんさい)がその立場を匡介(きょうすけ)に譲りわたしていく過程を描く。飛田屋の家に生まれながらも匡介(きょうすけ)に立場を譲った玲次(れいじ)の存在も面白い。匡介(きょうすけ)と玲次(れいじ)は互いの技術を尊重しながら共に飛田屋に尽くすのである。

物語は大津城の城主、京極家からの依頼によって大津城と京極家と飛田屋は関わっていくこととなる。また、鉄砲作りの彦九郎(ひこくろう)の存在も物語を面白くしている。石垣造りに飛田屋が頑丈な石垣を作ることで世の中の平和に貢献できると信じる一方、鉄砲造りに賭ける彦九郎(ひこくろう)は、強い武器をつくってこそ、人は戦いをやめると信じている点が面白い。

物語はやがて大津城を舞台に東西の決戦の時を迎える。そしてそこは、石垣、鉄砲と手段は異なれど自分達の仕事を通じて平和な世界を作ろうとする匡介(きょうすけ)と彦九郎(ひこくろう)の一騎討ちの場ともなるのである。

非常に楽しめた。現代は失われた石垣造りや鉄砲造りという職業を、当時の人々の葛藤を巧みに絡めて素敵な物語に仕上げている。

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