とにかくおすすめ

ジャンル関係なくオススメを知りたい人向け

とにかく面白い

ページをめくる手が止まらない、寝る時間さえ惜しくなる最高のエンターテイメント

泣ける本

思いっきり泣きたい人向け

優しい気持ちになれる本

悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

深い物語

いろいろ考えさせられる、深い物語

生き方を考える

人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「そして、バトンは渡された」瀬尾まいこ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2019年本屋大賞受賞作品。

3人の父、2人の母のなかで高校生になるまでにたびたび家族の形がかわるなかでいきてきた優子(ゆうこ)の物語。

父と母がたくさんいることをわかりながらも、優子(ゆうこ)の高校生活を中心に物語は進んでいく。そして、少しずつではあるが過去の父や母との出会いや別れが明らかになっていくのである。そんななかでも印象的なのは2番目の母で、自由奔放に生きる梨花(りか)の生き方、そして3番目の父、人のために生きることに生きがいをかじる森宮(もりみや)の姿だろう。

自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日が、やってくるんだって。親になるって、未来がに倍以上になることだよって
自分じゃない誰かのために毎日を費やすのって、こんなに意味をもたらしてくれるものなんだって知った

誰もが若い時は自分のために、そして年齢を重ねて、子供が生まれたり、自分の余生が短くなっていくに従って人のために生きるようになるが、その重視する比率や、変わっていくタイミングは人によって異なる。今回は早くして人のために生きるたくさんの人たちを描いている。この優しい世界にぜひ浸ってほしい。

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「越前敏弥の日本人なら必ず悪役する英文」越前敏弥

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本人なら必ず誤訳する英文」の続編である。ダ・ヴィンチ・コードなどの作品の翻訳家である著者が翻訳が難しい英文を例にその翻訳の考え方を語る。

前作が意味の捉え方に焦点をあてているのに対して、本書は美しい日本語に変換することに焦点をあてている。僕自身それなりに英語は勉強してきたつもりだが、本書で例としてあげられる誤訳しやすい英文の罠にことごとく引っかかってしまった。その過程で著者の考え方を説明しているが、それを読むと、ただただ翻訳者の考えの深さに驚かされるばかりである。英語のや英語圏の文化だけではなく日本語の言い回しや、言葉の正確な意味についても知らなければならないのである。

そんななかでも、圧倒されたのがこちらの英文。プロ野球のキャッチャーについて語った言葉の最後である。

Too bad he couldn't hit his weight.

どうだろう。こちらは

打率が体重に負けたのは残念だった。

という意味だという。アメリカだと体重も打率と同じように3桁の数字で表される(200ポンド)ので、例えば2割も打てない、という意味なのだ。アメリカの文化を知っていなければまず翻訳できない文である。

後半は、実際のダ・ヴィンチ・コードの翻訳文を、著者の授業を受けた生徒の訳と著者自身の訳を比較しながらそれぞれのポイントを解説している。この辺までくるともはやただの英語学習者には必要のない内容ではあるが、翻訳の深みが感じられるだろう。合間に著者が翻訳者として生計を立てるまでのエピソードも挟まれていて、そちらも面白い。少し英語ができるからと言って翻訳者を目指すという考え方ではとてもついていけない世界だと知った。

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「The Serialist」David Gordon

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2012年このミステリーがすごい!海外編第1位作品。

Harryは、ポルノ小説家でありゴーストライターでもある。さらに時には偽名を語り、SFから吸血鬼まで様々なジャンルを書く売れない小説家なのである。ある日、過去に3人の女性を殺して現在死刑間近の犯罪者Darian Clayから仕事を依頼される。それは彼に手紙を送ってくる女性たちにインタビューしてほしいというものだった。

Harryが売れない小説家であるために、会う人会う人に小説家として尊敬されるどころかむしろ見下されているところが全体を面白くさせているのだろう。その筆頭はHarryのアシスタント兼マネージャー的な役割を担う、高校生のClaireである。元々は彼女の論文を書くバイトをしていたことから知り合ったのが今ではパートナーとして毎日一緒に過ごしているのである。序盤はそんな小説家として日常を面白く描いている。

やがて、HarryはDarian Clayに関わり、それによって、事件の被害者の家族や弁護士や、警察官との関わるようになる。Clayの要望通りに、Clayにファンレターを送ってくる人にインタビューを進める中で、さらに大きな事件に巻き込まれていくのである。

偽名で出した吸血鬼小説が人気があったり、犯罪者であるDarian Clayの考え方に深い理解を示したりする点が面白い。Harryが書いていると思われるSFや吸血鬼物語が挟み込まれ、それが意外と面白いのである。実際に著者David Gordon自身も本作品以外にあまりヒット作と呼べるものがなく、主人公であるHarryに自分自身を重ねているのではないだろうか。そして、そんな自分自身からヒントを得て描いたリアルな二流小説家の表紙が本作品の最高の魅力と言えるだろう。

「銀河鉄道の父」門井慶喜

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第158回直木三十五賞受賞作品。

質屋の家に育った宮沢政次郎(みやざわまさじろう)に長男が生まれ、賢治(けんじ)と名付けらて自由奔放に育っていく。宮沢賢治の一生を父政次郎(まさじろう)の目線で描く。

やがて宮沢家には賢治(けんじ)のあとにも、トシ、クニ、シゲ、清六という子供達が生まれ、政次郎(まさじろう)は質屋を営みながら、子どもたちの人生を支えていくのである。子どもたちが大きくなるにつれて、「質屋に学問はいらない」と進学を拒んでいた政次郎(まさじろう)が大きな時代の変化や、子供達の強い気持ちに触れて、考え方を変えていく様子が印象的である。いつの時代も父親というのは、自分の歩んできた道の正しさと、自分を越えていってほしいという願いの間で揺れ動きながら子供に接するのだろう。

そんななか、賢治(けんじ)は、優秀な成績で進学をしながらも、いつまでたっても現実的な安定した仕事に就けずにいた。やがて、妹トシの強い勧めもあって、賢治(けんじ)は童話を書くことに目覚めていくのだ。

宮沢賢治(みやざわけんじ)といえば、どこか不思議な物語や詩の印象しかなく、その人生がどのようなものだったかなど考えたこともなかった。しかし、本書を読むと、人生のなかでいろんなことに悔やみ、悩み、生きてきた人間だから作れた物語なんだと感じた。そして、その物語や詩は、周囲の人に助けれながらようやく世に出たもので、どこか少しでも違った方向に動いていたら世に出なかったのだと知った。

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「夢をかなえるゾウ」水野敬也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
朝起きると目の前にガネーシャがいた。自ら神と名乗る、ガネーシャは夢をかなえるための課題を出していくのである。

主人公の「僕」とガネーシャがコミカルなやり取りをしながら、夢を叶えるために必要な課題を出し、それを受け入れていく様子が描かれている。それぞれの課題の有効性は、人によって意見が分かれるかもしれないが、大事とも思えるもので、間に少しずつニュートンやビル・ゲイツなど有名人の行動や心がけなども引用される点が面白い。

  • 靴をみがく
  • コンビニでお釣りを募金する
  • 食事を腹八分におさえる
  • 人が欲しがっているものを先取りする
  • 会った人を笑わせる
  • トイレ掃除をする
  • まっすぐ帰宅する
  • その日頑張れた自分をホメる
  • 一日なにかをやめてみる
  • 決めたことを続けるための環境を作る
  • 毎朝、全身鏡を見て身なりを整える
  • 自分が一番得意なことを人に聞く
  • 自分の苦手なことを人に聞く
  • 夢を楽しく想像する
  • 運がよいと口に出して言う
  • ただでもらう
  • 明日の準備をする
  • 身近にいる一番大事な人を喜ばせる
  • 誰か一人のいいところを見つけてホメる
  • 人の長所を盗む
  • 求人情報誌を見る
  • お参りに行く
  • 人気店に入り、人気の理由を観察する
  • プレゼントをして驚かせる

なんか被っている課題もあるような気がして、そのユルさが本書のいいところなのかもしれない。周囲の人の大切さと、人に感謝したり、人を喜ばせることの大切さが繰り返し強調されている。

  • やらずに後悔していることを今日から始める
  • サービスとして夢を語る
  • 人の成功をサポートする
  • 応募する
  • 毎日、感謝する

内容としては、どちらかというと自己啓発本のような固い伝えられ方をすることが多い中、小説形式で面白おかしく伝えてくれる点が新しい。人生で迷ったりしている人にはちょうどいいのではないだろうか。迷っているときだからこそ本書のように楽しく教えてくれるのがいいだろう。「会った人を笑わせる」や「応募する」「人の成功をサポートする」は今日からぜひやってみたいと思った。

【楽天ブックス】「夢をかなえるゾウ」

「文法のおさらいでお悩み解消!スッキリ文章術」時田昌

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
30年以上新聞社で校閲業務に関わってきた著者が読みやすい文章を書くための文章術を語る。

仕事で人の書いた原稿を受け取る機会があり、その文章の不自然さを感じながらも改善の仕方を感覚的にしか説明できず、良い文を書くためのルールを説明できるようになりたいと思い、本書にたどり着いた。

本書では、さまざまな読みにくい例を挙げて、その文を読みやすくする方法をいくつかのポイントを交えながら解説しており、僕自身日本語は結構自信があったのだが、いくつかの項目で、まだまだ曖昧にしていることが多くあることに気づかされた。

意外とやりがちだとおもったのは「述語にかかる品詞はそろえる」という考え方である。

明日の会議の目的は、新会員の紹介と、来年度予算を審議します。

明日の会議の目的は、新会員の紹介と、来年度予算の審議です。

彼の短所は、マナーや常識に欠ける。

彼の短所は、マナーや常識に欠けるところだ。

また、修飾の順序についても次のように説明している。

「句は前、詞は後」、「長い修飾語は前、短い修飾語は後」

普段不自然さを感じて改善しているだろうことだが、「なぜ?」と聞かれると答えられない。このようにはっきりと言語化してくれる点がありがたい。

そして、もっとも仕事のなかでよく見ると思うのが「敬語連結」と表現されるもの

話題のテレビドラマ、ご覧になっていらっしゃいますか?

話題のテレビドラマ、ご覧になっていますか?

尊敬語の「ご〜になる」の形と「いらっしゃる」の形を連結させた、敬意の過剰表現として避けたほうがいいと説明している。

普段外国語の勉強ばかりであまり日本語へ注意が行かないが、こうして改めて見てみるとまだまだ伸びしろがあることに気づかされる。

【楽天ブックス】「文法のおさらいでお悩み解消!スッキリ文章術」

「ファーストラヴ」島本理生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第159回直木三十五賞受賞作品。

父親を殺した大学生の聖山環菜(ひじりやまかんな)の手記を書くために臨床心理士の真壁由紀(まかべゆき)は、弁護士の迦葉(かしょう)とともにその動機を探る。

少しずつ心を開いていく環菜(かんな)の証言からその異質な、交友関係や家庭環境、そして環菜(かんな)の心の傷が浮かび上がっていく。また、真壁由紀(まかべゆき)自身も、過去に辛い体験をしていて、物語が進むにしたがって、由紀(ゆき)と迦葉(かしょう)の過去の関係が明らかになっていく。

ちいさな習慣が積み重なって、心の中で消えない大きな傷に発展し、ときにそれが大きな事件につながるのである。そんな悲しい物語ではあるが、ラストで環菜(かんな)のしっかりとした考え方が見えるのが救いである。

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「人を操る禁断の文章術」メンタリストDaigo

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
メンタリストDaigoが文章術を説く。

メンタリストDaigoがライターとしてどれほど実績があるのかはわからないが、文章の能力の向上は常に必要なのでコピーライティングの本を漁っていたところ本書にたどり着いた。

もっとも印象的だったのは最初に、文章の力を端的に表現した言葉である。

誰もが納得の美女を作り出すには、文章を使って想像させるしかない。つまり、世界最高の美女をつくれるのは文章だけなのです。

これは本当に小説を読んでいていつも思うことで、小説で「美女」とか「美人」と言われると、それはまぎれもなく美しいのである。そして、ドラマ化等されるとだいたいイメージが違うことにがっかりするのである。

本書ではそのほかにもいい文章を書くためコツをわかりやすくまとめている。例えば「書かない3原則」として次の3つを挙げている。

1.あれこれ書かない
2.きれいに書かない
3.自分で書かない

何よりも人を操ることに重点を置く本書では、人を動かす7つの引き金を次のように説明している。

1.興味
2.ホンネとタテマエ
3.悩み
4.ソン・トク
5.みんな一緒
6.認められたい
7.あなただけの

行動デザインの考え方と共通する部分があり、何事にも共通するのだと感じた。若干コピーライティングの参考書としては不足があるが、毎日の文章のなかになにかしらプラスの変化を与えてくれるかもしれない。

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「The Sense of an Ending」Julian Barnes

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2011年ブッカー賞受賞作品。イギリス青年だったAnthony Websterの一生を描いた作品。

学生時代に仲のよかったAnthony, Colin, Alex, Adrianの4人組の中で特に頭が良かったのはAdrian Finnである。やがて4人は生涯続く友情を約束しながらも別々の道へ進み、Adrianはその頭脳を活かしてケンブリッジ大学へ進学し、Anthonyの元恋人Veronicaと付き合うこととなるのである。自分の元恋人と親友であるAnthonyが付き合うことに複雑な思いを抱きいていたAnthonyだが、やがてAdrianが自殺したという連絡が届くのだ。

自分たちのヒーローだったAdrianがどうして命を絶ったのか、そんな想いにかられながらも人生は進む。Margaretという妻と結婚して、Susanという娘が生み、やがてMargaretとも良い関係を保ちながらも離婚することとなる。そして離婚して数年経った後、1度しか会ったことのないVeronicaの母からAnthonyに向けて遺産が残されていることから、もう一度40年前の出来と後を考え始め、少しずつその真実に近づいていくのである。

Anthonyの若い時代からは、文学と音楽をエンターテイメントにそこに情熱を注ぐ、60年代のイギリスの男性の生き方が見えてくる。Anthonyの人生をゆっくり描くのかと思ったが、物語中盤ですでに人生の晩年の離婚した状態で、後半はゆっくり人生を振り返り過去のVeronicaやAdrianに思いを巡らす部分に多くページを割いている。人生の晩年を迎え、すでに自分の人生の大きなイベントは終わってしまったAnthonyが、過去を振り返り、人生をより良いものにしようと奮闘する姿が印象的である。

「私が殺した少女」原尞

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
第102回直木三十五賞受賞作品。

私立探偵の沢崎(さわざき)は電話で依頼を受けてある家を訪問したところ、誘拐事件の犯人として警察に拘束される。やがて、犯人からの要求と、被害者の父親の要望によって身代金の受け渡しを担うこととなる。

すでに出版から30年以上経過している作品ではあるが、過去の直木賞作品を漁っているなかで本書にたどり着いた。探偵を主人公としていたり、誘拐や身代金という言葉が飛び交うあたりに時代を感じる。

身代金は運ぶことからやがて事件にどっぷり浸かることとなり、警察と並行して真実を暴こうとしていく。そんななか少しずつ被害者の家庭の複雑な事情や人間関係が見えてくる。

全体的に物語がゆっくり進むのはこの著者のスタイルなのだろう。個人的には著者特有の凝った言い回しが気になるが、この辺は読者によって好き嫌いが別れるかもしれない。主人公も含め淡々と描くのではなく、もう少し感情が描かれていたら面白くなるのではないかと感じた。

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「けっきょく、よはく。 余白を活かしたデザインレイアウトの本」ingectar-e

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デザイン事務所が余白を活かして洗練されたデザインを作る方法を語る。

様々なデザインテイストをテーマに、初心者がやりがちなNGデザインと、上級者がやる余白を活かしたOKデザインを掲載し、それぞれのポイントを解説している。

本書のようにNGデザインとOKデザインを掲載したデザイン書籍は多数世の中にあるが、どの本においても、NGデザインはNGとはいえデザインとしてひどすぎたり、OKデザインにもツッコミどころ満載だったりすることがある。本書もその点では例外ではない。同時に、わざわざ意図してNGデザインを作らなければならないという、このような本を作ることの難しさを感じた。

デザインを長年やっている人にはあまり参考になる部分がないかもしれないが、5年程度までのデザイナーには学ぶ部分があるだろう。個人的にもっともありがたかったのは、使い勝手の良さそうな英文フォント等を紹介してくれている点である。いずれもAdobe Typekitで使用できるということなので、ぜひフォント名からイメージが湧くようにして、必要なときに使えるようにしたいと思った。

  • Adorn Engraved Regular
  • Province Sans Pro Regular
  • Boucherie Cursive Regular
  • Mrs Eaves All Petite Caps
  • AnnabelleJF Regular
  • Jay Gothic URW Bold
  • ScriptoramaJF Tradeshow
  • AdageScriptJS Regular
  • Serifa Bold
  • Casablanca URW light
  • Grafolita Script Regular
  • Adorn Serif Regular

【楽天ブックス】「けっきょく、よはく。 余白を活かしたデザインレイアウトの本」

「涙香迷宮」竹本健治

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2017年このミステリーがすごい!国内編第1位作品。

黒岩涙香の隠れ家が見つかったことから、暗号マニアや航路位悪いこう研究家など、各方面の専門家とともに牧場智久(まきばともひさ)はその隠れ家の調査に参加することとなる。

黒岩涙香という人物も、名前を聞いたことがある程度で、その経歴はほとんんど知らなかった。しかし、五目並べを体系化して連珠を作成したり、多数の小説を描いたり偉大な人物であったということがわかる。

どれほどの人が知っているのかはわからないが、「いろはと」は「いろはにほへと」で始まる有名な句に代表されるように、日本語の48文字を重複なく使って意味のある文章を作るというものである。本書の目玉は、黒岩涙香の隠れ家で見つかった48のいろはであり、本書がどこまでフィクションなのだかわからないが、この48のいろはをすべて著者が考えたのだとしたら驚くべきことである。

物語は、黒岩涙香のいろはの謎を説くなかで、参加者の一人が毒殺されたことから、謎解きとともに犯人さがしの様相も呈してくるが、あくまでも謎解きがメインだろう。

いろは、連珠など新しい知識を与えてくれるとともに、好奇心を大いに刺激してくれる作品である。著者、竹本健治の作品は本書が初めてだが、本書に含まれるいろはからもわかるように、日本語に対して深い知識と優れた感覚を持っているのは間違いないだろう。

本書は、同じ主人公である牧場智久を主人公としたシリーズの一つということで、他の作品もぜひ読んでみたいと思った。きっと同じような言葉の不思議な世界を味わえることだろう。

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「GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代」アダム・グラント

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
人に惜しみなく与える人をギバー、自分の利益を優先させる人をテイカー、損得のバランスを考える人をマッチャーという。様々な事例を交えながら3つのタイプの人間と成功するための心がけを説明する。

ギバーの生き方が豊かな人生を送れることは誰もが予想することだろう本書でも基本的にギバーを推奨する点は特に驚くべきことではないが、面白いのは、どんな分野でももっとも成功している人はギバーだが、一方でもっとも劣っている人もギバーなのだという。

したがって、本書のテーマは、つまり、気遣いが報われるギバーと、人に利用されるだけのギバーが存在するということである。本書のテーマはそんな2つのギバーの違いを見極めることである。

成功するギバーになるために必要なことは、「自己犠牲的」になるのではなく、自己の利益と他者の利益の二つを同時に目指す「他社志向的」な生き方をする必要があるということである。相手に同情しすぎてただ利用されるだけで終わる人も多いという。本書では、テイカーと付き合うときはマッチャーになるように努めることを勧めている。

テイカーを相手にするときは、自衛のために、マッチャーになるのがいい。ただし、三回に一回はギバーに戻って、テイカーに名誉挽回のチャンスを与える。

僕自身は他社志向のギバーなのかもしれないが、もっとギバーになるための指針があふれていた。また、僕の周りにも利用されるだけのギバーがたくさんいるので、彼らにもぜひ読んでほしいと思った。

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「一億円のさようなら」白石一文

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
50歳を超えた鉄平(てっぺい)はある日、長年連れ添った妻が20歳のときに34億円の遺産を受け取っていたことを知る。妻の大きな秘密を知ってしまったことで鉄平(てっぺい)の人生は動いていく。

なによりもこの34億円という一生遊んで暮らせるだけのお金がいきなり目の前に現れた、という設定が面白い。秘密を知られたことを知った、妻の夏代(なつよ)は鉄平にお金のことを黙っていた理由を告げるのである。過去には経済的な理由で断念したこといくつかあったために、鉄平はその考え方理解できないのだ。

個人的には、夏代(なつよ)の考えは理解できる。お金があるからこそわかる悩みというのがあるのだろう。

こんなお金があったら、これからの自分の人生は何をしても本気になれないし、楽しくもないし、きっと誰のことも信用できなうなるだろうって。・・・こんなお金は最初からなかったことにするしかないんだって。

やがてお金の力を理解してほしいということで夏代(なつよ)は鉄平に1億円をわたして自由に使うように言うのである。人は、お金の悩みがなくなったゆえに人生で本当に大切なものを人は探し出すのだろう。鉄平(てっぺい)も心機一転これまでやりたくてできなかったことに挑戦していくのである。

鉄平(てっぺい)の会社の権力争い、妻の夏代(なつよ)との関係、新たな道へ進もうとする子供達、学生時代のエピソードを描いており、舞台も福岡を中心に、鹿児島、長崎、金沢を舞台にその人生を描く。50歳を超えても人生は気持ち次第でいくらでも楽しくできるのだと教えてくれる一冊。

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「Post Mortem」Patricia Cornwell

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
1991年エドガー処女長編賞受賞作品。バージニア州リッチモンドで発生する女性を狙った連続殺人鬼Stranglerの事件を解決するため検死官であるKay Scarpettaが真実に迫っていく。

すでに発行から30年が経っているので、描かれる捜査環境などは違うのだろうが、物語の面白さはまったく損なわれていない。少しずつ犯人に迫っていく点は予想通りであるが、面白いのはKayとその周囲の人との人間関係だろう。その筆頭は、Kayの家に頻繁に訪れる姪のLucyである。Kayの妹で母であるDrothyが頻繁に家を留守にすることからKayの家をたびたび訪れ親しくなったLucyだが、幼いながらもIQの高い彼女は、やがて事件解決のカギとなる行動をする。また、頼れる刑事だが、どこかぶっきらぼうなMarinoとのやりとりも面白い。そして犬猿のなかだった新聞記者のAbby Turnbullとも、Abbyの妹が殺人鬼の犠牲者となったことにより、すこしずつ近づいていき犯人逮捕のために協力しあうようになる

そんななか印象的だったのは犯人逮捕のために、被害者の共通点を探しすために、黒人の被害者であるCecile Tylerの妹と電話で話すシーンだろう。

「お姉さんもあなたみたいに話すのですか?」
「そうです。それが教育ってもんですよね。私たち黒人だって白人みたいに話しますよ」

白人と黒人で話し方にそれほど違いがあることを意識してこなかったので、話し方でそれを判断するのが普通だということに驚かされた。日本という民族の混ざりの少ない場所で生きている限りわからないことなのだろう。とはいえ繰り返しになるが本書がかかれてもう30年が経っているので、この辺の教育の偏りも解消されてきているのかもしれない。

そんな時代の変化もシリーズを読めばわかるのではないかと思った。続編も引き続き読んでいきたい。

「稼げる講師、稼げない講師 どこが違うか」五十嵐康雄

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
研修講師として全国で活躍する著者が、すぐれた講師になるための考え方を語る。

僕自身もZoom経由でデザインを人に教えるようになり、現在のやり方で特に不足を感じているわけではないが、さらに進化できる方法があるのなら取り入れたいと思い、本書にたどりついた。「稼げる講師は」と「稼げない講師は」で退避して説明しているので非常に読みやすく、目次を読めばだいたい言いたいことはわかるのではないだろうか。お金儲けだけが目当てというわけではないが、受講してくれる人に少しでも喜んでもらえるために、不快な思いをさせないために、どのようなこころがけをすべきかいくつかヒントとなることに出会うことができた。

その中でも自分自身も心がけたいと思ったことが次のことである。

  • 稼げる講師は「答え」にたどり着くプロセスを話し、稼げない講師は「答え」だけを教える
  • 稼げる講師はゆずれないことを盛り込んだ契約書をつくり、稼げない講師はお客様の要望通りの契約書をつくる
  • 稼げる講師は会場を動き回って話し、稼げない講師は演台の前から動かずに話す
  • 稼げる講師は受講者の間違えをきちんと指摘し、稼げない講師は受講者の間違えいを指摘しない
  • 稼げる講師は受講者と対話をし、稼げない講師は受講者に一方的に説明する

結局大事なのは、お金を設けることではなく、受講者の成長を助けることなのだと再認識させてもらった。

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「キョウカンカク」天祢涼

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第43回メフィスト賞受賞作品。女性を無差別に殺して、その死体を焼くという手口で殺人を繰り返すフレイムの事件を解決するために、音を見ることができる共感覚を持つ音宮美夜(おとみやみや)が捜査に乗り出す。

先日読んだ「希望が死んだ夜に」が比較的良かったので、著者の過去の作品を探して本書にたどりついた。

共感覚という事象はすでに一般的に知られるようになったとはいえ、本書のように共感覚を扱った物語は珍しいだろう。フレイムに幼馴染を殺された失意の高校生山紫郎(さんしろう)が、音宮美夜(おとみやみや)と相互の利益のために共に行動することとなり、フレイムに近づいていくのである。

物語の展開として面白いのは、序盤でその人物の発する声の色から、容疑者を絞り込んだことである。その容疑者とは山紫郎(さんしろう)の幼馴染である神崎玲(かんざきれい)であるが動機がない。さまざまな可能性も考慮しながら犯人を絞り込んでいく。本当に神崎玲(かんざきれい)が犯人なのか、それとも共感覚に振り回されて真犯人を見逃しているのか。

音宮美夜(おとみやみや)を主人公とした続編がいくらでも作れそうな感じで気楽に楽しめる一冊。

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「それまでの明日」原寮

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2019年このミステリーがすごい!国内編第1位作品。このミステリーがすごい!の過去の作品を漁っていて本書にたどり着いた。

銀行の支店長を望月皓一(もちづきこういち)という紳士から、赤坂の料亭の女将の私生活を調査するように依頼された沢崎(さわざき)は、その調査の過程で銀行強盗に巻き込まれることとなる。

調査を開始してすぐに沢崎(さわざき)は調査対象である料亭の女将が半年ほど前に亡くなっていることを知る。そして、依頼人である支店長の望月皓一(もちづきこういち)も失踪したことから、沢崎(さわざき)の目的は望月(もちづき)の居場所を突き止めることへとシフトしていく。やがてその捜査は暴力団同士の抗争へとつながっていく。

銀行強盗や、調査対象の料亭の女将という題材がどこか古臭さを感じる。退屈したわけではないが、特に新しさを感じるところはなかった。、どうやら本書には過去の同じ探偵沢崎(さわざき)を主人公とする物語が別にあるようだ。おそらく直木賞受賞作品「私が殺した少女」がそれにあたるのだろう。そちらを先に読んだ方が全体の流れが掴めたり、ひょっとしたら本書ももっと面白く感じたかもしれない。

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「ザ・ゴール 企業の究極の目的とは何か」エリヤフ・ゴールドラット

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
製品の制作工場の改善を中心に、企業の目的に対してどのように生産性を上げるかを、物語形式で説明する。有名な本であり以前読もうと思ったが時間がなくてできなかったためようやくこのタイミングで読むことができた。

物語、出荷遅れなどのトラブルの絶えない工場長であるアレックスが、成果が上がらなければ3ヶ月で閉鎖されることを告げられ、追い詰められたアレックスが、物理の教授であるジョナ先生に助言を求めることからから始まる。そこからジョナはこれまでの工場に置ける既成概念というものを一つずつひっくり返していくのだ。

ジョナが言うには大事なのは、

  • スループット
  • 在庫
  • 作業経費

という3つを重視することである。そして、それを向上させるために

  • 従属事象
  • 統計的変動

ということを考えなければならないのである。

結果を言ってしまえば、工場の生産性は、ボトルネックに依存するということである。ボトルネックを最大稼働させて、極力ボトルネックに無駄な仕事をさせないことが、生産性向上の鍵となるのである。アレックスは工場長としてジョナの助けを借りながら、見事に工場を再生していくのである。

物語としても面白いが、本書は生産管理ソフトの発売物とである会社の社員が、もっと広くこの手法やソフトを知ってもらうために書いたというのだから面白い。何かを知ってもらうためには、ビジネス本のような体裁だけでなく小説という形もありえるのだと再認識させてもらった。

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「Still Life」Louise Penny

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2006年アーサー・エリス賞、ジョン・クリーシー・ダガー賞、2007年アンソニー新人賞、バリー新人賞、ディリス賞受賞作品。

先日読んだ、「All the Devils are Here」が実はArmand Gamacheシリーズの第16作品めということで、最初から読もうと、シリーズ最初の作品である本書にたどり着いた。

カナダケベック州のスリーパインズという田舎町で、年配女性Janeが自ら描いた絵画を初めて町の展覧会に出品した数日後弓矢が当たって亡くなった。Janeは周囲の人から好かれていたが、誰もJaneの自宅の二階に入ったことがないという。Janeにはどのような秘密があったのか、またその秘密は事件と関係があるのか、警察官のArmand GamacheとJean-Guy Beauvoirは見習いのNicholとともにThree Pinesで真実の解明に乗り出す。

田舎町ゆえに、そこに住んでいる人の背景も様々である。Gamacheが少しずつ人々から話を聞く中で、殺害されたJaneの背景と、凶器として使用された弓の存在が明らかになる。事件解決と並行して、警察官として未熟で失敗をしがちのNicholにいろんな振る舞いを諭すシーンが興味深い。続くシリーズでもNicholとGamacheとの師弟関係が見れるなら楽しみである。また、カナダというと英語圏のイメージがあるが、ケベック州はフランス語を公用語とする土地で、英語ネイティブに対する差別が存在していることは本書を読んで始めた知った。

やがて、物語は過去の町の人々の過去の行いまで明らかにしていくこととなる。Janeの過去と誰も足を踏み入れたことのない家の二階の様子が明らかになり、真犯人の解明につながっていく。

絵画と弓矢を絡めた物語。シリーズものは第1作品目が良いものであることが多いが、このシリーズもそれがあてはまるようだ。第1作と第16作を読了したという妙な状態になってしまったが、間を埋める残りの作品も少しずつ読み進めたいと思った。