とにかくおすすめ

ジャンル関係なくオススメを知りたい人向け

とにかく面白い

ページをめくる手が止まらない、寝る時間さえ惜しくなる最高のエンターテイメント

泣ける本

思いっきり泣きたい人向け

優しい気持ちになれる本

悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

深い物語

いろいろ考えさせられる、深い物語

生き方を考える

人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「本屋さんのダイアナ」柚木麻子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
大穴と書いてダイアナと読む。そんな名前にコンプレックスを持つダイアナは本をこよなく愛する。小学校に入り同じように本を愛する彩子(あやこ)と出会う。そんなダイアナと彩子(あやこ)という文学を愛する2人の女性の成長を描く。

豊かな家庭に生まれた彩子(あやこ)とシングルマザーのもとで生きるダイアナを対比し、ダイアナ視点と彩子(あやこ)視点で交互に、小学校低学年、中学校、高校、大学、社会人と成長していく様子を描く。ダイアナは彩子の豊かな家庭と、本への造形の深いその両親がいる家庭に憧れ、また一方で、彩子(あやこ)はダイアナの自由で個性溢れる生き方に憧れているの点が面白い。

やがて、私立の中学校に進学した彩子(あやこ)と地元の中学校に進んだダイアナは違い道を進むこととなる。ダイアナよりも、私立という恵まれた環境におかれながらも、考えや行動に深みのない生徒ばかりに囲まれて悩む彩子(あやこ)がより印象的である。その後、ダイアナは社会人になり、彩子(あやこ)は大学生になる。10年以上隔たっていた2人の人生が再び近づいていくのである。

豊かだからといって幸せなわけでもなく、貧しいからといって不幸でもない。結局は自分の信念とどう向き合い、自分の与えられた環境をどのように楽しみ、活かしていくことだ自分を幸せにするのだ、というメッセージを感じる。うまく行かない人生を環境や人のせいにして諦めている人がいたら、そんな人は本書を読んでもらいたい。前向きな勇気をくれる物語である。

赤毛のアンの話がかなり引用されるため、赤毛のアンというタイトルはものすごい有名だが、読んだことはないので、機会があったら読みたいと思った。

【楽天ブックス】「本屋さんのダイアナ」

「崩れる脳を抱きしめて」知念実希人

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
研修医として配属された神奈川の病院で、碓氷蒼馬(うすいそうま)は豪華な個室で過ごし、残りの命の短い弓狩環(ゆがりたまき)と出会う。

碓氷蒼馬(うすいそうま)は幼い頃に父親が借金を作って失踪したために、お金に強い執着があり必死で勉強し優秀な医者になろうとしている。一方、弓狩(ゆがり)は莫大な遺産を相続したために豪華な個室で過ごすことはできるが、残りの人生に限りがあり、またある不安から外にでることもできないという。やがて蒼馬(そうま)は弓狩(ゆがり)の過ごす病室を勉強部屋として使わせてもらうこととなり、少しずつ胸の内を明かしていくうちに、惹かれていくのである。

物語展開として病気の女性を暑かった物語は多数あり(最近でいうと「君の膵臓を食べたい」、一昔前なら「世界の中心で愛を叫ぶ」)、そういう意味では特別新鮮さは感じなかったが、横浜港のシーンが印象的で弓狩(ゆがり)自身も病室でたくさんの絵を描いていたために、その美しい印象が残った。みなとみらいに久しぶりに行きたくなるだろう。

知念実希人という著者名は最近よく聞くが、本書がその作品に初めて触れる機会となった。もう少し読んでみたいと思った。

【楽天ブックス】「崩れる脳を抱きしめて」

「正しいものを正しくつくる」市谷聡啓

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アジャイルで発生しがちな問題を、どのように解決していくかを書いている。

序盤はアジャイル以前のウォーターフォール型の開発手法についての説明とその限界について説明し、アジャイルの一般的な考え方と流れを説明している。本書を手に取る人の多くはおそらくアジャイル経験者であることを考えると最初の三分の一はほとんど読む必要がないのではないかと思える。

中盤以降はアジャイル開発で起こりがちな課題と、その解消方法について書いている。また、その過程でいくつかのフレームワークを紹介している。ユーザーストーリーマッピングサービスブループリントなどの説明は他にも詳しい書籍があるので特に新鮮さはなかったが、リーンキャンバスを改善したという仮説キャンバス検証キャンバスという筆者オリジナルの手法を紹介しており、機会があれば使ってみたいと思った。リーンキャンバスには目的やビジョンがないので内容がぶれてしまうのだという。

また、仮説検証をわからないことをわかるようにする活動として、3つの種類に分ける考え方は本書で初めて出会った。

  • 課題仮説(本質)
  • ソリューション仮説(実体)
  • インターフェース仮説(形態)

別の言い方をすると、課題仮説とはどんなユーザーストーリーを実現すべきか、ということであり、ソリューション仮説はどんな機能を実装すべきか、そしてインターフェース仮説はどんな見た目にすべきか、ということなのだろう。自分たちがどこまでわかっていてどこまでわかっていないかを明確にするためにこの3種を分けて考え、チーム全体の現在地を共有することは意味があるだろう。

最後に、アジャイル開発をうまく行うためには参加メンバーの視野視座を動かして物事を見ることが重要と説明している。視野を動かすとは、自分、チーム、顧客、ユーザーといった人を軸に自分以外の視野で物事を見ることで、視座を動かすとはプロジェクト、プロダクト、事業、組織、などのように規模を大きくして物事を見つめることである。面白いのは、必ずしも大きな視点で物事をみることが重要と言っているのではなく、様々な視点で物事を見る能力をもっていてそれを状況に応じて使い分けることが重要だとしている。

おそらく著者も同じような書籍を読んできたのだろう。前半はだらだらと別の書籍や記事で詳しく触れられていてすでに一般的になったといえる考え方や、手法について書いており、普段からさまざまな情報に触れている人にとっては特にあたらしさはない。ページを増やすための戦略なのかもしれないが、たくさん書けばたくさん伝わるという考え方はエンジニア出身の著者っぽいなと感じた。言いたいことを絞ればもっと読みやすくわかりやすい本になったのではないかと思う。そういう意味では後半はアジャイルを実践しながらなんども悩み解決策を考えてきた経験からくる内容の濃さを感じた。本書を読み始めて前半で挫折しそうになった人には、後半だけ読むように教えてあげたい。

【楽天ブックス】「正しいものを正しくつくる」

「許されようとは思いません」芦沢央

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
現代の人々を描いた5つの物語。

家族や社会の中で悩みながら生きていく5人を扱っている。特に全体に共通するようなテーマは感じられないし、登場人物もそれぞればらばらである。個人的には最初の「目撃者はいなかった」が一番印象的だった。営業成績がなかなかあがらない若手社員が、自分のミスをかくそうとするなかで少しずつ嘘を重ねていく物語である。

短編集というのはなかなか評価が難しいと感じた。本書のタイトルを耳にしていたから、手に取ったのだが、物語として長く記憶に残るものがあったかというと疑問である。どちらかというとその個性的なタイトルで成功した例のようにも思える。

【楽天ブックス】「許されようとは思いません」

「つまをめとらば」青山文平

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第154回直木三十五賞受賞作品。江戸時代の人々を扱った6編の物語。

江戸時代とは言えすでに戦国の世が遠い昔となり、人々は自分の持っている技術で生きていかなければならない。釣り針や釣竿をつくる釣術師(ちょうじゅつし)や俳諧師(はいかいし)など、現代とは人々から求められる技術も考え方も異なるが、、人として生きていく中で根本となる部分は変わらないのだ。6人の男女の、嫉妬や葛藤や自分のあるべき姿などを考え、悩み生きていく様子が描かれている。いつの時代も人の考えは変わらないのだと気づかされる。

【楽天ブックス】「つまをめとらば」

「屍人荘の殺人」今村昌弘

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2018年このミステリーがすごい!国内編第1位作品。

大学のミステリー愛好会の葉村譲(はむらゆずる)と明智恭介(あけちきょうすけ)が、映画研究会の合宿に参加すると、周囲からゾンビが集まってきた。合宿のメンバーたちは合宿所に立てこもるが、ゾンビの入ってこれないはずの部屋で人が殺される。

ゾンビによるパニックと、古き時代のミステリーを融合させた物語。あくまでもペンションのなかでの事件解決が主軸であり、なぜゾンビが生まれたかと言う点にはほとんど触れられていない。葉村譲(はむらゆずる)と剣崎比留子(けんざきひるこ)が、3フロアのペンションのなかで、少しずつ真実に迫っていく様子がおもしろい。

特に物語時代に、謎の解決以外の深みはない。一昔前のミステリーをゾンビという味付けをして現代版に作り直したような印象である。いくつかの賞を受賞していることから期待度は高かったのだが、残念ながらその期待に沿うほどの内容ではなかった。物語中でも「密室」などの言葉が飛び交うように、昔のミステリーが好きな人は楽しめるのではないだろうか。

【楽天ブックス】「屍人荘の殺人」

「A Fatal Grace」Louise Penny

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
カナダのモントリオールから数時間の田舎町スリーパインズでカーリング観戦中の女性が感電死した。Gamacheは捜査に乗り出す。

Armand Gamacheシリーズの第2弾である。第1弾の「Still Life」でスリーパインズという美しい街を舞台にして魅力的な登場人物が多数出てきて、今回は別の街を舞台に事件が起きるのかと思っていたら、今回も同じ場所で、同じ登場人物にまた出会えたことが嬉しい。GamacheとBeauvoirは、スリーパインズのなかで嫌われていたCCという名の女性がカーリング観戦中に感電死したことで現場に行き、再び前回の事件で知り合った人々の話を聴きながら事件の解決に挑むのである。CCの娘や夫との不思議な関係や、CCの周囲の人に嫌われることを厭わない行動が真実解明の焦点となる。

また、第1弾でその無礼な行動からGamacheに操作のメンバーからはずされたYvette Nicholも今回も登場する。前回の反省から心を入れ替えたというNicholだが、GamacheやBeauvoirは警戒しながら接する。Gamacheの真実を解明するにあたって人の考えに耳を傾ける姿勢が姿勢が印象的である。GamacheはBeauvoirに。どんな殺人やその手法も、一見突飛で衝動的な行動に見えても、犯人にとっては筋の通った理由があるのだと説明するのである。

Gamache、Beauvoir、Nichiol、またスリーパインズの芸術家Claraなども含め、事件解決のなかでそれぞれが人間として成長していく様子が伝わってくる。

「ツバキ文具店」小川糸

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
鎌倉のツバキ文具店のポッポちゃんの生活を描く。

ツバキ文具店は文房具を販売する一方で、代筆屋も兼ねている。代筆とは依頼主に変わって手紙を書くことで、年賀状の宛名を書くこともあれば、離婚報告などを書くこともあり、口コミでその噂を知った人がツバキ店にやってくるのである。序盤はその依頼から手紙を作成するまでの様子を描いており、目的や依頼主の人柄に応じて、紙、字、インク、ときには切ってまで選んで手紙を作成する様子に驚かされるとともに、改めて字や形式の大切さを思い知らされる。

そして、後半は、少しずつ代筆屋のポッポちゃんが、どのような敬意を経て鎌倉の文具店を継ぐことになったのか、先代との角質などに話が及んで行く。また、近所の人々との交流も描かれており、鎌倉という土地の暖かさも感る。きっと本書を読んだ多くの人が、鎌倉に行きたくなるのではないだろうか。

代筆屋という今まで聞いたことない職業を、鎌倉を舞台として暖かく、読みやすい気軽な雰囲気で描きながらも、文字や言葉の対して改めて目を向けさせてくれる、気軽さと深みをバランスよく備えた作品。

【楽天ブックス】「ツバキ文具店」

「お父さんが教える13歳からの金融入門」デヴィッド・ビアンキ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
生きていくためにはお金の知識は避けて通ることはできない。そんなお金について著者が子供に教えるために書いたのが本書である。

子供向けに書かれた内容ではあるが、大人でも知らないようなこともある。何かしら学ぶ部分はあるだろう。金融の最初の一歩として読むといいかもしれない。ただ、残念ながら、すでに株式投資やFXなどを日常的にやっている人にとってはあまり、実戦で役立つような新しい知識は張っていないかもしれない。

【楽天ブックス】「お父さんが教える13歳からの金融入門」

「アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法」秋元雄史

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ビジネス業界においてもアートに注目が集まる中、その考え方を語る。

まずはデザインとアーティストの違いを「解決策」と「問いかけ」と説明した上で、さまざまなアーティストやアートを紹介している。現代のビジネスに役立つとしたら、その常識を打ち破って問いを投げかける完成なのだという。

しかし、著者も「学びに即効性はない」としており、ビジネスにアートが役に立つと言われたから少しかじってみる程度ではまったく役に立たないし、そもそも「アートはビジネスに役に立つ」という考え自体が、現代アートの鑑賞は自らの頭で考えるトレーニングになるという。よく「現代アートはわからない」という人がいるが、著者に言わせれば、わからないからこそ面白いのだという。

なかでも「使用価値」と「交換価値」という考え方で現代アートを理解するという話が印象的であった。使用価値がほとんどないのに交換価値の代表的なものがお金であり、現代アートもまた使用価値がほとんどないにも関わらず、アーティストの著名度によって大きく値段が上がる可能性があるのである。

また、本書のなかではさまざまな現代アートのアーティストたちが紹介されている。それを一つ一つみるのも一つの楽しみになるだろう。章と章の間で、注意書きでそれぞれのアーティストを紹介しているが、特にページを割いて紹介している次のアーティストはしっかりチェックして、アーティスト名から作品がイメージできるようにしておきたい。ダミアン・ハーストの作品などは一度見たら忘れることはないだろう。

全体的に特にアートについて新しい考え方をもたらしてくれた印象はあまりないが、多くのアーティストを知ることができた点がありがたい。

  • ヨーゼフ・ボイス
  • リアム・ギリック
  • リクリット・ティラバーニャ
  • スゥ・ドーホー
  • ジェフ・クーンズ
  • 増田セバスチャン
  • 松山智一
  • 葉山有樹
  • 沖潤子

【楽天ブックス】「アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法」

「Magpie Murders」Anthony Horowitz

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2019年このミステリーがすごい海外編第1位作品。2019年本屋大賞翻訳小説部門受賞作品。

ロンドンで名の知れた名探偵であるPundは助手のFraserと共に、Saxby-on-Avonで起こったSir Magnusの殺人事件の捜査にのりだす。

すでに人生の先が短いことを悟ったPundだが、Saxby-on-Avonからロンドンまでやってきた女性の依頼によって、心を動かされ、Saxby-on-Avonので領主であるSir Magnusが殺害されたことで事件の捜査に乗り出すのである。小さな町故にそれぞれの住人たちの交友関係も狭く、街の人間関係が少しずつ明らかになり、ほとんどすべての人にSir Magnus殺害の動機があることがわかる。

途中まではよくある振り時代の探偵ミステリーという雰囲気だが、後半物語は予想外の方向へ動き出す。細かいことは語ることはできないが、今まで読んだことないほどの斬新さを持っており、2つのミステリーを同時に楽しめたかのような分厚い満足感を感じられるだろう。このミステリーがすごい 海外編第1位も納得である。久しぶりに読書の面白さを感じさせてもらった。多くの読者にこの感覚をぜひ味わってほしい。

「腕のいいデザイナーが必ずやっている仕事のルール125」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
著名なデザイナーの考え方、心がけなどを格言としてまとめている。

僕自身すでにデザイナー歴20年近くになろうとしているが、少しでも学べるものがあれば学びたいと思い、本書を手に取った。文章は少なくて簡単な説明なので、1時間ほどで読めてしまうだろう。個人的に響いたのが次の言葉である。

  • 契約の流れで危険性を測ろう
  • 無駄話で要望を聞き出そう
  • 真似るならコンセプトを真似よ
  • 挨拶もデザイン
  • 仕事を趣味にしない
  • お金の意味を理解しよう

最後の「仕事を趣味にしない」と「お金の意味を理解しよう」はやりがちなことである。イラストを描いていること、デザインをしていることが楽しいから、タダでやってしまう。これは日本では賞賛されるが、海外では正しく値段をつけていない行為とされるのだという。気をつけたい。

【楽天ブックス】「腕のいいデザイナーが必ずやっている仕事のルール125」

「さざなみのよる」木皿泉

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
40代で癌で亡くなったナスミとその死の周囲にいる家族や友人を描く。

夫の日出男(ひでお)、姉の鷹子(たかこ)、妹の月美(つきみ)と、それぞれの視点からナスミの死を描く。40代の死という早すぎるわけでもない、そのやや早めな死に、周囲の人々の捉え方や感じ方もそれぞれである。その視点は、ナスミの幼馴染や、昔の同僚など少しずつ関係の薄い人たちへ移っていくが、少なからずナスミの生き方が影響を与えていることがわかる。

なによりもナスミの死が周囲の人にプラスの影響を与えている点がすごい。誰しも最期はこんな風にありたいと思うだろう。もちろんそれは、死に方よりもそれまでの生き方が何よりも大事なのである。そんな、今日の生き方を考えさせてくれる優しい一冊。

【楽天ブックス】「さざなみのよる」

「海の見える理髪店」萩原浩

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第155回直木三十五賞受賞作品。

家族を描いた6つの短編集。

どれも家族愛を描いた作品ではあるが、個人的に印象的だったのが6番目の「成人式」である。中学生の時に交通事故で亡くなった娘、鈴音(すずね)の代わりに、40を過ぎた両親が成人式に出ようと試みる物語である。娘のためにと思いついた出来事が、娘を失った2人の人生に輝きを与えるのである。

優しい物語ではあるが、自分としては若干物足りない。もう少し年を取ってから読むといいのかもしれない。

【楽天ブックス】「海の見える理髪店」

「スペイン語のしくみ」岡本信輝

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スペイン語の基本を説明している。

スペイン語の勉強を日々しているので、手がかりになるものが少しでもあればと思い、本書を手に取った。

印象としては初心者向けの内容で、僕のように5年以上スペイン語を勉強しているような人にとって新しい内容はほとんどなかった。1点新しく知った点として、形容詞の位置によって意味が変わることがあるというものだ。

amigo viejo 年を取った友達
viejo amigo 古い友達
gran hombre 偉大な男
hombre grande 大きな男

スペイン語学習者であっても、初心に戻るために読むのはいいのかもしれない。

【楽天ブックス】「スペイン語のしくみ」

「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」デイヴィッド・ミーアマン・スコット/ブライアン・ハリガン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ライブ録音を許可し、音楽は無料で聴き放題という手法を40年も前から実践し長く活動してきたバンド、グレイトフル・デッドのマーケティング手法を語る。

40年前のバンドの話でありながらも現在も活かせそうな考え方を多く含んでいる。マーケティングの話やフリーミアムの考え方はすでに世の中にたくさんあるので特に目新しさはなかったが、改めて気をつけたいと思った項目は、

  • 忘れられない名前をつけよう
  • バラエティに富んだチームを作ろう
  • フリーから有料のプレミアムへアップグレードしてもらおう
  • ブランド管理をゆるくしよう

である。

章の合間に、グレイトフル・デッドの手法と比較して、Amazonやグーグルなど現在の成功した企業たちの戦略を紹介している。

全体的に感じたのは、ファンを幸せにすることを最優先にすることが大切だいうことである。何よりも著者の2人がグレイトフル・デッドをどれだけ好きかが伝わってくる。本書を読むと、マーケティングよりもグレイトフル・デッドが知りたくなる。グレイトフル・デッドの曲を聴きたくなる、ライブに行きたくなる。それが本書の狙いなのかもしれない。

【楽天ブックス】「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」

「A Cold Trail」Robert Dugoni

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
シアトルの自宅の建て替えのために故郷のCeder Groveに戻ったTracyは地元の警察署長であるCallowayから1993年になくなったHeather Johansenの殺害事件に関連した未解決の事件の捜査を依頼される。娘のDaniellaのために、誇れる故郷を作ろうとTracyはその真実の解明に乗り出す。

Tracy Crosswhiteシリーズの第7弾である。Danと結婚し娘のDaniellaが生まれた後の最初の物語である。20年以上前に亡くなったHeather Johansenの事件の真実を探っていた記者のKimberlyと元弁護士のMathewが不幸な事故によって相次いで亡くなったのである。事故と片付けるにはあまりにも不可解な死の謎を解くうちにCeder Groveの暗い部分が少しずつ明らかになっていくのである。

序盤は娘を危険に晒すことを不安視して、捜査に参加するTracyに反対するDanだが、少しずつTracyの考え方に理解を示していく。本作品は久しぶりにシアトルではなくCeder Groveを舞台としているため第1弾につづいて、Tracyや妹のSarahの過去とのつながりが描かれる。事件の解明の手がかりを探してSarahの日記を読んだり、捜査のために昔の友人にあったりするのである。昔は若かった友人たちが、40歳を超えてそれぞれ街の中心として生きているというギャップが面白い。ある人は出世しある人は結婚して母となっているのである。明るい未来を語りながらも、やがて平凡な大人へとなっていくのである。

毎回このシリーズには事件解決とは別に、家族や仲間のテーマがあるのが面白い。今回は、娘のDaniellaが生まれたことによる、TracyとDanの生活の変化や考え方の変化が重要なポイントと言えるだろう。DaniellaのベビーシッターとしてTracyの家にやってきたThereseが、アイルランドの文化を持ち込んできた点も面白い。シリーズが進むごとに家族の形態が少しずつ変化しているのも興味深い点だろう。Danilellaが大きくなるに従ってどのような家族になっていくのか注目して続編も読んでいきたい。

2020年のよかった本

2020年に読んだ本は結局111冊(和書98冊洋書13冊)でした。(本ブログのエントリーは106件)。せっかくなので年間の和書フィクションベスト5、和書ノンフィクションベスト5、洋書ベスト3を書こうとと思う。たまたま今年読んだというだけで、発行日などはまったく関係ないが、もしこれから本を選ぶ際の参考にしていただければ嬉しい。

和書フィクション

「盤上の向日葵」柚月裕子

今年は柚月裕子があたりの年、一時期読み漁った柚月裕子だが当たり外れあるとは思っていたが、今年は「慈雨」とともにいい作品に当たった。今年はこの「盤上の向日葵」と塩田武士の「盤上に散る」と2冊の将棋を題材とした真剣師の物語に触れたので将棋の物語の印象が強かった。(もっと読む

「この世の春」宮部みゆき

この辺はもう好みになってしまうんだが、相変わらず宮部みゆきの人の心を描く深さは毎回感嘆する。江戸時代を舞台にしようともその人の描写の深さはからない。(もっと読む

「希望が死んだ夜に」天祢涼

友人を殺した疑惑のある女子中学生を扱った物語。操作にあたる刑事の優しい対応が印象的である。(もっと読む

「涙香迷宮」竹本健治

黒岩涙香を題材とした物語。黒岩涙香という人物の名前自体聞いたことあるかないかという程度だったが、「いろは」や「連珠」という今まで知らなかった文化を教えてくれた。物語自体は単純なミステリーだがそこに登場する題材が面白い。(もっと読む

「淳子のてっぺん」唯川恵

田部井淳子の人生を題材にした物語。登山というのは登頂した本人だけでなく登頂できなかった多くの仲間たちに支えられて実現できるのだというのが伝わってくる。(もっと読む

和書ノンフィクション

「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」 森岡毅、今西聖貴

大きな事業の収益を見積もる方法をわかりやすく丁寧に語っている。P&Gという企業のすごさを感じる。(もっと読む

「マツダがBMWを超える日 クールジャパンからプレミアムジャパン・ブランド戦略へ」山崎明

ブランド戦略を日本のレクサスなどを例にとって悪いブランド戦略と組織の大きな利益となるブランド戦略などを説明している。BMWやポルシェ、フォルクスワーベンなどの優れたブランド戦略がわかるだろう。タイトルにあるマツダについての内容は最後の章だけだという点で、マツダについて読みたくて読んだ人には反感を買うだろうが、わかりやすくまとまっている。(もっと読む

「NETFLIX コンテンツ帝国の野望」ジーナ・キーティン

今こそ世界的に有名なNetflixが大きくなるまでを描いている。特に面白かったのが日本のTSUTAYAのような存在である店舗のDVDレンタル店のブロックバスターとのオンラインの主導権争いである。Netflixがここまで大きくなった今ではブロックバスターは先見の明がなかった企業として語られがちがだ、本書を読むと彼らの健闘ぶりがわかるだろう。(もっと読む

「ティム・クック アップルをさらなる高みへと押し上げた天才」リーアンダー・ケイニー

ジョブスが去った後のアップルを描いた物語。誰もがジョブスが亡くなった後はアップルは衰えていくかと思ったが、逆に史上最高レベルの企業へと成長しているのだという。(もっと読む

「ゼロから作るDeep Leanrning Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装」斎藤康毅

今年はAIについての知識を増やそうとディープラーニング、機械学習などの言葉の入ったタイトルの本を読み漁ったが本書がその最初の1冊。理解するには微分や行列や偏微分などの知識が必要で、実際すべてを理解できたとは言えないが、ディープラーニングの基礎を理解するのに大いに役に立った。(もっと読む

洋書フィクション

「The Huntress」Kate Quinn

今年の一番の発見はこのKate Quinnという作家。「戦場のアリス」という邦題で有名になった「The Alice Network」を読んですぐにこの次の作品「The Huntress」を購入。正直こちらの方がさらによかった。早いところ邦訳されて他の人にも読んでほしい。物語は第二次世界大戦後に様々な場所に逃亡したドイツ人たちの行方をつきとめて際算を受けさせるという、戦争犯罪人たちを追うことを仕事にしている人たちの物語。ヒトラーやヒムラーなどの最後は有名だが、数人程度のユダヤ人やポーランド人を殺したまま逃げた人は公式には裁かれなかった。そんな人たちに正義を与えるというのが本書のテーマである。(もっと読む

「The Alice Network」Kate Quinn

ドイツ占領下のフランスで、イギリスのドイツ語を話すことのできる女性たちはドイツ人の将校たちに近づきその情報をイギリスに流していた、そんななかの一人がコードネームをアリスといい、アリスが組織した女性のスパイのネットワークをアリスネットワークと言った。実話に基づいた物語。(もっと読む

「Post Mortem」Patricia Cornwell

今更パトリシアコーンウェルという感じもあるし、すでに発刊から30年以上経っているが、1から読みたくなって第一弾から読み始めたわけだが、30年経っても色褪せない物語。連続殺人犯を捕まえる物語は世の中にたくさんあるが一味違う印象を受けた。続編もまだまだたくさんあるが少しずつ読んでいきたい。(もっと読む

「アリス殺し」小林泰三

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大学生の栗栖川亜里(くりすがわあり)は不思議の国のアリスの夢を頻繁に見ていた。ある日、その夢のなかで誰かが死ぬと、現実世界でも身近な誰かが死ぬことに気づくのである。

どのようにして本書を知ったかもう忘れてしまったが、タイトルからもわかるように、不思議の国のアリスを絡めたミステリー。栗栖川亜里(くりすがわあり)が通っている大学で起こった殺人事件を、現実世界と夢のなかでさまざな人や動物と協力しながら解決していくのである。

この夢の中の死が現実世界の死とリンクするという点でこれまでにない物語で新鮮である。現実世界と夢の世界を行ったり来たりしながら、夢の世界のある人物(または動物が)、現実世界の誰にあたるのか、などを駆け引きなどもしながら探って、犯人を突き止めていくのである。

特に学びになることはないが、この奇妙な世界観は一読の価値ありである。著者小林泰三はほかにも「ドロシイ殺し」や「クララ殺し」という物語も描いていると言うことなのでこの奇妙な世界観を味わいたくなったらまたぜひ手に取ってみたい。

【楽天ブックス】「アリス殺し」

「超速読力」斎藤孝

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
多くの本に触れてきた著者が速読の方法について語る。

最近速読に関する本も書店にあふれているが、速読をテーマにした本を読むのが本書が最初である。

速読というと、本のページをすべてを驚くようなスピードで読むものと思っていたが、本書によると重要なパートを見つけてそこを読むとういことである。面白いのは本書ではその目的を「読んだものに対してコメントを言う」としている点である。たしかにどんなに早く読んだとしても、何も語れないほど頭のなかに何も残っていなければそもそも読書した意味がない、ということなのだろう。もちろんそれは、すべてのページをじっくり読んだとしても同じことで、読むために読んだいるのではなく、理解するために読んでいるのである。

目次のみ読むとか、最初と最後と真ん中だけを読むなど、その多くはよくある読書の手法ですでに知っているものだったが、「人格読み」という考え方だけは今まで持ってなかったので新鮮だった。著者の思いを心情的に理解すると、著者の言いたいことを理解しやすいとういのである。

1字1句丁寧に読むことだけが読書ではないと教えてくれた。

【楽天ブックス】「超速読力」