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悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

深い物語

いろいろ考えさせられる、深い物語

生き方を考える

人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「深い河」遠藤周作

「深い河」遠藤周作
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
様々な過去を抱えた人々がインドへ向かう。そんな人々の様子を描く。

生まれ変わるという妻の最期の言葉を信じる磯部(いそべ)、また人を愛することのできない美津子(みつこ)などがそれぞれがそれぞれの目的を持ってインド旅行で一緒になる。やがて一行はインドの文化やガンジス川に対する人々の様子に心を奪われる。あるものはそれに感動し、あるものはその文化を軽蔑するのである。

それぞれの人々の視点を移り変わりながら物語は進むので、誰が絶対的に主人公ということはないが、印象に残ったのは人を愛することができず打算的に生きてきながらも、キリスト教に傾倒していく友人の津川(つがわ)が気になってしかたがない美津子(みつこ)である。美津子(みつこ)の心にやがて少しずつ変化起きるのである。

遠藤周作作品は常にそのテーマにキリスト教が絡んでくるが本書では若干少なく、遠藤周作の代表作として期待値が高かっただけに、終わり方も含めて物足りなさを感じた。

【楽天ブックス】「深い河」

「マチネの終わりに」平野啓一郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
クラシックギタリスト蒔野聡史(まきのさとし)とジャーナリスト小峰洋子(こみねようこ)はあるコンサートをきかっけに出会い恋に落ちていく。そんな40代の恋愛を描く。

40代の男女を描くと言う恋愛物語としてはやや年配の人間を主人公としているが、恋愛の始まりの初期に起こりがちなすれ違いや、相手の想いを想像して悩む葛藤が起きることに年齢による違いはないようで、本書でもそんな蒔野(まきの)と洋子(ようこ)の思い悩む様子がそれぞれの視点から描かれている。

また、蒔野(まきの)がクラシックのギタリストであることから、さまざまな曲名や作曲者名が登場するのとあわせて、音楽で生計を立てていく人々の悩みもみて取れる。同じように洋子(ようこ)もバグダッドに赴任する国際ジャーナリストであることから、厳しい戦場の様子が描かれる。

お互いを想いつつ、自らのキャリアや仕事の都合などのさまざまな要因がからんでなかなか会ったり想いを伝えることができない、そんなすれ違いが続いていくのである。そんななか物語の根底には「未来だけでなく過去も変えられる」というテーマがある。

人は、変えらえるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えているんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。

印象的なのは洋子(ようこ)が幼い頃一緒に住むことのできなかった父親と再開し別々に生きた理由を訪ねるシーンである。

だから、今よ、間違ってなかったって言えるのは。…今、この瞬間。私の過去を変えてくれた今。…

音楽や戦争に関する描写だけでなく感情表現の細かさなど、ありがちな恋愛小説を、深いテーマを込めてを大きくレベルアップさせた一冊。

【楽天ブックス】「マチネの終わりに」

「キミが働く理由」福島正伸

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
働くことの意味がわからずに、新卒で就職した会社をすぐに退職し、その後さまざまな事業に挑戦した著者が働くことの意味を語る。

働くこのに楽しみを見出せない人向けなのだろう。僕自身今の仕事に不満を持っているわけではないが、何かしら生き方の参考になればと思い手に取った。

著者の経験から25項目の働く上での秘訣を書いているが、もちろんすべての人に必ずしもあてはまるわけではないだろう。また、楽しく幸せに生きるための心構えはすでに多くの人が語っており、本書で言っていることもかなり重複する部分があった。そんななか印象に残った項目を挙げると次の3つである。

お父さんが、「今日も仕事が楽しかったな。明日、仕事に行けると思うと、興奮しちゃうな」と言うと、子どもさんは勉強し始めるのです。
朝起きて人を励ますと、自分が元気になります。朝会社に行ったら、まず元気のない人を探しましょう。そして、その人を励ますのです。
悩んだ時はどうしたらいいかといったら、私は人に会うことだと思います。特に自分が目指している人に会うことです。

特にものすごい印象に残ったと言うわけではないが、生き方、働き方の参考の一冊として読むのは悪くないだろう。

【楽天ブックス】「キミが働く理由」

「星を継ぐもの」ジェイムズ・P・ホーガン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
月面で宇宙服をきた死体が発見された。
その人物は5万年前に死亡しているという。あらゆる分野の専門家達が集まってその真実を解明しようとする。

本書はハントというイギリス人の研究者を中心に物語が進む。理由もわからずアメリカに呼び出されたハントはやがて、チャーリーと呼ばれた種族の死体が発見されたことを知るのである。月で発見されたということからルナニアンと名付けられ、ハントを含む多くの専門家達の知識を結集して、その体や持ち物を分析することで少しずつ今までわからなかった真実が見えてくるのである。

物語はもちろんフィクションであるが、SFというどこか遠い世界の非現実的になりがちな物語を、月という身近な星を舞台で展開する物語で、身近に感じさせてくれる。さらに、科学的な説明や描写によって現実感を伴って描かれており、実際にこのようなことが本当に起こりえるかも、と思わせる面白さがある。

すでに発行は40年以上前の本だが、今でも十分に楽しむことができる。

【楽天ブックス】「星を継ぐもの」

「Dark Places」Gillian Flynn

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1985年3人の姉妹と長男のBen、母親のPattyで牧場を営む家庭が一夜にして3人が惨殺され、兄のBenが犯人として逮捕される。二重数年後の現在、唯一生き残ったLibbyは再び真実に向き合うことになる。

物語はLibbyが意を決して刑務所の兄Benと会うことから始まる。兄Benと会うことで兄の無実を確信し、当時の関係者に話を聞くことで真実に近づいていく。兄Benでなければ、父Runnerなのか、それともBenと恋人の仲に怒り狂った恋人の父親なのか。物語は真実を探ろうとするLibbyの視点と、事件が起こった1985年の7月の、兄Benと母Pattyの様子を描いている。

現在の物語では少しずつLibbyが真実に近づいていき、一方で、1985年の物語では、兄Ben、母Pattyがそれぞれ悩みを抱えながらXデーの夜へと近づいていくのである。携帯電話もインターネットもない時代の、カンザスシティの田舎町で過ごすBenを含む学生たちの様子や、シングルマザーとして牧場を経営しながら4人の子供達を育てる母親の悩みが見えてくる。

無力ながらも母として、どのように子供達を信じ、守るのが正しいのか、そんなことを考えさせられる内容である。

「会議でスマートに見せる100の方法」サラ・クーパー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
会議でスマートに見せる方法をイラストとともに面白おかしく紹介している。

過去たくさん会議に出たことのある人ならどれもみたことのある行動ばかりだろう。

自分がやってみたい、と思うような行動はそんなになかったが(それをやっても会議が無駄に長引くだけなので)、本書を読んで置くと、誰かがこの行動をやっているときに圧倒されないで済むのかもしれない。(「ああ、この人はスマートに見せる方法をやっているだけだな・・・」と。)

特に印象に残ったのは次の3つ。

それがなんであれ「スケールする?」と聞く
「いい質問だ」と言って質問に答えない
「それは正しい質問かな?」と逆質問する。

ただのウケ狙いにしかならないかもしれないが、機会があったら使ってみたい。

【楽天ブックス】「会議でスマートに見せる100の方法」

「やってはいけない勉強法」石井貴士

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
代々木ゼミナール全国模試1位の経験を持つ著者が、勉強法について語る。

100年時代、人間は大学を卒業した後も常に学び続けなければならない。そんな一生勉強を実践する人間の一人として、いい勉強方法があったら常に取り入れ、勉強方法を改善したいと考えているなか、本書にたどりついた。

どちらかというとやってはいけない勉強法というよりも、著者がやった勉強法とやらなかった勉強法のような印象を受けるが、1人の実績がある人間の勉強方法を紹介している本として、参考にできる部分もあるかもしれない。

同意できる部分もあれば同意できない部分もあるが、もっとも印象的だったのは

NG 書いて覚える
OK 目で見て覚える

という点だろう。僕自身記憶というのは五感をフル活用してこそ記憶に定着しやすいと考えていて、目で見ると同時に手の感覚で記憶することができる「書いて覚える」(と同時に声に出して口の感覚と聴覚で覚える)は悪くない方法だと考えていた、しかし著者がいうように確かに書いて覚えるよりも見て覚える方が時間効率が良いのはそのとおりだろう。

しかし効率を言い始めると、例えば著者は

NG 独学でがんばる
OK 先生をつける

NG 通信教育で済ませる
OK 直接、話を聞いて教わる

と書いているが、実際どんなにお金を払ったとしても先生に聞ける時間など限られており、時間効率を考えるとかならずしも同意できないと感じた。勉強方法は合う合わないがあるので、読んだ人が納得できる部分から取り入れればいいだろう。「目で見て覚える」などはぜひ試してみたいと感じた。

【楽天ブックス】「やってはいけない勉強法」

「燃えよ剣」司馬遼太郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
新撰組副長土方歳三を中心に幕末の新撰組の様子を描く。

新撰組や副長の土方歳三、沖田総司など、名前と最後の函館の様子や沖田総司が病気で亡くなったことだけは知っていたが、どのようにして新撰組が発足し、どのような動きをしていたかはほどんと知らなかったため、今回ようやく名作である本書に至った。

世の中は、攘夷、倒幕、という考え方で時代が大きく動く中、攘夷を目的とした団体として立ち上がる。幕府の管理下の団体として発足したために、倒幕を目的として動く長州藩と敵対していく。新撰組を大きくしたいという野望と、攘夷、つまり外国人を退けることを目的として立ち上がった親善組なので、少しずつ世の中の流れが幕府から、長州藩、薩摩藩へと移行する中で、幕府の下で動くことが、賊として名を歴史に残すことに繋がりかねないとして葛藤したり離脱したりする隊士たちの様子が面白い。

やがて、近藤勇や沖田総司を失い、土方歳三は北へ北へと戦いの場所を求めて移動し、やがて函館にたどり着き最後の戦いを迎えるのである。

賊名を残したくない。私はお前と違って大義名分を知っている。

土方歳三の生き方に感銘を受けながらも、わずか150年程度前の時代に、離脱をしようとする隊士たちに切腹を命じたり、隊の存続に邪魔になりそうな人々を暗殺したりする、そんな新撰組の秩序維持の方法に時代の移り変わりの速さを感じる。残念ながら薩長同盟や坂本龍馬についての記述はほとんどないので、今度はもう一つの名作「龍馬を行く」などにも触れてみたいと思った。

【楽天ブックス】「燃えよ剣(上)」「燃えよ剣(下)」

「錆びた滑車」若竹七海

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
女性探偵の葉村晶(はむらあきら)は老女の尾行を依頼され、やがてある青沼ミツエとうい女性のアパートに移り住むこととなる。

単純な調査の依頼からやがてアパートに移り住み、そこでミツエの孫のヒロトと出会う。ヒロトは父親と一緒のところおを交通事故に会い、ヒロトは重傷を負い父親は無くなった。事故前後の記憶が失われているヒロトは、なぜその場所に父親と一緒にいたのかを知ろうと晶(あきら)に頼むのである。本書はそんなヒロトの事故前後の謎を解き明かしていくまでの様子を描いている。

葉村晶(はむらあきら)がいろんな場所を移動し、いろんな人に聞きながら少しずつ真実に近づいていく様子を描いていて、実際の探偵業なんてそんなものかもしれないが、山や谷がなく、登場人物もかなり多いので読みにくい。

もう20年以上前になるだろうが、初めて読んだ著者若竹七海の作品「遺品」がインパクトがあっただけにちょっと残念である。とはいえ本書自体それなりの評価を得ているので、葉村晶のシリーズを通して読むとひょっとしたらまた違った印象を持ったのかもしれない。

【楽天ブックス】「錆びた滑車」

「この英語、訳せない!」越前敏弥

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
数々の著名作品を翻訳している翻訳家の著者が、訳すのが難しい英語を解説する。

著者越前敏弥さんの本は本書で3冊目になるが、毎回意味をつかむのが難しい文章を紹介してくれて勉強になる。本書でも日本人には難しかったり、間違えがちな様々な英語表現を紹介している。teenagerは十代ではないなど、知っていることも多々あったが、改めて学んだこともたくさんあった。例えば次の表現。

The room was badly heated.

その部屋は暑すぎるのか寒すぎるのか、なんとネイティブに質問しても意見が分かれるのだという。確かにbadlyの意味の撮り方でどちらにも取れる。このように実際日常的に使われていながら、実際には人によって意味のとり方が異なる単語は日本語にも多くあるような気がしてきた。本書でも紹介されている「カーキ色」などはその代表例だろう。文脈上重要じゃないから誰も意味が正しく取れているかどうかを確認しないのである。

また、Hopefullyの使い方については、僕がときどき英会話で使っている方法は誤用ということを初めて知った。今後は気をつけたい。

いつものように翻訳の難しさと、言語の奥深さを改めて教えてもらった。

【楽天ブックス】「この英語、訳せない!」

「リカーシブル」米澤穂信

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
中学生の越野ハルカは母と弟サトルともに母の故郷へ引っ越してきた。その町ではタマナヒメという未来を予知できる女性の伝説があった。

寂れた地方都市で起きる不思議な物語。ハルカとサトルは子供でありながらも新しい環境、新しい友人に馴染もうとするが、そこには地方都市特有の、外から来た人間に対する敵視と、地元に長く住んでいる人のみが知る暗黙のルールが存在するのであった。

そんななかサトルの不可思議な言動から、少しずつハルカはタマノヒメの伝説に興味を持っていくのである。

中学生の女性が主人公ということで、懐かしい感じがする。特に物語として新鮮な点はなかった。最近の米澤穂信の作品には人間の心の深い部分を描くような鋭さを感じていたのだが、本書はそこまで期待に沿うものではなかった。

【楽天ブックス】「リカーシブル」

「絵でわかる英文法」波瀬篤雄

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本人には捉えづらい英単語のイメージを絵でわかりやすく伝えている。

英単語のほとんどは日本語の単語と1対1で対応されるものではない。例えばonなどは「〜の上に」と訳されることが多いが、その理解だけだとどうしてもうまく訳せない時がある。そんな日本語に置き換えることができない英単語をイメージで説明している斬新な内容である。

僕自身すでに大学を卒業してからだけでも15年以上は英語を勉強している身だったが、それでも新鮮な考え方にいくつか出会えた。面白かったのはスイッチをつける意味のturn onという表現。onの流れでの説明だったが、なぜturn onというのかがスイッチの構造をイメージするとすっきりした。

また、日本人が混乱しがちなcomeとgoの使い分けの考え方も新鮮だった。

comeは手に負える
goは手に負えない

としていて、例として挙がっている

  • Where has my eraser gone?
  • Winter has gone.
  • come true
  • come off
  • go hungry
  • go mad

などをみると納得できる。

いままで特に疑問に思わずにただ暗記していたことに気付かされる部分もあった。イメージとして持っておくとより自然に英語の意味を捉えられるようになるかもしれない。どちらかというと手元に置いておいてなんども読み返すべき本なのだろうと思った。

【楽天ブックス】「絵でわかる英文法」

「The Good Daughter」Karin Slaughter

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
CharlieとSamの姉妹は父親の弁護士RustyとかつてNASAに勤めていたこともある賢い母親Gammaと暮らしていた。そんななか、ある日現れた2人の男によって母親を殺され、姉妹は命からがら生き延びる。本書ではそれから26年後の姉妹を描く。

最初の惨劇の印象がすごいが、物語の中心はその惨劇から26年後、再び妹のCharieが事件に巻き込まれたことから始まる。構内の発砲事件により男性と少女が亡くなり、中学生の女の子が拘束されたのである。その弁護を担当することになった父Rustyにより、26年前の事件により深刻な後遺症を持ったまま生きているSamもNewYorkから故郷に戻ることとなる。

一方、父Rustyを手伝いながら故郷で生活していたCharlieは夫のBenとの関係がうまくいかず、浮気をしたりなど不安定な生活を送っている。後遺症に悩むSamは、26年前に自らが犠牲になったせいでCharlieが生き延びたこと、幸せに生きていることを救いとして自らの人生に向き合ってきた。にも関わらず、なかなか幸せな結婚生活をCharlieに苛立つのである。やがて、CharlieとSamは26年前には話すことのできなかった心のうちをぶつけあうこととなる。 Everybody thinks I blame myself for running away. No, blame myself for not running faster. みんな私が逃げた自分自身責めていると思っているけど違うの。早く走れなかった自分を責めているの。

CharlieやSamと接するときに父Rustyの語る言葉が印象的である。

It is a father’s job to love his daughter in the way that she needs to be loved.
娘に合わせて愛するのが父親の務めなんだよ。

There is value in forgiveness.
許すことには価値がある。

やがて物語は26年前の知られざる真実へとつながっていく。

物語全体としては、ChrlieとSamの悲劇によって生み出された悲しい生き方も印象的だが、そんな2人を支えた父と母の異なるタイプの人間像がなによりも印象的である。死んだあともこんな風に思われる親になりたいと思った。悲しい物語ではあるが、同時に地位ちゃ母のありかた、姉妹のありかたを考えさせられる作品。

「反応しない練習」草薙龍瞬

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
すべての悩みを根本的に解決する方法を、「ムダな反応しないこと」としてその考え方を説明する。

幸せに生きるための考え方を書いた本は昨今溢れており、本書もそんななかの一つである。基本的に書かれていることでそれほど新鮮な内容はなかった。とはいえ本書が役に立たないとか読む価値がないとかそういうことではなく、このような物事の考え方は、ただ単に知識として持っているだけで満足するのではなく、繰り返し触れてその精度を上げていくべきなのだろう。

個人的にもっとも印象的だったのは

相手はいつでも「初めて会った人」

という考え方である。人を過去の何度かの振る舞いでこの人はこういう人と判断するのではなく、その人自身も成長している変化しているかもしれない。だからこそ、過去に会ったことある人でも曇りのない目で見るべきだということである。もちろん言うほど簡単ではないが、今後意識していきたいと思った。

上にも書いたことだが、内容としてはよくある種類の生き方の考え方である、「嫌われる勇気」などが有名だろう。しかしこのような考え方は定期的に接して、自らを省みることが重要だと考えると、本書は一定の役割は果たしていると言えるだろう。

【楽天ブックス】「反応しない練習」

「ラプラスの魔女」東野圭吾

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
遠く離れた2つの温泉街で硫化水素の発生による死亡事故が起こった。研究者の青江(あおえ)は警察の依頼で意見を求められ現場に赴き、2つの場所で同じ女性を目撃する。

様々な登場人物の視点を行き来しながら物語は展開していく。刑事の中岡(なかおか)と研究者の青江(あおえ)という硫化水素による事故に興味を持った2人はお互いに牽制しながらも少しずつ真実に近づいていく。また、若い女性の警護を任された武尾(たけお)も不思議な体験をする。その若い女性の周囲でたびたび不思議なことが起きるのである。物語はやがて一つの大きな流れに向かっていく。

いつものように東野圭吾はエンターテイメントとしては最高で、一気に読ませる面白さがある。ただ、残念なのは読み終わった後数週間もすればすべて忘れ去れててしまうということだろう。つまり時間潰しにはなるが学びにはならないということである。学びや知的好奇心を読書に求める僕のような読者にとっては若干物足りないかもしれない。

【楽天ブックス】「ラプラスの魔女」

「読みたいことを書けばいい」田中泰延

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
電通を退職しフリーのライターになった著者が文章の書き方について説明する。

序盤はまず文書と文章の違いや、随筆についての説明から入り、好きなことを書くことの重要さをと主張している。確かに、必死で人に読まれる文章を描こうとしても苦しいだけだし、なんといっても書いていて楽しくない。なんといっても、実際著者は電通を退職後ひたすら好きなことを書いて仕事を得ているというから面白い。そんななか、なんといっても印象的だったのが次の言葉。

だれかがもう書いているなら読み手でいよう

確かに、世の中にはツイッターやブログなど書いて発信することのハードルが低くなったからか、どこかで聞いたようなことばかり書いている人はよく目にする。

つまらない人間とは「自分の内面を語る人」

感想を書くことを否定しているわけではないが、ライターの感想など1%程度でいいと、切り捨てている。なによりも事実が重要であるとして、何かを書くにあたって、それをひたすら調べることの重要さと、インターネットだけでなく図書館を使い倒して調べる方法を後半では語っている。地元の図書館を利用することはあっても、調べ物で利用したことはなく、ましてや国会図書館など入ったこともないので、機会を見つけてそのような利用の仕方もしてみたいと思った。

世の中の文章本と大きく異なっていて、著者の書き方自体も斬新な書き方が多く非常に面白い。読み物としても楽しませてもらった。

【楽天ブックス】「読みたいことを書けばいい」

「Sharp Objects」Gillian Flynn

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
シカゴでリポーターを仕事としているCamilleは生まれ故郷の町Wind Gapで少女Annの殺人事件が起こったことを知り、スクープのために故郷に戻り、そこで数年ぶりに母Adoraと妹Ammaと再開する。

生まれ故郷に戻って調査を開始した直後に、行方不明になっていた少女Natalieの遺体が発見される。犯人は町の人間なのかそれとも外からやってきた人間なのか。なぜ被害者の歯を抜くのか。目撃情報を集めるために町を歩く中で、過去の同級生や知り合いと再開していくなかで今まで知らなかったことが明らかになっていく。

また、母と再会し、その生まれた家で過ごすことになったことで、少しずつ歪んだ家族の様子も見えてくる。Camilleは以前妹Marianを病気で失っており、母Adoraとともにその悲劇を経験しているのである。そんな悲しみを経験したからなのか、心を病んだCamilleは尖った刃物などで自らの体に文字を刻み込むことで心の安らぎを得ることを習慣としているのである。そして、そのような家と母の下で生活しているからか、異なる父から生まれた妹のAmmaも荒んだ生き方をしていく。

殺人事件の解決の物語ではあるが、心に深い傷を抱えた人たちの悲しい家族の物語でもある。Gillian Flynnという著者はよく聞くが本書で初めて触れた。ほかの有名作品もチェックしたいと思った。

「新参者」東野圭吾

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2010年このミステリーがすごい!国内編第1位作品。

日本橋で女性が殺された事件の捜査で着任したばかりの加賀恭一郎(かがきょういちろう)は、地域の人々の話を聴きながら少しずつ真実に近づいていく。

日本橋で生活するさまざまな人々の視点に移り変わりながら進んでいく。そして、刑事の加賀(かが)は鋭い観察眼で真実に近づいていくのだが、事件の解決だけでなく、そこで出会う人々に対して人間味を持って接していく点が印象的である。日本橋にある多くの伝統的なお店が登場する点も面白い。

そんな加賀(かが)の尽力によって少しずつ真実が明らかになっていく。被害者である母、離婚して新たな人生を歩み始めた父、そして自らの夢をおって家を出た息子、それぞれ悩みながら生きていることがわかる家族の物語である。

頭の中だけで物語を作り出し、特に現実世界の下調べなどに時間を割かない東野圭吾の作風に物足りなさを感じてしばらく遠ざかっていた。しかし、どんな作家も時間が経つとともに作風に変化があり、本書はそんなことを改めて感じさせてくれる1冊だった。評価の高いものからもう一度読んでみたいと思った。

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「ライオンのおやつ」小川糸

オススメ度 ★★★☆☆ 4/5
余命を宣告された33歳の海野雫(うみのしずく)は、瀬戸内海の島にあるホスピス「ライオンの家」で人生の最期を過ごすことを決める。そんな人生の最期を描いた物語。

ライオンの家ではいくつか興味深いイベントがある。そのうちの一つがおやつの習慣である。ライオンの家で過ごす人々は、その思い出深い食べ物をリクエストすることができるのである。雫(しずく)も毎回おやつの時間にその味とそレに対して深い思い出を持つ人の気持ちを知ることとなるのである。

またライオンの家にいる犬六花(ろっか)との関係もほほえましい。幼い頃から犬を飼いたいと思っていた雫(しずく)だったので、六花(ろっか)の散歩をすることが日課になっていく。やがて、同じようにライオンの家にいる人々の死を見届けた後、雫(しずく)も少しずつ最期の日に近づいていく。

小川糸さんといえば鎌倉の街並みを美しく描いた「ツバキ文具店」が有名だが、本書も同じように瀬戸内海の穏やかな様子を描いたやさしい物語。最近人生の最期を描いた作品が多いように感じる。

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「「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考」末永 幸歩

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アートの楽しみ方を中学生にもわかるように説明している。

絵画はカメラという技術が登場したことによって大きくその存在価値が変化していった。本書ではカメラ登場以降の芸術家たちの試行錯誤する様子を、マティス、カンディンスキー、ポロック、デュシャンなどを題材に説明し、それぞれの作品が美術にもたらした大きな考え方の変化を説明している。

僕自身過去それなりに美術にも触れてきたつもりでいたし多くの書籍を読んでもきたので、登場した画家やその作品は本書を読む前から知ってはいたが、本書では解説されているような美術史における意味を知らなかった。もちろん、本書の解説は数ある一つの解釈でしかないが、自分自身でアートの背景を想像して楽しんでいるだけではなく、人の意見や解釈を聞いてそれをもとにさらに考え方を発展させるというのは非常におもしろいことだと感じた。

また、美術を見るとき、どうしても僕らは自分たちが生きている現代の常識にとらわれてしまうが、その作品が作られた時代背景をしっかり理解することが重要なんだと改めて感じた。

今後美術作品に触れる際は、もっと他の人の意見を聞いて見るということもしてみたいと思うとともに、機会があればそういう場にも参加してみたいと思った。自分の感覚でしかないが、海外に比べると日本は一般の人が美術に触れる機会は少ないように思う。本書はそんな日本の一般の人が感じる、美術への近づきがたさを多少なりとも緩和できるのではないだろうか。

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