とにかくおすすめ

ジャンル関係なくオススメを知りたい人向け

とにかく面白い

ページをめくる手が止まらない、寝る時間さえ惜しくなる最高のエンターテイメント

泣ける本

思いっきり泣きたい人向け

優しい気持ちになれる本

悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

世界を知る

世界の大きな流れを知りたい人向け

深い物語

いろいろ考えさせられる、深い物語

生き方を考える

人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「瞬読」山中恵美子

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
本を早く読む方法を語る。

僕自身本を一般の人よりは早く読む方ではあるが、最近この時間を少しでも内容の濃いものにしたいと考え、速読に関する本や、くだらない本を選ばないようにするなど試みている。そんななか本書に出会った。

悲しいことに、前半部分は本を読むことの大切さと、この本によってどれだけ本が早く読めるようなことを長々と書いており、なかなかその「瞬読」のないように入らない。よくある本の厚みを増やすためのページという印象であり、前半はまさに「瞬読」技術のない人でも「瞬読」すべきパートなのだろう。

本書のエッセンスは第2章の、わずか30ページほどに含まれていることが全てで次の3つに集約される。

  • 読むのではなく見る
  • 見たものをイメージに変換する
  • 手書きでアウトプットをする

本書の表紙に書いているように、「1冊3分で読めて99%忘れない」というのはかなり誇張な気がするが、記憶に止めるためには読むだけではなくアウトプットをすべきとい点や、一字一句すべてを読まなくても、(音読などしなくても)知っていることなら、何を言いたいかがわかる、という点もまさにその通りと感じた。

一般の人と比べて読む速度が遅いと感じている人にはヒントになるのかもしれない。僕自身もこのようなデジタルのアウトプットだけでなく手書きのアウトプットも考えるべきなのかもしれない。

【楽天ブックス】「瞬読」

「Project Hail Mary」Andy Weir

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
記憶を失った状態で、宇宙船のなかで目を覚ました彼は、少しずつ記憶を取り戻し、自分が地球を救うために宇宙を旅していることを思い出す。そんな宇宙飛行士の地球を救う物語を描く。

ビル・ゲイツやバラック・オバマなどの著名人が本書を2021年のおすすめとして挙げていたことから、「これは読まなくては」と手に取った。

物語は宇宙船のなかで記憶を取り戻しながら自らの使命を悟り奮闘する男Graceと、彼の回復した記憶による過去の様子が交互に描かれる。

過去では、太陽の光を弱める物質が認められ太陽の光が少しずつ弱まっているため、30年以内に人類の半分が死滅するだろうという予想が立てられる。そんななか、宇宙を調べると、その物質は太陽系以外も汚染しているが、唯一汚染されてない宇宙があり、その原因を調べて地球に汚染されないための情報を送るというのが、宇宙船のミッションなのである。

記憶を失った状態で物語が始まるという少々使い古された展開によって、期待値が最初はしぼんでしまったが、物語が進むごとに面白さが増しどんどん引き込まれていった。物語の展開自体はよくあるSFであることに変わりはないのだが、面白いのは、登場人物たちの試行錯誤や行動をかなり科学的に描いているという点である。もちろんどこまで信憑性があるかどうかは実際に宇宙について研究している人でもない限り明言できないが、少なくとも古臭い、重力や相対性理論や宇宙に空気がないことを無視したSFではないということだ。

そのため、宇宙船を作るために試行錯誤する様子や、言葉の通じない、未知の生物とコミュニケーションを図る様子など非常に興味深い。また、人工重力や相対性理論についても描かれており改めて勉強したくなった。

今までにないSF小説。マット・デイモン主演で映画になった「オデッセイ」も同じ著者の小説を基にしているということで、そちらもぜひ読んでみたいと思った。

和訳版はこちら。

「最高のランニングのための科学 ケガしない走り方、歩き方」マーク・ククゼラ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
人生におけるランニングの重要性を説く著者が、長くランニングを続けるために必要なことを語る。

最近、改めて走るという行為を再確認しており、ランニング関連の書籍を読み漁るなか本書に出会った。

本書はマラソンのための本ではなく、ランニングのための本である。したがって、マラソンに役にたつことはあるが、マラソンのトレーニングに焦点を書いている本ではない。むしろ、人生において運動をすることの重要性を説いておりそのもっとも簡単な運動として、歩くこと、走ることを勧めているだけである。

なにより、昨今座ったまま仕事をすることが多くなったせいで、人間は体を動かすことが少なくなり、人間はかつてないほど老いていると主張する。言い換えるなら、平均寿命は伸びていても平均活動寿命は短くなっているのだというのである。そして、そんな平均活動時妙を伸ばすためにランニングを進めているのである。

長くランニングを続けるために、怪我の予防や回復など、さまざまな面で語っているが、なかでももっとも印象的だったのは食事についてだろう。砂糖が健康に良くない話はよく聞くはなしであるが、本書では炭水化物(精製炭水化物と呼んでいる)も糖尿病への発生につながるとして、炭水化物耐性、インスリン感受性の高い体づくりを推奨している。

本書を呼んで、長く健康な人生を楽しむためには食事を見直していかないとならないと感じた。若い時に大丈夫だったとはいえ、年齢を重ねるごとに大丈夫ではなくなっていくのである。

また、足本来の機能を活かして走ることを推奨しており、ベアフットラニンニングやミニマリストシューズに触れている。このあたりは「Born to Run」にも書かれていたことで、少しずつ考えてみたいと思った。

ランニングを中心として、運動や食事について新たな視点をもたらしてくれる一冊である

【楽天ブックス】「最高のランニングのための科学」

「1兆ドルコーチ」エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スティーブ・ジョブズやラリーペイジなど、AppleやGoogleの創業者や幹部にコーチングをすることで大きな影響を与えたビル・キャンベルのコーチングについて語る。

GoogleやFacebook、アップルなどシリコンバレーの成功物語を読んだことがある人ならビル・キャンベルという名前を耳にしたことがあるのではないだろうか。しかし、名前は聞いたことがあるが何をやっている人かどうかはわからない、というのが正直なところだろう。

そもそもAppleやGoogleの創業者や幹部たちといえば一般的には天才と呼ばれる人達。そのような人たちにコーチングが必要なのだろうか。そしてどのような人間ならばそこまで多くの人から感謝されるコーチとなれるのか。

本書でビルの周囲の人の言葉から、その率直な物言いと情熱的な振る舞いが見えてくる。また、ビル自身自分がコーチングする人の選別をしっかり行っていたことや、自分自身のなかに人生の達成したいものの尺度があったことが見えてくる。

ビル、肩書きがあれば誰でもマネジャーになれるけど、リーダーをつくるのは部下よ
利口ぶるやつはコーチできない

ビルはコーチャブルな資質として次の4つが挙げられている

  • 正直さ
  • 謙虚さ
  • あきらめずに努力を厭わない姿勢
  • つねに学ぼうとする意欲

僕自身人の役に立ちたいという思いを持ちながらも、1人の人間が影響を与えられる人の数というのは、妻や家族など、せいぜい10人程度だと考えていた。そのため、本書でビルが数百人という人たちに影響を与えたことを知って驚かされ、もっとできることがあるのではないかと考えるきっかけになった。

何よりも本書で感じたのは率直さの重要性である。結局、人を傷つけることを恐れて、遠回しな物言いばかり繰り返しても深い人間関係は築けないし、人の人生に影響を与えることもできないのだと改めて感じた。

いきなりすべてを真似することはできないが、少なくとも同じ会社の人々の家族構成ぐらいは覚えていこうと思った。

【楽天ブックス】「1兆ドルコーチ」

「昨日がなければ明日もない」宮部みゆき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
探偵杉村三郎(すぎむらさぶろう)が行う3つの調査とそこで出会う人々を描く。

杉村三郎(すぎむらさぶろう)シリーズの第4弾である。本書では杉村三郎(すぎむらさぶろう)が探偵として扱った3つの物語を扱っている。結婚した娘に会うことを許されない母親、キャンセルされた結婚式、子供を理由にお金をむしりとろうとする母親など、そのどれもが世の中を騒がすほど大きな事件ではなく、どんな街にも起こりそうな出来事を扱っている点が面白い。

そして、物語全体の軽い展開の中に、人間の持つ本質的な醜さや強さを描いている点が宮部みゆきらしいと言えるだろう。

残念なのは他の著者の作品ほど深みを感じないため、続編を読む頃には前作の内容を忘れているということだ。それでも、深く考えすぎないで楽しめるところがこのシリーズのいいところかもしれない。

【楽天ブックス】「昨日がなければ明日もない」

「幸福の意外な正体」ダニエル・ネトル

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
幸福について研究した著者がその結果と結論を語る。

タイトルからもっと自己啓発的な本を想像していたが、思った以上に科学的なアプローチをしている。そのためやや小難しく読みにくい。

面白かったのは人間の6つの感情、恐れ、悲しみ、嫌悪、怒り驚き、喜びのうちプラスの感情は喜びの一つだけだという点である。著者の理解によると喜びの状態においては何も変える必要がないのに対して、その他の状態では現状を変えて改善する必要があるためだという。また、喜びは一瞬で飽きてしまうために幸せであり続けることが難しい、というのも興味深い指摘である。

結局のところ、幸せになるためのさまざまな要素を検証しているだけにすぎず、具体的に幸せになる方法をはっきりと語ってない点が残念である。唯一の幸せになるしさは次の言葉だろう。

あなた自身が何か、価値がある、挑戦しがいがある、大切である、と思えるものに意識を集中させていればいいのです。

間違えやすい幸せな方向についての指摘は知っているだけでも有用だが、もう少し面白く、もう少し人生に有用な形でかけたのではないだろうか、と感じてしまった。

【楽天ブックス】「幸福の意外な正体」

「手ぶらで生きる。見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法」ミニマリストしぶ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ミニマリストの著者がその生き方や考え方を語る。

僕自身も、捨てられるものはさっさと捨てたいし、広いよりも最低限の広さがあればむしろ狭い部屋に住みたい、と考えるミニマリスト思考の持ち主である。今回、何かしら人生をさらに豊かにするヒントに出会えればと思い本書にたどり着いた。

すでにミニマリストという言葉が一般的に世の中で通じるようになって数年が経ち、また断捨離も流行っていることから、その考え方はそれほど目新しいものはないだろう。すでに少しでも実践したり、実践してないまでも興味を持って調べたことのある人にとっては、本書で書いてあることも、特に驚きを与えるようなことではないだろう。例えば次のような内容である。

  • 冷蔵庫は持たない
  • テレビは持たない
  • 狭い家に引っ越す
  • 毎日同じ服を着る
  • 財布は持たない
  • 「限定物」ではなく「定番物」を買う
  • 「レンタル」「シェア」を使いこなす
  • 「出口戦略」を考えて増やす
  • 時間を生み出すツールに投資する

僕にとっても、新しい考え方に出会うというよりも、もともと持っていた考えを改めて再確認する機会となった。唯一「こんな考え方もあるのか」と思った点を上げるなら次の2つだろう。

「一日一食」で生活する

たしかに、食事に関して、僕らは三食食べるべきという考え方に固執しすぎているのかもしれない。1人のときなど二食生活や一食生活を取り入れてみたいと思った。

物が人生を豊かにする、という思考から離れられない人にとっては何かしら本書から学ぶ部分があるだろう。

【楽天ブックス】「手ぶらで生きる。見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法」

「熱源」川越宗一

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第162回直木三十五賞受賞作品。樺太で生きるアイヌの人々と、その生活に魅了されたポーランド人を描く。

1800年代後半から日本やロシアなどの大国が戦争へと突き進む中、樺太で生きるアイヌの人々を描く。特に、アイヌの男性ヤヨマネクフとブロニスワフ・ピウスツキという、リトアニア生まれのロシア人を中心に物語が進む。 ヤヨマネクフは日本とロシアの領土問題で所属する国が変わる中、アイヌの文化や存在価値を認めてもらおうと苦悩する中で、ロシアや日本を行き来する。一方ブロニスワフは、リトアニアという地域に生まれ、自らの祖国をロシアという大国に取り込まれ、母国語を強制的に奪われたことで、まさに同じような境遇に向き合っているアイヌの人々に惹かれていくのである。

アイヌを題材に扱った作品だと、漫画の「ゴールデンカムイ」が最近では有名である。「ゴールデンカムイ」はどちらかというと、物語のなかの登場人物として、アイヌの優れた文化などを紹介しているが、本書はむしろ日本とロシアの領土問題に翻弄され、文明化が進む世界のなかでアイヌの文化をどのように存続させていくかの苦悩を中心に描かれている。

知識としてアイヌという民族の存在は知っていたが、北海道に住む民族という印象しかこれまで持ってなかった。もちろんロシアと日本という領土の問題と絡めてその存在を考えてみたことがなかったので、本書では初めてそのつらい歴史に目を向けさせてもらった、また、熊送りや女性が口に施す刺青など、これまで知らなかったアイヌの文化を知ることができた。

狩猟最終民族としてのアイヌの文化を維持することはつまり、文明化の流れにのらないこと、それは世界から孤立、民族の衰退である。そんな文化の維持と民族の存続という両立ならぬアイヌの葛藤が物語から感じられるのである。

しかし、その一方でこんなことも感じた。交通手段や情報の障壁が少しずつなか、人類の歴史において消えてった民族や言語、文化は数知れず、それに抵抗して自分たちの民族を残そうとすることはそこまで重要なのだろうか。もちろん今日明日、急に日本がなくなる、日本語を話すのは禁止と言われれば大きな抵抗はあるだろうが、100年200年単位で民族や文化が消滅したり他の民族と混ざり合ったりして個性が失われていくのは、人類の発展の中で避けられないことなのではないだろうか。

アイヌの歴史や苦悩だけでなく、文化や民族のありかたに目を向けさせてくれた。日本からロシアまで壮大なスケールと詳細に調べたであろう歴史を見事に融合したすばらしい物語。

【楽天ブックス】「熱源」

「A/B Testing:The Most Powerful Way to Turn Clicks Into Customers」Pete Koomen, Dan Siroker

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ABテストプラットフォームの先駆者であるOptimizelyのCEOである著者が、そのサービスやクライアントを通じて得られたABテストの知見を語る。

最近我が社でもまたABテスト熱が再燃しており、少しでも組織として意味のあるABテストができるようにと思い本書にたどり着いた。

ABテストを専門的に取り上げた書籍を読むのは本書で3冊目になるが、ABテストのプラットフォーマーとしての視点で書かれたものに触れたのは本書が初めてである。 序盤はオバマ大統領の大統領選におけるABテストの貢献の大きさなど、さまざまな形のABテストによる改善例を示している。

そんななか本書ではABテストの流れを次の5つのステップとしている。

1.Define Success
2.Identify bottlenecks
3.Construct a hypothesis
4.Prioritize
5.Test

1の成功の定義は必ず言われることで(とはいえ抜けがち)特に新しくはないが、2のIdentify bottlenecksという考え方は他のABテスト関連の書籍にはなかったので新鮮に感じた。向上などの生産効率を上げるためにはボトルネックという考え方は一般的だが、より良いサイト制作においても、目的のコンバージョンに対して、トラフィックがどこで止まっているのか、そんなボトルネックにもっと意識を向けるべきなのだろう。

またMicroconversionとMacroconversionというように、コンバージョンを二つに分けて考えている点も興味深い。3のConstruct a hypothesisでは、単純に思う仮説ではなく、ユザーインタビューやご意見フォーム、フォーカスグループなどを通じてより精度の高い仮説を挙げることを推奨している。この辺はかけられる工数によって実践していきたいと思った。

中盤以降では、実際に組織にABテストの文化を組織に浸透させる方法について、外部のサービスを利用する方法や新たにエンジニアを雇って組織内にテストチームを作る方法など、それぞれのメリットやデメリットを書いている。

全体のなかで特に印象的だったのは次の言葉。

A question worth asking about every test is, "Would you be happy showing the winning variation to all of your traffic" 
「勝ったテストパターンをすべてのユーザーに喜んで見せられますか?」と尋ねてみるべきです。

つまり、結果が良かったテストパターンが必ずしも正解というわけではなく、例えばユーザーがクリックするボタンが絶対的に正しければ、世の中のボタンはすべて女性の裸になってしまうということである。組織として、ブランドとして、そのテストパターンを世の中に自信をもって出せるのか。それを考えずに思いつくままテストをしてしまうと、ただ時間や労力の無駄になりかねないのである。

また次の冗談も、いきすぎたABテスト主義を抑制するために使えることだろう。

 There's a joke among A/B testing veterans that almost any variation of a button loses to a button that says "Free Beer." ABテスト業界にはこんな冗談があります。どんなボタンバリエーションも「無料ビール」というボタンには叶わないと。 

ABテストの方法にさらなる理解を与えてくれる内容である。本書の上の言葉に出会って、早速醜い見た目、誤解を招きかねないABテストパターンを実践している自社のABテストを改善したくなった。

「52ヘルツのクジラたち」町田そのこ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2021年本屋大賞作品。過去から逃れてキナコは大分の田舎町で1人で生きていくことを決める。

キナコは1人で生きていくと決意しながらも、口のきけない男の子と出会い、その恵まれない家庭環境に過去の自分を重ね合わせ、その子を救おうと行動を始める。 そして、そんな現在の様子と並行して、キナコの過去が明らかになっていく。うまくいかない家族との関係、そしてアンさんと呼ぶ人との出会いよってそんな家族のしがらみから救われたことなどがわかる。

最近、日本で評価される本の多くが、家族や恋人など狭い人間関係と小さな地域のなかで起きる出来事を描いているような印象を持っており、本作品も似たような印象を受けた。もちろん、人の幸せは、身近な人との関係による部分が大きいし、人生で起きる大きな出来事よりも、それぞれの人間が物事をどう受け止めるかが重要で、そういう物語が評価されるのもわからなくもないが、最近はちょっと似通いすぎていて新鮮さをあまり感じなかった。

【楽天ブックス】「52ヘルツのクジラたち」

「All That Remains」Patricia Cornwell

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
4組の男女のカップルが失踪し白骨死体で発見された。そして五組目のカップルが失踪する。

FBIの検死官Kay Scarpettaの物語の第3弾である。白骨死体として発見されたこれまでの被害者はいずれも靴を履いていなかったこと、トランプのカードが現場に残されていたことから同一犯とされており、失踪した五組目のカップルの女性は、権力者の娘であったことから、大きく報じられてFBIやCIAの上層部が絡んだ政治的な局面を強くしていくのである。

そして、そんななか、ワシントンから報道記者でありかつてはKayの天敵でありながらも、妹の殺害を機に友人となったAbbyも事件を探りやってくる。Abbyの話によると、事件を調べ始めてから、Abbyの周囲でも少しずつ不穏な動きが感じられるという。CIAやFBIは何を隠しているのかも犯人追跡と並行して大きな謎となっていく。

今回は現場にトランプが残されていたことから、スペードのエースに関するベトナム戦争における意味などの興味深い話に触れることができた。

相変わらず物語が描かれたのがすでに20年以上前とは思えないほど色褪せない物語で、今読んでも十分にその緊迫感が感じられる。実際、検死官である人物がここまで現場に足を運ぶものなのだろうか、という疑問は感じなくもないが、その辺は物語の都合上多少脚色があるのかもしれない。アメリカという国の司法やCIA、FBIなどの権力の構造や、地域や州の管轄についても好奇心を刺激してくれる点もありがたく、存分に楽しませてもらった。

「まだ「会社」にいるの? 「独立前夜」にしておきたいこと」」山口揚平

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
数々の企業再生に関わったあとに独立・起業したした著者が、会社を辞めて独立する際の心構えを語る。

文字とスペースが大きく、明らかに内容が薄い本で必死にページ数を稼いでいるという印象である。順序立てて書いているわけでもなく、思いついたことをただひたすら見出しをつけて書き綴っている。 唯一印象的だったのは、メンターと、自分がメンターする相手を持つ、メンターラインおよび技術についての師匠と弟子を持つ、マスターラインという二つの人間関係の軸を持つことを重視している点である。もちろん、分野によっては自分にあった師匠やメンターを、および弟子や後輩を持つことは難しいこともあるだろうが、そんな機会がないか探してみたいと思った。

なぜ、この本にたどり着いたかはもはや覚えていないが、自分のようにすでに複数回転職をして、楽しめる仕事を毎日している人間が読む本ではないと感じた。会社を辞めたいと思っているが辞められない人に、ひょっとしたら多少背中を押すような内容になっているのかもしれない。

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「一流のランナーは必ずやっている!最高のランニングケア」佐藤基之

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
さまざまなストレッチや筋トレの方法を、ランニングで痛みが発生しやすい場所に応じて書いている。

僕自身も長く膝の外側の痛みに悩まされてランニングできない期間があったので、同じことを繰り返さないようにと、体のケアに関心が高まっており、そんななか本書に出会った。

なにより故障の発生しやすい場所別にストレッチや筋トレ方法を紹介している点がありがたい。早速、膝の痛みの解決策として紹介されているストレッチを取り入れたいと思った。

また、現在は特に痛みがなくても、長くマラソンを続けるとこんな痛みが発生する可能性がある、ということを知るきっかけにもなった。膝以外に痛みが出た際には改めて本書に戻ってきたいと思った。

【楽天ブックス】「一流ランナーは必ずやっている!最高のランニングケア 悩み別予防ストレッチ&トレーニング」

「1日10分も走れなかった私がフルマラソンで3時間切るためにしたこと」鈴木莉紗

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マラソンで3時間を切るための練習メニューを説明している。

様々なマラソン練習関連の本を読んでいる中で本書に出会った。 著者の練習メニューは、距離走、ミドル走、ペース走、インターバル走の4つのポイント練習を軸としており、距離走は長くゆっくり走るLSDではなく、レースペースに対してキロ15秒から30秒遅いペースとしている。

LSDについては人によって意見が分かれるところであるが、本書ではフォームが崩れてしまうという懸念から、ゆっくり過ぎるペースで走る練習は推奨していない。 参考までにサブ3.5を狙う人向けのそれぞれのメニューは次のようになっている。

  • 距離走(20km〜30km) 5分13秒〜28秒/km 月1〜2回
  • ミドル走(15km〜20km) 5分03秒〜21秒/km 週1回
  • ペース走(5kmまたは10km) 4分20秒〜23秒/km 3週間に1回
  • インターバル走 1000m×3〜5本 4分15秒以内 2週間に1回

部分的にでも取り入れてみたいと思った。 ランニングメニューの他にも、スポーツ未経験から社会人になってからマラソンを始めた著者ならではのエピソードや、女性向けのマラソンの悩みに答えたりなど、他のマラソン系の本にはない内容も含まれている。練習メニューは早速参考にしてみたいと思った。

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「ブレインメンタル強化大全」樺沢紫苑

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

精神科医の著者が、睡眠、食事、運動の人生のおける重要性と、より良い睡眠、食事、運動の仕方を語る。

著者自身多くの本を読んでいるようで、それぞれについて様々な研究結果を引用している。どこかで聞いたような話や、別の本で読んだ話も多く、「〜のようだ」「〜の研究もあります」など、自分自身は読んだだけで実験したわけでもなく、ただ著者自身が気に入った情報を切り貼りしただけという印象が拭えない。

著者自身かなりの健康マニアだということがひしひしと伝わってくるが、人間何かを信じ始めると欲しい情報ばかりが見えてくるもの。そんな傾向を警戒した上で、話半分に本書を読むのがちょうどいいかもしれない。

参考文献が末尾にしっかり書かれているので、興味を持った分野はオリジナルの本を読むのがいいだろう。

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「レンジ 知識の「幅」が最強の武器になる」デイビッド・エプスタイン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

世の中には早くから専門分野を決めてその分野で一流になった人と、いろんな分野を試してから一つの分野にたどり着き遅咲きながら一流になる人がいる。どちらのタイプが今後必要とされ、親として子供を育てる場合どちらのタイプを目指すべきなのか、様々な事象から語る。

本書で語っているのは、個人でも組織でも専門に特化することで起こりうる危険性である。様々な分野が確立され、その分野で研究し議論しその分野のなかで考えることに慣れて過ぎてしまうことで、別の視点に立てば簡単に解決することができるの気付かない、ということが起こるのである。 著者は、専門家と多様な知識を持った人間のバランスこそが、新しい分野を切り開いたり、これまで未解決な問題を解決するのに必要なのだという。

そして、インターネットによる誰でも情報に簡単にアクセスできるようになった今、専門家のニーズは以前より少なくなっていると語っている。

組織だけではなく、個人の技術やモチベーションについても同じことが言える。最近10000時間の法則などがあらゆる場所で語られており、それによって、早期教育への関心が高まっているが、本書の主張はそんな流れを考えすのに良いきっかけになるだろう。

早く分野を決めて取り組めば、たしかに人より先んじてリードすることはできるが、様々な分野を体験しないで決めた分野はモチベーションが保ちづらく、いろんな体験をしてからその分野に参加した人にやがて追い抜かれていくのである。

本書の魅力はその話を展開するなかで引き合いに出されるさまざまな話である。タイガーウッズとフェデラーに始まり、任天堂のゲームウォッチや、スペースシャトルチャレンジャーの話など、興味深い話があふれている。本書の語っている、知識の「幅」の重要性が理解できる人なら、そんな様々な実話や逸話もしっかりと楽しんで、自分の知識の「幅」の一部にしたいと感じるに違いない。

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「習慣が10割」吉井雅之

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
習慣の持つ力と、習慣の続け方を語る。

僕自身習慣化を得意としており、それによって自分のなりたい自分になれている気がするが、さらに精度を上げるヒントに出会えればと思い本書を手に取った。

序盤は習慣の重要性を語っており、世の中のすごい人たちは才能に恵まれたわけではなく、単に習慣を味方につけただけでそれは誰にでもできることだと語り、中盤以降は習慣をつくるための心がけについて語っている。

  • とにかく「ハードル」を下げる
  • ゲーム感覚でやる
  • 「仕組み」を作る

どれも習慣の得意な人はすでにやっていることだろうが、こうやって言葉として並べてみると、習慣化できない人の問題点が見えてくる。

また、面白いなと思ったのが本書で紹介している「クリアリング」という習慣で、自分の1日の行動を振り返る行為である。落ち込んだ日や、物事がうまくいってない時などは取り入れてみると面白いかもしれない。

メルマガやブログ、貯金など、若干考え方が古いなと感じる部分もあったが、その辺は著者がかなり年配な方のようなので仕方がないだろう。すでに習慣を実践できている人にとってはあまり学ぶ部分はないかもしれない。ただ、これから習慣をつくろうと本気で考えている人には、本書に大部分の習慣化に必要な考え方は書かれているので、きっと役に立つことだろう。

【楽天ブックス】「習慣が10割」

「30キロ過ぎで一番速く走るマラソン サブ4・サブ3を達成する練習法」小出義雄

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高橋尚子の指導者として有名な著者がその練習法を語る。

最近膝の調子が良く、また定期的にジョギングができるようになったので、そのジョギングの時間の密度を向上したく思い、マラソン関係の本を漁る中で本書にたどりついた。

本書は大きくサブ4向けとサブ3向けの練習メニューや考え方が書かれている。なかでも特徴的なのがすべての練習において後半にペースを上げることを重視している点である。サブ4は足づくりだけで達成できて、「心肺の強化」は必要ないとしている。練習はジョギング 、ビルドアップ、タイムトライアル、長く走るの4つの練習を繰り返し、基本的な考えは次の内容になる。

1.一週間に3日、足や心肺に負荷をかける練習日をつくる。残り4日のうち2日はジョギングで、2日は休み。
2.平日の練習時間はだいたい60分で。うち1日はポイント練習日にする。
3.土日はともにポイント練習日。うち1日は長い距離を走る。
4.3ヶ月のうち、最初の10週を通常練習、最後の3週を調整練習の期間とする。
5.通常練習の10週間は2週ごとに強度を強め、逆に調整練習の3週間は1週ごとに強度を弱める。

一方でサブ3を目標とした場合、インターバル走やペース走を含めた構成としてしており、次のような考え方で練習メニューを組むのを進めている。

1.一週間に3日、足や心肺に負荷をかける練習日をつくる。残り4日のうち3日はジョギングで、1日は休み。
2.平日でも、場合によっては練習時間が2時間ぐらいかかる日がある。
3.土日はともにポイント練習日。うち1日は長い距離を走る。
4.3ヶ月のうち、最初の10週を通常練習、最後の3週を調整練習の期間とする。
5.通常練習の10週間は2週ごとに強度を強め、逆に調整練習の3週間は1週ごとに強度を弱める。

最近いろんなところで議論が起きるLSDについては、著者はLSDという言葉は使っているが、単に長く走ることを指しており、一般的に言われるLSDのようにゆっくり走ることは意図していないようである。

具体的な練習メニューのほかに、オリンピックメダリストの有森裕子や高橋尚子とのエピソード、それ以外にも小出道場の練習生のレース完走記を紹介している点が面白い

【楽天ブックス】「30キロ過ぎで一番速く走るマラソン サブ4・サブ3を達成する練習法」

「How to Win Friends and Influence People」Dale Carnegie

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

人にどのように好意的な印象を与え、自分の求めている人間関係を作り出すのか、そんな方法について書いている。 なんといっても驚くのは、本書の初版が1937年に書かれているということ。その後の改定では、書かれている例などを時代の変化に合うように、また新たな年代の人にもわかりやすいように書き換えただけと言うこと。つまり、人間の本質は時代を経てもほとんど変化がないということである。しかし、人に怒りをぶつけたり嫉妬に狂って物事をまっすぐ考えられない人はいつの世の中にもたくさん存在するのである。

基本的にどのように人に好印象を与えるか、どのように自分の意見を相手が受け入れやすい形で伝えるか、という点が多く書かれている。 昨今コーチングなどの書籍も多く、ただ叱るだけでは何も解決しないことを認識している人も多いだろう。そんなわけで本書に書かれているすべてが新鮮だというわけではなかったが、ぜひ今後実践したいと思ったのが次の項目である。

Techniques in Handling people 人をうまく扱うには
3.Arouse in the other person an eager want. 相手の中に欲求を起こせ

Make People Like You 人に自分を好きにさせるには
2.Smaile 笑顔でいなさい。
6.Make the other person feel important and do it sincerely. 相手に自分が大事にされていると思わせ、それを誠実に行いなさい。

Win People to Your Way of Thinking 人に自分の考え方を伝えるには
5.Get the other person saying “yes, yes” immediately. まずは相手にはいと言わせなさい。
7.Let the other person feel that the idea is his or hers. 相手にそのアイデアは彼のものだと思わせなさい。
10.Appeal to the nobler motives. さらに崇高な目的のためだと主張しなさい。

Be a Leader リーダーになるためには
4.Ask questions instead of giving direct orders. 直接の命令をするのではなく、問いをなげかけなさい。

すべての考え方が新鮮だったわけではなかったが、本書には多数の歴史的事実が例として含まれており、それらはどれも面白く好奇心を刺激してくれた。こうして事実を話として聞くと、単にフレーズを聞くよりもはるかに記憶に残る。その点でも本書は評価が高いのだと感じた。時々読み返したいと思える一冊である。

「The Cruellest Month」Louise Penny

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

カナダの長閑な田舎町Three Pinesで、町の知り合いの間で開かれた交霊会の最中に女性が亡くなった。Armand GamacheはBeauvoirとNicholなどとともに真相の究明に乗り出すのである。

三作目であるが、前二作と同様にThree Pinesで起こった事件を扱う。今回亡くなったのはMadeleineという町中の人から好かれていた女性で、誰からも好かれる女性だったからこそその殺人の動機が事件解決のカギとなる。そして、今回もThree Pinesの人々の魅力は健在である。詩人のRuth Zardoは見つけた卵から鳥の雛を孵化させる。画家のClaraは夫のPeterの助けを借りて、自らの作品作りに悩む。そんななか、本を愛する黒人女性Myrnaの人間関係をするどく指摘した言葉が深く印象的である。

Attachment masquerades as Love, Pity as Compassion and Indifferences ad Equanimity.
依存は愛を装い、憐れみは思いやりを装い、無関心は冷静さを装う。

また、事件解決と並行して、前二作品でGamacheの過去の大きな出来事としてほのめかされてきた、Gamacheが警察内部の不正を明らかにしたArnot事件の全貌が、Beauvoirの口から語られることで明らかになっていく。

今まで名前としてしか存在してなかった登場人物のGamacheと一緒に働く理由や、Gamacheの過去を不安に思っている様子が描かれ、個性を際立たせてくる回である。せっかく個性が立ってきた登場人物を忘れないうちに続編を楽しみたい。