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とにかく面白い

ページをめくる手が止まらない、寝る時間さえ惜しくなる最高のエンターテイメント

泣ける本

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悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

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世界の大きな流れを知りたい人向け

深い物語

いろいろ考えさせられる、深い物語

生き方を考える

人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「55歳からのハローライフ」村上龍

55歳からのハローライフ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
50代のどこにでもいそうな男女を主人公にした5つの物語。50代になって人生の転機を迎え、新しい人生の物語である。

夫と離婚して婚活を始めた女性の話、定年後妻とキャンピングカーで全国を回ることを楽しみにしていた男性の話、本で出会った女性に恋をするトラックドライバーの話など、どれも魅力的な物語である。

個人的にはキャンピングカーの物語が印象的である。同じように喜んでくれると思った妻が、キャンピングカーの話に思っていたほど乗ってこないのである。そして少しずつ、妻や娘にもそれぞれ長い間育んできた楽しみの時間があることを知る。また、自分自身も仕事という時間の過ごし方がなくなった今、新たな生き方を改めて考え始め、多くのことに気付き始めるのである。

年齢を重ねて、人生が生きる価値のないものになっていく、などと考えている人がいるのなら本書はまさにおすすめである。何歳になっても人生は青春であり、ドラマであり、自分自身は主人公なのだ。どんな人の人生にもじっくり語ることのできる物語があることを再認識させてくれるだろう。

【楽天ブックス】「55歳からのハローライフ」

「置かれた場所で咲きなさい」渡辺和子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ノートルダム清心学園理事長の著者が生き方を語る。

前向きな人生を送るための考え方を語った本は、昨今世の中にあふれており、本書もそんななかの一つである。したがって、読むことに意味はないとは言わないが、この手の本をたくさん読む人にとってはそれほど印象的な言葉はないかもしれない。ただ、すでに出版時点で80歳を超えていることから、人間の晩年になってこそ見える考え方が伝わってくる。

老いるということにおいて、一番大切な仕事は、ふがいなくなった自分を受け入れて、いつくしむということだと気付きました。
一生の終わりに残るものは、我々が集めたものではなく、我々が与えたものだ

ときどきその職業的背景ゆえか、キリスト教や神を引用して語ることで、無心論者には受け入れがたく感じるかもしれない。

【楽天ブックス】「置かれた場所で咲きなさい」

「カラフル」森絵都

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
死んだ「ぼく」は天使によって人生の再挑戦の機会が与えられ、小林真(こばやしまこと)という中学3年生の人生を期間限定で引き受けることになる。

「ぼく」は小林真(こばやしまこと)を手探りをするように探りながら、その家族や友人とその関係を把握していく。そして、小林真(こばやしまこと)という人間が、絵は得意でありながらも、家族や友人との関係にいくつかの問題を抱えていることに気づいていく。

死んだ人間に再挑戦の機会が与えられる。この物語の流れはすでに多くの作家が使っている。すぐに思い浮かぶところだと「幽霊人命救助隊」「ミッドナイトライブラリー」で、どちらも自信を持って勧められる作品で、ある意味、この流れで描かれた物語にそうそうハズレはない。本書も例外ではない、他の作品にない点を挙げるなら、感受性豊かだが、人生思い通りに行動するほど時間もお金もない中学生を主人公に据えている点だろう。

それでも小林真(こばやしまこと)の人生を引受けることとなった「ぼく」は、できる範囲で友人や家族に自分の考えを伝えていく。知らないまま、伝えないままでいることよりも、事実と向き合うことを選んでいくのである。それによってこれまで見えてなかった、家族や友人たちの新たな側面が見えてくるのである。

ありがちな設定の物語とは読む意味がない物語という意味ではない。この手の物語は何度でも読むべきで、何度でも人生を前向きに補正してくれる作品である。

【楽天ブックス】「カラフル」

「華麗なる一族」山崎豊子

華麗なる一族

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
阪神銀行の頭取である万俵大介(まんびょうだいすけ)とその家族を描く。

長男の鉄平(てっぺい)は関連会社である阪神特殊鋼の専務を務め、次男の銀平(ぎんぺい)は大介(だいすけ)と同じ阪神銀行で働く。面白いのは、家庭教師である相子(あいこ)の存在である。相子(あいこ)は家庭教師として万俵家と関わることになったにも関わらず、今では、万俵家の権力を広げるために、息子や娘たちの縁組みに奔走するのである。そして大介(だいすけ)は相子(あいこ)と妻の寧子(やすこ)と交互に夜を共にするのだ。

そんな複雑に入り組んだ銀行一家を率いる大介(だいすけ)だが、年銀行再編の流れのなかで、業界ランクと10位として、他行に吸収されず、その地位を守ったまま阪神銀行を大きくする方法を模索していく。その過程で銀行間や政治家との駆け引きが詳細に描かれる点が面白い。

山崎豊子の物語は、現実の出来事に対して緻密に調査しそれをフィクションとして作り上げるだけに、本作品も実際に起こったことがベースになっているだろうと考えると面白い。航空業界、報道、医療などについて書いているので次回は医療業界を描いた名作「白い巨塔」を読みたいと思った。

【楽天ブックス】「華麗なる一族(上)」「華麗なる一族(中)」「華麗なる一族(下)」

「Building a storybrand」Donald Miller

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ブランディングの手法について語る。

映画に必要な要素とブランディングに必要な要素は基本的には同じで、次の7つの要素だという。

1.登場人物 Character
2.問題 Problem
3.案内役 Guide
4.計画 Plan
5.行動 Calls Them to Action
6.失敗 Failure
7.成功 Success

次の3つの質問に答えられるだろうか。

1.What does the hero want? ヒーローは何を求めているのか
2.Who or what is opposing the hero getting what she wants? 誰がまたは何がヒーローがそれを手にすることを妨げているのか
3.What will the hero's life look like if she does(or does not)get what she wants? ヒーローがそれを手にした時、ヒーローの人生はどうなるべきか

そしてユーザーが疑問に思うであろう、次の点が明確だろうか。

1.What do you offer? あなたは何を提供しているのか?
2.How will it make my life better? 私の人生をどのようによくするのか
3.What do I need to do to buy it. それを買うために私は何をする必要があるのか

改めて、本書に書いてあることを考えながら、僕が仕事で取り組んでいるサービスを考えた時に、ユーザーへのその成功をはっきりと見せられていないと感じた。

ヒーローの問題を外面的、内面的、哲学的と3つの領域に分けている点も印象的である。それぞれをよりわかりやすくすると次のようになる。

  • 外面的… 目の前にある問題を解決したい
  • 内面的… こんな人間になりたい
  • 哲学的… 世の中に貢献したい

僕自身が関わっている仕事やサービスなど、様々なものについて、改めてその価値をうまく見せられているか考え直すきっかけとなった。

「ドローイングレッスン」ジュリエット・アリスティデス

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

先日読んだ、「ペインティングレッスン」の同じシリーズのドローイング版である。「ペインティングレッスン」が新たな視点をもたらしてくれたので、本作にも期待して手に取った。

本書はデザイン、ライン、明度、フォルムの4つの視点でドローイングを解説する。その過程で、さまざまな歴史的な美術の背景や、作品を紹介している。デザインの章では黄金比について多くの例を交えて解説しており、改めて黄金比の重要性を感じた。ちなみにフォルムとは3次元の錯覚を作り出すことで、写実主義の芸術家がたちが没頭した、絵に説得力を持たせるためには不可欠な技術なのだという。

測定法についても3つの測定法、サイトサイズ法、関係法、比較法を語っており、度々出てくるブロックインという手法ともに、長所と短所に、軽く触れているだけで、正確な解説には至ってないので、別の書籍などで理解できるまで調べてみたいと思った。

ペインティングレッスンと同様に明度の重要性を改めて感じるとともに、絵画とはいえ、不要なものを削ぎ落とし、意図した通りの再構成することが良い作品を作るためには重要で、ただみたものを写し取るだけではなくデザインと非常に似たものだと感じた。

「ペインティングレッスン」と同様に、人生をすべて費やしても足りないのではないかと思わせるぐらい、絵画の深さを感じさせてくれる一冊である。

【楽天ブックス】「ドローイングレッスン」

「ネオ・ヒューマン 究極の自由を得る未来」ピーター・スコット・モーガン

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
2017年に運動ニューロン疾患(ALS)と診断された著者は自らを実験台として少しずつ自分の体を機械に置き換えていく。

読みはじめてそういえばどこかで聞いたことある話だと気付いた。本書に限らずさまざまなメディアに取り上げられているという。

本書では、著者の人生の転機となった出来事や、大きな決断の過程を描いている。問題の多くはは、正常な器官を手術するために医師を説得することや、保険の適用だったりと、著者自身よりも周囲の人間に起因する点が面白い。本書でも行っていることではあるが、体の大部分を置き換えてまで生き続けることは、すでに技術的な問題ではなく人間の心理的な抵抗感による問題なのだろう。ちなみに著者はイギリスの最初の合法的なゲイカップルという点も興味深い。ゲイカップルやALSに限らず、先駆者は後続の人々に勇気や希望を与えることを改めて感じた。

著者のやっていることはものすごく斬新で、しかもそれは病気で少しずつ自由を失っていく人に希望を与えるものである。著者の試みに対しては人類の新たな一歩として賞賛しかない。

ただ、残念ながら本書は本としてはかなりつまらない。おそらくALSと戦う様子の間に、自身のゲイとしての人生も伝えようとしている点にあるのだろう。間に学生時代や病気になる前のエピソードを挟み込むから、章が変わるたびに文脈を把握するのに時間がかかるなど、読みにくくてたまらなく、なんども途中で本を置こうと思ってしまった。

【楽天ブックス】「ネオ・ヒューマン」

「直感と論理をつなぐ思考」佐宗邦威

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
PDCAによる改善の流れは今後ますます自動化され、正解がないものに取り組む直感的な発想法がより必要になるという。本書では直感的な考え方の必要性とそれを生み出す手法を語る。

本書ではこれから社会が向き合う2つの危機をオートメーションの波とVUCAの霧としている。VUCAとはVolattility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)である。そしてそんななか、論理的、戦略的思考ではいずれ限界がくると説いている。つまり、ゲームに勝つことよりも、ゲームを作り出すことこそた重要なのだという。「自分モード」から「他人モード」、「1→∞」から「0→1」、「Vision-Driven」とから「Issue-Driven」など様々な言い回しを使っているが言っていることは基本的に同じである。

「いかに答えを探すか」ではなく、「そもそも答えなどない」という前提で動くことが、大半の人・組織に求められるようになったわけだ。

そして、後半では「0→1で発想する様々な手法を紹介している。プロトタイピングメソッドによって早く作って早めに失敗することの重要性や、広く全体を見る鳥の目と狭く集中して物事を見つめる虫の目を使い分ける方法や、「画像」と「言葉」を往復する思考法を紹介している。

なかでも手書きと絵の重要性を説いている点が印象的である。どんなにアプリなどのデジタルツールが進歩したとしてもアプリの立ち上げまでの時間を考えると、すぐに開けてかけるノートとペンにはかなわないと著者は主張するのである。

僕自身もすでにコンセプトが出来上がっているものを作り上げるよりも、コンセプト自体を創造することに価値があると考えているので、本書で行っていることには共感する。アイデアの出し方についても、僕自身デザイナーとして、デザイン案を構築する中で、言葉とイメージを往復しながらアイデアを少しずつ固めていく手法をよく使う。本書で書かれている内容は、その手法の効果を裏付ける形となった。

ツールについては、iPadのApplePencilの登場でかなりアナログの感覚をデジテルツールでも再現できるようになったと感じているが、確かにアクセスや、アプリを開くまでの時間を考えると、本書で言っているようなこともあるのかもしれないと感じた。ノートを一冊常に持ち歩くように習慣づけることは間違い無く良いことだろう。さっそく素敵なノートを一冊購入しようと思った。

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「The Seven Husbands of Evelyn Hugo」Taylor Jenkins Reid

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
その人生のなかで7回の結婚をしたことで知られる大女優Evelyn Hugoに、伝記を書くように名指しで指名されたMoniqueはその理由に不信を抱きながらもその仕事を請けることとなる。そして、伝記を書くためのインタビュー取材を通じて少しずつEvelyn Hugoの人生が明らかになっていく。

もちろんフィクションではあるが、Evelyn Hugoの語るその人生を通じて、結婚や離婚が有名になるための一つの手段でしかないことを思い知らされる。また、映画のチケット販売を伸ばすために情報をコントロールすることを日常的にやっているんだろうと改めて思った。

やがて、取材からEvelyn Hugoが人生を通じて本当に愛していた人間が明らかになっていく。また、取材を通じてMonique自身にもその心や振る舞いに変化が生じていく。自らも夫と別居状態のMoniqueは自分自身の結婚生活にも区切りをつける決意をする。そして、最後には、なぜ、Moniqueをその担当者として指名したのかも明らかになるのである。

女性がこの著者を勧めることが多いので、本書も、ひょっとしたら女性の方がもっと感じる部分が多いのではないだろうか。特にEvelyn Hugoがスターとして活躍した60年代、70年代は、今以上に人種間差別は根強かっただろうし、またLGBTに対する理解も進んでいなかったことだろう。そんななか自らの本来の姿と、キャリアとの間で悩み生きていく女性の様子は、ひょっとしたら現代にも通じる部分があり、多くの女性の心を打つのかもしれない。

Taylor Jenkins Reidの本は本作が2作目である。前回読んだ「After I do」は比較的軽い印象を受けたので、本作とはかなり雰囲気が異なるのを感じた。他の有名作品もぜひ読んでみたいと感じた。

「The House in the Cerulean Sea」TJ Klune

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
孤児院の監査を仕事にしているLinusはその徹底した仕事からMarsyas島の孤児院の調査を依頼され、飼い猫CalliopeとともにMarsyas島に向かう。

Linusすぐにその孤児院には多くのいわくつきの子供たちがいることを知る。特に大きな問題は反キリストであるLucyである。しかし、やがて子供たちと触れ合う中で少しずつLinusの心は変わっていき、彼らも世の中のすべての子供達と同じように、守られるべき存在だと気づいていく。そして、それまで味気ない生活をしてきたLinus自身の人生も豊かな感覚が蘇ってくるのである。

一方、その孤児院を閉鎖しようとするExtremely Upper Managementは、Linusからその孤児院の問題を指摘する報告を待っている。やがてLinusは自らの仕事を守るために行動すべきか、それとも、暖かい孤児院の人や子供達を守るために行動すべきか葛藤するようになるのである。

なんといってもLucyを中心に、その孤児院にいる子供たちの様子がかわいい。彼らの異質な見た目が小説からだとなかなか伝わってこないのが残念だが、その振る舞いの愛らしさは伝わってくる。

見た目や生まれにかかわらず、人には生きる権利があり、特に、守られるべきだということを、このような形にすることで強く訴えてくるようだ。

「配色の設計 色の知識と相互作用」ジョセフ・アルバース

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
少しずつでも色彩や形に対しての感覚を向上し、またそれを説明する言葉を積み重ねたいと考えており、本書もそんな過程の中でたどり着いた。

書籍自体比較的新しいのだが、海外で初版が発行されたのは1963年と約50年前ということだから驚きである。本書には色の感覚や相互作用について理解を深めるためのさまざまな学習法が掲載されており、なかなか読んだだけではわからず、しっかり理解するためには手を動かしたり、カラーペーパーをつかったりしないとならないだろう。

それでも、図を見たり説明を読んだりするだけでいくつか新しい考え方を身につけることができた。例えば、グラデーションスケールはある色に比率1234の濃さの黒を加えるよりも、1248の比率で加える方が自然になることや、正三角形を9等分したカラーシステムなど、いずれも実践に使用していきたいと思った。

現段階ですべての学習法を試す気にはなれないが、このような本があることを知り必要な時にまた手に取れるようにしておくだけでも大きいと感じた。デザイナーコミュニティなどの演習として取り入れるのも面白いかもしれない。

【楽天ブックス】「配色の設計」

「ペインティングレッスン」ジュリエット・アリスティデス

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
有名な絵画の解説とともに、著者がその生徒たちに実践させている練習方法を紹介する。

上手なアーティストと自分の絵を比べると、今更ながらに技術にかなりの差があるのと感じ、その差を埋めるためにどのようなことをすればいいのかを知りたくて本書にたどり着いた。

本書では、構図、明度、色について説明しながら、有名な美術作品を紹介している、また、それとあわせて7つの練習の手法と実際の生徒たちのその練習の様子を紹介している。

  • モノクロの模写
  • モノクロのキャストペインティング
  • 明度を基調にした静物画
  • 暖色と寒色によるキャストペインティング
  • カラーの模写
  • カラーの静物画
  • 人物画

1つの絵を白黒に変換するときに、明暗をどのように解釈するかにも何通りものパターンがある。そのパターンを検討した上でベストなものを選択するという考えを今まで持っていなかったことに気づかされた。美大等でデッサンにかける時間を考えると当たり前なことかもしれないが、改めて、実際のものを見てそれを白黒に変化するデッサンの重要さを知ったので早速毎日の習慣に取り入れたい。

また、拭き取り技法、キャストペインティング、サイトサイズ法など、わからない用語がいくつかあった。おそらく美術を専門的に学んだ人にとっては常識だと思うので、しっかり調べて理解したいと思った。同じ著者の作品に「ドローイングレッスン」というのもあるので本書に続いて読んでみたい。

【楽天ブックス】「ペインティングレッスン」

「In Her Tracks」Robert Dugoni

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
産休から復帰したTracyは、人員の都合から未解決のままお蔵入りとなった過去の事件を担当することとなる。数年前に行方不明になった女の子や、売春婦の操作に乗り出す。

Tracy Crosswhiteシリーズの第8弾である。すでにシリーズを通じて、再婚し、妊娠し、出産するという40歳を過ぎて人生の転機を次々に迎えているが、今回は出産後の職場復帰にあたる。犬猿の中である上司のNolascoの計らいで、元々のチームに戻ることができずに、未解決事件を時間の許す範囲で単独で捜査することとなる。やがて、過去の経験から少しずつ行方不明になった若い女性の事件に感情的に入れ込んでいくこととなる。

また、未解決事件の捜査と並行して、女性のジョギング中に行方不明になった事件を担当するKinsがTracyに助けと求めてくる。早くから、最後の目撃証言があった場所の近所に住む3人兄弟の言動に疑いを持ち、少しずつ証拠集めをしていく。

複数の事件捜査と並行して、久しぶりにTracyとKinsのコンビが復活したのが嬉しい。すでに3人の子供たちを育て終わったKinsがTracyに子供たちとの貴重な時間を語るシーンは、シリーズの中では初めてではないが、以前にも増して印象的である。

Every night when I get home. I keep asking myself where the years went. Don’t get me wrong, I love with Shannah, but those years with the boys… those quiet times when their eyes lit up and they believed that anything in the world is possible.
毎晩家に帰るたびに思う。あの日々はどこへ行ったんだろう。もちろん妻との時間は良いものだが、子供たちとの日々は…それは彼らの目が輝いて、世の中はなんでも可能なんだと信じている感じる静かな時間・・・。

すでに8作品目となるとネタが尽きそうな気もしてくるし、凶悪事件ばかりを扱うのも不自然であるが、本作品では発生直後の事件と、未解決事件を並行して捜査するという新しい描き方で飽きさせず、しかも最後は久しぶりに泣きそうになった。

現在、Patricia Cornwell、Louise Penny、Jeffery Deaverなどいくつかの警察小説シリーズを読み続けているが、実はあまり学びがなく時間の無駄なのではと感じ始めていたのだが、本作品が面白かったために考え直さなければと感じた。

「三体III 死神永生」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
女性の科学者である程心(チュン・シン)は三体危機の勃発によって、類の存続のための計画に関わっていくこととなる。

三体シリーズの完結編である。「三体II」で三体文明との均衡状態に至った人類のその後を、女性の科学者である程心(チュン・シン)を中心に描いている。

序盤は、三体文明の脅威にさらされ人類が智子(ソフォン)に監視されるなか程心(チュン・シン)が、人間を三体文明に送るという階梯計画(ラダープロジェクト)に関わっていく様子と、並行して、程心(チュン・シン)の大学時代の同級生である雲天明(ユンティエン・ミン)が、余命わずかとなり、死の間際に程心(チュン・シン)に星をプレゼントする様子を描いている。やがてこの2人の関係が人類の存続の大きな鍵となっていくのである。

また、暗黒森林抑止によって、三体文明との緊張状態保っていた人類だったが、暗黒森林抑止を保つ執剣者(ソードホルダー)の交代の時を迎える。三体文明はその交代の瞬間を狙って大きな動きを仕掛けてくるのである。

後半では、人類の存続をかけた3つの計画を中心に描く。大量移民計画、全宇宙への安全通知、高速宇宙船の開発である。程心(チュン・シン)は最期まで人類の存続に関わる存在となっていくのである。

中盤以降は程心(チュン・シン)も冬眠を繰り返し、時代がこれまでと比較しても格段に早く未来へ進んでいくため、現代から考え方も含めての乖離が大きくなり、理解が追いつかず、あまり楽しめなかった。三体全体の総括としては、「三体II 暗黒森林」が一番面白かった。「三体」全体的に哲学的な考えを、SFのなかに取り入れているのが大きな魅力と入れるのかもしれない。

個人的には、種と種の対立が、まるで個と個の対立のように描かれていて、実際にはこうはならないだろうと思える箇所が多々あった。例えば環境破壊に代表されるように、1人1人の人間は常に人類という種族の数百年後の存続を考えて行動をしているわけではない。暗黒森林のような脅威によって2つの種族が均衡状態になることは実際には簡単ではないだろう。

現代には存在しない技術や文化を描かなければSFとはなり得ないにも関わらず、現代の技術や文化から離れすぎると理解されないという、SFというカテゴリの創作者が持つであろう葛藤を感じた。そういう意味では本作品と比較される「プロジェクト ヘイル・メアリー」の方が程よい点をついていると感じた。

【楽天ブックス】「三体III 死神永生(上)」「三体III 死神永生(下)」

「ヨハネス・イッテン 色彩論」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

僕自身デザイナーとして生きているので、色や形の感覚を深められる練習や知識はは徹底的に取り入れていこうと考えていて、そんななか本書に出会った。

世の中様々な色環が語られているが、本書の12色環は赤、青、黄の純色を基準にして分割していくもので、非常にわかりやすく、再現しやすいものである。また、レッド・オレンジとブルー・グリーンの第3次色をそれぞれ暖色と寒色の頂点とする点もわかりやすい。

7つの色彩対比について扱っている。色の多少の知識がある人なら色の対比が絵画やデザインにおいて重要なことはすでに知っていることだろう。しかし、7つもの対比を挙げることができるだろうか。本書では次の7つの対比について扱っており、それぞれに対して有名なアート作品も紹介している。

  • 色相対比 例)「聖母マリアの戴冠式」アンゲラン・シャロントン
  • 明暗対比 例)「レモン、オレンジとバラ」フランシスコ・デ・スルバラン、「黄金のヘルメットをかぶった人」レンブラント
  • 寒暖対比
  • 補色対比 例)「サン・ヴィクトワール山」ポール・セザンヌ
  • 同時対比 例)「衣服を剥ぎ取られるキリスト」エル・グレコ、「夜のカフェ」ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ
  • 彩度対比 例)「不思議な魚」パウル・クレー
  • 面積対比 例)「イカルスの堕落」ピーターブリューゲルI世

あまりいままで意識してこなかったのは同時対比である。参考に挙げられているアート作品を見て理解し、自分でも同時対比を利用した作品を作ってみにつけようと思った。

また、純度の明るさについての話も印象的だった。明るさを12段階に分けた時、純色の黄色は明るい方から4番目にくるが、青は9段目、赤は8段目にくるという。つまり、青、赤、黄を明るさで揃えるような場合には純色を使うことはできないのである。なんとなく体験から知っていることをこうして明確に言語化してもらうとさらに理解が深まる気がする。また、補食に対する調和のとれる比率についても紹介している。

  • イエローとヴァイオレットは1:3
  • オレンジとブルーは1:2
  • レッドとグリーンは1:1

もちろんこの辺は多少考案者の主観が入っていることは否めないが、スタート地点として知っておくことは役に立つだろう。

すでに出版から50年経っている本だが、いろいろ新たな視点をもたらしてくれた。

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「The Midnight Library」Matt Haig

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
人生に失望し自殺を決意したNoraは生と死の間で不思議な図書館にたどり着く。

Noraがたどり着いた図書館で、学生時代の図書館の先生だったMrs Elmは案内する。そこの本はすべてNoraの人生の一つ一つの決断によってできる違う人生のパターンで、どれでも好きなだけ体験できると言う。

Noraはいくつかの人生を体験する。選んだ人生によって、元の人生と同じように悲しいことが起きることもある。一方、元の人生では死んだ父がある人生では健在だったり、元の人生では普通に生活している友人が、他の人生では交通事故で死んでいたりするのである。

印象的だったのは、元の人生で外で死んだ飼い猫Voltaireを外に出さない人生を体験したシーンである。

The year you had him was the best of his life… you don’t see yourself as a bad cat owner any more.
あなたが彼を飼っていた時間は、彼にとって最高の日々だったのです。…これであなたはもう自分を悪い飼い主だったとは思わないでしょう。

さまざまな自分の人生を体験する中で、Noraは人生について重要なことを学んでいく。

Every life she had tried so far had really been someone else’s dream… if she was to find a life truly worth living, she realised she would have to cast a wider net.
ここまで体験した人生はどれも他の誰かの夢だった。本当に自分自身に価値のある人生を見つけるためには、もっと広く体験しなければだめだと悟った。

他人の夢を生きないで自分の夢を生きる。当たり前のこととはいえ、世の中このように苦しんでいる人がたくさんいる。周囲の人の勧めたことを人生として選んで、「あの人のせいで自分はこんな不幸だ」と文句を言い続ける人である。今幸せではないと感じている人はもちろん、十分幸せな人生を送っている人もその幸せの密度を高めるために読んでほしいと思った。

「三体II 黒暗森林」劉慈欣

三体II 黒暗森林

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
400数年後に三体文明からの侵略艦隊が到達することが明らかになり、また、地球は智子(ソフォン)によって監視されている。そんななか地球の未来は4人の面壁者に託されることとなった。

三体の続編である。ようやく物語が大きく動き始める。地球の動きは、三体文明の解き放った智子(ソフォン)によって監視されているが故に、4人の面壁者は地球を守る計画を、頭のなかだけにとどめて公にすることはできないが、あらゆるリソースを理由を言わずに自由に使える権限を持つのである。そして、本作品は面壁者の1人である羅輯(ルオ・ジー)が主に中心となって描かれる。

序盤はそんな4人の面壁者の苦悩や、計画を描く。もちろん行動から簡単にその内容が明らかになってしまうようでは、三体文明にも筒抜けになってしまうので、計画の核となる部分は頭の中にだけながら、それぞれの面壁者は行動を開始していくのだが、大きなリソースを使う権力なだけに、政治的な駆け引きも絡んでいく。また、一方で地球の三体文明を支持するグループ、地球三体協会(ETO)はそれぞれの面壁者の計画を破壊する、破壁人(ウォールブレイカー)を割り当てるのである。

そして、後半は185年後の様子を描く。羅輯(ルオ・ジー)を含む何人かの面壁者は冬眠して時を飛び越え、一方で三体文明の解き放った探査機が太陽系に到達し、地球は三体文明と初めて向かい合うこととなるのである。

正直、前作「三体」は物語展開に乏しく、三体の前評判が高すぎたので若干がっかりしたのだが、本作品は一気に物語が動いて最後まで期待を裏切らない展開となった。本書で三体文明との決着はついたようにも見えるので、むしろ三体IIIではどのような物語が描かれるのか非常に気になってくる。

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「The Push」Ashley Audrain

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
BlytheはFoxと結婚して娘が生まれるが、やがて娘と打ち解けられない自分に気づいていく。

Blytheの母としての苦悩を描く。興味深いのは、並行して時代を遡ってBlytheの母Ceciliaとその母Ettaの、親子の様子や、Blytheの子供時代、つまりBlytheとCeciliaの親子の様子も明らかになっていく点だろう。Ceciliaを愛することができないEttaはやがて別の人生を選ぶし、母から愛されなかったCeciliaもBlytheに対して良い母でいることができないのである。

そして現代に戻り、Violetとの仲がうまくいかないと感じるBlytheだったが、2人目のSamが生まれたことで人生が好転していくのである。

正直、なかなか受け取り方が難しい内容である。親から愛されなかった子供は、親になった時に子供をうまく愛することができない、とはたびたび聞く話ではあるが、必ずそう言う悪循環が続くわけでもないだろう。また、Blytheは娘のVioletとは難しい時期もあったが、息子のSamに対しては最初から愛情を持っており、性別によって感じる行動が異なることもあるのかもしれないと感じた。

むしろ母を経験した女性の意見を聞いてみたいと思った。男性にはなかなか面白さがわからないかもしれない。

「滅びの前のシャングリラ」凪良ゆう

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
1ヶ月後に地球に隕石が激突することが明らかになる。そんな滅亡の前の人々を描く。

小学生の江那友樹(えなゆうき)はクラスではいじめられっこという存在でありながらも、地球滅亡を前にクラスのヒロインである藤森さんに少しずつ近づいていく。また、目力信士(めぢからしんじ)は、40歳でヤクザとして生きてきたが、知り合いのヤクザか殺しの依頼されて実行に移そうとする。そんな2人を含む4人の視点から滅亡前の様子を描く。

地球滅亡を前にして、人々はずっと会いたかった人に会いに行ったり、好きな人に告白したり、略奪や欲望のままに行動したりする。そんな少しずつ混沌としていく世界の中で、藤森さんを守ろうとする友樹(ゆうき)や昔の恋人に会いにいく信士(しんじ)の前に様々な障害が立ちはだかるのである。

正直、地球滅亡前の人々の行動がなんとも現実感なく感じてしまうのは僕の想像力の欠如からなのだろうか。多くの人は残りの時間を考えると、使いきれないほどのお金を持っていることになるのし、食料も国としては余ることになるので、実際にはそこまで略奪する必要もなく、最後まで倫理的に行動する美学を持って普段通り行動する人が本書で描かれるよりも多いのではないかと感じてしまった。

著者の別の作品「流浪の月」が良かったので本書も読もうと思ったのだが、正直今回はあまり深みを感じなかった。ひょっとしたら、著者のなかにこの特殊な設定を通じてしか訴えられないものがあったのかもしれないが、残念ながら理解できなかった。

【楽天ブックス】「滅びの前のシャングリラ」

「税金を払うやつはバカ!」大村大次郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
国税局で10年間働いてきた著者が税金について語る。

昨今、自身の収入が少しずつではあるが増えてきたせいか、税金を意識する機会が多くなった。そんななか少しでも節税ができればと本書にたどり着いた。

面白いのは、国税局で働いてきた経歴を持ちながらも、税金をできるかぎり払わないことを推奨している点である。本書では個人事業主から会社員まで、支払う税金を少なくするための様々な方法を説明している。また、あわせて、日本の税金の制度のよくない点も説明している。

残念ながら会社員の僕がすぐに適用で起用できそうな方法は、せいぜい医療費控除に適用できる出費を知っただけで大きなものはなかった。むしろ節税の方法よりも、税金の制度について新たな視点をもたらしてくれた。例えば、消費税が公平な制度ではない、というのはよく耳にするが、消費税が格差社会を作るとまでは思っておらず、本書を読むまでしっかり理解していなかった。また、同様に消費税が非正規雇用を増やすことに貢献しているという視点も新鮮だった。

節税対策としてすぐに行動できる内容は少なかったが、税制度に対して新たな視点をもたらしてくれた。

【楽天ブックス】「税金を払うやつはバカ!」