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とにかく面白い

ページをめくる手が止まらない、寝る時間さえ惜しくなる最高のエンターテイメント

泣ける本

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悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

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世界の大きな流れを知りたい人向け

深い物語

いろいろ考えさせられる、深い物語

生き方を考える

人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「火口のふたり」白石一文

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
賢治(けんじ)は従姉妹直子(なおこ)の結婚式のために帰省し、そこで久しぶりに直子(なおこ)と再会する。結婚式までの二人の様子を描く。

賢治は41歳、直子は36歳というアラフォーのひとときの関係を描く。

賢治(けんじ)は離婚経験があり、直子は独り身でこれまでフリーターとして生活してきた。そんな人生に心から満足されてない二人の、結婚式当日までの期限つきの関係からは、人生の矛盾や教訓が見えてくる。直子(なおこ)と賢治(けんじ)それぞれが別れ際に語るコメントが印象的である。

生きてるだけで楽しいって思える人と、成功しなきゃ楽しくない人がいたら、生きてるだけで楽しいって思える人の方が何倍も得だ

いまやりたいことをやっていると、人間は未来を失い、過去に何も残せない。明日のために必死の思いで今日を犠牲にしたとき、初めて立派な昨日が生まれる。
俺たちの住むこの社会において最大にして最善と見做されているルールはこれだ。

白石一文の物語は、「私という運命について」「一億円のさようなら」など、深みを感じさせる作品が多いので、今回も久しぶりにそんな世界に浸りたいと思って本作品を手に取ったが、残念ながらそこまで印象的なものではなかった。

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「具体と抽象」細谷功

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
具体と抽象について語る。

人間は動物に比べてずっと抽象的な概念の扱いに長けている。本書ではさまざまな事例を交えて、具体と抽象について語っている。例えば、人間同士の会話などで問題となる、物事の伝わりやすさは、想定している抽象度が語り手と受け手の間で異なることによって起きる。

最も印象的だったのは抽象と具体の世界をマジックミラーに例えた章である。

上(抽象側)の世界が見えている人には下(具体側)の世界は見えるが、具体レベルしか見えない人には、上(抽象側)は見えないということです。

基本的に具体側に近づけば近づくほど、誰でも理解できるようになっていく。逆に言えば、抽象側を広く理解できる人ほど、多くの視点を持っている賢い、時には変人と呼ばれる人間なのだろう。本書では相対性理論のアインシュタインを挙げているが、一般の人には問題の意味すら理解できない数学の問題なども、それのわかりやすい例である。

結局、多くの人が知りたいのは次の2点である。抽象寄りの人が、自分の立ち位置ほど抽象化した事象を理解できない人にどう対応すべきか抽象的思考能力を向上させるためにはどうすれば良いのか。しかし、残念ながら本書では、さまざまん経験を積むこととしか書いてない。実際、その答え以外ないだろう。

書いてあることはいずれももっともで、むしろ当たり前すぎる。しかし、当たり前にもかかわらず、この具体度と抽象度のずれが多くのコミュニケーションのずれを日常で気に生みながら、人はそれに対応する手段も持たず、また改善に努めようとさえしていないのである。

読後の感想としては、こんな当たり前のことをダラダラ書き連ねて、特に具体的な行動提案ももない残念な本という感じだったのだ。ちょっと時間が経ってみると、ここまで世の中の真理をしっかり語った本もなかったと、本書の斬新さに気づき始めた。つまり評価の難しい本である。ぜひ、自ら手に取って判断していただきたい。

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「マルセイユ・ルーレット」本城雅人

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
元サッカー選手の村野隼介(むらのしゅんすけ)はユーロポールの捜査員としてサッカー賭博の取り締まりに加わることとなる。

タイトルのマルセイユ・ルーレットとはフランスサッカーの英雄ジダンが好んで使っていた技であり、サッカーを好きなら人ならだれでも一度ぐらいは聞いたことがあるだろう。著者は「スカウト・デイズ」でプロ野球のスカウトの物語を描いていたので、今回も同じように普通にスポーツを楽しんでいる上では見ることのできない視点からサッカーを描いていることを期待して手に取った。

物語はフランスを中心としたサッカー賭博を題材としており、異国の地でサッカーに関わる3人の日本人の視点で描く。サッカー賭博を捜査するユーロポールの村野隼介(むらのしゅんすけ)、父親が遺したフランスで子供向けのサッカー教室の運営に奮闘する平井美帆(ひらいみほ)、そして、フランスでプロのサッカー選手として生きる水野弘臣(みずのひろおみ)である。

もっとも印象的なのは水野弘臣(みずのひろおみ)である。大きな夢を追ってフランスの地にやってきたにもかかわらず、少しずつサッカー賭博の罠に嵌まり込んでいくのである。きっかけは試合後の仲間と気晴らしで、カジノに行ったことだった。そして、気がついたときには大きなサッカー賭博の組織のために八百長をせざるを得ない状況に陥っているのである。

一般の人ば持つ、八百長に関わるサッカー選手に対するイメージは、お酒や麻薬に溺れる人のような自制心のない人間だろう。しかし、実際にはサッカー賭博の組織は、普通のサッカー選手でさえも陥るように巧妙に罠を張り巡らしているのである。改めてサッカー選手に限らず、多くの注目を集めるプロ選手は、私生活さえも質素に送るべきだと感じた。

サッカー賭博が世の中に多く存在するのはサッカーファンとしては残念なことであるが、大きなお金の動くところには、そこで儲けようとする人々が集まってくるのは当然の流れで、それは現実として受け入れなければならないだろう。本書はサッカーにそんな新たな視点をもたらせてくれた。

著者の作品には他にもスポーツを題材にしたものがいくつかあるようなので、他の作品も読んでみたいと思った。

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「サイゼリヤ革命 世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話 」山口芳生

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
安さと品質で大衆の心を掴んで発展を続けるサイゼリヤの根本にある考え方を語る。

本書を読んでみると、サイゼリアの企業の本質が世の中の幸せであることが伝わってくる。昨今世の中に溢れかえっている利益や株主のご機嫌取りしか考えてない企業の方々にぜひ見習ってほしい。

そんななかもっとも印象的だったのは、サイゼリヤの味に関する考え方である。

たまに来てもらうのであれば、インパクトのある味にしたほうがいいのは当然だ。何かの機会にふと思い出して「あれが食べたい」とたまらなくなる….
 だが、サイゼリヤはおいしさを「毎日食べても味わいがあり、いつまでも食べ続けたくなる味」ととらえた。

これは食べ物に関する事業だけでなくあらゆる面について言えることなのではないだろうか。最近はオンラインでのサービスが増え、クリック率やCV率が簡単に数値化できるようになったからこそ、その副作用としてインパクトばかりを求め過ぎている気がするからこそ、なおさらそう感じた。

後半は、サイゼリアの初期の奮闘の様子なども描かれており、大いに刺激を与えてくれる内容だった。なんといっても、味で世の中を幸せにするだけでなく、その過程で、日本の地方や海外にまで多くの雇用を生み出していることに大きく感銘を受けた。引き続き、世の中を良くするための取り組みを続けてほしいと思った。

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「Ugly Love」Colleen Hoover

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
看護師を目指して勉強中のTate Collinsはパイロットの兄のアパートでしばらく過ごすこととした。そこで同じように他のパイロットの男たちと出会う中、そのうちの一人Miles Archerに惹かれていく。

少しずつ惹かれ合うTateとMilesだが、Milesは二人の関係に2つの条件をつける。過去は詮索しないこと。未来を期待しないこと。そんな条件に抵抗感を抱きながらもMilesが好きでたまらないTateは、その条件を受け入れて関係を続けるが、もっとMilesのことを知りしたい、というジレンマに苦しんでいく。

物語はそんなTateとMilesの恋愛と並行して6年前のMilesの恋愛が描かれる。まだ大学生だったMilesが大学に転校してきたRachelという女性に恋をするのである。

そして次第に、6年前のRachelとの出来事がMilesの心に大きな傷を遺し、そのためにMilesはTateと必要以上に親密にならないようにブレーキをかけているとわかる。TateとMilesの現代の物語では少しずつそんな中途半端な関係に苦しむ様子が描かれ、6年前のRachelとMilesの物語では、一見幸せに見える二人の関係が描かれるが、6年後のMilesの苦しみを知っているからこそ、悲劇が起きる予感が漂うのである。

そんななかTateやMilesが住むマンションの管理人であり80歳のCapがTateやMilesの相談役となりの、しばしば深い言葉を吐く。

Some people… they grow wiser as they grow older. Unfortunately, most people just grow older.
年齢と共に賢くなる人がいる。しかし、残念ながら多くの人はただ歳をとるだけだ

最後は予想通り泣かせてもらった。「November 9」の印象からColleen Hooverの本は軽い部分と重い部分のコントラストが激しい傾向にあると知っていて、今回もきっと期待を裏切らないだろうと思ってはいたが、それでも前半はTateとMilesのラブシーンが多さには辟易してしまった。ラブシーンに突入するたびに「またこの学びのないラブシーンを時間をかけて読まなければならないのか」、と正直うんざりしてしまった。最後が思いっきり泣かせる展開なだけに、そのような前半のバランスの悪さが残念である。

英語新表現
talk myself down 自分を卑下する
I'm beat. 私はへとへどです。
outie 出べそ
closed off 心を閉ざしている
sell myself short 自分を安売りする

「替えがきかない人材になるための専門性の身につけ方」国分峰樹

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
専門性の身につけ方について語る。

序盤はAIによって置き換えられていく仕事の話やChatGPTの話など、そこら中で語られているようなことばっかりだったので、また内容の薄い本を読み始めてしまったかと思ったが、中盤以降いくつか興味深い話に出会うことができた。

基本的に著者の語っていることは自分の考えと近いと感じた。特に「やらなければいけないこと」ではなく「好きなこと」に目を向ける、と自分らしい問いを立てること勧めている点は、自分が常々思っていて、今の日本ではもっと人々が目を向けるべき感じる部分である。

今まで僕が考えていなかった考えでは、本だけでなく、論文を読むことも勧めている点が印象的だった。論文の探し方についても説明しているので、こちらは早速取り入れたいと思った。

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「ドーナツ経済学が世界を救う」ケイト・ラワース

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
これまでの経済学とは考え方の異なるドーナツ経済学の概要と、その基準に従って世の中を良くする方法を提案する。

序盤では経済学の歴史と、これまでの経済学が主にGDPの向上を目指していたため、必ずしも人々の幸せや環境の維持といった、現代の人々が「良い」と感じる世界にはつながっていないことを説明する。そして、その後に本書のドーナツ経済学の基本的な考え方と、これまでの経済学との異なる次の7つの考え方を語っている。

  • 1.目標を変える
  • 2.全体を見る
  • 3.人間性を育む
  • 4.システムに精通する
  • 5.分配を設計する
  • 6.環境を創造する
  • 7.成長にこだわらない

経済学の歴史や現代社会との矛盾についての話は非常に面白い。経済学が面白そうだと思って本書に至ったのだが、過去の経済学のGDP重視の考え方を知ると、少なくとも今での経済学は趣味としてしか役に立たないだろうと感じた。

その一方で、環境的に安全社会的に公正な範囲にすべての人を入れるということを念頭においたドーナツ経済学の考え方はまさに今の世の中が目指すべきものと言えるだろう。中盤以降、ドーナツ経済学の観点から著者はさまざまな提案をするのだが、中でも特に再分配の手段として世界中で考えたり部分的に実行されている方法が興味深かった。バングラディシュのバングラペサやスイスのツァイトフォアゾルゲなどそれぞれ個別に調べてみたいと思った。

付録として社会的な土台の指標、環境的な上限の指標を書いてあるので項目だけでもしっかり頭に入れて、今後機会があれば詳しく調べてみたい。

社会的土台の12の分野
食料
健康
教育
所得と仕事
水と衛生
エネルギー
ネットワーク
住居
男女の平等
社会的な平等
政治的発言力
平和と正義
環境的な9の許容限界
気候変動
海洋酸性化
化学物質汚染
窒素及び燐酸肥料の投与
取水
土地転換
生物多様性の喪失
大気汚染
オゾン層の減少

経済学を学んだことがない人間にとっては理解するのが難しい箇所も多々あったが、全体的に興味深く読むことができた。

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「Whistleblower: My Unlikely Journey to Silicon Valley and Speaking Out Against Injustice」Susan J. Fowler

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Uberで日常的に起こっていた女性差別を世の中に公表した著者が、その生い立ちや公表に至るまでの経緯や心のうちを語る。

Uberでの出来事が中心と思っていたが、その生い立ちや大学時代の出来事、Uberに転職するまでの社会人としての様子についても詳細に語っている。

小学校時代は学校に行かずにクリスチャンの両親の元て家庭で教育を受けていたために、なかなか他の生徒と打ち解けられずにいる様子が描かれている。そんな、どちらかというと一般的な生徒に対して遅れをとっていた著者のキャリアは、目標を持ったことで、主体的な生き方に目覚めてから一気に動き出す。そこからの著者の行動力には驚かされることばかりである。

中盤からは大学での生活に触れている。大学では自殺願望の強い同僚の存在によって、研究者としての道を諦めざるを得なくなり、スタートアップで働くことを決意するのである。最初はなかなか良い会社に恵まれず、そんな経緯も含めて最終的なUberでの大きな行動につながっていくのだとわかる。

そして後半はUberに入社してからの様子と、組織の中で少しでも会社の文化を良い方向に変えようと奮闘する様子や、退職を決意してからから内部に蔓延っていた差別を公表するまでの経緯や葛藤を描いている。これほど行動力や信念を持った人間でも、正しさと、その行動が自分や友人家族へもたらすだろう影響の大きさの間で悩みながら行動に至ったことが伝わってくる

どちらかというとスタートアップは新しい文化を体現していることが多い印象を持っていたので、Uberでここまで女性差別が行われていたと言う事実に驚かされた。また、そんななかある程度のところで妥協点を見つけて組織の中で止まる人々の行動も理解できるからこそ、著者のように頑なに理想を追い求めて戦う姿は新鮮である。女性ではないので、残念ながら著者の行動に共感できるわけではないが、その信念に従った行動には大いに刺激を受けた。

英語慣用句
forced arbitration 強制仲裁
amicas curiae brief 裁判所に対する意見書
in the hot seat 厳しい立場にいる
blow the whistle 暴露する
take them up on their offer 申し出に応じる、お言葉に甘える
smear campaign 組織的中傷
gag order 発言禁止命令、報道禁止命令
turn the other cheek 甘んじて受け入れる

「De Ninguna Parte」Julia Navarro

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
幼い頃にイスラエルの軍事作戦によって両親を目の前で殺されたAbir Nasrと、その作戦に参加していたユダヤ人のJacob Baudinの二人の人生を描く。

Abir Nasrは両親を失ったために、弟ととともに親戚夫妻JamalとFátimaのもとに引き取られ、パリという自由の国で思春期を過ごす。やがて過激なイスラム思想を持つ団体Círculoに属して、イスラム教の過激な教育を受けることとなる。

一方、ユダヤ人のJacobは自らが参加したイスラエル軍の作戦が原因で、当時少年だったAbirの両親が亡くなる。その際、AbirがJacobに向かって叫んだ「いつか復讐してやる」という言葉を忘れることができず、罪悪感を抱えたまま生きていくのである。

やがてアフガニスタンで特殊な教育を受けたAbirは、テレビ局への手紙を通じて世の中に警告を出すのである。囚われているイスラムの重要人物たちを解放しなければ民間人を殺していくと。長年Abirの夢に悩まされていたJacobはすぐにその人物がAbirであると気づき、Abirを確保するためにCIAや警察や各国の諜報機関が協力して動き出すのである。

イスラムの過激派やその近くの人々の視点で描かれる物語にこれまで触れたことがなかったので全体的に新鮮である。なかでも過激な思想を持つ父Jamalと兄Faridの元で生活する二人の女性が印象的である。母親のFátimaは複雑な思いを抱えながらもイスラム世界で良い妻の模範とされるように、ひたすら夫の言うことに従順にふるまう一方で、娘のNoraはイスラム教のしきたりのもとで生きることを拒み、やがて家を離れていく。

その他にも、Abirの初体験の相手であるMarionや、テロリストの要求を世界に発信し、その後はテロリストのターゲットとなったニュース番組で、報道を使命とするニュースキャスターHelenなど、それぞれが確固たる信念を持つ人間として描かれていて興味深い。

全体的にイスラム世界やイスラエルに対して新たな視点を与えてもらった。イスラム過激派のテロリストというと危険な思想を持った人々という印象を抱きがちがが、他の多くの場合と同様に、過激派の中にもいろんな温度感の人がいるのだと伝わってきた。

スペイン語慣用句
dar marcha atrás やりなおす、後戻りする
un campo de exterminio 強制収容所
un pirata informático ハッカー
cumplir con … …に敬意を払う
darse de bruces con … …と出会う

「THINK BIGGER「最高の発想」を生み出す方法」シーナ・アイエンガー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
発想を生み出す方法THNK BIGGERについて説明している。

序盤はニュートン、ピカソ、ヘンリー・フォードなど過去の著名な人物の発明を例にとって基盤となる考えを説明する。それは、過去の斬新な発明や考えは、すでに知られていた技術や考えを単に組み合わせただけで、ゼロから何かを生み出そうとするのではなく、最適な組み合わせを考えることこそ重要、と言う考えである。

その後THINK BIGGERを6つのステップに分けて解説していく。

1.課題を選ぶ
2.課題を分解する
3.望みを比較する
4.箱の中と外を探す
5.選択マップ
6.第三の眼テスト

昨今多くの組織でブレインストーミングの文化が取り入れられているが、その効果が疑わしいのは実際に経験したことのある人なら薄々察していることだろう。

集団力学が個人の創造性を大きく妨げることも明らかになっている。人はさまざまなかたちで周りに忖度し、アイデアを間引いたり、最初や最後に提示されたアイデアに過度に影響されたり、最も都合のいいアイデアを選んだりする傾向がある。

もっとも印象的だったのは「課題の定義」を怠らないという言葉である。

複雑な課題に関しては、正しい課題を正しいレベルで特定しなければ、混乱し、労力を無駄にし、不本意な結果に終わるのは目に見えている。…
Think Biggerでは、意味がるほどには大きいが、解決できるほどには小さい課題を特定する。

それぞれの章で説明していることは納得のいくことばかりだが、全体の手法事態は組織のサイズなどによってカスタマイズする必要があるだろう。今後デザインスプリント等組織全体でアイデアを出す機会があったら本書で紹介されている考え方を部分的にでも取り入れてみたいと思った。

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「すべては「好き嫌い」から始まる」楠木建

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
良い悪いではなく好き嫌いについて語る。

基本的には僕の読書のスタイルは、フィクションで広げノンフィクションで掘り下げる、というイメージなのだが、本書はノンフィクションでありながらテーマの定まらない珍しい本である。したがって数ページ読んで、最後まで読むかどうか悩んだのだが、頑張って読んでみた。

大部分がどうでもいいことを呟いているだけではあるものの、いくつか目新しい表現や視点をもたらしてくれた。

服に凝るよりも、まずは姿勢を整えた方がよい。姿勢を整えるよりも、まずは体型を整えた方がよい。プレゼンテーションのテクニックを習得するよりも、まずは言葉を豊かにした方がよい。言葉を豊かにするよりも、まずは人に語りかけるべき内容を豊かにした方がよい。
「多様性が大切!」と言うくせに、通り一遍の労働条件しか認めない。いかにも矛盾している。

正直、テーマがはっきりしない独り言のような内容なので、人に勧められる本ではないが、こんな読書もたまには悪くないなと思った。

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「ザ・ロイヤルファミリー」早見和真

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第33回(2020年)山本周五郎賞受賞作品。栗須栄治(くりすえいじ)は馬主の秘書となり、少しずつ競走馬の世界に入っていくこととなる。

前半は栗須(くりす)が雇い主であり馬主である山王構造(さんのうこうぞう)社長と共に競馬の世界で一喜一憂していく様子を描く。そんななか、大学時代の恋人が経営する牧場で育った馬ロイヤルホープが、調教師や騎手などとともに一つのチームとして実績を積み重ねながら人気を獲得していくのである。

その様子からは競馬が決して馬や騎手だけで成り立っているわけではなく、馬主や牧場や考え抜かれた交配など、さまざまな要素を持った文化だということがわかる。

中盤以降は、山王社長の亡くなった後の物語である。三頭の馬を受け継いだ山王社長の腹違いの子供で大学生の中条耕一(なかじょうこういち)は、若さゆえの未熟さを抱えながらも、最先端の技術や斬新な視点でチームに関わっていくのである。

僕自身は競馬をやったことがないが、そんな人にも競馬の魅力が十分に伝わってくる。正直競馬に縁のない人には即効性のある有益な内容は含まれていないが、未知の世界を見せてくれる作品。

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「スカウト・デイズ」本城雅人

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
プロ野球選手からスカウトに転向した久米純哉(くめじゅんや)はスカウトの伝説的な存在である先輩の堂神(どうがみ)とチームとしてスカウトとしての生き方を学んでいく。

先日読んだ同著者の「ミッドナイト・ジャーナル」が報道についてのこれまで知らなかった視点をもたらしてくれたので、著者の他の作品も読んでみたいと思いこちらに辿り着いた。タイトルからスカウトの生き方を扱った作品だとはわかるので、映画にもなった「マネーボール」のような話を想像していたりもしたが、実際にはもっと古く泥臭い人間同士の駆け引きを描いている。

スカウトの目的はドラフトでいい選手を獲得すること、と一般の人は思いがちであるし、実際その通りである。しかし本書を読むと、その先まで考えて自分達のチームが強くなること、少しでも優勝に近づくことを考えて選択をするスカウトがいることがわかる。例えば、選手の実力よりも同じ大学の後輩との人脈を考慮して獲得したり、故障持ちとわかっている選手を情報操作でライバルチームにドラフト一位で獲得させる、などである。

本書はスカウト1年目の久米純哉(くめじゅんや)がスカウトとして成長していく様子を描くと共に、純哉(じゅんや)の上司であり、スカウト界でも有名な堂神(どうがみ)の予想もつかないスカウトの手法を描いていく。

スカウトという普通に生きていると関わることのない世界を、見事に描いた作品。他にも著者の作品を見ると面白そうなタイトルのものが並んでいるのでぜひ引き続き読んでみたいと思った。

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「どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法」Eiko

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
開脚するストレッチの方法を物語を交えて説明している。

最近、改めて体の柔軟性が大きく怪我のリスクを減らすことに考えが至り、毎日時間をとって柔軟性を向上させるよう努めている。そんななか一昔前に騒がれた本書を読んでみようと思い至った。

本書で紹介しているストレッチ方法はわずか6つのみ。ストレッチ方法だけだと20ページも必要ないので、本の厚みを増すために、小さな物語を追加したと言う印象である。

正直、本書の評価は、その情報に価値があるか、つまりそのストレッチ方法でどれだけ効果が出るかによるべきだろう。現在のところそれほど変化はないのでなんとも言えない。読み物として面白いか、という点では良くも悪くもなくほどほどである。まさにほんの一時期トレンドになった程度の本という印象で、同程度の情報としては今であればYouTubeを見れば十分である。

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「へたっぴさんのための背景の描き方入門」森永めぐ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
パースの使い方を中心として背景の描き方を説明する。

一点透視、二点透視、三点透視とパースの基本から説明し、その後実際の絵の中でパースを活かす方法を語っている。

パースの基本は知っているつもりでいたが、消失点の位置や視線の高さなど、今までぼんやりとしか意識していなかったことをおさらいすることができた。パースを知らない人にはさらに役に立つだろう。ちなみに、本書はあくまでもパースを利用した背景のシェイプの描き方であって、色の塗り方には一切ふれていない。

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「BUTTER」柚木麻子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
女性記者の里佳(りか)は、連続不審死事件の被告となっている同世代の女性梶井真奈子(かじいまなこ)を取材するなかで、美食や贅沢を体験するようになる。

これまで独身女性として生きてきたために美食や贅沢にあまり興味のなかった里佳(りか)が、梶井真奈子(かじいまなこ)の事件の真相や、その真理を理解するために少しずつ、食にこだわり始めるところが面白い。それと並行して、友人の怜子(れいこ)や、里佳(りか)への情報提供者だった篠井(しのい)の過去や家族との状況が少しずつ明らかになってくる。どの家族にも大小さまざまな問題があることが描かれる。

序盤はやや焦れるほどゆっくり進み、中盤以降は物語は一気に速度を上げてしていく。食のあるべき楽しみ方や、女性としての社会での生き方など、複数のテーマが取り入れられており、それぞれの深みを感じさせる。一方で、複数のテーマを入れ込んだせいか、テーマがぶれている気もした。決して退屈ではないが、一貫した著者のこの作品を書くにあたって読者に訴えたいもの、つまりメインテーマがはっきりしない印象を受けた。

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「プロの画家になる!絵で生きていくための142条」佐々木豊

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
画家の佐々木豊氏が、画家に対して一般の人が抱きがちな142の質問に答えていく。

自分みたいな祖神者にとって、美大に行くのはどれほど絵の上達に意味があるのかは、常に関心のあるところだろう。著者は次のように質問に答えている。

Q8 美大で学べるものはなんですか?
芸大で学ぶものは何もない。食堂の安いめしと青春があるだけだ…
美大は貸アトリエと思えばいいのだ。それは今も、そんなに変わりはない。

改めて、画家という生き方は、表面的な部分を楽しんでいる自分の想像以上に深いものだと思い知った。すぐに起こせる具体的な行動としては、著者の行っている絵の土台作りを真似したいと思ったし、近所で参加できそうな画家コミュニティを見つけて、定期的に刺激を受ける環境を作りたいと思った。

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「ローマ人の物語 迷走する帝国」塩野七生

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ローマ帝国の物語の紀元三世紀の出来事を語る。73年間の間に22人も皇帝が交代する不安定な時代である。

タイトルからも伝わるようにすでにローマ帝国は全盛期を過ぎて、少しずつ衰退し始める。衰退の原因を一つに絞ることは難しいが、それらしい動きはこの時代の各所に見られる。なかでも印象的だったのはカラカラ帝の定めた法律「アントニヌス勅令」である。この法律はこれまでローマ市民と属州民と分かれていた市民を全てローマ市民とするということで、属州民にもローマ市民としての権利を与えることになるのである。この市民を平等に扱う聞こえの良い法律が少しずつローマ帝国を内面から蝕んでいくのである。

ローマ市民権は長く維持してきたその魅力を失ったのである。魅力を感じなくなれば、市民権に付随する義務感も責任感も感じなくなる。…誰でも持っているということは、誰も持っていないと同じことなのだ。

ローマ帝国の洗練された技術やシステムは驚くことばかりだが、間違いなくこれはよくないと思うことの一つが、皇帝に対する不信任を平和的に表明する制度が存在しないことである。それゆえに、未熟な皇帝が現れた時には、誰かが殺すしかないのである。この時代の混乱はまさにそんな不信任が繰り返された結果とも言えよう。

今回は普段にも増して学びが多い時代だった。

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「地の底のヤマ」西村健

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第33回(2012年)吉川英治文学新人賞受賞学品。炭鉱で栄えた福岡県の大牟田市で、警官として生きる猿渡鉄男(さるわたりてつお)の人生を描く。

大牟田市で警官の父親の元に生まれた猿渡鉄男(さるわたりてつお)は、やがて自分も警官として生きることとなる。大牟田市は炭鉱によって栄えたために、多くの人は旧労働組合組員、新燈籠組合組員、会社の人間と、炭鉱での立場で分かれており、それは小学校や中学校の子供たちのグループにまで影響を与えていた。それとあわせて昭和38年に起きた大規模な爆発事故によって障害を抱えた多くのCO2患者たちも街には多数住んでいた。

そんな街で警官として生きる猿渡鉄男(さるわたりてつお)はその職務の中で、人々の父親に対する尊敬の念を日々感じることとなる。父親は38年の爆発事故の混乱のなかでに何者かに殺害されており、その謎が鉄男(てつお)の心に何度も繰り返しやってくる。

また、鉄男(てつお)には中学生たちに友人たちと行った人には言えない過去があった。今では、その友人たちも大蔵省で働いていた理、検事になっていたりするので、過去の出来事を公に語ることはできなくなった。しかし、鉄男(てつお)は良心の呵責に苦しみ続けるのである。

大牟田市が炭鉱によって栄えた町だということも知らなかったし、昭和38年に起こった爆発事故についてもこの作品で初めて知った。石炭というエネルギーへの需要の大きさが大きな時代を作っていたことを伝えてくれる。著者はこの大牟田市で生まれ育ったというから、そんな著者の故郷の炭鉱の歴史を遺したいという強い思いが伝わってくる。

しかし、全体的に長すぎる印象は否めない。長い小説をすべて否定しているわけではない、実際、「白夜行」や「魍魎の匣」のように、その長さに必要性を感じる良い小説は存在する。しかし、本作品に関しては1400ページを超える長さが必要だったのかは疑問である。正直ページ数を3分の2程度に抑えたほうが書籍としての密度も上がるし、展開も読みやすくなるのではないかと感じた。

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