「レンジ 知識の「幅」が最強の武器になる」デイビッド・エプスタイン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

世の中には早くから専門分野を決めてその分野で一流になった人と、いろんな分野を試してから一つの分野にたどり着き遅咲きながら一流になる人がいる。どちらのタイプが今後必要とされ、親として子供を育てる場合どちらのタイプを目指すべきなのか、様々な事象から語る。

本書で語っているのは、個人でも組織でも専門に特化することで起こりうる危険性である。様々な分野が確立され、その分野で研究し議論しその分野のなかで考えることに慣れて過ぎてしまうことで、別の視点に立てば簡単に解決することができるの気付かない、ということが起こるのである。 著者は、専門家と多様な知識を持った人間のバランスこそが、新しい分野を切り開いたり、これまで未解決な問題を解決するのに必要なのだという。

そして、インターネットによる誰でも情報に簡単にアクセスできるようになった今、専門家のニーズは以前より少なくなっていると語っている。

組織だけではなく、個人の技術やモチベーションについても同じことが言える。最近10000時間の法則などがあらゆる場所で語られており、それによって、早期教育への関心が高まっているが、本書の主張はそんな流れを考えすのに良いきっかけになるだろう。

早く分野を決めて取り組めば、たしかに人より先んじてリードすることはできるが、様々な分野を体験しないで決めた分野はモチベーションが保ちづらく、いろんな体験をしてからその分野に参加した人にやがて追い抜かれていくのである。

本書の魅力はその話を展開するなかで引き合いに出されるさまざまな話である。タイガーウッズとフェデラーに始まり、任天堂のゲームウォッチや、スペースシャトルチャレンジャーの話など、興味深い話があふれている。本書の語っている、知識の「幅」の重要性が理解できる人なら、そんな様々な実話や逸話もしっかりと楽しんで、自分の知識の「幅」の一部にしたいと感じるに違いない。

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「How to Win Friends and Influence People」Dale Carnegie

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

人にどのように好意的な印象を与え、自分の求めている人間関係を作り出すのか、そんな方法について書いている。 なんといっても驚くのは、本書の初版が1937年に書かれているということ。その後の改定では、書かれている例などを時代の変化に合うように、また新たな年代の人にもわかりやすいように書き換えただけと言うこと。つまり、人間の本質は時代を経てもほとんど変化がないということである。しかし、人に怒りをぶつけたり嫉妬に狂って物事をまっすぐ考えられない人はいつの世の中にもたくさん存在するのである。

基本的にどのように人に好印象を与えるか、どのように自分の意見を相手が受け入れやすい形で伝えるか、という点が多く書かれている。 昨今コーチングなどの書籍も多く、ただ叱るだけでは何も解決しないことを認識している人も多いだろう。そんなわけで本書に書かれているすべてが新鮮だというわけではなかったが、ぜひ今後実践したいと思ったのが次の項目である。

Techniques in Handling people 人をうまく扱うには
3.Arouse in the other person an eager want. 相手の中に欲求を起こせ

Make People Like You 人に自分を好きにさせるには
2.Smaile 笑顔でいなさい。
6.Make the other person feel important and do it sincerely. 相手に自分が大事にされていると思わせ、それを誠実に行いなさい。

Win People to Your Way of Thinking 人に自分の考え方を伝えるには
5.Get the other person saying “yes, yes” immediately. まずは相手にはいと言わせなさい。
7.Let the other person feel that the idea is his or hers. 相手にそのアイデアは彼のものだと思わせなさい。
10.Appeal to the nobler motives. さらに崇高な目的のためだと主張しなさい。

Be a Leader リーダーになるためには
4.Ask questions instead of giving direct orders. 直接の命令をするのではなく、問いをなげかけなさい。

すべての考え方が新鮮だったわけではなかったが、本書には多数の歴史的事実が例として含まれており、それらはどれも面白く好奇心を刺激してくれた。こうして事実を話として聞くと、単にフレーズを聞くよりもはるかに記憶に残る。その点でも本書は評価が高いのだと感じた。時々読み返したいと思える一冊である。

「The Cruellest Month」Louise Penny

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

カナダの長閑な田舎町Three Pinesで、町の知り合いの間で開かれた交霊会の最中に女性が亡くなった。Armand GamacheはBeauvoirとNicholなどとともに真相の究明に乗り出すのである。

三作目であるが、前二作と同様にThree Pinesで起こった事件を扱う。今回亡くなったのはMadeleineという町中の人から好かれていた女性で、誰からも好かれる女性だったからこそその殺人の動機が事件解決のカギとなる。そして、今回もThree Pinesの人々の魅力は健在である。詩人のRuth Zardoは見つけた卵から鳥の雛を孵化させる。画家のClaraは夫のPeterの助けを借りて、自らの作品作りに悩む。そんななか、本を愛する黒人女性Myrnaの人間関係をするどく指摘した言葉が深く印象的である。

Attachment masquerades as Love, Pity as Compassion and Indifferences ad Equanimity.
依存は愛を装い、憐れみは思いやりを装い、無関心は冷静さを装う。

また、事件解決と並行して、前二作品でGamacheの過去の大きな出来事としてほのめかされてきた、Gamacheが警察内部の不正を明らかにしたArnot事件の全貌が、Beauvoirの口から語られることで明らかになっていく。

今まで名前としてしか存在してなかった登場人物のGamacheと一緒に働く理由や、Gamacheの過去を不安に思っている様子が描かれ、個性を際立たせてくる回である。せっかく個性が立ってきた登場人物を忘れないうちに続編を楽しみたい。

「BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナー vs 人類最強の“走る民族”」クリストファー・マクドゥーガル

★★★★☆ 4/5
怪我に悩まされてきた著者が、メキシコの奥地に住む走る民族タラウマラ族を探しの旅に出たことをきっかけに、改めて走ることに魅了され歴史的なレースに巻き込まれていく様子を描く。

タラウマラ族という走ることを得意としながらも人前に出ることを嫌った民族の話。人間は走ることに向いているのかそれとも向いていないのか、ランニングシューズは人間の走る能力を向上させているのかそれともダメにしているのか、など、走ることに関連した様々なテーマを取り上げて説明していく。

そして同時に著者は、カバーヨ・ブランコという名の男に出会ったことで、若くて勢いに乗っている女性ランナーや、過去の伝説的なランナーなど、様々なランナーたちと出会い、やがて一つの歴史的なレースへと巻き込まれていくのである。

序盤は話が行ったり来たりして最初は本書の焦点がどこにあるのかわかりにくく、翻訳せいもあってお世辞にも読みやすくはない。しかし、流れがつかめてくると、本書が伝えようとしている、人間の進化と走ることの深い関わり合いや、走ることの魅力に魅了されるだろう。本書を読み終えたらきっとみんな広い大地を思いっきり走りたくなるに違いない。

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「GACKTの勝ち方」GACKT

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
さまざまな能力を身につけているGACKTがその生き方を語る。

テレビやメディアなどでは、語学やポーカーなどさまざまな能力を身につけている印象がおり、僕自身GACKTのファンという訳では特にないが、その生き方や考え方に何かしら参考になる部分があることを期待して本書を手に取った。

本書によると、それ以外にもさまざまなビジネスを手がけており、自らのブランディングを非常に住してしているという。本書ではGACKT自身が持っているさまざな考え方を書いているが、もっとも印象的だったのが次の考え方である。

一般的には

知・覚・考・動

という言葉の、最後の2つを入れ替えて、

知・覚・考・動

とし、「ともかくうごこう」と読むことで、行動することの大切さを強調しているのである。

またそれ以外にも多くの印象的な言葉が引用されておりそのいくつかは覚えておきたいと思った。読む前は、そもそもタレントの出している本にそこまで期待するべきではない、と期待値は低かったが、予想以上に楽しむことができた。GACKTに限らず、成功している人は行動の重要性を熟知しており、ポジティブな考え方をしており、失敗も大きな学びの機会と捉えているという点は共通している。今回も改めてそんな生き方の重要性を感じた。

文字が少なく1時間ほどで読めてしまう内容なので値段ほど価値があるかは読み手次第ではあるが、個人的には悪くなかったと感じた。

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「ここで差がつく!英文ライティングの技術 英語はIで始めるな!」鈴木健士

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
英文のライティングについて説明する。

日本人が英語を書こうとすると、どうしてもIで始めたり、soでつなげたりしがちである。話し言葉でならそれは許容できても、書き言葉でそのような書き方をすると、文章自体の密度も薄れて稚拙に聞こえてしまう。本書はそんな日本人がやりがちな英文ライティングの改善方法を説明している。

第一章では文章をカタマリにする方法を説明している。カタマリにすることでより洗練された文章になるのである。

(改善前)I deeply loved her, so I was able to oercome all the obstacles.
(改善後)My deep love for her enable me to overcome all the obstacle.

いくつかよくあるパターンを知っているだけで応用の効く考え方である。本書における重要なことは第一章でほとんどすべて語られているが、第二章では実際の日本人ば書きがちなエッセイを例にとって、第一章の考え方を利用して改善していく。カタマリ化だけでなく、importantやgood、badという言葉を使いがちな箇所も

play an important role

have a positive effect, have a negative effect

で置き換えると一気に英語らしくなる。

コンマやwhich、〜ingによる並列の書き方、そして「一生懸命〜したので・・・」を「My commitment/dedication/devotion」で言い換えるのも非常に便利だと感じた。同じように「もし〜が増えたら」「もし〜が減ったら」「もし〜があったら」「もし〜がなかったら」なども日本語から英語を構成しようと考えると長くなりである。しかし、「More…」「Fewer…/Less…」「With…」「Without…」で始めることで、短い文章で表現できるのであるどれも、なかなか慣れていないとできないことなので、ライティングに限らず、会話でも自然に出てくるようになるまで意識して使っていきたいと思った。

世の中には英語学習の本は溢れており、残念ながら英語学習の表面をなぞっただけのような本が多い。しかし、本書はそんななかでも非常に密度が濃くさらに読みやすいく、手元においておきたいと思える数少ない英語学習書籍の一冊である。早速英文のブログやCVに活かしてみたい。

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「超訳 ニーチェの言葉」フリードヒ・ニーチェ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ドイツの哲学者ニーチェの言葉をまとめている。

ニーチェという哲学者の名前は、おそらく多くの人が聞いたことぐらいはあるだろう。僕自身もそんなニーチェを名前だけ知っている一人だったが、今回同僚から薦められたこともあり、いい機会だと思って入りやすそうな本書にたどり着いた。

本書は1ページに満たないニーチェの短文を集めたもの。人間のあるべき生き方や愛や成長や心構えを語っている。何よりも驚いたのは、その一つ一つの考え方が現代でもまったく違和感なく伝わってくるというもの。「ニーチェって最近の人だったっけ?」と途中でニーチェが確かに100年以上前に生きた人であることを確認してしまったぐらい、まるで現代の人々を見て語っているような表現が多いのに驚かされた。

いくつか印象的だったもののタイトルだけ挙げると次のような内容である。

  • 脱皮して生きていく
  • 組織をはみ出す人
  • 所有の奴隷
  • そのままの相手を愛する
  • 愛と尊敬は同時にはもらえない
  • 読むべき書物
  • 真の教育者は解放する

タイトルを聞いただけでも現代の人間が見つめ直さなければならないものに合致しているのがわかるのではないだろうか。

ひょっとしたら人間関係に悩んでいる人、成長に悩んでいる人、愛に悩んでいる人は読んでみると何か気づきがあるかもしれない。

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「ファクトフルネス」ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世界のことを知らなすぎる世間に懸念を抱いて、世界をありのままに見る方法を伝える。

2019年にもっとも話題になったといっていい本書。ようやく読むに至った。

本書では冒頭で印象的なクイズを読者に出し、現在の世の中の状況を説明する。世間の人々が世の中をただしく理解することのできない次の10の本能について説明する。

  • 分断本能
  • ネガティブ本能
  • 直線本能
  • 恐怖本能
  • 過大視本能
  • パターン化本能
  • 宿命本能
  • 単純化本能
  • 犯人探し本能
  • 焦り本能

簡単に総括してしまうと、僕らが思っているほど世界は悲観的ではないし、むしろ確実によくなっているということである。なかでも、もっとも印象的だったのは、これまで当然のように使ってきた「途上国」と「先進国」という世界を2つにグループ分けしてしまう言葉は、もはや世界の現状認識としては合ってないというもの。本書では次の4つのレベルに分けて世界の国を説明している。

  • レベル1…1日あたりの収入が1ドル
  • レベル2…1日あたりの収入が4ドル
  • レベル3…1日あたりの収入が16ドル
  • レベル4…1日あたりの収入が32ドル

また、レベルが同じ人たちは地域や宗教によらず似たような生活をしていることが多いのだという。

本書の狙い通り、世の中を見る目をもたらしてくれる一冊。何よりも本書を読んだことで世の中が少しずつよくなっていることを知れたのが嬉しい。父親の思いを、息子とその妻が書籍にした家族の魂を感じさせる本である。

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「フラット化する世界 普及版」トーマス・フリードマン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
インドや中国の現状を元にフラット化していく世界について語る。

アメリカ企業によるアウトソーシングによって栄えるインドのバンガロールをきっかけとして、世界のフラット化について語る。国や地域だけでなく、YouTubeやウォルマート、グーグル、UPS、アパッチ、デルなどのサービスや有名企業などがどのようによってフラット化を進めたり、フラット化を利用しているかについて説明する。

そして著者はそんなフラット化が進む世界において、祖国アメリカの未来を嘆くのである。アメリカ国内の教育、成功願望、予算、インフラなど様々な面で、フラット化が進む世界において十分な備えができていないというのである。

決して読みやすい本ではないが、世界の見方に新たな視点をもたらせてくれる。フラット化(というより均一化だが)する世界のことを、例えば、賃金が安い方へ安い方へとインターネットの力を最大限に利用して仕事が流れていく、と説明してしまえば、なにを今更当然のことを、となるであろうが、本書はその世界のフラット化の様子を様々な興味深い事実とあわせて説明するから非常に説得力があり重い。

そんななか、もっとも印象的だったのは、インドとパキスタンの紛争がフラット化のせいで深刻な事態になることを避けられたという出来事と、著者が考えるフラット化による平和へ貢献、そして9.11が起こったことについての著者による考察である。

世界におけるアラブ・イスラム世界を見ると、さまざまな面で地球上のほかの地域より遅れているのが目に留まる。…若いアラブ・イスラム教徒は自問せざるをえない。われわれの宗教は、信仰、政治、経済まですべてを網羅する優れた教えであるはずなのに、なぜ異教徒のほうがずっといい暮らしをしているのか?

かつてイスラム教徒が支配していたキリスト教国スペインの現在のGDPが、アラブ諸国すべて合わせたより大きいとは何事か。…ビン・ラディンは侮辱されたと感じた。

9.11同時多発テロにまつわる国民感情を、ブッシュ大統領が破廉恥にも政治目的に悪用したことは、歴史がいずれ明らかにしてくれるだろう。

有名な本ですでに出版から10年以上が経っているが、素晴らしい本だと感じた。ベルリンの壁の崩壊や9.11の航空機作戦など、本書で触れられているフラット化の大きな出来事について、もっと知りたいと感じた。

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「ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代」アダム・グラント

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
オリジナルな人間になるための考え方を説明している。

メガネのネット販売でメガネ業界に大きな変革を起こしたワービー・パーカーの創業者たちの話をきっかけに、どのようにして大きなことを成し遂げるかを説明していく。

著者が繰り返し強調しているのは、世の中に大きな変化を起こすのは誰にでもできることで、人生の大きな決断など必要ないということである。例えば、スティーブ・ジョブスやビルゲイツは必ずしも若い時に人生の賭けに出たからその後の成功があるわけではない。同じようにマーチン・ルーサー・キングやイブラハム・リンカーンも僕らが思っているほど、人生において誰もまねできないような大胆な行動をとった結果、幸世に語り継がれる存在になったのではないのだという。偉大な人たちも人生のリスクヘッジをしながら自分の持つ新しいアイデアを少しずつ実行に移してきたのである。

では、どのようなことを日々意識して生きていけばそんな偉大なことを成し遂げられるのか。本書はそのために次のことを説明している。

  • アイデアの出し方
  • まわりの巻き込み方
  • 情熱の育み方
  • タイミングの撮り方
  • 誰と手を組むか
  • 組織のつくりかた
  • 困難への立ち向かい方

多くの人が思っていることと実際の成功者や成功しげ企業にはかなり乖離があると感じた。例えば、何事も先にやった人や企業が成功する可能性が高い印象があるが、必ずしもそんなことはない。またベートーベンは偉大な作曲家として有名だが、実際に評価されている曲は彼が作曲した650曲以上の曲のなかの一部でしかない。つまり、質の高いものは数が多ければ自然と生まれてくるのである。

ポラロイドの凋落や、公民権運動、婦人参政権運動、セグウェイの失敗など過去のさまざまな事象を例にとって説明する。本書が言おうとしている内容だけでなく引用されたそれぞれの出来事が興味深く、新たな好奇心を刺激してくれる。序盤で出たオンライン販売のワービー・パーカーだけでなく「となりのサインフェルド」などについても今回新しく知った。

良い刺激を与えてくれる非常に中身の濃い一冊である。

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「I AM ZLATAN ズラタン・イブラヒモビッチ自伝」ズラタン・イブラヒモビッチ/ダビド・ラーゲルクランツ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スウェーデン代表のサッカー選手ズラタン・イブラヒモビッチがそのサッカー人生を語る。

アヤックス、ユベントス、インテル、バルセロナ、ミランなどの強豪チームで活躍し、母国スウェーデンでは英雄といえるほどの地位に上り詰めた著者のこれまでのサッカー人生を描いている。どちらかというと熱い選手なので、嫌いなサッカーファンも多いのではないだろうか。僕自身もどちらかというと冷静にプレーする選手に魅力を感じるほうで、試合中に熱くなりレッドカードをもらうような選手は好きではない。そんな見方もあって、今回こういうタイプの選手はどのように選手人生を歩んでいるんだろう、と興味を持った。

さて、本書ではサッカー選手として頭角を表すまでと、その後いくつかの有名サッカーチームで活躍する様子を描いている。なんといっても興味深いのは、どちらかというと著者にとっては失敗と言える移籍と言えるスペインのFCバルセロナ時代についての話である。監督グアルディオラとは著者をベンチに置いたまま使おうとしないで、しかおその理由を説明しようともしない。そんなグアルディオラに苛立ち、やがてクラブを去るという決断をするまでを著者目線で説明している。

FCバルセロナのしかもグアルディオラの時代はまさに黄金時代だったので、さぞかし選手の心を掴むのがうまい監督なんだと思っていたのだが、1選手からはここまで無能な監督として捕らえられている点が面白かった。

そのほかにもサッカー選手としてだけでなく、妻との出会いなどの人生の大きなイベントについている書いている。全体を通して読んでみると、世の中が思っているほど傲慢で独りよがりな人間ではなく、様々なプレッシャーや葛藤を力に変えて成功した人物だと言うことがわかる。

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「FIRE 最速で経済的自立を実現する方法」グラント・サバティエ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
FIREつまりFinancial Independence, Retire Early(経済的自立)を実現するために著者やそのブログの読者たちが実現した方法とその考え方を説明する。

Retire Earlyと言うとさっさと仕事をやめて悠々自適な人生を満喫することを思い浮かべるかもしれない。しかし、本書で言っているリタイアとは、必ずも仕事をしない状態を言っているのではない。著者自身も「仕事をする必要がなくても仕事をするだろう」と言っているように、仕事をしなければいけない状態から脱し、給料を気にせずに仕事を選べる状態としている。

本書ではそこに到達するまでのステップを次の7段階で説明している。

  • ステップ1 自分の目標とする数字を把握せよ。
  • ステップ2 いま持っている金額を計算せよ。
  • ステップ3 お金に対する考え方を根本的に改めよ。
  • ステップ4 予算を立てず、あなたの貯蓄に最も大きな影響を与えるものだけに集中せよ。
  • ステップ5 9時5時の仕事をハック(工夫、効率化)せよ。
  • ステップ6 儲かる副業を始め、収入源を複数持とう。
  • ステップ7 できるだけ多くのお金をできるだけ早く、できるだけ頻繁に投資せよ。

簡単にいうと、目的をはっきりさせ、そのために、余計な出費を減らし、収入を増やし、投資するという流れを効率よく行うと言うことである。前半の節約の方法では、ハウス・シッティング、ハウス・ハッキング、バータリングなどの手法を知ることができた。

驚いたのはリタイアは歳を取ってからするよりも若いうちにする方が効果的だという考え方である。それは投資による複利の効果を理解し、利用するからこそ可能になるのである。また、僕自身、お金を貯めるためにはお金は借りないで、全てキャッシュで支払った方がいいという考え方をしていた。しかし、複利の効果を考えると必ずしもそれが真実ではないことにも気付かされた。

そのほかにも人生で迷った際に問いかけたい言葉であふれていた。

この買い物はどれほど私を幸せにしてくれるのか?

これを買えるようになるために、人生の何時間を差し出しているのか?

毎年、もしくは亡くなるまでに、これにかかる費用はいくらか?

他人はあなたほどあなたの時間を大切にしない

今一度、自分が人生で本当に求めているものを見つめ直し、またそこに至るまでどれほどのお金が必要なのかを把握したいと思った。

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「メモの魔力」前田裕二

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
メモをとることを繰り返してきた著者が、そのメモの取り方とその効果について語る。

僕らがメモと聞くと、見たり聞いたりしたことを書き残すことのように考えるが、著者はメモの目的を「記録」ではなく「知的生産」としており、次の3つの要素で構成している。

  • ファクト
  • 抽象化
  • 転用

実際に起きたことをファクトとし、それを他のことに適用できるように抽象化する。そして、最後は転用として、自分にアクションを書くのである。そして、抽象化については、What型、How型、Why型の3つの型を説明している。

世の中で見聞きしたすべての出来事に対して、このサイクルを繰り返しているのだとしたら、著者の言うように、知的生産力が向上するのは納得である。

また、夢を書き出すことでそれが叶いやすくなるというRAS(網様体賦活系)の働きについても説明している。RASについては最近読んだ「自動的に夢がかなっていくブレイン・プログラミング」の方で同じようなことより具体的に書かれているので、興味がある人はそちらも読むといいだろう。

後半では自己分析の重要性について書いている。確かに自分が何が好きで、何を大切にしているかを理解している人の方が、人生を脇道に逸れる可能性は低いだろう。

もちろん、ここまでメモに時間をかけることは時間がかかることだし、その執着的とも言える行為によって遠ざける人間関係もあるかもしれないが、早速できる範囲で始めてみたいと思った。

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「アレックス・ファーガソン自伝」アレックス・ファーガソン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世界最高峰のサッカーチームであるイングランドのマンチェスター・ユナイテッドで27年間監督を務めた著者がその人生を振り返る。

アレックス・ファーガソンといえば、僕らサッカーファンのなかでは知らないもののいない名将中の名将である。単純に大きなタイトルを手にしただけでなく、デイヴィッド・ベッカムなどの若手の育成にも定評があり、むしろそここそがファーガソンの成功の大きな礎なのだろう。テレビの画面越しではどちらかというと怖い印象を持つ著者が、どのようなことを考えながら監督という仕事をしてきたのかを知りたくて本書を手に取った。

本書は多くの自伝とは異なり、時系列にはなっていない。著者の人生にとって印象に残っている人、出来事などをそれぞれの章で語っているのだ。

本書を読んで初めて知ったのは、著者はスコットランド人でありイングランド人ではないということと(日本から見るとどちらもイギリスだが、サッカー界では区別される)、チームを統率するために監督が最大権力を握ることを非常に重視しているという点である。

監督が支配力を失ったら、その瞬間にクラブはおしまいだ。選手がチームを牛耳るようになり、深刻な問題が起きる。

この辺は監督のスタイルには賛否両論あるだろうが、確かに絶対的な支配者として選手に接するか、友達のように接するかはどちらも一長一短あり、改めて監督業というのは難しいものだと感じた。

マンチェスター・ユナイテッドの躍進の大きな原動力となった92年組(つまりデイヴィッド・ベッカムやポール・スコールズ・ライアンギグスなどの世代)のなかでは、サッカーに集中しそのほかのことに気を散らさなかったライアン・ギグスやポール・スコールズを評価しているという点も興味深かった。どちらかというとベッカムは、元々は守備にも手を抜かない点が大きな長所だったのに、海外やセレブの世界に触れる中で少しずつサッカー選手として本来あるべき姿から外れていったと残念がっているのだ。

ベッカムの他にも、選手なら、ウェイン・ルーニー、ルート・ファン・ニステルローイ、クリスティアーノ・ロナウド、ロイ・キーン、リオ・ファーディナンド、監督ならジョゼ・モウリーニョ、アーセン・ベンゲルについて語っている。なかなか画面越しには見えない人間関係が見えてくるので、サッカーファンにはたまらないだろう。

人物や過去の有名な試合などがたびたび引用されるので、サッカーファンには間違いなく楽しめるが、サッカーを知らない人にはちょっと難しいかもしれない。サッカーの監督の物語はリーダーシップのすばらしい教本もなるので今後もどんどん触れていきたい。

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「脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」ジョン J. レイティ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
運動がどれだけより良い人生を送るために重要か、実験などの結果を交えながら説明する。

スポーツを日常的にしている人は感覚的にスポーツが心にも良いことはわかっているだろう。本書はそんななんとなくな良さをさまざまな研究結果を交えてわかりやすく解説している。

簡単に言うと運動は健康だけでなく、成績の向上、不安やストレスの解消、うつや加齢による認知症棟にも効果があるのだと言う。きになるのはどれぐらいの運動をするのがいいのかということだが、本書によると、心拍数が最大心拍数(220から年齢を引いた数が理論上の最大心拍数)の60%から70%を保ってを30分程度運動を行うのが良いとしている。それを週に5日というのが最低ラインということである。

どちらかというと、体育の授業などのこれまでの運動の機会にのなかで、自分は運動神経が鈍いと認識して運動を習慣化しなかった人こそ読むべきなのだろう。運動が得意不得意に関係なく、運動をするということは人生を豊かにするのである。

僕自身も現在はスカッシュや競技ダンス(社交ダンスの本気版)をできている。しかし、この先怪我や機会の喪失などでそれらのスポーツが習慣的にできなくなったときに、最低限良い人生を維持するために、本書で書いてあったことを考えて再び習慣にする運動を選びたいと思った。

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「罪の声」塩田武士

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
服屋を経営する曽根俊也(そねとしや)は、ある日父親の遺品のなかに不思議なテープを発見する、それは自分の子供の時の声が録音されたテープであり、30年前に世の中を騒がした犯罪に使われてものだった。テープの謎を解明するために父親の過去を調べ始める。

物語は2人の視点を交互に行き来する。一人は父親の遺品のなかに不思議なテープを発見した曽根俊也(そねとしや)、そしてもう一人は、上司から30年前の未解決事件を取材するように命じられた阿久津英士(あくつえいじ)である。本書では「ギン萬事件」という30年前の未解決事件の真相に近づこうとする2人を描いているが、実際の題材はグリコ森永事件である。

曽根俊也(そねとしや)は父の知り合いの協力をあおぎ少しずつ真相に近づくいっぽいで、阿久津英士(あくつえいじ)は各方面の関係者に取材していく。当時は口が硬かった人も、30年経って事件が時効を迎えたために、新たな真実が見えてくる。

本書では犯人の描写まで描かれておりその点はもちろんフィクションであるが、それに至る経緯は実際のグリコ森永事件に忠実に描いている。僕自身小学生でうっすらとした記憶しかないグリコ森永事件に改めて関心を抱かせてくれた。小説というフィクションでありながらも、一つの時代を作った大きな出来事を新たな視点で教えてくれるまさに優れたフィクションと言える。

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「死ぬ前の5つの後悔」ブロニー・ウェア

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
多くの人の人生の最期に立ち会った経験を持つ著者が、人々が死の前に感じる後悔について語る。

5つの後悔とあるが、本書で扱っているのは5人の死だけでなく、死を目の前にした人々の様子や家族の様子も合わせて伝えており、その後悔をまとめるとだいたい5つのパターンに収まるということである。著者ははつぎの5つをよくある後悔としている。

  • 1.自分に正直な人生を生きればよかった
  • 2.働きすぎなければよかった
  • 3.思い切って自分の気持ちを伝えればよかった
  • 4.友人と連絡を取り続ければよかった
  • 5.幸せをあきらめなければよかった

特にこうして並べてみると特にそれほど大きな驚きはない。ああ、こういう人いるよな、と思う部分もある一方、自分のまわりではあまりこのような後悔をしそうな人が少ないのは、時代が多くの生き方を尊重する方向に変わってきたからかもしれない。

上に挙げた5つの後悔以外にも、人生の最期を迎えた人々の様子を本書を通じて知ることで、考えさせられる部分が多くあった。印象的だったのは周囲の人に酷い言葉を投げかけられた時の考え方である。

「誰かがあなたに贈り物をし、あなたがそれを受け取らなかった場合、その贈り物は誰のものですか?」…そもそも幸せな人の口からそういう言葉は出ない。

死の床で人生を振り返って、もっと物がほしかったとか、なにかを買えばよかったと言った人を私は一人も知らない。

また、死に直面した人の様子を描くのとあわせて、いろんな悩みを抱えながら生きている著者自身の破天荒な生き方も見せてくれるのが面白い。そして、様々な自らの死や、家族の死に直面して戸惑う人々をみて思うこととしての感想ももっともだと感じた。

これは我々の社会が死を人々の目から隠しているために怒る明らかな弊害の一つだ。死に直面すると、人は様々な疑問を持つ。自分もいつかか死ぬのを認識していたら、こうなるずっと前に納得のいく答えを見つけられるだろう。

さて、このように人生の後悔の代表例を知った僕たちは、これを避ける努力をすることができる。僕自身の人生は、今は比較的うまく行っているように思えるが、時々自分を振り返って、後悔をする生き方をしていないか確認するようにしたい。

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「グラフィックの天才たち。」ペン編集部

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
過去の代表的なグラフィックデザインを紹介している。

亀倉雄策(かめくらゆうさく)やポール・ランドなどの有名なグラフィックデザイナーとその作品を、原研哉や佐藤可士和など現代のアートディレクターたちが言葉とともに紹介していく

亀倉雄策(かめくらゆうさく)は実は名前しか知らなかったのだが彼がTDKやNTTのロゴデザインをしたというのは本書を通じて初めて知った。パソコンが世に出ていない時代にどのようにデザインをするのか、インターネットがなかった時代にどのようにアイデアを生み出すか、それだけで想像を超えている。そしてそのロゴが今も変わらずに使われているというのが驚きである。

そんななか、もっとも印象的だったのがランス・ワイマンのメキシコオリンピックのロゴである。オリンピックの五輪と開催年の68を組み合わせたデザインは見事である。

デザインに関して大いに刺激をくれる一冊である。

【楽天ブックス】「グラフィックデザインの天才たち。」

「二つの祖国」山崎豊子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
真珠湾攻撃によって日本とアメリカの戦争が始まった。アメリカに住む日系人たちは収容所への移動を強いられる。日本とアメリカの間で翻弄される日系アメリカ人たちを描く。

日系二世の天羽賢治(あもうけんじ)はロサンゼルスにある日本人向けの新聞社で働いていたが、開戦をきっかけに家族とともに強制収容所に収容される。末の弟の勇(いさむ)はそんななか日系人の地位の向上を目指してアメリカ兵として戦争に参加することを決意する。もう一人の弟の忠(ただし)は開戦当時日本で学んでいたために、やがて日本兵としてせんそうにさんかすることになる。そして、賢治(けんじ)自身も自らの日本語能力を活かして戦争に参加し、前線へと送られていく。

戦争中のアメリカに滞在する日系人の複雑な心のうちを描く。あるものは日本に帰国し、またあるものはアメリカへ忠誠を誓うために戦争への参加を志願する。本書のように兄弟で別々の国から戦争に参加したケースが実際にあったかはわからないが、単純に日本とアメリカという国だけでは割り切れない複雑な人間関係があったことは間違いないだろう。

物語の前半はそのように真珠湾攻撃からポツダム宣言および原爆投下の戦争の終結までを描く。そして、後半2冊、日本の敗戦後の東京裁判に費やされる。東條英機を中心とする日本の責任者たちが連合国に裁かれる様子が細かく描かれるのである。

日本語と英語に明るい賢治(けんじ)はその東京裁判に翻訳の正誤をチェックするモニターとして参加する。人の人生にかかわる裁判の過程で、英語と翻訳された日本の微妙なニュアンスの違いに神経をすり減らす賢治(けんじ)の様子に、東京裁判の歴史的重要性だけでなく、むしろ言葉の奥深さを感じさせられる。

只今、肝をmind(精神)と表現しましたが、この場合はもっと強い意味で、will(意思)、intention(意図)、conviction(確信)の方が適役です。

また、真珠湾攻撃にあたって宣戦布告をしないで行った奇襲攻撃である、ということがアメリカ側が戦意向上のために使った話で実際には日本側は真珠湾攻撃に間に合うように最後通告を行っていたこと、11月26日のハルノート自体が実質的な宣戦布告という捉え方があるということなど今回初めて知った。

最後の山場は最終論告と最終弁論である。

被告らは、彼らが自衛のために行動したのであることをしばしば弁明したが、誰一人として日本を攻撃したり、侵略するという脅しを他国から受けたと主張した者はいなかった。

最終論告が自衛のための戦争という主張を否定するのに対して、最終弁論は自衛のための戦争の定義の曖昧さや、その法律の存在に疑問を投げかけるのである。

戦争を犯罪とせず、侵略戦争だけを犯罪として、その計画、準備、開始、実行の行為を犯罪とした場合、それが国際刑法上の原則として容認されるとすれば、侵略戦争と、戦争との限界が明確に示されねばならぬ。

法は共通の義務意識である。刑法はこれを無視すれば罰を受ける義務を伴う共通の義務意識である。政治家はこれまで国際法上の義務に違反すれば、軍法上の刑罰を科せられるという共通の義務意識の下には、その任務を行っていなかったのである。

やがて東京裁判は数人の戦争責任者への判決で幕を閉じる。東條英機を含む戦争の責任者たちが死刑になったことは知識としては知っていたが、このような過程を経て判決が出たことを知って、その問題の複雑さを改めて認識することができた。そもそも裁判とはなんのために行われるべきなのだろう。そんなことを考えさせられた。

これまでも山崎豊子の作品にはいくつか触れており、いずれも膨大な取材に裏打ちされた物語ですばらしいものだったが、本書こそその作家人生の集大成だと感じた。本書はアメリカと日本語という二つの国の間で翻弄される人々を描いているが、日系人をジャップと呼びながらその活躍を感謝したり、勝ったアメリカの人でありながらもアメリカの正義に疑問を投げかける人がいたりと、改めて人は多様なのだと気付かされた。決して所属や国籍から人を判断することはできないのだ。

もっと早く読んでおくべけばよかった。教科書で学んだだけの太平洋戦争のイメージが大きく変わるだろう。

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「Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法」ロルフ・ドベリ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
よりよい人生を送るための51の思考法を紹介する。

よりよい人生を送るための考え方を紹介している本は世の中にたくさんあり、本書もそのうちの一つでいくつか他の本にも共通することが含まれていたが、このような本は、似たようなことでも繰り返し触れることで自らの生き方の精度を上げるために役立てるべきなのだろう。

本書では51の章に別れていてぞれぞれの章で1つの思考法とその考え方や例について語っている。51のなかで印象に残ったのが次の4つの思考法である。

大事な決断をするときは十分な選択肢を検討しよう

天職を追い求めるのはやめよう

世界で起きている出来事に責任を感じるのはやめよう

世界を変えるという幻想を捨てよう

1つめは選択肢の中からベストな答えを選び出す秘訣を書いている。秘書問題という100人の秘書を順番に面接していって次の候補者と面接するまでに前の候補者に回答を出さなければいけないとしたときに、100を数学定数e(約2.718)で割った数、つまりこの場合は37人を不採用にしつつ優秀な人間のレベルを把握し、残りの53名の面接で最初に同程度優秀な人を採用するのがもっとも効率が良いのだという。恐らく、だれもが、感覚的にやっていることを数値的に示してくれた点が興味深い。

後半の3つは自分の人生を過大評価し過ぎるのをやめようということである。決して自己批判的になるわけではないが、1人の人間ができることは限られているので、むやみに仕事や人生に大きな意味を求めすぎず、今ある環境で楽しんで生きることこそより良い人生を送るのに大切なのだろう。

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