オススメ度 ★★★★☆ 4/5
記憶を失った状態で、宇宙船のなかで目を覚ました彼は、少しずつ記憶を取り戻し、自分が地球を救うために宇宙を旅していることを思い出す。そんな宇宙飛行士の地球を救う物語を描く。
ビル・ゲイツやバラック・オバマなどの著名人が本書を2021年のおすすめとして挙げていたことから、「これは読まなくては」と手に取った。
物語は宇宙船のなかで記憶を取り戻しながら自らの使命を悟り奮闘する男Graceと、彼の回復した記憶による過去の様子が交互に描かれる。
過去では、太陽の光を弱める物質が認められ太陽の光が少しずつ弱まっているため、30年以内に人類の半分が死滅するだろうという予想が立てられる。そんななか、宇宙を調べると、その物質は太陽系以外も汚染しているが、唯一汚染されてない宇宙があり、その原因を調べて地球に汚染されないための情報を送るというのが、宇宙船のミッションなのである。
記憶を失った状態で物語が始まるという少々使い古された展開によって、期待値が最初はしぼんでしまったが、物語が進むごとに面白さが増しどんどん引き込まれていった。物語の展開自体はよくあるSFであることに変わりはないのだが、面白いのは、登場人物たちの試行錯誤や行動をかなり科学的に描いているという点である。もちろんどこまで信憑性があるかどうかは実際に宇宙について研究している人でもない限り明言できないが、少なくとも古臭い、重力や相対性理論や宇宙に空気がないことを無視したSFではないということだ。
そのため、宇宙船を作るために試行錯誤する様子や、言葉の通じない、未知の生物とコミュニケーションを図る様子など非常に興味深い。また、人工重力や相対性理論についても描かれており改めて勉強したくなった。
今までにないSF小説。マット・デイモン主演で映画になった「オデッセイ」も同じ著者の小説を基にしているということで、そちらもぜひ読んでみたいと思った。
和訳版はこちら。