「アーモンド」ソン・ウォンピョン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2020年本屋大賞翻訳小説部門受賞作品。感情を感じることができない「僕」ソン・ユンジェの物語。

子供が感情表現のできない人間だと気づいたユンジェの母は、社会に溶け込むために一般的に人間がするであろう言動をユンジェに教え込む。そんな少年時代を過ごしたユンジェは、やがて高校生になってゴニという悪友や、ドラという女性と知り合うこととなる。

正直、可もなく不可もなくという印象である。感情の感じ方が乏しいというだけでサヴァン症候群というわけでもない、そんな不思議な少年を描いた作者の意図がわからない。実際に著者の周囲に存在した人をモデルに描いているのか、何か別の意図があるのかもしれない。

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「Pachinko」Min Jin Lee

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
1911年、日本の占領下の釜山にある島で家族の経営する宿を手伝っていた少女Sunjaの物語である。

母親の経営する宿を手伝っていたSunjaは市場である男性と恋に落ち、子供を身篭ったことで人生が大きく変わっていく。やがて、キリスト教信者のIsakとともに日本に渡りそこで新たな人生を送ることとなる。

歴史として過去を振り返って見ると日韓併合は日本が一時的に韓国を支配下に置いた時代にしか見えない。しかし、本書を読むと、当時を生きていた韓国の人々にとっては、それまで我が国として信じてきた国や文化が消滅するという不安のなかで生きてきたことが伝わってくる。本書はそんな混乱の時代の中で、自分自身や家族の最良の未来を考えて生きてきた韓国の人々の物語である。

日本で在日韓国人として育ったSunjaの子供たちであるNoaやMozasuの生き方はより複雑になっていく。日本で日本の教育を受けて育ったにもかかわらず、韓国人として差別されつづけるのである。

Living every day in the presence of those who refuse to acknowledge your humanity takes great courage.
自分の人間性を受け入れてくれない人たちとともに毎日暮らすのは本当に勇気がいることです。

やがて、ヤクザなどの犯罪集団やパチンコ店の経営に関わってくこととなる。そこでも韓国人の評判を傷つけないために綺麗な商売をして誠実に生きていきたいという思いと、手を汚さずには生きていけないという思いのなかで揺れ動く様子が描かれる。

… she knew that many of the Koreans had to work for the gangs because there were no other jobs for them. The government and good companies wouldn't hire Koreans.
彼女はたくさんの韓国人がヤクザと一緒に働かなければならないのを知っていました。なぜなら他に仕事がないから。政府や良い会社は韓国人を雇おうとしないからです。
..

基本的には在日として生きていく韓国人の物語であるが、日本人もたくさん登場する。正直、若い世代の人はともかく、上の世代の韓国人はみんな日本人を嫌っていると思っていたので、親切な日本人もたくさん登場することに驚かされた。また、本書のタイトルにもなっているパチンコは、日本と韓国にのみ広がっている文化だということを本書を読むまで知らなかった。

韓国人と比べて几帳面な日本人のいい部分も描かれているが、一方で、日本の他者を受け入れようとしない閉鎖的な考え方にも繰り返し触れている。終盤は、ニューヨークなどのアメリカ文化と比較されて描かれている。韓国、日本、アメリカの文化を体験している著者ならではの視点と言えるだろう。

日本に生まれ育ちながらも韓国籍を捨てない韓国人のことを不思議に思っていたが、そんな彼らの生き方を知ることができた。同時に日本の良いところや悪いところ、日本の韓国人の受け入れ方などいろいろ考えさせた。

英語慣用句
lion's share もっとも大きい部分
the pick of the litter 一番良いもの
blanket statement 曖昧で包括的な意見
pipe dream 叶うことのない夢
pin money 少額のお金
marionette lines 唇の両脇から顎に向かって伸びる2本の線
is game for 〜 〜に乗り気である
flunk out of school 学校を退学する
get into hot water 厄介なことになる

和訳版はこちら

「韓国人のボクが「反日洗脳」から解放された理由」ウォーク

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本語で韓国に関することを語るYouTuberの著者が日本と韓国について語る。

僕自身日本人の父と韓国人の母の家庭で育ったために、普通の日本人より多く日韓の問題に触れてきた。そんななか著者のYouTubeチャネルで語られている、どちらかというと日本寄りの韓国人(現在は帰化申請が通って日本人。)の意見に惹かれて本書を手に取った。

若い人はそうでなくなったというが、一般的には韓国人の日本嫌いはまだ多く存在し、義務教育の中でもそのような考えを植え付ける教育が今も行われているというのが僕ら日本人が持っている印象だろう。本書によると、最近では年配の人の中にもそのような考えや教育に不満を持っている人が多いのだという。しかし、法律や世間の目があってなかなかそれを公に言えないのだという。実際著者自身も韓国人からこれまでなんども脅迫を受けたことを告白している。

面白かったのは本当に著者が日本を好きで、日本のことを普通の日本人の何倍も調べて理解しているという点である。そんななか韓国について語る点からは、日本から見ると韓国も、ドラマや音楽の影響で、同じように発展した国に見えるが、まだまだ日本に比べると遅れている点が多いということである。

著者は過去の韓国と日本の間の出来事に触れながら、日本の政府はもっと韓国に対する自分たちの正当性を世界に強く伝えるべきである。と繰り返す。確かに、日本の慎ましい外交が日本を応援したいという著者にとってはもどかしいのかもしれないし、実際に外交という側面から見ると控えめでいることは正しくないのかもしれない。

日韓の関係に対して今まで知らなかったことまで教えてくれて、日本と韓国という国に対して新たな視点をもたらしてくれた。

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