「シリコンバレー・アドベンチャー ザ・起業物語」ジェリー・カプラン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

シリコンバレー・アドベンチャー ザ・起業物語


ペン型のコンピューターのアイデアを思いついた、起業して実際に製品を作ることを決意する。

先日読んだ「社長失格 ぼくの会社がつぶれた理由」でその著者が、失敗したことを本に遺すきっかけとなったのが本書ということで、たどり着いた。

著者はペン・コンピューターを実現するためにGOという会社を立ち上げる。しかしすぐにIBM、アップルやマイクロソフト、AT&Tなどの名だたるIT起業が探りを入れたり、そのアイデアから利益を得ようと近づいてくるのである。

登場人物が多く、法律的な話も多く入ってくるのでなかなか細かいやりとりまではわからないが、当時のIT業界の勢力図はわかるだろう。IBMはすでに動きの鈍い大企業になっていたことが読み取れる。アップルは残念ながらスティーブ・ジョブズのいない期間なので、ジョン・スカリーの記述が多いが、それでもアップルは、当時から良いものを良いとする企業だということがわかる。また、ビル・ゲイツのマイクロソフトは、当時から、著作権に引っかからない範囲で良いものを模倣し、強い企業を作っていくというスタイルだったことが伝わってくる。

中盤からは「1兆ドルコーチ」の本でも有名なビル・キャンベルがやがてペン・コンピューターのCEOになる。本書から垣間見えるわずかなその言動からも、ビル・キャンベルが情熱的で熱いリーダーだったことがわかる。

資金調達だけでなく、契約書の細かい一字一句のすり合わせなど、経営者はこんなにも多くの事柄に対応しなければならないのかと改めて驚かされた。それでも、こんな風にすべてを捧げても惜しくないと思えるような、情熱を注げる仕事に人生を費やすことを幸せだろうと感じた。

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「社長失格 ぼくの会社がつぶれた理由」板倉雄一郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ふと思いついたアイデアから立ち上げた会社が、やがて資金難から倒産するまでを語る。

僕自身スタートアップに社員として務めており、資金調達など企業の拡大するにあたっての難しさが少しずつわかってくるなかで、その辺りをもっと知りたいと思い本書にたどり着いた。本書の舞台は、1990年代とかなり前の話で、文化や法律もいろいろ異なるだろうが、それでも学べることをはあるだろう。

本書の面白いところは、倒産したあとの書いている点である。多くの成功物語や起業物語とは異なり、著者は本書を書きながら、やり方や考え方にどこか倒産の原因があったのだろう、という前提で書いているという点である。企業の成功物語が創業者のやっているユニークな行動全てが成功の原因と見えてくるのと同じように、失敗物語は行動全てが失敗の原因のように見えてくるから面白い。

序盤は、自らのアイデアから周囲の賞賛を受け、一気に多くの融資を集めて大きな動きとなっていくハイパーネットの様子が描かれるが、中盤以降で少しずつ風向きが変わっていく。

多くの銀行が融資してくれるから安心というわけではなく、銀行は他の銀行と同じ行動をするので、一つの銀行が手を引けば、他の銀行も一斉に手を引き始めるのである。そして、ハイパーネットが資金調達に苦しむなかで、少しずつ鍵となる社員の離反が起こってくる。お金の問題だけだったにも関わらず、制作、社員のモチベーション管理など、さまざまな問題が浮かび上がっていく。

こうやって起業家目線で見てみると、お金が集まった企業には多くの企業がハイエナのように集まってきて、多くの企業が少しでも有利な契約をしようとしてくるのがわかる。にもかかわらずそれに対応する起業家の方はそのような状況に対応するのは初めてだったりするのである。

最終的に、本書で著者自身の分析でも語られているように、倒産した理由は一つではないだろう。例えば、銀行間にできあがったベンチャーへの投資熱の加熱と、引き締めに向かうタイミングに悪く重なってしまった、融資先選びに失敗した、社員のモチベーションの維持を怠った、などであり、改めて起業というのは難しいのだと思い知った。

世の中には成功物語の本はたくさんあるが、失敗物語の本はほとんどなく、しかし実際には人間は失敗からの方が学ぶものが多い。起業というのは安易に失敗できるものでもないだけに、起業を考えている人には必読の一冊と言えるだろう。

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「まだ「会社」にいるの? 「独立前夜」にしておきたいこと」」山口揚平

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
数々の企業再生に関わったあとに独立・起業したした著者が、会社を辞めて独立する際の心構えを語る。

文字とスペースが大きく、明らかに内容が薄い本で必死にページ数を稼いでいるという印象である。順序立てて書いているわけでもなく、思いついたことをただひたすら見出しをつけて書き綴っている。 唯一印象的だったのは、メンターと、自分がメンターする相手を持つ、メンターラインおよび技術についての師匠と弟子を持つ、マスターラインという二つの人間関係の軸を持つことを重視している点である。もちろん、分野によっては自分にあった師匠やメンターを、および弟子や後輩を持つことは難しいこともあるだろうが、そんな機会がないか探してみたいと思った。

なぜ、この本にたどり着いたかはもはや覚えていないが、自分のようにすでに複数回転職をして、楽しめる仕事を毎日している人間が読む本ではないと感じた。会社を辞めたいと思っているが辞められない人に、ひょっとしたら多少背中を押すような内容になっているのかもしれない。

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「ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代」アダム・グラント

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
オリジナルな人間になるための考え方を説明している。

メガネのネット販売でメガネ業界に大きな変革を起こしたワービー・パーカーの創業者たちの話をきっかけに、どのようにして大きなことを成し遂げるかを説明していく。

著者が繰り返し強調しているのは、世の中に大きな変化を起こすのは誰にでもできることで、人生の大きな決断など必要ないということである。例えば、スティーブ・ジョブスやビルゲイツは必ずしも若い時に人生の賭けに出たからその後の成功があるわけではない。同じようにマーチン・ルーサー・キングやイブラハム・リンカーンも僕らが思っているほど、人生において誰もまねできないような大胆な行動をとった結果、幸世に語り継がれる存在になったのではないのだという。偉大な人たちも人生のリスクヘッジをしながら自分の持つ新しいアイデアを少しずつ実行に移してきたのである。

では、どのようなことを日々意識して生きていけばそんな偉大なことを成し遂げられるのか。本書はそのために次のことを説明している。

  • アイデアの出し方
  • まわりの巻き込み方
  • 情熱の育み方
  • タイミングの撮り方
  • 誰と手を組むか
  • 組織のつくりかた
  • 困難への立ち向かい方

多くの人が思っていることと実際の成功者や成功しげ企業にはかなり乖離があると感じた。例えば、何事も先にやった人や企業が成功する可能性が高い印象があるが、必ずしもそんなことはない。またベートーベンは偉大な作曲家として有名だが、実際に評価されている曲は彼が作曲した650曲以上の曲のなかの一部でしかない。つまり、質の高いものは数が多ければ自然と生まれてくるのである。

ポラロイドの凋落や、公民権運動、婦人参政権運動、セグウェイの失敗など過去のさまざまな事象を例にとって説明する。本書が言おうとしている内容だけでなく引用されたそれぞれの出来事が興味深く、新たな好奇心を刺激してくれる。序盤で出たオンライン販売のワービー・パーカーだけでなく「となりのサインフェルド」などについても今回新しく知った。

良い刺激を与えてくれる非常に中身の濃い一冊である。

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「Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール」ランダル・ストロス

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
生まれて間もないスタートアップの創業者たちを支援するベンチャーファンド、Yコンビネーターのその日々の様子を描く。

Yコンビネーターという言葉は、エアビーアンドビーなどこれまでいくつかの企業の成功物語の中で目にしてきたが、実際にどのようなことをやっているのかを知りたくて本書を手に取った。

Yコンビネーターの主な活動は、創業者たちを集めて行う3ヶ月のブートキャンプである。本書はそんなブートキャンプの様子に焦点を当てている。その過程で多くの生まれて間もない企業を紹介している。

スタートアップを始める人というのは、やりたいことや、世の中の改善したいことがあったうえで、それを実現するためにスタートアップを始めるのだと思っていたが、実際に本書において、3ヶ月のブートキャンプの創業者たちの様子を知ると、実際にはただスタートアップを始めたくて始めている人の方が多く、何をやるかはあとから出てくることの方が多いことを知った。そんな創業者たちは、利益を上げそうなことや、自分たちの知識を活かせそうなことは手当たり次第手をつけていく印象を受けた。

最後に印象に残ったのはYコンビネーターの創業者、ポール・グレアムがシリコンバレーについて語る言葉である。

ヨーロッパやその他の場所では、人々が大胆さに欠けるということではなく、手本に欠けていることが問題なのだ。

すでにアメリカではYコンビネーター以外にも、スタートアップを支援する企業が多く立ち上がっているというし、アメリカ以外の国の中にも同じような動きはおきているという。日本にもこのような動きがあってもいいのではないかと感じた。また、同時に、スタートアップを始めたくなった。

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「ジョブ理論」クレイトン・M・クリステンセン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
成功する企業になる為にはプロダクトではなくユーザーが解決しようとするジョブにフォーカスすべきだとして、その考え方を説明する。

まず、ジョブを見極める方法として次の5つの項目を挙げている

1.その人がなし遂げようとしている進歩は何か。
2.苦心している状況は何か。
3.進歩をなし遂げるのを阻む障害物は何か。
4.不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか。
5.その人にとって、よりよい解決策をもたらす品質の定義は何か、また、そん解決策のために引き換えにしてもいいと思うものは何か。

そして、未解決なジョブを見つけるための方法として次の5つを挙げている。

1.生活に身近なジョブを探す
2.無消費と競争する
3.間に合わせの対処術
4.できれば避けたいこと
5.意外な使われ方

これから何か新しい製品やサービスを考えようとしている人は参考にするといいだろう。ここまでがジョブの見つけ方や見極め方であるが、本書ではそれに加えて前後の文脈や、感情面へも配慮を怠らないことが大切としている。

また、ジョブについて説明する過程で、ジョブを解決した実例をいくつか紹介している。ウーバーやP&Gなど、すでに知っている企業の例もあれば、アメリカンガールや、マイヨークリニックなど本書を通じて初めて知った企業もあり、どれも興味深かった。アメリカンガールや、マイヨークリニックなどは日本で実現しても同じようにこれまで未解決のジョブを解決し成功を収めるのではないかと感じた。

ジョブを中心に製品を開発し企業も、その多くが一度製品を世の中に送り出すと、ジョブ中心の考え方からプロダクト中心の考え方に陥っていくのだという。後半では、その理由を大きく3つに分けて説明している

1.能動的データと受動的データの誤謬
2.見かけ上の成長の誤謬
3.確証データの誤謬

どれも言葉だけでは伝わりづらいが、能動的データと受動的データの誤謬とは、最初はジョブにフォーカスするという受動的なデータ、つまり今見えているデータをみてそれを解決する為に製品を考え始めたのに、製品を世の中に出すと、売り上げやユーザー数やユーザー属性など、製品を世の中に出したことによって得ることができた能動的なデータを改善することに意識を取られてしまうということである。見かけ上の成長の誤謬とは、既存顧客に製品をもっと売ろうとしてジョブへのフォーカスを失うことである。そして、確証データの誤謬とは、人間は自分がみたいと思うデータ以外を無視する傾向によって発生する事実誤認のことである。

どれも身に覚えのあることだけにしっかり意識して今後製品開発やサービスローンチに携わっていきたいと思った。そのほかにも、セオドア・レビットやピーター・ドラッカーの有名な言葉をたびたび引用している

人は刃の直径が4分の1のドリルが欲しいのではない。4分の1の穴が欲しいのだ。
企業が売れると思ったものを顧客が購入することはめったにない。

また、最後でジョブを嗜好やほかのものと混在しないように指摘をしている。

同種のプロダクトでしか解決できないのならそれはジョブではない。

「理論」というだけあって、様々な状況に適用できるように考えて構成していることがわかる。本書に書かれている内容をしっかり理解して、実戦で活かせるように身につけておきたいと思った。

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「NETFLIX コンテンツ帝国の野望」ジーナ・キーティング

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Netflixの創業から発展を描いていく。

今でこそユーザーの一人として楽しませてもらっているNetflix。元々はDVDの宅配レンタルとして始まったという漠然とした知識はあったが、アイデアとしてそこまで斬新とは思えない内容から始まったNetflixがどのような考えと施策でここまでの企業に成長をしたか知りたくて本書にたどり着いた。

創業者のランドルフとヘイスティングスによって試行錯誤しながら少しずつ規模を拡大していくなかで、もっとも物語として魅力できなのは、店舗によるレンタル大手のブロックバスターとの、熾烈な主導権争いでろう。既存店舗からオンラインへ消費者が移っていく中、Netflixに遅れてオンラインレンタルに踏み切ったブロックバスターが猛烈な追い上げを見せるのである。

本書はNeflixと同じぐらい、ブロックバスターのCEOであるアンティオコを中心として多くの主要人物の様子を描いている。ブロックバスターはやがて引退したアンティオコのあとを引き継いだキーズの愚策によって凋落するが、Netflisの発展は、ブロックバスターの存在なくしては語れないだろう。

後半の山場はユーザーにおすすめする映画の精度をあげるためにNetflixが100万ドルの賞金をかけて実施したアルゴリズムのコンテストである。最初はアルゴリズムに自信のある人々が世界中から参加して順位を競っていたが、やがて、すぐれたチームどうした融合してさらにいいものを作るようになる。

全身全霊をかけて自分の信じるものにかける生き方が本当に羨ましい。Netflixが、他のスタートアップと違うところは、創業メンバーの多くが、すでに社会人経験をある程度している人間だということだ。つまり、僕らも今からでもできるとうことである。そんな勇気をもらえる一冊。

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「マツダがBMWを超える日 クールジャパンからプレミアムジャパン・ブランド戦略へ」山崎明

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
品質はいいのに「安くていいもの」しか作れない日本の企業を嘆き、BMWやロレックスなどを例に、ブランドの育て方を語っている。

高級なブランドを作ろうと思ったら何をすればいいだろう。高品質なものを高く売ることから始めたらいいだろうか。おそらく高級なブランドを作るために考えなければならないのは、品質と値段だけではないのだ。ブランドが確立されれば、品質によらず商品が高く売れる。本書は自動車ブランドを中心い多くの例を交えながら、ブランドを語っている。

序盤では、海外のブランドに焦点をあて、それらがどのようにブランドを確立していったかを説明している。例えば、BMWは50年ほど前までは高級と呼ばれるレベルではなかったが、「運転を楽しむ」という個性を追求した結果、今ではメルセデスと並ぶブランドに成長している。そのほかにもロレックスやポルシェ、フォルクスワーゲンのブランド戦略を説明している。

中盤以降は、日本のメーカーに目を向けて、なぜブランド価値が上がらないかを説明している。トヨタがレクサスブランドを別に作りながら、やっていることが変わらないため、結局レクサスはトヨタと同じ大衆車という認識を持たれてしまっている。ブランドの価値を理解して、買収してもブランドの名を残すフォルクスワーゲンなどの海外ブランドと比較して、買収するとともに自社名に変更してしまうソニーなど(コニカミノルタ買収の件)日本企業をブランドの理解が乏しいと嘆いているのである。

そんななか、最後にマツダについて、唯一日本で海外ブランドと渡り合えるポテンシャルを持っていると推している。最近多方面でマツダへの注目の高さを耳にするので、今後にぜひ期待したい。

本書を読んで、海外の有名な自動車ブランドの多くが、実はフォルクスワーゲンの傘下に入っていることに驚かされた。ベントレーもブガッティもランボルギーニも現在はフォルクスワーゲンなんだという。この驚きがまさに、フォルクスワーゲンのブランド戦略がうまくいっている証拠と言えるだろう。ブランドを作るために大切なことがたくさん詰まっている一冊。

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「小さな野心を燃料にして、人生を最高傑作にする方法」はあちゅう/村上萌

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
作家のはあちゅうとライフスタイルプロデューサーという肩書きで活躍する村上萌の2人の著者が、現在の一般的に成功していると言われる状態にたどり着くまでの紆余曲折の人生を交互に語っている。

年齢が、10歳ほど年下ということもあり、生きているなかで経験する文化が若干異なるのと、男性と女性という違いゆえの考え方の違いもある。。それでも、僕自身の心がけとの共通点もあり、また、女性ならではという考えかたの新鮮に感じる部分もあった。そして、見習いたいと思える心がけにもいくつか出会えた。

お土産は必要な分+2買う
花を欠かさない

成功している人たちも、いろいろ悩みながら付与曲折を経て、努力をするだけでなく、人とのつながりに恵まれ、目の前の機会に勇気を持って飛び込むなどしながら、現在の地位にたどり着いているとわかるだろう。むしろ大学を卒業して、人生に悩んでいる女性が読むともっといいのではないかと思った。

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「Agile Software Development」Peter Oliver

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Agile開発の基本的な考え方を説明している。

スタートアップで仕事をしていると、基本的にAgileに則った進め方になるが、常に進め方に課題はあり、そのヒントとなるような内容があればと思い本書を手に取った。

最初はAgileの説明から入り、ScrumとKanbanという二つのAgileの考え方をわかりやすく説明している。

Scrumの基本を、

透明性(Transparency)
調査(Inspection)
適応(Adaptation)

とし、Scrumの三つの役割、つまりScrum Master、Product Owner、Cross Functional Teamを説明している。一方でKanbanの6つの哲学を

Visualization
Limiting work in progress
Flow management
Making policies explicit
Using feedback loops
Collaborative or experimental evolution

としてそれぞれを説明している。

どちらかというと今までScrumを中心とした体制のもとで仕事をしてきたが、部分的にKanban方式を採用した方がうまくいくことも多いので、Kanbanの考え方をもう少し取り入れてみたいと思った。

やはりページ数が限られているので、それほど印象的な内容はなかったが、Agileの進め方について簡単に理解したい人にはちょうどいいのではないだろうか。

「サードドア 精神的資産の増やし方」アレックス・バナヤン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ビル・ゲイツやスピルバーグ、レディ・ガガはどのようにしてその偉大なるキャリアの最初の一歩を踏み出したのか、そんな成功者の最初の一歩を本としてまとめることを思い立った著者は行動を始める。そんな著者の悪戦苦闘しながらインタビューを繰り返す様子を描いている。

ウォーレンバフェットやビル・ゲイツに話を聞くためになんども断られながらも少しずつ、著名人の間で人脈を築いていく様子が描かれており、何事もくじけずに分析し戦略を練って行えば少しずつ実現できるのだと伝わってくる。その過程で、ビル・ゲイツやレディ・ガガ、ジェシカ・アルバやウォーレン・バフェットなどの人柄も見えてくる点も面白い。

なかなか本書のどこが役に立つとは言えないが、諦めずにしつこくメールを送り続けて失敗した話もあるので、よく言われがちな「なにごとも諦めなければ達成できる」という形ではない。人脈をつくるために戦略を練ることも重要だし、一つの方法に固執することもなく考え付く限り多くの場所に種をまき、芽が出たところを攻めるという方法も効果的だということがわかる。

企業や組織だと「広報」という仕事があるが、個人で人脈を広げることに今まで意識をしてこなかったので、これを機会にできることをやってみたいと思った。

【楽天ブックス】「サードドア 精神的資産の増やし方」

「グロースの時代」森岡康一

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
元フェイスブックジャパン副代表の著者が日本でフェイスブックをどのように広めていったのかを語る。

転職を繰り返してフェイスブックにたどり着いた著者が、その過程での大きな出来事や転機となった出会いなどについてカタッている。

グロースに関する技術や知識を求めて本書を手に取ったのだが、精神的な部分の重要性に多くページを割いている。情熱や根性は何かをやり遂げる上では無視できないことでしっかり覚えておきたいことだが、すぐに利用できるような知識を探している人にとっては期待外れに終わるだろう。しかし、実際に大きなグロースを経験したフェイスブックジャパンの様子からは何かヒントが得られるのではないだろうか。

【楽天ブックス】「グロースの時代」

「Show Dog 靴にすべてを。」フィル・ナイト

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ナイキの共同創業者である著者がナイキの創業から現在に至るまでの発展を描く。

ナイキといえば今やスポーツブランドの頂点なので、信念やミッションを持った勢いのある創業をイメージしていた。しかし本書を読んで、その創業は日本の靴メーカーの販売代理店でしかなく、創業者たちも片手間に仕事をしていたに過ぎなかったとわかる。多くの人が今のブランドイメージとずいぶんギャップを感じるのではないだろうか。

しかし、やがて日本の靴メーカーと決別をして独自の靴を作り始めると、その勢いは一気に加速する。本書の一番のクライマックスは、Nikeというブランド名が決まり、少しずつ、オリンピックの代表やスポーツ選手のなかにNikeを履く選手が増えくるところではないだろうか。ブランド名の他の案は今となっては笑えるものばかりだが、ブランド名のかっこよさはその音の響きだけでなく、そのブランドのかっこよさと結びつくもの。どの案になったとしてもかっこよい印象と結びついていたのではないだろうか。

本書のタイトルである「Shoe Dog」とは、靴に人生を捧げる人たちのこと。著者をはじめ、本書には「Shoe Dog」が多数登場する。Shoe Dogであるバウワーマンなどの人との恵まれた出会いによってNikeは大きくなったのは間違いない。悲しいのは、著者の息子の2人、トラヴィスとマシューが最後までスポーツに入れ込むことはなかったということだ。仕事と家族のどちらにも人生を捧げることは、なんと難しいことだろう。

本書でもっとも印象に残った言葉は、著者が経済学の教授から聞いたという言葉である。

商品が国境を越えれば、兵士が国境を越えることはない

驚いたことのもう一つは、タイガーウッズやマイケル・ジョーダンと深い交流があったこと。考えてみれば当たり前かもしれないが、著名なスポーツ選手にとって著者は単に靴のメーカーの社長ではなく、自分たちが有名になるためのチャンスをくれた人なのだ。だから、彼らは一生感謝を表現し続けるのだろう。そういう点を考えると、靴メーカーというのも偉大な仕事なんだと感じた。

企業の成功物語は世の中に溢れているが、その中でもかなり面白い部類に入る一冊。

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「エアビーアンドビー ストーリー」リー・キャラガー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
創業者の3人が出会い、エアビーアンドビーを作り成長させていく様子が描かれている。

序盤は、チェスキー、ゲビア、ブレチャージクの出会いと、少しずつコンセプトを変えながらエアビーアンドビーが大きくなっていく様子が描かれている。その過程で、3人の創業者がそれぞれの担当分野において少しずつ成長していく様子が興味深い。

エアビーアンドビーというサービスを知っていて、それゆえに興味を持って本書を手に取ったのだが、本書を読むといろいろ想像もしていなかった困難があったことを知る。

例えば、エアビーアンドビーは、自分の部屋に見知らぬ人を宿泊させるというサービスの形態ゆえ、犯罪まがいのことが全く起こらないということはありえない。本書では、エアビーアンドビーで起こった幾つかの犯罪や悲劇と、それに対応するエアビーアンドビーの様子も描かれている。そんななか最初は投資家などのアドバイスを聞いて責任逃れや結論の先延ばしをするような対応をしていた創業者のチェスキーが、それでは騒動が治らないと見るとすぐに自分たちの信念に立ち返るところに舵を切るところは、組織としてユーザーに向き合うすべての人にとって学ぶ部分があるだろう。

また、考えてみればありそうな話だが、エアビーアンドビーはそのプラットフォームを通じて行われる人種差別とも戦っているのだという。例えば、白人のプロフィール画像の人にしか部屋を貸さないホストや、アジア系のユーザーを差別するホストがいるのだそうだ。しかし、これは改めて考えてみると、ユーザーの属性によって部屋を貸すか貸さないかを選択するのは、許されてもいいと感じるぶぶもある。例えば、静かな住宅であれば子供を連れた家族の宿泊には貸したくないなどはホストが選べていいはずで、この辺の線引きが非常に難しいと感じた。

ホテルチェーンなどの既存の勢力から受ける攻撃についても触れている。エアビーアンドビーの拡大に影響を受けてか、ホテルチェーンのいくつかも民泊事業へのシフトする様子をみると、エアビーアンドビーはまさに「世界を変えている」のだと感じる。

印象的だったのは、創業者の3人が困難に出会うたびに、繰り返していた偉人たちの言葉で、本書の中でも効果的に使われている。一つはガンジーの言葉で、見事にエアビーアンドビーの状況にも当てはまる。

はじめに彼らは無視し、次に笑い、そして挑みかかるだろうーーだが勝つのは我々だ
悲観主義者はだいたい正しい。だが世界を変えるのは楽観主義者だ。

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「良い戦略、悪い戦略」リチャード・P・ルメント

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
本書は、世の中に溢れる、悪い戦略の多さを嘆き、良い戦略を立てるための手助けのために、良い戦略と悪い戦略の違いを、豊富な実例を交えながら説明している。

戦略の基本は、最も弱いところにこちらの最大の強みをぶつけること、別の言い方をするなら、最も効果の上がりそうなところに最強の武器を投じることである。

言葉にすると当たり前のことに聞こえるが、実際多くの組織の戦略はこれができていないのである。以降、順を追って、悪い戦略と良い戦略を説明している。まず、悪い戦略の4つの特徴として次の4項目を挙げている。

空疎である
重大な問題に取り組まない
目標を戦略ととりちがえている
まちがった戦略目標を掲げている

3番目の「目標を戦略ととりちがえている」は、これまで所属してきた組織の中で何度も経験してきたことなのだが、こうはっきりと説明されるまでその「間違った戦略」具合に気づかなかった。

本書では、良い戦略にはしっかりとした論理構造があり、カーネル(核)とよばれる次の三つの要素が存在するとしている。

診断
診断では、少なくとも悪い箇所を特定し、病名をはっきりさせなければならない。断片的な兆候や症状からパターンを割り出し、どこに注意を払い、どれはあまり気にしなくてよいかを選別する。すぐれた診断は、ときに状況に対する見方を変え、まったく新しい見通しを示してくれる。

基本方針
診断によって判明した障害物を乗り越えるために、どのようなアプローチで臨むかを示す。

行動
多くの人が基本方針を戦略と名づけて、そこで終わってしまう。戦略は行動につながるべきものであり、何かを動き出せるものでなければならない。

そして、上のようなカーネルの元で、強みを生み出し、活用する方法を、続く章で次の項目を詳細に説明している。個人的に本書のなかでもっとも印象的な部分である。

テコ入れ効果
近い目標
鎖構造
設計
フォーカス
健全な成長
優位性
ダイナミクス
慣性
エントロピー

これからも折を見て読み返して、より深く理解したいと思った。

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「メルカリ 希代のスタートアップ、野心と焦りと挑戦の5年間」奥平和行

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
メルカリの創業から上場までのその急成長を描く。

フリマアプリという、特に画期的なアイデアではないにもかかわらず、わずか5年でユニコーン企業へと成長したメルカリ。他のフリマアプリとどんなところが違ったからここまで急成長できたのだろうか。その理由を知りたくて本書を手に取った。

個人的に印象的だったのはアメリカでメルカリを普及するために、日本とは大きく異なるブランド戦略をとったことである。日本の赤いロゴとは異なり、アメリカでは青いロゴ、青いUIにしたうえで、「売るためのアプリ」であることを強調したのだという。文化や地域によって戦略を変えるのは、当たり前のことに聞こえるだろうが、実際にアプリを開発している状況を知って入ればそれが簡単な決断ではないことはわかるだろう。

また、メルカリがインドの優秀な学生の採用に力を入れている点も本書を読んで知った。すでにIT業界ではメルカリが優秀なエンジニアを徹底的に採用しているのは周知の事実であるが、その徹底した採用戦略に驚かされた。

結局、急成長のための明確な理由はわからなかった。運やタイミングにめぐまれるという部分はもちろんあっただろうが、それ以上に、経営者の周囲にあった人脈ゆえの良い出会いが大きな要素だったのだと感じる。そして、今、その成長して大きくなったがゆえのさまざまな問題に現在ぶつかっているという。本書で描かれている内容をふまえたうえで、引き続きメルカリの動向を注意してみてみたいと思った。

マイクロサービスアーキテクチャー

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「最短で目標を達成するOKRマネジメント入門」天野勝

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
OKRの導入の方法について説明している。

OKRの本は「OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法」と「Mueasure What Matters」と読んで理解したつもりでいたが、実際に組織に導入しようと思うとなかなかうまくいかない。うまくOKRを導入するためのヒントが見つかるのではないかと思い本書にたどり着いた。

本書は上に挙げた2冊のようにOKRの導入事例は一切書かれていない。そういう意味では、本書だけでOKRを理解するのは難しいだろう。本書で説明している方法は筆者がOKRを導入する中で試行錯誤した結果であり、元々のOKRの考え方に、アジャイルのスクラムの考え方を組み合わせたような形になっている。OKRがどのようなものかを理解したい人は、どこまでがOKRでどこからがカスタマイズしたものなのか区別しずらいだろう。

しかし、すでにOKRの知識を持っている人には、その導入方法についてヒントが見つかるかもしれない。個人的には

チームの境界を決める

といったあたりが、OKRを機能させるためには重要な気がする。他にもOKRに役立ちそうなインターネットサービスなども多数紹介されている。より実践的なOKRの本と言えるだろう。

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「Design Leadership」Richard Banifield

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デザインのチームを機能させるための考え方を、多くの成功しているデザイン企業から紹介している。

この先、デザイナーとして組織に関わる中でチームを率いることが増えると考え、本書にたどり着いた。本書でで紹介されている多くの方法は、決して著者が「正しい」と考えていることではない。著者がインタビューした多くの企業のリーダーたちの声を紹介しているだけである。その人のこれまでの経験から発せられた意見に過ぎず、決してどんな企業にも当てはまることではないし、なかには相反する意見もふくまれている。それでも、日本のデザイン企業よりもはるかに多様な人材と多様な文化の入り混じったデザインチームを機能させているリーダーたちの声はどれも非常に参考になる。

そんななか最も印象的だったのが、働く場所へのリーダーたちのこだわりである。オフィスのある都市や、オフィスのレイアウトがチームの文化への影響の大きさをどのリーダーも強調するのである。その他にも、採用の際に悩みがちな、「技術で選ぶか、情熱で選ぶか」など発展段階にある組織が遭遇する困難の多くに触れている。

そんななかでも結局、リーダーの役目はこちらの言葉に集約されている気がする。 リーダーの仕事は、自分の意思を押し付けることではなく、創造性が発揮される場所をつくることだ。

また、リーダーとして組織を導く中で、困難に出会ったら読み返したいと思った。

「エンジニアリング組織論への招待」広木大地

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
プロジェクトにおいて不確実性をなくしていくための考え方を書いている。
日々アジャイルをベースとしてプロジェクトに関わる中で、さらにより良いマネジメントの方法はないものかとヒントを探して本書にたどり着いた。
読みにくい本ではあるが、いくつものヒントが散りばめられていた。よくある問題の一つとして作業にかかる時間の見積もりの精度があがっていかないという問題があるが、それについて本書では、2点見積もり、3点見積もりといった多点見積もりを紹介している。将来的に多点見積もりの理解も深めたいと思った。
また、印象深かったのがアジャイルとウォーターフォールの比較の話である。よく議論になる話ではあるが、アジャイルはチームマネジメントもその流れのなかに含んでいるため、アジャイルとウォーターフォールはそもそも範囲が異なるので比較すること自体がおかしいとしている。
後半に出てきた7段階の権限移譲は組織において誤解が発生しやすい部分であるので頭のなかにしっかり刻んでおきたいと思った。

命令する
説得する
相談する
合意する
助言する
尋ねる
委任する

である。
正直、期待したほどのインパクトのある内容ではなかったが、それでも新たな学びはあったと感じる。
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「ファシリテーションの教科書 組織を活性化させるコミュニケーションとリーダーシップ」吉田素文

オススメ度 ★★★★☆ 3/5
組織の英知を結集するためにファシリテーションが重要だと感じ、本書を手に取った。

本書はファシリテーションを「仕込み」と「さばき」という大きな2つの部分に分けて構成している。「仕込み」の章で面白かったのが「出発点と到達点を明確にする」という点。ビジネスにおける議論は次の4段階から形成され、その出発点と到達点を意識する必要があるというのである。

  • 「議論の場の目的共有」
  • 「アクションの理由の共有・合意」
  • 「アクションの選択と合意」
  • 「実行プラン・コミットの確認・共有」

必ずしも議論の参加者全員が同じ段階にいるとは限らないため、参加者によっては個別にケアして納得感を持った状態で同じ出発点に立ったうえで議論を開始する必要があるだろう。

後半は、「さばき」であり、一般的にファシリテーターの求められる能力はこちらの方が大きいのではないだろうか。「さばき」の基本動作として本書では

  • 発言を引き出す
  • 発言を理解し、共有する
  • 議論を方向づける
  • 結論づける

という4つを挙げている。それぞれの動作について考えられる障害、それに対するアドバイスがたくさん書かれており、定期的にファシリテーターを務める人であれば手元に一冊おいておいて何度も見返したくなることだろう。個人的には「発言の理解」の部分が印象的で、論点(=問い)、主張、根拠、目的を考えて人の意見を聞くということの重要性気付かされた。ファシリテーションを学びたくてたまたま本書を手に取ったが非常に満足である。
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