「Salvage the Bones」Jesmyn Ward

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2011年全米図書賞受賞作品。ミシシッピ州に住むEschと3人の兄弟はハリケーンカトリーナの上陸に備える。

母を失った家庭で父と3人の兄弟と生きる女の子Eschの視点で描く。一番上の兄Randallはバスケットに情熱を注ぎ、二番目の兄Skeetahは闘犬に入れ込む。物語はSkeetahのお気に入りの闘犬のChinaが子供を産むシーンから始まる。

弟のJuniorの面倒を見ながらもSkeetahとともに犬の世話をしながら日々を送るEschは、自分の体調の変化から、妊娠に気づくのである。弟のJuniorの誕生とともに母を失った家族の中で唯一の女性であるEschは戸惑いながらも日々を送る。1人秘密を抱えながら生きるEschからは男の中で強く生きなければいけない女性の葛藤が見えてくる。

After Mama died, Daddy said, What are you crying for? Stop crying. Crying ain't going to change anything. We never stopped crying. We just did it quieter. We hid it.
ママが死んでからパパは言った
「泣いてどうするんだ? 泣くな、泣いたって何も変わらないぞ」
でも人はなくのをやめない。静かに泣くようになるだけ。隠れて泣くようになるだけ。

そして、少しずつハリケーンカトリーナの上陸が近づいてくるのである。大きな台風を話でしか聞いたことのないEschやその兄弟は、台風に備える父をどこか冷めた目でその様子を眺めるのである。

アメリカ南部の裕福とは言えない黒人の家族の様子を見せてくれる点が新鮮である。また、ハリケーンカトリーナという出来事を当事者の目線で伝えたものに触れたのが今回初めてだったので、ニュースで触れるのとはまた違った視点で大きなハリケーンの様子を知ることができた。

英語慣用句
cuss 悪口を言う
fishing pole 釣竿
concession stand 売店
lead sinker (釣りの)おもり

「The Body Farm」Patricia Cornwell

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ノースカロライナで11歳の女の子Emily Steinerが教会の帰りに遺体となって見つかった。逃亡中のシリアルキラーと手口が似ていることからFBIとKay Scarpettaは事件の捜査に関わることとなる。

Kay Scarpettaのシリーズ第5弾である。序盤からGaultというシリアルキラーが捕まっていない状態という設定なのでシリーズ前の作品を飛ばしてしまったか、展開を忘れてしまったのでは、と思ったが、そんなことはなく本書が急展開の設定らしい。

物語はEmily Steinerの死の真相を突き止めるために、地方警察とFBIが協力して捜査を進めていく。しかし、Kayの周囲では事件以外にもさまざまな問題が生じる。一つ目は長年の相棒であるMarinoが、離婚をしたことを機に少しずつ自暴自棄になって、それが捜査にも悪影響を与え始めたこと。2つ目は、同僚であるWesleyとの仲である。妻がいるWesleyに惹かれる自分に戸惑い罪悪感を抱えるのである。

そして3つ目は、姪であるLucyとの関係である。大学を卒業してKayと同じくFBIで働き始めたLucyではあるが、FBIでは働いてほしくないKayの想いで干渉するKayとの心の距離は次第に広がっていくのである。そんななかLucyがFBI情報に不正にアクセスしたという疑惑が持ち上がるのである。

そんな多くの問題に悩まされながらも、事件は少しずつ解決に近づいていく。Emily Steinerを殺害したのは本当にシリアルキラーGaultの仕業なのか。シリーズ作品というのは少しずつマンネリ化していくものだが、続きも楽しみになった。

英語慣用句
as a crow flies 最短距離で
crib death 幼児突然死症候群
heat exhaustion 熱中症

「NO RULES: 世界一「自由」な会社、NETFLIX」リード・ヘイスティングス、エリン・メイヤー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
現在AppleやGoogleなどのGAFAと同列に語られるNetflixのカルチャーについて語る。

本書はネットフリックスの創業者であるリード・ヘイスティングスとエリン・メイヤーが交互に語ることで進んでいく。リード・ヘイスティングスは以前の会社で会社の規則を細かく規定して行った結果、多くの優秀な人材やクリエイティブな環境が失われて行ったと感じており、その反省がネットフリックスの文化に反映されているという。

まずネットフリックスは社内の能力密度を上げることを目指している。そんな文化を築くために繰り返し出てくる言葉がが次の2つである。

フリーダム&レスポンシビリティ(自由と責任)
コンテキストによるリーダーシップ

本書では休暇、退職、情報共有、フィードバック、経費の承認などの事例を交えながら、ネットフリックスのカルチャーとそこに至った経緯を説明していく。どれも驚かされながらも、納得のいくものばかりである。そんななか、特に取り入れたいと思ったのは、フィードバックの文化である。フィードバックで意識する要素をネットフリックスでは4Aとして次のように定義している。

  • 1.相手を助けようという気持ちで Aim to Assist
  • 2.行動変化を促す Actionable
  • 3.感謝する Appreciat
  • 4.取捨選択 Accept of Discard

最後には文化の違いなども考慮して5つめの適応させる Adaptを追加している。やはりフィードバックの前に良いところを伝えたり、オブラートに包んだりすることは、相手の育ってきた文化によっては必要なのだろう。

また、イノベーションを生み出すためのイノベーションサイクルも印象的である。

  • 1.「反対意見を募る」あるいはアイデアを「周知する」
  • 2.壮大な計画は、まず試してみる
  • 3.「情報に通じたキャプテン」として賭けに出る
  • 4.成功したら祝杯をあげ、失敗したら公表する。
承認など要らない、判断するのは自分なのだ

どれもさっそくできる範囲で実践してみたいと思った。会社の文化を変えるのは難しくても、自分が行動することは今日からできるはずだと感じた。

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「ジェフ・ベゾス 発明と急成長をくりかえすAmazonをいかに生み育てたのか」ブラッド・ストーン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アマゾンの創業者でありCEOのジェフ・ベゾスを中心に彼の関わってきた事業や私生活を描く。

面白いのはアマゾンの物語ではなく、ジェフ・ベゾスの本であるということだ。そして、事業やサービスをベースにそこで起こった出来事を描いている点が興味深い、それゆえに、ジェフベゾスとトランプ大統領とのやりとりや、ジェフ・ベゾスが所有する他の会社、ワシントンポストやブルーオリジンについても知ることができた。

もちろんアマゾンの事業の過程やそこで起きる困難についても同じように興味深く読むことができた。アマゾン内広告、マーケットプレイスの話からは、アマゾンも常にフェイスブック、グーグルの影響を受けながら事業を展開していることが伝わってきたし、また中国やインドなど国によって文化が異なるため、それぞれマーケットを広げるためには特有の難しさがあることが改めて伝わってきた。

個人的にはブルーオリジンとスペースXの話が面白かった。今後もアマゾンの動向に注意していきたいと思った。

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「フェイスブックの失墜」シーラ・フレンケル/セシリア・カン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マーク・ザッカーバーグとシェリル・サンドバーグを中心に困難の時代のフェイスブックを描いている。

これまであった多くのフェイスブックの起業を描いた成功物語とは異なり、タイトルにあるように企業として大きくなった上の困難の時代を描いている。

序盤はマーク・ザッカーバーグとシェリル・サンドバーグの出会いやシェリル・サンドバーグのそれまでの経歴を描いる。シェリル・サンドバーグ個人がフェイスブック参加後に向き合ってきたフェイスブックの男尊女卑文化や縄張り争いについても触れている。広告部門にリソースを割けないことに苛立つサンドバーグの立場も容易に想像できる。マーケット部門とエンジニア部門が敵対する感じも容易に理解できる。

後半は、フェイスブックが通ってきた多くの歴史的な出来事と、それに対するフェイスブックの対応、主にザッカーバーグとサンドバーグの振る舞いを中心に描いている。その経緯やフェイスブック内部の議論や不和を知る中で改めて大企業の社会的責任の大きさを再認識させられる。

人と人をつなげることをミッションに掲げながら、人がつながることで起こる悲劇に会社としてどのような対応をすべきなのだろう。他者を貶めるヘイトスピーチやフェイクニュースなど、間違った情報だからといって削除できないのは納得できる。しかし、それでもその結果大きなマイナスの動きになってしまう要因は、人と人との繋がりを容易にしているフェイスブックにあり、企業としてどのように対応すべきなのだろうか。自分が彼らの立場だったらどんな答えを出しただろうと考えさせられた。

全体的に、マーク・ザッカーバーグとシェリル・サンドバーグの苦悩ばかりが見えてくる内容だった。また、並行して、多くの大きな事件を知ることができた。たとえば、トランプ大統領の大統領選の裏にあったフェイスブックの重要性は噂程度にしか知らなかったし、その後の国会議事堂襲撃事件や、ミャンマーのロヒンギャ族の件は本書を読んで初めて知った。やはり国内のニュースに触れているだけではわからないことが多すぎると改めて気づいた。

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「ローザ・パークス自伝」ローザパークス

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
公民権運動の母と言われるローザ・パークスがその人生を語る。

ローザ・パークスとは、1955年に白人にバスの席を譲ることを拒否して逮捕された黒人女性で、その後大きな公民権運動のきっかけとなった人物である。先日読んだ「Quiet」のなかで、内向的な人が歴史を変えた例としてローザ・パークスの名前が挙がっていたので本書にたどり着いた。

本書では、ローザ・パークスの幼い頃からの家族や親戚との様子を時系列で語っていく。その中で奴隷解放のあとも引き続きたくさんの黒人に対する差別が行われてきたことがわかる。正直、自由の国を謳うアメリカという国でなぜつい最近までこんなことが平然と起こっていたのか不思議である。

やがて、物語は1955年のローザ・パークス逮捕とその後の出来事について語るのである

初めてこの物語を聴いた時、ローザ・パークスのとった行動は、日常の中で一般的な黒人女性に起こったことのように見えた。しかし、実際には彼女の夫は早くから黒人の権利を勝ち取る運動に関わっていて、ローザ・パークス自身にも、公民権に関する強い意志があったのだということを知った。

また、それまでにも白人とのトラブルから大きな運動に発展させられる出来事がないかを、常に黒人の権利を求める行動をしていた人々が探していたことも初めて知った。つまり、素行不良の黒人が白人とトラブルを起こしても大きな運動のきっかけにはならないが、ローザ・パークスのような前科も素行不良もなく真面目な女性であることが多くの人々の心に触れると考えて、黒人の権利を求める人々が利用したのである。

公民権運動を扱った物語に触れると毎回思うことだが、むしろ、自分達の権利のために行動した黒人たちより、そのままの状態のほうが自分達の権利が守られるのに、他の白人たちからの敵意を恐れずに黒人の権利拡大に手を貸した一部の白人たちの行動に心を動かされる。こういう白人たちの行動はそれほど多くは語られないが、本書でも描かれているし、映画にもなった物語「The Help」でも語られている。そのような、自分の利益よりも正しいと感じることに従って生きられる人間でありたいと改めて思った。

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「シリコンバレー・アドベンチャー ザ・起業物語」ジェリー・カプラン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

シリコンバレー・アドベンチャー ザ・起業物語


ペン型のコンピューターのアイデアを思いついた、起業して実際に製品を作ることを決意する。

先日読んだ「社長失格 ぼくの会社がつぶれた理由」でその著者が、失敗したことを本に遺すきっかけとなったのが本書ということで、たどり着いた。

著者はペン・コンピューターを実現するためにGOという会社を立ち上げる。しかしすぐにIBM、アップルやマイクロソフト、AT&Tなどの名だたるIT起業が探りを入れたり、そのアイデアから利益を得ようと近づいてくるのである。

登場人物が多く、法律的な話も多く入ってくるのでなかなか細かいやりとりまではわからないが、当時のIT業界の勢力図はわかるだろう。IBMはすでに動きの鈍い大企業になっていたことが読み取れる。アップルは残念ながらスティーブ・ジョブズのいない期間なので、ジョン・スカリーの記述が多いが、それでもアップルは、当時から良いものを良いとする企業だということがわかる。また、ビル・ゲイツのマイクロソフトは、当時から、著作権に引っかからない範囲で良いものを模倣し、強い企業を作っていくというスタイルだったことが伝わってくる。

中盤からは「1兆ドルコーチ」の本でも有名なビル・キャンベルがやがてペン・コンピューターのCEOになる。本書から垣間見えるわずかなその言動からも、ビル・キャンベルが情熱的で熱いリーダーだったことがわかる。

資金調達だけでなく、契約書の細かい一字一句のすり合わせなど、経営者はこんなにも多くの事柄に対応しなければならないのかと改めて驚かされた。それでも、こんな風にすべてを捧げても惜しくないと思えるような、情熱を注げる仕事に人生を費やすことを幸せだろうと感じた。

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「The Sun Is Also a Star」Nicola Yoon

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アメリカの移民2世韓国人青年のDanielと不法滞在中のジャマイカ人女性のNatasha出会いを描く。

Natashaは、アメリカで俳優になる夢を追いかける父についてきて、観光ビザでそのままアメリカに不法滞在で生活していた。しかし、父が飲酒運転でつかまったことからジャマイカへ帰国をしなければならなくなる。Natashaは弁護士をあたってアメリカに留まる方法を探し続ける。一方で、Danielは両親の勧めで医者になるために、イェール大学の面接を受けようとしている。なりたくもない医者になるという葛藤を抱えながら面接に向かう際、Natashaに一目惚れするのである。

DanielとNatashaの出会いの1日を描く。Danielは運命を信じる一方で、Natashaはどちらかというと現実主義者であり、そんな二人の考え方の違いと、それを反映するように、少しずつ二人の家族の人間関係や歴史が見えてくるのが面白い。その過程で、韓国とジャマイカという国と、その家族がアメリカで生活することの現実が見えてくる。

アメリカ移民の話は本書に限らずよく耳にする。移民一世は子供の将来のためにと、母国を離れ慣れない土地に移り住み、その結果、人がやりたがらない仕事をやって生計を立てなければならない。一方、その子供の移民二世は、親が自分たちのために苦労して生きてきたことを見ているため、親の期待を裏切る生き方ができない。それが子供の心に葛藤をうむのである。

Natashaの不法滞在者という形は今回初めて触れたので印象的だった。見つかったら即強制送還というわけではないという点も、今回初めて知った。確かに、子供から見れば親についてくるしか選択肢がなかったなかでアメリカに留まる選択肢を与えたくなる心情も理解できるが、一方で、そんなことをしていたらアメリカは人口が増え続け、治安をまもるのも大変だろうと感じた。

全体的には、1日で恋に落ちる若者2人を描いているので、非現実的すぎるという批判もありそうである。映画化されたようなので心情描写が表現しにくい映像の方はなおさらただの非現実な恋愛物語になっている可能性が高いだろう。ただ、個人的には、上に挙げたように、移民二世、不法滞在者という普段触れることのない人生を体験できたのが新鮮で楽しめた。

「なぜ日本からGAFAは生まれないのか」山根節、牟田陽子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
GAFAつまりGoogle, Facebook, Apple, Amazonを日本の企業と比較し、その違いを分析している。

海外にはYコンビネーターを代表とする、スタートアップに積極的に投資する仕組みがある。もし日本にもそのような仕組みを作ったら、メルカリのような企業がたくさん日本からも生まれるようになるのだろうか。実際には文化の違いなど、別の問題もあると感じており、他の人はどのように考えているのか知りたくなって本書にたどり着いた。

本書ではGoogle, Facebook, Apple, Amazonの現状やその発展の中のターニングポイントを説明した上で、日本の類似企業、Appleはソニーと、GoogleをNTTドコモと、Facebookを任天堂と、Amazonを楽天と比較している。

GAFAのいずれの企業についても過去何冊か本を読んだことがあったので、どの物語もまったく新しく知ったというわけではなかったが、改めて各企業を見直す機会となった。驚いたのはマークザッカーバーグの考え方である。映画ソーシャルネットワークによってどちらかというといたずら好きな男性というイメージが強かったのだが、本書を読んでそのイメージが少し変わった。Facebookという大企業の中で世界の動きや抵抗や世論と向き合いながらも、悩みながら成長している様子が伝わってくる。

19歳でフェイスブックを始め、社会人経験もなかった自分にとって、会社を経営する中で起こってきた色々な問題を全て咀嚼することは不可能でした。私にとってのこの15年間は、そういう問題1つ1つに対して、もっと責任を取れるように努力してきた歴史だと言えます。

毎回感じるのは創業者の持ち続けている強い信念である。GAFAの各企業はその成長の過程で、何度も莫大な金額で売却できる機会がありながらも、走業社たちは、自らの手で、その信念に則って成長させることを選んだのである。日本で同じようなことがあったら、その創業者はそのお金に目がくらまずに、自ら苦難の道を選ぶことができるだろうか。そう考えると日本とアメリカの違いはシステムだけでなく、信念の違いなのかもしれないと感じた。

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「In the Dream House」Carmen Maria Machado

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
女性同性愛者である著者の、恋人との出会いとその後の同棲の様子を語る。

著者自身が、ある女性と恋に落ち、ともに生活を始め、やがてその女性から振り回されるまでの様子や心のうちをを描いている。その過程で恋人に対する感情たけでなく、社会や家族のレズビアンに対する考え方も吐露していく。同時に、女性の同性愛者間で起きた数々の事件などに触れ、思うことを語っていく。

回想録ということで、物語の展開自体が面白いということは特にないし、有名人の伝記のように、自らの生き方に対して、良い刺激になることもない。

おそらく、この本がベストセラーとなった理由は、内容の面白さよりも、そのレズビアン視点のカップル間の暴力という、斬新さゆえなのだろう。今までに考えたこともなかった、同性愛者視点の社会の見方を知ることができた。世の中が同性愛者を理解していないことに対する、著者のストレスを行間から感じた。そして、さまざまな映画やMVなどのシーンが語られるので、アメリカの文化を知る上では面白いだろう。

一方で、日本ではあまり有名ではない出来事やアーティストや映画の話題にもたびたび触れられているので、アメリカの文化にかなり詳しくないと楽しめないだろう。徹底的に引用される出来事を調べるつもりで読むぐらいが面白いかもしれない。また、スラングがかなり多く登場する。こちらも普通に読んでいくよりも、アメリカ英語を徹底的に学ぶつもりで調べながら読むと面白いかもしれない。

面白かったとか刺激になったとかではないが、間違いなく新しい世界観や視点をもたらしてくれる。

「amazon 世界最先端の戦略がわかる」成毛眞

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
さまざまな業界の勢力図を塗り替えて巨大な帝国を築きつつあるアマゾンのすごさとその戦略を語る。

GAFAとして、アップル、フェイスブック、グーグルと比較されることはあるが、そんななかでもアマゾンのすごいところは、業務の範囲を限定せずに手当たり次第に拡大している点だろう。そして不利と判断するとすぐに撤退し、有利と見ると資金力を活かして容赦無く拡大していくことが、本書を読むとよくわかる。

なかでも面白かったのは、楽天とアマゾンを比較する点である。企業の世界的なサイズは大きく違えと、日本では似た印象を持つこの二者であるが、著者はそのコンセプトには大きな違いがあるという。楽天のビジネスモデルは場所貸しなので、お客さんは出店してくれる企業だが、アマゾンにとってはお客さんはあくまでも消費者なのだという。そのため、初期は楽天が拡大しやすい一方、アマゾンは在庫管理や物流を整備しなければならない分時間がかかったというのである。言い換えれば、在庫管理と物流が整備されたら、楽天に勝ち目はないということだ。海外の本だとなかなか楽天とアマゾンを比較することはと思うだけに、この日本人目線の考察はありがたい。

知っていると思っている以上にアマゾンについて知ることができた。また、アマゾンの未来はそのまま世の中の未来になる点がおそろしくもあり、また楽しみである。全体的にアマゾンが今後つくっていく近い未来にさらに期待を抱かせる内容だった。特にAmazon Goの普及は楽しみである。

【楽天ブックス】「amazon 世界最先端の戦略がわかる」

「フラット化する世界 普及版」トーマス・フリードマン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
インドや中国の現状を元にフラット化していく世界について語る。

アメリカ企業によるアウトソーシングによって栄えるインドのバンガロールをきっかけとして、世界のフラット化について語る。国や地域だけでなく、YouTubeやウォルマート、グーグル、UPS、アパッチ、デルなどのサービスや有名企業などがどのようによってフラット化を進めたり、フラット化を利用しているかについて説明する。

そして著者はそんなフラット化が進む世界において、祖国アメリカの未来を嘆くのである。アメリカ国内の教育、成功願望、予算、インフラなど様々な面で、フラット化が進む世界において十分な備えができていないというのである。

決して読みやすい本ではないが、世界の見方に新たな視点をもたらせてくれる。フラット化(というより均一化だが)する世界のことを、例えば、賃金が安い方へ安い方へとインターネットの力を最大限に利用して仕事が流れていく、と説明してしまえば、なにを今更当然のことを、となるであろうが、本書はその世界のフラット化の様子を様々な興味深い事実とあわせて説明するから非常に説得力があり重い。

そんななか、もっとも印象的だったのは、インドとパキスタンの紛争がフラット化のせいで深刻な事態になることを避けられたという出来事と、著者が考えるフラット化による平和へ貢献、そして9.11が起こったことについての著者による考察である。

世界におけるアラブ・イスラム世界を見ると、さまざまな面で地球上のほかの地域より遅れているのが目に留まる。…若いアラブ・イスラム教徒は自問せざるをえない。われわれの宗教は、信仰、政治、経済まですべてを網羅する優れた教えであるはずなのに、なぜ異教徒のほうがずっといい暮らしをしているのか?

かつてイスラム教徒が支配していたキリスト教国スペインの現在のGDPが、アラブ諸国すべて合わせたより大きいとは何事か。…ビン・ラディンは侮辱されたと感じた。

9.11同時多発テロにまつわる国民感情を、ブッシュ大統領が破廉恥にも政治目的に悪用したことは、歴史がいずれ明らかにしてくれるだろう。

有名な本ですでに出版から10年以上が経っているが、素晴らしい本だと感じた。ベルリンの壁の崩壊や9.11の航空機作戦など、本書で触れられているフラット化の大きな出来事について、もっと知りたいと感じた。

【楽天ブックス】「フラット化する世界普及版(上)」「フラット化する世界普及版(中)」「フラット化する世界普及版(下)」

「Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール」ランダル・ストロス

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
生まれて間もないスタートアップの創業者たちを支援するベンチャーファンド、Yコンビネーターのその日々の様子を描く。

Yコンビネーターという言葉は、エアビーアンドビーなどこれまでいくつかの企業の成功物語の中で目にしてきたが、実際にどのようなことをやっているのかを知りたくて本書を手に取った。

Yコンビネーターの主な活動は、創業者たちを集めて行う3ヶ月のブートキャンプである。本書はそんなブートキャンプの様子に焦点を当てている。その過程で多くの生まれて間もない企業を紹介している。

スタートアップを始める人というのは、やりたいことや、世の中の改善したいことがあったうえで、それを実現するためにスタートアップを始めるのだと思っていたが、実際に本書において、3ヶ月のブートキャンプの創業者たちの様子を知ると、実際にはただスタートアップを始めたくて始めている人の方が多く、何をやるかはあとから出てくることの方が多いことを知った。そんな創業者たちは、利益を上げそうなことや、自分たちの知識を活かせそうなことは手当たり次第手をつけていく印象を受けた。

最後に印象に残ったのはYコンビネーターの創業者、ポール・グレアムがシリコンバレーについて語る言葉である。

ヨーロッパやその他の場所では、人々が大胆さに欠けるということではなく、手本に欠けていることが問題なのだ。

すでにアメリカではYコンビネーター以外にも、スタートアップを支援する企業が多く立ち上がっているというし、アメリカ以外の国の中にも同じような動きはおきているという。日本にもこのような動きがあってもいいのではないかと感じた。また、同時に、スタートアップを始めたくなった。

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「ザ・ゴール 企業の究極の目的とは何か」エリヤフ・ゴールドラット

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
製品の制作工場の改善を中心に、企業の目的に対してどのように生産性を上げるかを、物語形式で説明する。有名な本であり以前読もうと思ったが時間がなくてできなかったためようやくこのタイミングで読むことができた。

物語、出荷遅れなどのトラブルの絶えない工場長であるアレックスが、成果が上がらなければ3ヶ月で閉鎖されることを告げられ、追い詰められたアレックスが、物理の教授であるジョナ先生に助言を求めることからから始まる。そこからジョナはこれまでの工場に置ける既成概念というものを一つずつひっくり返していくのだ。

ジョナが言うには大事なのは、

  • スループット
  • 在庫
  • 作業経費

という3つを重視することである。そして、それを向上させるために

  • 従属事象
  • 統計的変動

ということを考えなければならないのである。

結果を言ってしまえば、工場の生産性は、ボトルネックに依存するということである。ボトルネックを最大稼働させて、極力ボトルネックに無駄な仕事をさせないことが、生産性向上の鍵となるのである。アレックスは工場長としてジョナの助けを借りながら、見事に工場を再生していくのである。

物語としても面白いが、本書は生産管理ソフトの発売物とである会社の社員が、もっと広くこの手法やソフトを知ってもらうために書いたというのだから面白い。何かを知ってもらうためには、ビジネス本のような体裁だけでなく小説という形もありえるのだと再認識させてもらった。

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「NETFLIX コンテンツ帝国の野望」ジーナ・キーティング

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Netflixの創業から発展を描いていく。

今でこそユーザーの一人として楽しませてもらっているNetflix。元々はDVDの宅配レンタルとして始まったという漠然とした知識はあったが、アイデアとしてそこまで斬新とは思えない内容から始まったNetflixがどのような考えと施策でここまでの企業に成長をしたか知りたくて本書にたどり着いた。

創業者のランドルフとヘイスティングスによって試行錯誤しながら少しずつ規模を拡大していくなかで、もっとも物語として魅力できなのは、店舗によるレンタル大手のブロックバスターとの、熾烈な主導権争いでろう。既存店舗からオンラインへ消費者が移っていく中、Netflixに遅れてオンラインレンタルに踏み切ったブロックバスターが猛烈な追い上げを見せるのである。

本書はNeflixと同じぐらい、ブロックバスターのCEOであるアンティオコを中心として多くの主要人物の様子を描いている。ブロックバスターはやがて引退したアンティオコのあとを引き継いだキーズの愚策によって凋落するが、Netflisの発展は、ブロックバスターの存在なくしては語れないだろう。

後半の山場はユーザーにおすすめする映画の精度をあげるためにNetflixが100万ドルの賞金をかけて実施したアルゴリズムのコンテストである。最初はアルゴリズムに自信のある人々が世界中から参加して順位を競っていたが、やがて、すぐれたチームどうした融合してさらにいいものを作るようになる。

全身全霊をかけて自分の信じるものにかける生き方が本当に羨ましい。Netflixが、他のスタートアップと違うところは、創業メンバーの多くが、すでに社会人経験をある程度している人間だということだ。つまり、僕らも今からでもできるとうことである。そんな勇気をもらえる一冊。

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「サードドア 精神的資産の増やし方」アレックス・バナヤン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ビル・ゲイツやスピルバーグ、レディ・ガガはどのようにしてその偉大なるキャリアの最初の一歩を踏み出したのか、そんな成功者の最初の一歩を本としてまとめることを思い立った著者は行動を始める。そんな著者の悪戦苦闘しながらインタビューを繰り返す様子を描いている。

ウォーレンバフェットやビル・ゲイツに話を聞くためになんども断られながらも少しずつ、著名人の間で人脈を築いていく様子が描かれており、何事もくじけずに分析し戦略を練って行えば少しずつ実現できるのだと伝わってくる。その過程で、ビル・ゲイツやレディ・ガガ、ジェシカ・アルバやウォーレン・バフェットなどの人柄も見えてくる点も面白い。

なかなか本書のどこが役に立つとは言えないが、諦めずにしつこくメールを送り続けて失敗した話もあるので、よく言われがちな「なにごとも諦めなければ達成できる」という形ではない。人脈をつくるために戦略を練ることも重要だし、一つの方法に固執することもなく考え付く限り多くの場所に種をまき、芽が出たところを攻めるという方法も効果的だということがわかる。

企業や組織だと「広報」という仕事があるが、個人で人脈を広げることに今まで意識をしてこなかったので、これを機会にできることをやってみたいと思った。

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「アマゾンのすごいルール」佐藤将之

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5

アマゾンジャパンの立ち上げ当初にアマゾンに参加した著者がアマゾンの文化について語る。

著者がアマゾンについて思うことや、著者のアマゾン人生のなかでの印象的な出来事をほとんどランダムに書き連ねているので、読みたい場所から読むことができるといえば聞こえがいいが、物語も筋もないので記憶に残りにくい。

それでも、自分の働いている会社でも取り入れたいなと思ったものは、「1ページか6ページでまとめる」という制度。提案資料を長々と書くのではなく、誰でも簡潔に要点を把握できるようにページ数をルール化しているのである。これによって提案者は高い文章作成能力を求められるのだという。確かに過去を振り返ってみれば、仕事のなかでたくさんしゃべることはしゃべるが結局何が言いたいのかわからない、という人はたくさん存在し、積み重なればそういう人の意見を聞く時間も組織にとっては無視できない大きさであることを考えると、このアマゾンの1ページルールはぜひ真似したい制度である。

そのほかにもほかの企業にはないような制度があふれている。あまり知らなかったアマゾンという企業の文化に少し触れられた気がする。

全体的にはもう少し内容の濃いものを期待していたし、物語的な要素も欲しかった。

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「ティム・クック アップルをさらなる高みへと押し上げた天才」リーアンダー・ケイニー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2011年にスティーブ・ジョブスがなくなって、多くの人がアップルは衰退していくと思ったことだろう。しかし実際にはその後CEOの座に就いたティム・クックによってアップルは世界初の一兆ドルの企業となった。ジョブスとは多くの面で異なるCEOはどのようにしてアップルを進化させたのかに迫る。

正直この本に出会うまで、ジョブスの後のアップルのCEOを知らなかった。もちろん、名前を聞いたことはあったのしてもすぐに思い出せるほど認識していなかった。しかし、実際にはジョブスの死後アップルはさらに発展したと知って、どのようにティム・クックがアップルを導いたのかを知りたくなって本書を手に取った。

本書でもっとも興味深いのは、ティム・クックのものの考え方である。

世界を我々が発見したときよりも良い場所にして後に残す

これはティム・クックが繰り返し引き合いに出し、今やアップルという企業自体のものの考え方にもなっている言葉である。実際、アップルはジョブスの死後、一気に環境や自分たちの関係会社のケアや、慈善団体への寄付など、世の中に良い行いをする方向へ大きく舵をきったのである。また、ティム・クックは同性愛者であることを公開しており、それゆえにジェンダーマイノリティでや、アジア系、メキシコ系などの少数派に対する理解が強い。それも企業としての強みになっているのだろう。

本書のクライマックスは、サンバーナーディーノで14人の死者を出した狙撃事件の容疑者のiPhoneのロックの解除を巡ってFBIと争った場面である。悲劇的な事件を起こした容疑者の捜査という正義を理由に、iPhoneのロック解除の権限を求めたFBIに対して、それによって引き起こされるユーザー情報の危険性を懸念してアップルは拒否するのである。

必ずしも正しいことは、多くの人の支持を集めるわけではない。それでもアップルの決断は、やがて理解され多くの人の支持を集めるのである。

ティム・クックによって、すばらしい製品を生み出していたアップルが、さらに人格的にも優れた企業となったのだと感じた。

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「Becoming」Michelle Obama

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ミッシェル・オバマが、ピアノの先生の上の階に家族で間借りしていた幼少期から、バラック・オバマとの出会い、そしてバラックが大統領としての任期を終えるまでを描いている。

序盤はミッシェルの子供時代を描いている。ファーストレディとなった人だから黒人とはいえ裕福な家庭に育ったのだろうと想像していたが、まったくそんなことはない。それでも両親の考え方がミッシェルのその後の生き方に大きく影響を与えたことは伝わってくる。また、足の病気に悩んだ父の生き方も間違いなく大きな影響を与えたことだろう。

そして、中盤ではバラック・オバマとの出会いが書かれている。やはりバラックは出会った時から異彩を放っていたということだが、この点はひょっとしたら運命の人と出会ったミッシェルの目線だからなのかもしれない。何よりも印象的なのは、バラック・オバマは心のそこから世の中がよくなることを願って行動しているという点である。

そして、その後の夫婦生活も面白い。州知事から大統領、と少しずつ政治家としてのキャリアを積み重ねるバラックを見ながら、「家族の時間が十分に取れていないのにまだやるのか」というミッシェルのバラックに対する非難と、それと同時に自分自身が夫の夢を邪魔する障害でありたくないという葛藤が印象的であった。それは、対象が大統領という特別なものである以外は、仕事や趣味に打ち込みすぎる夫を非難する、どこにでもいる夫婦のようだ。

ホワイトハウスの生活も驚きである。ホワイトハウスでは窓を開けることすら、許可なしにはできないのだそうだ。また、2人の女の子は常にシークレットサービスが身近にいなければいけないということで、ミッシェルが思春期の子供たちにどのような影響を与えるのかを懸念している点も興味深い。

全体的にもっとも刺激的だったのは、バラックとミッシェルの、自分の人生を少しでも自分の理想の近づけようとする努力である。バラックは世の中を少しでもよくしたいという思いを常に持っており法律家から政治家の道へ進み、それを間近で見ていたミッシェルも、やがて大きな収入源となっている法律家の道から、慈善事業の方向へ少しずつシフトしていくのである。「お金より大切なものがある。」と誰もがいいながらも、やりたい仕事をそれまでの半分の給料で受け入れることは簡単なことではないだろう。

全体的には、ミッシェルの視点を通じて、アメリカの黒人に対する現状がよくわかったし、バラックが本当に純粋に世の中のためを思っていることも伝わってきた。またこのような大統領が出ればいいと感じた。

「Show Dog 靴にすべてを。」フィル・ナイト

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ナイキの共同創業者である著者がナイキの創業から現在に至るまでの発展を描く。

ナイキといえば今やスポーツブランドの頂点なので、信念やミッションを持った勢いのある創業をイメージしていた。しかし本書を読んで、その創業は日本の靴メーカーの販売代理店でしかなく、創業者たちも片手間に仕事をしていたに過ぎなかったとわかる。多くの人が今のブランドイメージとずいぶんギャップを感じるのではないだろうか。

しかし、やがて日本の靴メーカーと決別をして独自の靴を作り始めると、その勢いは一気に加速する。本書の一番のクライマックスは、Nikeというブランド名が決まり、少しずつ、オリンピックの代表やスポーツ選手のなかにNikeを履く選手が増えくるところではないだろうか。ブランド名の他の案は今となっては笑えるものばかりだが、ブランド名のかっこよさはその音の響きだけでなく、そのブランドのかっこよさと結びつくもの。どの案になったとしてもかっこよい印象と結びついていたのではないだろうか。

本書のタイトルである「Shoe Dog」とは、靴に人生を捧げる人たちのこと。著者をはじめ、本書には「Shoe Dog」が多数登場する。Shoe Dogであるバウワーマンなどの人との恵まれた出会いによってNikeは大きくなったのは間違いない。悲しいのは、著者の息子の2人、トラヴィスとマシューが最後までスポーツに入れ込むことはなかったということだ。仕事と家族のどちらにも人生を捧げることは、なんと難しいことだろう。

本書でもっとも印象に残った言葉は、著者が経済学の教授から聞いたという言葉である。

商品が国境を越えれば、兵士が国境を越えることはない

驚いたことのもう一つは、タイガーウッズやマイケル・ジョーダンと深い交流があったこと。考えてみれば当たり前かもしれないが、著名なスポーツ選手にとって著者は単に靴のメーカーの社長ではなく、自分たちが有名になるためのチャンスをくれた人なのだ。だから、彼らは一生感謝を表現し続けるのだろう。そういう点を考えると、靴メーカーというのも偉大な仕事なんだと感じた。

企業の成功物語は世の中に溢れているが、その中でもかなり面白い部類に入る一冊。

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