オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ハワイと日本の二重生活を送る著者がその経験を基に今の時代を生き抜く考え方を語る。
成功した人は、その成功の多くが偶然的要素に左右された結果であるにも関わらず、本を出してあたかも自分の視点が正しく世間一般的な視点が間違っているように語ることが多い。そういう意味で本書にもあまり期待していなかったのだが、むしろ予想外にまともなことを語っている点が驚いた。
実は、著者の経歴から「思い切って行動すればなんとかなる」的な内容を想像していた。しかし実際には、社内や社外の人脈の作り方や、転職エージェントの利用のすすめなど、今の時代を生き抜くために、リスクを最小限に抑えて、利用できる物はなんでも利用すべき、という考え方が本書のなかで一貫としている。
著者が繰り返し使うのが「サバイバビリティ」という言葉である。何が起きるかわからない今、1つの会社や1つのキャリアに依存する事こそリスクが高く、「シングルキャリア」から「マルチキャリア」へ、「雇われ型」から「スキル提供型」への移行こそ、生き抜くために必要なのだろう。
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カテゴリー: 趣味/関心事
「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」北健一郎
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ガンバ大阪の遠藤保仁(えんどうやすひと)、FCバルセロナのシャビ。強いシュートを打つわけでもなく、驚くような鋭いパスを放つわけでもない彼らだがそれぞれのチームの中心人物と評価されている。彼らのどんなプレーがすごいのかを、彼らがときどき出す弱いパスを中心に解説する。
正直サッカーを何年もプレーした事がある人にとってはそんなに新しい内容ではないだろう。遠藤やシャビほど計算し尽くしてはいなくても無意識にやっていることかもしれない。それでもこうやって言葉にしていくつかの例とともに説明されると改めていろいろ戦術というものについて考えるだろう。
また、本書では遠藤(えんどう)のプレーに対して、一緒にプレーした事のある他のプレーヤーの意見も書かれている。そこで語られるのは意図を感じさせるパス。パスカットされる可能性があれば出さないという相手ゴール付近であっても出さないという選択、サイドチェンジの効果などである。いずれも賛否両論あるとはいえ、何事もそうだがパス一本とっても極めようとすればいくらでも上がある、ということを再認識させられる。
サッカーを知らない人にとっても、これからサッカーをテレビなどで観戦する際の助けとなるだろう。
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「ガウディの伝言」外尾悦郎
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スペインのサグラダファミリアの建築に関わる日本人外尾悦郎(そとおえつろう)がサグラダファミリアやガウディ、そしてその仕事の内容について語る。
未だ建築中のサグラダファミリア。最近になって2026年に完成するとされているが、その長い間どのようにその建築は進められているのだろうか。もともとガウディは設計図を書いたりせずに建築を進めることが多かったという。サグラダファミリアも例外ではなく、建築家や彫刻家たちはガウディの思いを汲み取って建築を進めなければならない。序盤では著者がそのような過程を経てガウディの思いを形にするまでのエピソードが綴られている。
その中で著者が繰り返し語っているのが、機能と装飾が互いに補い合うガウディの建築の理念である。サグラダファミリアの装飾は単純に装飾としての意味だけでなく、建物の弱い構造を補う意味ももっているのだという。この考え方は建築だけでなく、機能と美しさを同時に考えなければならないデザインのすべてにおいて重視すべき事なのだろう。
また、ガウディの生涯が語られる中で思ったのは、大富豪エウセビオ・グエルとの出会いがどれほど大きかったかということ。天才は努力だけでなく多くの運に恵まれているのだと改めて思い知った。グエルとの出会いがなければガウディは誰の記憶にも残らずに歴史に埋もれていった事だろう。
さて、これだけ長い間建築が続けられていくと、なかには建築開始当初の理念から逸脱する部分もあるようで、後半ではそのいくつかが語られている。本来石で作られるはずだったものが途中からコンクリートになってしまったのもその1つである。確かに実際僕が訪れた際にどこか期待した重厚さが感じられずハリボテのような印象を受けてしまったのもそのせいかもしれない。
今や世界でもっとも有名な建物の1つ、サグラダファミリアについて理解するのに最適な一冊。
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「まち文字 日本の看板文字はなぜ丸ゴシックが多いのか?」小林章
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
フォントデザイナーの小林章が各国のフォントについて語る。
タイトルでは丸ゴシックをテーマに扱っているように聞こえるが、実際読んでみると丸ゴシックの話題は冒頭だけで、あとは著者が世界の各地で見るロゴで気づいた事をひたすら写真を織り交ぜて語っている。同じ著者の前作「フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?」と流れもあまり変わらない。むしろ同じ記事が使い回しされているような気さえする。
これだけ世の中に溢れているにも関わらず、普段フォントというものを意識することのない人にとっては、町を歩く際に新たな視点をもたらす内容だろう。一方で、普段からフォントに触れている人にとっては若干物足りないかもしれない。それでもさらっと気軽に読めて、周囲にあるいろんな文字を凝視したくなる気楽な空気感がいい。
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「恐れるな! なぜ日本はベスト16で終わったのか?」イビチャ・オシム
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
元日本代表監督のイビチャ・オシムが南アフリカワールドカップの日本代表を振り返る。
日本は南アフリカワールドカップの予選リーグでカメルーン、オランダ、デンマークと戦い、最終的に決勝トーナメント1回戦でパラグアイに破れて大会を後にした。今まで多くの雑誌やメディア、テレビ番組でこの4試合について語られてきたが、やはり経験豊かな監督の目線は異なる。負けた試合はもちろん、勝った試合についても良くなかった点や改善方法を示してくれる。
オシムに言わせると、パラグアイは決勝トーナメントに残った16チームのなかでもっとも勝ちやすい相手だったという。前回大会のトルコと動揺、相手にめぐまれたにも関わらずベスト8に進めなかった事を嘆く。孤立してしまった本田をどうすれば機能させることができたのか。選手の間に「引き分けでもいい」という考えがあったのではないか、などである。
そして日本代表だけでなくその他の印象に残ったチームや選手についても語っている。スペイン、オランダはもちろん、予想外に終わったブラジルやイタリア。すばらしい活躍をしたウルグアイのフォルランなどである。本書を読むと改めて、オシムの視点で試合を見直したくなる。
また、サッカー界の流れについても語る。スペインの優勝がサッカー界にもたらすもの。モウリーニョ主義への懸念、日本サッカーの向かうべき方向など、本書によってまたサッカーが1つ深く見れるようになるのではないだろうか。
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「グアルディオラのサッカー哲学 FCバルセロナを世界一に導いた監督術」フアン・カルロス・クベイロ/レオノール・カジャルド
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
サッカーファンでなくても現在のFCバルセロナが、世界でトップ3に入る強豪チームである事は知っているだろう。すでにその前任のライカールト監督時代に現在のようなスペクタクルなサッカーを展開するようにはなっていたが、それでも当時いくつかの問題を抱えていた。そんな中、下部チームを率いていたグァルディオラが一気にトップチームの監督へと引き上げられ、ロナウジーニョやデコなどの有名選手を戦力外にするのである。メディアから批判されたが勝利という結果が出るにつれて、批判は賞賛へと変わっていく。
世界のトップチームはいつも個性のある選手達で構成されている。そのためそのチームを率いて目標を成し遂げる監督の考え方や言動はいつも非常に参考になる。イビチャ・オシム、アーセン・ベンゲル、モウリーニョなどはその代表格であるが、本書からもグァルディオラの持つリーダーシップに重要な心構えが見えてくる。それは明確に意図を伝える能力と、常に物事を学ぼうとする真摯な姿勢である。
グァルディオラが監督として選出される際、すでにチェルシーやFCポルトで優れた結果を残していたモウリーニョも候補にあがったが、バルセロナの文化を熟知しているという点でグァルディオラが選出されたという。モウリーニョはその高慢な物言いから、メディアや他チームと敵対しがちであるのに対して、グァルディオラは何事にも敬意を払うという点が印象的である。
多くの人と関わって何かを成し遂げようとする際に参考になるだろう。
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「3時間台で完走するマラソン まずはウォーキングから」金哲彦
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マラソンを走る上での準備や考え方について語る。
今年3回目のフルマラソン挑戦を決意し、何か新しいヒントが得られることを望んで本書を手に取った。著者は他にも数多くのマラソン関連書籍を出している金哲彦氏である。
腹式呼吸や胸式呼吸、有酸素運動や無酸素運動などの運動や筋肉に関する基本的な内容から、ペース走、ウインドスプリントなどマラソンを走る上で有効な練習方法について解説している。また、フルマラソンを走るための練習だけでなく、ダイエット目的の体重を落とすための正しい方法についても説明しているので、マラソンを日常的に行うすべての人に役立つ内容なのではないだろうか。
印象的なのは著者が走る事と同じくらい重要なこととして、生活習慣の改善を強調していることだろう。食生活、入浴、ストレッチなど生活を少しずつ改善する事でマラソンだけでなく、生活にハリが出てくるというのだ。
正しいフォームや怪我のケアなど、本書によってマラソンに関する新しい知識をまたいくつか得る事ができた。出来る範囲で反映していこうと思う。
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「社交ダンスはリズムで踊れ! 足型いらずのダンスレッスン」石場惇史
オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ダンス用の音楽制作を数多く手がける著者が社交ダンスの音楽について語る。
競技ダンスに励むと音がしっかりとれないことが時々悩みの種になる。そもそも音を正確にとるにはどうしたらいいのか。そんなことがきっかけで本書を読む事になった。
本書ではまずは音に合わせて歩く、というような基本的なことで音楽にあわせて身体を動かす事を解説している。その後は世の中にあふれる音楽の種類と、それぞれの特徴について説明している。本という媒体なので音なしのリズム譜での解説になるので正直わかりにくいが、多くの音楽が世の中には存在することがわかるだろう。
著者が言うには、世の中には「社交ダンス用」と書いてありながらも、単純にスピードだけ合わせてベース音がなかったりリズムが乱れていたりと質の悪いのが多く出回っているのだそうだ。国内の社交ダンス用CDの80%以上がそのようなものだというから驚きである。つまり音がとりにくければ自らのダンスの技術とあわせて音楽を疑ってみる必要があるというこである。
全体的な内容は、やや行き過ぎたダンスや音響についての解説があったりと一貫性に欠けていたのであまり読みやすいものではなかった。
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「旅が仕事 通訳ガイドの異文化ウォッチング」志緒野マリ
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
18年のガイドの経験を持つ著者が、その仕事のなかで知った文化の違いや経験について語る。
通訳ガイドという資格について興味を持っていたため、その現場の様子を知りたくて本書を手に取った。もう20年近く前に書かれているためにおそらく現在の状況とは違う部分もあるだろうが、ガイドとして外国の人と触れ合う機会の多い著者が描く内容はどれも面白い。
海外旅行に何度か行った事がある人ならわかるだろうが、日本人の几帳面さは世界でも最高レベルである。だからこそガイドは日本人の害外旅行を案内する際と、外国人が日本を旅行する際の案内のしかたを大きく変えなければならない。また、各国の宗教による制約も常に意識しなければいけないことなど、知識として持ってはいても実際の経験者が語るとまた違って聞こえてくる。
広く視野を持つために様々な文化に触れることは重要なのだろう。改めてそんなことを感じさせてくれる一冊である。
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「ウルトラマラソン マン」ディーン・カーナゼス
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
46時間で320km走り抜いた経験を持つ著者が、学生時代のマラソンの経験や、社会人になって再びマラソンにのめり込み、その中で経験したレースや生活について語る。
著者はいくつものマラソンレースに参加しているがなかでもウェスタンステーツ100、バッドウォーターウルトラマラソン、南極マラソンは面白い。僕らはマラソンというとせいぜい42kmの距離でしか考えないが、本書で語られるマラソンを知るとフルマラソンが可愛く思えてくる。距離が長いだけでなく標高差の激しいマラソンは、場所に寄っては冬のように寒くも夏のように暑くもなるのである。
バッドウォーターでは、高い気温で熱せられたアスファルトによってシューズが溶けてしまうというから驚きである。また、南極マラソンでは下手をすると気管支が凍ってしまうというのだから、そんな環境でマラソンをしようとすることがどれほどの挑戦か想像できるだろう。
きっと多くの人から変人扱いされているのだろうが、著者の人生はものすごい充実感あふれるものに違いない。
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「踊りませんか? 社交ダンスの世界」浅野素女
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
パリに移り住んで社交ダンスの魅力に取り憑かれた著者が、それぞれのダンスの起源や魅力について語る。
冒頭で語られていることではあるが、著者は別に社交ダンスの先生でも技術の優れたダンサーでもない。多くの人と同じように社交ダンスが好きな一人の女性である。本書には技術的なことはほとんど書かれていないのである。むしろだからこそ社交ダンスの本としては珍しいかもしれない。
僕自身社交ダンスをここ3年ほど楽しんではいるが、考えてみると10ダンスと言われるモダン5種目(ワルツ、タンゴ、スローフォックストロット、ヴェニーズワルツ、クイックステップ)、ラテン5種目(ルンバ、チャチャチャ、サンバ、ジャイブ、パソドブレ)がどうやって生まれてどのように今の形になったのかまったく知らなかったのである。
例えば社交ダンスのなかでおそらく最初に習い、もっとも時間をかけて練習するだろうワルツについてさえも、きっと発祥はヨーロッパだろうと思いながらも正確なところは知らなかったのだ。本書が語るのはまさにそんな部分。どうやらワルツは多くの歴史を乗り越えて今の形になっていったのだという。
それぞれのダンスについて語る中で、著者のダンスについての考え方も見えてくる。
きっと本書を読む事でそれぞれのダンスにさらに深い姿勢で臨む事ができるようになるだろう。社交ダンスをしたことがなくて本書を読んだ人は社交ダンスを始めたくなるかもしれない。
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「Webライティング実践講座」
オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
Webに特化したライティングについて語る。
Webライティングの書籍はいくつか出回っているが、本書はいろいろな文章を実際に修正して見せてくれる点が新しい。文書を圧縮する手順として、「客観的事実でない行を削除」や「冗長な表現を削除」などいくつかの方法をあげている。この部分を実践するだけでも世の中の多くのWebは見違えるようなものになるだろう。
全体的には、添削部分で多くのページを費やしており、内容が深いとは残念ながら言えない。
ひょっとしたら鉛筆と実際の文章を校正しながら読み進めるともっと本書は違った印象を与えてくれたかもしれない。
【楽天ブックス】「Webライティング実践講座」
「職業は武装解除」瀬谷ルミ子
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
著者は紛争地帯で平和のために武装解除の手助けをしている。本書ではそのきっかけと、これまでの仕事の内容やそこで直面する問題について語っている。
そもそも「武装解除」がなぜ職業になるのか、武装解除になぜ手助けが必要か、普通の生活をしている人にはその部分がわからないのではないだろうか。
紛争地帯だった場所では紛争が終わっても、長い間武装して戦争をしていた人たちは働くための知識や技術を持たないため、平和な社会で生きる術がない。しかし手元には相変わらず武器が残っているから、彼らは再び武器を手に取ろうとする。そういう人々が大勢いる限りその国はいつまでたっても平和にならないというのである。著者が職業として言う「武装解除」はそんな長年戦闘に明け暮れて教育も受けてない人々に、武器と引き換えに教育や援助を与え平和な社会に適応させることなのである。
著者は高校のときに見た報道写真を見たことをきっかけに、世界を飛び回るようになったのだ。ルワンダ、アフガニスタン、コートジボアール、シエラネオネなどアフリカを中心に活動しており、本書ではそんななかでの経験の一部を紹介しているのだが、もちろん生死の境で生きてきた人々を、裕福な国から訪れた女性が簡単に説得できるはずもなく、そこでは多くの問題が生じる。
生死の危険に隣り合わせの場所で、著者の直面する現実や葛藤はどれも新鮮である。世界のありかただけでなく、著者の選んだ生き方と行動力に触れることで、自らの生き方まで見つめ直すきっかけになるだろう。
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「翻訳教室」柴田元幸
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
東大の文学部で行われた翻訳の授業をほとんどそのまま収録している。教師である著者と生徒、ときにはゲストを交えて翻訳について議論する。
英語にある程度自信がある人は、何度か翻訳まがいの事をやったことはあるだろう。わずかな英語の文を訳したり、時には長い文章を訳したりといった程度かもしれない。そんな人はすぐに気づくだろう。英語から日本語への翻訳に必要なのは英語の能力よりもむしろ日本語の能力なのである。そして僕自身たくさんの本を読む習慣があることから日本語の能力には自信を持っていたのだが、本書が描く授業の内容はさらにその上をいくもの。翻訳なんて意味が伝わればそれでいいと思うかもしれないが、もっと突き詰めて考えているひとたちがいるのである。
単に意味を知っていたり、辞書をひいたりするだけでは決してわからない言語と言語の差について考えさせられる。
中程に村上春樹をゲストとして迎えたときの授業の様子も収録されている。正直村上春樹の作品は僕の好みではなく理解の及ばないものだが、その話の内容は面白い。
また、翻訳の題材として採用されているヘミングウェイなどもぜひ読んでみたいと思った。
【楽天ブックス】「翻訳教室」
「続・翻訳の基本 素直な訳文の作り方」 宮脇孝雄
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
前作「翻訳の基本」に続いて、本書でも翻訳家である著者の過去の経験から、興味深い誤訳や翻訳者の注意すべき事について語る。
本書を読んだからといって翻訳の技術があがるというものでもなく、むしろ翻訳という物の難しさを感じる事だろう。
すべての言語について言える事だが、1つの言葉が複数の意味を持っている物があり、それは前後の文脈から判断するしかないのだ。また、各国の文化に精通している事も必要で、海外の生活を描いた原書を、日本の感覚で翻訳して誤訳となった例も紹介している。
翻訳の奥深さを感じさせてくれる一冊である。
【楽天ブックス】「続・翻訳の基本 素直な訳文の作り方」
「スリジエセンター1991」 海堂尊
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
東城医大へ赴任した天才外科医天城雪彦(あまぎゆきひこ)は常識はずれな行動で注目を浴びる。それに対抗しようとする未来の病院長高階(たかしな)や佐伯(さえき)病院長など病院内の権力争いは熾烈をきわめていく。
「ブラックペアン1988」「ブレイズメス1990」に続くチームバチスタの10年以上前を描いた物語。「チームバチスタの栄光」など現代のシリーズの方を読んでいる読者は、高階(たかしな)は病院長になるはずだし、本書では生意気な新人の速水(はやみ)は天才外科医になるということを知っているから、きっと物語とあわせてその関連性を楽しむ事ができるだろう。
本書では高階(たかしな)、佐伯(さえき)、天城(あまぎ)など、それぞれの思惑で病院内の主導権を握ろうとする。ただ単純に多くの支持を集めるために医療のあるべき姿を語るだけでなく、それぞれが状況に応じて手を組んだり裏切ったりしながら地位を固めようとする様子が面白い。
医療はすべての人に平等であるべき、という高階(たかしな)や看護婦たちの語る内容も正しいと思うが、一方で天城(あまぎ)の主張するように、お金がなければ高い技術の医療は提供できないという意見にもうなずける。そこに正しい答えはないのだ。その時の世間の意識が医療の形を変えていくのだろう。
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「Web文章上達ハンドブック」森屋義男
オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
Webコンテンツの文章をよりよくしていくための方法を語る。
「てにをは」や「である調」「ですます調」など基本的なライティングの考え方は特に新しくもなかったが、むしろライティングという全体の作業を、ディレクター、ライター、エディターという3つの視点から捉えている点が新しい。つまり、通常では少なくとも3人の人間が文章を作成するうえで必要で、世の中の人が思っているほどライティングも簡単な作業ではないという事なのだ。
全体として視点としては悪くないものの、ページ数が少ないため浅い内容で終わってしまっている。値段を考慮するとあまり満足できるものではないだろう。
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「だから御社のWebは二度と読む気がしない」戸田覚
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
インターネットというものが人々の生活に入り込んですでに10年以上が経過している。印刷物と異なるのは企業が頻繁にサイト上の情報を更新できるというものだ。いつでも変更できるという意識があるからだろうか、多くの企業はウェブサイト上に書かれる文言には、印刷物に書かれる文言ほどコストも時間もかけていないのである。
本書は企業がサイト上の文言を考える上で注意するべきことを、大手企業サイトの悪例を参考にしながら語る。
個人的に現在のインターネット事情に感じることと著者の言う事がぴったりだったので興味深く読む事ができた。また、現場での作業に活かせそうな内容にもいくつか出会うことができた。
本書が発行されたのがすでに6年が経っているが、世の中にあふれるサイトは相変わらず読みにくいものばかりである。制作に関わる企業はもっとライティングの重要性を理解するべきなのだろう。
ライティングの重要性を語りながらも本書中にかなりの脱字があったことはやや気になったが特に内容に影響する物でもない。著者が行っているというライティングのセミナーも参加してみたくなった。
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「ヤバい経済学」スティーブン・D・レヴィット/スティーブン・J・ダブナー
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
1990年代の後半のアメリカ。誰もが犯罪の増加を予想する中、殺人率は5年間で50%以上も減少した。多くの人がその理由を語り始めたという。銃規制、好景気、取り締まりなど、しかしどれも直接的な理由ではない。犯罪が激減した理由はその20年以上前のあるできごとにあったのだ。
わずか数ページで心を引きつけられた。経済学と聞くと、どこか退屈な数学と経済の話のように感じるかもしれないが本書で書かれているのはいずれも身近で興味深い話ばかりである。大相撲の八百長はなぜ起こるのか。なぜギャングは麻薬を売るのか。子供の名前はどうやって決まるのか。こんな興味深い内容を、数値やインセンティブの考え方を用いて、今までになかった視点で説明する。
個人的には冒頭のアメリカの犯罪率の話だけでなく、お金を渡したら献血が減った話や、保育園で迎えにくる母親の遅刻に罰金を与えたらなぜか遅刻が増えた話などが印象的だった。お金を使って物事を重い通りに運びたいならそこで与えるお金の量は常に意識しなければならないのだろう。
なんだか世の中の仕組みが今まで以上に見えてくるような気にさせてくれる一冊。
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「社長の時間の使い方 儲かる会社にすぐ変わる!」吉澤大
オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
時間の使い方を自由に選択できる社長は、その時間をどういうふうに使うべきか、という視点に立って語る。
基本的に本書で書かれているのは、時間とお金を常にその効果に見合うかを考慮して選択するということに尽きるが、普段から心がけている人にとっては特に新しい内容ではないだろう。
Googleカレンダーなどの新しい技術にも触れているが、基本的には著者が普段やっている事をそのまま本にしただけといった印象である。
【楽天ブックス】「社長の時間の使い方 儲かる会社にすぐ変わる!」