オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
37歳のワタナベが1969年の19歳のときに起こった出来事を思い出す。
言わずと知れた有名作品。周囲のハルキストから村上春樹作品について熱い話を聞かされるたびに挑戦して、相変わらずその世界観の魅力を理解せずに終わるということを繰り返しているが、今回もそんな挑戦の1つである。
本書はワタナベがノルウェイの森という曲によって、過去を思い出す、という形式で描かれている。19歳だった当時のワタナベの日常には、自殺した友人のキズキ、その恋人の直子、直子と一緒に療養所で過ごしてるピアノ教師のレイコ、ワタナベと同じ寮の部屋で過ごす長沢など、どこか奇妙な人々が関わっていた。それぞれがそれぞれの不思議な視点から物事を語る言葉がワタナベ自身の生き方に影響を与えたのだろう。そんな言葉の数々は、読者自身にもなんらかの影響を与えるのではないだろうか。
個人的に印象的だったのは、ワタナベが同じ部屋の友人長沢について、その彼女に別れを勧めながら語るシーン。
なんか自分のことを言われているような気がした。きっと誰もが、心のなかに、決して他の人には理解してもらえないと思える一面を持っており、それゆえに表に出さずに心のなかに封印したまま生きているのではないか、と思った。そんな封印を解いて生きる長沢と、それを言葉で語ってしまったワタナベに少しどきっしたのである。
相変わらず春樹ワールドを楽しめたとは言えない気がするが、これまで読んだ春樹作品の中では一番楽しめた気がする。
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