「ポイズンドーター・ホーリーマザー」湊かなえ

オススメ度 ★☆☆☆☆ 1/5
女性目線の人間関係を扱った6編の物語。

先日読んだ「ユートピア」が比較的面白かったので、湊かなえ作品のなかで良い作品を読み損ねているのではないかと思い、本書にたどり着いた。

6編とも女性目線の物語で、すべての物語で交通事故や殺人事件で誰かが亡くなる事件が起きる。

著者湊かなえは毎回女性の醜い部分を書くことにこだわっているように感じるが、本作品も嫉妬や自意識や他責など、女性の醜い部分を存分に描いており、残念ながら楽しい部分や見習うべき部分、共感できる部分はほとんどなかった。

正直、著者が何を伝えたくて本作品を描いたのか掴みかねた。単に描きたいものを描くだけでなく、大切なことを物語を通じて伝えたいとか、少しでも世の中を良くしたいとか、物語の作者にも自身の大義を持ってほしいと思うが、本書からは感じなかった。

最後の2編「ポイズンドーター」と「ホーリーマザー」は娘目線、母親目線と物語の裏と面になっている。娘は母を毒親と言い続け、母親の側は娘を恩知らずと見る物語である。普段人の文句ばかり言って自ら人生を変えるための行動をしないような人が読むと、何か感じるものがあるのかもしれない。

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「ユートピア」湊かなえ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第29回(2016年)山本周五郎賞受賞作品。海沿いの田舎町鼻崎町で暮らす3人の女性すみれ、菜々子(ななこ)、光稀(みつき)をそれぞれの立場から描いていく。

それぞれの地元への関わり方の異なる3人の女性の視点が面白い。菜々子(ななこ)は鼻崎町で生まれ育ち、交通事故で車椅子生活となった娘久美香(くみか)を抱えている。陶芸家のすみれは元恋人の誘いで鼻崎町に移り住み芸術家仲間とともに、鼻崎町の景色や人を利用して自分の陶芸家としてのブランドを育てようとする。光稀(みつき)は夫の仕事の都合で鼻崎町に住むことになり、いつか再び都会で生活することを望んでいる。

やがて、光稀(みつき)の娘彩也子が車椅子生活の久美香(くみか)について描いた感想文を、すみれが自分の芸術家としての宣伝のために使ったことで、3人の日常に変化をもたらすのである。

どんな人間関係の中でも生まれそうな、気遣い、嫉妬、見栄、野心など様々な感情が自然な形で描かれる点が面白い。自分だったらどうするだろう、という本人としてのふるまいだけでなく、自分が親だったら子供にどう伝えるだろう、というような子供に見せる親としてのふるまいについてもいろいろ考えさせられた。

著者湊かなえ作品は本書で「告白」以来2作品目で、「告白」は個人的には本屋大賞受賞作品の割に不自然さが際立っていたことを考えると、しばらく読まない間にずいぶん作家としての技術が上がった印象を受けた。

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「告白」湊かなえ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
第6回本屋大賞受賞作品。
娘を生徒に殺された女性教師は、最後の日のホームルームである告白をする。自分の行ったことに苦悩する生徒。子供の行動に悩む親や兄弟。一つの事件を機に見えてくる人の心を描く。

映画がヒットしているそのまっただなかで読むことになった。基本的に告白や日記という形で物語は進むため、ややスピード感に欠け、単調な印象を受けた。

娘を殺された教師の告白から始まり、その殺人に関わった生徒二人の目線、その親の日記と続く。物語に必要とはいえ、中学生の日記にしてはあまりにも長く、描写が上手すぎるという点は読みながら不自然さが拭えなかった。

最後まで非難と復讐の物語。現実の世界では、常に救いがあるわけではないので、必ずしも希望の見出せる作品にする必要はないが、それにしてももう少し上手い描き方はなかったのだろうか、と感じた。
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