オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ニューヨークの投資ファンドの鷲津政彦(わしずまさひこ)は日本の企業を買収し再生させ、そこから利益をあげるスペシャリストであり、その企業再生の様子を描く。
鷲津(わしず)率いるチームは、法律やマスコミを巧みに利用して、銀行から不良債権化した債権を安値で買い取り、それを基に、その企業を再生していく。「ハゲタカ」と呼ばれる彼らのそんなビジネスは一見血も涙もない利益だけを追求した行為にも思えるが、本物語の中で印象に残ったのが、結局、社員や経営者の反感を招いてはその企業を再生させるための大きな障害になるから敵対的買収はしない、というスタンスである。
むしろ本作品の中では、会社を利用して私腹を肥やし、身を粉にして働く社員達さえも大切にしようとしない経営者達の怠慢さが強調されている。かれらの多くは経営が立ち行かなくなった理由を、貸しはがしや貸し渋りをした銀行のせいにして、自分たちの経営の責任を最後まで認識しない。
倒産間際の会社の経営者に名を連ねながら、信じられないほど豪勢な社宅に住んでいる経営者達に、最後通牒を突きつける鷲津(わしず)の戦略は時に爽快ですらあり、それが本作品の魅力なのだろう。
ただ、個人的にはリゾートホテル経営の家系に生まれ、立ち行かなくなったホテルの再建に悩む松平貴子(まつだいらたかこ)や、友人からスーパーチェーンの再建を任された芝野(しばの)の奮闘する様子をもう少し描いて欲しかったと感じた。
物語はもちろんフィクションであるが、現実に存在する名をもじったであろうと思われる企業名が多々登場し、過去の経済界の大事件にも再び興味をそそられる。例を挙げるなら丸紅、ローソン、山一証券、ナビスコ、など、時間があれば過去の買収劇の舞台裏を調べてみたいものだ。企業の買収劇に関して僕らは紙面で数行の文字としてみるだけだが、実際には多くの駆け引きや利害関係、人間物語が詰まっているものだと改めて感じた。
とはいえ、全体的には企業買収の駆け引きに終始し、鷲津という感情移入のしずらい人間を主人公格にすえているせいか、物語としての楽しみはあまり見出せなかった。僕の経済に関する知識の乏しさゆえなのかもしれないが。