「高校事変II」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
平成最後のテロリストの次女、優莉結衣(ゆうりゆい)が生活する養護施設で同じ高校に通う高校生奈々美(ななみ)が行方不明になった。奈々美の妹の理恵(りえ)に頼まれ、奈々美の捜索に乗り出す。

いきなり第二弾から読み始めてしまったが物語時代はそれなりに楽しむことができる。おそらく第一弾を読んでいるともっと全体の流れがわかるのだろう。物語は女子高生の売春組織に関わった奈々美(ななみ)の失踪から大きな連続殺人事件へと発展していく。最新のIT事情などの技術的題材が随所に散りばめられているところが松岡圭祐らしいが、物語から何か刺激を受ける部分があるかと聞かれると少ないかもしれない。むしろ登場人物と同世代の高校生向けの内容にも思える。

【楽天ブックス】「高校事変II」

「黄砂の籠城」松岡圭祐

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
1900年北京では義和団と呼ばれた武装集団が勢力を高めつつあった。やがて日本など11カ国の外国公使館の並ぶ区域は暴徒化した義和団の脅威にさらされることとなる。
「義和団事件」として、歴史の教科書のなかで名前ぐらいは聞き覚えがあるかもしれない。それがこれほどまですさまじい事件だったとは現代に生きるどれほどの人が知っているのだろうか。本書はそんな歴史的事件を扱った非常に事実に近いフィクションである。
北京の地で孤立した外国公使館地区にいるのは必ずしも政府関係者ばかりではない。その家族や先生たちもそこにいるのである。そんななか少しずつ「義和団」と呼ばれる人々が目につくようになり、気がついたら国外に逃げることさえできな位状態になっており、自分たちの命を守るために籠城をはじめるのである。
しかし、イタリア、ロシア、フランスなど11カ国の公使館関係者が公使館区域を守るなかで、各国の縄張り争いや文化の違いによりうまく集団として籠城が機能しないのである。本書は、そんな状況のなか、強烈なリーダーシップを発揮した実在した日本人柴五郎(しばごろう)の様子を日本軍伍長の櫻井隆一(さくらいりゅういち)の視点で描いている。柴五郎(しばごろう)だけでなく、細かい気配りや勇気や勤勉さで籠城をリードする存在となっていく当時の日本人たちの様子が伝わって来る。
自国の人々を美化したくなるのはどこの国も同じなのであまり鵜呑みにしすぎるのも避けたいが、今まで知らなかった歴史の一面を知れたことは確かである。特に柴五郎(しばごろう)という人物については本書を読んで初めて知った。厳しい状況で正しいことを信念を持って遂行する姿に心を打たれるだろう。
【楽天ブックス】「黄砂の籠城(上)」「黄砂の籠城(下)」

「特等添乗員αの難事件I」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人とは違った考え方を常にする浅倉綾奈(あさくらあやな)はそれゆえに社会に適応できずにいた。その才能に目をつけた警察キャリア壱条那沖(いちじょうなおき)は、綾奈(あやな)に社会に適応させるべく特別な授業を受けさせることを決める。
松岡圭祐ワールドの新たなヒロインの第一作であるが、本作品には万能鑑定士シリーズの凛田莉子(りんだりこ)もかなり頻繁に登場する。物に対する知識を極限まで蓄えた凛田莉子(りんだりこ)と、物事を人とは別の視点から眺めることに長けた浅倉綾奈(あさくらあやな)が悪事をたくらむ輩と対決する物語である。
第一作ということで、浅倉綾奈(あさくらあやな)の成長の姿が非常に面白い。個人的に印象的だったのは綾奈(あやな)の教育担当である年配の元教師能登(のと)のその考え方である。

ゲームはインベーダーかせいぜいゼビウスまで、最近のものはついていけないと語る中高年は、それゆえ信頼できる存在ですか?AKBのメンバーの顔の区別がつかないとか名前を知らないというのが自慢になりますか?いずれも大きな勘違いといえましょう。いつの世も、どのような分野であれ知識の幅は広ければ広いほどよいのです。

年配はゲームをしないとかマンガを読まないとか、一体誰が決めたのだろう。いつまでも新しい物事に目を向けて生きていたいと思える言葉である。
そして終盤に向かうにつれ立派な一人前の添乗員になっていく綾奈(あやな)。さて、壱条(いちじょう)との恋模様はどうなるのか、家族とはうまくやっていけるのか。続編が楽しみである。
【楽天ブックス】「特等添乗員αの難事件I」

「万能鑑定士Qの事件簿IV」松岡圭祐」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
都内で放火が相次いだ。狙われた家には必ずひとつの古い邦画映画ポスターがあった。
鑑定士凛田莉子(りんだりこ)シリーズの第4弾である。今回もシリーズではおなじみの流れとなりつつあるが、冴えない記者小笠原(おがさわら)と冴えない刑事葉山(はやま)とともに物語は展開するが、そこに臨床心理士として嵯峨敏也(さがとしや)が加わる。「千里眼」「催眠」シリーズから松岡圭祐作品を愛読している人にとっては注目すべき点だろう。
さて、物語は各地に眠っていた古い邦画ポスターをめぐって展開する。犯人の狙いはなんなのか、何故ポスターを燃やす必要があるのか、と。
力を抜いて楽しめる一冊。例によって雑学好きにもお勧めである。
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「万能鑑定士Qの事件簿III」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
音響効果を用いて詐欺を働いていたのはかつてのミリオンセラーのヒットを多く飛ばした音楽プロデューサーだった。凛田莉子(りんだりこ)はその企みに挑む。
万能鑑定士シリーズの第3弾。前の物語はIとIIにわたって繋がっていたが、本作品はIIIだけで完結している。詐欺を働く音楽プロデューサーはTK氏を想起させる。おそらく述べられていることのいくつかは現実のTK氏のことと重なるのだろう。
詐欺を防ごうと奮闘する物語でありながら、どこか力を抜いて読める作品。なんだかすこしずつ凛田莉子(りんだりこ)のやっていることは千里眼シリーズの岬美由紀(みさきみゆき)のやっていることと変わらなくなったように感じる。
まだ読んでいない続編が次々と出ているようだが、もう少し深みのある物語に発展することを期待している。
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「万能鑑定士Qの事件簿II」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
各テレビ局に送られた2枚の番号まで同じ1万円札。日本中に偽札があふれている現実に世の中が慌てふためく。
「万能鑑定士Qの事件簿I」とほぼ2冊で一つの物語となっており、凛田莉子(りんだりこ)の紹介的な流れだった前作とはことなり、今回は偽札があふれかえったことによって混乱する日本を描いている。
実際、世の中に真偽の判定ができないほどの精巧な偽札が出回っていると世間が知ったときの世の中の動きというのは、なかなか想像しがたいものではあるが、商店が紙幣での支払いを拒否し、人は外貨への両替に走る、というように、そんな状態で起こりうるいくつかの人々の行動は本書のなかで描かれているように見える。「ほかにどんなことが起こりうるだろう」と考えながら読むと面白いかもしれない。
ちなみに偽札というと、偽札作りに命をかける男たちを描いた真保裕一(しんぽゆういち)の「奪取」などが頭に浮かぶ。紙幣に注ぎ込まれている最新技術などに興味のある方はこちらもお勧めしたい。
【楽天ブックス】「万能鑑定士Qの事件簿II」

「万能鑑定士Qの事件簿I」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
出版社に勤める小笠原(おがさわら)は、東京の街中に張られている「力士シール」の鑑定を依頼するため、「万能鑑定士Q」という鑑定士と出会う。その鑑定士は凛田莉子(りんだりこ)。まだ20代前半の若く女性だった。
気がつけばずいぶん長いこと松岡圭祐作品から遠ざかっていた気がする。「千里眼シリーズはもう完結してしまったのか。そんな、松岡ワールドへ久しぶりに触れたいと思い、その新たなヒロインと思える本書を手に取った。
物語は、鑑定士である凛田莉子(りんだりこ)と、かなり不器用な雑誌記者小笠原(おがさわら)の出会いから始まる。同時に、高校を卒業し東京に出てくる凛田莉子(りんだりこ)という過去のエピソードが平行して展開する。本作品のメインはむしろその過去の凛田莉子(りんだりこ)のエピソードで、勉強は苦手なのにもかかわらず、東京での暖かい人たちの出会いでその才能を開花させ、鑑定士としての生き方光明を見出すまでが描かれている。
本書は物語としては凛田莉子(りんだりこ)の紹介に以上の部分はないと言っていいだろう。これから起こる大きな混乱が続編「万能鑑定士Qの事件簿II」で解決されるらしく、本書中にちりばめられた多くの謎は「II」まで持ち越しとなっている。
松岡圭祐作品はいままで現実的な話は「催眠シリーズ」で、やや過渡なエンターテイメント性を持った物語は「千里眼シリーズ」で展開していたが、本シリーズはどちらかというと後者に近くなりそうな印象を受けた。
ただの思いつきだけで出来上がったヒロインではなく、今後取り上げられるエピソードで、強く読者に訴えるものがすでに用意された上で、それをつくりあげられるために用意されたヒロインであってほしいものだ。

リンネ
スウェーデンの博物学者、生物学者、植物学者。(Wikipedia「カール・フォン・リンネ」

【楽天ブックス】「万能鑑定士Qの事件簿I」

「千里眼キネシクス・アイ」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ゲリラ豪雨に襲われている能登半島で岬美由紀(みさきみゆき)はノン=クオリアのステルス機に出会う。ゲリラ豪雨はノン=クオリアが意図して起こした災害だった。
今回は「シンガポールフライヤー」で登場した人の感情の存在を否定しする集団ノン・クオリアの陰謀を阻むことが主な目的となる。
序盤は美由紀(みゆき)の小学生時代のエピソードが描かれており、小学生でありながら日経を読むことを習慣にしていたりその異質な存在感も面白いが、美由紀(みゆき)をライバル視するクラスメイトの黒岩裕子(くろいわゆうこ)のエピソードにも楽しませてもらった。
また家族思いの美由紀(みゆき)の父親が、まだ幼くいながらも現在と同じように暴走しがちな美由紀(みゆき)の行いを優しく諭すシーンが温かい。

こんなことを言ってはどうかとも思うけど、人間少しはみ出してもいいと、お父さんは考えてる。それが絶対に正しいことだと自分が感じるのなら

上巻の中盤以降は舞台を現代に戻して話は進む。例によって時事ネタを取り入れた物語展開は期待を裏切らないが、かといって、世の中の問題点などを浮き彫りにするような内容の深さがあったかというと、今回はその点ではやや物足りなさを覚えた。
僕の記憶ではノン・クオリアは「シンガポール・フライヤー」から本作品までの間には登場していないように感じているし、松岡圭祐のサイトを見てもその認識で間違いないようだが、内容からは別のエピソードがその間起こっているような表現が見られた。小学館から発刊されていた初代千里眼シリーズと、角川から発刊されている千里眼シリーズで、多くの過去の作品が「完全版」の名を持って書き直されることによって若干の混乱を感じている。

カクテル・パーティ効果
たくさんの人が雑談している、カクテルパーティーのような雑踏のなかでも、自己に興味のあるヒトの会話、自分の名前などは、自然と聞き取ることができる。(Wikipedia「カクテルパーティー効果」

【楽天ブックス】「千里眼キネシクス・アイ(上)」「千里眼キネシクス・アイ(下)」

「千里眼 ブラッドタイプ 完全版」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世の中は血液型診断ブーム。さらにドラマの影響で白血病は不治の病という考えが広まる。そんな中で、岬美由紀(みさきみゆき)の同僚の嵯峨敏也(さがとしや)は白血病を再発する。
本作品はそのタイトルからもわかるように「血液型」を大きく扱っている。血液型ブームは、日本を含む世界的に見ればわずかな国にのみ根付いている文化である。日本でその文化が根付いているのは、各血液型があるていど存在するという説や国民性という説など諸説あるが、日本では多くの人が、「血液型診断は信憑性がないもの」と知りながらも人と出会ったときに血液型をたずねるのを自然なコミュニケーションとして受け入れているのだ。
本作品は、日本の血液型診断に対する意識をさらに誇張したような世界で展開される。たとえば、学校では特定の血液型に対するイジメが起こり、病院では患者が、特定の血液型の輸血を拒むことで、命の危険にまでさらされているのだ。そんな誤解を、世の中に根付いて危険の思想と位置づけ、それを解決するために、美由紀、嵯峨、一之瀬絵里かが奔走する。
そして、血液型だけでなく白血病に対しても世の中の人々は偏見を抱く。その大きな原因としてテレビドラマが挙げられている。視聴者の涙を誘うために、悲劇の主人公を描いた悲しいドラマをつくり、それがヒットすれば他の局も似たような悲劇のドラマを作る。時に過剰なまでに病気のつらい部分を強調することで、主人公の置かれた悲しい状況を視聴者に伝えて涙を誘うのだが、その繰り返しによって、視聴者は少しずつ病気に対して間違った先入観を刷り込まれていく。この辺の描き方は、明らかに一昔前の「世界の中心で…」を連想させる。
世の中に溢れかえる情報に対して常に疑ってかかる、中立でいることの大切さを改めて意識させてもらった。相変わらず突飛な展開にはやや辟易する人もいるかもしれないが、個人的にはいつもどおり楽しむことができた。
【楽天ブックス】「千里眼 ブラッドタイプ」

「千里眼 優しい悪魔」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
千里眼第2シリーズ第9作。スマトラ島自信で記憶を失った女性を治療するためにインドネシアに趣いた岬美由紀(みさきみゆき)はそこで、世界を操る闇の集団メフィスト・コンサルティング・グループのダビデと出会う。因縁の戦いが再び始まる。
例によって、時事ネタや、感心するような小話を随所に散りばめて展開しており、物語の面白さ以外にも楽しめる作品に仕上がっている。
本作品は、小学館の千里眼シリーズからたびたび登場するメフィスト・コンサルティング・グループのダビデと「千里眼 ファントム・クォーター」などで登場するジェニファーレイン、そして「千里眼 シンガポールフライヤー」で表に出てきた人の心を信じない集団、ノン=クオリアの間で繰り広げられる争いを描いており、角川文庫のシリーズの大きな区切りとなるような構成となっている。
中盤から利害が一致したことによってダビデと美由紀(みゆき)は行動を供にして、ジェニファーレインの悪事を阻もうと試みる。美由紀(みゆき)はいつのもとおりその正義感から、そして、ダビデは、かつての部下だったジェニファーレインを思ってか、仕事としてか…、今まで、そのおどけた表情の裏に隠されたダビデの本性だが、本作品ではダビデ目線で描かれるシーンもあり、過去のシリーズの流れとは少し違った空気を感じる取ることができるかもしれない。

きみが過食症の女性のカウンセリングをしているとき、地球の裏側では五人の子供が飢えによって死んでいる。

本作品では、登場人物だけでなく、過去の事件などが何度か引用される。僕自身この千里眼シリーズは小学館と角川文庫で10年近く、ほぼすべてを読んでいるが、それでもその引用される登場人物や事件の前後関係が思い出せない。このあたりに松岡圭祐のおごりを感じてしまう。
物語的にはやや物足りない印象も受けるが、今後の展開に対する期待を感じさせる作品である。

参考サイト
メフィストフェレス
ドイツにて民間に伝えられる悪魔。(Wikipedia「メフィストフェレス」
タリホー
アメリカ合衆国のメーカーであるU.Sプレイング・カード社によって製造されているトランプのひとつ。バイスクルと並ぶ同社の人気商品。(Wikipedia「タリホー」
マホガニー
センダン科の広葉樹で、古くから知られる世界的な銘木のひとつ。
参考サイト
エレベーターのキャンセル技

【楽天ブックス】「千里眼 優しい悪魔(上)」「千里眼 優しい悪魔(下)」

「ミッキーマウスの憂鬱」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
夢を支える仕事がしたいという思いから、ディズニーランドでの勤務が決まった青年、後藤大輔(ごとうだいすけ)の職場での姿を描いている。
松岡圭祐の初期の作品ということで、ずいぶん前からタイトルだけは耳にしていたが、なかなか触れる機会がなく、今回ようやく書店で目に止まり読むことができた。
本作品はもちろん、ディズニーランドを扱った作品である。物語中にはたくさんのアトラクション名が出てくるため、ディズニーランドに何度も足を運んだことのある人には非常に楽しめる作品かもしれない。残念ながら僕は2度しか行ったことがないので、そのイメージが湧いたのは、シンデレラ城、カリブの海賊、ビッグサンダーマウンテンなどわずか数点で、ディズニーシーに話が及ぶとまったくイメージできない、という具合であった。とはいえ物語はディズニーランドの舞台裏もかなり詳細に描いているので、夢は夢のままでとっておきたかった、と後悔する人もいるのかもいれない。
物語中でも、夢の世界の舞台裏に入ったことで、現実を突き付けられ、失望する後藤(ごとう)の姿が描かれる。

夢のディズニーキャラクターを演じる者たちの葛藤。そんなものが存在するなんて、できることなら知りたくなかった。夢は夢のまま、そのほうがどれだけよかったかわからない。

それでもやがて後藤(ごとう)は、周囲の人に支えられて、夢を支える仕事に自分の存在意義を見出していく。
物語の過程で描かれる、キャストたちの着付けの様子や、来場者の夢を壊さないためにキャストに強いられるさまざまなルールに、ディズニーランドの成功の秘訣を見ることができる。
また、物語の中で描かれる複雑な人間関係や、そこで発生する諸問題によって、東京ディズニーランドという、世界で唯一ディズニーカンパニーが経営権を持たないディズニーランドという企業としての利害関係についても理解を深めることができるだろう。
夢の舞台の裏側を描いたという展では本作品を読む意義はあっても、物語としてはややありきたりな印象を受けた。

【楽天ブックス】「ミッキーマウスの憂鬱」

「千里眼 シンガポール・フライヤー」松岡圭祐

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
千里眼第2シリーズの第8作。「千里眼 美由紀の正体」で自分の過去を知った岬美由紀(みさきみゆき)は精神疾患に悩まされていた。そん中、世の中は新種の鳥インフルエンザの猛威に晒されていた。
本作品で岬美由紀(みさきみゆき)は今まで以上に人間味を出す。人の心を読めることで、人の悪意を瞬時に察しながらもそれを証明することができないために周囲に協力を求めることができない。そして、どんな人でも少なからず悪意を持っているため、目に入る全ての人の表情が気になる。そんな悪循環に悩まされる。

わたしには世の中が見えすぎた。知りたくないことまで知ってしまい、真実の重さを心が支えきれない。

例によって、多く現実の出来事を物語に盛り込んでいる。ルネサンス佐世保の猟銃発砲事件、富士スピードウェイで開催されたフォーミュラ1での交通問題。時事ネタが素早く取り込まれることが松岡圭祐の指示される理由だろう。
本作品では「クオリア」という言葉がキーワードになる。

クオリアとは、僕ら人間が何かに注意を向けたとき、そこに感じる独特な質感。たとえばビールののどごし、チョコレートの味わいの深さ。夜空に瞬く星の美しさ。

新種の鳥インフルエンザ、ヴェルガ・ウィルスの日本への拡大を防ごうとする美由紀(みゆき)と、クオリアを否定する組織「ノン=クオリア」が対峙することになる。

この世は物質がすべてじゃない。クオリアというものがあると、確かに信じているから

人間が生きる喜びを感じる多くの要素を説明しうるクオリア。しかし、成長過程によってはそれを理解できない人もいることを、理解できるからこそ物語の結末に興味を掻き立てられる。
小学館から発行されていた千里眼第1シリーズに比べて、この角川文庫の第2シリーズは物足りなさを覚えることが多かったのだが、本作品はそんな中でも心に残るものがあった。


ドリトル現象
動物や物がしゃべっているように感じる精神病。
不思議の国のアリス症候群
知覚された外界のものの大きさや自分の体の大きさが通常とは異なって感じられる主観的なイメージの変容した状態。(Wikipedia「不思議の国のアリス症候群」
スンガイ・ブロー
シンガポールの北西に位置するマングローブや渡り鳥を観察できる、自然保護区。
ポルフィリオ・ディアス
1876年から1911年までメキシコを支配した独裁者。(Wikipedia「ポルフィリオ・ディアス」
エビングハウスの忘却曲線
長期記憶の忘却を表す曲線である。心理学者のヘルマン・エビングハウスによって導かれた。(Wikipedia「忘却曲線」
参考サイト
Wikipedia「マリーの部屋」

【楽天ブックス】「千里眼 シンガポール・フライヤー(上) 」「千里眼 シンガポール・フライヤー(下) 」

「千里眼 美由紀の正体」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
政治的立場を利用して、女性に淫らな行為を働いた男性に対して、強烈な怒りと共に制裁に走った岬美由紀(みさきみゆき)。普段は冷静にもかかわらず時に暴走するその理由は一体なんなのか。美由紀(みゆき)の幼少期の真実が明らかになる。
起こるはずもないと思われる出来事で読者をひきこみ、物語中でその出来事についてはさりげなく解決してみせる、そしてそのころには物語中にどっぷり浸かっている。松岡圭祐がよくやる手法がこの物語でも健在である。
人の心を読むことができながら、恋愛経験が乏しいばかりに人の恋愛に関する意識だけは読むことが出来ない。「千里眼」シリーズでは過去何度もそういうシーンがあり、そこが非のうちどころのない主人公である美由紀(みゆき)に読者が親しみを覚える理由なのだろう。今回は、なぜ美由紀が恋愛経験が乏しいのか、という点に深く踏み込むことになる。
第2シリーズに入って展開がやや大人しくなっていたが、今回は自衛隊時代の美由紀の恋人で、第1シリーズの「ヘーメラーの千里眼」で重要な役どころを演じた、伊吹直哉(いぶきなおや)が多くのシーンに登場したのがこの作品をより常識はずれで、面白くしているのだろう。そうでなくとも、自衛隊という組織が絡むといつだって千里眼シリーズは面白くなる。なぜなら、自衛隊は日本でもっとも矛盾を孕んだ組織だからだ。今回はそんな自衛官、伊吹が語る言葉がもっとも印象的だ。

自衛官ってようするに、人殺しの候補ですからね。自衛隊は、幹部候補生だろうが一般学生だろうが、人型の的の眉間を撃ち抜く練習を積むし、突進していって人形の胸を銃剣でぐさりと刺す。自衛隊という組織で優秀だと認められたことはすなわち、侵略してきた外国人を殺すにあたり、極めて秀でているという国家のお墨付きを得たということです
目的は手段を正当化するんだよ。外国人が侵略してきたらその時点で戦争だから、殺してもいい。俺たちは自衛隊でそう教わっている。じゃなきゃ、俺たちはなんで十八歳から人殺しの訓練を受けてたってんだ?

物語は、人身売買などの問題も絡んで進んでいく。貧富の差がある限り、地球上から永久になくなることのない人身売買問題に改めて興味を持った。
物語中で、珍しく自信を失う美由紀は終始自分の孤独感に苛まされる。しかし、美由紀(みゆき)のように物事の大部分を自分で解決することができる人間は往々にして孤独なことが多い。これは仕方が無いことである。なぜなら、人は人間関係の中にいつだってギブアンドテイクを求めている。頼られてこそ、その人を頼っていいと誰もが思うのだ。つまり、人に頼ることのない人間は、人から頼られることも少ない。そうすると美由紀(みゆき)のような人間に頼ってくる人はいつだって本当に無力な人ばかり。それでは対等な人間関係は築けないのだ。そんなことが何故か物凄く理解できてしまう。


ヴェイロン
ブガッティ オトモビル SASが製造・販売するスーパーカー。(bugatti.com
トゥール・ダルジャン
1582年、パリ・セーヌの岸辺から始まり、各国の王侯貴族が集う美食の館としてフランス料理の歴史と伝統を育んできた店。パリに本店を持つ。世界唯一の支店である「トゥールダルジャン東京店」はホテルニューオータニの中にある。
ガンザー症候群
人格障害と関連性のある症状。曖昧な受け答えや前後の文脈と関係のない的外れな話をしたりする。

【楽天ブックス】「千里眼 美由紀の正体(上)」「千里眼 美由紀の正体(下)」

「霊柩車No.4」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
霊柩車の運転手を務める怜座彰光(れいざあきみつ)。その特異な職業とその周囲で起こった事件を物語にしている。
霊柩車の職業という普段接することのない人間を主人公にしているためにその周囲で起こる一般の人にとっては非日常的である日常的なことの描写のすべてが非常に新鮮で面白い。途中、やや現実離れした展開も見せるが、それはあとがきで作者も言及している通り、意図的なもののようだ。物語中で、死に近い場所で毎日生活しているからこそ至ったであろう考え方がしばしば出てきて、それがとても面白い。

私やきみは死と向きあって日々過ごしているが、世間の人々はちがう。ふだん、死というものを忘れている。すなわち、生というものすら意識しないんだ。

千里眼シリーズ、催眠シリーズ、マジシャンシリーズなど、終わり方を見るとこの怜座彰光(れいざあきみつ)の物語も続編へと続きそうな気配を持っていた。今回は第1作ということで、その特異な環境やその職業の社会との関わりだけに触れるだけで、とりたててしっかりとした筋や世の中を風刺した内容を伴っていなくても、ある程度読者を満足させることができたであろうが、自作からはしっかりとしたテーマが必要になってくるだろう。次作はその辺に注目して読んでみたい。


クリープ現象
アクセルを踏まなくても勝手に動き出す現象のこと。這い出し現象。オートマチック車にのみ起こる。これを防ぐためにはフットブレーキを踏んでおくか、サイドブレーキを引く必要がある。

【楽天ブックス】「霊柩車No.4」

「千里眼 堕天使のメモリー」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
千里眼第2シリーズ第6作。ハローワークに職探しに現れた女性は「千里眼の水晶体」で自殺を図り行方不明となっていた西之原夕子(にしのはらゆうこ)であった。岬美由紀(みさきみゆき)は自己愛性人格障害と見られる夕子(ゆうこ)を救うべく奔走する
この物語の中では、基本的に「千里眼の水晶体」で、人格障害とみなされながらも犯罪に走り、結局、美由紀(みゆき)が救うことのできなかった夕子(ゆうこ)を中心として物語が進む。
第2シリーズも6作目になるが、第1シリーズのような深いテーマが未だに感じられない。個人個人の小さな精神的な苦痛を軽んじていいとは言わないが、社会に巣食った問題や矛盾に興味を覚える僕にとっては、やはり全体的に物足りなさを感じる。


フォールス・コンセンサス効果
自分の意見を根拠無く多数派だと思い込んでしまう心理的作用。
反動形成
好きなものを嫌いと言ってしまう心理的作用。
ブリッグ症候群
自分は汚くても他人の汚さは許せない心理。

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「千里眼の教室」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
千里眼第2シリーズ第5作。氏神高校の体育館で爆発が起こった。そして爆発の後、生徒達は突然氏神高校国の設立を政府に向かって宣言する。
例によってやや現実離れしたストーリーである。学校という小さな面積と少ない人数で独立した国を作ろうとする生徒達の行動は、小さな国の成り立ちを見ているようだ。
インターネットを利用することで、土地が無くても頭脳で外貨を稼ぐことができ、国に役立つ情報や技術にはそれ相応の通貨を支払うなど、国民のモチベーションを上手く国へ還元させようとする。その一方で医療技術の進歩が遅れていれば、国民の生命を守るために、医療技術の進んだ他国に頼らざるを得ない。小国であるが故の長所と短所をこの題材の中でうまく表現している。
生徒達の知識が、高校生という設定にしては豊富すぎる印象もあるがこのへんの非現実感は千里眼シリーズだから描けるものなのだろう。そんな非現実なストーリーの中で発せられる疑問や台詞には現代の真実を的確に言い表したものもある。

実力行使こそが子供たちにとって唯一の対話法だったのよ。いつものらりくらりと問題から目をそむけてばかりの大人たちに対し、子供たしは発言の自由など感じてはいなかった。それで、どうあってもわたしたちが逃れられない状況をつくりだしてきた。

どんなに学のない大人であっても、中学生や高校生と比較すれば多くの知識を持っているのは当然である。それであるがゆえにその行動が正しくなかったり子供にとって納得の行かないものであったとしても言い争えば大人が勝ったり上手くはぐらかすことができるものである。それだけの理由で、大人には「自分たちのほうが正しい」という思い込み、子供には「大人は話しても無駄」という思い込みが生まれ、双方の溝は深まっていく。
いつか大人の立場になったとき、子供達の間に、そんな不都合な溝の生じない関係をつくれる大人になりたいものだ。


適応規制
私たちの心が、緊張や不安などの不快な感情をやわらげ、心理的な安定を保とうとする働き。
適応規制 合理化
一見もっともらしい理由をつけて、自分を正当化しようとする機制
適応規制 退行
たえがたい事態に直面したとき、発達の未熟な段階にあともどりして自分を守ろうとする機制
村八分
十分の交際のうち、葬式と火事の際の消火活動の二分以外は付き合わないという意味からとされ、のけ者にすることを「八分する」とも言われていた。十分のうちの八分は、「冠・婚礼・出産・病気・建築・水害・年忌・旅行」である。

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「千里眼 岬美由紀」松岡圭祐

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
4年ぶり2回目の読了。前作「千里眼 メフィストの逆襲」と2冊で一つの物語となっており、北朝鮮問題を題材とした物語の完結編である。岬美由紀(みさきみゆき)や蒲生誠(がもうまこと)は東京カウンセリングセンターの研修生となった謎の女性、李秀卿(リ・スギョン)を北朝鮮の工作員と疑って身辺警護する。
北朝鮮で生きてきた李秀卿(リ・スギョン)と美由紀(みゆき)は物語中で何度も言い争いをする。信じるものや育った環境によってどんなに理論的な会話を重ねようともお互いに理解することは難しいものだと感じさせるが、それを辛抱強く続けることによってそれは可能になるということもまた教えてくれる。
そして、物語中盤から、正体を現した李秀卿(リ・スギョン)によって、日本と北朝鮮の関係の中で多くの日本人が誤解している一つの真実の形を見せている。

日本国内の犯罪。だが、容疑者扱いされた外国の関係者はそれによって迷惑を被る。ところが、その疑いを晴らす機会を日本政府は外部の人間には与えない。それが結果的に非協力態勢を生む。相互の信頼関係を遠ざける。
日本も過去に嘆かわしい行為の数々をはたらいているだろう。アメリカと手を結び、アジアに強大な軍事力を展開させている。原子力発電所も数多く建設している。それらについては朝鮮民主主義人民共和国になんら事情を説明しようとしない。一方で、わが国が防衛のためにミサイル開発をしたり、発電所建設のために原子力の研究施設を築こうとすると、すぐに核ミサイルを配備するかもしれないといって喧嘩ごしになる。きみらは自分たちが正しく、わが国が間違っていると信じ込んでいる。
北朝鮮も紆余曲折を経て、近代化の波のなかで平和を維持しようとしつづける。内乱を防止するために人々に一つの統一された思想を持たせる。日本ではそれを”洗脳”と呼ぶ。だが彼らにとっては、それはひとつの平和維持のための手段だ。それが正しかったかどうかうかは、数十年後の歴史の判断に委ねられる

もちろんこの物語は松岡圭祐の作り出したフィクションなのだから、必ずしも真実が描かれているとは限らない、しかし、僕らが「真実」として受け止めていること。つまり、ニュースや新聞から得られる情報によって僕らが持っている北朝鮮に対する印象も、必ずしも真実とは限らないのである。北朝鮮に対する考え方を変えてくれる作品である。


チュチェ思想
北朝鮮のいわゆる「主体思想」。1960年代の中ソ対立の中で北朝鮮の自主性を守るために、金日成〔キムイルソン〕が打ち立てた。マルクス・レーニン主義を下敷きに、人間観、歴史観、領導論、自主路線政策、関係理論などを粗描したもの。
参考サイト
アメリカ大使館爆破事件(Wikipedia)

【Amazon.co.jp】「千里眼 岬美由紀」

「千里眼 メフィストの逆襲」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
4年ぶり2回目の読了。「千里眼」第1シリーズ第5作である。「千里眼 ミドリの猿」と「千里眼 運命の暗示」では中国と日本の問題を題材に取り上げていたが、本作品では北朝鮮問題を題材に取り入れている。「千里眼 岬美由紀」と2冊で一つの物語を構成する。
物語冒頭では岬美由紀(みさきみゆき)の自衛隊時代のエピソードが描かれている。自衛隊という矛盾した存在を現場の目線で語っている。

軍人と同様の責務を求められながら、軍人であることを公に否定され、公務員であることを自覚せねばならない立場。そんな自衛隊員のアイデンティティの矛盾が、やがては有事の際にとりかえしのつかない失策につながるのではないか。
われわれはいったいなんのために存在するというのだ。自衛隊に先制攻撃が許されないのはわかる。が、防御のための応戦さえできないというのでは、存在意義がないではないか。自衛隊は文字通り、憲法上あいまいにされてきた解釈の泥沼にはまってしまっている。

物語途中から李秀卿(リ・スギョン)という北朝鮮工作員と疑われる女性が大きく関わってくる。李秀卿(リ・スギョン)と美由紀(みゆき)の議論は双方とも祖国の正当性を主張するもので、育った環境によってお互い理解することの難しさを見せてくれる。

日本人は、外国人がたどたどしい日本語でしゃべるというだけで、まるで知性が同等でないかのような錯覚を抱きやすい

拉致問題など、北朝鮮問題に興味を抱かずにはいられない作品である。
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「千里眼 洗脳試験」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
4年ぶり2回目の読了。「千里眼」第1シリーズ第4作である。奥多摩の山中で行われていた自己啓発セミナーの参加者4,000人が人質に取られた。「千里眼」で凶悪なテロを画策し、「千里眼 運命の暗示」で死んだとされた友里佐知子(ゆうりさちこ)が企てた陰謀である。
世間で認識されているような、人を思いのまま操る”洗脳”は現実にはあり得ない。という立場に立ちながらも、4,000人ものセミナー参加者が抵抗も見せずに施設の中に人質として留まってしまった状況に、「洗脳」の存在を信じる世間に対して、美由紀(みゆき)や嵯峨敏哉(さがとしや)は心理学的立場から真実を探ろうとする。
世にはびこる凶悪事件について、その犯人を「異常」とか「洗脳された」という一言で片付け、それ以上理解しようとしない現在の世の中にに疑問を投げかけているのがこの物語のテーマと言えるだろう。

意識の変調を、異常とかおかしいのひとことで切り捨てていたんじゃ、進歩も発展もない。あの参加者のようなひとたちと理解しあえるときは、永遠にやってこない

どんな凶悪な犯罪者だろうと、そのような行為を働く過程、育った環境にその心を育む土壌があったはず。そんな考え方は普段の人間関係にも当てはめることができる。理解し難い行動に走る人、仲良くなることはできないかもしれないがその気持ちを理解することはできるかもしれない。
物語終盤では友里佐知子(ゆうりさちこ)と岬美由紀(みさきみゆき)が向き合って言い争う場面がある。決して知ることのできな人間の本質、生きる意味。お互いの信念を言葉にしてぶつけ合う、その台詞の数々はどれも心に響く。結局その人生に悲観するか希望を見出すかは本人次第なのである。そこに、間違っているとか正しいとかいうものはない。


ダッチロール
機体の傾きと機首の方向が左右に変化を繰り返し、進行方向が安定しなくなる現象。
メソッド演技
せりふを抑揚で意味づけしたり、外見の動きで演技を説明したりせず、内面的な心を大切にする演技技法。
レム睡眠
浅い眠りを指す。体の骨格筋は弛緩状態だが、脳は覚醒に近い状態で活動し、まぶたの下で目がキョロキョロと動き、「体は眠っているのに脳は起きている」という状態。一般的には、入眠してから最初のレム睡眠出現までは60〜120分。その後、ノンレム睡眠とレム睡眠をおよそ90分周期で繰り返す。ちなみに、夢を見るのはたいていこのレム睡眠のときが多い。
ノンレム睡眠
いわゆる深い眠りを指す。脳の温度は下がり、体は弛緩して心拍のテンポも遅くなり、眼球は上転してほとんど動かない、「脳も体も休んでいる」状態。さらにノンレム睡眠にも深い時期と浅い時期がある。このノンレム睡眠の深さは睡眠の質とも関係しており、熟睡感に影響すると考えられている。
ブランチ・ダビディアン事件
1993年、アメリカ・テキサス州ウェイコで起きた、宗教団体ブランチ・ダビディアン(Branch Davidian)による武装立て籠もり、および集団自殺事件。ただし、『自殺』という見方には異議・疑問も呈されている。
人民寺院
牧師ジム・ジョーンズが創設した宗教団体。もともとはアメリカ合衆国インディアナ州に存在した団体であったが、反社会的なカルト宗教として急成長。南米・ガイアナのジョーンズタウンに自給自足のコミュニティを作ったが、1978年11月18日、ジム・ジョーンズを含む900人以上が集団自殺。そのうちの300人以上が他殺だった。
参考サイト
日本航空350便墜落事故(Wikipedia)
羽田沖日航機墜落事故体験記
人民寺院事件/信者900人の集団自殺事件人民寺院事件/信者900人の集団自殺事件
御船千鶴子(Wikipedia)

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「千里眼 運命の暗示」松岡圭祐

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
4年ぶり2回目の読了。「千里眼」第1シリーズ第3作である。前作「ミドリの猿」の続編。岬美由紀(みさきみゆき)と嵯峨敏也(さがとしや)、そして刑事の蒲生誠(がもうまこと)は日本への宣戦布告間近の中国奥地に降り立つ。
集団マインドコントロールを行っているメフィストコンサルティングのトリックに迫っていく。フィクションということで、深く考えずにその手法は「可能」と受け止めて読み進めるしかないが、美由紀(みゆき)の解決手段は読者に大きな驚きを与えてくれるだろう。


プラシーボ効果
あなたの病気を治す薬だと何の薬利作用も無い錠剤を与え、その人の病気が治癒、または改善する事。
ジャイロ効果
回転体(自転車の場合は車輪)が角運動量を保存しようとする働きで、回転体の回転数および質量が大きいほど効果が大きい。日常的に触れているジャイロ効果としては、自転車の車輪などが挙げられる。

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