オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2007年の夏、サブプライムローンを初めとする住宅ローンへの不安から起こった金融危機。本書は「サブプライム」という言葉でひとくくりにされている問題を、住宅バブル、略奪的貸付、金融技術、世界の余剰資金という複数の視点から見つめ解説する。
理系の僕は正直言って経済には疎く、なかなかこの手の内容が理解できない。本書を手に取ったのも数日前に読んだマイケル・ルイスの「世紀の空売り」の細かい金融商品の仕組みが理解できなかったからである。本書も8割も理解できれば上出来かな、と思っていたのだが、非常に読みやすくわかりやすい。著者があとがきで「学生にもわかるような解説書にするという難題」と書いているとおり、経済の知識が未熟な人にも十分に理解できるような内容になっている。
興味深かったのが、サブプライム問題を理解するためにはアメリカという国の背景を理解する必要があるという説明のなかで、日本や欧州は消費者が冷遇されているが、アメリカは消費者が優遇されているという点である。アメリカでは借金をして豊かな生活をする文化が日本よりもはるかに染み付いているゆえに、金融商品がさまざまなニーズにこたえる形で発達しているのである。それ以外にもアフガン戦争やカードローンなどをサブプライム問題をここまで深刻にした要素としてあげている。
また、本書ではサブプライム問題の解説とともに、今後の世界の姿を描いている。今までアメリカが輸入超過で貿易赤字を生むことで、世界の景気を支えていた、それゆえに今後は世界の景気を支えるためにはアメリカに変わる貿易赤字大国が必要、というのはひょっとしたら経済に詳しい人には常識なのかもしれないが、僕にとっては非常に新鮮だった。
今まで見えなかった世界の動きが少し見えるようになった気がする。
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