オススメ度 ★★★★☆ 4/5
コロナ禍で移住先のバンクーバーで乳がんが見つかり、その治療の様子を描く。
直木賞受賞作品の「サラバ!」が有名な著者が、エッセイとして自らの乳がんの治療の経緯と、バンクーバーの生活の様子を描く。
乳がんの診断から順を追って描いている。そのなかで、バンクーバー生活の中で著者が気づいた、日本との文化の違い、医療の違いなどが見えてくる。無責任なバンクーバーのスタッフたちに憤慨する一面があるかと思えば、そのほがらかなスタッフたちに勇気をもらう場面もあり、日本とバンクーバーを比較してどちらが良い悪いと単純に言えないことを改めて感じさせられる。
また、乳がんという女性特有の病気を患った人間の視点や生活も伝わってくる。抗がん剤治療や放射線治療のつらさのなかで、多くの友人たちに恵まれて乗り越えている様子が感じられる。
両胸があったところに、2本の赤い線が引かれていた。真っ直ぐ、定規で引いたような線だった。…本当に綺麗な傷跡だった。
書くことを、身体がどうしても拒むほどのいにくい瞬間があったし、書くことを、やはり身体がどうしても許してくれない美しい瞬間もあった。
病気に悩んでいる人が勇気をもらえる内容である。