「戦場のニーナ」なかにし礼

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
戦場で瓦礫の中で生き残った一人の赤ん坊は、ロシア兵に助け出され、「ニーナ」と名づけられ、中国人として育てられることになった。
「戦場のニーナ」というタイトルがなんとも魅力的でついつい買ってしまった。戦争に人生を振り回されたという話だと、中国残留孤児や、真保裕一の「栄光無き凱旋」で描かれた、アメリカに住む日本人たちなどが僕の頭に思い浮かび、いずれの人生にもいろいろ考えさせられるものがある。
本作品もそういう刺激を期待していて、実際ニーナはロシアで自分の国籍をはっきり知らぬままその人生の大部分を過ごし、その間には多くの悲しい出来事が起こるのだが、物語中で展開する会話は残念ながら非常に現実感に乏しく、小学生の演劇のような表面的な台詞に終始している。その一方でなぜか恋人であるユダヤ人とのベッドシーンだけはやたらと長くしつこくて半分も読んだところで残りのページの多さに途方にくれてしまった。
巻末にある参考文献の数々や物語中に登場する多くの都市や歴史的建造物の多さに、著者が相応の下調べをしたことがわかるだけに、登場人物の心情描写や台詞のチープさが作品全体の質を下げてしまってこのような作品にしか仕上がらなかったことが本当に残念である。
ぜひ著者に真保裕一の「栄光無き凱旋」を読んで人の心の中に現れては消えていく複雑に入り混じった感情とその表現方法を知って欲しいと思った。
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