「完売画家」中島健太

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
「絵描きは食えない」という常識を覆した完売画家と呼ばれる著者のこれまでの活動や考え方を語る。

僕自身、制作物や技術を売る人間なので、著者の考え方が、技術の上達やブランディングに活かせないかと考え、本書にたどりついた。

読み始めて気づいたのだが、著者はもともと体育会系の人間なのだという。また、論理的に物を考える傾向があり、それによって、行動や思考が筋道立って説明されていてでわかりやすかった。むしろ、だからこそ、このように一般的な美大出身の人とは異なる道を歩み始めたのかもしれない。

本書で繰り触れていることとして、美大の講師は、美術でお金を稼げなかった人がなっている場合が多く、その結果、美大ではお金の稼ぎ方を学べないという悪循環が起こっているというものがある。著者はそんななか周囲から白い目でみられながらも、自らの絵を売る方法を確立し、その過程や考え方を説明している。ギャラリーや美術団体の種類や傾向の話は印象的で、また、オンラインで販売することの画家としてのデメリットの話も興味深かった。

絵を描く技術については次の言葉が心に残った。

多くの人は、線を描き始める場所は決めていますが、描き終える場所は決めていない。そのため、終わるところを意識するためでも、速くなります。

本書では、美術業界において実践していることを描いているが、早く良質の作品を仕上げることの重要性や、人の求める要素を見極めたり、競争相手のいない領域で勝負することなどは、他のどんな業界においても言えることである。改めて今僕自身が毎日やっていることに取り入れられないか考えたみたい。

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