オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ストーカー被害に悩んで失踪した婚約者の真実(まみ)を探してて、架(かける)は真実(まみ)の過去を辿る。
真実(まみ)と架(かける)が婚活アプリで知り合って婚約したという設定から現代らしさを感じさせる。真実(まみ)がストーカーの存在を話していたことから、架(かける)は過去のお見合いの相手が怪しいとして、真実(まみ)の地元の群馬県へ訪れる。真実(まみ)が利用していた結婚相談所や、過去のお見合い相手と話すうちに、今まで知らなかった過去や家庭の事情が明らかになっていくのである。
面白いのは、架(かける)が真実(まみ)の消息を探していくうちに、さまざまな現代の婚活事情に触れる点である。特に真実(まみ)の利用していたという結婚相談所の女性小野里(おのざと)の話す言葉はどれも深く、この部分だけでも読む価値ありである。
本来は自分の長所であるはずの部分を相手が理解しないせいだと考えると、自分が傷つかずにすみますよね。
うまくいくのは、自分が欲しいものがちゃんとわかっている人です。自分の生活を今後どうしていきたいかが見えている人。ビジョンのある人
皆さん、謙虚だし、自己評価が低い一方で、自己愛はとても強いんです。
ピンとこない、の正体は、その人が、自分につけている値段です。
僕自身も婚活を経て結婚した身なので、本書で描かれていることは非常に理解できる。
そして、物語が進むに従って、真実(まみ)の失踪直前の出来事が明らかになっていく。
世の中で生きていくためにはある程度の計算高さが必要である。しかし、大切に育てられすぎた子供はそんな計算高さを身につけることができない。また、身近な家族の生き方や努力を過大評価しすぎることもよく見られる傾向である。結婚という出会いを難しくさせているさまざまなの事情が真実(まみ)と架(かける)の人生から浮かび上がってくる。
改めて、ここまで人の心情を言語化できる辻村深月という作家の描写能力はすごいと感じた。これまで著者の作品を30冊ほど読んでいるが、その中でもベスト3に入る内容だと感じた。世の中の婚活中の男女にはぜひ読んでほしい。