オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第13回メフィスト賞受賞作品。すでに3人の少女を殺害し、殺人の際には研ぎ上げたハサミを被害者の首に突き刺すハサミ男である主人公の「わたし」。3人目の獲物を求めて歩き回が、ハサミ男の模倣犯が現れてしまう。
「わたし」は妄想癖を持っているため常に博識な「医師」と呼ばれる想像上の人との会話を繰り返す。その博識ぶりはや考えの斬新さは、物語の展開以外の刺激を与えてくれる。
加えて、事件の真相を追うフリーライターやハサミ男を追う警察関係者達の会話も面白い。
物語は、警察関係者目線、「わたし」目線を交互に繰り返していく、読者の誰もが終盤には「わたし」に一杯くわされることだろう。
この手の手法を用いる作品は、この状況を作り出すために、話の展開だけに重点を置きすぎて、心理描写などが薄くなりがちだが、この作品はそんなことがなかった。ただ、唯一この物語のために作られた「偶然」は、あまりにも確率の低いもので、「作られた物語」という感覚は読んでいる最中に常に付きまとわれてしまった。
また、妄想癖と自殺願望を持つ「わたし」を主人公にした以上、そのような心理を持った原因などにも少し言及して欲しかった。
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