「テスカトリポカ」佐藤究

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第165回直木賞受賞、第34回山本周五郎賞受賞作品。メキシコから逃れたカルテルのリーダーや日本の医療界から追放された医師などが手を組んで新たな犯罪組織を作っていく。

子供の臓器を販売して利益を稼ぐ等犯罪組織を作っていく様子を描く。本書の特徴は、元麻薬カルテルを支配していた一家で、対立する麻薬カルテルへの復讐を誓うバルミロが、アステカの文化の影響の元に育ったことだろう。バルミロの過去が描かれる際、その祖母であるリベルタのアステカのしきたりへの傾倒が細かく描かれる。

少しずつ犯罪組織が構築される中で、多くのはみ出しものたちが登場し、また裏切りによる処刑などが行われる。

どの人物も麻薬や覚醒剤に溺れ、権力や復讐を欲するなどしており、残念ながら、誰一人として共感できる登場人物はいなかった。むしろ、アステカのしきたりや言葉が繰り返し登場し、またアステカが人間を生贄にする文化のように描かれており、どこまでが史実でどこまでが、噂の域を出ないものなのか、とアステカという国や文化に対する好奇心を植え付けられた。

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