「硝子のドレス」北川歩実

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
菅見英晴(すがみひではる)は突然行方をくらました恋人の実咲(みさき)を探して奔走する。一方、肥満に悩む千夏(ちなつ)はやせるためにダイエットコンテストに参加する。
「金のゆりかご」の巧妙に計算された物語とその過程を裏切らないラストが良かったので、同じく北川歩実の作品ということで手にとってみた。
物語中では千夏(ちなつ)だけでなく多くの痩せたい女性たちが描かれている。その多くが、家族や親類からは「見た目が大事なんじゃない」と諭されながらもそれを受け入れることができずに、「痩せれば私の人生は変わるはず」という考えに縛られながら生きている。
自分の外見が嫌いだから、外出することを控え、それによって運動ができずに、ストレスを発散するには家の中で食べるだけ、という悪循環にはまっている。そして外見に関するコンプレックスはその性格にも現れ、時に被害妄想的な行動をも起こす。
本作品の中でそんな悲劇の一部を見ることができるだろう。
細かいどんでん返しの数々は、「金のゆりかご」と共通するものがあるが、ダイエットを扱った物語ということで、女性でもなく、痩せたいなどと思ったこともない僕にとってはやや共感できかねるシーンが多くなかなか物語に入っていくことができなかった。この辺はひょっとしたら女性の方が理解しやすいのかもしれない。ぜひ女性の感想を聞いてみたいものだ
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「金のゆりかご」北川歩実

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
GCS幼児教育センターのGC理論は、幼児期の教育が天才を作り出すというもの。過去の何人もの子供たちにその教育を受けさせてきた。野上雄貴(のがみゆうき)も過去、その教育を受けた一人。そんな彼が今回GCS幼児教育センターに社員として迎えられようとしている。どんな意図が働いているのか。
「胎教」も含めて、幼い頃の教育方法は多くの人の関心の向くところである。本作品では、幼い頃の環境の作り方が多くの知識や考え方を詰め込むのに適した、容量の大きい脳を形成するという考え方を、「CG理論」として挙げており、その教育によって成長した子どもたちと、その周辺の大人たちの様子を描いている。
多くの人が心の奥ではすでに理解している。必ずしも数学や教科ができて、
多くの知識を持っていることが必ずしも「幸せ」に繋がることではないと。だからこそ、本作品の登場人物たちは、その葛藤に苦しめられる。そんな倫理的な側面に加えて、もちろん本編のほうもしっかり楽しませてくれる。
何度も真実の裏に本当の真実が見えてくる。意表をつく展開の本など何度も読んで慣れていると自負している僕でも、「やってくれる」と思わせてくれる展開で、一方でそういう意表をつく展開の物語には、読者の予想を裏切ろうと努めるがあまり内容が希薄になるのだが、本作品はそんなことはなく満足できる一冊だった。
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