「日本のスポーツビジネスが世界に通用しない本当の理由」葦原一正

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スポーツビジネスコンサルタントの著者が日本のスポーツビジネスを成功させるための考えを語る。

サッカーなどのスポーツを眼にする機会が多い中で、スポーツという、人間の生存に必要不可欠とはいえない分野をビジネスにするのは想像以上に難しいだろう。そこにビジネスを軌道に乗せるヒントがあるのではないかと思って手に取った。

本書ではスポーツビジネスに必要なものを次の5つに分けて解説している。

  • Governance
  • Professional
  • Arena
  • Global
  • Engagement

である。

興味深いのはGovernanceの章である。Governanceとはつまり意思決定のプロセスのことで、それを明確にすることが重要性を説いている。そして、スポーツなだけに強いチームを作ることに捉われがちだが、著者は「勝利と経営は別物」と語る。

動員数は大事な要素の1つではあるが、それがすべてではなく、もっと大事なものが存在する。

次のProfessionalの章ではプロの定義や著者が出会ってきたプロとしてのお手本のような振る舞いを挙げている。プロリーグの定義という基本的なことすら自分がわかってないことに気づかされた。

Arenaの章ではチームの専用のアリーナやスタジアムを保有することのメリットを語っている。スタジアムもそのスポーツ専用のスタジアムと、維持費の回収を考えて、他の用途にも使えるようにしたスタジアムでは、ビジネスとしてスポーツを展開する上ではいろいろ異なることがあることがわかった。スタジアムやアリーナの構造や席の配置も、何を目的に応じて考え抜かれたデザインであることを感じた。

全体的に著者はバスケットボールリーグに大きく関わってきたが、Jリーグやプロ野球など、より認知されている例を交えて解説している点がありがたい。その過程で、必ずしもJリーグのように昇降格がある開放型モデルが必ずしも良いとはいえないことも知った。開放型は年俸の高騰化を招き経営に負担を与える。つまりプロ野球のような閉鎖型モデルにもリーグ運営目線で考えるとメリットがあるのである。

普段、なにげなく見ているスポーツの裏に、多くの知らない事情が溢れていることに気づかされた。そんななか特に印象的だったのは、Jリーグの創設だけでなくBリーグにも関わった川淵三郎の言葉である。

リーダーは時に独裁者でいい。自らが率いる組織を正しく発展させるための理念を持ち、そのための手段が私利私欲によるものでなければ、独裁的に権限を発動させてもいい。

これは僕自身、スポーツに限らず、組織などを見て感じる悩みに見事に答えている。合意ばかりを重視してスピードが遅くなったり当たり障りのない決断しかできない組織は決して大きなことを成し遂げることはできない。独裁的な権限を与えることも考えてみるべきだろう。

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「ブランディングデザインの教科書」西澤明洋

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ブランディングデザイナーの著者がブランディングデザインについて語る。

最近BXデザイナーという言葉が広がりを見せている。BXとはブランドエクスペリエンスのことで、つまりブランド体験をデザインする事である。これまでデザイナーが包括してきた領域が、より専門性を持って捉えられるようになったのである。これは世の中がその分野により高いレベルを求めるようになった証拠でもある。僕自身もデザイナーとしてこの分野の知識や経験を積み上げる一つの流れとして本書にたどり着いた。

多くのブランディング関連の書籍や授業と同じように、本書もブランディングとは何か、という説明から入っている。本書では

ブランディング=差異化

としている。正直これは、僕の思うブランディングの本質の捉え方とは若干異なっていたのだが、その次のマーケティングと比較して説明した表現のほうがしっくりきた。それは、

マーケティング ≒ 売るゲーム
ブランディング ≒ 伝言ゲーム

というものである。これこそまさにブランディングの重要な側面を表していると言える。人の心にどのような印象を刷り込むか、そしてそれによってどうやって人の間を浸透させるか、その部分をデザインすることこそブランディングなのだろう。

また、本書ではブランディングに必要なものとして次の3つを挙げている点である。

トップの熱い思い
良いモノ(サービス)
コミュニケーションチーム

特に一つ目は常々感じる事で、どれほど必要性を訴えても、トップの熱い思いがなければブランディングは進まないのである。

また本書では、ブランディングデザインを3つの階層で実施することの重要性を説いている。

マネジメントのデザイン
コミュニケーションのデザイン
コンテンツのデザイン

コミュニケーションとコンテンツの重要性は誰でも思いつくが、マネジメントも含めて考えている点が新鮮である。つまり、ブランディングの成功には、販路変更やビジネス戦略の刷新なども含めて考える必要があるのだ。

また、後半ではフォーカスRPCDという独自の手法で、実際にブランディングデザインの進め方を語っている。Resarch, Plan, Check, Doであり広義のデザインを日常的に行なっている人にとっては、新鮮な内容ではないかもしれないが、改めて、ブランディングデザインの流れを整理するよい機会となるだろう。

全体的には、僕自身が思うブランディングの考えと若干異なるところはあれど、良いところや伝えやすい表現などはぜひ使わせてもらおうと思った。

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「Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?」原田曜平

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Z世代について解説する。

Z世代とは年齢でいうと現在(本書の出版は2020年)25歳より下の世代のことである。混同しやすいのがゆとり世代であるが、ゆとり世代はガラケー第一世代、つまり思春期に携帯電話を持ち始めた最初の世代である。一方Z世代は、スマホ第一世代である。

mixiなどのSNSに振り回されたゆとり世代は「mixi八分」「KY」などの言葉からも想像できるように、出る杭にならないように同調圧力を強く感じているのだそうだ。一方で、LINEやインスタグラム、ブロック機能など、より洗練されたSNS時代に育ったZ世代は、限られた人とだけ繋がって、そのなかで自分をアピールする、同調思考、発信意識が強いという。

インスタグラムのストーリーズなどのように一定時間で消えてしまうものが普及したのはゆとり世代からZ世代に移るに当たって当然の流れと言えるだろう。また、ゆとり世代の少子化からさらに少子化が進んでいるので、大事に育てられ、その結果自意識が強く、いじりが通用しない傾向があるというから上の世代は気をつけなければいけない。

上の世代の僕らから見て、結局どうい風に接すればいいのか、どのようなサービスや商品を提供すればZ世代に受けるのか、というところが気になるところだろうが、その他の傾向として印象的だったのはは、ジェンダーレス意識の高さ、やらせに敏感という2点だろう。

LGBTQへの意識や美しい男性グループなどを見ながら育ったためにジェンダーレスの考え方が進んでいるのだ。「男はこうあるべき」「女はこうあるべき」などという発言をしてしまえば一気に信頼を失うかもしれない。

またSNS時代に育ったためにやらせに非常に敏感で、美しすぎる写真や構図はやらせと認識し、むしろどこかにミスや崩れがあったほうが真実として認識する傾向があるという。

Z世代だけでなくゆとり世代についても把握するよい機会となった。さっそく下の世代に接するときの行動を見直したいと思った。

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「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」坪田信貴

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

学年ビリのさやかが慶應大学に合格するまでを描く。

ビリギャルとして映画にもなった有名な本書だが、あれだけ有名になるにはそれなりに学ぶものがあるのだろうと思い手に取った

物語は偏差値30以下、学年ビリだったさやかが、塾にやってきて塾講師の著者と出会ったことから始まる。塾講師である著者が、さやかと真摯に向き合った結果、さやかは学びの面白さに気づき慶應大学を目指し始めるのである。そして、以降はさやかの成績が少しずつ上がっていく様子を描いていく。その過程で学びのテクニックや、暖かい友達や家族なども紹介している

印象的だったのは塾の先生という存在である。僕自身は学習塾というものを利用したことがなく、どちらかというと問題数をこなす習慣をつけるためのものだと思っていた。しかし、子供と向き合って、そのやる気を引き出す優れた先生もいるのだと知った。

全体的には、周囲の人間の暖かさが際立つ物語である。先生の受験に対する技術や、教えることに向き合う真摯な姿勢はもちろんだが、もっとも印象的だったのは母親の子供を信じる姿勢である。子供を信じて向き合うことがどれほど大切か、改めて感じさせられた。

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「社長失格 ぼくの会社がつぶれた理由」板倉雄一郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ふと思いついたアイデアから立ち上げた会社が、やがて資金難から倒産するまでを語る。

僕自身スタートアップに社員として務めており、資金調達など企業の拡大するにあたっての難しさが少しずつわかってくるなかで、その辺りをもっと知りたいと思い本書にたどり着いた。本書の舞台は、1990年代とかなり前の話で、文化や法律もいろいろ異なるだろうが、それでも学べることをはあるだろう。

本書の面白いところは、倒産したあとの書いている点である。多くの成功物語や起業物語とは異なり、著者は本書を書きながら、やり方や考え方にどこか倒産の原因があったのだろう、という前提で書いているという点である。企業の成功物語が創業者のやっているユニークな行動全てが成功の原因と見えてくるのと同じように、失敗物語は行動全てが失敗の原因のように見えてくるから面白い。

序盤は、自らのアイデアから周囲の賞賛を受け、一気に多くの融資を集めて大きな動きとなっていくハイパーネットの様子が描かれるが、中盤以降で少しずつ風向きが変わっていく。

多くの銀行が融資してくれるから安心というわけではなく、銀行は他の銀行と同じ行動をするので、一つの銀行が手を引けば、他の銀行も一斉に手を引き始めるのである。そして、ハイパーネットが資金調達に苦しむなかで、少しずつ鍵となる社員の離反が起こってくる。お金の問題だけだったにも関わらず、制作、社員のモチベーション管理など、さまざまな問題が浮かび上がっていく。

こうやって起業家目線で見てみると、お金が集まった企業には多くの企業がハイエナのように集まってきて、多くの企業が少しでも有利な契約をしようとしてくるのがわかる。にもかかわらずそれに対応する起業家の方はそのような状況に対応するのは初めてだったりするのである。

最終的に、本書で著者自身の分析でも語られているように、倒産した理由は一つではないだろう。例えば、銀行間にできあがったベンチャーへの投資熱の加熱と、引き締めに向かうタイミングに悪く重なってしまった、融資先選びに失敗した、社員のモチベーションの維持を怠った、などであり、改めて起業というのは難しいのだと思い知った。

世の中には成功物語の本はたくさんあるが、失敗物語の本はほとんどなく、しかし実際には人間は失敗からの方が学ぶものが多い。起業というのは安易に失敗できるものでもないだけに、起業を考えている人には必読の一冊と言えるだろう。

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「史上最強の人生戦略マニュアル」フィリップ・マグロー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人生を好転させる方法を体系的に説明している。

序盤で本書が多くのページを割いて説明しているのは次の3点である。

  • 不平や愚痴で時間を無駄に費やさない
  • 行動を変えれば人生は変わる
  • 自分の求めるものがわからなければ、求める人生にはたどり着けない

こうやって書き連ねてみれば当たり前のことばかりなのだが、確かに世の中にはこれができてない人がなんと多いことか、逆にできている人にとっては、行動を起こさない人が不思議で仕方がないだろう。

あなたが手に入れるのは、最高でも自分が求めるものなのである。

最後の章では、より詳細に自分の求めるものを見極め、行動を起こす方法を説明している。普段、現状に愚痴や不平ばかり言って何もしない人でも、本書のとおり行動すれば間違いなく人生は好転するだろう。(ただ、そういう人はおそらく行動しない…)

僕自身は行動をさっさと起こすほうだと認識しているが、それでも改めて自分の現状を振り返る機会となった。不便だと思いながらも受け入れているものがないだろうか、実はもっと改善したいと無意識に感じているものはないだろうか、そんなことを改めて考えてみたい。

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「人生がときめく片付けの魔法」近藤麻理恵

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
一度習えば、二度と散らからないという整理収納法について語る。

こんまりとして日本だけでなく海外でも有名な著者であるが、その著書に触れたことがなかったのでこれを機に読んでみようと思った。

端的に言えば本書を通じて著者が言っているのは

ときめかないものは捨てる

である。僕自身比較的ものはさっさと捨てるほうではあるが、それでも捨てるのが難しいと感じるのは、人からもらったものである。特にその人の手書きのメッセージなど書いてあると、どんなに小さな紙切れだろうと捨てるのが難しい。しかし、それについても本書のこんなアドバイスが効きそうである。

プレゼントはそのものより、気持ちを届けるモノです。
だから、「受け取った瞬間のときめきをくれて、ありがとう」といって捨ててあげればよいのです。

また、僕自身は服をたたむことは無駄な時間だと考える人間だが、本書では感謝の言葉をかけながらたたんで重ねるのではなくたてることを推奨している。正直、感謝の言葉をかけることの意味はよくわからないが、服をたてることの意味はわかったので、さっそく実践していこうと思った。

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「自分探しと楽しさについて」森博嗣

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
作家であり工学博士である著者が自分探しについて思うところを語る。

著者森博嗣は「すべてがFになる」や「スカイ・クロラ」など、むしろ理系作家としての印象が強かったのだが、そんな人がどんなことを書いているのだろうと気になって本書を読むに至った。

著者自身数時間で本書を書き上げた、と言っているように、特に計画もなく独り言を書き連ねたような印象である。

印象的だったのは、抽象化の重要性を説いている点である。人生を楽しめない人は、誰かがあるものを楽しんでいるのを見るとそれとまったく同じことをしようとする。その結果、その対象は競争率が上がり、他人を蹴落とさないと手に入れることのできないものになる。一方で抽象化が得意な人は、何かが楽しかった時に、どの要素を自分が楽しんでいるのかを見極めて、その要素を備えていて自分にアクセスがしやすいもので楽しみを感じることができるというのである。

内容が濃いとは言えないが、もし人生が退屈で悩んでいるなら読んでみるといいかもしれない。僕自身はむしろ合間合間で触れる著者自身の趣味が楽しそうだなと思った。

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「なぜ日本からGAFAは生まれないのか」山根節、牟田陽子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
GAFAつまりGoogle, Facebook, Apple, Amazonを日本の企業と比較し、その違いを分析している。

海外にはYコンビネーターを代表とする、スタートアップに積極的に投資する仕組みがある。もし日本にもそのような仕組みを作ったら、メルカリのような企業がたくさん日本からも生まれるようになるのだろうか。実際には文化の違いなど、別の問題もあると感じており、他の人はどのように考えているのか知りたくなって本書にたどり着いた。

本書ではGoogle, Facebook, Apple, Amazonの現状やその発展の中のターニングポイントを説明した上で、日本の類似企業、Appleはソニーと、GoogleをNTTドコモと、Facebookを任天堂と、Amazonを楽天と比較している。

GAFAのいずれの企業についても過去何冊か本を読んだことがあったので、どの物語もまったく新しく知ったというわけではなかったが、改めて各企業を見直す機会となった。驚いたのはマークザッカーバーグの考え方である。映画ソーシャルネットワークによってどちらかというといたずら好きな男性というイメージが強かったのだが、本書を読んでそのイメージが少し変わった。Facebookという大企業の中で世界の動きや抵抗や世論と向き合いながらも、悩みながら成長している様子が伝わってくる。

19歳でフェイスブックを始め、社会人経験もなかった自分にとって、会社を経営する中で起こってきた色々な問題を全て咀嚼することは不可能でした。私にとってのこの15年間は、そういう問題1つ1つに対して、もっと責任を取れるように努力してきた歴史だと言えます。

毎回感じるのは創業者の持ち続けている強い信念である。GAFAの各企業はその成長の過程で、何度も莫大な金額で売却できる機会がありながらも、走業社たちは、自らの手で、その信念に則って成長させることを選んだのである。日本で同じようなことがあったら、その創業者はそのお金に目がくらまずに、自ら苦難の道を選ぶことができるだろうか。そう考えると日本とアメリカの違いはシステムだけでなく、信念の違いなのかもしれないと感じた。

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「1分で話せ」伊藤洋一

1分で話せ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
短くシンプルに伝える方法を語る。

人は人の80%の話を聞いていないとして、意思を伝え、人を動かすために1分で話すことの重要性を説いている。そんななか話が伝わらなくなる4つのパターンが印象的である。

「プロセス」を話す
気を遣いすぎる
自分の意見とは違うことを言う
笑いを入れる

確かに僕自身の周囲でよく見るのは、「気を遣いすぎる」である。人を傷つけまいと一生懸命オブラートに包むから何を欲しいのだかわからなくなるのである。また、人を動かすのは「頭の中に生まれたイメージ」であり、そのために2つの手法があると言う。

ビジュアルなイメージを直接的に描いてもらう
聞き手をそこにあてはめていく、聞き手にそのイメージの中にはいっていってもらう

自分はどちらかというと直接的に物を言いすぎる傾向があって、よく「言い方が悪い」と言われる。しかし、むしろ人に思いをしっかり伝え、動かすためにはその方向で正しいと思えるようになった。ビジュアルのイメージを喚起する方法は心がけていきたいと思った。

伝え方でヒントになる箇所はあったが、全体としては内容の薄さを感じてしまった。後半に進むにしたがって前の章で語ったことの繰り返しで、最後の章はほとんど時間の無駄だった。

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「アファメーション」ルー・タイス

アファメーション

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人生を好転させる5つの法則を語る。

たびたび良書として名前が挙がってくるため、「アファメーション」という言葉から、おおよその内容の想像はできるのもかかわらず、自分の人生の密度をさらにあげるために本書を読むに至った。

本書は次の5つのステップを順番に語っている。

ステップ1 ビジョン、使命、価値観、動機、態度を明らかにする。
ステップ2 創造的な思考、ポジティブなセルフトークを取り入れる。
ステップ3 ターゲットを定義し、目標の刷り込みを行う。
ステップ4 行動を起こし、方向を正す。
ステップ5 人を育て、組織を改善する。

人生のすべては自分の選択であり、行きたい場所を明確にして、それを言葉にすることで実現に近づく、これは間違いない。また、この考えは、昨年読んだおすすめの本「自動的に夢がかなっていくブレインプログラミング」と非常に似ており、結局、豊かな理想の人生を達成するための誰もが認める方法ということだろう。

そういう意味では、考え方としてはすでに何度か触れたものだったので、大きな驚きはなかったが、表現の仕方、説明の仕方のなかに、いくつか新しいと思えるものがあり、この考え方の重要性を改めて再認識できた気がする。なかでも、自分のネガティブな考え方によって束縛され、不幸になっている人を端的に表した次の言葉が印象的だった。

見てごらん、鍵は君のポケットの中にあるよ。君はただ鍵を開けて、自由になればいいんだ。

後半は目標設定の必要性やそれに関わる逸話を多く書いており、また個人だけではなくグループへの適用などにも触れており、必要以上に長く感じた。個人的に人生を好転させたくて本書を読もうと考えているなら、上にも書いたように「自動的に夢がかなっていくブレインプログラミング」の方が端的でわかりやすく、また楽しく読めるだろう。

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「解きたくなる数学」佐藤雅彦/大島遼/廣瀬隼也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
いくつかの数学の問題を写真とともに提示し、解説していく。

数学の問題を興味深い写真とともに解説している。それぞれが特別難しい問題ということはないが、普通の数学の問題を解くのと、実際の場面を見せられて数学を応用して答えを導き出さなければならないのとでは、少し考え方が異なると感じた。「数学的帰納法」など久しぶりに触れる考え方もあれば、「鳩の巣原理」など、新しい発見もあった。

面白いのは著者が末尾でも語っているように、同じ問題でも写真とともに示すと興味深く見えるということである。興味をそそる見せ方をするという考え方は他のことにも応用できそうだと思った。

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「白い巨塔」山崎豊子

白い巨塔

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
国立大学医学部助教授の財前五郎(ざいぜんごろう)が、医者としてのキャリアを築いていく様子を描く。

前半は大学内の教授選、後半は財前五郎(ざいぜんごろう)が巻き込まれた医療訴訟を中心に展開する。

自身が教授に選ばれるため、またその周囲の人間は財前(ざいぜん)を教授にするために、それぞれが様々な人脈を駆使して票を集める様子は、醜くもあるが、学ぶところもあると感じた。どんな人でも、お金や地位や家族の豊かな人生を約束されれば小さな信念など簡単に譲ってしまうのだ。

後半の医療訴訟では、一人の医師が証言している言葉が印象的だった。医師に厳しすぎる判決は、逆に医療の発展を損ねる結果となり、どこまでを誤診と定義するかは、医療の発展に影響する判決なだけに、常に難しさがあると感じた。

全体的に、貧しい家庭に生まれた財前(ざいぜん)が、助教授から教授へと少しずつ医者としての地位を登っていく過程で忙しさも増す中で、傲慢になっていくところが痛々しい。その一方で、自らの信念を全うしたことで医者としての立場を追われた里見(さとみ)教授や、立場に関係なく事実しか証言しない大河内(おおかわうち)教授など、尊敬できる生き方にも触れることができた。

本書の舞台となっているのは昭和30年代とかなり昔だが、技術的にはもちろん、本書で描かれているような、医療の発展を阻みかねない封建制も改善されていると期待したい。

「白い巨塔」といえば過去豪華キャストでドラマ化されており、山崎豊子の最高傑作という印象を持っていたが、おうして実際に読んでみると、一人の傲慢な医者の周囲で起こった出来事に閉じており、「大地の子」「二つの祖国」「沈まぬ太陽」に比べると、登場人物の浮き沈みや、世界の大きな変化など、物語の壮大さはあまり感じなかった。

【楽天ブックス】「白い巨塔(一)」「白い巨塔(二)」「白い巨塔(三)」「白い巨塔(四)」「白い巨塔(五)」

「魍魎の匣」京極夏彦

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
高校生の加奈子(かなこ)が線路に飛び込んで自殺未遂を起こし、警察の木場(きば)は捜査に動き出すこととなる。目撃者の友人の頼子(よりこ)によると、犯人は黒い服の男だという。

木場は加奈子(かなこ)の母が、かつての憧れの女優であるとわかったことで真実を解明するために誰よりも熱が入る。一方、編集者の持ち込んだ占い師の調査によって、作家の関口(せきぐち)、その友人の京極堂、探偵の榎木津(えのきづ)が事件に関わっていくことになる。少女の自殺未遂事件、バラバラ殺人事件、不思議な占い師、など複数の事件が同時に起こる中で、箱と魍魎の影が見えてくる。

このシリーズは毎回そうだと思うが、京極堂の事件解決やそのために語る逸話やうんちくが面白い。なかでも本作品のタイトルにもなっている魍魎に対する説明や由来は興味深かった。正直とても理解できる範疇ではなかったが、伝説や民話など長く多くの地方をめぐって伝えられる物語は様々な変化をするのだと感じた。語り継がれるのには理由があり、「ただの昔話」と軽く扱っていいものではないのである。

本作で著者京極夏彦の作品に触れるのは「姑獲鳥の夏」に続いて2作品目だが、久しぶりに味わうその世界観は共通したものがあり、常に京極作品の根底には「世の中の常識を疑え」というようなメッセージを感じる。他の有名作品もまた読みたくなった。

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「点と線」松本清張

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
松本清張作品はこれまで読んだことがなかったが、本作「点と線」や「ゼロの焦点」など、タイトルだけは知っているほどの名作が多々あり、もはや知っておかなければならない常識なのかもしれない、と感じ今回読むことにした。

松本清張作品はこれまで読んだことがなかったが、本作「点と線」や「ゼロの焦点」など、タイトルだけは知っているほどの名作が多々あり、もはや知っておかなければならない常識なのかもしれない、と感じ今回読むことにした。

昭和33年初版ということで、携帯電話どころか普通の電話も普及していないようで、電報が出てくる点や、旅行に飛行機を使うことに対する認識の違いや、搭乗のシステムの違いなどから、残念ながら初版当時の時代感覚で楽しむことはできない。むしろ、本書を読んで考えるのは、なぜこの作品がここまで長く読まれる有名作品となったかということである。

改めて思うのは、作品を有名にするのに、「点と線」というタイトルが大きく貢献しているということである。本書の内容の濃さは、50年以上経った今としては評価できないが、「点と線」というタイトルが適切かと聞かれると疑問である。「〇〇殺人事件」というようなタイトルをつけることもできたなかで、多少の違和感を感じながらも「点と線」というタイトルをつけた点が50年経った今でも読まれる大きな要因と言えよう。

考えてみると確かに、「世界の中心で愛を叫ぶ」や「君の膵臓を食べたい」など、内容がありきたりでもタイトルの印象深さから有名になったであろう作品がこれまでにも多々あるなと思い至り、タイトルの重要性を改めて感じた。

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「八月の銀の雪」伊与原新

八月の銀の雪

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
5つの物語。

どれも人間関係の悩みと気づきの物語である。同時に、そのなかで内核、伝書鳩、珪藻、風船爆弾など普段の生活ではなかなか触れることのない世界を見せてくれる。

5つの物語のなかで印象的だったのは最初の「八月の銀の雪」と最後の「十万年の西風」である。「八月の銀の雪」は昨今増え続ける東南アジアからの留学生に対する世の中の視点を浮き彫りにするとともに、彼らが、日本に希望を持ってやってきて一生懸命生きているということを優しく伝えてくれる。そして、最後の「十万年の西風」では原発とそれに関わる人の苦悩を描きつつ、戦時中の日本の兵器、風船爆弾についても触れる。

どれも人間関係に関する苦悩を描いているが、つらいだけでなく気づきを得て前向きに進むことで清々しい読後感を与えてくれる。風船爆弾や珪藻については早速追加で巻末の参考文献等読んでみたいと思った。

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「最後の家族」村上龍

最後の家族

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
引きこもりの長男秀樹(ひでき)を抱える内山家を父、母、秀樹、妹4人の視点から語る。

55歳からのハローライフ」が思っていたよりもずっと深かったので、村上龍の代表作として本作品「最後の家族」にたどりついた。

母の昭子(あきこ)、父秀吉(ひでよし)、妹の知美(ともみ)、そして、秀樹(ひでき)のそれぞれの視点から家族の様子が描かれる。秀樹(ひでき)が引きこもりであることと、父秀吉(ひでよし)の考え方が、家族それぞれの人生に大きく影響を与えていることがわかる。

そんななか、それぞれが少しずつ会社や周囲の出来事の変化によって、変化していかなければならなくなる。その過程で人生がうまくいかない人にありがちな考え方が見えてくるのが面白い。

例えば妹の知美は、知り合いからの旅行の誘いを断るときに次のように感じる。

わたしは、これで自分で決定しなくても済むと思ってほっとしたんだ。自分で決めるというのは苦しいことなんだ。せっかく楽しみにしてたんだからもう一度考え直してよ。せっかく誘ったのにどうして断るんだよ。そう言うのを期待していた。

何一つ自分では決めたくない、周囲に流されれば自分の選択や行動に責任をとらずに、それが正当化される。そんな自分の決断に向き合うことのない人の生き方を教えてくれる。

また、母の昭子(あきこ)も、秀樹(ひでき)の引きこもりの問題と少しずつ向き合う中で変化しはじめる。

このわたしだって自分の考えを人に言うんだから、きっと他の人も言うだろう。言わないのは何か理由があるからだ。自然にそう思うようになったのかも知れない。自分の考えを人に言う。たったそれだけのことだが…それがどういうことなのか知らなかった。

そして秀樹(ひでき)も、隣人の家の女性に惹かれて少しずつ行動を起こし始める。そんなときに出会う考え方が印象的である。

救いたいという思いは、案外簡単に暴力につながります。それは、相手を、対等な人間としてみていないからです。…そういう欲求がですね、ぼくがいなければ生きていけないくせに、あいつのあの態度はなんだ、という風に変わるのは時間の問題なんですよ。

それぞれが特に珍しい生き方をしているわけでもない。それでも、ふとしたきっかけで内面的な、人生の転機を迎え、人間的に成長していくのを感じられる物語。「最後の家族」と呼ぶほど未来が暗いわけではなく、むしろ前向きになれる作品。僕自身あまりこのような受け身な生き方をしてこなかったが、受け身な人の心理が少し理解できるようになった気がする。

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「見えない誰かと」瀬尾まいこ

「見えない誰かと」瀬尾まいこ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
自身の教師の経験の中で出会ってきた人々を語る。

瀬尾まいこの本を読むのはこれが初めてではなく「そして、バトンは渡された」など、いくつか印象に残っている本があるが、本書「見えない誰かを」を読むまで中学校の教師であることを知らなかった。

興味深いのは、一見おかしな人、変な人に見える人々でも、時間の経過によってその人の異なる部分を知り、良い部分を見るようになっていく著者の視点だろう。女性ならではの共感力や、先生ならではの観察力を感じる。そして、その一方で、人の記憶に長く残る人というのは、どこか一癖ある人なのだと改めて感じる。

著者のその優しい視点からも、そして、著者が挙げている癖のある人々からもたくさん学ぶところを感じる。悪いところばかりに目がいってしまう僕自身は、人との接し方を少し改めないとならないと感じた。

周囲に合わせて個性を失っていると感じる人がいるなら、そんな人も本書を読んでみるといいのかもしれない。

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「完売画家」中島健太

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
「絵描きは食えない」という常識を覆した完売画家と呼ばれる著者のこれまでの活動や考え方を語る。

僕自身、制作物や技術を売る人間なので、著者の考え方が、技術の上達やブランディングに活かせないかと考え、本書にたどりついた。

読み始めて気づいたのだが、著者はもともと体育会系の人間なのだという。また、論理的に物を考える傾向があり、それによって、行動や思考が筋道立って説明されていてでわかりやすかった。むしろ、だからこそ、このように一般的な美大出身の人とは異なる道を歩み始めたのかもしれない。

本書で繰り触れていることとして、美大の講師は、美術でお金を稼げなかった人がなっている場合が多く、その結果、美大ではお金の稼ぎ方を学べないという悪循環が起こっているというものがある。著者はそんななか周囲から白い目でみられながらも、自らの絵を売る方法を確立し、その過程や考え方を説明している。ギャラリーや美術団体の種類や傾向の話は印象的で、また、オンラインで販売することの画家としてのデメリットの話も興味深かった。

絵を描く技術については次の言葉が心に残った。

多くの人は、線を描き始める場所は決めていますが、描き終える場所は決めていない。そのため、終わるところを意識するためでも、速くなります。

本書では、美術業界において実践していることを描いているが、早く良質の作品を仕上げることの重要性や、人の求める要素を見極めたり、競争相手のいない領域で勝負することなどは、他のどんな業界においても言えることである。改めて今僕自身が毎日やっていることに取り入れられないか考えたみたい。

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「恋文」連城三紀彦

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第91回直木賞受賞作品。中年の男女を描いた5つの家族の物語である。

ドラマ化された最初の物語「恋文」なかなかいい話だったと聞き、本書を読みたくなった。

発行がすでに30年以上前なので、時代の古さは感じるが、その深さは今読んでも遜色ない。いずれの物語も30代、40代の男女を主人公に据えており、すでに若い頃の華やかな生き方を通り過ぎ、人によっては家族を持ち、もはや人生は流れに任せて少しずつ年齢を重ねていくだけ。そんな風に思えるなかで訪れた人生の決断を、成熟した人間の悩みや葛藤とともに描いている。

表題作「恋文」は、夫が、病気で余命わずかな元恋人である郷子(きょうこ)と最期の時間を一緒に過ごすために家を出る話である。妻の江津子(えつこ)は、夫の想いや、郷子(きょうこ)の最期の望みを叶えてあげたいという思いをもちながらも、また同時に、年上女房として弱みを見せない自分や、夫に戻ってきてほしいという素直な気持ちの間で揺れ動くのである。

表題作「恋文」だけでなく、どれも甲乙つけがたい魅力的な作品。一般的にはおじさん、おばさんと呼ばれる人たちが、それぞれのかっこよさを感じさせるところがまた印象的である。ぜひ、もはや人生にはなんのドラマも起きないと諦めている30代、40代の人に読んでほしい。

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