「ひまわりの祝祭」藤原伊織

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自殺した妻と瓜二つの女性と出会った秋山(あきやま)は、その後、数人の男たちに監視されていることに気付く。それは亡くなった妻が残した謎に拘わることだった。
本作品はゴッホの作品を物語の鍵として扱っている。秋山(あきやま)やその亡くなった妻も美術に造詣が深く、おのおののエピソードには、ゴッホだけでなく、多くの画家の名前や、用語がちりばめられている点が、非常に面白く、その方向に興味のある人には物語の面白さをさらに深く味わえるのではないだろうか。
物語は藤原伊織の作品らしく、年配の少し浮世離れした男性を主人公として扱っていて、その生きかたがまたかっこよく、思春期を過ぎた僕らに「まだまだこれからだ」と思わせてくれるような力がある。
前回読んだ「シリウスの道」があまりにも傑作だったために、本作品は読む前にハードルが上がりすぎていた感があるが、悪くないできである。

人間を動かす要素は三つあるそうです。カネ、権力、それに加えて、美。つまり欲望の要素ですね。だけど、僕はその逆もあるんじゃないかと考えた。この時代、人はまだ誠実によって動かされることがあるかもしれない。
コルサコフ症候群
側頭葉のウェルニッケ野の機能障害によって発生する健忘症状である。(Wikipedia「コルサコフ症候群」
デ・クーニング
20世紀のオランダ出身の画家。主にアメリカで活動した。抽象表現主義の画家で、具象とも抽象ともつかない表現と激しい筆触が特色である。(Wikipedia「ウィレム・デ・クーニング」
アーシル・ゴーキー
20世紀のアルメニア出身のアメリカの画家。(Wikipedia「アーシル・ゴーキー」
国吉康雄
洋画家。岡山県岡山市中出石町(現・岡山市北区出石町一丁目)出身。 20世紀前半にアメリカを拠点に活躍、国際的名声を博した。(Wikipedia「国吉康雄」
アンドリュー・ワイエス
アメリカン・リアリズムの代表的画家であり、アメリカの国民的画家といえる。日本においてもたびたび展覧会で紹介され、人気が高い。(Wikipedia「アンドリュー・ワイエス」

【楽天ブックス】「ひまわりの祝祭」

「失われた町」三崎亜紀

オススメ度 ★☆☆☆☆ 1/5
数年に一度起きる「町の消滅」。そんな不思議な世界で人生を左右される人々を描く。
登場人物の名前や地名などから、途中まで日本を舞台にしたとした物語と思って読み進めていたのだが、途中からどこか別の惑星の話のようなファンタジーのような雰囲気さえも感じた。にもかかわらず最終的に結局どこだかわからない。空想の世界の話であれば最初から登場人物の名前をカタカナにしてくれればわかりやすいと感じた。
そもそもの「町が消滅する」という常識はずれな設定は、本作品の根底となるテーマらしいから目をつぶるとしてもそれ以外も展開も登場人物たちの判断もスピーディすぎて、台詞も行動もすべてが現実感に乏しく感情移入などできるはずもなく、きっと著者の中では素敵な物語が展開しているのだろうが、読んでいる側としては、登場人物たちが、物語の中で頑張れば頑張るほどその薄っぺらでありきたりな行動に冷めていってしまった。
人々の一生懸命生きるさまや、運命に翻弄される姿、出会いや別れの感動を伝えたいならなにも「町が消滅する」などという設定じゃなくても、戦争だったり、災害だったりと、いろいろ描き方はある気がする。最終的になぜ、「町が消滅する」という舞台設定にしたのかの著者の意図も見えてこない。たびたび語っていることだが、常識外れの舞台設定をした場合、その違和感を覆い隠すぐらいの感動や面白さを提供しなければただの駄作で終わってしまう。今回はその悪い例。
読むのがつらくてあと何ページあるんだろうとなんども残りのページ数を確認してしまった。著者が好き勝手に書いただけという印象。残念ながら本作品には昨今の読書離れの一端を見た気がする。いろいろ批判してしまったが唯一、文章の紡ぎ方は非常に綺麗だった。(だからこそ物語の失望が大きかった)。
とはいえ、広い世の中にはこういう物語が好き、という人もいるのかもしれない。
【楽天ブックス】「失われた町」

「TOKAGE 特殊遊撃捜査隊」今野敏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大手都市銀行の行員3名が誘拐された。警視庁捜査一課特殊犯係の上野(うえの)も捜査員として加わることになる。
誘拐事件を扱った物語と言ってしまえばなんともありきたりな印象を与えるかもしれないが、そこは今野敏らしく登場人物もそれぞれから事件を見つめる視点も個性的で魅力的な作品に仕上がっている。
そのタイトルの通り本作品はトカゲと呼ばれる警視庁捜査一課特殊犯捜査係の覆面捜査部のメンバーに焦点をあてているが、そのトカゲの中にも経験豊富な涼子(りょうこ)と、訓練は積んできたが誘拐事件にかかわるのは初めてという上野(うえの)という対照的な存在があり、その二人のやりとりが非常に面白く描かれている。
涼子(りょうこ)は女性でありながら誰もがその能力を認めており、今回の誘拐事件を通じて、初の実践となる上野(うえの)に多くを学ばせようとするのである。そんななか印象に残ったのは、今回の事件を通じて少しでも多くを学ぼうとする上野(うえの)が信頼できる上司である高部係長と同じトカゲの涼子の間で起こる阿吽の呼吸に対して嫉妬する箇所だろうか。

2人の間には他人が踏み込めない雰囲気がある。男女の関係ではない。優秀な捜査員同士の共感、あるいは連帯感だ。

本作品はそんなトカゲの2名だけでなく、前線本部や捜査本部でもそれぞれそこにいる人々の思惑が交錯し目に見えない駆け引きが繰り広げられる点が面白い。例えば前線本部、つまり本作品の誘拐事件では身代金を要求された銀行であるが、そこに詰める交渉のスペシャリストのたがみを含む警察職員と、事件は解決して欲しいが表には出せない多くの事情を抱える銀行の幹部社員たちのやりとり、そしてもちろん犯人とのやりとりも魅力である。
また、銀行を相手取った誘拐事件ということで、銀行が過去に行ってきた貸し渋りなどによって犠牲となった中小企業や、公的資金など世の中のあり方について考えさせられるような内容にも触れている。
久しぶりに今野敏作品を読むとやはりその読書を続けるのをさえぎられたくないというような物語の吸引力を感じる。
【楽天ブックス】「TOKAGE 特殊遊撃捜査隊」

「ラスト・セメタリー」吉来駿作

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
18年前に死んだはずの友人葛西(かさい)が帰ってきた。葛西は次々と仲間を殺している。深町(ふかまち)、ハルなど昔の仲間たちが再び集まり始める。
物語は高校の仲間たちと、そのうちの一人の家の裏に広がっていた、死者を復活させるという森「死にながらの森」を舞台として進む。その視点は18年前と現代を行き来しながら、生き返った仲間、葛西(かさい)が迫ってくる様子と、18年前に葛西(かさい)が死に、彼を生き返らせるために行う儀式の核心へと徐々に迫っていく。
興味深いのは本作品の中で、「人を、その人たらしめているのはその人の記憶である」という考え方だろうか。外見が変わっても声が変わっても、その人がその人の記憶を持っていればきっとその人がその人だと、多少時間がかかったとしても周りが気付くことができる、というのである。
後半に18年前に仲間たちと行った儀式が描かれたのち、物語の視点は再び現代に戻って、その後、多くの仲間たちが悩まされた不幸が描かれていく。
登場人物たちのまわりで起こる不思議な現象が少しずつその世界観によって納得する形で説明されるにもかかわらず、心にとどまり続ける不思議な感覚、このユニークな世界観は昨今の書店にあふれた本に飽きた人には何か新しい衝撃を与えるかもしれない。
【楽天ブックス】「ラスト・セメタリー」

「パンデミックアイ 呪眼連鎖」桂修司

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
弁護士の伊崎(いざき)は北海道の刑務所の保護房に入った直後に不審な死をとげた2名の事件を調べるため、同じように保護房に入るが、その日から悪夢に悩まされるようになる。同じように悪夢に悩まされ始めた刑務所職員たちとその解決に奔走する。
怨念を扱った作品ということで、怨念の名作「リング」とついつい比較してしまうが、本作品が、「リング」と異なるのは、不思議な悪夢に悩まされる伊崎(いさき)がその謎を解こうとする現代を舞台とした物語と、その悪夢の中に登場する、泰造(たいぞう)と、同じ名を持つ男の明治時代の物語が交互に進むことだ。
それによって読者は、現代と過去の2つの方向から、その悪夢の原因となった出来事へ少しずつ迫っていくような感覚を抱くことができるだろう。弁護士である伊崎(いさき)たちの現代の物語からはただの怨念の謎解きだけでなく、犯罪者たちの近くで生きている刑務所職員との会話などから、犯罪者という人間に対する興味深い考えに触れることができる。

できる子の側から見れば、どうしてできないのかも分からない、そんな子供たちがいたでしょう?それと同じように、どうしても善悪が分からない人間がいるのです。

そして明治時代を舞台とした泰造(たいぞう)の物語からも、発展途上の日本であったがゆえに未完成のシステムの中で犠牲になった多くの人々のその悲劇にも目を向けさせてくれる。「あの時代に北海道で一体何があったのだろう。」と、歴史の教科書に書かれていないことに多くの読者が興味を持つのではないだろうか。
数十年前に起こっていた日本の悲劇は、アフリカや東南アジアなど、現在でも多くの発展途上国で起こっている悲劇と共通する部分があるに違いない。ただ単に読者を怖がらせるだけでなく、歴史的な出来事に目を向けさせる広がりを持った作品である。
【楽天ブックス】「パンデミック・アイ呪眼連鎖(上)」「パンデミック・アイ呪眼連鎖(下)」

「千里眼キネシクス・アイ」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ゲリラ豪雨に襲われている能登半島で岬美由紀(みさきみゆき)はノン=クオリアのステルス機に出会う。ゲリラ豪雨はノン=クオリアが意図して起こした災害だった。
今回は「シンガポールフライヤー」で登場した人の感情の存在を否定しする集団ノン・クオリアの陰謀を阻むことが主な目的となる。
序盤は美由紀(みゆき)の小学生時代のエピソードが描かれており、小学生でありながら日経を読むことを習慣にしていたりその異質な存在感も面白いが、美由紀(みゆき)をライバル視するクラスメイトの黒岩裕子(くろいわゆうこ)のエピソードにも楽しませてもらった。
また家族思いの美由紀(みゆき)の父親が、まだ幼くいながらも現在と同じように暴走しがちな美由紀(みゆき)の行いを優しく諭すシーンが温かい。

こんなことを言ってはどうかとも思うけど、人間少しはみ出してもいいと、お父さんは考えてる。それが絶対に正しいことだと自分が感じるのなら

上巻の中盤以降は舞台を現代に戻して話は進む。例によって時事ネタを取り入れた物語展開は期待を裏切らないが、かといって、世の中の問題点などを浮き彫りにするような内容の深さがあったかというと、今回はその点ではやや物足りなさを覚えた。
僕の記憶ではノン・クオリアは「シンガポール・フライヤー」から本作品までの間には登場していないように感じているし、松岡圭祐のサイトを見てもその認識で間違いないようだが、内容からは別のエピソードがその間起こっているような表現が見られた。小学館から発刊されていた初代千里眼シリーズと、角川から発刊されている千里眼シリーズで、多くの過去の作品が「完全版」の名を持って書き直されることによって若干の混乱を感じている。

カクテル・パーティ効果
たくさんの人が雑談している、カクテルパーティーのような雑踏のなかでも、自己に興味のあるヒトの会話、自分の名前などは、自然と聞き取ることができる。(Wikipedia「カクテルパーティー効果」

【楽天ブックス】「千里眼キネシクス・アイ(上)」「千里眼キネシクス・アイ(下)」

「転落」永島恵美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ホームレスとして生きていた「ボク」はある日、小学生の女の子と出会う。彼女が持ってきてくれる食べ物と引き換えに、彼女の言うことを聞くことになった。
ホームレスである「ボク」目線で物語は進む。生まれ育った街から遠く離れた場所でホームレスになった「ボク」は小学生の女の子から食べ物をもらいながら生活し、あるとき一人の年配の女性と遭遇する。その人は顔見知りであり過去つらい体験を共有した女性であった。
中盤以降は、その女性目線で物語は展開し、少しずつその女性と「ボク」の関係が明らかになっていく。「ボク」もその女性も、慣れ親しんだ街や友人たちと決別して遠く離れた都会でひっそりと生きることを選んだ。彼らの体験からは、僕ら男性が普段無関心だったり「大した問題ではない」と軽んじている、女性ならではのいさかい、子育て、人づきあいなどの、人の心に深い傷を刻みかねない深刻さが見えてくる。

何もかも話せる相手がいるというのは恐ろしいことだ。言葉にした瞬間、曖昧にしておきたかった事実がはっきりとした輪郭を表す。気づかずにいたほうがいいことまで、気づかされてしまう。

【楽天ブックス】「転落」

「千里眼 ブラッドタイプ 完全版」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世の中は血液型診断ブーム。さらにドラマの影響で白血病は不治の病という考えが広まる。そんな中で、岬美由紀(みさきみゆき)の同僚の嵯峨敏也(さがとしや)は白血病を再発する。
本作品はそのタイトルからもわかるように「血液型」を大きく扱っている。血液型ブームは、日本を含む世界的に見ればわずかな国にのみ根付いている文化である。日本でその文化が根付いているのは、各血液型があるていど存在するという説や国民性という説など諸説あるが、日本では多くの人が、「血液型診断は信憑性がないもの」と知りながらも人と出会ったときに血液型をたずねるのを自然なコミュニケーションとして受け入れているのだ。
本作品は、日本の血液型診断に対する意識をさらに誇張したような世界で展開される。たとえば、学校では特定の血液型に対するイジメが起こり、病院では患者が、特定の血液型の輸血を拒むことで、命の危険にまでさらされているのだ。そんな誤解を、世の中に根付いて危険の思想と位置づけ、それを解決するために、美由紀、嵯峨、一之瀬絵里かが奔走する。
そして、血液型だけでなく白血病に対しても世の中の人々は偏見を抱く。その大きな原因としてテレビドラマが挙げられている。視聴者の涙を誘うために、悲劇の主人公を描いた悲しいドラマをつくり、それがヒットすれば他の局も似たような悲劇のドラマを作る。時に過剰なまでに病気のつらい部分を強調することで、主人公の置かれた悲しい状況を視聴者に伝えて涙を誘うのだが、その繰り返しによって、視聴者は少しずつ病気に対して間違った先入観を刷り込まれていく。この辺の描き方は、明らかに一昔前の「世界の中心で…」を連想させる。
世の中に溢れかえる情報に対して常に疑ってかかる、中立でいることの大切さを改めて意識させてもらった。相変わらず突飛な展開にはやや辟易する人もいるかもしれないが、個人的にはいつもどおり楽しむことができた。
【楽天ブックス】「千里眼 ブラッドタイプ」

「借金取りの王子」垣根涼介

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
企業のリストラを代行する会社で面接官として働く真介(しんすけ)の目を通じて、多くの人の人生を描く。
待ちに待った文庫化である。本作品は「君たちに明日はない」の続編である。前作も、主人公である真介(しんすけ)が、面接でリストラ対象者を絞ったり、早期退職を勧めて人員削減の手伝いをする中で、多くの人の人生が見える点が非常に面白かったのである。
続編である本作品もまったく期待を裏切らない出来である。妙に心にしみる言葉がたくさんあった。

今までにいろんな会社の社員に接してきたが、出来る人間ほど、会社を自ら辞めてこうとする。そして出来ない人間ほどクビを嫌がり、組織にしがみ付こうとする。

そして、本作品を読み進めていて思ったのは退職を決意する人間のその理由の多様性である。
「人間関係が上手くいかない」、「給料が安い」、「楽しい仕事がしたい」…。よく聞く退職の理由はこの程度であるが、実際には人間の気持ちは決してそんな単純なものではない。
「お金がすべてじゃない」って言葉を「現実を知らない理想主義者」と、馬鹿にする人もいるのかもしれないけど、人とは違う価値観を胸に抱きながら、その基準を基に自分自身にしか判らない人生の幸せを見つけようとしている人もたくさんいるのじゃないだろうか。
本作品は大きく5つの章に分かれているが、中でも表題の「借金取りの王子」の章はよかった。「こんな風に誰かを想ってみたい」って久しぶりに思った。

たぶん、自由ってこういうことだ。
自分の将来をあれこれ考えられることだ。

本当に、人生を考えさせてくれる。今も一生懸命生きているつもりだけど、「もっともっと一生懸命生きよう」って思わせてくれる作品である。
【楽天ブックス】「借金取りの王子 」

「熱砂」高嶋哲夫

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
かつては報道カメラマンだった柴田雄司(しばたゆうじ)はアフガニスタンで拘束された学生時代の恋人とその娘の救出に向かう。
本作品の魅力は同時多発テロの後に世界から多くの関心を向けられることとなったアフガニスタンに焦点を当てていてている点だろう。柴田(しばた)はかつての恋人、優子(ゆうこ)を救うため、アメリカから懸賞金をかけられているアフガニスタンの英雄、ヘーゲルに会いに行く。
その道程で柴田(しばた)が出会う数々の試練の数々に、僕らが新聞などの報道を通じては知ることのないアフガニスタンの現実が見えてくる。ただ単に一人の人間に会うためだけに、大量の武器を購入し、地雷を避けることに神経を擦り減らし、ゲリラの襲撃を恐れながら進まなければならないのだ。僕ら日本人のうち、いったいどれほどの人がこの国の現実を知っているのだろうか。
そして、単に現在の悲惨な現実を訴えるだけでなく、この悲惨な状況が、アメリカ、ソ連などの大国のエゴによって引き起こされたということを訴えてくる。
ほとんど単一の民族が絶対多数として生活するがゆえに長く平和が維持されている日本。僕らはその平和をもはや当たり前のこととして受け止めている。その一方で、アフガニスタンは、地理的にアジアの中央であり多くの民族が集まる場所。多くの民族が集まればそこには多くの考え方の違いが存在する。そこにさらに大量の武器やお金を提供して諸外国が介入してくるのである。場所が違うだけでこんなにも平和を維持することが難しくなるのである。
生まれる場所を選ぶことのできないがゆえに、あの地に生まれ恐れおののきながら生きている人々に、僕らは安全な場所から同情することしかできないのだろうか。
柴田(しばた)に対してヘーゲルが語った言葉。これを聞くと今も細かい差別や偏見が残っているとはいえ、日本という国に生まれた幸せを感じずにはいられない。

私には夢がある。それは、いつの日か私の子供たちが、彼らの肌の色によってではなく、人格の深さによって評価される国に住めるようになることである

目を逸らせてはいけない現実問題を取り入れながら、それでいて物語として読者を飽きさせない展開を交えてフィクションとして完成された作品である。新聞やテレビの報道からは知ることのできないなにかを感じることができるのではないだろうか。

北部同盟
1996年9月のターリバーンのカブール制圧ののち、反ターリバーン政権として北部アフガニスタンを統治した勢力。アフガニスタンの45%を占める民族であるパシュトゥーン人主体のターリバーンに対して、タジク人・ハザラ人・ウズベク人などの諸民族の連合という側面もあった。(Wikipedia「北部同盟」
ムジャーヒディーン
一般的には、イスラム教の大義にのっとったジハードに参加する戦士たちのことを指す。最近はイスラム過激派の民兵を指すことが多い。(Wikipedia「ムジャーヒディーン」
エシュロン
アメリカ合衆国を中心に構築された軍事目的の通信傍受( シギント)システムの俗称であり、アメリカ国家安全保障局(NSA)主体での運営とされる[1]。ただしエシュロンの存在が公式に認められたことはない。(Wikipedia「エシュロン」
アフリカトリパノソーマ
ツェツェバエが媒介する寄生性原虫トリパノソーマによって引き起こされる人獣共通感染症である。病状が進行すると睡眠周期が乱れ朦朧とした状態になり、さらには昏睡して死に至る疾患であり、これが名前の由来となっている。(Wikipedia「アフリカ睡眠病」

【楽天ブックス】「熱砂」

「日本人の英語力」マーシャ・クラッカワー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
近年、インターネットの普及によって生の英語に触れられる機会が増えてきて、それは、英語を学習する人にとっては決して悪い環境ではないのだが、多くの人がアメリカ人を含むネイティブスピーカーのしゃべり方を疑いも持たずに真似してしまうことを懸念しているのである。
日本の若者たちが使う「…みたいな」「…な感じ」のように、アメリカでも「kind of」「sort of」「like」などのあいまい表現が浸透してきていて、実際に多くのアメリカ人がそのような話し方をするのだが、それを「正しい英語」と信じている日本人の英語学習者が多く見られるのだとか。英語のあいまい表現は日本語のあいまい表現と同じように、決して知的には聞こえず、どちらかというとはっきりとした信念や考えを持っていない、自分の考えに自信を持たないように聞こえ、ビジネスの場だけでなくプライベートな場でさえも高く評価されないだろう、というのだ。
また、「let me know」「I mean」「you know」などのような、隙間を埋める言葉を多用するのもそのような人の悪い傾向だという。考える必要があるならば、その旨を相手に伝えてしっかり時間をおいてから意見を言うべきだと。
僕たちは日本人なのだから、日本人の美学があり、ぼくらが話すべき英語のスタイルがあるはず。英語を話すからと言って、美学や文化までアメリカになる必要はないということだ。
考えてみれば僕自身も、たとえ日本語でも決して多くを語る方ではなく、「しっかりと考えたうえで言葉を発する」という生き方をしてきたはず。英語を話している最中とてそれは変わらないはず。

「赤い指」東野圭吾

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
妻からの連絡で家に急いで帰ると、庭には少女の死体があった。息子の犯罪を隠すために共謀することとなる。
久しぶりの東野圭吾作品である。息子の犯した犯罪を隠すために共謀する家族と、それを捜査する刑事の側の2つの視点から物語は展開する。面白いのはその家族には痴呆症を患っている祖母が同居している点だろう。息子が親である自分に対しての態度を「親への感謝の気持ちがない」と嘆く一方で、痴呆症である母を疎んじる自分自身を恥じるのである。
そして一方で、本件を捜査する刑事、松宮(まつみや)と加賀(かが)の物語も本作品の魅力である。刑事になる前から加賀(かが)と顔見知りだった松宮(まつみや)は、父親の命がもう長くないことを知りながら会おうとしない加賀(かが)に不満を持っていた。
最終的に親と子の在り方を見せてくれるクライマックスが用意されていた。少し作りすぎの印象を受けたが、楽しむことができた。以前は読書のための読書にしかなりえなかった東野圭吾作品だが、ここ2,3年の作品からは、以前になかった現実社会を反映した深みのようなものが感じられるようになった気がする。
【楽天ブックス】「赤い指」

「ソウルケイジ」誉田哲也

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
多摩川の土手に放置された車の中に、血まみれの左手が残されていた。姫川玲子(ひめかわれいこ)を含む捜査一課の刑事たちの事件解決までを描く。
「ストロベリーナイト」の続編に当たる。学生時代に負った心の傷を抱えながら男社会の警察組織の中で警部補として部下を抱える立場にある姫川玲子(ひめかわれいこ)を中心として物語は展開する。
今回面白いのは、得られた手がかりをヒントに直感的に真相に近づいていく玲子(れいこ)と、それとは対照的に、一切の予断を排して捜査を進める日下(くさか)の対比だろう。表面的には毛嫌いしたり、その手法を不安視しながらも、その実力を認め合う二人がそれぞれの手法で真実に近づいていく。
どちらが正しいというのではなく、どちらが理想的な捜査とうのでもなく、異なる種類の人間がいるからこそ組織として警察は機能する。本作品で描かれているのはまさにそんな組織としての機能性である。
そんな警察側の面白さに加えて、事件自体も不思議な展開を見せる。事件の不思議さだけでなく、関係者たちの生きかたやその裏にある感情がしっかり描かれている。

幼くして両親を失っているにも拘わらず、その眼差しは、実に澄んでいて、真っ直ぐだ。これは長年愛情を受け、それを感じ、自身の中で育んできた者の目だ。

「愛情」なのか「償い」なのかそれとも「自らへ課した罰」なのか。人をつき動かす説明し難い力の存在を見せられた気がした。
【楽天ブックス】「ソウルケイジ」

「獣の奏者」上橋菜穂子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
そこは闘蛇(とうだ)と王獣(おうじゅう)と呼ばれる獣たちが住む世界。獣を操ることが国を治めることに大きく貢献する世界。母を失ったエリンはやがて王獣(おうじゅう)という美しく強い獣に興味を持つようになる。

ファンタジーに挑戦したのは久しぶりである。獣を操るという点で、スタジオジブリの名作「風の谷のナウシカ」を思い起こさせるが、単なる焼き直しではなくオリジリティに溢れている。メインとなる2つの獣、闘蛇(とうだ)と王獣(おうじゅう)はいずれも人には決して慣れない生き物で、一歩間違えれば平気で人を飲み込む危険な生き物である。しかし、その強さゆえに操ることができれば強力な戦力となる。人は「音なし笛」を吹くことによってのみコントロールしてきた。

ファンタジーというと、どうしてもその世界観ゆえに、空想の人物名や地名の多さに辟易し、また、話を分かりやすくしようとすると対立の構造が単純すぎてリアルさに欠けるという問題があり、リアルさと分かりやすさのバランスというのは常に難しい部分ではあるのだが、本作品は非常にわかりやすく読みやすく、それでいて単純になりすぎずに少しずつ世界の複雑さが読者に見えてくる点が好感がもてた。

「闘蛇編」と「王獣編」はシリーズ全4作の最初の2作であるが、物語としては一度完結している。今後さらに広がっていくであろうその世界観に期待したい。

「ノーフォールト」岡井崇

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
柊奈智(ひいらぎなち)は大学病院に勤める産科医。過酷な勤務が続くなか、容態が急変した妊婦に緊急の帝王切開を行った。子どもは助かったが、母親に原因不明の出血が起こる。
ここ最近医療問題を扱った書籍、ドラマが注目を浴びている。小説で言えば「チームバチスタ」シリーズ。ドラマでいえば「救命病棟24時」だろうか。そしてその多くが医師や病院を相手取った訴訟や、現場の厳しい労働環境に触れているのは、人々の関心の高さを反映しているのかもしれない。
本作品も、タイトルから想像できるように、医師や病院の責任や、その労働環境に触れ、物語の中で、現在の日本の医療の多くの問題点を指摘している。日本の医療だけでなく、アメリカの医療訴訟の多さから日本医療の将来を懸念し、ヨーロッパの先進国と比較して日本医療の遅れを嘆いている。

アメリカの弁護士から見ると、産婦人科の医師は数億円のネギを背負ったカモに見えるらしい。

医療技術が進化したせいだろうか、出産は生命のリスクの少ないものと多くの人が認識しているせいだろうか、それとも身内に不幸があったとき、人はそれを誰かのせいにせずにはいられないのだろうか。いずれにせよ医療の現場では医療訴訟は深刻な問題である。
そして裁判になればそこは、必ずしも真実を追求する場ではなく、ときには勝利するために善人を悪人に仕立て上げるなどの駆け引きの場となるのである。その結果、一生懸命患者のために尽くしてくれた敬われるべき医師が、「人殺し」として罵られる可能性すらあるのである。
そんな状況によって、医師たちは訴訟を恐れ、医師になりたがる人が減り、人手不足が医療現場を過酷なものとし、ミスを誘発させる。そんな悪循環が本作品から見えてくるだろう。

“患者さんにはこういう話をしなさい、そうすれば訴えられない。カルテにはこう書きなさい。カルテはいつでも開示されます”そんな話は医療安全ではない。言うなれば訴訟安全だ。

また「医療過誤」と「医療災害」その線引きの難しさを考えさせられた。医師たちは現場で成長し高い技術を身につけていくから、時には失敗から学ぶこともあるのである。

最善でなければ、また教科書通りでなければ”過誤”と認定するのでは、一般に行われている多くの医療が”過誤”になってしまいます。

最期に著者は、無過失補償制度に触れている。ヨーロッパの先進国に取り入れられているこの制度こそ、著者が本作品を通じて読者に訴えたい、日本医療に行われるべき改革なのだろう。
健康な僕らは普段目をむけることのない、それでも人の生死に大きくかかわる医療現場に蔓延する深刻な問題に、この本を読むことで気付くのかもしれない。
本作品は近々始まる予定のドラマ「ギネ」の原作である。藤原紀香の演技にはやや不安だが、この世界をどのように描くのかが楽しみである。

クロスマッチ
輸血に伴う副作用を防止するために行われる検査。(Wikipedia「交差適合試験」
鑑定人
訴訟などにおいて一定分野の専門的知見に基づき意見を述べる人。(Wikipedia「鑑定人」

【楽天ブックス】「ノーフォールト(上)」「ノーフォールト(下)」

「空飛ぶタイヤ」池井戸潤

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
走行中のトレーラーのタイヤがはずれ、歩行者を直撃して死に至らしめた。調査の結果は整備不良。納得のできない運送会社社長の赤松(あかまつ)は、大手自動車メーカーに闘いを挑む。
すぐにピンと来た方もいるだろう。この物語はフィクションでありながら、数年前に実際起こった出来事をヒントに描いているのは明らかだろう。物語中では「ホープ自動車」という名称で登場しており、そのグループは、現実の三菱グループと同様に、ホープ重工、ホープ銀行といったグループ企業動詞の協力関係が強い。
本作品では、企業のリコール隠しに関わる出来事をその周囲の多くの視点から描いている。タイヤの外れたトレーラーの所有者である運送会社の社長の赤松(あかまつ)、隠蔽体質を知りながらもそんな社員の一員として生きることしかできない社員。グループ企業というだけで支援を断ることのできない銀行員。妻を殺されて怒りの矛先を探す夫。そんな一人一人の人間物語に何度も目頭が熱くなった。
社会抱える矛盾とそんな矛盾だらけの世の中の中で必死に信念を貫こうとする生きかたを見せてもらった。
【楽天ブックス】「空飛ぶタイヤ(上)」「空飛ぶタイヤ(下)」

「ツアー1989」中島京子

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
香港のツアーで一人の青年がいなくなった。同行していた人はみんなその青年のことをほとんど記憶していなかった。青年の思いを寄せていた人への手紙を託されたライターは自分でその青年を探そうとする。
不思議な雰囲気の物語。多くの人が海外旅行に出かける昨今であるが、人は「旅行」に何を求めているのか、そんな問いに対する今まで気付かなかった一つの答えを示してくれた気がする。
なんか実はもっといろいろ、もしくはもっと別のことを著者は訴えたかったのかもしれない。他の人が読めばまた、他の受け止め方があることだろう。
【楽天ブックス】「ツアー1989」

「どれくらいの愛情」白石一文

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
男女の恋愛模様を描いた短編集である。
名作「私という運命について」のあの独特な空気をもう一度味わいたくて手に取った。実際、最初の物語「20年後の私へ」はその期待に応えてくれたと言えるだろう。
39歳にして離婚暦を持つ岬(みさき)は、多くの同年代の女性と同じように、人生を考え、自分の存在意義を考え、そして、恋愛に悩む。仕事を一生懸命こなしながら、お見合いなどをして人生が満足のできるものになるように努力もしている。
そんな中で遭遇するいくつかの真理や新たな疑問が、岬(みさき)の考えを通して見えてくる。

この人は愛するべき人を探しているのではなく、妻となるべき人を探しているのだ。その二つのどこがどう異なるのかはわからないが、そこはどうしても譲れない一線だった。

答えのない疑問だからこそ、それを考えることの無意味さと重要さという相反するものを感じる。
本作品自体は短編集という形式をとっているが、表題作「どれくらいの愛情」は十分なボリュームがある。その中で主人公である正平(しょうへい)の良き助言者である、不思議な力を持った男性の言葉が素敵である。

与えられた運命というのはいわば地面のようなもので、その地面があるからこそ、そこから飛び立つことができる。または与えられた運命は、最初に電車に乗る駅のようなもので、その始発の駅があるからこそ、別の目的地に向かって旅立つことができる。

主人公にすえられた登場人物だけでなく、その周辺の登場人物からも、お手本となるような生きかたをいくつも見れた気がした。カッコいいことは若いときだけ限ってできることではなく、強い意志を持ち、深く自分を見つめ続けて、その生きかたの意味を考え続ければ、何歳になってもできるものなのだと、教えられた気がした。

カリエス
脊椎を含む骨組織の結核菌による侵食などを指す医学用語。(Wikipedia「カリエス」)

【楽天ブックス】「どれくらいの愛情」

「シャトゥーン ヒグマの森」増田俊也

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
大雪の中、小屋に孤立した動物件研究者たち。人間の味を覚えた巨大なヒグマがシャトゥーンが徘徊する。
タイトルから想像できるように、ヒグマが次々と襲ってくる物語である。ジョーズのヒグマ版とも言うべきか。そういう意味では読者の期待を裏切ることはないだろう。本作品の魅力はやはり人とヒグマとの格闘シーンと言うべきだろうか。といってもその多くは、四肢を引きちぎられ、目や鼻をもぎ取られるという、一方的に人間が惨殺されるというものなので、抵抗を持つ人もいるだろうが、ここまで描いた作品にあまり出会ったことがなかったので新鮮であり、同時に頭にこびりつくような恐怖感も植えつけてくれた。そのすべてがヒグマの習性に基づいて描かれているという点がただのホラーと異なりより恐怖を増幅させるのだろう。
描かれるのはそんなヒグマの恐ろしさだけでなく、シマフクロウやヤチネズミなどの野生動物にも触れ、多くの野生動物を減らしているのは人間の無知や、「自然を操作できる」という驕りのせいだと訴えてくれる。

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「栄光なき凱旋」真保裕一

オススメ度 ★★★★★ 5/5
第二次世界大戦中のアメリカ側から描いた物語。アメリカに住む日系二世の3人の若者に焦点を当てている。
物語はアメリカから見た太平洋戦争であるが、三人の日系2世、しかもいずれも日本で生活した経験を持ち、多少なりとも日本語を話せる青年に焦点をあてているからこそ、今までと違った角度で改めて太平洋戦争を見ることができる。
ヘンリー・カワバタとジロー・モリタは幼馴染でともにリトル・トーキョーに住みながら、白人から受ける日系人の差別に苦しむ。一方、マット・フジワラはハワイで生活し白人の女性を恋人に持ちながらも、日本の真珠湾攻撃で彼らの生活は大きく変わっていく。
僕らが第二次世界大戦を振り返るとき、その印象は、日本は愚かな突撃を繰り返し、アメリカはそれを緻密な戦略で対応したというものであるが、本作品を見て改めて理解できたのは、戦争は勝とうが負けようが愚かな行為でしかなく、それは多くの不条理な死によって構成されるという事実である。
アメリカで過ごす日系人の目を通して、アメリカで起こっている多くの人種差別を理解することになるだろう。以上に迫害されていた黒人たちもいたという。主張するように黒人席へ座り「ぜんぜん汚くない」と主張する日系人の姿が印象的だ。こんな人が実際にいたなら誇るべきことなのだろう。
終盤のヘンリーが戦場で戦うシーンは、小説という媒体でありながらも、活字を追うことで脳裏にそのシーンがリアルに浮かんでくる、そして戦場の、不条理さ、無意味さ、愚かさ、そういったものを感じずにはいられない。少しずつ壊れていく自分の心を意識しながら、それまで信じていなかった神に訴えるシーンが強烈である。

神よ。見ていますか。
ここにはただ祖国を愛する純粋な男たちがいます。白人や日系人という分け方は関係なく、ドイツ兵という敵も存在はしない。国のために戦うという意味で、ここにいる者は皆、同じ覚悟と志を抱く同胞だった。
だから神よ。せめて苦痛を与えずに天へ呼び、安らかな眠りを与えたまえ。

3人の強く信念を持っていきている立派な日系人が、戦争という大きな力の前で、自分に無力さに失望し、自分の醜さを知り、それでもそんな自分自身と向き合って自分なりの答えを出そうとする生きかたは誰もが感銘を受けるだろう。
すでにいくつかの作品で栄光をつかんだであろう著者、真保裕一が描きたかった作品の一つなのだろう。その詳細な描写からそんな心構えが伝わってくる。

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