「The Alchemist」Paulo Coelho

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

スペインのアンダルシアで羊飼いをして過ごしていたSantiagoは、ある日夢に出てきたエジプトに宝を探しに旅に出かける。

Santiagoはある日不思議な夢をみる、夢を読む占い師の言葉によればエジプトに行けば宝物が手に入るという。Santiagoは迷いながらもその夢を追うことを決意する。

そして、エジプトを目指す中でSantiagoはさまざまな障害や人との出会いを体験するのである。その過程で人生の本質をついたような言葉が散りばめられている。

At a certain point in our lives, we lose control of what's happening to us and our lives become controlled by fate. That's the world's greatest lie.
人生のある地点で、私たちは人生のコントロールを失い、運命にコントロールされるようになる。これは世の中でもっとも大きな嘘だ。
When someone makes a decision, he is really diving into a strong current that will carry him to places he had never dreamed of when he first made the decision.
人は決断をした時、その時には夢にも思ってもみなかった場所へたどり着く流れのなかに飛び込んでいるのだ。
There is only one thing that makes dream impossible to achieve: the fear of failure.
夢を不可能にしているの唯一のことは失敗への恐れである。

深みを感じさせる物語、人生に迷った時、夢を諦めそうな時に読むといいかもしれない。

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「The Room on the Roof 」Ruskin Bond

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
インドのDehraで養父の元で立派な英国人になるために厳しく育てられたRustyはある日耐えかねて家を飛び出す。そんなRustyを描く。

家を飛び出したRustyはわずかなつながりと英語の能力を頼りに、英語の家庭教師の立場と食事と部屋を確保する。Rustyはさらにその生徒Kishenの母親Meenaに恋をしてしまう。

インドのイギリス人コミュニティで生きるRustyの様子を描いているので、インドのバザールや食事の様子も面白いが、その地域で生活しながらも地域の人を下に見ているイギリス人のものの見方も新鮮である。インドでは、青い目と金髪のRustyは目立つ存在で、さらに家出したことで、外見も立場も所属のないことによるRustyは悩むのである。また、Dehraというインドの都市にイギリス人コミュニティがあったことは初めて知った。

正直、高い評価の印象が先行しすぎたせいか、若干期待はずれ感は否めないが、深みを感じる作品ではある。タイミングが異なればまたもう少し違った感じ方ができたかもしれない。

「The Sun Is Also a Star」Nicola Yoon

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アメリカの移民2世韓国人青年のDanielと不法滞在中のジャマイカ人女性のNatasha出会いを描く。

Natashaは、アメリカで俳優になる夢を追いかける父についてきて、観光ビザでそのままアメリカに不法滞在で生活していた。しかし、父が飲酒運転でつかまったことからジャマイカへ帰国をしなければならなくなる。Natashaは弁護士をあたってアメリカに留まる方法を探し続ける。一方で、Danielは両親の勧めで医者になるために、イェール大学の面接を受けようとしている。なりたくもない医者になるという葛藤を抱えながら面接に向かう際、Natashaに一目惚れするのである。

DanielとNatashaの出会いの1日を描く。Danielは運命を信じる一方で、Natashaはどちらかというと現実主義者であり、そんな二人の考え方の違いと、それを反映するように、少しずつ二人の家族の人間関係や歴史が見えてくるのが面白い。その過程で、韓国とジャマイカという国と、その家族がアメリカで生活することの現実が見えてくる。

アメリカ移民の話は本書に限らずよく耳にする。移民一世は子供の将来のためにと、母国を離れ慣れない土地に移り住み、その結果、人がやりたがらない仕事をやって生計を立てなければならない。一方、その子供の移民二世は、親が自分たちのために苦労して生きてきたことを見ているため、親の期待を裏切る生き方ができない。それが子供の心に葛藤をうむのである。

Natashaの不法滞在者という形は今回初めて触れたので印象的だった。見つかったら即強制送還というわけではないという点も、今回初めて知った。確かに、子供から見れば親についてくるしか選択肢がなかったなかでアメリカに留まる選択肢を与えたくなる心情も理解できるが、一方で、そんなことをしていたらアメリカは人口が増え続け、治安をまもるのも大変だろうと感じた。

全体的には、1日で恋に落ちる若者2人を描いているので、非現実的すぎるという批判もありそうである。映画化されたようなので心情描写が表現しにくい映像の方はなおさらただの非現実な恋愛物語になっている可能性が高いだろう。ただ、個人的には、上に挙げたように、移民二世、不法滞在者という普段触れることのない人生を体験できたのが新鮮で楽しめた。

「史上最強の人生戦略マニュアル」フィリップ・マグロー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人生を好転させる方法を体系的に説明している。

序盤で本書が多くのページを割いて説明しているのは次の3点である。

  • 不平や愚痴で時間を無駄に費やさない
  • 行動を変えれば人生は変わる
  • 自分の求めるものがわからなければ、求める人生にはたどり着けない

こうやって書き連ねてみれば当たり前のことばかりなのだが、確かに世の中にはこれができてない人がなんと多いことか、逆にできている人にとっては、行動を起こさない人が不思議で仕方がないだろう。

あなたが手に入れるのは、最高でも自分が求めるものなのである。

最後の章では、より詳細に自分の求めるものを見極め、行動を起こす方法を説明している。普段、現状に愚痴や不平ばかり言って何もしない人でも、本書のとおり行動すれば間違いなく人生は好転するだろう。(ただ、そういう人はおそらく行動しない…)

僕自身は行動をさっさと起こすほうだと認識しているが、それでも改めて自分の現状を振り返る機会となった。不便だと思いながらも受け入れているものがないだろうか、実はもっと改善したいと無意識に感じているものはないだろうか、そんなことを改めて考えてみたい。

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「人生がときめく片付けの魔法」近藤麻理恵

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
一度習えば、二度と散らからないという整理収納法について語る。

こんまりとして日本だけでなく海外でも有名な著者であるが、その著書に触れたことがなかったのでこれを機に読んでみようと思った。

端的に言えば本書を通じて著者が言っているのは

ときめかないものは捨てる

である。僕自身比較的ものはさっさと捨てるほうではあるが、それでも捨てるのが難しいと感じるのは、人からもらったものである。特にその人の手書きのメッセージなど書いてあると、どんなに小さな紙切れだろうと捨てるのが難しい。しかし、それについても本書のこんなアドバイスが効きそうである。

プレゼントはそのものより、気持ちを届けるモノです。
だから、「受け取った瞬間のときめきをくれて、ありがとう」といって捨ててあげればよいのです。

また、僕自身は服をたたむことは無駄な時間だと考える人間だが、本書では感謝の言葉をかけながらたたんで重ねるのではなくたてることを推奨している。正直、感謝の言葉をかけることの意味はよくわからないが、服をたてることの意味はわかったので、さっそく実践していこうと思った。

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「自分探しと楽しさについて」森博嗣

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
作家であり工学博士である著者が自分探しについて思うところを語る。

著者森博嗣は「すべてがFになる」や「スカイ・クロラ」など、むしろ理系作家としての印象が強かったのだが、そんな人がどんなことを書いているのだろうと気になって本書を読むに至った。

著者自身数時間で本書を書き上げた、と言っているように、特に計画もなく独り言を書き連ねたような印象である。

印象的だったのは、抽象化の重要性を説いている点である。人生を楽しめない人は、誰かがあるものを楽しんでいるのを見るとそれとまったく同じことをしようとする。その結果、その対象は競争率が上がり、他人を蹴落とさないと手に入れることのできないものになる。一方で抽象化が得意な人は、何かが楽しかった時に、どの要素を自分が楽しんでいるのかを見極めて、その要素を備えていて自分にアクセスがしやすいもので楽しみを感じることができるというのである。

内容が濃いとは言えないが、もし人生が退屈で悩んでいるなら読んでみるといいかもしれない。僕自身はむしろ合間合間で触れる著者自身の趣味が楽しそうだなと思った。

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「Velvet was the Night」Silvia Moreno-Garcia

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1971年のメキシコでHawksの一員として働くElvisと秘書として週刊誌を読むことだけが楽しみの女性Maiteの2人の男女の人生を描く。

ElvisはEl Magoという男に拾われ、Hawksの一員として学生運動を鎮圧することを仕事としている。しかし、仲のいい同僚のGazpachoが銃弾に倒れて組織から抜けたことでグループのリーダーとなり今まで知らなかった様々な事柄に触れ、少しずつ自分の行動や立場を考えるようになる。そんななかある女性の張り込みを任される。

一方Maiteは秘書として働きながら、政治情勢の話題で盛り上がる同僚たちをは距離を起きながら、過去の恋愛を引きずって週刊誌の恋愛漫画だけを楽しみに生きている。Maiteは小遣い稼ぎのために週末ペットシッターをしていたが、客の一人が猫の餌やりとMaiteに任せたまま失踪してしまってから、その退屈な人生が少しずつ変化が起きる。

そんなメキシコの学生運動が盛んな時代に、異なる世界で生きていたElvisとMaiteの世界は少しずつ近づいていくのである。やがてElvisは話したこともないMaiteにどこか親近感を覚えていく。

物語展開としてものすごい斬新というわけではなかったが、やはりメキシコの学生運動、特にDirty War(汚い戦争)など、その動乱の時代を描写している点が新鮮である。メキシコの歴史などほとんど触れたことがなかったので、キューバ革命の後にこのような動乱の時代があったことを初めて知った。手の届く範囲でもう少し調べてみたいと思った。また、ElvisもMaiteも音楽が好きなため、当時のメキシコの音楽が何度も登場するのが面白い。こちらもいくつかさっそく聞いて当時の雰囲気を味わってみたいと思った。

メキシコにも学生運動の発端は、アメリカの共産主義運動を封じ込める動きから起こっていたことを知った。やはり日本にいて普通に生活していると、アメリカの悪い歴史部分が見えにくいのかもしれないと感じた。英語はどちらかというと欧米文化を伝える一方、南米文化には弱いので、もっとスペイン語の本なども読むべきかもしれないと感じた。

「解きたくなる数学」佐藤雅彦/大島遼/廣瀬隼也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
いくつかの数学の問題を写真とともに提示し、解説していく。

数学の問題を興味深い写真とともに解説している。それぞれが特別難しい問題ということはないが、普通の数学の問題を解くのと、実際の場面を見せられて数学を応用して答えを導き出さなければならないのとでは、少し考え方が異なると感じた。「数学的帰納法」など久しぶりに触れる考え方もあれば、「鳩の巣原理」など、新しい発見もあった。

面白いのは著者が末尾でも語っているように、同じ問題でも写真とともに示すと興味深く見えるということである。興味をそそる見せ方をするという考え方は他のことにも応用できそうだと思った。

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「白い巨塔」山崎豊子

白い巨塔

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
国立大学医学部助教授の財前五郎(ざいぜんごろう)が、医者としてのキャリアを築いていく様子を描く。

前半は大学内の教授選、後半は財前五郎(ざいぜんごろう)が巻き込まれた医療訴訟を中心に展開する。

自身が教授に選ばれるため、またその周囲の人間は財前(ざいぜん)を教授にするために、それぞれが様々な人脈を駆使して票を集める様子は、醜くもあるが、学ぶところもあると感じた。どんな人でも、お金や地位や家族の豊かな人生を約束されれば小さな信念など簡単に譲ってしまうのだ。

後半の医療訴訟では、一人の医師が証言している言葉が印象的だった。医師に厳しすぎる判決は、逆に医療の発展を損ねる結果となり、どこまでを誤診と定義するかは、医療の発展に影響する判決なだけに、常に難しさがあると感じた。

全体的に、貧しい家庭に生まれた財前(ざいぜん)が、助教授から教授へと少しずつ医者としての地位を登っていく過程で忙しさも増す中で、傲慢になっていくところが痛々しい。その一方で、自らの信念を全うしたことで医者としての立場を追われた里見(さとみ)教授や、立場に関係なく事実しか証言しない大河内(おおかわうち)教授など、尊敬できる生き方にも触れることができた。

本書の舞台となっているのは昭和30年代とかなり昔だが、技術的にはもちろん、本書で描かれているような、医療の発展を阻みかねない封建制も改善されていると期待したい。

「白い巨塔」といえば過去豪華キャストでドラマ化されており、山崎豊子の最高傑作という印象を持っていたが、おうして実際に読んでみると、一人の傲慢な医者の周囲で起こった出来事に閉じており、「大地の子」「二つの祖国」「沈まぬ太陽」に比べると、登場人物の浮き沈みや、世界の大きな変化など、物語の壮大さはあまり感じなかった。

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「In the Dream House」Carmen Maria Machado

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
女性同性愛者である著者の、恋人との出会いとその後の同棲の様子を語る。

著者自身が、ある女性と恋に落ち、ともに生活を始め、やがてその女性から振り回されるまでの様子や心のうちをを描いている。その過程で恋人に対する感情たけでなく、社会や家族のレズビアンに対する考え方も吐露していく。同時に、女性の同性愛者間で起きた数々の事件などに触れ、思うことを語っていく。

回想録ということで、物語の展開自体が面白いということは特にないし、有名人の伝記のように、自らの生き方に対して、良い刺激になることもない。

おそらく、この本がベストセラーとなった理由は、内容の面白さよりも、そのレズビアン視点のカップル間の暴力という、斬新さゆえなのだろう。今までに考えたこともなかった、同性愛者視点の社会の見方を知ることができた。世の中が同性愛者を理解していないことに対する、著者のストレスを行間から感じた。そして、さまざまな映画やMVなどのシーンが語られるので、アメリカの文化を知る上では面白いだろう。

一方で、日本ではあまり有名ではない出来事やアーティストや映画の話題にもたびたび触れられているので、アメリカの文化にかなり詳しくないと楽しめないだろう。徹底的に引用される出来事を調べるつもりで読むぐらいが面白いかもしれない。また、スラングがかなり多く登場する。こちらも普通に読んでいくよりも、アメリカ英語を徹底的に学ぶつもりで調べながら読むと面白いかもしれない。

面白かったとか刺激になったとかではないが、間違いなく新しい世界観や視点をもたらしてくれる。

「Fluent forever」Gabriel Wyner

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
多言語話者であり音楽家でもある著者が、語学学習の効率的な方法を語る。

著者の学習方法は

発音→単語→文法→その他

という優先順位で行われ、発音が最初に来る点が面白い。音楽家であることから音から入るのかもしれないが、五感を多く使った方が記憶に刻まれるという点で、読み方を先に知っておかないと記憶するのに時間がかかるという点には間違いないだろう。

そして、本書で何よりもページ数を割いて説明しているのがフラッシュカードの使い方である。誰もが学生時代に単語帳は使った経験があるだろう。フラッシュカードとは単語帳のことでインターネットやアルゴリズムによって現在はさらに効率的に利用できるのである。

何よりもページ数を割いて説明しているのがフラッシュカードの使い方である。誰もが学生時代に単語帳は使った経験があるだろう。フラッシュカードとは単語帳のことでインターネットやアルゴリズムによって現在はさらに効率的に利用できるのである。

本書ではそんなフラッシュカードを利用して、効果的に学ぶコツをいくつも説明している。興味深かったのは、言語によって必要な、男性名詞、女性名詞、中性名詞をどのように覚えていくかということである。著者の方法は新しい言葉を、自分の言語に変換して覚えるのではなく、常にイメージと結びつけることと重視しており、男性名詞はそれが爆発している状態で記憶し、女性名詞は燃えている状態で覚える、など印象的なシーンにして記憶に刻み込ませるためのさまざまな工夫が見られる。必ずしも著者の進める方法に従う必要はないが、効率的に記憶するためのさまざまなヒントが詰まっている。

僕自身もう10年ほど前になるが、フラッシュカードでかつ少しずつ間隔を開けて繰り返す機能を備えたAnkiというアプリを以前使っていた。結局、単語や表現は文脈とともに覚えていかないと使えるようにはならないと悟ってやめたのだが、本書によって考え直すきっかけになった。

「点と線」松本清張

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
松本清張作品はこれまで読んだことがなかったが、本作「点と線」や「ゼロの焦点」など、タイトルだけは知っているほどの名作が多々あり、もはや知っておかなければならない常識なのかもしれない、と感じ今回読むことにした。

松本清張作品はこれまで読んだことがなかったが、本作「点と線」や「ゼロの焦点」など、タイトルだけは知っているほどの名作が多々あり、もはや知っておかなければならない常識なのかもしれない、と感じ今回読むことにした。

昭和33年初版ということで、携帯電話どころか普通の電話も普及していないようで、電報が出てくる点や、旅行に飛行機を使うことに対する認識の違いや、搭乗のシステムの違いなどから、残念ながら初版当時の時代感覚で楽しむことはできない。むしろ、本書を読んで考えるのは、なぜこの作品がここまで長く読まれる有名作品となったかということである。

改めて思うのは、作品を有名にするのに、「点と線」というタイトルが大きく貢献しているということである。本書の内容の濃さは、50年以上経った今としては評価できないが、「点と線」というタイトルが適切かと聞かれると疑問である。「〇〇殺人事件」というようなタイトルをつけることもできたなかで、多少の違和感を感じながらも「点と線」というタイトルをつけた点が50年経った今でも読まれる大きな要因と言えよう。

考えてみると確かに、「世界の中心で愛を叫ぶ」や「君の膵臓を食べたい」など、内容がありきたりでもタイトルの印象深さから有名になったであろう作品がこれまでにも多々あるなと思い至り、タイトルの重要性を改めて感じた。

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「Design is Storytelling」Ellen Lupton

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デザインは「問題解決」と言われてきたが、現代のデザインはすでにそれだけに止まらない。本書は「問題解決」であると同時にStorytellingとしてのデザインを語る。

次の3つの章に分けてStorytellingとしてのデザインの考え方を語る。

  • Action
  • Emotion
  • Sensation

つまり問題解決だけではなく、行動、感情、感動に働きかせてこそStorytellingなデザインと言えるだろう。そして、それぞれの章では、それを実現するための細かい手法を説明している。例えば、Actionの章では次の手法に触れている。

  • Narrative Arc
  • Hero’s Journey
  • Storyboard
  • Rule of Threes
  • Scenario
  • Planning
  • Design Fiction

同様にEmotionの章では次の手法を説明している。

  • Experience Economy
  • Emotional Journey
  • Co-creation
  • Persona
  • Emoji
  • Color and Emotion

ペルソナやCo-creationはすでにデザインスプリントやリーンスタートアップの考え方にも取り入れられており、どれもすでに一般的で特に驚きはなかったが、Emotional Jorneyで説明されている、ピーク・エンドの法則はデザインにも適用できると感じた。特に、全体のUXを改善しようとすると時間もコストもかかりすぎる場合はピーク・エンドの法則と照らし合わせて優先順位を決めるという考えは有効だと感じた。

後半は一般的なデザインに含まれる内容が多かった。むしろ、おまけとして書かれていた最後の、文章ライティングの考え方は参考になった。

As you write, focus on being clear, not clever.

比較的他のデザイン書籍にも書かれている内容ばかりだったのでものすごいおすすめの書籍ではないが、同じような内容でも定期的に触れることに意味があるのだろう。

「一九八四年」ジョージ・オーウェル

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ビッグブラザーの支配下で生きるウィンストン・スミスを描く。

ビッグブラザーの支配のもと、過去はビッグブラザーに都合よく書き換えられ、それ以外の記録を残すことは禁止されている。そして言葉も最低限の情報交換に必要なものだけに単純化されていく。そんななか、自分の心だけは豊かなままでいたいと努めるウィンストン・スミスを描く。

マッキントッシュの有名なCMに代表されるように、様々な箇所で引用されており、一度は読んでおかなければならないと思い、今回読むに至った。

ビッグブラザーの支配のもとで生きるウィンストン・スミスが、ジュリアという女性と恋に落ち、少しずつ思想的にも行動的にも大胆になっていくなかで、ビッグブラザーに対抗する組織と近づいていく様子を描く。

つまらないというわけでも、新鮮さがまったくないというわけでもないが、正直、現在の様々な物語が溢れる時代に生きた人々が本書を読んで、その面白さを享受できるかと問われれば、そんなことはない。古い物語を読むときは、その時代背景も考えながら楽しむべきだろう。

物語の舞台は1984年だが、発表は1949年と第二次世界大戦が終結して間もない時だというから驚きである。発表からも描こうとしていた未来からも遠い未来である現在から本書を読むと、当然、発表当時本書を読んでいた人々とは受ける印象がまったくことなることだろう。それでも、なぜこの物語が当時多くの人々に読まれ、80年近く経った今でも共通言語として語られる存在になったのかと考えた。

本書のあとがきでも触れられているが、単純な物語の斬新さだけではなく、発表当時もしくは発表後数十年のソビエト連邦の脅威に重なる部分が本書の認知を拡大に大きく寄与したのだろう。その流行は、メディアか政府によって意図して起こされたのか、人々の間で自然に起こったのかはわからないが、その結果、アメリカを代表する西洋諸国の間で、避けるべき未来を語る上での共通認識となっていったのではないだろうか。

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「スタンフォード式疲れない体」山田知生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スタンフォード大学のトレーナーである著者が疲れない体づくりを語る。

スタンフォード大学は学業で有名な印象があったが、本書によるとスポーツでも長年目覚ましい成績をあげているという。本書はそんなスタンフォード大学で実践されている疲れの予防法について語っており、僕自身最近マッサージやストレッチなどコンディションづくりや体のケアに対して関心が高まっており、本書にたどり着いた。

まず、自らのコンディションを知ることの重要性を説いている。脈拍を定期的に測ることに「疲れ」を具体的な数値として計測できるようになるというのである。

そして、本書でもっとも印象的だったのはIAP呼吸法である。それはIntra Abdominal Pressureの略で「腹圧呼吸」とも書いており、簡単に言うと

息を吸うときも吐くときも、お腹の中の圧力を高めてお腹周りを固くする呼吸法

である。つまり、腹式呼吸とも異なり、これによって体幹が安定し正しい姿勢になり、無駄な動きがなくなるというのである。どちらかというと腹式呼吸が理想の呼吸という印象を持っていたためIAP呼吸法の考え方は新鮮だった。

ダメージ療法として「アイス・ヒート」メソッドも紹介している。簡単にいうと怪我をして24時間までは冷やし、24時間以降は温めるという方法で、注意しなければならないのは、怪我をした翌日だろうと24時間経つまでは冷やすということである。

終盤d根は睡眠と食事の重要性について語っている。睡眠は最低でも7時間、週末も平日も同じ時間に寝ることを勧めている。食事については、他の書籍でも触れていることと特に大きな違いはなく、日本人は炭水化物を摂りすぎなので、タンパク質の割合を増やすことを意識しなければならないという。ただ、本書でも言っているように、食事は厳しくしすぎると続かないので、できる範囲で徐々に習慣づけていきたい。

呼吸法、脈拍の定期的な測定、アイス・ヒートメソッドは早速取り入れていきたいと思った。

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「置かれた場所で咲きなさい」渡辺和子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ノートルダム清心学園理事長の著者が生き方を語る。

前向きな人生を送るための考え方を語った本は、昨今世の中にあふれており、本書もそんななかの一つである。したがって、読むことに意味はないとは言わないが、この手の本をたくさん読む人にとってはそれほど印象的な言葉はないかもしれない。ただ、すでに出版時点で80歳を超えていることから、人間の晩年になってこそ見える考え方が伝わってくる。

老いるということにおいて、一番大切な仕事は、ふがいなくなった自分を受け入れて、いつくしむということだと気付きました。
一生の終わりに残るものは、我々が集めたものではなく、我々が与えたものだ

ときどきその職業的背景ゆえか、キリスト教や神を引用して語ることで、無心論者には受け入れがたく感じるかもしれない。

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「華麗なる一族」山崎豊子

華麗なる一族

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
阪神銀行の頭取である万俵大介(まんびょうだいすけ)とその家族を描く。

長男の鉄平(てっぺい)は関連会社である阪神特殊鋼の専務を務め、次男の銀平(ぎんぺい)は大介(だいすけ)と同じ阪神銀行で働く。面白いのは、家庭教師である相子(あいこ)の存在である。相子(あいこ)は家庭教師として万俵家と関わることになったにも関わらず、今では、万俵家の権力を広げるために、息子や娘たちの縁組みに奔走するのである。そして大介(だいすけ)は相子(あいこ)と妻の寧子(やすこ)と交互に夜を共にするのだ。

そんな複雑に入り組んだ銀行一家を率いる大介(だいすけ)だが、年銀行再編の流れのなかで、業界ランクと10位として、他行に吸収されず、その地位を守ったまま阪神銀行を大きくする方法を模索していく。その過程で銀行間や政治家との駆け引きが詳細に描かれる点が面白い。

山崎豊子の物語は、現実の出来事に対して緻密に調査しそれをフィクションとして作り上げるだけに、本作品も実際に起こったことがベースになっているだろうと考えると面白い。航空業界、報道、医療などについて書いているので次回は医療業界を描いた名作「白い巨塔」を読みたいと思った。

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「ドローイングレッスン」ジュリエット・アリスティデス

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

先日読んだ、「ペインティングレッスン」の同じシリーズのドローイング版である。「ペインティングレッスン」が新たな視点をもたらしてくれたので、本作にも期待して手に取った。

本書はデザイン、ライン、明度、フォルムの4つの視点でドローイングを解説する。その過程で、さまざまな歴史的な美術の背景や、作品を紹介している。デザインの章では黄金比について多くの例を交えて解説しており、改めて黄金比の重要性を感じた。ちなみにフォルムとは3次元の錯覚を作り出すことで、写実主義の芸術家がたちが没頭した、絵に説得力を持たせるためには不可欠な技術なのだという。

測定法についても3つの測定法、サイトサイズ法、関係法、比較法を語っており、度々出てくるブロックインという手法ともに、長所と短所に、軽く触れているだけで、正確な解説には至ってないので、別の書籍などで理解できるまで調べてみたいと思った。

ペインティングレッスンと同様に明度の重要性を改めて感じるとともに、絵画とはいえ、不要なものを削ぎ落とし、意図した通りの再構成することが良い作品を作るためには重要で、ただみたものを写し取るだけではなくデザインと非常に似たものだと感じた。

「ペインティングレッスン」と同様に、人生をすべて費やしても足りないのではないかと思わせるぐらい、絵画の深さを感じさせてくれる一冊である。

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「The Seven Husbands of Evelyn Hugo」Taylor Jenkins Reid

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
その人生のなかで7回の結婚をしたことで知られる大女優Evelyn Hugoに、伝記を書くように名指しで指名されたMoniqueはその理由に不信を抱きながらもその仕事を請けることとなる。そして、伝記を書くためのインタビュー取材を通じて少しずつEvelyn Hugoの人生が明らかになっていく。

もちろんフィクションではあるが、Evelyn Hugoの語るその人生を通じて、結婚や離婚が有名になるための一つの手段でしかないことを思い知らされる。また、映画のチケット販売を伸ばすために情報をコントロールすることを日常的にやっているんだろうと改めて思った。

やがて、取材からEvelyn Hugoが人生を通じて本当に愛していた人間が明らかになっていく。また、取材を通じてMonique自身にもその心や振る舞いに変化が生じていく。自らも夫と別居状態のMoniqueは自分自身の結婚生活にも区切りをつける決意をする。そして、最後には、なぜ、Moniqueをその担当者として指名したのかも明らかになるのである。

女性がこの著者を勧めることが多いので、本書も、ひょっとしたら女性の方がもっと感じる部分が多いのではないだろうか。特にEvelyn Hugoがスターとして活躍した60年代、70年代は、今以上に人種間差別は根強かっただろうし、またLGBTに対する理解も進んでいなかったことだろう。そんななか自らの本来の姿と、キャリアとの間で悩み生きていく女性の様子は、ひょっとしたら現代にも通じる部分があり、多くの女性の心を打つのかもしれない。

Taylor Jenkins Reidの本は本作が2作目である。前回読んだ「After I do」は比較的軽い印象を受けたので、本作とはかなり雰囲気が異なるのを感じた。他の有名作品もぜひ読んでみたいと感じた。

「配色の設計 色の知識と相互作用」ジョセフ・アルバース

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
少しずつでも色彩や形に対しての感覚を向上し、またそれを説明する言葉を積み重ねたいと考えており、本書もそんな過程の中でたどり着いた。

書籍自体比較的新しいのだが、海外で初版が発行されたのは1963年と約50年前ということだから驚きである。本書には色の感覚や相互作用について理解を深めるためのさまざまな学習法が掲載されており、なかなか読んだだけではわからず、しっかり理解するためには手を動かしたり、カラーペーパーをつかったりしないとならないだろう。

それでも、図を見たり説明を読んだりするだけでいくつか新しい考え方を身につけることができた。例えば、グラデーションスケールはある色に比率1234の濃さの黒を加えるよりも、1248の比率で加える方が自然になることや、正三角形を9等分したカラーシステムなど、いずれも実践に使用していきたいと思った。

現段階ですべての学習法を試す気にはなれないが、このような本があることを知り必要な時にまた手に取れるようにしておくだけでも大きいと感じた。デザイナーコミュニティなどの演習として取り入れるのも面白いかもしれない。

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