オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
タイトルにあるように14歳でカナダのトップ大学に合格した大川翔が自分の勉強やこれまでの学校や家庭での過ごし方について語る。
経歴だけを見ると、このような偉業は才能のある特別な人間にしかできないものと思うかもしれないが、本書を読んでみるとそんなことはないとわかる。
まず、日本にはない飛び級というものがカナダには存在するのである。日本でも授業中に授業のスピードが遅くて退屈しているような人間を見た覚えがあるだろう。日本ではそのような人間は、他の生徒にあわせてゆっくりと進むしかないが、カナダではそのような生徒は飛び級という選択ができるのである。それによって大川翔くんは常に「ほどよいがんばり」を求められる環境に置かれたのである。本人のレベルよりも高すぎる環境は諦めを生む一方で、低い環境は「慢心」を生むのだろう。そういう意味では翔くんも日本の学校では慢心に溺れた「小学校のとき頭が良かった」生徒になったかもしれない。
もう一つ驚いたのは、何よりも弁護士である母親が勉強する能力と方法を熟知しており、それを翔くんに対してもしっかり実践したことである。それによって翔くん自身も効率的な勉強方法を身につけて行ったのである。
例えば、何かを達成するために必要なことは、その能力を伸ばすだけではなく、何をどこまでやればいいのかという分析である。試験のようなものの場合、実力を上げることはもちろん重要だが、同じように重要なのは、必要以上に時間をかけて他の分野や強化にかける時間が減ってしまうことである。
本書では翔くんがスピーチコンテストで優勝する様子が描かれているが、その過程はまさに分析と必要な技能のマスターに集中しており、目的達成のための理想形である。僕ら大人がそれを今語ることができることにそれほど驚きはないが、それを14歳の時点ですでにマスターしているということは人生のなかで大きな利益になるだろう。
本書を読んで思ったのは、14歳の天才時はしっかりと両親が計画して子育てを行えば、育てることができるということである。
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カテゴリー: ★3つ
「The Kill Room」Jeffery Deaver
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
反アメリカ運動家のRobert Morenoが取材を受けている最中に銃撃により殺害された。殺害がアメリカ政府の内部による犯行ではないかという疑いのもの、調査の依頼がLincoln Rhymeのもとに舞い込む。
犯罪者が床や壁、被害者などと接触した際には、必ず何かの物質交換が起こる。したがって犯罪現場や被害者に残された粒子のような細かい物質が、犯人を特定する手がかりとなるのである。そんな、すでに本シリーズを読み続けている人にとってはおなじみの考え方に従って捜査は進んでいく。
まず面白いのは、今回の犯罪がアメリカ政府の内部の犯行であることが疑われるということである。そして被害者が、反アメリカ主義の運動をしているという点で、すでに現実社会の複雑な善と悪の絡み合いが見えてくるのだろうと思わせてくれる。
アメリカ政府の内部犯行であることが疑われるため、Rhyme、Sachs、Pulaskiなどは捜査関係者を慎重に選びながら進めることとなる。そんななか調査の結果を報告するためにいる地方検事のNance Laurelの存在も新しく面白い。特にSachsは同じ女性としてLaurelのやり方に反発を覚えながら捜査にかかわるが、やがてLaurelの本当の考え方を知るに従って少しずつ打ち解けていくのである。
また、犯罪に関わる元兵士のパイロットの心情描写や、料理に強烈なこだわりを見せる犯人の描写が面白い。本シリーズは今回に限らず、犯人たちの特異な執着をその目線で描いてくれる点が非常に魅力的である。それはやがて、アフガニスタンやイラクで起こっている兵士たちの問題など、普段目を向けることのない物事に新たな関心をもたらしてくれるだろう。
「マリー・アントワネットの生涯」藤本ひとみ
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
フランス革命のなかで断頭台より最期を迎えた悲劇の王妃マリー・アントワネット。彼女の生涯を語る。
まず驚いたのは、マリー・アントワネットが有名なのは日本だけなのだそうだ。確かに、特に優れたことをしたわけではないし、なぜマリー・アントワネットという名前を日本人の多くが知っているのかというとよくわからない。僕個人としては幼い頃にみたアニメ「ベルサイユのばら」の印象が強いのかもしれないが、「マリー・アントワネット」という名前自体も魅力的で一役買っているような気がする。
さて、本書ではそんなマリー・アントワネットがオーストリアに生まれ、やがてフランスの王女になり最後と迎えるまでを描いている。本書で改めて彼女が行ったことを知ると、フランス国民のあれほどの怒りを買ったのも納得がいく。本書の中でいくつかのフランスの建物が紹介されており、今まであまりフランスという国に興味を持っていなかったのだが、いつか訪れてみたいと思った。
また、マリー・アントワネットの母マリア・テレジアが実は非常に魅力的な人間だと知った。機会があったら彼女の生き方にももう少し深く触れてみたいと思った。
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「供述によるとペレイラは…」アントニオ・タブッキ
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
時代はファシズムの影が忍び寄るポルトガル。妻に先立たれた中年の男ペレイラは小さな新聞社に勤めて細々と働くなかで、モンテイロ・ロッシという若者に出会う。
僕自身は知らなかったのだが、非常に有名な作品らしく、「The Girl in the Spider’s Web」
の登場人物として出てきたジャーナリストが憧れる作品として挙げていたことから知り今回読むことになった。
まずは、この時代のスペイン、ポルトガルの情勢を僕自身がほとんど知らなかったことに驚かされた。フランコ政権やゲルニカについて書かれているので1940年前後を描いているのだろう。人々が思ったことを口にすることが非常に危険な政情であることが伝わって来る。
そして、「供述によると」という書き出しが何ども繰り返される不思議な世界観。アントニオ・タブッキという著者の他の作品にも触れていたらもっといろいろな側面が見えてくるのかもしれないが、初めて読むひとにとっては若干読みにくさを感じるのではないだろうか。
そして、物語は終盤に近づくにつれて、さえない中年男のペレイラの行動に少しずつ変化が現れてくるのである。英雄と呼べるような行動ではないが、ペレイラのするささやかな世界に対する抵抗が、むしろ現実的で共感を呼ぶのかもしれない。
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「あと少し、もう少し」瀬尾まいこ
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
中学校の駅伝にかける青春を描く。
追い詰められたときに力を発揮する設楽(したら)、素行は悪いが走ることは好きな大田(おおた)、バスケ部から参加したジロー、吹奏楽部から参加した渡部(わたべ)、桝井(ますい)に憧れて力をつけてきた俊介(しゅんすけ)、そしてずっと陸上部の駅伝をひっぱってきた桝井(ますい)。個性豊かな中学生たちが最後の駅伝にかける様子が、それぞれのそれまでの回想シーンなどと合わせて描かれる。
個人的には不良の大田(おおた)の心の描写が印象的である。すでに先生からも敬遠されるなか、桝井(ますい)からの誘いにしぶしぶ応じて駅伝に参加することになった大田だったが、走ることは好きでみんなの期待を越える活躍を見せるのである。
仲間とともに何かに一生懸命取り組むことのすがすがしさを改めて思い出させてくれる一冊。
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「オプティミストはなぜ成功するか」マーティン・セリグマン
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
成功した人間に共通すること。それはオプティミストつまり楽観主義者であるということ。それでは悲観主義者と楽観主義者という性格の違いはどのように形作られるのか、また悲観主義者は不幸な未来を運命として受け入れるしかないのか。本書はそんな人生に大きく関わる人間の性格を説明する。
楽観主義者が成功しやすいというのは、特に驚くことではないだろう。挑戦をする人間が悲観主義者でなく楽観主義者に多いのは考えなくてもわかることである。それでは本書の何が面白いかというと、楽観主義者と悲観主義者の判別方法と、悲観主義者を楽観主義者に変える方法について細かく書かれている点である。
本書によると、ある人を楽観主義か悲観主義かを判断する方法は、その人の過去のできごとをその人自身に説明させればわかるというのである。
楽観主義者は、うまくいったできごとは自分のせいであり永遠に続くと説明する一方で、うまくいかなかったできごとは他人や環境のせいで一時的なものであると説明するのである。悲観主義者はその逆で、うまくいったできごとは他人や環境のせいで、一時的なもので、うまくいかなかった出来事は自分のせいで永遠に続くかのように説明するのだ。
人の言葉を今まで以上に注意して聞こうと思わせる一冊。
【楽天ブックス】「オプティミストはなぜ成功するか」
「諦める力 勝てないのは努力が足りないからじゃない」為末大
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ハードルのメダリストである著者が、自らの経験を基に、現在の日本のスポーツのありかたについて語る。
成功者は言う「諦めなかったから夢がかなった」。僕らは成功者の言葉を聞くことはたくさんあっても、失敗者の言葉を聞くことは少ない。そのため、「諦めなければ夢は叶う」という間違った考えを信じてしまい、それによって多くの競技者たちが引き際を間違えてつらい人生を送ることになるのである。本書で著者は繰り返し言うのである。確かに成功者は諦めなかったから成功したのだろう。しかし、その裏で諦めなかったけれども成功できなかった人がその何倍も存在するのであるのだと。
こう主張する少数派の言葉に嘘はないが、現実の社会においては、はるかに敗者のほうが多いという事実はわかっておくべきだ。
ちょうど本書を読み終えたころに、世の中はまだ、リオ五輪の余韻に浮かれていた。バドミントンで金メダルととった女性ペアに、4年後もオリンピックを目指してくれるように頼んでいるタレントがいた。このような世の中の態度が、競技者に不要なプレッシャーを与えるのだと感じた。
周囲の人間は、夢を追いかけることばかりを強要するのではなく、その人の人生がよりより人生であるように、別の選択肢を示してあるべきなのだろう。スポーツの世界に没頭できるのはせいぜい人生の1/3程度なのだから。何かに頑張っている人に対して、多くの選択肢を示せる存在でありたいと思った。
【楽天ブックス】「諦める力 勝てないのは努力が足りないからじゃない」
「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
介護人キャシーは「提供者」の世話をする事を仕事としている。そして、ヘールシャムという場所で過ごした日々を思い出すのである。
物語の多くはキャシーの思い出話である。そこはヘールシャムという場所で、キャシーが同年代の子供達と一緒に過ごしている。普通の少年少女のよくある物語のように見えて、読み進めて行くうちに、妙な違和感に気付くだろう。
物語として「今までにない」、という印象。その点だけをとってみても本作品は評価できるだろう。しかし、読者を引き込みページをめくる手を止めるのを躊躇うような物語で亜はない。少年少女たちの退屈な日常を淡々と読み進めなければならない点は、好みがわかれる部分だろう。
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「コンスタンティノープルの陥落」塩野七生
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
東ローマ帝国の首都として栄えたコンスタンティノープルの陥落を描く。著者塩野七生自身「ローマ人の物語」という大作を描いていることからもわかるように、誰もが古代の大帝国としてしっている「ローマ帝国」それが最終的にどのように東ローマ帝国となって、そして滅びたのかを知っている人は少ないだろう。本書はそんな歴史の一部分を、そこに関わった多くの登場人物の目線で描く。
正直登場人物が多いのと、宗教的な背景に対する知識が乏しいせいか、戦がはじまるまでの流れはあまり深く理解できなかった。しかし、一度観光で訪れたことのある、イスタンブールの名所、ガラタ塔やボスポラス海峡など、などが物語中で出てくるたびに、歴史の延長に僕らがいることを実感する。
戦いのなかで印象的だったのが、この戦いで大砲が大活躍したという点である。そして大砲の活躍の目覚ましさ故に、この戦いの前と後では、特に地中海地域では城壁の作られかたが変わったのだそうだ。これから西洋の城を見る時は城壁の形にも注意してみてみたい。
【楽天ブックス】「コンスタンティノープルの陥落」
「六百万人の女性に支持される「クックパッド」というビジネス」上阪徹
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
今や料理をするとなったら欠かせないクックパッド。そのビジネスの根底にある理念を語る。
出版はすでに7年以上前なので新しい本とは言えないが、クックパッドの理念が伝わってくる内容である。Webサービスに関わっている人間であればいろいろ学べる部分があるだろう。まず、そのユーザーインターフェースについてはつぎのように語っている。
UIデザイナー等は常に意識していることであるが、なかなか企業という組織のなかで実現できないというのが実情である。ところがクックパッドは社員全員にその意識が徹底されているというのだから驚きである。また、検索結果でユーザーが求めている物を表示するためのシビアな取り組みも面白い。ただ単に検索キーワードに含まれているレシピを出すだけで満足していてはユーザーはすぐに離れて行ってしまうのだろう。
さらに印象的だったのは、いいレシピを選別する基準として「印刷された回数」という指標を用いている点である。「いいね」や「閲覧数」が簡単に測定できるとどうしても、その数でいいレシピを判断してしまうが、印刷というアナログな手法の回数こそがいいレシピである指標だと言う視点は見習いたい。また、ユーザーの利益になる広告しか掲載しないという強い意思にも感心してしまう。
理想を語ることは誰でもできるがなかなか実現できる企業は少ない中で、それを貫き続けた結果今のクックパッドがあるのだと感じた。自分でサービスと1から作りたいと思わせてくれる
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「メンタルが強い人がやめた13の習慣」エイミー・モーリン
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1時間で読めるような内容の薄い本なのかもしれないという恐れを抱いていたのだが、そんなことはなく、著者が母と夫を亡くすという辛い経験から立ち直ったことで得た13の辞めるべき習慣を描いている。
普段前向きに行きている人でも、思い当たる部分はあるだろう。また、誰でも周囲を見回せば前向きに生きられない人がたくさんいることだろう。そんな人への良き助言者になるためにも本書で書かれていることは役に立つ。
僕がやりがちなのは「孤独を恐れる習慣」である。しかし本書で書いてあるのは1人の時間を一切持たないような、家にいるときに常にテレビをつけてないと耐えられないような人のことであった。適度に孤独な時間があって、程よく人と会うことを求めるのはむしろ理想であるらしい。
僕にとっては周囲のネガティブな人の行動パターンを理解するという意味で本書は学べる部分があった。
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「ターンオーバー」堂場瞬一
オススメ度 ★★★☆☆
高校野球、アメフト、槍投げ、ラグビー、プロ野球、とスポーツのシーンを扱った6つの物語。
スポーツシーンの物語というと、野球だろうとアメフトだろうと、誰もが思い浮かべるような絵になる場面というのはあるだろう。しかし本書が扱っているのは普段はあまりそのスポーツをしない人が知ることのない場面である。
例えば高校野球を扱った「連投」では、高校野球で話題になるエースの連投の問題について触れていて、連投を重ねて神奈川大会の決勝に進む高校のエースに焦点をあてている。連投がピッチャーの肩を壊して、将来のプロ野球の夢を断つ結果になるリスクを承知しながらも、勝つために最善のメンバーで試合に臨みたい監督と、監督に言われたら従うしかない高校生の投手たちの様子が描かれている。高校野球を見る際の、新たな視点をもたらせてくれる。
最後の物語の「右と左」もまた野球を扱っているが、こちらはプロ野球である。すでに下位が決まりながらも最終戦の結果次第には4位になる可能性があるという状況で、先発の決断に悩む監督と、先発を任される可能性のある2人の投手に焦点をあてている。1人はベテラン投手。そしてもう1人は勢いに乗るルーキーである。常に先発を任されてもいい状態で前日を過ごそうとしながらも、連絡のないことにいらだちを隠せない2人のその対照的な過ごし方が面白い。
あっさり読めるにも関わらず、スポーツに対する見方を少し深めてくれる一冊である。
【楽天ブックス】「ターンオーバー」
「生きるぼくら」原田マハ
オススメ度 ★★★☆☆
高校のときにイジメを受けて以来の引きこもりだった24歳の人生(じんせい)は、母が出て行ったことを機に自らの力で生きようとする。目指したのは懐かしい祖母の家だった。
引きこもりだった人生(じんせい)が、子供の頃よく訪れた長野のおばあちゃんの家を訪れる。そこには同じように人間関係に悩む20歳の女性つぼみがすでにいて彼女は人生(じんせい)の腹違いの妹だった。そして、徐々に3人での生活が始まるのである。認知症のせいで人生(じんせい)とつぼみのことを認識できないながらも、2人に親切に接してくれるおばあちゃんによって、人生(じんせい)とつぼみは、やがておばあちゃんの作るお米に興味を持つのである。
少しずつ悪化して行くおばあちゃんの認知症と、その認知症が回復することを願いながら、お米作りに励む、人生(じんせい)とつぼみは周囲の人の温かさに支えながら人間としても成長して行くのである。
読んでいるうちに田舎の家や畑の匂いが恋しくなる。泥にまみれたり強い日差しの下で働くことの美しさや尊さが伝わってくる一冊。
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「さすらいエマノン」梶尾真治
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
40億年の記憶を持つ女性エマノンの物語。
実は本書は「エマノン」シリーズの第2弾で「おもいでエマノン」というタイトルを先に読むべきだったようだが、世界観は十分に楽しめるだろう。
世の中のさまざまな時代、さまざまな場所に現れるエマノンを描いている。それは荒れ狂う猛獣の近くだったり、アマゾンの奥地だったり、汚染された街だったりする。エマノンは多くを語るわけではないが、その行動からは、人間の向かう方向を危惧しているかのようだ。
エマノンシリーズ全体を読んだときにどのような世界観と、どのようなことを読者に伝えられるのかが興味ある。本書一冊だけではただ単に「謎めいた女性」というだけで終わってしまっている気がした。
【楽天ブックス】「さすらいエマノン」
「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」塩野七生
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「ローマの平和」を意味する言葉「パクス・ロマーナ」。紀元前29年から紀元14年までの、カエサルの死後を引き継いだアウグストゥスの時代を描く。
この時代には派手な戦や動乱はない、ただローマの平和の礎を築枯れて行く時代なので、アウグストゥスの地味な政策が続く。そのため人によっては「退屈な時代」と映るかもしれない。
しかし、地味な時代だからこそ、アウグストゥスの狡猾さや人間味が見えて面白い。筆者もそんな地味な面白さをしきりに訴えていて、カエサルとアウグストゥスの異なる面を興味深く描いている。例えば、アウグストゥスが後継者に血統を重んじたという点、そして、カエサルのような陽気さや大らかさ、そして指導力やカリスマ性を持っていなかった点などである。
この時代の分かりやすい一つの大きな動きはゲルマニア侵攻である。カエサルのガリア戦争同様に、ゲルマニア侵攻も進むはずだったのだが失敗に終わる。そんな過程で見えてくるアウグストゥスとティベリウスの関係が面白い。ゲルマニア侵攻で実績を残し、兵士達からも慕われたティベリウスだが、アウグストゥスからはなかなか理解されずにロードス島に引きこもってしまうのである。全体としての印象だが、アウグストゥスはどこか冷淡で、心を開かない人間だったと言う印象を受ける。
ついに紀元に入ったローマ帝国。今後キリスト教などが普及して行くことだろう。皇帝ネロの誕生も本書では描かれていたので、宗教絡みの展開が楽しみである。
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、「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ(中)」
、「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ(下)」
「本日はお日柄もよく」原田マハ
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
友人の結婚式でスピーチライター久遠久美(くおんくみ)のスピーチに感動したOLの二宮こと葉は、別の友人の結婚式のスピーチのために指導をお願いする。そしてそれをきっかけにスピーチライターの道に進むことになる。
スピーチライターという仕事について扱った物語。そもそもスピーチライターという言葉をどれほどの人が知っているだろうか。おそらくアメリカのオバマ大統領の大統領選を機にその言葉を知った人も多いだろう。まだまだ日本はアメリカと比べてスピーチに対する意識も低いようだが、そんな意識を変えてくれる一冊。
本書は、都内で働く一般的なOLの二宮こと葉が、感動的なスピーチに出会い、少しずつスピーチライターの仕事にのめりこんでいく様子を描いている。こと葉の幼なじみの厚志(あつし)が選挙戦へ出馬することから、こと葉のスピーチライターとしての仕事は、少しずつ日本を動かす仕事になっていくのだ。こと葉、厚志(あつし)、久遠久美(くおんくみ)は周囲の人の協力に支えられながら困難を乗り越えて行くのである。
久遠久美(くおんくみ)が困難にくじけそうになること葉に伝えた言葉が素敵だ。
キュレーターでもある著者原田マハゆえに、その物語の視点は新鮮である。本書のなかで描かれるスピーチはどれも感動的で、自分の語る言葉の一つ一つを見直したくなる。最近原田マハはお気に入りの作家になっているが、本書でも改めてそう思った。
【楽天ブックス】「本日はお日柄もよく」
「スピーチライター 言葉で世界を変える仕事」蔭山洋介
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スピーチライターについてその仕事の内容と進め方について書いている。
スピーチライターという言葉が有名になったのは、やはりオバマ大統領の「Yes, we can.」に代表される魅力的なスピーチの数々による功績が大きいだろう。序盤はスピーチが歴史の重要な局面で重要な役割を果たしたいくつかの例を語り、スピーチライターが世の中に認められるまでの過程や、日本とアメリカのスピーチライターに関する意識の違い等を語っている。
中盤以降は実際のその仕事の流れを語っているが、その内容は必ずしも大それたスピーチやプレゼンの場だけでなく、日常の会話で役に立ちそうなものも含まれている。特に「共感を積み上げる」「反感は共感に変えることができる」というのは非常に興味深く、すぐにでも実行したいと思った。
終盤は実際に著者がプロジェクトでスピーチしている様子を詳細に描いている。もちろん、実際の企業などがわからないように多少言葉等は変えられているが、クライアントの気持ちや話し方にあわせて言葉を決めて行く過程や、実際に話す人と、スピーチ決定の担当者との意見の違いによって、内容を変えなければ行けないその過程は興味深い。言葉が持つ華やかさよりもずっと地味で根気を求められる仕事なのだとわかるだろう。
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「人脈につながるマナーの常識」櫻井秀勲
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人脈に繋がるマナーについて著者の経験から語る。
著者の体験のなかからすぐれたマナーを紹介している、日本の文化の深みや、すぐれたマナーの深さを知る事ができるだろう。著者自身はすでに80歳を超えているということだが、Facebookなどのツールも人脈構築の手段として取り入れている点に驚かされる。また、様々なマナーについて説明するなかで、単純に世の中で「これが正しい礼儀」と言われている方法を実行するだけでなく、それを基礎としてどのように相手を気遣って修正するかが大切、と語っているのが印象的だった。
結局「マナー」とは相手、周囲の人を不快にさせない行為、楽しい気分にさせる行為なのである。一般的に知られたマナーに固執するあまり、相手を不快にさせては本末転倒なのである。
今日から行動を少しずつ変えて行こう、と思える一冊である。
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「チューブ生姜適量ではなくて1cmがいい人の理系の料理」五藤隆介
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
理系の目線で書かれた料理の本。
結婚するまで料理をしなかった理系の著者が、妻の妊娠を機に料理に取り組み、上達して行く中で出会った障害を理系の男性にもわかりやすく書いている。著者も書いているように、僕ら理系の人間が料理をしようと思ってレシピを見て困るのは、「適量」とか「少々」という微妙な表現である。また「いちょう切りにする」「下味をつける」などの多くのレシピ本で一言で済まされてしまっている言葉も毎回頭を悩ませる。本書はまさにそんな理系の男性にとって、かゆいところに手が届く一冊である。
とはいえ、作っているものは基本以下のレベルのものなので、料理のレシピとしてはあまり有益とは言い難い。むしろ料理の道具の揃え方、基本的な調味料の役割などについて多くのページを割いて書いている。そのおかげでいくつか今までに疑問に思っていたことが解消された。例えば今までよくわからずに使っていたコショウについて本書ではこう書いている。
また、買った食材の保存方法や、冷蔵庫での冷凍、解凍の方法についても書いている。冷蔵庫の使い方なんて今まで深く考えてこなかったので、新たな視点を与えられたような気分になる。冷蔵庫の冷凍室は以前は上にあったのに最近は下にある、というのはちょっとした小ネタとして使えるかもしれない。
全体的に、書き方が非常に理系的なので、巷(ちまた)にあふれる感覚的な料理本にうんざりしている方にはおすすめしたい。
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「Irene」Pierre Lemaitre
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
パリで2人の女性が惨殺される事件が起こった。Camilleはチームのメンバーと協力してその事件解決に務める。
日本でも「その女アレックス」で有名になったシリーズの第1弾である。ある猟奇殺人を発端としてやがてCamilleは過去に起こった奇妙な殺人事件のいくつかも含めて、ある小説にある殺害シーンと酷似していることに気付くのである。殺人者は何を基準にそのシーンを選んでいるのか、そしてどんな欲望を満たすためにそのような行為を繰り返しているのか、大学の教授や、本屋の店主などの協力を得て、殺人の現場に共通するシーンを描写している本がないか突き止めて行く。
やはり、小説に描かれた殺人シーンに似せて殺人が行われる、というのが本書の際立つ点だろう。見方を変えれば、すでに残酷な殺人シーンは世界中で書き尽くされている、と言う事もできる。本書で触れられているその殺人シーンを描いた小説が実在するものなのか非常に興味がある。
さて、物語の全体像は猟奇殺人鬼を追いつめて行く刑事の物語、とまとめることができるかもしれないが、実際には刑事Camilleの幼少期や恋人との時間や心の内を多く描写されている点も面白い。特に、興味深いのがCamilleは女性も見下ろさなければならないほど背の低い人間であるということだ。小説のような見た目を重視しない媒体で、なぜ主人公をそのような設定にしたのか不思議である。また、Camilleの母親が画家だったため、Camilleは一時期本気で画家になるために絵画の勉強に打ち込んだという、そんな経歴が事件解決にどのように関連して行くのか考えながら読み進めるのも面白いだろう。
またCamilleと妻Ireneとの関係も細かく描かれており、Ireneが妊娠した事によって2人の関係は少しずつ変わって行く。そんな恋愛模様も楽しめる。若干、結末が予想できるかもしれないが、パリを舞台にした警察物語に触れる機会があまりないので、全体的に新鮮に感じた。