「赤穂浪士」大佛次郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

「赤穂浪士」や「忠臣蔵」というタイトルは聞き慣れており、47人の武士が復讐を果たす物語は知っていながらも、ここまで語り継がれている物語に一度も触れたことがないことに疑問を感じて本書を手に取った。そもそもどうして、ただそれだけの単純な物語が上下巻含めて1200ページを超える物語になり得るのかという点も興味深かった。
実際には単純に復讐しようとしてすぐにそれを成し遂げるのではなく、発端となる出来事から実際にその復讐を成就するまで思っていた以上に長い月日が流れていることに驚いた。また、そんななかで、大将である内蔵助(くらのすけ)が行った根回しや、ともに行動する同志、単純なその場の怒りや苛立ちから立ち上がったものを含まぬように、言葉を変え、行動を変えて、本当に強い意思を持った者だけに絞っていく様子が印象的である。また、命を狙われる吉良上野介(きらこうずのすけ)の周囲の人間の思惑もおもしろく、どれも歴史上の事実だからこそある現実味にあふれている。
残念なのは、歴史上の事実だからこそなのか、登場人物が多く、またすでに100年近くも前に書かれた本ということで、理解しづらい部分も多かったということ。全体の内容を考えると、もう少し短くまとめられそうな気もする。
【楽天ブックス】「赤穂浪士」

「夏美のホタル」森沢明夫

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
プロの写真家を目指す相羽慎吾(あいばしんご)は恋人の夏美とともに年老いた母と離婚してその息子の暮らす店を見つけ、そこを拠点に写真を撮ることになる。
序盤は、慎吾と夏美、そのお店のヤスばあちゃんと、息子の地蔵さん(笑顔からそう呼ばれる)によるほのぼのとした田舎生活が描かれている。ホタルやオイカワなど、慎吾と夏美が田舎町で遊ぶシーンは懐かしい子供時代を思い起こしてくれるだろう。
物語のなかでやや異質な存在なのが同じ村に住んでいる仏師雲月(うんげつ)の存在である。雲月(うんげつ)の彫る仏像は、まるで生きているかのような躍動感があるのだという。天才と呼ばれる雲月(うんげつ)であるが、妻と別れて村に移り住み、慎吾や夏美と出会うことになる。職業柄ぶっきらぼうな態度をとりながらも、少しずつ打ち解けていく様子が微笑ましい。
やがて、地蔵さんの過去が少しずつ明らかになっていく。時間をともにすることで2人に家族のような親しみを感じる慎吾と夏美はできるかぎり力になろうとするのである。
夏の匂いが漂ってくる物語。
【楽天ブックス】「夏美のホタル」

「シューマンの指」奥泉光

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
語り手「私」は、古い友人から指を失ったはずの天才ピアニストの長嶺修人(ながみねまさと)が復活したことを聞く。信じられない思いから、長嶺修人(ながみねまさと)が指を失うまでの出来事を振り返る。
物語は、音楽に青春をかけた3人の男子高校生、語り手である「私」、長嶺修人(ながみねまさと)と鹿内堅一郎(しかうちけんいちろう)を中心に進む。圧倒的に音楽的能力の高い長嶺修人(ながみねまさと)が2人に持論を語るなかで、音楽には僕ら一般の人間が理解できないような、音楽家だけがわかる世界があることが伝わって来る。シューマンを中心に作曲家のことを語るシーンが多く、音楽の知識が少ないことを残念に思う一方で、実際に作曲家やその音楽について知識を持っている人ならどの程度本書で長嶺修人(ながみねまさと)が語っていることに共感するのだろうかと興味を持った。
そして、ある春休みの夜、3人が目撃した殺人事件を機に物語は動き出すこととなる。
音楽という要素を多く含む点は新しく、いろんなクラシック音楽を聴いてみたいと思わせてくれたが、結末はありがちな展開に感じてしまった。
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「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて 」クレイトン・クリステンセン/マイケル・レイナー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
企業が破壊的イノベーションへ対抗するための方法を語る。
まず、持続的イノベーションと破壊的イノベーションという言葉を用い、ソニーやアップルが行ってきたイノベーションを説明し、相互依存型アーキテクチャとモジュール型アーキテクチャという言葉で、企業が作る商品を説明している。世の中の多くの企業の栄枯盛衰が、この考え方で説明できる点が面白いが、実際にはこのあたりの内容は「イノベーションのジレンマ」に含まれる部分なのだろう。
中盤以降は、そんな今までわかってても避け方のわからなかった、破壊的イノベーションを避けるために、持続的イノベーションの状態にある企業はどのような取り組みをすべきなのかを語っている。
とてもすべてが理解できたとは言い難いが、世の中の流れについて新たな視点をもたらしてくれる。
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「教育×破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に改革する」クレイトン・クリステンセン/マイケル・ホーン/カーティス・ジョンソン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
破壊的イノベーションの説明を用いて、教育がいつまでたっても進歩しない理由と、教育の今後の進化すべき方向性を語る。
印象的だったのは教育のモジュール化という考え方である。現在の教育はすべて、それ以前の学んだことが理解できていないと、その次の内容を理解できない仕組みになっており、それが問題だというのである。例えば、足し算、掛け算を理解していないとその先にある、分数の計算が理解できないために、すべての生徒が同じ順番で学んでいかなければならないために教育を非効率にしているのだという。つまり、教育のプログラムは相互依存性が強いのだ。
そんななか解決策として本書が主張しているのは、教育をモジュール化し、1人1人が独立したコースを自由に履修し、必要な時間をかけて理解するという方法である。それによって全員が同じ授業を受ける必要もなく、全員が同じ内容に同じだけ時間をかける必要もないというのである。確かに、以前であればそもそも「先生の数が足りなくて実現できない。」で終わっていしまったであろう話が、現在であればインターネットを使うことで実現できそうな気がする。
教育の発展だけでなく、経済的なイノベーションの考え方を用いて教育界を語っている点が面白い。
【楽天ブックス】「教育×破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に改革する」

「彼が通る不思議なコースを私も」白石一文

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
霧子(きりこ)がある日出会った死神のような男性、椿林太郎(つばきりんたろう)は教育に情熱を注ぐ男だった。やがて2人は結婚しともに生きることとなる。

白石一文は人生を描くのが非常にうまい。本作もそんな作品を期待して手に取った。実は霧子(きりこ)が出会った椿林太郎(つばきりんたろう)は人の人生の長さがわかるという。そんな彼が結婚相手として霧子を選んだ理由はなんだったのだろう。彼の能力が霧子との結婚にどのような結末をもたらすのかが、物語の焦点となる。

貶すほどの内容ではないが、期待に応えてくれるような印象的な内容ではなかった。人の残りの人生の長さが見えるというのは、最近読んだ百田尚輝の「フォルトゥナの瞳」と重なる部分が多いからなのかもしれない。
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「Leaving Everything Most Loved」Jacqueline Winspear

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
インドから家庭教師としてイギリスに移住してきた女性が狙撃された。誰もが羨むような美しい女性だったのも関わらず、なぜ殺されなければならなかったのか。Maisieはその女性の兄の依頼によってその真実を調査する。
調査の過程でMaisieはその女性Ushaが誰からも好かれるような女性だったことを知る。誰からも好かれるような女性なら、殺人の動機は一体どんなものだろう。と思うところだが、本書では「誰もが羨むような眩しい女性は、いるだけで妬みを買う」という視点にも触れている。人間の醜い部分を見せてくれるようで興味深い。
また、事件の解決へと調査をすすめるなかで、Maisieの大きな決断をする。結婚を求めている交際相手Jamesとの関係に区切りをつけるため、またメンターであり亡くなったMauriceの教えに習って、Maisie1人で旅に出ることを決意するのである。事件の解決と同じぐらい、Maisieのこの決断が本書の焦点だと感じた。そして、そのために事務所を閉めて、Maisieと共に働いていたSandraとBillyもそれぞれの道を進むこととなるのである。
最終回のような一冊だが、まだ続編はあるようだ。

「大事なことに集中する 気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法」カル・ニューポート

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ディープワークをするための方法について語る。
本書ではディープワークを「あなたの認識能力を限界まで高める、注意散漫のない集中した状態でなされる職業上の活動。」と定義し、その時間を多く作り出すことこそ質の高い仕事に繋がるとしている。
きっと誰もが、仕事に「没頭」してしまったことがあるのではないだろうか。本書でいう「ディープワーク」とはまさにそんな仕事への「没頭」状態のことである。しかし、誰もが経験から知っている通り、残念ながらそんな「没頭」状態は頻繁に起きることではないし、起きたとしても長く続くものではない。どのような環境が整えばそのような状態になるのかを、本書はいろいろな例を交えて説明している。
多くの人がディープワークの真逆であるシャローワークに多くの時間を奪われているのは誰もが経験的に知っていることだろう。シャローワークの代表的な例はもちろんメールのチェックである。インターネットの普及により、大量のメールが毎日送信されるのが日常的なこととなり、毎日すべてのメールをチェックするだけでもかなりの時間がかかってしまうのである。
本書が語っている興味深いことの1つは、過去に行われた実験によると、シャローワークは世間一般に人々が思っているほど重要ではないということである。シャローワークを減らすことで、労働時間を減らしながらもディープワークの時間を増やして成果を出している企業の例は非常に興味深い。
全体的には、僕自身が普段仕事の質を上げるために行っていることや、経験から感じていることを裏付ける内容であった。
読者にとって仕事の質をあげるためのヒントになるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「大事なことに集中する」

「エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする」グレッグ・マキューン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

エッセンシャル思考とは、仕事における断捨離やミニマリズムと言えるかもしれない。依頼される仕事をすべて引き受けるから、常に忙しく、集中すべき仕事に集中できず、自分の能力も上がらない。重要なのは自分にしかできない仕事を優先し、それ以外の依頼に対して「No」と言う能力を身につけることである。
本書で印象的だったのは90点ルールというもの。仕事を選ぶときでも、服を選ぶときでも、自分で点数をつけて90点に満たないものはすべて0点と扱うというものだ。「迷ったら捨てる」「迷ったら行かない」「迷ったら買わない」「迷ったら受けない」という感覚が正しいのだろう。
「エッセンシャル思考」とは仕事に忙殺され、朝から晩まで働きながらも満足のいく人生が送れていない多くの人にとって、そんな生活から抜け出す鍵となるのではないだろうか。本書は仕事について書かれているが、実際エッセンシャル思考が役に立つのは仕事に限った話ではない。友人も、趣味も、部屋に置く家具も、エッセンシャル思考で選び取ることで豊かな人生が開けるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「エッセンシャル思考」

「幸せを届けるボランティア 不幸を招くボランティア」田中優

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
さまざまなNGO活動に長年関わってきた著者がボランティアについて語る。

「ボランティア」=「善い行い」とすぐに結論づけてはいないだろうか。実際僕自身もいくつかのボランティアを経験するまで、ボランティア活動に参加する人が多ければ多いほど世の中はよくなると信じていた。しかし最近では、本当に世の中の役に立つことであれば、その「善い行い」に従事する人にお金が支払われる仕組みができるはずだし、それができてこそその「善い行い」は継続できる、と信じるようになった。それでは実際ボランティアの現状とは、そこに長年関わってきた人から見るとどのように見えるのだろうか。そんな思いが本書に導いた。

ボランティアのいろんな側面について触れられているが、印象的だったのは「生活できない人を増やす仕組み」という考え方である。

「図書館ボランティア」で図書館を運営するようになると、その分だけ司書の人が正規の職員として雇われなくなることが多い。

無料で何かに従事することは、そのことに有料で従事していた人の生活の手段を奪ってしまうというのである。その他にも、ボランティアによって依存心の強い人を生み出す可能性があることも覚えておくべきだろう。災害ボランティアなどでは、被災者が、あとは自分でなんとかできる程度まで手伝ったら、適度なタイミングで撤収することこそ必要なの。つまり、ボランティアをすることを目的にするのではなく、本当に相手の未来まで考えて行動すべきなのである。

また、末尾にはいくつかのボランティア活動が「取り組みやすい活動ガイド」としてまとめられているので、今後の参考にしたい。これからいろんな活動に関わりたいと考えるなかで、役立つ視点を提供してくれた一冊。

【楽天ブックス】「幸せを届けるボランティア 不幸を招くボランティア」

「The Day of Jackal」Frederick Forsyth

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1963年フランス、「アルジェリアは永遠にフランス」をモットーに活動する秘密軍組織OASは大統領シャルル・ド・ゴールの暗殺を企てる。すでに多くの幹部が警察に目をつけられている中、暗殺を実現するための唯一の方法が、外国人の殺し屋を雇うことだった。その殺し屋のコードネームこそジャッカルなのである。

空港の名前にもなっているシャルル・ド・ゴールだが、実際にはその在任中にどのような政策を行ったのかをほとんど知らなかった。また、アルジェリアがもともとはフランス領だったことは漠然とした知識としては持っていながらも、どのように独立したかをこれまで気にかけたこともなかった。

本書は暗殺を依頼されたジャッカルが暗殺のために入念な準備をする様子と、その暗殺を防ぐ任務を課せられたClaude Labelが、わずかな手がかりを元にすこじずつジャッカルを追い詰めていく様子が描かれている。いくつものパスポートを用意し、いくつもの変装を用意して厳重に警戒されているであろうド・ゴールに近づくための準備をするジャッカルも、また、外見的な特徴しかわからないじょうたいで、海外の警察のつながりをもとに暗殺者を絞り込んでいくLabelも、まるで本当に起こった真実を描写しているようで、とても1971年に書かれた小説とは思えない。

概要として語ってしまうと、「暗殺者とそれを捕まえる刑事」となってしまうが、その描写の緻密さは一読の価値ありである。

アルジェリア戦争
1954年から1962年にかけて行われたフランスの支配に対するアルジェリアの独立戦争。(Wikipedia「アルジェリア戦争」

「人見知りでも「人脈が広がる」ささやかな習慣」金澤悦子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
僕自身人見知りだとは思っていないが、アルコールが苦手なので飲み会に参加する回数が一般的な人に比べて少なく、それによって人脈作りが不利だと感じている。何かその不利な部分を補う秘訣のようなものが見つかればと思って本書を手に取った。
すでにやっていることから、大事だとは思っていてもできてないことから、考えたことすらなかったようなことまで様々な手法、心がけが書かれている。
印象的だったのは、パーティなどで困った時。そんなときは、人に話しかけられなくて孤立している人を束ねる役割をするというもの。確かにこの方法だと、無理に話の輪のなかに入る必要もないし、孤立している人にとっては救世主として印象づけられることになるだろう。
またSNSでのイベントの誘いが増えた昨今、断りのメッセージもどうしてもさらっとしたものになりがち。しかし、単純に断るだけでなく、断っても別の人間にシェアすることによって自分の価値をあげられるのだとか。
いずれも普段の心がけしだいだが、人との接点を持っていろいろ試してみたいと思わせてくれる一冊。
【楽天ブックス】「人見知りでも「人脈が広がる」ささやかな習慣」

「Webサイト設計のためのペルソナ手法の教科書」Steve Mulder,Ziv Yaar

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Webサイト設計のためのペルソナの作り方についてまとめている。
ペルソナ設計という考え方は昨今多くの企業で認識されるようになってはきたが、その設計の仕方となるとよくわからない。本書はそんな人のためにペルソナの作り方を丁寧に説明している。
まず、ペルソナを作成するためのユーザー調査の油断として、定性的なアプローチ、定性的なアプローチと定量的な検証、定量的なアプローチという3つのアプローチがあり、それぞれの長所と短所を理解すべきだろう。またもう一つの軸として本書ではユーザーの発話とユーザーの行動という指標を用いている。定性的な調査は「なぜ」を明らかにし定量的な調査は「何が」を明らかにする、という言い方もしているがこちらのほうがわかりやすいかもしれない。
本書はそんな考え方の大枠だけでなく、調査の方法、質問の作り方、そして調査結果をもとにどのようにしてどれだけのペルソナを作ったらいいかまで、非常にわかりやすく解説している。実際にペルソナ設計の際に、常に手元に置いておきたいと思える内容である。
後半では作ったペルソナをどのようにプロジェクトに組み込んでいくかの方法が書かれている。ペルソナは作って終わりではなく、プロジェクトに関わる人が常にペロソナの存在を意識するようになってこそ成功なのである。
【楽天ブックス】「Webサイト設計のためのペルソナ手法の教科書」

「ダメだ!この会社 わが社も他社も丸裸 」山崎元/倉田真由美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
11回の転職をした著者が自らの経験を基に、いい会社や悪い会社の傾向について、会社勤めをしたことのない漫画家倉田真由美と共に語る。
「こんな会社はだめだ」と端的に言い切るところが面白い。いくつか挙げると次のようなものだ

意味不明の肩書きが多い会社
役員フロアがゴージャスすぎる会社
上司・同僚を肩書きで呼び合う会社に未来なし

そんな表面的なことばかり書かれているかというとそんなことはない。本書で語られていることのなかで印象的だったのは、悪い会社も務める人の心の持ちようによってはいい会社になり、またその逆もありえるというところ。結局大事なのは自分の価値観に見合う会社を選ぶということなのだろう。こうやって書いてみると当たり前のようのことのように思えるのかもしれないが、しっかりと自らの価値観を見極めるまでにはある程度の年月を、価値観の合わない会社で働く必要があるのだ。
本書で書かれていることの多くが真実であったとしても、自ら経験するからこそしっかり理解できることなのだろう。それでも知識として持っておいて損はない。
【楽天ブックス】「ダメだ!この会社 わが社も他社も丸裸 」

「コンサル一年目が学ぶこと」大石哲之

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
外資系のコンサルティング会社出身者はその後さまざまな分野で活躍している。そんな彼らが1年目に学ぶ、その後の人生にずっと影響を及ぼすような内容とは何なのかを語る。

本書は4つの章に分かれている。「話す技術」「思考術」「デスクワーク術」「ビジネスマインド」である。どれも非常に論理的な考え方なので、普段から論理的な考え方をしている人にとっては、当たり前のことばかりなのかもしれないが、改めて自分の行動を見直し、それをさらに磨くためには本書はいいきっかけになるのではないだろうか。

話す技術のなかで、「PREPの型に従って話す」というのがある。PREPとはPoint、Reason、Example、Pointで、まず結論を話し、その理由を説明し、具体例を語った上で再度結論を繰り返す、という流れである。「結論を先に話す」というのはよく言われることではあるが、改めて自分自身の本日、昨日の職場での言動を振り返ってみるとすべてにおいてそのように実行できていたかは怪しい。

また「Quick and dirty」という考え方も、常にできているとは言い難い。「Quick and dirty」とは完璧ではないものでも早く人に精査させることによって軌道修正を行うということである。必要以上に間違ったものを作り込んで無駄な時間とエネルギーを使うことを避けるために非常に有効な考え方で、アジャイル開発などでも取り入れられている考え方だが、人の目を考えるとついつい作り込んでしまいがちである。

コンサルタントがなぜあれほど高い給料をもらえるのだろうか、というところに興味を持って本書を手に取ったのだが、彼らも特別なことをやっているわけではないということがわかった。本書では多くの参考図書が紹介されていたのであわせて読んでみたい。

参考図書
「まだ「会社」にいるの?」山口揚平
「得点力を鍛える」牧田幸裕
考えながら走る グローバル・キャリアを磨く「五つの力」」秋山ゆかり
なぜゴッホは貧乏でピカソは金持ちにだったのか?」山口揚平
「観想力・空気はなぜ透明か」三谷宏治

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「僕の隣で勝手に幸せになってください」蒼井ブルー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
写真家である著者が発するツイートをまとめた本。
写真家ということで若い女性と接する機会が多いせいか、恋愛や男女関係に関するツイートが多く、ときどきはっとさせられるような独特な視点のツイートがあって面白い。
印象的なツイートはたくさんあったのだがなかでも個人的なヒットを3つ挙げておく。

電車で隣に立っている女子。吊り革を持つ手の甲にペンで「おとん誕プレ」と書かれていて、この時点で抱きしめたいし、もう一方の手には大きめのユニクロの袋を持っていて、おとんに贈るダウン的な物だと考えたら心まであたたかいし、おとんの子育て間違ってなかったし、結婚してないけど娘欲しいし。
まだ若いのに夢を叶えた人のこと尊敬する。もう若くないのに夢を叶えようとしている人のこと尊敬する。
今日が終わって欲しくなくて寝ようとしないの、明日ごと終わるからやめた方がいい。

ちょっとハゲを気にするツイートが多く、そこがなんか同じ男として共感できる。
【楽天ブックス】「僕の隣で勝手に幸せになってください」

「指を置く」佐藤雅彦/斎藤達也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
指を置くことで意味を持つ絵や図形をまとめている。
1時間ほどで読み終わる内容ではあるが、そのコンセプトを理解するのは中々難しい。冒頭で本書はこおように語っている。

通常の絵画や彫刻などの美術の鑑賞では、作品の前面に向かうのは、あなたの眼です。手や指は関与してきません。しかし、本書では自分の存在を敢えて、コンテンツに参加させます。そのとき、果たして自分の存在は、メディアへの没入感にどのような干渉を及ぼすのでしょうか。

僕が本書に辿り着いたのはユーザーインターフェースデザインの関連からだった。スマートフォンのタッチパネルがメインであるユーザーインターフェースデザインは、まさに本書の言う「自分の存在がコンテンツに参加したデザイン」である。そのための手がかりになるものが本書から得られたかどうかはまだわからないが、引き続き模索し続けたいと思った。
【楽天ブックス】「指を置く」

「薬剤師は薬を飲まない」宇多川久美子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
薬を飲まない薬剤師である著者がその理由を語る。
著者によると、世の中の年配者の多くがやっている薬を常用している状態というのはおかしいのだそうだ。なぜなら、薬が病気を治してくれるなら一定の期間飲めば薬は必要なくなるはずなのだから。実際には多くの場合、薬はただ症状を抑えるもので、完治させるものではないのだという。痛みや苦しみが発生する根本の原因を解決しないで、場当たり的に薬に頼って症状を抑えている限り、永遠に改善することはない。薬を手放して、自然治癒力や自己免疫力を維持することこそ健康な生活を送るために必要なのだそうだ。
言われてみればどれももっともな内容でたびたび頭痛薬を飲む自らの生活を反省する部分もあると感じた。内容としてはもっと年配の人に向けられて書かれているように感じたが考え方として持っておくことに早すぎるということはないだろう。
後半は健康な体を育むためのエクササイズも紹介している。薬剤師のエクササイズがどれほど本書の読者の役に立つかは疑問である。健康のための運動を日常的に行っている人にとっては後半は退屈かもしれない。
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「The Skin Collector」Jeffery Deaver

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2016年このミステリーがすごい!海外編第1位。

ニューヨークに古くから残る地下道。そこから侵入し人を殺害し、その肌にタトゥーを掘るSkin CollectorにRhymeが挑む。
今回の犯人は本シリーズの最初の作品Bone Collectorの犯人に強く影響を受けているようで、Skin Collectorと呼ばれている。本書のなかでもBone Collectorの内容が何ども触れられているが、正直もう3,4年も前に読んだ話なのでほとんど覚えていないのが残念である。Bone Collectorの物語のとき少女だったPamとAmeliaの関係が本書では1つの焦点となっている。立派に大人になって巣立っていこうとするPamにAmeliaは嫉妬し、その事実を素直に受け入れられないのである。

また、一方でWatch MakerとRhymeのやり取りも前作より続いている。信じられないことに刑務所で亡くなったWatch Makerであるが、その共犯者を暴き出すためにその葬儀に身分を隠してPulaskiを送り込むのである。

正直ややマンネリ感が出てきた。捜査の手法が変わらないのは仕方がないとはいえ、物語自体に新しさが感じられなくなってきた。これから本シリーズを読もうと思ってい人には第3作、4作の「Stone Monky」「Vanished Man」あたりがもっとも面白いと伝えたい。それ以上は特に時間を割いて読む必要はない気がしてきた。

ミノル・ヤマサキ
日系アメリカ人建築家。ワシントン州シアトル出身の日系二世。ニューヨークの世界貿易センタービルの設計者。(Wikipedia「ミノル・ヤマサキ」

ヘイマーケット事件
1886年5月4日にアメリカ合衆国シカゴ市で発生した暴動。後に国際的なメーデーが創設されるきっかけとなった事件。(Wikipedia「ヘイマーケット事件」

「問題解決に効く「行為のデザイン」思考法」村田智明

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デザインの考え方について語る。
例えばハンガーにスーツをかける場合、ハンガーはズボンを先にかけてから上着をかけるようにできているが、それが人間のスーツを脱ぐ順番と一致しているだろうか。本書はそんなわかりやすい事例を盛り込みながらデザインについて語る。多くの人は「デザイン」というと、色や形を作る「デザイナー」と呼ばれる人だけが気にしていればいいことのように聞こえるが、本書を読めば、実際には世の中のすべての人が考え、関わることのできる分野なのだということがきっと伝わるだろう。
普段からデザインという業務に関わる人にとっても、改めて思い出させられる内容がいくつか含まれている。例えば「デザインは使う人になりきって考える必要がある」という考えは、言葉にすれば当たり前だが多くの人が忘れがちである。また「時間軸を考える」という考えもついおろそかになりがちである。
普段のデザイン業務を見直したくさせてくれる一冊。
【楽天ブックス】「行為のデザイン」思考法