「教養としての投資」奥野一成

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
投資会社を運営する著者が、投資について語る。

短期で株を売買することを投機、買うべき株を見極めて長く持つことを投資として分けており、投機をギャンブルとして、長く持つ投資を勧めており、投資のメリットデメリットを語っている。特に株を選択する際に、参入障壁があるかないかを重視するという点が印象的だったが、現在の状況でETFやインデックスファンドをメインに考えないで企業の株を買うことを重視するのは若干不自然に感じた。

日本人全体を投資嫌いと一括りにしているあたりも残念で、投資に関してふわっと全体的にさわっただけという印象である。世の中に投資の本が溢れていることを考えると、本書を読む特別な理由はないと感じた。むしろ複利の力を利用して豊かな人生を送ることを学ぶなら有名な書籍「FIRE」などが深く掘り下げているし、本書は読者のターゲットが定まらないまま、特に整理せずに著者が思っていることを羅列しただけという印象で、ただ本を出すために書いた著者のため本といった印象で、誇張表現も多く、誰かを幸せにすることを目的に書いていないのが伝わってくる内容だった。

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「ぼくたちは習慣で、できている。」佐々木典士

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
習慣の重要性と習慣を身につけるための方法について説明する。

どちらかというと一般の人に比べて、僕自身は、自分のやりたいことを習慣化するのが得意な方だと思うが、さらにその純度をあげたいと思い、本書を手に取った。

著者が見聞きした著名人の言葉や研究結果を引用し、著者自身の言葉や体験談で補足するという流れで、習慣の重要性や、習慣を身につける方法をひらすら説明していく。

決して、それぞれの章で語っていることが信憑性が薄いわけではないのだが、ひたすら著名人の言葉と自分の体験談を同じような流れで繰り返しており、残念ながら本全体から大きな流れや哲学が感じられない。また、特に著者自身が興味深い研究をしてその結果を共有しているわけでも、なにか偉大なことを成し遂げたわけでもなく、ただただ、僕らと同じように習慣を実践する一人の人間に過ぎず、著名人の引用を繰り返しているだけなので、あまり言葉に重みが感じられない。

著者自身、ヨガやジムへ行くこと、マラソンや、早起きの習慣があり、それ自体はいいことだと思うが、著者の体験談は同じ話の繰り返しで、もう少し一冊の本として、強弱や芯の通った構成にできないものかと感じた。

むしろ本書で語っているようなことは「脳を鍛えるには運動しかない」や「ファスト&スロー」「GRIT やり抜く力」などすでに世の中から認められたすばらしい書籍があるので、そちらを読むことをおすすめしたい。本書のように表面をなぞるだけでなく、その本質を理解できることだろうと感じた。

僕自身読みやすさやとっつきやすさを重視した本が溢れている昨今、このような表面をなでただけのような本に時間を費やすことを、どのように避けていくかは、しっかり考えるべき問題だと感じた。

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「十角館の殺人」綾辻行人

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
半年前に殺人事件が起きた孤島に、大学のミステリー研究会の7人が宿泊することとなる。好奇心から宿泊を決めたが、やがて1人ずつ殺されていくこととなる。

最近のミステリーというジャンルはすでに非現実感は許容し、登場人物の中に犯人がいなければならない、とか、探偵が真相を解明する際の手掛かりは読者の目に触れてなければならない、などの暗黙のルールのもとに作られる、すでに小説とは別ジャンルの作品のように感じる。そんな非現実なミステリーの世界に久しぶりに触れたいと思い、最近よく名前を聞く本書にたどり着いた。

物語はある大学のミステリー研究会の7人が、半年前に凄惨な事件が起きた島に好奇心から宿泊することから始まる。携帯電話のない時代の物語なので、外部と連絡の取れない環境になるというミステリーの王道である。やがて予想通り1人ずつ死を遂げていくのである。島の外でも、元ミステリー研究会のメンバーが謎の手紙を受け取ったことをきっかけに真相を探る、という意味でミステリーとして若干ルールからはずれている気もする。

特に新鮮さも驚きもなかったが、本書は著者綾辻行人のデビュー作品でありかつ30年も前の作品なので著者の作風を判断するにはまだ早いと感じた。またミステリーに触れたくなったら手に取るかもしれない。

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「錆びた滑車」若竹七海

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
女性探偵の葉村晶(はむらあきら)は老女の尾行を依頼され、やがてある青沼ミツエとうい女性のアパートに移り住むこととなる。

単純な調査の依頼からやがてアパートに移り住み、そこでミツエの孫のヒロトと出会う。ヒロトは父親と一緒のところおを交通事故に会い、ヒロトは重傷を負い父親は無くなった。事故前後の記憶が失われているヒロトは、なぜその場所に父親と一緒にいたのかを知ろうと晶(あきら)に頼むのである。本書はそんなヒロトの事故前後の謎を解き明かしていくまでの様子を描いている。

葉村晶(はむらあきら)がいろんな場所を移動し、いろんな人に聞きながら少しずつ真実に近づいていく様子を描いていて、実際の探偵業なんてそんなものかもしれないが、山や谷がなく、登場人物もかなり多いので読みにくい。

もう20年以上前になるだろうが、初めて読んだ著者若竹七海の作品「遺品」がインパクトがあっただけにちょっと残念である。とはいえ本書自体それなりの評価を得ているので、葉村晶のシリーズを通して読むとひょっとしたらまた違った印象を持ったのかもしれない。

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「リカーシブル」米澤穂信

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
中学生の越野ハルカは母と弟サトルともに母の故郷へ引っ越してきた。その町ではタマナヒメという未来を予知できる女性の伝説があった。

寂れた地方都市で起きる不思議な物語。ハルカとサトルは子供でありながらも新しい環境、新しい友人に馴染もうとするが、そこには地方都市特有の、外から来た人間に対する敵視と、地元に長く住んでいる人のみが知る暗黙のルールが存在するのであった。

そんななかサトルの不可思議な言動から、少しずつハルカはタマノヒメの伝説に興味を持っていくのである。

中学生の女性が主人公ということで、懐かしい感じがする。特に物語として新鮮な点はなかった。最近の米澤穂信の作品には人間の心の深い部分を描くような鋭さを感じていたのだが、本書はそこまで期待に沿うものではなかった。

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「お父さんが教える13歳からの金融入門」デヴィッド・ビアンキ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
生きていくためにはお金の知識は避けて通ることはできない。そんなお金について著者が子供に教えるために書いたのが本書である。

子供向けに書かれた内容ではあるが、大人でも知らないようなこともある。何かしら学ぶ部分はあるだろう。金融の最初の一歩として読むといいかもしれない。ただ、残念ながら、すでに株式投資やFXなどを日常的にやっている人にとってはあまり、実戦で役立つような新しい知識は張っていないかもしれない。

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「私が殺した少女」原尞

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
第102回直木三十五賞受賞作品。

私立探偵の沢崎(さわざき)は電話で依頼を受けてある家を訪問したところ、誘拐事件の犯人として警察に拘束される。やがて、犯人からの要求と、被害者の父親の要望によって身代金の受け渡しを担うこととなる。

すでに出版から30年以上経過している作品ではあるが、過去の直木賞作品を漁っているなかで本書にたどり着いた。探偵を主人公としていたり、誘拐や身代金という言葉が飛び交うあたりに時代を感じる。

身代金は運ぶことからやがて事件にどっぷり浸かることとなり、警察と並行して真実を暴こうとしていく。そんななか少しずつ被害者の家庭の複雑な事情や人間関係が見えてくる。

全体的に物語がゆっくり進むのはこの著者のスタイルなのだろう。個人的には著者特有の凝った言い回しが気になるが、この辺は読者によって好き嫌いが別れるかもしれない。主人公も含め淡々と描くのではなく、もう少し感情が描かれていたら面白くなるのではないかと感じた。

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「むらさきのスカートの女」今村夏子

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
第161回芥川賞受賞作品。

近所で「むらさきのスカートの女」として有名な女性がいる。そんなむらさきのスカートの女と友達になりたい女性、自称「黄色いカーディガンの女」がむらさきのスカートを観察していく様子を描く。

むらさきのスカートの女が、黄色いカーディガンの女と同じホテルの清掃員としてアルバイトを始めたことで、少しずつその正体が明らかになっていく。むしろ本書の面白さは、むらさきのスカートをひたすら追い続ける黄色いカーディガンの女のほうだろう。2人はこうして同じ職場で働くのだが、2人の背景は女性であることと、あまり裕福でないことしかわからない。なぜ彼女が、そこまでむらさきのスカートの女を追い続ける時間的余裕があるのか。むらさきのスカートの女が少しずつ正体が明らかになるにつれ、実は普通の賢い女性であることがわかることによる、反対に黄色いカーディガンの女の異様さが少しずつ目立ってくるのかもしれない。

終盤に向かうにつれ、むらさきのスカートの女の職場の人たちとの人間関係が少しずつ悪化していき、黄色いカーディガンの女もそこに大きく関わることとなる。

ひょっとしたら読み解けていないテーマがあったのかもしれないが、自分にはそれが見えていない気がする。芥川賞受賞作品ということで何かもっと深い、異なる解釈があるのかもしれない。

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「君が夏を走らせる」瀬尾まいこ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
高校生の大田は結婚して子供を産んだ先輩に一歳の娘鈴香(すずか)の子守のバイトを頼まれる。

最初は仕方なく鈴香(すずか)の子守をしていた大田も少しずつ子守に慣れてきて、やがて少しずつ鈴香(すずか)に愛情を感じ始め、また親に対する考え方も変わっていく様子を描いている。

「あと少し、もう少し」の続編という位置付けだが、共通しているのは大田を含む一部の登場人物だけで、物語の雰囲気もかなり異なる。子供との愛情を描いた話ではあるが、正直訴えたいポイントがわからずにあまり楽しめたとは言えない。大田の更生の物語か親子の愛情の物語のどちらかに倒した方が物語として分かりやすかったのではないだろうか。テーマが中途半端な印象を受けた。

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「The Woman in the Window」A. J. Finn

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
過去のトラウマから家の外に出ることができなくなった女性Anna Foxを描く。

Annaは宅配の食事に頼りながら、以前は夫と娘と3人で暮らしていた家のなかで一人で暮らしていた。Annaの楽しみは、近所の人々の出入りを観察すること。そしてインターネットで悩んでいる人に対して処方の助言をすることである。物語は、Annaの家を近所に新しく移り住んできたRussell家の息子Ethanとその母Janeが訪れたことから大きく動き出すのである。

物語の途中の展開はある程度予想ができた。家にひきこもる女性の証言を周囲は誰も信じてくれない、という王道のパターンである。面白いのは家のなかだけで生きるAnnaの楽しみの一つが映画を見ることで、「めまい」などの有名な映画のシーンがなんども引用される点である。どれも有名な作品だろうとは思われるのだが見たことがないのが悔しくて、近いうちにチェックしたいと思った。

「ツバキ文具店の鎌倉案内」ツバキ文具店

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
鎌倉にある文房具屋ツバキ文具店の店主とご近所さんがいく鎌倉の名所を紹介している。

何度か鎌倉には行ったことがあるが本書で紹介しているのは知らない場所ばかりで、また久しぶりに鎌倉に行きたくなった。

しかし、本書で言及している人の名前がまったくわからず、きっと「ツバキ文具店」というシリーズがあって、本書はそれにすでになんども触れたことがある人のために書かれたものなんだと感じた。機会があれば「ツバキ文具店」の別の作品も読んでみたいと思った。なんかほのぼのとした感じで、のんびりしたい人には良さそうなシリーズなのだろう。

【楽天ブックス】「ツバキ文具店の鎌倉案内」

「自分の中に毒を持て」岡本太郎

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
岡本太郎が自らの生きる考え方を語る。

基本的に著者が、日本人にありがちな保守的な生き方を批判し続けていくという内容である。出版はすでに30年以上前ということで、随所に時代を感じる。また、僕らの時代から見ると彼のもっとも有名な作品である「太陽の塔」はその有名さゆえに自然に受け入れられたものであるが、当時はその斬新さから反対の声もあったのだと知った。

全体的に、多少の個性わあれども、ただの年寄りの自慢話に聞こえなくもないが、個性によって有名になり仕事をもらう立場である以上、ここまで尖る必要があったのだろう。結婚という考えについてもいろいろ語っているが、多くの結婚しなかった年配の男性が語るであろう。過去の女性との自慢話がかなり続く。ここは別に相手がフランス人だった以外は岡本太郎でなくても同じように語れそうな気もする。

今でこそ、転職が当たり前になりつつあり、個性を出すことが認められているからそれほど本書に新しさを感じないが、
刊行当時に読んだらもっと衝撃的だったのかもしれない。そういう意味では、本書の本来の目的よりも、日本の社会の時代の変化の大きさを感じさせてくれた。

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「アマゾンのすごいルール」佐藤将之

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5

アマゾンジャパンの立ち上げ当初にアマゾンに参加した著者がアマゾンの文化について語る。

著者がアマゾンについて思うことや、著者のアマゾン人生のなかでの印象的な出来事をほとんどランダムに書き連ねているので、読みたい場所から読むことができるといえば聞こえがいいが、物語も筋もないので記憶に残りにくい。

それでも、自分の働いている会社でも取り入れたいなと思ったものは、「1ページか6ページでまとめる」という制度。提案資料を長々と書くのではなく、誰でも簡潔に要点を把握できるようにページ数をルール化しているのである。これによって提案者は高い文章作成能力を求められるのだという。確かに過去を振り返ってみれば、仕事のなかでたくさんしゃべることはしゃべるが結局何が言いたいのかわからない、という人はたくさん存在し、積み重なればそういう人の意見を聞く時間も組織にとっては無視できない大きさであることを考えると、このアマゾンの1ページルールはぜひ真似したい制度である。

そのほかにもほかの企業にはないような制度があふれている。あまり知らなかったアマゾンという企業の文化に少し触れられた気がする。

全体的にはもう少し内容の濃いものを期待していたし、物語的な要素も欲しかった。

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「グロースの時代」森岡康一

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
元フェイスブックジャパン副代表の著者が日本でフェイスブックをどのように広めていったのかを語る。

転職を繰り返してフェイスブックにたどり着いた著者が、その過程での大きな出来事や転機となった出会いなどについてカタッている。

グロースに関する技術や知識を求めて本書を手に取ったのだが、精神的な部分の重要性に多くページを割いている。情熱や根性は何かをやり遂げる上では無視できないことでしっかり覚えておきたいことだが、すぐに利用できるような知識を探している人にとっては期待外れに終わるだろう。しかし、実際に大きなグロースを経験したフェイスブックジャパンの様子からは何かヒントが得られるのではないだろうか。

【楽天ブックス】「グロースの時代」

「Microinteractions」Dan Saffer

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
iPhoneのアラームは、マナーモードでも音がなる、という悩ましい事例から、ユーザーの要望に対して、機器はどのような反応をすべきか掘り下げていく。

機器の側でユーザーの位置情報や行動を記録することは可能で、それを可能な限り活かすというのが本書の主張だと理解した。しかし、実際には、わずかなユーザーの利便性の向上のために必要以上にデータ構造を複雑にしてしまうメンテナンスコストも考えなければならないし、ユーザーから見てなんの情報が取られているのかわからないという不信感にもつながりかねない、などもっと考えなけれないことは多い。そのような理由から、若干現実に開発をしていない人の意見か、もしくは理想論を連ねているような印象を受けた。

「Frontend Architecture for Design System」Micah Godbolt

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
デザインシステム作りを視野に入れて、組織として大規模なプロジェクトのフロントエンドの構成を説明している。

序盤はこれまでのWebデザインの変遷を説明している。1人で完結するWebサイトのコーディングが、モバイルサイトやレスポンシブデザインの出現により複雑になり、個人では完結できなくなった作業であることを改めて認識するだろう。

OOCSS,SMACSS,BEMと現在広く認知されている手法を例を交えながら解説している。印象的だったのはコンポーネントのmargin指定の話である。異なるコンポーネントをカラムレイアウトに入れる際、(例えば横3列のカラムにコンポーネントA,B,Cを入れる)上端が揃うようにするためには、コンポーネントにmarginを指定してはならないのだ。

中盤以降は若干フロントエンドでもエンジニアよりの考え方が入ってくるため、デザイナーの僕には理解が十分にできたとは言い難い。

後半の、CSSからデザインシステムのドキュメントを生成するサービスHologram, Pattern Labについて触れている。CSSの規則を構築した先には当然そのドキュメント化があるので、機会があればぜひ利用したいと思った。

「Org Design for Design Org: Building and Managing In-House Design Teams」Peter Merholz, Kristin Skinner

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
デザイン組織を作るための方法を説明している。小さなデザイン組織から、組織が大きく成長する中でどのようなデザイナーを増やしていくべきか。

序盤はデザインが重視されるようになった背景を説明している。80年代や90年代は徹底的な効率化により企業は競争力をつけていき、デルなどの企業が存在感を強めていった。しかし、効率化も頭打ちになったため、IDEOなどのデザインに力を入れ始めた企業が抜け出してきたため、現在デザインに多くの企業が目を向けているのだという。

第2章では、最近までのデザインの考え方とこれからのデザインの考え方の違いを説明している。これまでのデザインの考え方は、マネジメント、マーケティング、デザイン、設計、製造、販売、サポート、という全体の一つのフェーズでしかなかったが、これからは、すべてのフェーズに関わるべきものとしている。

中盤以降では実際の企業のデザイン組織の作り方について書いている。多くのデザイン組織はデザイン部を社内に設けるCentralized型か、デザイナーを事業部に割り当てるEmbedded型なのである。

Centralized型のメリット
デザインコミュニティや文化をサポートできる
明確な作業分担を作れる
デザイナーにプロジェクトベースで仕事をさせられる
一貫したユーザー体験を提供できる
仕事の効率化をはかれる
Centralized型のデメリット
責任者の力がない、責任の所在が不明確
彼ら、私たちという態度が生まれる
優先度やタイミングが不明確になる
Embedded型のメリット
開発がスピーディでサイクルがまわせる
デザイナーがチームの一員として機能する
チームが提供するものに責任を持てる
良質のものを提供できる。
Embedded型のデメリット
チームが一つの問題に長い期間集中する
デザイナー同士のつながりが希薄になる
デザイン文化の一貫性やデザインコミュニティーが希薄になる
ユーザー体験が分断される
同じ努力が複数の場所で行われ、非効率さが生まれる
ユーザー調査がおざなりになる

その双方の長所と短所を説明した上で、本書ではCentralized Partnershipという双方の利点を兼ね備えたデザイン組織を提案している。

そして終盤以降は、デザイナーをタイプによって分類し、デザインチームがグループとなり、組織となるにあたって、どのようなタイプのデザイナーをどのように入れて組織を大きくしていくかを説明している。正直、終盤のくだりは、大きなデザイン組織の人事に影響を与えられる人、というかなりニッチな人にしか役に立たないかもしれない。

本書によって、Centralized型とEmbedded型の組織の長所と短所を整理することができた。しかし、それは本書から説明されるまでもなく明らかだったことと、短所を補おうとすると本書が提案するような折衷案を目指すというのは必然的である。そのため、本書が何か新しい考えをもたらしてくれたという印象はない。

「面白くて眠れなくなる素粒子」竹内薫

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
素粒子をわかりやすく解説している。

素粒子について新しく得た知識は原子核が陽子と中性子によってできており、陽子と中性子は3つクォークと呼ばれる素粒子でできている。というところまで。その先は予想どおりわかりにくい。

面白かったのは、物理学者のタイプの話で、理論物理学者と実験物理学者という大きく2つのタイプがいるというものぐらい。超ひも理論の本を読むのは本作品で2作目だが、相変わらずとらえどころのない感じ。わかりやすく話しているせいか、どこまでがたとえ話でどこまでが実際の話なのかがわかりにくいと感じたが、後半では、著者が、ほとんどが妄想だと言っていることを考慮すると、実際の話はほとんどない気もしてきた。

「どういうものなんだろうと考えること、どういうものなのか頭の中に具体的なイメージを浮かべようとすること」はNGです。
どこまでが本当で、どこからが妄想なのか、私たちにはもうわからないんです。

とっつきにくい世界の一つの足がかりとしてはわるくないかもしれない。
 
【楽天ブックス】「面白くて眠れなくなる素粒子」

「おもかげ」浅田次郎

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
定年を迎えた竹脇正一(たけわきまさかず)はその帰り道に倒れて病院に運び込まれた。昏睡状態になった竹脇(たけわき)に対して、妻や友人、看護師などがそれぞれの立場とそれぞれの視点から竹脇(たけわき)を語る。
周囲の人々が、竹脇(たけわき)を見つめると同時に、竹脇(たけわき)自身も夢のなかで旅をするのである。その旅のなかで竹脇(たけわき)は一人の女性と出会い、それぞれの思いを少しずつ打ち明けていく。
なかなか大きな展開もないので時間がない時に読むとちょっとじれるかもしれないが、最後はそれなりに最後はほっこり感動できる展開。また、夢の中で竹脇(たけわき)は何度も地下鉄に乗るので、昭和の地下鉄の発展に興味がある人には楽しめるかもしれない。
【楽天ブックス】「おもかげ」

「炎と怒り トランプ政権の内幕」マイケル・ウォルフ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5

黒人初のアメリカ大統領の後を引き継いだトランプではあるが、正直あまり賢そうには見えない彼がどうしてヒラリー・クリントンに勝って大統領に選ばれるに至ったかが知りたくて本書を手に取った。
過去にもジョージ・W・ブッシュの在任期間を描いた「決断のとき」など、大序棟梁を扱った書籍をいくつか読んでいたので、今回もそのようにトランプの悩みや決断の過程に触れられることを期待していた。しかし、残念ながら本書では、トランプの周囲の人々の権力争いに焦点をあてており、トランプ大統領は知性の低い人という扱いを崩さず、トランプ自身の考えなどはほとんど触れられていなかった。
国家の重要事項に対して、ホワイトハウスの人々がトランプの注意をひいたり、思い通りにトランプをあやつるために右往左往する様子は滑稽で、アメリカ合衆国という大国がこのような状態で正常に機能していることに脅かされた。また、一方で、自らの地位を向上させるために、恥も外面も関係なく行動する政治家たちの執念には少し刺激を受けた。
正直、読みやすくも、面白くもないが、少なからず本書から学ぶ点はあった気がする。本書のなかで触れられているオバマケア等、アメリカの医療制度はもっと詳しく知りたいと思った。
【楽天ブックス】「炎と怒り トランプ政権の内幕」