「ビブリア古書堂の事件手帖3 栞子さんと消えない絆」三上延

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
もはや御馴染みの、古本屋の店主栞子(しおりこ)と、そこでバイトをする五浦(ごうら)の繰り広げる本に関わる物語。
シリーズ3作目となる本作品でも面白そうな本がいくつか触れられて、きっと読みたくなるだろう。栞子(しおりこ)ほどではないにしても、読書好きを自負する僕としては、もっと古い作品にも触れてみるべきなのだろうと、本シリーズを読むたびに思う。
さて、本書でも過去と同様に、栞子(しおりこ)と五浦(ごうら)は、店に持ち込まれるお客さんの本に関わる悩みを解決していく。過去の2作品と異なるのは、少しずつ失踪している栞子(しおりこ)の母親の存在が前面にでてきた点だろうか。突然失踪した母に腹を立てながらも、栞子(しおりこ)は母親が残した本を探し続けるのだが、本書では、お客や顔見知りの同業者によって、母の話を聞く事になるのだ。
本の話のなかで印象的だったのは宮沢賢治の推敲の話。きっと世の中で売れている本もそうでない本も、多くの本が、作者にとっては大きな愛情を注いで作り上げた、忘れがたいものなのだろう。
正直、前作まで読んだ段階で、シリーズすべてを読みつづけるほどのものではないと思ったのだが、本書第3作を読んで逆に辞められなくなってしまった。
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「成功する人たちの企業術 はじめの一歩を踏み出そう」マイケル・E・ガーバー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
20年間にわたってスモールビジネスを対象にした経営コンサルティング活動を行ってきた著者がその経験を生かして多くの起業家が陥りやすい謝った考え方をいくつかの例を交えて分かりやすく教えてくれる。
非常にいいと思うのは本書ではパイの店を開いたサラという人間に対してアドバイスする形で説明してくれる点だろう。祖母から教えてもらったパイの焼き方が非常においしくて、パイを焼くのが好きで、毎日好きな事をして過ごせると思って店を開いたサラ。しかし、実際にはやらなければならないことがあふれていて、ついにはパイを焼く事さえ嫌になってしまった。
一体何が問題なのかを著者は、人間を3つの人格に分けて説明する。起業家、マネージャー、職人である。この3つの人格がバランスよく機能しなければ会社は成長しないのだという。
全体を通じて印象的だったのはシステムの話。システム化、マニュアル化という言葉を聞くと、どこか冷淡で、仕事に誇りをもって取り組んでいる人のなかには毛嫌いする人もいるかもしれないが、本書がマクドナルドや、著者が偶然であったらすばらしい接客をしたホテルを例にとって書いている内容を読むと考え方が変わるだろう。
特に職人タイプの人は、自分の仕事を「自分にしかできない」として自らの価値を高めているのかもしれないが、その状態のままでは永遠に自分は現場を離れられず、永遠に忙しいままなのである。僕自身現在はまだ職人職が強い職業に就いているので、とても新鮮だった。
本書はなにもこれから起業しようとする人だけが読むべき本ではない。会社で働いている人間にも、マニュアル化やシステムの必要性が見えてくるだろう。もちろん起業家が読めば参考になるだろうが、企業に興味がない人でも、本書を読むと、自らが長年かけて育んだ技術を会社として機能させてみたいと思うのではないだろうか。
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「感染遊戯」誉田哲也

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
各地で官僚絡みの犯罪が相次いだ。過去をたどればその立場故に人から恨まれる理由はあるはずだが、犯人たちはその情報をどこから得ていたのか。
「ストロベリーナイト」に始まる姫川シリーズの一冊。体裁こそ短編集となっており、姫川の登場もごくわずかだが、姫川シリーズファンは読み逃してはならない内容である。実際、読み始めてから本書が短編集であることを知って残念に思ったのだが、読み進めるにしたがって、それぞれの短編の背景にある共通したつながりに魅了されてしまった。
物語のテーマとしては、官僚の怠慢によって起こった、薬害エイズ事件や年金問題や、インターネットによる情報流出であるが、本書の魅力は社会的問題に絡めているだけではなく、そんな無関係な人々が無関心のまま通り過ぎてしまう出来事を、当事者の目線に立ってしっかりと読者に伝えてくる点だろう。そして、そうして引き起こされた恨みや後悔が不幸の連鎖へと変わっていくのである。

そう。この国は欺瞞と偽善に満ちている。

個人的には元警察官でありながら、息子が殺人事件を起こした事で退職せざるを得なかった男の話が印象的だった。本シリーズのなかで本来主役である姫川玲子(ひめかわれいこ)が、本書のなかで最も存在感を表す箇所でもある。

自分はあのときの問いかけに対して、そんなことはない、生きろと、そういうことはできなかったのだろうか。

関連する事件は読後すぐに調べて詳しく知りたくなる。再び姫川シリーズを読みたくさせてくれる一冊。

ウェルテル効果
マスメディアの自殺報道に影響されて自殺が増える事を指し、この効果を実証した社会学者のPhilipsにより命名された。(Wikipedia「ウェルテル効果」
血盟団
昭和時代初期に活動したテロリスト集団。(Wikipedia「血盟団」

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「八月の魔法使い」石持浅海

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
洗剤メーカーの役員会議で報告されていない事故報告書が見つかり、役員たちは副社長のいすを巡ってそれぞれを非難し始めた。その間、万年係長である松本係長も事故報告書の処理を部長に訪ね始める。小林拓真(こばやしたくま)と恋人の美雪(みゆき)は腐敗し始めた会社の大改革を目撃する事になる。
石持浅海(いしもちあさみ)らしく、今回も会社の会議室と、一つのセクションと言うわずかな空間だけで展開する物語。会議室では夏休み中の気楽な会議だったはずのものが、誤って差し込まれていた事故報告書によって一変するのである。そして、小林拓真(こばやしたくま)は与えられたわずかな情報から誰がこの一連の出来事を意図して、何を目的に行っていくかを解明していく。
企業のなかの権力争いを題材にしているせいか、残念ながら他の作品のようなスリルは味わえなかった。この辺の受け止め方は、現実の世界で、企業にどのように所属し、それをどう捉えるかによるのかもしれない。
【楽天ブックス】「八月の魔法使い」

「桶川ストーカー殺人事件 遺言」清水潔

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
埼玉県の桶川駅前で起こった女子大生猪野詩織さん殺害事件。ひとりの週刊誌記者が警察よりも先に犯人を探し当てる。その週刊誌記者が事件をつづる。
埼玉で生まれ育った僕にとっては「桶川」というのはそう遠くない街の名前の一つであるが、日本ではすでに「桶川」とは「ストーカー」を連想させる言葉になってしまったかもしれない。この事件はそれぐらい強い印象を残している。しかし、この事件は実際どういう風に起こって、犯人は結局どうなったかというと、あまり知られていないのではないだろうか。残念ながら人々の関心というのはその程度のものなのだろう。実際僕自身もそんななかの一人だったのである。
さて、本書は週刊誌記者であり本書の著者でもある清水潔(しみずきよし)氏が事件の一方を受けて現場にいき、少しずつ真相に近づいていく様子が描かれている。彼にとってのこの事件は、被害者からたびたび相談されていたという2人の友人から話を聞いたときに大きく動き始める。
そして、読み進めていく過程で、猪野詩織(いのしおり)さんが陥った境遇を知るに連れて、たまたまその時その場所にいたがゆえに若くして人生を終えなければならなかったという運命の無情さを感じずにはいられない。また、詩織(しおり)さんが感じた恐怖が、その友人や著者自身にも伝染していくのがやけに説得力がある。

詩織さん達がここに相談に来て、絶望したのがよく理解できた。詩織さんは二つの不幸に遭遇した。一つは小松に出会ったこと。もう一つは上尾署の管内に住んだことだ。

著者は、犯人に対する恐怖や怒りについてももちろん触れているが、むしろそれ以上に、警察やメディアに対する怒りややるせなさを語っている。どうして警察は組織の体裁を重視して殺人犯を放っておくのか、どうしてメディアは警察との対立を恐れて真実を追究しようとしないのか。

なんとも皮肉なことに詩織さんの名誉をめちゃくちゃにしたかった小松和人の希望は、警察とマスコミによってかなえられたのだ。
詩織さんは普通のお嬢さんである。両親や弟達を愛し、友人を大切にし、動物を可愛がる、そんなどこにでもいる女性だった。あなたの隣にいるようなお嬢さんだったのだ。

歪んだ世の中を感情に訴える形で見せてくれる秀逸な一冊。
【楽天ブックス】「桶川ストーカー殺人事件 遺言」

「Pretty Little Liars #2: Flawless」Sara Shepard

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
行方不明だったAliが遺体となって発見され、葬儀で一緒になったAria、Hanna、Emily、Spencer。4人はそこでようやく、4人ともAと名乗る人物から脅迫めいたメールを受け取っていた事を知る。誰もがAliをAだと思っていたが、Aliは死んでいたという事実が分かった今、再び疑心暗鬼が始まる。
前作同様Aria、Hanna、Emily、Spencerの4人に視点を展開して進んでいく。前作から呪いの言葉のようにそれぞれが口にしていた「Jenna thing」の内容も本作品で明らかになる。それはJennaとTobyという近所に住む兄妹に関する出来事だった。ある晩のAliのいたずらによってJennaは失明することになったが、翌日にはJennaの兄のTobyがその罪を被ったのである。一体死んだAliはTobyにあの夜何を言ったのか。
そして同時に4人それぞれの日常が展開していく。1作目ではなかなか理解が、登場人物の個性を認識していなかったが2作目となると次第にそれぞれの個性を理解していくのを感じる。Hannaは、父親が再婚しようとしている先には美人で同年代のKateがいるために、自らのルックスにコンプレックスを持っている。姉の恋人を奪う事になったSpencerは家族との関係を悪化させていく。AriaはHannaの元恋人のSeanと接近していく。そしてEmilyはTobyと近づいていくのである。
まだまだシリーズ序盤らしいが、少しずつ物語が面白くなっていくのを感じる。

「レパントの海戦」塩野七生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
レパントの海戦とは、1971年オスマン帝国のキプロス遠征に対して、カトリック教国の連合艦隊が挑んだ戦いのこと。本書はカトリック教国側に焦点をあててその歴史的海戦を描く。
「ロードス島攻防記」で初めて塩野七生の著書に触れて、その一冊の読書から見えてくる歴史の面白さに驚いた。本書は僕にとって塩野作品2冊目となるが、こちらも同様にカトリック教国とイスラム教国の歴史的物語を面白く描いている。
今回印象に残ったのは「ヴェネチア共和国」という国名。オスマン帝国は歴史の教科書に必ずと言っていいほど登場するが、「ヴェネチア共和国」という名前を聞いたのはおそらく今回が初めてで、調べてみると「歴史上最も長く続いた共和国」ということで、大いに興味をそそられた。またヴェネチアという町自体、いつか行ってみたい場所でもあるので、本書を読んだことで、きっとヴェネチア旅行がまた違った角度から楽しめることになるだろう。
さて、本書はキプロスに向かって勢いを増すオスマン帝国に対抗するために四苦八苦する連合艦隊の様子が描かれている。当時は櫂と帆で船を動かしていた時代。そのため大量の人員を必要とし、乗船するだけでもかなりの時間がかかるという。
また、スペイン王国の微妙な立場も面白い。連合艦隊に属しながらも、ヴェネチア共和国の勢いは弱まってほしい、そのため連合艦隊に参加しながら、必死で戦争の開始を遅らせようとする。こういったところが歴史の教科書からはわからない一面だろう。
前後の歴史にもさらに興味を抱かせる一冊。

レパントの海戦
1571年10月7日にギリシアのコリント湾口のレパント(Lepanto)沖での、オスマン帝国海軍と、教皇・スペイン・ヴェネツィアの連合海軍による海戦。(Wikipedia「レパントの海戦」
ヴェネチア共和国
現在の東北イタリアのヴェネツィアを本拠とした歴史上の国家。7世紀末期から1797年まで1000年以上の間に亘り、歴史上最も長く続いた共和国。(Wikipedia「ヴェネチア共和国」

【楽天ブックス】「レパントの海戦」

「しゃべれどもしゃべれども」佐藤多佳子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

落語家今昔亭三つ葉(こんじゃくていみつば)のもとに、話し方が巧くなりたいという男女が集まった。仕方がないので三つ葉(みつば)は彼らに落語を教える事にする。
なによりも落語を扱った書籍に初めて出会った。その点ですでに本書は新鮮である。落語界の仕組みなどをおそらく丁寧に本書も説明しているのだが、落語家は似たような名前が多くてしっかり理解できたとは言えない。しかしそれでも漠然とではあるが伝わってくるものがある。例えば、落語にも古典落語というような伝統的なものとそうでないものがあり、また、古くからある話は、人々の生活様式がその落語の基盤となる時代と異なってくるにしたがって人々に伝えにくくなっているなど。落語を一度聞きにいってみよう、と思うには十分の内容。

その年、季節、天候、顔ぶれ。それぞれの心模様、何もかもが違うんだよ。だからこそ、毎度毎度面倒な手順を踏んで同じことを繰り返し稽古するんだよ。ただ一度きりの、その場に臨むためにね。

しかし本書が描くのは、そんな落語界の実情だけではなく、話す事を苦手とする共通点を持った男女4人の物語である。クラスでいじめに会っている小学生の村林(むらばやし)、テニスのインストラクターだったがうまく話す事が出来ずに辞めた良(りょう)、元プロ野球選手で、解説がうまく出来ずに悩む湯河原(ゆがわら)、そして女性、十河(とかわ)。いずれも話す事が苦手なだけでなく、人と打ち解ける事もしようとしない性格ゆえに場を仕切る三つ葉(みつば)は困り果てる、しかし、それでも次第に4人が、落語を通じてそれぞれのコンプレッスをさらけ出しつつ、少しずつ心を通わせていく様子が面白い。
少しずつ落語の面白さを知っていく4人。三つ葉(みつば)自信も自らの落語に対して試行錯誤を重ねていく。そんな落語への取り組みがそれぞれの生活まで少しずついい方向に変えていくようだ。面白く温かい物語。
佐藤多佳子の作品は本書で2冊目だが、どちらも何かに対して努力し、そこから得られる達成感、仲間との一体感が描かれている点が魅力である。他の作品にもぜひ触れてみたい。
【楽天ブックス】「しゃべれどもしゃべれども」

「特等添乗員αの難事件II」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ラテラルシンキングの才能を開花させた浅倉絢奈(あさくらあやな)だが、仕事の悩みだけでなく、家族や恋愛の悩みもつきまとう。
ラテラルシンキングに特化した前作と異なり、今回はむしろ恋人で政治家でもある壱条那沖(いちじょうなおき)や絢奈(あやな)の姉でありフライトアテンダントでもある乃愛(のあ)との関係に焦点があてられている。前作の物語でより溝が深くなった母や姉、乃愛(のあ)との関係だが、今回は偶然にも同じ飛行機に添乗員、フライトアテンダントとして乗り合わせる事から大きく動いていく。
例によっりトリビアいっぱいの一冊。もう少し物語り自体を深めて欲しいとも思うが、こういう軽い内容というのが世の中の読者が求めているものなのかもしれない。
【楽天ブックス】「特等添乗員αの難事件II」

「数学ガール フェルマーの最終定理」結城浩

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
数学な好きな「僕」は従姉妹の女の子ユーリ、学校の後輩のテトラ、そして数学がずば抜けて得意な才女ミルカさんと、数学の先生の村木先生が出してくれる問題をもとに数学の話を繰り広げる。
過去フェルマーの最終定理に関する本を何度かトライしてみたが、どれも残念ながら大して理解することもできずに諦めてしまった。しかし本書は「フェルマーの最終定理」とサブタイトルを持ちながらも序盤は、本当に簡単な数学の知識だけで楽しめる内容で構成されている。
例えば

原点中心の単位円周上に、有理点は無数に存在するか。
aとbが偶数の原始ピタゴラス数(a,b,c)は無数に存在するか。

などである。それぞれの証明をしっかり理解しながらついていくのはやや根気がいるし、時間もかかるが、最初はまったく違う証明だと思っていたものが、実は本質的に同じ問題だったと気づく瞬間の、その驚きは伝わってくるかもしれない。きっとそんな驚きが多くの数学者たちを数学の世界にひきこんでいったのだろう。
終盤ではついにフェルマーの最終定理に話が及ぶ。とはいっても、本書で触れているのは本当にそのさわりの部分だけ。フェルマーの最終定理の証明の鍵となる谷山・志村予想やモジュラー。結局本書を読んだ後もやはりそれらの詳細は分からないままだが、読む前よりもその感覚的な部分がつかめた気がする。
【楽天ブックス】「数学ガール フェルマーの最終定理」

「オーダーメイド殺人クラブ」辻村深月

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
中学2年生の小林アンは日本中が注目するような、過去になかった方法で自分を殺して欲しいと同じクラスの昆虫系男子徳川(とくがわ)に依頼する。
新鮮なのは死を望むアンは、どちらかと言えば容姿も美しく、彼氏を作る事のできる女子であるという点である。友人の芹香(せりか)と幸(さち)とともに行動をともにしながらも、理不尽で狭い人間ん関係のなかで、
中学二年生の揺れ動く心のうちを描いている。女性特有の教室でのイジメ、無視、派閥争いなどの描写は他の辻村作品と同様に相変わらず力を感じる。

もう、嫌なのだ。あの日常に、外され続ける教室に、色をなくしたような毎日に、戻るのなんか、嫌なのだ。

最初は、お互いがどこまで本気なのか不信に思っていた、アンと徳川(とくがわ)は、徐々に具体的な方法を考え始める。場所はどうするのか、いつにするのか、死体はどこに置くのか。彼らが重点をおいているのは、「過去に例がないこ」である。そうやって彼らの視点で過去を振り返ってみると、考えうる限りの残酷、凶悪な犯罪の大部分はすでに起きてしまっているような気がする。
未来に希望を見いだせない現代の若者。若い辻村深月ならではの物語といえるかもしれない。

ゲシュタルト崩壊
知覚における現象のひとつ。 全体性を持ったまとまりのある構造 (Gestalt, 形態) から全体性が失われ、個々の構成部分にバラバラに切り離して認識し直されてしまう現象をいう。幾何学図形、文字、顔など、視覚的なものがよく知られるが、聴覚や皮膚感覚においても生じうる。(Wikipedia「ゲシュタルト崩壊」)

【楽天ブックス】「オーダーメイド殺人クラブ」

「スターバックス再生物語 つながりを育む経営」ハワード・シュルツ/ジョアンヌ・ゴードン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
リーマンショックなどの不況の影響でスターバックスも徐々に当初の勢いを失っていった。そして2008年1月、ハワード・シュルツはスターバックス再生のためにCEOに復帰する。本書はその過程と、スターバックスが再生されるまでの物語である。
Google、Facebook、マクドナルド過去「成功物語」と呼べるようなものは何冊か読んだし、世の中にも溢れているが、「再生物語」となると非常に限られている。その1点だけ考えても本書は面白く読む価値があるだろう。まず序盤は少しずつ歯車の狂ったスターバックスの様子を描いている。徐々に店舗で犯罪するものを増やし、徐々にコーヒー以外の別の分野にも手を広げ始める。しかし、売り上げが伸び続けているために誰もその影響に気づかない。それでも確実にスターバックスのネジは狂い始めていたのだ。

店舗のパートナーたちは一生懸命働いています。会社を支えているのは彼らです。しかし、店に足を踏み入れると悲しくなります。伝統のサービスや挨拶はもう存在しないのです。カウンターの中で働いているバリスタたちのせいではありません。スターバックスの文化を維持し、成長させ、繁栄さあるのは経営陣の責任です。

そんな中で、ハワード・シュルツはCEOに復帰してから再生への道を模索して、多くの改善策にとりくむのだが、その内容からは、企業がその質を維持したまま大きくなることがどれほど難しいかが見えてくる。最終的に、ハワード・シュルツは短期的な利益を諦めて長期的な利益を優先する中で、不採算な店舗の多くを閉鎖することを決断するのだが、その際に各地から届く「この街のスターバックスを閉店しないで欲しい」という声は、これまでスターバックスが築いてきたものの大きさを示しているようだ。
失敗もありつつ結果としてスターバックスは再生を果たすのだが、そのためにしなければいけない辛い決断をハワード・シュルツがするにあたって、そんな彼を勇気づけるように、社員から送られる温かいメールの内容が印象的である。

あなたを信じているパートナーが、まだたくさんいることを知って欲しいのです。…わたしたちは他の企業とは違うのです。働く者にとっては、業界で最高の企業です。素晴らしい未来が来ることを心から信じています。

「スターバックス成功物語」を読んだときも感じたのだが、信念を持った会社で自らの時間を費して働くことのなんと羨ましいことだろう。まったく専門は違うがスターバックスで働いてみたくなる。

リーン生産方式
トヨタ生産方式を研究して編み出された方式であり、MITのジェームズ・P・ウォマック(James P. Womack)、ダニエル・T・ジョーズ(Daniel T. Jones)らによって提唱された。製造工程におけるムダを排除することを目的として、製品および製造工程の全体にわたって、トータルコストを系統的に減らそうとするのが狙いである。(Wikipedia「リーン生産方式」

【楽天ブックス】「スターバックス再生物語 つながりを育む経営」

「悪者見参」木村元彦

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
残念なのは本書のタイトルや表紙はその内容を的確に伝えてないということ。むしろストイコビッチがJリーグでイエローカードをもらいながらも、すばらしい実績を残していく様子を描いていそうな、タイトルと表紙だが、実際にはユーゴ紛争を描いていてサッカー選手もそのうちの一つの要素に過ぎない。
しかし、紛争の悲劇を伝えるために、本書は何人かのサッカー選手の体験を紹介する。印象的なのは悪魔の左足と恐れられた正確無比なフリーキックで有名なミハイロビッチがようやく自らの家に帰ったときの体験である。

散々荒らされた室内に足を踏み入れ、眼を凝らすと真っ先に飛び込んできたのは、壁に飾られた旧ユーゴ代表の集合写真だった。そこには彼の顔だけがなかった。銃弾で打ち抜かれていたのだ。
「あの時の悲しさ、淋しさは一生忘れない。僕は帰らなければよかったとさえ思った。帰らなければ思い出が何もなかったように、僕の中でそのまま残っていただろう。

とはいえ、本書の焦点はむしろアメリカ、イギリスなどNATOが中心となって、その空爆の正当性を訴えるためにつくりあげる、セルビアの悪者のイメージである。10万人のアルバニア系住民を監禁したと報道されたスタジアムは実際には8000人も入れそうもない大きさだったという。報道によって世の中に「悪者はセルビア」のイメージが徐々に世の中に刷り込まれていくのに、それに対して何も出来ない著者の歯がゆさが伝わってくる。

絶対的な悪者は生まれない。絶対的な悪者は作られるのだ。
味方なんかじゃない。あんたたちが思っているような国じゃない。
アメリカの戦争に協力する法案を国会で通し、ユーゴ空爆に理解を示した国なんだ、我が日本は!

本書を読んで感じるのは、「僕らが見ている真実とは何なのだろう?」ということ。僕自身それほどあの当時コソボ紛争に関心があったわけではないが、サッカースタジアムで、クロアチアの選手であるズボニミール・ボバンが警官に飛び蹴りして、国内で英雄視されていたのを知っているし、それを疑いもなく信じていたのだ。
【楽天ブックス】「悪者見参」

「砂のクロニクル」船戸与一

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第5回山本周五郎賞受賞、1993年このミステリーがすごい!国内編1位作品。

独立国家の建設を求めて放棄しようとするクルド人。イランはホメイニ体制の下でそれを抑えようとする。そんな混乱のなかの中東に2人の「ハジ」と名乗る日本人がいた。

イランイラク戦争。まだ政治に関心を持つような年齢でもなかった僕は、その名前しか知らない。しかし、戦争というのは、他の国で豊かな暮らしを送っている人にとっては他人事でも、当人にとっては人生を左右するもの、人に寄っては人生そのものでもあったりする。本書が描いているのはまさにそんな人達である。

本書は「ハジ」と名乗る2人の日本人のほかに、イランの共和国軍である革命防衛隊に属するサミル・セイフ、クルド人でクルド国家の樹立を目指すハッサン・ヘルムートの視点からも語られる。サミル・セイフは国を守るためにそのすべてを注いでいるが、革命防衛隊内の腐敗に葛藤を続ける。また、ハッサン・ヘルムートもクルドの聖地マハバードの奪還を目指す中で、イランクルドとイラククルドの諍いなどの不和にも頭を悩まされる。

そんな状況のなか、「ハジ」と名乗る日本人の一人駒井雄仁によって2万梃のカラシニコフがカスピ海をわたってクルド人に届けられようとしている。そしてその後武器を得たクルド人たちはマハバードへ向かうこととなる。

かなりの部分が史実に基づいているのだろう。これほど大きな混乱を知らずに今まで生きていた自分がなんとも恥ずかしくも感じた。

本書はハッピーエンドとは言えないだろう。そもそも戦争とは悲しみしか生まないのなのかもしれない。それでも、そんな時代だからこそすべてをかけて人生を全うする登場人物たちが羨ましく思えてしまう。

イスラム革命防衛隊
1979年のイラン・イスラム革命後、旧帝政への忠誠心が未だ残っていると政権側から疑念を抱かれた従来の正規軍であるイラン・イスラム共和国軍への平衡力として創設されたイラン・イスラム共和国の軍事組織。(Wikipedia「イスラム革命防衛隊」
ルーホッラー・ホメイニー
イランにおけるシーア派の十二イマーム派の精神的指導者であり、政治家、法学者。1979年にパフラヴィー皇帝を国外に追放し、イスラム共和制政体を成立させたイラン革命の指導者で、以後は新生「イラン・イスラム共和国」の元首である最高指導者(師)として、同国を精神面から指導した。(Wikipedia「ルーホッラー・ホメイニー」
イラン・イラク戦争
イランとイラクが国境をめぐって行った戦争で、1980年9月22日に始まり1988年8月20日に国際連合安全保障理事会の決議を受け入れる形で停戦を迎えた。(Wikipedia「イラン・イラク戦争」

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「ユーゴ紛争 多民族・モザイク国家の悲劇」 千田善

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
分裂したユーゴスラビア。あの悲劇はどんな理由で始まって、どんなものだったのか。長い取材から著者がユーゴ紛争について語る。
そもそもこの本に至ったのは、サッカー関連の本を読んでいて、セルビア出身のストイコビッチ、そして元日本代表監督で同じくセルビア出身のイビチャ・オシムについて読み、彼らを振り回した戦争とは一体なんだったのか、と興味を抱いたからだ。
信じられるだろうか、かつて一緒に学校に通い、一緒に授業を受けていた友人同士があるときを境に憎み合い殺し合うのである。日本でいうなら埼玉県と東京都の住人が殺し合いを始めるようなものだろうか。
本書を読んでわかるのは、発端は南部と北部の経済の格差だったという。経済の格差が不満を呼び、わずかに生じた疑心暗鬼が衝突を生み、衝突がさらなる民族間での疑心暗鬼を呼ぶのである。この負のスパイラルは、60年代のアメリカ南部の人種差別問題や、ルワンダのフツ族とツチ族の間に起こった出来事など世界中で共通する事で、一度始まってしまったら止めるのは非常に難しいことなのだろう。

ここでここに残って守るべき「祖国」とは、何なのだろうか。われわれ日本人がふだん意識しない、「国家」や「民族」という抽象的な概念が、ここでは「敵」という具体的な形で、目の前に現れて来る。

僕らはどこか気恥ずかしくて「祖国」などという言葉は使わないが、本書を読むと国というものの維持というのは、非常に微妙なバランスの上に成り立っているような気がしてくる。僕らはもっと平和に生きる事のできる日本という国のありがたみを感じるべきなのかもしれない。

ここでECやアメリカは、紛争の初期には「ユーゴ統一維持」の立場からアプローチし、それがうまくいかないとみるや、翌年にはスロベニア、クロアチアばかりか、ボスニアの独立まで承認するという、一貫しない対応をとった。重体の患者(旧ユーゴ)を前に、頭を冷やし、医薬と栄養剤を飲めば治ると言っていた医者(EC)が突然、手足の切断手術をする、と言い出したのに等しい。

この一冊ですべてがわかったなどとはとても言えないが、少しずつあの場所で何が起こっていたのか見えてきたような気がした。
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「フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?」小林章

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ドイツで活躍する日本人の書体デザイナー小林章(こばやしあきら)が外国語のフォントについて独自の切り口で語る。
サブタイトルの「ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?」にあるように。普段フォントというものに関心を持っていない人にとっても興味をひく切り口で始めている。LOUIS VUITTON、GODIVAなど、フォント単体で見ると普通に見えるのに、なぜ高級感が感じられるのか。
そんな出だしで始まって、海外のフォントの文化や手書き文字の文化の違いについても触れている。日本語でも同じだが、印刷につかわれるフォントと手書き文字ではその見え方や書き方は異なる。外国でもそれは同じで、特に手書き文字にはその国独自の文化が根付いているらしい。数字の「1」の書き方がこんなにも国によって違う事に驚かされた。何も知らずに海外にいったら、僕らは手書きの「1」という文字すら識別できないだろう。
そして、フォントに関する使えそうなトリビアも満載。フォント好きにはおすすめである。世の中のそこらじゅうにあふれているフォント。それを知れば普段の生活はもっと楽しくなるはず。
【楽天ブックス】「フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?」

「Pretty Little Liars」Sara Shepard

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
女性から見ても美しく魅力的なAlisonを中心として集まった仲良しの女子5人組、しかしある夜を境いにAlisonは行方不明になり、それから3年が経って残りの4人Aria、Hanna、Spencer、Emilyもそれぞれ少しずつ疎遠になり、それぞれ新しい友人や生活を見つけて別々の日々を送るようになっていた。
日本で言うと中学生から高校生にあたる年代なので、彼女たちの興味の対象はもちろん勉学だけでなく、部活動や女友達や恋人やパーティなど。そんななか、4人はそれぞれ実はAlisonと個別に他の人に知られたくない秘密を共有していた。そのためにAlisonの失踪を嘆きはすれど、どこかで、これで秘密が公になることはない、と安堵する思いも持っている。そんな微妙な心のうちが面白い。
そんななかAという名乗る人物からそれぞれのもとに、Alisonしか知り得ない内容のメールが届き、それぞれがAlisonの影におびえ始めるのである。これは誰かのいたずらなのか、それともAlisonはどこかで生きているのか、と。
そんな物語の進行とは別に、彼女たちの興味のあるブランドや、食べるものなど、アメリカの生活に根付いているだろうものや表現がたくさん出てくるのが個人的にうれしい。「ビバリーヒルズ青春白書」や「The O.C.」を小説で楽しめる感じである。
残念ながら本作品は物語の本当にプロローグに過ぎないという事が読み終わってわかる。多くのいくつかの謎を残して続編に引き継がれてしまうのだ。急がずに読み続けていきたいと思う。

「龍神の雨」道尾秀介

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第12回大藪春彦賞受賞作品。
添木田連(そえきだれん)と妹の楓(かえで)は事故で母を亡くし、継父と暮らしている。また、溝田辰也(みぞたたつや)とその弟の圭介(けいすけ)は母に続いて父を亡くし、父の再婚相手とともに暮らしている。家庭に不和を抱えた2組の兄弟が少しずつ近づいていく。
2組の兄弟がそれぞれ、添木田連(そえきだれん)目線と、溝田圭介(みぞたけいすけ)目線で展開する。添木田連(そえきだれん)と楓(かえで)は、働きに出ない継父の行為に嫌悪感を抱いている一方で、溝田辰也(みぞたたつや)と圭介(けいすけ)は、必死に本当の母親になろうとしてくれる、父親の再婚相手の里江(さとえ)に心を開けないでいる。2組の兄弟は似たような境遇に置かれながらあるいみ対照的なところが面白い。前半はそんな家庭の不和のなかで思い悩み、葛藤するそれぞれの心のうちが非常にいい空気を醸し出している気がする。
後半は一点物語が大きく動き出すのだが、個人的にはむしろ物語前半の雰囲気が気に入っていて、むしろ後半の大きな展開は物語全体の質を落としてしまったようにも感じる。
今回で著者道尾秀介の作品に触れるのは3回目だが、その内容の変化に驚かされる。まだ独自のスタイルが確立されていないような印象はあるが、この先が楽しみでもある
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「一瞬の風になれ」佐藤多佳子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2007年本屋大賞受賞作品。
神谷新二(かみやしんじ)は高校に入ってからそれまで打ち込んできたサッカーを辞めて陸上部に入部することを決めた。一緒に入部したのは天性の才能を持つスプリンター連(れん)。陸上にかける高校生たちの青春物語。
最近陸上を扱った物語というと、マラソンか駅伝であることが多いが、本作品は、短距離100メートル走と、400メートルリレーを扱っている点が新しい。著者は実際にある陸上部を長い間かけて取材し、その結果本作品を書いたという事なので、物語中で語られる理論や練習法はいずれも非常に興味をひかれる内容である。そもそも、陸上経験者でない人にとっては、100メートル走を走る選手がどんな理論でトレーニングを積み重ね、どのように意識しては知っているのかについて触れる機会がない。読んでいるだけで少し自分も速く走れるのではないか、という気がしてしまうから面白い。
もちろん、そんな陸上理論は物語の一部分でしかなく、高校生らしいいろいろなドラマを繰り広げてくれる。部活内の恋愛や、顧問の先生の過去などはもちろんであるが、1年ごとに後輩から先輩へと立場が変わり、やがて引退を迎えるという部活動ならではのエピソードも懐かしい。結果を残せずに引退をすることになった先輩を見送る場面は印象的である。

ここで何回、トラックの白線を引き、何回その線に沿って走ったのだろう。どんな試合の喜びの涙も、みな、ここから生まれてきたものだ。かけがえのない場所だ。俺たちに皆にとって。

そんななかで、神谷(かみや)もまた一時期心を折りそうになるが、それでも再び陸上へと戻ってくるのだ。

短距離でも長距離でも、タイムにも順位にもかかわらず、限界にチャレンジして走ることが、単純に尊い。その苦しさと喜びを共有できるのだ。走るのは一人ひとりでも、バトンや襷がなくても、俺たちは分かち合うことができる。

そして物語は終盤にかけてライバル校との直接対決へと向かっていく。全身全霊をかけて物事に取り組むことの尊さを改めて感じさせてくれる。力を与えてくれる青春小説。
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「成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝」レイ・クロック/ロバート・アンダーソン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マクドナルドを築いたレイ・クロック。マクドナルド兄弟に出会う前の彼の人生と、マクドナルド兄弟に出会ってからマクドナルドを拡大する過程も含め、その生涯を描く。
まず最初の驚きは、彼がマクドナルド兄弟に出会ってそれを大きくしようと決断したのが、彼がすでに50歳を超えていたということだ。確かに今とは時代が違うかもしれないが、人間は歳をとるにしたがって若いころ持っていた情熱やエネルギーは少しずつ薄れていくというのが一般的に言われていることだけに、50歳を超えてからその情熱をマクドナルドに注いだというのは印象的である。
基本的には、マクドナルドを拡大させる過程での人との出会い、困難や葛藤などを語っている。本人も語っているように、誰も注目していなかったフライドポテトに力を入れた点がマクドナルドの拡大の最初の決め手になったようだ。
例によってこの手の成功物語というのは、人名や法的手続きに関する内容が多く、若干わかりにくい部分もあったが、レイ・クロックがその生涯にわたって持ち続けた情熱は伝わってくるだろう。

やり遂げろ──この世界で継続ほど価値のあるものはない。才能は違う──才能があっても失敗している人はたくさんいる。──天才も違う──恵まれなかった天才はことわざになるほどこの世にいる。教育も違う──世界には教育を受けた落後者があふれている。信念と継続だけが全能である。

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