「深夜特急(3) インド・ネパール」沢木耕太郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マカオ、香港、マレーシアを経てついにインドに到達した著者。インドの生活に触れる。
前の2冊はどちらかというとややおおざっぱなアジアという感じがして、日本でも歌舞伎町や新大久保あたりで味わう事ができそうで、あまり興味がわかなかったが、本書のインドの様子は、どこか日本では決して経験できない雰囲気があって楽しんで読む事ができた。
インドにいくと人生観が変わる、とよく言われるが、本書はそんな様子の一部を見せてくれる。しかし、印象的だったのはむしろ、ここまで長く旅をしてきた著者が、旅というものに対して、どこか達観した見方をするようになった点である。

彼はただ通過するだけの人です。今日この国にいても明日にはもう隣の国に入ってしまうのです。どの国にも、人々にも、まったく責任を負わないで日を送ることができてしまいます。

また、隣国のネパールの様子も描いている。若いうちにこの2つの国に行ってみたいと思った。
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「十字軍物語(1)」塩野七生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1095年11月のクレルモンの公会議でローマ方法ウルバン2世の呼びかけによって始まった十字軍。本書はその第一回十字軍について記述している。
学生時代の教科書ではわずか数行でおわってしまう程度の出来事ではあるが、キリスト世界のなかでは当時間違いなく大きな出来事だったであろう。当時のカトリック教会の状態や、イスラム世界など、教科書が伝える事実ではわからない、その当時の雰囲気が伝わってくる。
興味深かったのは、当時のイスラム世界の人々にとっては、十字軍が何を行っているのかわかっていなかった点である。イスラム世界の人々に彼らのエルサレム奪還という目的が知られたのはどうやらかなり後のことのようで、その進路の途中の国々の人にとっては十字軍はただの侵略者としか見えなかったのだ。
本書ではイスラム世界はセルジュークトルコの支配してい時代ではあるが、キリスト世界だけでなくイスラム世界の状況に着いても知りたくなった。
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「ヤマの疾風」西村健

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第16回大藪春彦賞受賞作。
昭和44年。炭坑の町のチンピラ達3人組、飛車松(ひしゃまつ)、ゼゲン、マッコリとその地域で抗争を繰り返すヤクザ達を描く。
舞台は僕が生まれるより10年ほど前。僕らの世代ではすでに炭坑とともに生活するという状況が想像できないが、本書が描くのはまさにそんな時代。いろいろ社会が整備されてないと感じられる部分もあるが、今より活気が感じられる気がする。実際、誰もが未来に希望を抱いていたのだろう。
物語は飛車松(ひしゃまつ)達3人組が、とある暴力団の賭場のお金を奪った事から始まる。面子を守るために犯人を突き止めようとする暴力団達によって、3人は次第に追いつめられていく。またその一方で、地域の暴力団同士も少しずつ緊張が高まっていくのである。
飛車松(ひしゃまつ)の真っすぐな生き方は、この昭和という時代設定だからこそ受け入れやすいものなのだろう。
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「わかりやすく説明する練習をしよう。」リー・ラフィーヴァー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
わかりやすく説明する方法を、複雑な事柄を説明する動画を作成することをビジネスにしている著者が語る。
本書でも冒頭で語られているように、まず僕らは、説明するという行為が、ランニングのフォームのように練習に酔って改善できるものであるということに気づくべきなのだろう。そもそも世の中の多くの人は説明というものの重要性と改善の可能性を理解していないのだ。だから簡単に説明を人に委ねる事ができる。理解することと説明ができることとはまったく違うのである。
さて、本書では説明者が陥りやすい失敗についていくつか例をあげている。なかでも言葉として印象に残ったのは「知の呪縛」である。説明者はその内容にもっとも熟知した立場にいるため、その内容について知らないという立場に立って物事を考えるということができなくなるのである。また、大勢に対して説明する場合、いろんなレベルの知識を持った人が同じ場所に存在するはずである。そのようなときに、どのレベルをターゲットにして説明すべきか、ということにも触れている。
内容自体ものすごい新しいことを書いているわけではないのかもしれないが、改めて図などを交えて説明の持つ意味を示してくれるので、説明というものに対する考え方に新たな視点を与えてくれた気がする。
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「あたらしい働き方」本田直之

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ハワイと日本を行き来しながら生活する著者が、新しい働き方を提供する企業を取材し、自分の意見を織り交ぜながら語る。
複数の新しい働き方を提供する企業を紹介している。本書を読むといろいろ共感する部分が多い。なぜいろんな価値観を持った人がいるのに、朝の9時から夕方の18時といったように、同じ時間を会社に拘束されなければならないのか。もちろん同じ会社で働いていれば同じプロジェクトに関わることもあるため、顔を合わせる必要はあるだろう。それでも月曜日から金曜日に毎日同じ時間に8時間以上会社にいる、という必要はないのである。また同時に、なぜ会社とは行きたくない場所なのか。人生の大部分を過ごす場所なのだから、もっと心地よい場所であるべきだろう。
本書では6時間労働を実現した会社や有休日数に制限のない会社など、多くの新しい試みを実現させている会社を紹介している。休暇に旅行に行く事を推奨している制度などは面白い。何よりも経験を重視するその会社の姿勢が見える。
しかし著者は繰り返し述べている。例えば6時間労働で十分な利益をあげるためには、通常以上に効率性を追求し、集中力が必要になるのだと。魅力的に見える労働環境で意思の弱い人が働けば、単にさぼってしまうだけで、何が理想の労働環境かは、本人次第なのである。
僕自身物事を集中して効率よく行って、人生のなかでできるかぎり多くの経験を積みたいと思っている。それでも会社によって拘束される多くの時間に、人生ってそんなものなのかな、とやや諦め気味だったが、本書を読んで元気が出てきた。まだまだ理想の生活を追求することはできるかもしれない。
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「Tell No One」Harlan Coben

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Beckの妻Elizabethは8年前にが凶悪な犯罪者によって殺された。しかしある日匿名のメールを受け取り、8年経った妻の姿を目にする事となる。
匿名のメールによって妻の存在を知らされる、しかしそのことは誰にも話してはいけない、という読者を物語に引き込む手法としてはありきたりな流れである。それでもBeckに協力してくれる友人達が個性豊かで特にモデルのShaunaやBeckの妹のLindaなどは物語を現代風に印象づけている。
特に文化や歴史的な事実と物語が絡んでいるわけでもないので、気楽に読む事ができるだろう。

「リバーサイド・チルドレン」梓崎優(しざきゆう)

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ミサキはカンボジアで仲間とともにゴミをあさって生活をしている。しかし、ストリートチルドレンを嫌う警察官や、ゴミを減らそうとする政府の政策によってそんな生活も脅かされていく。
日本人の少年であるミサキがなぜカンボジアでストリートチルドレンとして生活しているのか。そんな疑問とともに物語が始まる。ゴミを漁って生活するミサキとその仲間たちの様子からカンボジアという国の不安定さが見えてくるだろう。アンコールワットという有名な観光地を持ち、観光客が安心して訪れることができるようになっても、一歩道を入れば貧しい人々がわずかな食べ物のために辛い想いをしているのだ。
そして、物語が後半に進むにつれて、ミサキの過去についても語られる。悲しい理由から家族と離ればなれになったミサキ。そこからは経済格差が生み出す不幸が見えてくる。一方で、カンボジア政府は、観光客を呼び込むためにゴミを減らそうとするため、ミサキ達は新たに生きる道をみつけなければならなくなるのだ。
カンボジアという国の今まで知らなかった現状を見せてくれる一冊。残念ながらハッピーエンドとはいかないが、日本以外の国に対して新たな視点を持たせてくれる。
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「チグリスとユーフラテス」新井素子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第20回日本SF大賞受賞作品。
惑星ナインへの移住した人類だったがやがて人口が減っていき、ついに最後の子どもルナだけとなった。孤独のなかルナはコールドスリープについていた人々を起こし始める。
突拍子もない設定で最初はかなり物語に入っていくのに抵抗があったが徐々に著者が伝えようとしていることが伝わってくるような気がする。ルナはコールドスリープをしていた4人の女性を目覚めさせ、彼女達が死ぬまで一緒に過ごすのだが、その4人の価値観がいずれも異なる点が面白い。1人目のマリアは子孫を残すことを人生の目標としていたから、一人残されて孤独に打ち拉がれるルナを見て子供を産む事の是非に心を動かす。3人目の朋実(ともみ)は絵を描く事を生き甲斐にしていた。永遠だと思っていた芸術さえもやがて朽ち果てると知った朋実(ともみ)もまた自分の考えを見直す事になる。
そして最後に起こされた灯(あかり)。彼女は惑星ナインへの移住した最初のメンバーの1人。自分たちのやってきたことが無駄に終わらないためにルナが想いも寄らない行動を起こし始める。
人生とはなんなのか、生きる意義とはなんなのか。改めてそんなことを考えさせてくれるだろう。
【楽天ブックス】「チグリスとユーフラテス(上)」「チグリスとユーフラテス(下)」

「グーグル・ジャパンで働く11人の英語勉強法」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
グーグル・ジャパンで働く11人の日本人のこれまでの英語勉強方法やその体験をまとめている。
やはりすべての人に共通していたのが、英語を使わなければならない環境に自らの身を置くということだろう。日本の文法中心の英語教育に対して、意見が分かれている点は興味深い。また、各自が語る英語勉強法とあわせて、グーグルという社内環境がさらに羨ましくなってしまった。
【楽天ブックス】「グーグル・ジャパンで働く11人の英語勉強法」

「Think Simpke アップルを生み出す熱狂的哲学」ケン・シーガル

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スティーブ・ジョブズと12年に渡って一緒に働いてきたクリエイティブディレクターの著者が、アップルやジョブズのエピソードを中心に、シンプルであることの重要性を語る。
スティーブ・ジョブズはいろんな話を聞く過程で、独裁的なイメージを持っていた。しかし、本書のなかで描かれる印象は必ずしもそんなことはなく、むしろ自分の気持ちに素直で、しっかりと人の話に耳を傾けることができる人間だったということがわかる。
印象的だったのは、著者が繰り返し、シンプルであることの難しさを説いている点だろう。今やだれもがアップルの偉業を認めており、そのシンプルを貫くポリシーをまねようとするが、ことごとく失敗している。著者は言うのだ、シンプルは0か100かなのだと。中途半端なシンプルさなら必要ない。実際、本書で著者は、シンプルさを中途半端に採用しようとした多くの企業の失敗例を挙げている。
また、これまでにアップルのやってきたことについて語っているので、いくつか新しいことなども発見できた。過去の有名なCMなどは本書を読んだ後につい見返してしまった。本書ではシンプルさを、アップルを支えている哲学として説明しているが、人生のさまざまな場面にも適用できるような気がした。
【楽天ブックス】「Think Simpke アップルを生み出す熱狂的哲学」

「光秀の定理」垣根涼介

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
1560年。新九郎(しんくろう)は愚息(ぐそく)と名乗る坊主と出会い行動を共にすることとなる。そんな2人はある日、明智十兵衛光秀(あけちじゅうべえみつひで)と出会う。
本書を読むまであまり明智光秀(あけちみつひで)という人物についての知識を持っていなかった。織田信長(おだのぶなが)の最期となった本能寺の変の鍵となった人物という程度のものである。しかしどうやら明智光秀(あけちみつひで)については諸説あるようだ。本書はそんな1つの明智光秀像(あけちみつひで)を見せてくれる。
鍵と鳴るのは、剣士新九郎(しんくろう)と坊主愚息(ぐそく)である。新九郎(しんくろう)は最初ただひたすら剣を生業にしようとその腕を磨いていたが、愚息(ぐそく)との出会いによって物事を考える能力を身につけ、それが剣の技術にも活かされていく。また愚息(ぐそく)は世の中のルールには従わず自らの信念にしたがって生きている。そんな2人に魅了された光秀(みつひで)はその地位をあげていくなかでたびたび2人の元を訪れるのだ。
面白いのは愚息(ぐそく)がお金を稼ぐために行う博打の方法である。1見すると1対1の5分に思えるそれが物語を非常に面白くしている。
明智光秀(あけちみつひで)という人物についてもっと知りたくなった。また、新九郎(しんくろう)や愚息(ぐそく)の生き方にもなにか心地よさを感じた。
【楽天ブックス】「光秀の定理」

「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる」梅田望夫

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
シリコンバレーで生活する著者がインターネットでおこっている大きな動きについて語る。
GoogleやWikipediaに代表されるインターネット上で起きている動きは一体どのようなものなのか。それは物や対面のサービスのなかで育ってきた人々にとってはなかなか理解しにくいものなのかもしれない。僕自身はむしろインターネットが十分に生活に根付いているのでそんなことは考えた事もなかったが、著者の意見から年配者が感じる困惑も少し理解できた気がする。
著者が持つ様々な人脈から得た意見などから現在のネット上の動きを説明してくれるため、もともと知識として持っていたことに対しても新たな視点を持つ事ができる。例えば、著者は「恐竜の首」と「ロングテール」という言葉を使ってamazonの強みを説明する。今まで、基本的に店舗は、多くの人に人気のある商品、つまり「恐竜の首」だけを扱ってきて利益を出してきたが、実際の店舗を持たないamazonは「ロングテール」から利益を出すことができる点が新しいというのだ。
また、同じようにGoogleについても触れている。Googleは世の中の本をすべてスキャンして無料で提供しようとしており、それが著作権の侵害とか出版社の利益を損ねるとか、多くの議論を呼んでいる。しかし、反対意見はいずれも「恐竜の首」部分の本を扱う人々の考えであって、「ロングテール」つまり非常にニッチな本の作者にとっては、無料とはいえ、まず人の目に触れてもらう機会があることこそ重要なのである。
本書自体が2006年に発売されたものであるがめ、例えばFacebookやTwitterに関する記述がないなど、現在のインターネットの流れからやや遅れている点は残念だが、それでもいくつか印象的な考え方を知る事ができた。同じ著者の続編、「ウェブ時代をゆく いかに働き、いかに学ぶか」と内容的にかぶる部分も多いので、そちらだけ読んでもいいのかもしれない。
【楽天ブックス】「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる」

「深夜特急(2) マレー半島・シンガポール」沢木耕太郎

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
著者はマレー半島を南下し、シンガポールへ向かう。
マカオに別れを告げて、著者はシンガポールへと向かう。第1弾のマカオの物語でもそうだが、著者がそこらじゅうで娼婦に声をかけられたり買春を勧められる点は、著者のような旅に憧れる人間として辟易させられる。
本書では著者が旅に出たきっかけについて触れられていて、それが本書でもっとも印象的である。むしろ旅の描写はあまりマカオや香港と変わらず、特に目新しく感じる部分はなかった。次のインドの章に期待したい。
【楽天ブックス】「深夜特急(2) マレー半島・シンガポール」

「警官の条件」佐々木譲

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
警部に承認した安城和也(あんじょうかずや)は父親同然に慕っていた加賀谷仁(かがやひとし)を覚せい剤所持で警察から追放することに成功する。やがて安城(あんじょう)は班を率いて覚せい剤の取締を担うこととなる。
タイトルから佐々木譲の他の作品、「笑う警官」「警官の血」などとの物語的なつながりがあるかと思ったが、あったとしてもよっぽど繰り返し読んでいる著者にしかわからない程度だろう。物語の主人公が、父親のように慕った警察を売った警部という点も、物語に感情移入しない点なのかもしれない。
佐々木譲の警察物語に期待するスピーディな展開は本作品ではあまり見られず、特に印象に残らない作品になってしまった気がする。
【楽天ブックス】「警官の条件」

「The Pillars of the Earth」Ken Follett

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
現代と違って何年もかかる建築の過程で周囲の政治も変われば建築家も財政状況も変わる。1つの大聖堂の建築に関わる人々の物語。
物語は大聖堂の建築に関わりたいと願う建築家のTomとその家族がとある修道院を訪れてそこでPhilipと出会う事から始まる。やがてPhilippは不幸なできごとによって焼け落ちてしまった教会をTomの力で再建する事を決意する。物語の序盤はそんなTomの恋愛や家族のことやPhilipの苦悩で占められる。
そして、中盤からは様々な登場人物が生き生きと躍動してくる。一人はTomの2番目の妻Ellenの息子Jackであり、彼は彫刻に非凡な才能を見せ、やがて大聖堂の建築を担うようになる。また領主の娘に生まれたAlienaはWilliamの策略によって、その地を弟Richardと追われるが、自分たちの地位を取り戻す事を決意し強く生きていく。
大きな建物も2,3年で、気がついたら出来上がってしまっている現代の感覚だとなかなか想像できないが、政治の不安定な当時は、大きな建物を建築するためには相当の月日が必要な事がこの物語から見えてくる。次回、海外旅行で建築物を見る際はまた違った視点でみることができるだろう。
壮大な物語で読み終わるのにかなり時間がかかった。続編もあるらしいのでぜひ読んでみたい。

「深夜特急(1) 香港・マカオ」沢木耕太郎

デリーからロンドンまで乗り合いバスで行く、そう思い立った沢木耕太郎の旅を描く。
本書で中心と鳴るのは香港とマカオである。著者が少しずつその土地に慣れていく過程が面白い。後半の大部分はマカオのギャンブルの様子を描いている。特にギャンブルを面白いと思っていなかった著者が、少しずつギャンブルの面白さに魅了されていく。ギャンブルにもただお金をかけるだけでなく、店側の思惑やディーラーの技量、他のギャンブラーの様子など、いろいろな楽しみ方があることを教えてくれる。
まだ旅は始まったばかりである。
【楽天ブックス】「深夜特急(1) 香港・マカオ」

「もの食う人びと」辺見庸

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本の豊かな食生活に疑問を持った著者が世界を旅して現地での食生活を味わう。
世界各地の食生活について語っているが、その土地特有の食事だけでなく、その土地の文化や歴史も見えてくる。
バングラディシュで、著者はそうと知らずに残飯を食べる。バングラディシュでは豊かな人々が食べ残した残飯を売買する人々がいるのである。日本人の僕らには信じられない事だろう。また、フィリピンで著者は、戦時中に日本兵に家族を食べられたという人々と出会う。これも日本ではあまり公に語られない事実として、本書を通じて初めて知ったことである。
また、バンコクでは日本向けのペットフードの工場があり、そのペットフードの日本での値段と、その工場で働くタイ人の給料とを比較して、世界の貧富の格差を示してくれる。
従軍慰安婦としての過去に悩む韓国人女性達や、汚染されたチェルノブイリの周辺の村々の様子など、読み終えてみると、むしろ食生活の記述よりも歴史的悲劇や貧しさに焦点があてられている気がするが、いろいろ考えさせられる内容である。
【楽天ブックス】「もの食う人びと」

「ウェブ時代をゆく いかに働き、いかに学ぶか」梅田望夫

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
インターネットによって起きている大きな変化のなかでどう生きるべきかを語る。
印象的だったのは現在のインターネットに情報が溢れ帰っている状況を「学習の高速道路と大渋滞」と例えている部分だろう。インターネットによって誰でも学ぼうと思えば簡単に学ぶことができるため、ある程度のレベルに達するまでには大した時間はかからないが、その一歩先にいくことが途端に難しくなるということを表現している。
しかし、その高速道路を意識しているのも、一握りの人々に過ぎず、実際にはその高速道路を走ろうとすらしない人が多いのである。そう考えると、インターネット上で起きている情報の流れの変化をどうやってうまく利用していくかというのは本当に重要だと考えさせてくれる。
今の時代の生き方を考えさせるために手元においておきたいと思わせる一冊。
【楽天ブックス】「ウェブ時代をゆく いかに働き、いかに学ぶか」

「ザ・チーム 日本の一番大きな問題を解く」斉藤ウィリアム浩幸

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日系人としてアメリカで成功した著者が、日本にはチームがないことに驚いた。チームの重要性について語る。
チームとグループは違うのだという。チームとはただの人の寄せ集めではなく異なる種類の人が同じ目的を持って集まった物を言う。それは1たす1が2となるのではなく3にも4にもなるようなものなのだと。
本書では著者の成功体験をもとにチームの重要性を訴えるが、どちらかというと著者の過去のエピソードの方が、ザッカーバーグやジョブスの物語のような面白さがあり、チームの話はあまり印象に残らなかった。
【楽天ブックス】「ザ・チーム 日本の一番大きな問題を解く」

「おそろし 三島屋変調百物語事始」宮部みゆき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
悲しい出来事の既におちかは江戸の叔父夫婦の元で暮らすこととなった。そして叔父伊兵衛(いへい)の計らいで人々の不思議な話を聞く役目を命じられる。
人々の不思議な話を聞く事で、少しずつおちかは自分の過去の出来事と向かい合っていく。おちか自身の話も人々がおちかに聞かせる話も、きっと幼い頃に聞かされていたら怖くて夜トイレに行けなくなっていただろうと思う。物語の巧さには宮部みゆきらしさを感じさせるが、あまり深い心情描写がなかったのが残念である。
とはいえ、続編もあるらしいので、機会があったら読んでみたい。
【楽天ブックス】「おそろし 三島屋変調百物語事始」